以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る架構10の建物外側部分を示す立面断面図である。また、図2は、架構10の建物内側部分を示す立面断面図である。なお、説明の便宜上、これらの図及び他の図に示すように、互いに直交する3方向をそれぞれ、上下方向、左右方向及び前後方向と定義する。ここで図中左側は建物外側に相当し、図中右側は建物内側に相当する。
架構10は、PC柱20、30とPC梁40、50とを備える。PC柱20は、建物の最外部に配置された柱である。PC柱30は、建物の内側に配置された柱である。PC梁40は、PC柱20とPC柱30との間に建て込まれた梁であり、また、PC梁50は、隣り合うPC柱30の間に建て込まれた梁である。
PC梁50には梁主筋52が埋設されている。この梁主筋52の右端側は、PC梁50の右端面から突出している。また、PC梁50の左端部には、シース管54が埋設され、PC梁50のシース管54よりも右側にはスリーブ式の機械式継手56が埋設されている。シース管54と機械式継手56とは、梁主筋52と同軸的に配されており、梁主筋52の左端部が、機械式継手56の中間部まで延びている。なお、架構10を施工している間、機械式継手56の中間部には、ストッパ58が仮設される。
また、PC柱30には、梁主筋52が挿通されるシース管34が埋設されている。ここで、図2に示すように、梁主筋52の右端側は、右側のPC柱30のシース管34と右側のPC梁50のシース管54とに挿通され、その先端は、機械式継手56の中間部まで延びている。また、PC柱30には、不図示の柱主筋が埋設されており、該柱主筋が、下階のPC柱等に埋設された不図示の継手に挿入されている。
ここで、機械式継手56内において互いに突き合わされた左右の梁主筋52の隙間は十〜数十mm程度に設定されている。このため、PC柱30を下階のPC柱等に定着させる前は、PC柱30とPC梁50とを、右側へ十〜数十mm程度移動させることができる。
PC梁40には梁主筋42が埋設されている。この梁主筋42の右端側は、PC梁40の右端面から突出している。また、PC梁40の左端部には、シース管44が埋設され、PC梁40のシース管44よりも右側にはスリーブ式の機械式継手46が埋設されている。シース管44と機械式継手46とは、梁主筋42と同軸的に配されており、梁主筋42の左端部が、機械式継手46の中間部まで延びている。なお、架構10を施工している間、機械式継手46の中間部には、ストッパ48が仮設される。
また、シース管44には、接続鉄筋(雇い鉄筋)60が挿通され、この接続鉄筋60の右端部は、機械式継手46の中間部まで延びている。また、接続鉄筋60の左端部は、PC梁40の左端面から突出している。
PC柱20には、梁主筋42と接続される鉄筋22が埋設されている。また、PC柱20には、不図示の柱主筋が埋設されており、該柱主筋が、下階のPC柱等に埋設された不図示の継手に挿入されている。
ここで、接続鉄筋60の左端部と鉄筋22の右端部とは、機械式継手70により締結されている。図3は、機械式継手70を拡大して示す側面図であり、図4は、機械式継手70を拡大して示す断面図である。これらの図に示すように、機械式継手70は、接続鉄筋60の左端部に設けられたネジ部71と、鉄筋22の右端部に設けられたネジ部72と、ネジ部71、72にそれぞれ螺合したロックナット73、74と、ネジ部71、72の双方に螺合したカプラーナット75と、ネジ部71の基端部、ネジ部72の基端部にそれぞれ形成されたバリ76、77とを備えている。
ロックナット73、74は、外形が六角等の多角形や円形等であるナットであり、カプラーナット75は、外形が六角等の多角形である長尺のナットである。また、バリ76、77は、それぞれネジ部71、72よりも大径のフランジ部であり、バリ76は、ネジ部71の基端側へのロックナット73の移動を制限し、バリ77は、ネジ部72の基端側へのロックナット74の移動を制限する。
接続鉄筋60側のロックナット73をバリ76に当接させ、カプラーナット75をロックナット73に当接させ、鉄筋22側のロックナット74をカプラーナット75に当接させた状態で、ロックナット73、74をレンチで締め込むことにより、機械式継手70は締結状態となる。
図5は、PC梁40とPC柱20との接合部を拡大して示す立面断面図である。この図に示すように、接続鉄筋60は、PC梁40のシース管44と機械式継手46との中に挿し込まれた状態であり、機械式継手70により鉄筋22と接続される前は、左右に移動させることができる。
ここで、架構10を建方している間、機械式継手46の中間部には、ストッパ48が仮設されており、接続鉄筋60の右側への移動が制限される。接続鉄筋60の右端部をストッパ48に当接させた状態で、接続鉄筋60の左端側は、PC梁40の左端部から数十mm程度突出する。
また、PC梁40の左端には、周縁部を残して数十mm程度凹んだ凹部41が形成されている。また、PC柱20の右端にも、数十mm程度凹んだ凹部21が形成されている。ここで、凹部21の深さは、ロックナット73の高さ程度に設定されている。
図6から図10は、PC柱20とPC梁40との接合方法を説明するための立面断面図である。図6に示すように、まず、PC梁50とPC柱30とを建て込む工程を実施し、次に、PC梁40を右側へ水平に移動させることにより、梁主筋42を、PC柱30のシース管34とPC梁50のシース管54と機械式継手56とに挿入する工程を実施する。
この工程は、PC柱30を下階のPC柱等に定着させることなく実施する。また、この工程では、図中矢印で示すように、PC梁50とPC柱30とを図中破線で示す正規位置よりも右側に寄せておく。この際のPC梁50とPC柱30との右側へのシフト量は、機械式継手56内における左側の梁主筋52と仮設のストッパとの隙間長(十〜数十mm程度)と同量である。また、図中矢印で示すように、PC梁40を正規位置よりも右側へ寄せておく。この際のPC梁40の右側へのシフト量は、機械式継手56内における梁主筋42と仮設のストッパとの隙間長(数十mm程度)と、PC柱30のシフト量とを合計した量である。
次に、PC柱20を下階のPC柱等の上に建て込む工程を実施する。この工程では、PC柱20を垂直に下降させ、PC柱20の柱主筋を下階のPC柱等の継手に挿入する。この際、PC柱20を、十〜数十mm程度、正規位置よりも左側に寄せて建て込むことにより、PC梁40とPC柱20との隙間を拡大する。また、PC梁40、50、及びPC柱30を正規位置よりも右側へ寄せて建て込んだことにより、PC梁40とPC柱20との隙間は、そのシフト量だけ拡大されている。また、接続鉄筋60は、機械式継手46内の仮設のストッパ48に当接するまで右側へ寄せられている。
この状態で、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との距離が、接続鉄筋60のPC梁40の左端部からの突出量よりも大きくなるように、PC梁40、50及びPC柱30のシフト量や、ストッパ48の仮設位置や、接続鉄筋60の長さ等が設定されている。これにより、PC柱20を下階のPC柱等の上に下降させる際に、PC柱20と接続鉄筋60とが干渉することを防止できる。
次は、図7に示すように、PC梁40とPC柱20とを接合する工程を実施する。この工程では、まず、接続鉄筋60をPC柱20側へ移動させると共に、接続鉄筋60側のネジ部71の軸心と鉄筋22側のネジ部72の軸心との位置合わせを行う。
ここで、当該工程を実施する前に、機械式継手70を次のように設定する。まず、カプラーナット75は、鉄筋22側のネジ部72に螺合させる。また、カプラーナット75は、鉄筋22側のロックナット74に当接させる。この状態で、カプラーナット75の右端部が、PC柱20の凹部21とおおよそ面一となるように、カプラーナット75及びロックナット74の位置が設定されている。また、接続鉄筋60側のロックナット73は、接続鉄筋60側のバリ76に当接させる。即ち、ロックナット73は、最大限、右側に寄せておく。
次は、機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71をカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。以上の締結作業を、作業員が、PC柱20とPC梁40との隙間に手を入れて行う。なお、凹部21の深さが、接続鉄筋60側のロックナット73の高さ程度に設定されていることにより、ロックナット73がPC柱20の右端面から突出することが防止されている。
次は、図8に示すように、PC梁40、50とPC柱30とを、左側へ移動させ、PC柱20を右側へ移動させる工程を実施する。この工程では、上述のPC梁50とPC柱30とを建て込む工程を実施する前に、PC梁40、50とPC柱20、30とをシフトさせた方向の逆方向へ、シフト量と同量だけ移動させる。これにより、PC梁40、50とPC柱20、30とを正規位置に配置する。
その後、シース管34、54、機械式継手46、56、及び機械式継手70の周囲にグラウトを注入することにより、梁主筋42、52が、シース管34、54、機械式継手56に定着させ、接続鉄筋60が、シース管44、機械式継手46、機械式継手70に定着させる。また、PC柱20、30を下階のPC柱等に定着させる。また、PC梁40の凹部41とPC柱20の凹部21にグラウトを充填する。
以上のようにして、PC柱20、30とPC梁40、50とが接合されて架構10が建方される。
ここで、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法では、PC梁40、PC柱20、30を建て込む際に、接続鉄筋60を正規位置よりも右側へ寄せておき、接続鉄筋60のPC梁40の左端部からの突出量を、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との距離よりも小さくしている。これにより、PC梁40を建て込んだ後、PC柱20を垂直に降下させて下階のPC柱等の上に建て込むことができる。
そして、PC梁40、PC柱20を建て込んだ後、接続鉄筋60をPC梁40から引き出してPC柱20に埋設された鉄筋22と機械式継手70により継手する。この作業では、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との間から手を入れて接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60の左端部をカプラーナット75に螺合させる。
以上により、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法によれば、現場での大掛かりなコンクリートの打設を伴うことなく、また、PC柱20を建て込んだ後に建物外側から接続鉄筋を挿入する工程を伴うこともなく、軸方向一端をPC柱30に接合されたPC梁40と、PC柱20とを接合できる。
また、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法では、PC梁40、PC柱20、30を建て込む際に、PC梁40、50とPC柱30とを正規位置よりもPC柱20の反対側へ寄せておき、PC柱20を正規位置よりもPC梁40の反対側へ寄せている。これにより、PC梁40の左端部とPC柱20との右端部との距離を拡大でき、接続鉄筋60を鉄筋22に機械式継手70により継手する作業スペースを拡大できる。従って、機械式継手70による継手作業の作業性を向上できる。
また、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法では、二重ナット構造の機械式継手70により接続鉄筋60と鉄筋22とを継手している。これにより、接続鉄筋60と鉄筋22との緩み止めの効果を向上でき、以って、接続鉄筋60のカプラーナット75との螺合長をより短くできる。従って、建て込みの際における接続鉄筋60のPC梁40の左端部からの突出量を、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との距離よりも小さくすると共に、機械式継手70による接続鉄筋60と鉄筋22との連結強度を確保することを、容易になし得る。
また、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法では、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部とに互いに対向して凹部41、21を形成したことにより、機械式継手70により接続鉄筋60と鉄筋22とを継手する作業スペースを拡大できる。従って、機械式継手70による継手作業の作業性を向上できる。
なお、本実施形態では、PC梁40、50とPC柱30とを正規位置よりも左側へ寄せ、PC柱20を正規位置よりも右側へ寄せることにより、PC梁40とPC柱20との隙間を拡大させた。しかし、接続鉄筋60を右側へ寄せるだけで、接続鉄筋60のPC梁40の左端部からの突出量が、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との距離よりも小さくなる場合には、PC梁40、50とPC柱20、30とを正規位置に建て込んでもよい。
また、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁40に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC柱20の接続鉄筋22に螺合させた状態で、PC梁40とPC柱20とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC柱20に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁40の梁主筋42に螺合させた状態で、PC梁40とPC柱20とを建て込んでもよい。
また、PC柱20、30の長さは、1階分の長さとしてもよく、複数階分の長さとしてもよい。さらには、1階分に満たない長さのPC柱20、30を積み上げることにより、1階分の長さの柱を構築してもよい。
図9は、他の実施形態に係る架構におけるPC柱20とPC梁40との接合部を拡大して示す立面断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る架構では、上記実施形態のネジ式の機械式継手70、スリーブ式の機械式継手46に替えてネジ式の機械式継手90A、90Bを用い、接続鉄筋60に替えてボルト93を用いている。また、シース管44内には機械式継手70Aによりボルト93に継手される鉄筋61が挿入されている。
機械式継手90Aは、鉄筋61の左端に結合されたスリーブ91と、ボルト93に固定された固定ナット94とを備えている。また、機械式継手90Bは、鉄筋22の右端に結合されたスリーブ92と、ボルト93に螺合した移動ナット95とを備えている。スリーブ91は、シース管44内に配され、スリーブ92は、PC柱20の左端に埋設されている。固定ナット94は、スリーブ91に当接し、移動ナット95は、スリーブ92に当接している。
ここで、ボルト93の左端部とスリーブ92のネジ部の最奥部との間、固定ナット94と移動ナット95とは、離間されている。このため、図10に示すように、機械式継手90により接続鉄筋60を鉄筋22に締結する前の状態では、ボルト93を、固定ナット94と移動ナット95との距離分あるいはボルト93の左端部とスリーブ92のネジ部の最奥部との距離分だけ、PC柱20側へ移動させることができる。これにより、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との距離を、ボルト93のPC柱20の右端部からの突出量よりも大きくなるように設定することが可能となる。
図10から図12までは、PC梁40とPC柱20とを接合する工程を示す立面断面図である。図10に示すように、まず、ボルト93の軸心とスリーブ91の軸心との位置合わせを行う。
ここで、当該工程を実施する前に、機械式継手90A、90Bを次のように設定する。まず、ボルト93は、PC柱20に埋設されたスリーブ92のネジ部に捩じ込んでおく。また、移動ナット95は、スリーブ92と固定ナット94とに当接させておく。
次は、機械式継手90A、90Bを締結させる。この締結作業では、図11に示すように、ボルト93を回転させてPC梁40側のスリーブ91に螺合させる。この際、固定ナット94が、スリーブ91に当接するまで、ボルト93をスリーブ91の奥側へ移動させる。次に、図12に示すように、移動ナット95を回転させてスリーブ92側に移動させ、スリーブ92に当接させる。この状態で、固定ナット94と移動ナット95とを所定トルクで締め付ける。以上の締結作業を、作業員が、PC柱20とPC梁40との隙間に手を入れて行う。
以上、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法では、接続部材としてのボルト93を、その軸方向に移動可能にPC梁40に挿入しておき、ボルト93をPC梁40から離間させた状態で、PC柱20とPC梁40とを建て込む。そして、ボルト93をPC梁40に接近させてPC梁40の鉄筋61にネジ式の機械式継手90Aにより継手する。また、ボルト93をネジ式の機械式継手90BによりPC柱20の鉄筋22に継手する。 以上により、現場での大掛かりなコンクリートの打設を伴うことなく、また、PC柱20を建て込んだ後に建物外側から接続鉄筋を挿入する工程を伴うこともなく、軸方向一端をPC柱30に接合されたPC梁40と、PC柱20とを接合できる。
図13及び図14は、他の実施形態に係る架構におけるPC柱20とPC梁40との接合部を拡大して示す立面断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る架構では、上記実施形態におけるスリーブ式の機械式継手46に替えてネジ式の機械式継手80を用いている。この機械式継手80は、シース管44内に配されている。
機械式継手80は、梁主筋42の左端に結合されたスリーブ81と、接続鉄筋60の右端に結合されたスリーブ82と、スリーブ81、82に螺合したボルト83と、ボルト83に螺合したナット84、85とを備えている。スリーブ81のネジ部の長さは、スリーブ82のネジ部の長さよりも長く設定されている。また、ナット84は、スリーブ81に当接し、ナット85は、スリーブ82に当接している。また、ボルト83は、スリーブ82のネジ部の最奥部まで捩じ込まれ、スリーブ81のネジ部の先端部まで捩じ込まれている。
ここで、ボルト83の右端部とスリーブ81のネジ部の最奥部との間、ナット84とナット85とは、離間されている。このため、図14に示すように、機械式継手70により接続鉄筋60を鉄筋22に締結する前の状態では、接続鉄筋60を、ナット84とナット85との距離分あるいはボルト83の右端部とスリーブ81のネジ部の最奥部との距離分だけ、PC柱20の反対側へ移動させることができる。これにより、上記実施形態と同様、PC梁40の左端部とPC柱20の右端部との距離を、接続鉄筋60のPC梁40の左端部からの突出量よりも大きくなるように設定することが可能となる。
図15は、他の実施形態に係る架構100を示す立面断面図である。この図に示すように、架構100は、柱部120Cと梁部120Bとが一体化されたPC部材120と、PC柱30と、PC梁40、50とを備える。PC部材120の柱部120Cは、建物の最外部に配置されている。また、PC部材120の梁部120Bは、PC梁40と接合されている。
PC部材120には、接続鉄筋60と接続される鉄筋122が埋設されている。鉄筋122の右端部は、梁部120Bの右端部まで延びている。また、柱部120Cには、不図示の柱主筋が埋設されており、該柱主筋が、下階のPC柱等に埋設された不図示の継手に挿入される。
また、上記実施形態に係る架構10と同様、接続鉄筋60と鉄筋122とは、機械式継手70により締結されている。鉄筋122の右端部にはネジ部72が形成され、該ネジ部72には、ロックナット74とカプラーナット75が螺合している。
本実施形態に係る架構100も上記実施形態に係る架構10と同様の方法で建方される。なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁40に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC部材120の接続鉄筋122に螺合させた状態で、PC梁40とPC部材120とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC部材120に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁40の梁主筋42に螺合させた状態で、PC梁40とPC部材120とを建て込んでもよい。
図16は、他の実施形態に係る架構200を示す立面断面図である。この図に示すように、架構200は、PC柱20と、PC柱30と、PC梁240、250とを備える。PC梁250には梁主筋252が埋設されている。この梁主筋252の左端側には、機械式継手80が連結されている。機械式継手80は、シース管54内に配されている。
PC柱30のシース管34内には、接続鉄筋210が配筋されている。接続鉄筋210の右端側は、機械式継手80に連結されており、接続鉄筋210の左端側は、PC柱30の左端面から突出している。
ここで、接続鉄筋210の左端側をPC柱30の左端面から突出させた状態では、機械式継手80のボルト83の右端部とスリーブ81のネジ部の最奥部、及びナット84とナット85とは離間され、その離間距離の分だけ、接続鉄筋210を正規位置よりも右側に寄せることができる。
また、PC梁240には梁主筋242が埋設されている。梁主筋242の右端部と接続鉄筋210の左端部とは、機械式継手70により締結されている。接続鉄筋210の左端部にはネジ部71が形成され、梁主筋242の右端部にはネジ部72が形成されており、カプラーナット75がネジ部71、72に螺合し、ロックナット73がネジ部71にロックナット74がネジ部72に螺合している。
また、梁主筋242の左端部には機械式継手80が連結されている。この機械式継手80は、シース管44内に配されている。また、シース管44内には接続鉄筋60が配されている。接続鉄筋60の右端側は、機械式継手80に連結されており、接続鉄筋210の左端側は、PC梁240の左端部から突出している。
ここで、接続鉄筋60の左端側をPC梁240の左端面から突出させた状態では、機械式継手80のボルト83の右端部とスリーブ81のネジ部の最奥部、及びナット84とナット85とが離間し、その離間距離の分だけ、接続鉄筋60を正規位置より右側に寄せることができる。
図17から図19までは、PC柱20とPC梁240との接合方法を説明するための立面断面図である。図17に示すように、まず、PC梁250とPC柱20、30とを建て込む工程を実施する。この工程では、接続鉄筋210をPC柱30のシース管34とPC梁250のシース管54とに挿入し、機械式継手80に連結する。
ここで、接続鉄筋210を機械式継手80に連結する前の状態では、ボルト83をスリーブ81に螺合させ、ナット84、85をボルト83に螺合させておく。また、接続鉄筋210のPC柱30の左端部からの突出量が、PC柱30の左端部とPC梁240の右端部との距離よりも小さくなるように、ボルト83をスリーブ81のネジ部の最奥部まで挿入すると共に、ナット84をスリーブ81に当接させ、ナット85をナット84に当接させておく。
次は、図18に示すように、PC梁240を垂直に降下させ、PC梁240の左右両側の機械式継手70の位置合わせをする。この際、接続鉄筋60のPC梁240の左端部からの突出量が、PC梁240の左端部とPC柱20との右端部との距離よりも小さくなるように、梁主筋242と接続鉄筋60とを継手する左側の機械式継手80を、右側の機械式継手80と同様に設定しておく。
ここで、接続鉄筋210のPC柱30の左端部からの突出量が、PC柱30の左端部とPC梁240の右端部との距離よりも小さく、また、接続鉄筋60のPC梁240の左端部からの突出量が、PC梁240の左端部とPC柱20の右端部との距離よりも小さい。これにより、PC梁240を、既に建て込まれたPC柱20とPC柱30との間に挿入できる。
次は、図19に示すように、PC梁240の左右両側の機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋210を回転させて接続鉄筋210側のネジ部71を梁主筋242側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋210側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。また、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71を鉄筋22側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。
その後、シース管34、44、54内及び機械式継手70の周囲にグラウトを注入することにより、接続鉄筋210を、シース管34、54、機械式継手70、80に定着させ、接続鉄筋60を、シース管44、機械式継手70、80に定着させる。
ところで、PC梁240に生じる曲げ応力は、両端部において最大となり、その両端部においてPC梁240とPC柱20、30とが接合されている。このため、本実施形態に係る架構200では、PC梁240とPC柱20、30との接合強度を高めるために、PC梁240の両端部においてスリーブ継手ではなく機械式継手80により梁主筋242と接続鉄筋60、210とを継手している。
なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁240に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC柱20の接続鉄筋22に螺合させた状態で、PC梁240とPC柱20とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC柱20に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁240の梁主筋242に螺合させた状態で、PC梁240とPC柱20とを建て込んでもよい。
図20は、他の実施形態に係る架構300を示す立面断面図である。この図に示すように、架構300は、左右一対のPC柱302と、PC柱302上に建て込まれた左右一対のPC仕口部320と、左右のPC仕口部320の間に建て込まれたPC梁340とを備える。
PC梁340には梁主筋342が埋設されている。また、PC梁340の左右両端部には、シース管44が埋設され、このシース管44内に機械式継手80が配されている。左右両側の機械式継手80は、梁主筋342に連結されている。
また、左右両側のシース管44内には、接続鉄筋60が配されている。接続鉄筋60の左右方向内側は、機械式継手80に連結されており、接続鉄筋60の左右方向外側は、PC梁340の左右両端部から突出している。
ここで、接続鉄筋60をPC梁340の左右端部から突出させた状態では、機械式継手80のボルト83とスリーブ81のネジ部の最奥部、及びナット84とナット85とが離間し、その離間距離の分だけ、接続鉄筋60を左右方向内側に移動させることができる。
また、PC仕口部320には接続鉄筋60と接続される鉄筋22が埋設されている。鉄筋22は、PC仕口部320のPC梁340側の端部まで延びており、機械式継手70により、接続鉄筋60と連結されている。
図21及び図22は、PC柱320とPC梁340との接合方法を説明するための立面断面図である。図21に示すように、まず、左右一対のPC仕口部320を左右一対のPC柱302上に建て込む工程を実施する。左側の接続鉄筋60のPC梁340の左端部からの突出量が、PC梁340の左端部とPC仕口部320の右端部との距離より小さくなるように、左側の接続鉄筋60を正規位置よりも右側へ寄せておく。また、右側の接続鉄筋60のPC梁340の右端部からの突出量が、PC梁340の右端部とPC仕口部320の左端部との距離より小さくなるように、右側の接続鉄筋60を正規位置よりも左側へ寄せておく。
次に、PC梁340をPC仕口部320とPC仕口部330との間に建て込む工程を実施する。この工程では、PC梁340を垂直に降下させ、左右両側の機械式継手70の位置合わせをする。この際、左側の接続鉄筋60のPC梁340の左端部からの突出量が、PC梁340の左端部とPC仕口部320の右端部との距離より小さく、また、右側の接続鉄筋60のPC梁340の右端部からの突出量が、PC梁340の右端部とPC仕口部320の左端部との距離より小さいことから、PC梁340を左右のPC仕口部320の間に挿入することができる。
次は、図22に示すように、PC梁340の左右両側の機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71を鉄筋22側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。
その後、シース管44内及び機械式継手70の周囲にグラウトを注入することにより、接続鉄筋60を、シース管44及び機械式継手70、80に定着させる。
なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁340に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC仕口部320の接続鉄筋22に螺合させた状態で、PC梁340とPC仕口部320とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC仕口部320に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁340の梁主筋342に螺合させた状態で、PC梁340とPC仕口部320とを建て込んでもよい。
図23は、他の実施形態に係る架構400を示す立面断面図である。この図に示すように、架構400は、PC柱402、404と、仕口部420Aと梁部420Bとが一体化されたPC部材420と、仕口部430Aと梁部430B、430B´とが一体化されたPC部材430と、PC梁440とを備える。
PC部材420の仕口部420AとPC柱402とは建物の最外部に配置されており、仕口部420AはPC柱402に定着されている。また、PC部材430の仕口部430AとPC柱404とは建物の内側に配置されており、仕口部430AはPC柱404に定着されている。
また、PC部材420の梁部420Bは、仕口部420Aから右側へ延びており、PC部材430の梁部430Bは、仕口部430Aから左側へ延びている。また、PC部材430の梁部430B´は、仕口部430Aから右側へ延びている。PC梁40は、梁部420Bと梁部430Bとの間に建て込まれている。
PC梁440には、梁主筋442が埋設されている。また、PC部材420、430には、それぞれ梁主筋442と連結される鉄筋22、432が埋設されている。梁主筋442の左端部と鉄筋22の右端部とは、上記実施形態に係る架構300と同様、接続鉄筋60、機械式継手70、80により連結されている。また、梁主筋442の右端部と梁主筋432の左端部とは、PC部材430の梁部430Bに埋設された機械式継手436により連結されている。
図24(A)(B)は、PC部材420とPC梁440との接合方法を説明するための立面断面図である。図24(A)に示すように、まず、右側のPC部材430を右側のPC柱404上に建て込む。次に、PC梁420を右側へ水平に移動させて梁主筋442をPC部材430の機械式継手436に挿入する。そして、左側のPC部材420を右側のPC柱402上に下降させて建て込む。この際、接続鉄筋60のPC梁440の左端部からの突出量が、PC梁440の左端部とPC部材420の右端部との距離よりも小さくなるように、接続鉄筋60を正規位置よりも右側に寄せておく。
次は、図24(B)に示すように、機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71を鉄筋22側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。
その後、PC部材420とPC梁440との間、PC梁440とPC部材430との間にグラウトを注入することにより、接続鉄筋60を、機械式継手70、80に定着させ、梁主筋442を機械式継手436に定着させる。
なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁440に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC部材420の接続鉄筋22に螺合させた状態で、PC梁440とPC部材420とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC部材420に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁440の梁主筋442に螺合させた状態で、PC梁440とPC部材420とを建て込んでもよい。
図25は、他の実施形態に係る架構500を示す立面断面図である。この図に示すように、架構500と上記実施形態に係る架構400との異なる点は、梁主筋442の右端部と鉄筋432の左端部とを、接続鉄筋60、機械式継手70、80により連結した点である。
図26(A)、(B)は、PC部材420とPC梁440との接合方法を説明するための立面断面図である。図26(A)に示すように、まず、左右のPC部材420、430を左右のPC柱402、404上に降下させて建て込む。また、PC梁420をPC部材420とPC部材430との間に降下させる。この際、左側の接続鉄筋60を、PC梁440の左端部からPC部材420の右端部まで突出しないように、右側へ寄せておく。また、右側の接続鉄筋60を、PC梁440の右端部からPC部材430の左端部まで突出しないように、左側へ寄せておく。
次は、図26(B)に示すように、PC梁440の左右の機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71を鉄筋22側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。
その後、PC部材420とPC梁440との間、PC梁440とPC部材430との間にグラウトを注入することにより、接続鉄筋60を、機械式継手70、80に定着させる。
なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁440に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC部材420、430の接続鉄筋22、432に螺合させた状態で、PC梁440とPC部材420、430とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC部材420に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁440の梁主筋442に螺合させた状態で、PC梁440とPC部材420、430とを建て込んでもよい。
図27は、他の実施形態に係る架構600を示す立面断面図である。この図に示すように、架構600と上記実施形態に係る架構500との異なる点は、PC梁440の左右両端部にシース管44、機械式継手46を埋設し、梁主筋442の左端部と鉄筋22の右端部、梁主筋442の右端部と鉄筋432の左端部とを、接続鉄筋60、機械式継手46、機械式継手70により連結した点である。
図28(A)、(B)は、PC部材420とPC梁440との接合方法を説明するための立面断面図である。図28(A)に示すように、まず、左右のPC部材420、430を、左右のPC柱402、404上に降下させて建て込む。また、PC梁420を、PC部材420とPC部材430との間に降下させる。この際、左側の接続鉄筋60を、PC梁440の左端部からPC部材420の右端部まで突出しないように、右側へ寄せておく。また、右側の接続鉄筋60を、PC梁440の右端部からPC部材430の左端部まで突出しないように、左側へ寄せておく。
次は、図28(B)に示すように、左右の機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71を鉄筋22側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。
その後、PC部材420とPC梁440との間、PC梁440とPC部材430との間にグラウトを注入することにより、接続鉄筋60を、機械式継手70、機械式継手46に定着させる。
なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁440に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC部材420、430の接続鉄筋22、432に螺合させた状態で、PC梁440とPC部材420、430とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC部材420に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁440の梁主筋442に螺合させた状態で、PC梁440とPC部材420、430とを建て込んでもよい。
図29は、他の実施形態に係る架構700を示す立面断面図である。この図に示すように、架構700は、PC柱20、30と、PC梁50、440と、PCブロック740とを備える。PCブロック740は、PC梁440とPC柱30との間に建て込まれている。
PCブロック740には、PCブロック740を貫通するシース管744が埋設されている。このシース管744、PC柱30に埋設されたシース管34、PC梁50に埋設されたシース管54及び機械式継手56には、接続鉄筋710が挿通されている。この接続鉄筋710の右端部は、機械式継手56によりPC梁50の梁主筋52に継手されている。また、接続鉄筋710の左端部は、機械式継手70によりPC梁440の梁主筋442に継手されている。
図30(A)〜(C)は、PC柱20とPC梁440との接合方法を説明するための立面断面図である。図30(A)に示すように、まず、接続鉄筋710を水平に右側へ移動させてシース管744、34、54及び機械式継手56に挿入する。
次は、図30(B)に示すように、PC梁440を、PC柱20とPCブロック740との間に降下させて建て込む。この際、接続鉄筋710の左端部がPCブロック740の左端部からPC梁440の右端部まで突出しないように、また、接続鉄筋60の左端部がPC梁440の左端部からPC柱20の右端部まで突出しないように、接続鉄筋710、60、PC梁50、PC柱30、及びPCブロック740を、正規位置よりも右側に寄せておく。
次は、図30(C)に示すように、左右の機械式継手70を締結させる。この締結作業では、接続鉄筋60を回転させて接続鉄筋60側のネジ部71を鉄筋22側のカプラーナット75に螺合させる。そして、接続鉄筋60側のロックナット73を、カプラーナット75に当接させた状態で、所定トルクで締め込む。
次は、PC梁440、PCブロック740、PC柱30、PC梁50を左側に移動させて正規位置に配置する。その後、PC柱20とPC梁440との間、PC梁440とPCブロック740との間、PCブロック740とPC柱30との間、PC柱30とPC梁50との間にグラウトを注入することにより、接続鉄筋60を、機械式継手70、シース管44、機械式継手46に定着させ、接続鉄筋710を、機械式継手70、シース管744、34、54、機械式継手56に定着させる。
なお、本実施形態では、接続鉄筋60をPC梁440に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC柱20の接続鉄筋22に螺合させた状態で、PC梁440とPCブロック740と、PC柱20、30とを建て込んだ。しかし、接続鉄筋60をPC柱20に挿入し、機械式継手70のカプラー75をPC梁440の梁主筋442に螺合させた状態で、PC梁440とPCブロック740とPC柱20、30とを建て込んでもよい。