JP5598472B2 - 二次電池用多孔膜及び二次電池 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、電極上にアルミナ、シリカ、ポリエチレン樹脂などの微粒子と、ポリフッ化ビニリデン等の耐電解液性の高い結着剤とを含むスラリーを用いて形成されてなる多孔性保護膜が開示されている。これらの多孔膜保護膜の場合は、例えば150℃以上で有機セパレーターの熱収縮が起こっても、電極上に微粒子があることにより内部短絡率が低下し安全性が向上する。
さらに、特許文献2には、アルミナや有機化合物等の微粒子と、スチレンーブタジエン共重合体等の結着剤とが、離型性を有するライナー上に形成されてなる多孔質膜が開示されている。これらの多孔質膜の場合は、熱収縮が起こらないことによる内部短絡率の低下に加え、多孔質膜が熱膨潤することによりシャットダウンが起こり、信頼性や安全性が更に向上している。
また、長期サイクル特性も向上させるためには、多孔膜の電解液保持性や電解液含浸性を更に向上させる必要であることがわかった。
従って、本発明の目的は、出力特性及び長期サイクル特性が更に向上した、リチウムイオン二次電池などに使用される多孔膜、かかる多孔膜を得るためのスラリー及び製造方法、並びに、出力特性及び長期サイクル特性が更に向上した、リチウムイオン二次電池及びその構成要素を提供することにある。
(1)非導電性粒子及びブロックポリマーを含む二次電池用多孔膜。
(2)前記ブロックポリマーが、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含有する二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントである2つのセグメントを有する(1)に記載の二次電池用多孔膜。
(3)前記ブロックポリマーの重量平均分子量が、1,000〜500,000の範囲にある(1)〜(2)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜。
(4)前記ブロックポリマーが、ガラス転移温度15℃以下の軟質重合体のセグメントを含む(1)〜(3)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜。
(5)前記ブロックポリマーが、前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントを有し、前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントが、溶解度パラメーター(SP)が8.0以上11未満である単量体成分、及び/または、親水性基を有する単量体成分を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜。
(6)前記ブロックポリマーが、前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントを有し、前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントが、溶解度パラメーターが8.0未満もしくは11以上である単量体成分、及び/または、疎水性部を有する単量体成分を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜。
(7)非導電性粒子、ブロックポリマー及び溶媒を含む二次電池多孔膜用スラリー。
(8)請求項7に記載の二次電池多孔膜用スラリーを基材に塗布し、次いで乾燥する工程を含む二次電池用多孔膜の製造方法。
(9)集電体、前記集電体上に設けられた、結着剤及び電極活物質を含む電極合剤層、及び前記電極合剤層上に設けられた、(1)〜(6)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜の層を含む二次電池用電極。
(10)有機セパレーター層、前記有機セパレーター層上に設けられた、(1)〜(6)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜を含む二次電池用セパレーター。
(11)正極、負極、セパレーター及びエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含有する二次電池用電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレーターの少なくともいずれかが、(1)〜(6)のいずれかに記載の二次電池用多孔膜を含む、二次電池。
本発明の二次電池用多孔膜は、非導電性粒子及びブロックポリマーを含む。
本発明に用いる非導電性粒子は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などの使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定であることが望まれる。例えば各種の無機粒子や有機粒子を使用することができる。電池の性能に悪影響を及ぼす金属のコンタミネーションが少ない粒子を低コストで製造できる点からは、有機粒子が好ましい。
無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、BaTiO2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子等が用いられる。これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等されていてもよく、また単独でも2種以上の組合せからなるものでもよい。これらの中でも電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化物粒子であることが好ましい。
有機粒子としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂など各種高分子化合物からなる粒子等が用いられる。粒子を形成する上記高分子化合物は、混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、架橋体等であっても使用できる。有機粒子を形成する高分子化合物は、2種以上の高分子化合物の混合物であってもよい。
また、カーボンブラック、グラファイト、SnO2、ITO、金属粉末などの導電性金属及び導電性を有する化合物や酸化物の微粉末の表面を、非電気伝導性の物質で表面処理することによって、電気絶縁性を持たせて使用することも可能である。これらの非電気伝導性粒子は、2種以上併用して用いてもよい。
また、これらの粒子のBET比表面積は、粒子の凝集を抑制し、後述する多孔膜用スラリーの流動性を好適化する観点から具体的には、0.9〜200m2/gであることが好ましく、1.5〜150m2/gであることがより好ましい。
非導電性粒子が有機粒子である場合、該有機微粒子は高い耐熱性を有することが、多孔膜に耐熱性を賦与し電池の安定性を向上させる観点から好ましい。具体的には、熱天秤分析において昇温速度10℃/分で加熱したときに10重量%減量する温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、さらにより好ましくは350℃以上である。一方当該温度の上限は特に制限されないが、例えば450℃以下とすることができる。
非導電性粒子の粒子径分布(CV値)の下限は好ましくは0.5%以上であり、その上限は好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらにより好ましくは20%以下である。当該範囲内とすることにより、非導電性粒子層の空隙を埋めず、リチウムの移動を阻害し抵抗が増大することを抑制することができる。
本発明に用いるブロックポリマーは、2種のセグメントを有するブロック型ポリマーである。ブロックポリマーは、これら2種のセグメントを有するのに加え、さらに他の1種以上の任意のセグメントを有しうる。
好ましくは、ブロックポリマーは、前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントとから構成される。より具体的なブロックポリマーの例としては、前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントとから実質的になり、後述するセグメントA及びセグメントB以外の成分を含んでいないものを挙げることができる。
一方、セグメントが前記二次電池用電解液に対し相溶性を示さないとは、電解液中にてセグメントが広がりを示さないことを指し、前記二次電池用電解液に対するセグメントの膨潤度が0%以上、300%以下であることを指す。
本発明において、各セグメントの膨潤度は以下の方法で測定する。
セグメントAの構成成分からなる重合体及びセグメントBの構成成分からなる重合体をそれぞれ約0.1mm厚のフィルムに成形し、これを約2センチ角に切り取って重量(浸漬前重量)を測定する。その後、温度60℃の前記二次電池用電解液中で72時間浸漬する。浸漬したフィルムを引き上げ、前記二次電池用電解液をふき取った直後の重量(浸漬後重量)を測定し、(浸漬後重量)/(浸漬前重量)×100(%)の値を前記膨潤度とする。
前記二次電池用電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(容積比、ただしECは40℃での容積、DECは20℃での容積)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いる。
本発明に用いるブロックポリマーは、前記セグメントAとセグメントBからのみ構成されるABブロック構造(AB型、ABA型、BAB型)でも、他の任意成分を含有する構造でもよい。他の任意成分を含有する場合は、かかる任意成分がABブロック構造の末端に配位していても、ABブロック構造中に配位していても、いずれでもよい。
その中でも、特に末端の構造が電解液に対し相溶性を示す成分であるほうが、多孔膜が高い電解液含浸性と電解液保持性を有し、その多孔膜を有する二次電池が高い長期サイクル特性を示すことから好ましい。
セグメントAは、溶解度パラメーターが8.0以上11(cal/cm3)1/2未満である単量体成分、及び/または親水性基を有する単量体成分の単位を含むことが好ましい。かかる単量体成分を含むことにより、セグメントAの電解液に対する膨潤度を、組成により制御して、電解液に対する相溶性を示すセグメントとすることができる。
本願において、「単量体」又は「単量体成分」の文言は、その文脈に応じて、単量体組成物を構成する単量体であると解されるか、または、重合体を構成する、単量体に基づく重合単位であると解される。
δ=ΣG/V=dΣG/M
ΣG:分子引力定数Gの総計
V:比容
M:分子量
d:比重
低級ポリオキシアルキレン基含基を含有する単量体としては、ポリ(エチレンオキシド)等のポリ(アルキレンオキシド)などが挙げられる。
セグメントBは、溶解度パラメーターが8.0未満もしくは11以上である単量体成分、及び/または親水性基を有する単量体成分の単位を含んでなるものが好ましい。かかる単量体成分を含むことにより、セグメントBの電解液に対する膨潤度を、組成により制御して、電解液に対する相溶性を示さないセグメントとすることができる。膨潤度を、架橋により制御して、電解液に対する相溶性を示さないものにするためには、セグメントBは、後述する架橋性基を有する単量体成分の単位を含むことが好ましい。
中でもセグメントAが電解液に対する相溶性を示し、セグメントBが電解液に対する相溶性を示さない場合においては、セグメントAが、ガラス転移温度15℃以下の軟質重合体を構成するセグメントと同一のセグメントであることが好ましく、更に好ましくは、ガラス転移温度−5℃以下の軟質重合体を構成するセグメントと同一のセグメントであり、特に好ましくは、ガラス転移温度−40℃以下の軟質重合体を構成するセグメントと同一のセグメントである。セグメントAが、ガラス転移温度が上記範囲内である軟質重合体を構成するセグメントと同一のセグメントであることにより、ブロックポリマー中のセグメントBが活物質表面に吸着した状態で、セグメントAの可動性が増すため、低温でのリチウム受け入れ性が向上する。
なお、セグメントのガラス転移温度は、前記に例示した単量体の組み合わせ及び後述する共重合可能な単量体を更に組み合わせることによって調整可能である。
ブロックポリマーの架橋方法としては、加熱またはエネルギー線照射により架橋させる方法が挙げられる。加熱またはエネルギー線照射により架橋可能なブロックポリマーを架橋して用いることで、加熱条件やエネルギー線照射の照射条件(強度など)により架橋度を調節できる。また、架橋度が高いほど膨潤度が小さくなる傾向にあるので、架橋度を変えることにより膨潤度を調節することができる。
加熱またはエネルギー線照射により架橋可能なブロックポリマーとする方法としては、ブロックポリマー中に架橋性基を導入する方法や、架橋剤を併用する方法が挙げられる。
炭素−炭素二重結合およびエポキシ基を含有する単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;が挙げられる。
前記粒子状金属除去工程におけるポリマー溶液もしくはポリマー分散液から粒子状の金属成分を除去する方法は特に限定されず、例えば、濾過フィルターによる濾過により除去する方法、振動ふるいによる除去する方法、遠心分離により除去する方法、磁力により除去する方法等が挙げられる。中でも、除去対象が金属成分であるため磁力により除去する方法が好ましい。磁力により除去する方法としては、金属成分が除去できる方法であれば特に限定はされないが、生産性および除去効率を考慮すると、好ましくはブロックポリマーの製造ライン中に磁気フィルターを配置することで行われる。
本発明の二次電池用多孔膜を製造する方法としては、1)非導電性粒子、ブロックポリマー及び溶媒を含む多孔膜用スラリーを所定の基材上に塗布し、次いで乾燥する方法;2)非導電性粒子、ブロックポリマー及び溶媒を含む多孔膜用スラリーに、基材を浸漬後、これを乾燥する方法;3)非導電性粒子、ブロックポリマー及び溶媒を含む多孔膜用スラリーを、剥離フィルム上に塗布、成膜し、得られた多孔膜を所定の基材上に転写する方法;が挙げられる。この中でも、1)非導電性粒子、ブロックポリマー及び溶媒を含む多孔膜用スラリーを基材に塗布し、次いで乾燥する方法が、多孔膜の膜厚を制御しやすいことから最も好ましい。
本発明の二次電池多孔膜用スラリーは、非導電性粒子、ブロックポリマー、及び溶媒を含む。非導電性粒子、ブロックポリマーとしては、二次電池用多孔膜で説明したものと同様のものが挙げられる。
多孔膜用スラリーに用いる溶媒としては、水および有機溶媒のいずれも使用できる。有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素など塩素脂肪族炭化水素;芳酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類があげられる。
これらの溶媒は、単独で使用しても、これらを2種以上混合して混合溶媒として使用してもよい。これらの中でも特に、非導電性粒子の分散性にすぐれ、沸点が低く揮発性が高い溶媒が、短時間でかつ低温で除去できるので好ましい。具体的には、アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、水、若しくはN−メチルピロリドン、またはこれらの混合溶媒が好ましい。
多孔膜用スラリーの製法は、特に限定はされず、上記非導電性粒子、ブロックポリマー、及び溶媒と必要に応じ添加される任意の成分を混合して得られる。
本発明においては上記成分を用いることにより混合方法や混合順序にかかわらず、非導電性粒子が高度に分散された多孔膜用スラリーを得ることができる。混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができるが、中でも高い分散シェアを加えることができる、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置を使用することが特に好ましい。
多孔膜用スラリーの粘度は、均一塗工性、スラリー経時安定性の観点から、好ましくは10mPa・S〜10,000mPa・S、更に好ましくは50〜500mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
本発明の二次電池用多孔膜の製造方法においては、電極や有機セパレーター以外の基材上に形成してもよい。本発明の二次電池用多孔膜を、電極や有機セパレーター以外の基材上に形成した場合は、多孔膜を基材から剥離し、直接電池を組み立てる時に、電極上や有機セパレーター上に積層することにより使用することが出来る。
乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、使用する溶媒の種類によってかえることができる。溶媒を完全に除去するために、例えば、N−メチルピロリドン等の揮発性の低い溶媒を用いる場合には送風式の乾燥機で120℃以上の高温で乾燥させることが好ましい。逆に揮発性の高い溶媒を用いる場合には100℃以下の低温において乾燥させることもできる。多孔膜を後述する有機セパレーター上に形成する際は、有機セパレーターの収縮を起こさずに乾燥させることが必要の為、100℃以下の低温での乾燥が好ましい。
本発明の二次電池用電極は、結着剤及び電極活物質を含んでなる電極合剤層が、集電体に付着してなり、かつ電極合剤層の表面に、前記多孔膜が積層されてなる。即ち、本発明の二次電池用電極は、集電体、前記集電体上に設けられた、結着剤及び電極活物質を含む電極合剤層、及び前記電極合剤層上に設けられた、前記本発明の二次電池用多孔膜の層を含む。
本発明の二次電池用電極に用いられる電極活物質は、電極が利用される二次電池に応じて選択すればよい。前記二次電池としては、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池が挙げられる。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiFeVO4などのリチウム含有複合金属酸化物;TiS2、TiS3、非晶質MoS2等の遷移金属硫化物;Cu2V2O3、非晶質V2O−P2O5、MoO3、V2O5、V6O13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子化合物を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
本発明において、電極合剤層は、電極活物質の他に、結着剤を含む。結着剤を含むことにより電極中の電極合剤層の結着性が向上し、電極の撒回時等の工程上においてかかる機械的な力に対する強度が上がり、また電極中の電極合剤層が脱離しにくくなることから、脱離物による短絡等の危険性が小さくなる。
ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル軟質重合体;
ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン軟質重合体;
ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン軟質重合体;
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン軟質重合体;
ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル軟質重合体;
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ軟質重合体;
フッ化ビニリデンゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル熱可塑性エラストマー、塩化ビニル熱可塑性エラストマー、ポリアミド熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性により官能基を導入したものであってもよい。
本発明の二次電池用セパレーターは、有機セパレーター層上に、前記二次電池用多孔膜が積層されてなる。即ち、本発明の二次電池用セパレーターは、有機セパレーター層、及び前記有機セパレーター層上に設けられた、前記本発明の二次電池用多孔膜を含む。
本発明に用いる有機セパレーター層としては、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高い、孔径の微細な多孔質膜が用いられ、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜またはポリオレフィンの繊維を織ったもの、またはその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、前述の多孔膜用スラリーの塗工性が優れ、セパレーター全体の膜厚を薄くし電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィンの樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
有機セパレーター層の厚さは、通常0.5〜40μm、好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜10μmである。この範囲であると電池内でのセパレーターによる抵抗が小さくなり、また有機セパレーター層への塗工時の作業性が良い。
本発明の二次電池は、正極、負極、セパレーター及び電解液を含み、前記正極、負極及びセパレーターの少なくともいずれかに、前記多孔膜が積層されてなる。即ち、本発明の二次電池は、正極、負極、セパレーター及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレーターの少なくともいずれかが、前記本発明の二次電池用多孔膜を含む。
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。これらは、二種以上を併用してもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
また前記電解液には添加剤を含有させて用いることも可能である。添加剤としては前述の電極合剤層スラリー中に使用されるビニレンカーボネート(VC)などのカーボネートの化合物が挙げられる。
上記以外の電解液としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質や前記ポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質を挙げることができる。
本発明の二次電池において、多孔膜が積層されてなる正極や負極としては、前記二次電池用電極を正極や負極として用いればよく、多孔膜が積層されてなるセパレーターとしては、前記二次電池用セパレーターをセパレーターとして用いればよい。
実施例および比較例において、各種物性は以下のように評価した。
直径1cmの試験管内に深さ5cmまで多孔膜用スラリーを入れ、試験サンプルとする。1種の試料の測定につき5本の試験サンプルを調製する。前記試験サンプルを机上に垂直に設置する。設置した多孔膜用スラリーの状態を10日間観測し、下記の基準により判定する。5本のサンプルでの沈降に有するまでにかかる時間・日数(平均沈降所要時間(日数)という)をそれぞれもとめ、それらの平均沈降所要時間(日数)を沈降が見られた日とする。2相分離が見られないほど分散性に優れることを示す。
A:10日後にも沈降がみられない。
B:6〜10日後に沈降がみられる。
C:24時間以上〜5日以内に沈降がみられる。
D:10時間以上、24時間未満に沈降がみられる。
E:3時間以上、10時間未満に沈降がみられる。
F:3時間未満に沈降が見られる。
得られたフルセルコイン型電池を、25℃で0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電しその後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量を求める。その後、0.1Cにて4.3Vまで充電しその後20Cにて3.0Vまで放電し、20C放電容量を求める。これらの測定をフルセルコイン型電池10セルについて行う。10セルの0.1C放電容量の平均値、及び10セルの20C放電容量の平均値を求めそれぞれa及びbとする。20C放電容量bと0.1C放電容量aの電気容量の比((b/a)×100(単位:%))で表される容量保持率を求め、これを出力特性の評価基準とし、以下の基準により判定する。この値が高いほど出力特性に優れている。
A:50%以上
B:40%以上50%未満
C:20%以上40%未満
D:1%以上20%未満
E:1%未満
得られたフルセルコイン型電池を、25℃で0.1Cで3Vから4.3Vまで充電し、次いで0.1Cで4.3Vから3Vまで放電する充放電を、100サイクル繰り返し、5サイクル目の0.1C放電容量に対する100サイクル目の0.1C放電容量の割合を百分率で算出した値を容量維持率とし、下記の基準で判断した。この値が大きいほど放電容量減が少なく、サイクル特性に優れている。
A:70%以上
B:60%以上70%未満
C:50%以上60%未満
D:40%以上50%未満
E:30%以上40%未満
F:30%未満
得られたラミネートセル型電池を、それぞれ25℃で充放電レートを0.1Cとし、定電流定電圧充電法にて、4.2Vになるまで定電流で充電し、定電圧で充電する。その後0.1Cにて3.0Vまで放電し、25℃での放電容量を求める。その後、−20℃に設定した恒温槽内で0.1Cで定電流定電圧充電を行った。25℃での電池容量をa、−20℃での電池容量をbとする。−20℃での電池容量bと25℃での電池容量aの電気容量の比(b/a(%))で表される低温容量保持率を求め、これを低温特性の指標とした。この値が大きいほど、低温でのリチウム受け入れ性がよい電池であることを示す。
<ブロックポリマーの合成>
メカニカルスターラー、窒素導入口、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、スチレン40部を入れた後、これに2,2´−ビピリジン1.3部を所定量加えてから、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅0.41部を加えた後、反応系を90℃に加熱し、開始剤として、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸2−ヒドロキシエチルを0.6部加えて重合を開始させ、溶剤を加えずに、窒素気流下で、90℃で9時間重合させた。重合率(加熱し揮発成分を除去したポリマー重量を、揮発成分を除去する前の重合液そのままのポリマー重量で割った値で定義される割合)が80%以上であることを確認した後、これにアクリル酸n−ブチル60部をラバーセプタムから添加し、これをさらに110℃で12時間加熱した。このようにして、スチレン−アクリル酸ブチルのブロックポリマーを含む混合物が得られた。得られたブロックポリマーを含む混合物を、120℃に加熱して、20000Gの遠心力で1時間遠心処理し、ブロックポリマーの粗精製物(緑色である)を、上澄として得た。このブロックポリマーの粗精製物100部にスルホン酸型カチオン交換樹脂10部を加えて、120℃で2時間撹拌した後、当該イオン交換樹脂を除去し、さらに重合触媒等を除去して、無色透明なスチレンに基づく重合単位含量約40%の重合体−1を得た。得られた重合体−1の組成、比率、重量平均分子量、及びガラス転移温度を表1に示す。ガラス移転温度は、示差走査熱量法(DSC法)により、示差走査熱量分析(セイコーインスツルメンツ社製、製品名「EXSTAR6000」)で−120℃から120℃まで20℃/分の昇温速度で測定した。重量平均分子量は重合体−1をテトラヒドロフランに溶解して、0.2重量%溶液とした後、0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、測定試料として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて下記条件にて測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
(測定条件)
測定装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel Multipore HXL−M(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
溶離速度:0.3ml/分
検知器:RI(極性(+))
カラム温度:40℃
得られた重合体−1をN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPという。)に溶解し、固形分濃度20%の重合体−1のNMP溶液を得た。
非導電性粒子(酸化アルミニウム、平均粒径0.3μm、鉄含有量<20ppm)と、重合体−1の溶液とを、100:2.5の含有割合(固形分相当比)となるように混合し、更にNMPを固形分濃度が30%になるように混合させてビーズミルを用いて分散させ多孔膜用スラリー1を調製した。得られた多孔膜用スラリーの分散性を測定した。結果を表2に示す。
負極活物質として粒子径20μm、比表面積4.2m2/gのグラファイト98部と、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で5部とを混合し、更にN−メチルピロリドンを加えてプラネタリーミキサーで混合してスラリー状の負極用電極組成物(負極合剤層形成用スラリー)を調製した。この負極用電極組成物を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、110℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの負極合剤層を有する負極を得た。
正極活物質としてスピネル構造を有するマンガン酸リチウム92部と、アセチレンブラック5部、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で3部とを加え、さらにNMPで固形分濃度87%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分混合した。さらにNMPで固形分濃度84%に調整した後に10分間混合してスラリー状の正極用電極組成物(正極合剤層形成用スラリー)を調製した。この正極用電極組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの正極合剤層を有する正極を得た。
得られた負極の、負極合剤層側の面上に、前記多孔膜用スラリー1を乾燥後の多孔膜層の厚さが5μmになるようにワイヤーバーを用いて塗工し、次いで90℃で10分間乾燥することにより、多孔膜を形成し、(銅箔)/(負極合剤層)/(多孔膜)の層構成を有する多孔膜付負極1を得た。
次いで、得られた正極を直径13mmの円形に切り抜いた。得られた多孔膜付負極1を直径14mmの円形に切り抜いた。厚さ25μmの乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレーター(気孔率55%)を直径18mmの円形に切り抜いた。これらを、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。これらの円形の電極及びセパレーターの配置は、下記の通りとした。円形の正極は、そのアルミニウム箔が外装容器底面に接触するよう配置した。円形のセパレーターは、円形の正極と円形の多孔膜付負極1との間に介在するよう配置した。円形の多孔膜付負極1は、その多孔膜側の面が、円形のセパレーターを介して円形の正極の合剤層側の面に対向するよう配置した。更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを載置し、この容器中に電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF6)を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。得られた電池について出力特性、サイクル特性を測定した。結果を表2に示す。
アルミニウムシートと、その両面を被覆するポリプロピレンからなる樹脂とからなるラミネートフィルムを用いて電池容器を作成した。次いで、上記で得た正極および多孔膜付負極それぞれの端部から合剤層及び多孔膜を除去し、銅箔又はアルミニウム箔が露出した箇所を形成した。正極のアルミニウム箔が露出した箇所にNiタブを、負極の銅箔が露出した箇所にCuタブを溶接した。得られたタブ付きの正極及びタブ付きの多孔膜付負極を、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを挟んで重ねた。電極の面は、正極の合剤層側の面と多孔膜付負極の多孔膜側の面とが対向する向きに配置した。重ねた電極及びセパレーターを、捲回して上記の電池容器に収納した。続いてここに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを25℃で体積比で1:2で混合した混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットルの濃度になるように溶解させた電解液を注入した。次いで、ラミネートフィルムを封止させて本発明のリチウムイオン二次電池であるラミネートセルを作製した。得られた電池について、低温特性を測定した。評価結果を表3に示す。
多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりに表1に示す組成からなる重合体−2〜4を用いた(即ち、セグメントAを構成する単量体及びセグメントBを構成する単量体として、アクリル酸n−ブチル及びスチレンに代えて、それぞれ表1において構造「A」及び「B」として示す種類の単量体を用いた他は、実施例1の<ブロックポリマーの合成>と同様にして、重合体−2〜4を得、これを用いた)他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
<ブロックポリマーの合成>
スチレンを加えた際の重合時間を9時間から36時間に変更し、アクリル酸n−ブチルを加えた際の重合時間を12時間から48時間に変更した他は、実施例1と同様にブロックポリマーを合成し、重合体−5を得た。即ち、フラスコにスチレン及び他の物質(開始剤等)を入れた後の90℃における重合反応の時間を9時間から36時間に変更した。また、反応混合物にアクリル酸n−ブチル60部を添加した後の110℃に加熱する時間を12時間から48時間に変更した。得られた重合体−5の組成、比率、重量平均分子量、及びガラス転移温度を表1に示す。
実施例1において、多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりに重合体−5を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
<ブロックポリマーの合成>
スチレンを加えた際の重合時間を9時間から1時間に変更し、アクリル酸n−ブチルを加えた際の重合時間を12時間から2時間に変更した他は、実施例1と同様にブロックポリマーを合成し、重合体−6を得た。即ち、フラスコにスチレン及び他の物質(開始剤等)を入れた後の90℃における重合反応の時間を9時間から1時間に変更した。また、反応混合物にアクリル酸n−ブチル60部を添加した後の110℃に加熱する時間を12時間から2時間に変更した。得られた重合体−6の組成、比率、重量平均分子量、及びガラス転移温度を表1に示す。
実施例1において、多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりに重合体−6を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
<ブロックポリマーの合成>
スチレンの添加量を40部から20部に変更し、アクリル酸n−ブチルの添加量を60部から80部に変更し、スチレンを加えた際の重合時間を9時間から6時間に変更し(即ち、フラスコにスチレン及び他の物質(開始剤等)を入れた後の90℃における重合反応の時間を9時間から6時間に変更した)、アクリル酸n−ブチルを加えた際の重合時間を12時間から20時間に変更した(即ち、反応混合物にアクリル酸n−ブチル60部を添加した後の110℃に加熱する時間を12時間から20時間に変更した)他は、実施例1と同様にブロックポリマーを合成し、重合体−7を得た。得られた重合体−7の組成、比率、重量平均分子量、及びガラス転移温度を表1に示す。
実施例1において、多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりに重合体−7を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
<ブロックポリマーの合成>
スチレンの添加量を40部から80部に変更し、アクリル酸n−ブチルの添加量を20部から80部に変更し、スチレンを加えた際の重合時間を9時間から14時間に変更し(即ち、フラスコにスチレン及び他の物質(開始剤等)を入れた後の90℃における重合反応の時間を9時間から14時間に変更した)、アクリル酸n−ブチルを加えた際の重合時間を12時間から8時間に変更した(即ち、反応混合物にアクリル酸n−ブチル60部を添加した後の110℃に加熱する時間を12時間から8時間に変更した)他は、実施例1と同様にブロックポリマーを合成し、重合体−8を得た。得られた重合体−8の組成、比率、重量平均分子量、及びガラス転移温度を表1に示す。
実施例1において、多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりに重合体−8を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりに表1に示す組成からなる重合体−9〜10を用いた(即ち、セグメントAを構成する単量体及びセグメントBを構成する単量体として、アクリル酸n−ブチル及びスチレンに代えて、それぞれ表1において構造「A」及び「B」として示す種類の単量体を用いた他は、実施例1の<ブロックポリマーの合成>と同様にして、重合体−9〜10を得、これを用いた)他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性、低温特性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
<多孔膜用スラリーの作成>
非導電性粒子(酸化アルミニウム、平均粒径0.3μm、鉄含有量<20ppm)と、重合体−3の溶液とを、100:2.5の含有割合(固形分相当比)となるように混合し、更にNMPを固形分濃度が30%になるように混合させてビーズミルを用いて分散させ多孔膜用スラリー11を調製した。得られた多孔膜用スラリーの分散性を測定した。結果を表2に示す。
負極活物質として粒子径20μm、比表面積4.2m2/gのグラファイト98部と、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で5部とを混合し、更にN−メチルピロリドンを加えてプラネタリーミキサーで混合してスラリー状の負極用電極組成物(負極合剤層形成用スラリー)を調製した。この負極用電極組成物を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、110℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの負極合剤層を有する負極11を得た。
正極活物質としてスピネル構造を有するマンガン酸リチウム92部と、アセチレンブラック5部、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分相当で3部とを加え、さらにNMPで固形分濃度87%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分混合した。さらにNMPで固形分濃度84%に調整した後に10分間混合してスラリー状の正極用電極組成物(正極合剤層形成用スラリー)を調製した。この正極用電極組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの正極合剤層を有する正極11を得た。
厚さ25μmの乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレーター(気孔率55%)の一方の面上に、前記多孔膜用スラリー11を乾燥後の多孔膜層の厚さが5μmになるようにワイヤーバーを用いて塗工し、次いで90℃で10分間乾燥し片面に多孔膜を形成した。さらに、セパレーターのもう一方の面に対しても同様に乾燥後の多孔膜層の厚さが5μmになるようにワイヤーバーを用いて塗工し、次いで90℃で10分間乾燥することにより、両面に多孔膜を形成し、多孔膜付セパレーターを得た。
次いで、正極11を直径13mmの円形に切り抜いた。負極11を直径14mmの円形に切り抜いた。多孔膜付セパレーターを直径18mmの円形に切り抜いた。これらを、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。これらの円形の電極及びセパレーターの配置は、下記の通りとした。円形の正極は、そのアルミニウム箔が外装容器底面に接触するよう配置した。円形のセパレーターは、円形の正極と円形の負極との間に介在するよう配置した。円形の負極は、その合剤層側の面が、円形のセパレーターを介して円形の正極の合剤層側の面に対向するよう配置した。更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを載置し、この容器中に電解液(EC/DEC=1/2、1M LiPF6)を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。得られた電池について出力特性、サイクル特性を測定した。結果を表2に示す。
<多孔膜用スラリーの作成>
重合体−3をアセトンに溶解し、固形分濃度20%の重合体−3のアセトン溶液を得た。
非導電性粒子(架橋MMA(積水化成工業社製SSX−101、平均粒子径1.0μm))と、重合体−3のアセトン溶液とを、100:2.5の含有割合(固形分相当比)となるように混合し、更にアセトンを固形分濃度が30%になるように混合させてビーズミルを用いて分散させ多孔膜用スラリー12を調製した。得られた多孔膜用スラリーの分散性を測定した。結果を表2に示す。
多孔膜用スラリーとして多孔膜用スラリー1のかわりに多孔膜用スラリー12を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性、低温特性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
<多孔膜用スラリーの作成>
非導電性粒子(酸化アルミニウム、平均粒径0.3μm、鉄含有量<20ppm)と、重合体−3の溶液(固形分濃度20%のNMP溶液)と、ポリフッ化ビニリデンの10%NMP溶液とを、100:1.25:1.25の含有割合(固形分相当比)となるように混合し、更にNMPを固形分濃度が30%になるように混合させてビーズミルを用いて分散させ多孔膜用スラリー13を調製した。得られた多孔膜用スラリーの分散性を測定した。結果を表2に示す。
多孔膜用スラリーとして多孔膜用スラリー1のかわりに多孔膜用スラリー13を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性、低温特性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりにポリフッ化ビニリデン(ガラス転移点温度が−40℃)を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりにスチレン−ブタジエン共重合体(ガラス転移点温度が−15℃)を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
多孔膜を構成する結着剤として重合体−1のかわりにアクリル酸n−ブチル−スチレン共重合体(ガラス転移点温度が5℃)を用いた他は、実施例1と同様に多孔膜用スラリー、多孔膜付電極、及び電池を作製した。そして、得られた多孔膜用スラリーの分散性、得られた電池の出力特性、サイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
一方、結着剤としてブロック構造を有さない重合体を用いた比較例1〜3は、多孔膜用スラリーの分散性、電池の出力特性、サイクル特性の全てにおいて劣っており、特にサイクル特性が著しく劣る。
Claims (8)
- 非導電性粒子及びブロックポリマーを含む二次電池用多孔膜であって、
前記ブロックポリマーが、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含有する二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントとである2つのセグメントを有し、
前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントが、溶解度パラメーター(SP)が8.0以上11未満である単量体成分、及び/または、親水性基を有する単量体成分を含み、
前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントが、溶解度パラメーターが8.0未満もしくは11以上である単量体成分、及び/または、疎水性部を有する単量体成分を含み、
前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントとの比率が、10:90〜90:10(重量比)である、二次電池用多孔膜。 - 前記ブロックポリマーの重量平均分子量が、1,000〜500,000の範囲にある請求項1に記載の二次電池用多孔膜。
- 前記ブロックポリマーが、ガラス転移温度15℃以下の軟質重合体のセグメントを含む請求項1に記載の二次電池用多孔膜。
- 非導電性粒子、ブロックポリマー及び溶媒を含む二次電池多孔膜用スラリーであって、
前記ブロックポリマーが、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含有する二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントとである2つのセグメントを有し、
前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントが、溶解度パラメーター(SP)が8.0以上11未満である単量体成分、及び/または、親水性基を有する単量体成分を含み、
前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントが、溶解度パラメーターが8.0未満もしくは11以上である単量体成分、及び/または、疎水性部を有する単量体成分を含み、
前記二次電池用電解液に対する相溶性を示すセグメントと前記二次電池用電解液に対する相溶性を示さないセグメントとの比率が、10:90〜90:10(重量比)である、二次電池多孔膜用スラリー。 - 請求項4に記載の二次電池多孔膜用スラリーを基材に塗布し、次いで乾燥する工程を含む二次電池用多孔膜の製造方法。
- 集電体、
前記集電体上に設けられた、結着剤及び電極活物質を含む電極合剤層、及び
前記電極合剤層上に設けられた、請求項1に記載の二次電池用多孔膜の層
を含む二次電池用電極。 - 有機セパレーター層、及び
前記有機セパレーター層上に設けられた、請求項1に記載の二次電池用多孔膜
を含む二次電池用セパレーター。 - 正極、負極、セパレーター及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレーターの少なくともいずれかが、請求項1に記載の二次電池用多孔膜を含む、二次電池。
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