JP5597913B2 - 吸音構造体 - Google Patents
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Description
ここで、空気の密度をρ0[kg/m3]、音速をc0[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さをL[m]とすると、バネマス系の共振周波数f[Hz]は数式1のようなる。
振動体の形状が長方形で一辺の長さをa[m]、もう一辺の長さをb[m]、振動体のヤング率をE[N/m2]、振動体のポアソン比をσ[−]、p,qを正の整数とすると、以下の数式2に示すようにして板・膜振動型吸音構造体の共振周波数が求められる。そして、建築音響の分野においては、この求めた共振周波数を音響設計に利用している(例えば、非特許文献2参照)。
図1は、本発明の実施形態に係る吸音構造体10の分解斜視図である。なお、図面においては、本実施形態の構成を分かりやすく図示するために、吸音構造体10の実際の寸法とは異ならせている。
図に示したように、吸音構造体10は、当該吸音構造体10の基台をなす筐体20と、この筐体20の開口部23を施蓋する振動体30と、筐体20と振動体30によって筐体20内に画成される空気層40と、を具備する。
リブ25は、底板21から開口部23に向けて立設された複数の板体26を格子状に組み合わせることによって配置されたものである。このリブ25は、底板21に強度を持たせると共に、リブ25の板体26で仕切られた空間が空気層40を分割するセル41となる。リブ25と振動体30との間には振動体30が振動した際に、リブ25に当たるのを防止するために隙間42が形成されており、各セル41は、この隙間42を介して連通される。
このように構成される吸音構造体10においては、振動体30の外側から加わる音圧と空気層40側の音圧との差(即ち、振動体30の前後の音圧差)によって振動体30が弾性振動する。これにより、当該吸音構造体10に到達する音波のエネルギーは、この振動体30の振動により消費されて音が吸音されることになる。この際、振動体30は、前記数式2に示すようにして設定される共振周波数fを中心とした周波数の音を吸音することになる。
本実施形態における吸音構造体の効果を図4による特性線図に基づいて説明する。
図4は、リブ25を形成していない吸音構造体の特性線A(実線)、リブ25を形成した吸音構造体の特性線B(二点鎖線)を示した特性線図であり、横軸は周波数、縦軸は吸音率を示している。
特性線AとBとを比較すると、(1)吸音率のピークを示す周波数f0が同周波数f0´に低下し、(2)吸音周波数帯域(例えば吸音率のピーク値の半分となる周波数帯域)Δfが同周波数帯域Δf´に広がり、(3)吸音率のピーク値α0が同ピーク値α0´に上昇する、という効果が得られた。
(1)吸音周波数の低下
本実施形態に係る吸音構造体10は、底体21に格子状のリブ25を形成し、このリブ25によって空気層40が複数個のセル41に分割される。リブ25は、板体26によって振動体30に向かって開口する矩形状の細管を底板21に並べたような形状となる。このため、振動体30の弾性振動によって発生する空気は、各セル41に流れ込む。筐体20の厚さは見かけ上は変わらないものの、空気層40の振動体に直交する方向の厚さは実質的には厚くなる(増大する)ことになり、リブ25を有する吸音構造体10は、吸音周波数f0が下がることになる。
各セル41は、その壁面に空気との間に摩擦を発生させて吸音を行う管吸音による吸音特性を発揮する。この結果、当該吸音構造体10は、振動体30の弾性振動による吸音特性に加えて、管壁面に相当する板体26での吸音による吸音特性も持たせることができ、吸音周波数の帯域幅Δfを広げる。
各セル41は、振動体30から発生する振動による空気の流れを、振動体30に略直交する方向に整流するため、空気層40の空気バネとしての動作を制限することができ、吸音率α0のピークを高めることができる。即ち、振動体30の振動により圧縮・膨張する空気層40内の空気の流れは、各セル41がない場合では、振動体30に並行する方向にも流れるが、各セル41がある場合では、振動体30に略直交する方向の流れに制限される。このため、空気層40の音響インピーダンスZを、背後空気層の厚さLに依存する一定の値に固定することができ、共鳴周波数での吸音率α0のピークが低下することを防止する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
<変形例1>
前記実施形態では、リブ25を板体26によって格子状に形成する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、種々のリブ形状とすることが可能である。
図5は、リブ25Aを底板21から斜めにスリット状に形成した板体26Aを吸音構造体の横断面図を示している。板体26A間には、空気層40をスリット状に分割するセル41Aが形成される。図6は、図5中の矢視VI−VI方向から見た縦断面図である。リブ25Aは底板21から斜めに立設した板体26Aによって形成される。これにより、スリットの長さを、実施形態に比べて長く確保する。
また、同心円状のリブ25Cを構成する筒体の形状は、図9(a)に示す筒体26C1のように鉛直方向に延びる筒体であっても、図9(b)に示す筒体26C2のように截頭円錐形状(頂上を平に切った円錐形)筒体であっても、図9(c)に示す筒体26C3のように外側から内側に配置された筒体の高さを順次低く形成した筒体であってもよい。
図9(c)のように、筒体の高さを振動体30の中央部に向かうに従ってその高さを低くする理由は、振動体30が振動する際に振幅の大きくなる部分が筒体に当たるのを防止するためである。
このように、セル41Dの容積を振動体30の位置に応じて異ならせることにより、振動体30の振幅の大きいところでは空気バネの定数を大きくし、振幅の小さいところでは空気バネの定数を小さくでき、振動体30の弾性振動を空気層40により効率良く吸収できる。
このように構成される吸音構造体においては、バネマス系による共振周波数と、板の弾性による弾性振動による屈曲系の共振周波数との関連性については、前記数式2によって一義的に決められるものの、実際には十分に解明されておらず、低音域で高い吸音力を発揮する吸音構造体の構造が確立されていないのが実情である。
さらに、吸音構造体10の構成は、矩形状の筐体20、筐体20の開口部23を閉塞する振動体30と、筐体20内に画成される空気層40と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に限らず円形状、多角形状であってもよい。
また、振動体30に対して振動条件を変更するための集中質量を、振動体30の中央部に設けるようにしてもよい。
シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
また、吸音構造体10の空気層40内には、多孔質吸音材(例えば、発泡樹脂、フェルト,ポリエステルウール等の綿状繊維)を充填することにより、吸音率ピーク値を増加させてもよい。
さらに、板体26の表面に摩擦材(例えば、薄い織物のような、音波による空気振動に対して抵抗を有する部材)を貼り付けることにより、当該吸音構造体10の吸音力をさらに増大させることが可能となる。
また、本発明においては、吸音構造体群を形成する場合、上述した実施形態または変形例のいずれか一種類の吸音構造体を複数組み合わせて吸音構造体群とするだけでなく、例えば、吸音特性の異なった吸音構造体を組み合わせたり、3種類以上の吸音特性の異なった吸音構造体を組み合わせたりするというように、異なった吸音特性を有する吸音構造体を組み合わせて吸音構造体群としてもよい。
Claims (1)
- 底部と開口部を有する筐体と、
前記開口部に設けられ、前記筐体内に空気層を画成する板状または膜状の振動体と、を具備し、
前記筐体の底部には、リブを設け、
前記リブは、前記底部から前記開口部に向けて延び、前記空気層を複数の空間に分割するように形成され、
前記リブと前記振動体との間に隙間が形成され、前記複数の空間が前記隙間を介して連通する
ことを特徴とする吸音構造体。
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