JP5915425B2 - コンクリート充填鋼管構造体および施工構造 - Google Patents

コンクリート充填鋼管構造体および施工構造 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート充填鋼管構造体および施工構造に関する。
従来、強度・剛性を高めるために鋼管にコンクリートを充填したコンクリート充填鋼管(CFT)が知られている。しかし、CFTは軸力の無い場合、中立軸の引っ張り側にあるコンクリートが強度・剛性に寄与しない。その場合、コンクリートを有効に作用させるためには、管軸方向にプレストレスを導入することが容易に考えられる。しかし、このようなコンクリート充填鋼管では、鋼管と内部に充填されるコンクリートとが、合成化しており、鋼管がプレストレスの抵抗となってプレストレスの導入効率が低下することから、プレストレス構造とすることが不適とされている。
ところで、鋼管とコンクリートとが合成化されていない構造として、アンボンドブレースが知られている。このアンボンドブレースは、軸力を負担する中心鋼材を鋼管とモルタルで拘束し、中心鋼材とモルタルとの間がアンボンド材によってアンボンド処理され、座屈拘束材となる鋼管とモルタルに軸力が加わらない構成となっている。
また、上述したアンボンドブレースと同様に、鋼管とコンクリートとの間をアンボンド処理した鋼管構造が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、鋼管内にコンクリートを充填して構成される鋼管部材において、硬化したコンクリートに対して、鋼管の内周面にエポキシ系樹脂等の所定時間潤滑効果を有する経時硬化性のアンボンド剤を塗布し、充填したコンクリートが硬化して鋼管と一体化する前に鋼管の外側に設けられたPC鋼棒またはPCケーブルによって軸方向のプレストレスを付与する構成について記載されている。
特開2001−262563号公報
すなわち、従来の構造のうち、プレストレスの導入が不適とされる従来のコンクリート充填鋼管に対して、上記アンボンドブレースの構造を適用して非合成化構造とすると、軸方向にプレストレスを導入する際、鋼管とコンクリートとが一体化されていないので、コンクリートのみに軸力を負担させることができる。しかしながら、鋼管とコンクリートとが合成化されていないので、単なる重ね梁の構造となり、コンクリート充填鋼管としての十分な剛性が得られないという問題があった。
また、特許文献1の鋼管の場合、アンボンド剤が経時硬化性であり、時効により硬化し、鋼管と鋼管部材とが合成化してしまう。そのため、硬化後にプレストレスを導入すると、鋼管がプレストレスの抵抗となるため、プレストレスの導入効率が低下することとなり、上述したコンクリート充填鋼管にプレストレスを導入する場合と同様に、プレストレス構造とするのが不適となる。
そのため、鋼管とコンクリートとの合成化を図りつつ、コンクリートに効率よくプレストレスを導入することをバランスよく達成できる構成が求められており、その点で改良の余地があった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、鋼管部材とコンクリートとの合成化を図りつつ、コンクリートに効率よくプレストレスを導入することで、鋼管全体の剛性と強度を効果的に高めることができるコンクリート充填鋼管構造体および施工構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート充填鋼管構造体では、雄型継手と、雄型継手に管軸方向に挿入される雌型継手と、による嵌合構造を有する接合部を、少なくとも1以上管軸方向に有する鋼管部材と、鋼管部材の内部に充填されたコンクリートと、コンクリートに管軸方向のプレストレスを付与するPC部材と、を備えたコンクリート充填鋼管構造体であってPC部材の緊張により付与される軸力により、鋼管部材の接合部は、鋼管部材に、雄型継手と雌型継手同士の嵌合接合力に応じた低いプレストレスが、また、コンクリートに、嵌合接合力を超える高いプレストレスがそれぞれ導入されており、接合部以外では、コンクリートと鋼管部材とが一体化された合成構造体としてプレストレスが導入されていることを特徴としている。
また、本発明に係る施工構造では、上述したコンクリート充填鋼管構造体を用いたことを特徴としている。
本発明では、鋼管部材の内部に充填したコンクリートが硬化してから、PC部材を緊張してコンクリートに所定の軸力を与えてプレストレスを付与することができ、コンクリートと合成化された鋼管部材に対して管軸方向の圧縮応力(軸力)が作用する。このとき、これら鋼管部材の接合部が管軸方向に挿入による嵌合構造となっているので、与えられた軸力が接合部を構成する雄型継手と雌型継手同士の嵌合接合力を超えると、PC部材の緊張とともに双方の鋼管部材同士が管軸方向に相対的に移動する。そのことによって、鋼管部材に入った軸力は増えずに、コンクリートに入る軸力のみが増加することになる。そして、プレストレスがある程度まで導入されると、コンクリートが管軸方向に直交する径方向に膨張し、鋼管部材とコンクリートとの間の摩擦力が大きくなるので、鋼管部材とコンクリートとをより強固に合成化させることができる。しかも、プレストレスの導入によって接合部における雌型継手と雄型継手の間に働く面圧が増大するので、管軸回りの回転に対する耐力を向上させることができる。
また、鋼管部材がコンクリートに付与される前記圧縮応力の抵抗となるのを抑えることができ、鋼管部材とコンクリートに与えられる緊張力(軸力)の合計の増大を抑えることが可能となるので、硬化したコンクリートに対して効率よくプレストレスを導入することができ、鋼管部材の接合部における剛性を高めることができる。このように、本発明では、鋼管部材とコンクリートとの合成化を維持した状態で、プレストレスの効率化と、鋼管部材とコンクリートとの高剛性化と、を同時に達成することができる。
また、従来のようにアンボンド処理により鋼管部材とコンクリートとを一体化させない構成ではないので、高価なアンボンド材が不要となり、コストの増大を抑えることができる。しかも、アンボンド材を使用しないことにより、複雑で手間のかかる施工が不要になるという利点がある。
なお、鋼管部材の断面形状は閉断面でありさえすれば必ずしも円形である必要はなく、雌型継手を有する雌管の中に雄型継手を有する雄管が挿入することができれば、角型鋼管や溶接による箱型断面であっても、前記雌管と雄管との間に軸方向のずれを生じさせることができればよい。
また、本発明に係るコンクリート充填鋼管構造体では、接合部は、雌型継手がテーパ状に拡径され、雄型継手がテーパ状に縮径されていることが好ましい。
この場合、雄型継手と雌型継手とがそれぞれのテーパ面同士の嵌合により支圧接合となるので、管軸方向の接合力が大きくなるとともに、プレストレス導入時のように所定以上の軸力が与えられた場合には、互いのテーパ面で滑り作用が生じ、双方の鋼管部材同士を管軸方向に相対移動させることができる。
また、雌型継手および雄型継手がテーパ状になることにより、鋼管部材の雌管と雄管の一般部における管径を同一にすることが可能になる。
また、本発明に係るコンクリート充填鋼管構造体では、雄型継手の継手端部には、管軸方向に向けて突出する圧縮可能部材が設けられ、圧縮可能部材は、PC部材により付与されるプレストレスによって圧縮される構成とすることも可能である。
この場合には、コンクリートの充填圧力よりも大きく、その硬化したコンクリート強度よりも小さく、且つプレストレスの導入時の圧縮応力よりも小さい強度からなる圧縮可能部材を雄型継手の継手端部に設けておくことで、鋼管部材の内部に充填されたコンクリートにプレストレスを付与すると、圧縮可能部材が管軸方向に圧縮されて押し潰されるので、鋼管部材同士の管軸方向に相対的に移動し易くなり、効率よくプレストレスを導入することができる。また、圧縮可能部材の厚みや硬さを適宜設定することで、鋼管部材同士の移動量(変位量)を調整することができる。
また、本発明に係る施工構造では、接合部は、コンクリート充填鋼管構造体における管軸方向のうち、剛性を高めたい部分に選択的に配置されていることが好ましい。
この場合には、コンクリート充填鋼管構造体における最大曲げモーメントが加わる部分にプレストレスにより剛性を高められる接合部を配置することで、効果的に剛性の高い施工構造を設けることができる。
本発明のコンクリート充填鋼管構造体および施工構造によれば、鋼管部材とコンクリートとの合成化を図りつつ、コンクリートに効率よくプレストレスを導入することで、鋼管全体の剛性と強度を効果的に高めることができる。
本発明の実施の形態による鋼管構造体の構成を示す側面図である。 図1の鋼管構造体の要部を示す縦断面図である。 鋼管部材の接合部を示す縦断面図であって、接合前の状態を示す図である。 図1に示すA−A線断面図である。 鋼管部材の接合状態を示す縦断面図であって、(a)はプレストレス導入前の状態を示す図、(b)はプレストレス導入後の状態を示す図である。 実施例による検討結果を示す図である。 本実施の形態の変形例による接合部の状態を示す縦断面図であって、(a)はプレストレス導入前の状態を示す図、(b)はプレストレス導入後の状態を示す図である。
以下、本発明の実施の形態によるコンクリート充填鋼管構造体および施工構造について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態によるコンクリート充填鋼管構造体(以下、単に鋼管構造体1という)は、1箇所の接合部Tを有する鋼管部材2と、鋼管部材2の内部に充填されたコンクリート3と、コンクリート3に管軸O方向のプレストレスを付与するPC鋼材(PC部材)4と、を備えている。鋼管部材2の接合部Tは、雄型継手21Aと、この雄型継手21Aに対して管軸O方向に沿って挿入される雌型継手22Aと、による嵌合構造となっている。
ここで、上述した管軸Oは鋼管構造体1の中心軸であり、この管軸Oに直交する方向を径方向とする。また、本実施の形態では、鋼管構造体1の管軸Oが上下方向に向けて配置され、鋼管部材2の接合部Tにおいて、雄型継手21Aを有する鋼管が管軸Oに沿って下側に設けられ、雌型継手22Aを有する鋼管が管軸Oに沿って上側に設けられている。
図2に示すように、鋼管部材2は、管軸O方向の上端21a側部分において下方から上端21aに向かうに従い漸次縮径されるテーパ状の前記雄型継手21Aを有する雄側鋼管21と、管軸O方向の下端22b側部分において上方から下端22bに向かうに従い漸次拡径されるテーパ状の前記雌型継手22Aを有する雌側鋼管22と、を備えている(図3参照)。雄側鋼管21および雌側鋼管22は、それぞれ中空の円形断面鋼管であり、雄型継手21Aを雌型継手22Aに挿嵌させて上下方向に沿って直列に配置されている(図4参照)。接合部Tは、それぞれの雄型継手21Aの外周テーパ面21cと雌型継手22Aの内周テーパ面22c同士が互いに支圧されることにより接合されている。
なお、雄型継手21Aおよび雌型継手22Aとして、例えばスリップジョイント(ヨシモトポール社製)などを採用することができる。
PC鋼材4は、本実施の形態では両端4a、4bに雄ねじが形成されているPC鋼棒を使用し、鋼管断面の略中心において長手方向を上下方向に向けて配置されている。なお、PC鋼材4としては、PC鋼棒の他に、例えば鋼線、鋼より線などを採用することも可能である。
そして、PC鋼材4は、鋼管部材2内に管軸Oと同軸に配置されたシース管51内に挿通されるとともに、上下端のうち上端4aが雌側鋼管22の上端22aに上側定着部5Aによって定着され、下端4bが雄側鋼管21の下端21bに下側定着部5Bによって定着されている。なお、本実施の形態では、下側定着部5Bは雄側鋼管21に固定され、上側定着部5Aのみでプレストレスを導入する作業が行われる。
上側定着部5Aは、シース管51の上端51aに固定されており、PC鋼材4を挿通可能な第1支圧板52Aと、PC鋼材4の上端4aに介挿板54を介して螺合される第1ナット53Aと、を備えている。第1支圧板52Aは、外径が雌側鋼管22の上端22aにおける内径寸法よりも小さい円盤形状をなし、雌側鋼管22に対して非固定状態で設けられている。
下側定着部5Bは、シース管51の下端51bに固定されており、PC鋼材4を挿通可能な第2支圧板52Bと、PC鋼材4の下端4bに介挿板54を介して螺合される第2ナット53Bと、を備えている。第2支圧板52Bは、外径が雄側鋼管21の下端21bの外径寸法と同等の円盤形状をなし、雄側鋼管21に対して溶接などにより固定されている。
ただし、第2支圧板52Bは、必ずしも雄側鋼管21に対して固定される必要性はない。施工や設計の必要に応じて、第1支圧板52Aと同様、雄側鋼管21の内径よりも小さくして、コンクリートのみを押圧する構造にしてもよい。
鋼管構造体1では、上側定着部5Aにおいて、PC鋼材4を管軸O方向の上方に向けて引っ張って緊張力を与えた状態で第1ナット53Aを締め付けることで、第2支圧板52Bがコンクリート3の端部(下端)を拘束しているため、PC鋼材4の緊張力が第1ナット53A、介挿板54、および第1支圧板52Aを介してコンクリート3に伝達され、そのコンクリート3に圧縮応力(プレストレス)が付与されることになる。
次に、上述した鋼管構造体1を略下半分を地中に埋設される施工構造の施工方法と、鋼管構造体にプレストレスを導入する方法について、図面に基づいて説明する。
先ず、施工箇所の地盤において、図1に示す鋼管構造体1の略下半分が埋まるように地中に掘削穴(図示省略)を掘削しておく。
そして、図2に示すように、雄側鋼管21と雌側鋼管22を接合する。具体的には、雄側鋼管21の雄型継手21Aを雌側鋼管22の雌型継手22Aに挿入させる、或いは雄型継手21Aに対して雌型継手22Aを嵌入させることにより両鋼管21、22を管軸O方向に接合する。このとき、雄側鋼管21の上端21aおよび雌側鋼管22の下端22bの少なくともいずれかを例えばハンマー等で打ち込むことにより嵌合させ、双方の継手21A、22Bそれぞれのテーパ面21c、22c同士が当接し、管軸O方向に支圧接合された状態となる。なお、雄側鋼管21および雌側鋼管22は、後述するプレストレスに伴う移動量、すなわち移動変位P(図5(a)、(b)参照)を残した状態で接合される。
その後、第2支圧板52Bを雄側鋼管21の下端21bに固定するとともに、その第2支圧板52Bにシース管51の下端51bを固定し、そのシース管51を鋼管部材2の中空部に配設する。そして、シース管51の上端51aに第1支圧板52Aを固定した後、シース管51内にPC鋼材4を挿通させ、PC鋼材4の上端4aおよび下端4bそれぞれの雄ねじに介挿板54を介してナット53A、53Bを螺合させて締め付け、これにより上側定着部5Aと下側定着部5Bとが鋼管部材2にセットされる。なお、このセット作業は、施工箇所で行うことに限らず、例えば工場など施工箇所と離れた場所で組み立てた状態で施工箇所に搬入させるようにしてもよい。
次に、図1に示すように、施工箇所において、PC鋼材4がセットされた中空の鋼管部材2を、上側定着部5Aを上向きにした状態で予め施工しておいた前記掘削穴に埋設する。このとき、雄側鋼管21と雌側鋼管22との接合部Tは、本施工構造に最大の曲げモーメントが作用する地表面(図1に示す符号G)付近に位置されている。なお、本実施の形態の施工構造では、雄側鋼管21と雌側鋼管22との接合部Tが鋼管構造体1における管軸O方向のうち、剛性を高めたい部分に選択的に配置させることができ、鋼管構造体1における最大曲げモーメントが加わる部分にプレストレスにより剛性を高められる接合部Tを配置することで、効果的に剛性の高い施工構造を設けることができる。
次いで、図2に示すように、第1支圧板52Aの厚さ方向に貫通する図示しない注入孔より鋼管部材2内にコンクリート3を充填することで、鋼管部材2(雄側鋼管21および雌側鋼管22)と硬化したコンクリート3とを一体化させる。なお、コンクリート3の注入箇所は、第1支圧板52Aに設けられる前記注入孔に限定されず、適宜な位置を選定することができ、例えば第1支圧板52Aの外周部と雌側鋼管22の上端22aとの間の隙間を使用して注入しても良い。
次に、充填したコンクリート3が硬化した後、上側定着部5Aにおいて、図示しないセンターホールジャッキを用い、そのセンターホールジャッキを伸長させ、PC鋼材4を緊張し、上側定着部5Aの第1ナット53Aをさらに締め付けることで、第1支圧板52Aおよび第2支圧板52Bが硬化したコンクリート3を押圧して圧縮応力を与えることとなり、そのコンクリート3にプレストレスを導入することができる(図5(a)、(b)参照)。
このとき、図5(a)、(b)に示すように、圧縮応力を受けるコンクリート3と一体化された雄側鋼管2および雌側鋼管2にも管軸O方向の圧縮応力(軸力)が作用するが、これら雄側鋼管2および雌側鋼管2が管軸O方向に挿入による嵌合構造となっているので、上側に位置する雌側鋼管22は、図2に示すPC鋼材4の緊張とともに管軸O方向で雄側鋼管21側(矢印E方向の下方)に向けて移動変位Pをもって移動する。そのため、鋼管部材2自体がコンクリート3に付与される前記圧縮応力の抵抗となるのを抑制することができ、効率よくプレストレスを導入することができる。
なお,施工順序としては、PC鋼線4とシース管51を備えた雄側鋼管21を地中に埋設した後、PC鋼線4とシース管51を雌側鋼管22内に挿通させ、挿通した状態で雌側鋼管22を雄側鋼管21の上に乗せる形で、雌側鋼管22に雌側鋼管21を挿入した後、コンクリート3を打設することもできる。
次に、上述したコンクリート充填鋼管構造体および施工構造の作用について図面を用いて詳細に説明する。
図2に示すように、本実施の形態では、鋼管部材2の内部に充填したコンクリート3が硬化してから、PC鋼材4を緊張してコンクリート3に所定の軸力を与えてプレストレスを付与することができ、コンクリート3と合成化された鋼管部材2に対して管軸O方向の圧縮応力(軸力)が作用する。このとき、これら鋼管部材2の接合部Tが管軸O方向に挿入による嵌合構造となっているので、与えられた軸力が接合部Tを構成する雄型継手21Aと雌型継手22A同士の嵌合接合力を超えると、PC鋼材4の緊張とともに双方の雄側鋼管21と雌側鋼管22同士が管軸O方向に相対的に移動する。そのことによって、鋼管部材2に入った軸力は増えずに、コンクリート3に入る軸力のみが増加することになる。
そして、プレストレスがある程度まで導入されると、コンクリート3が径方向に膨張し、鋼管部材2とコンクリート3との間の摩擦力が大きくなるので、鋼管部材2とコンクリート3とをより強固に合成化させることができる。しかも、プレストレスの導入によって接合部Tにおける軸力が増大し、それに伴って雌側鋼管22と雄側鋼管21の間の面圧が増大するので、管軸O回りの回転に対する耐力を向上させることができる。
また、鋼管部材2がコンクリート3に付与される前記圧縮応力の抵抗となるのを抑えることができ、鋼管部材2とコンクリート3に与えられる緊張力(軸力)の合計の増大を抑えることが可能となるので、硬化したコンクリート3に対して効率よくプレストレスを導入することができ、鋼管部材2の接合部Tにおける剛性を高めることができる。
このように、本実施の形態では、鋼管部材2とコンクリート3との合成化を維持した状態で、プレストレスの効率化と、鋼管部材2とコンクリート3との高剛性化と、を同時に達成することができる。
また、従来のようにアンボンド処理により鋼管部材2とコンクリート3とを一体化させない構成ではないので、高価なアンボンド材が不要となり、コストの増大を抑えることができる。しかも、アンボンド材を使用しないことにより、複雑で手間のかかる施工が不要になるという利点がある。
また、鋼管部材2の、雌型継手22Aがテーパ状に拡径され、雄型継手21Aがテーパ状に縮径されており、雄型継手21Aと雌型継手22Aとがそれぞれのテーパ面21c、22c同士の嵌合により支圧接合となるので、管軸O方向の接合力が大きくなるとともに、プレストレス導入時のように所定以上の軸力が与えられた場合には、互いの上記テーパ面21c、22cで滑り作用が生じ、双方の雄側鋼管21と雌側鋼管22同士を管軸O方向に相対移動させることができる。
上述した本実施の形態によるコンクリート充填鋼管構造体および施工構造では、鋼管部材2とコンクリート3との合成化を図りつつ、コンクリート3に効率よくプレストレスを導入することで、鋼管全体の剛性と強度を効果的に高めることができる。
次に、上述した実施の形態によるコンクリート充填鋼管構造体および施工構造の効果を裏付けるための実施例について以下説明する。
(実施例)
図6に示すように、実施例は、本実施の形態の図2に示す接合部T(雄型継手21Aおよび雌型継手22Aによる嵌合構造)を有するプレストレスを導入した鋼管構造体1であり、比較例1はコンクリート充填鋼管(CFT)であり、比較例2はCFTにプレストレスを導入したものである。比較例1、2および実施例のそれぞれの鋼管部材には、JIS規格(JIS G 3444、一般構造用炭素鋼鋼管)のSKT540で、外径が267.4mm、肉厚が9.5mmの寸法のものを用いた。
そして、図6には、比較例1、2および実施例のそれぞれにおいて、断面内ひずみ分布、鋼管断面の応力分布、コンクリート断面の応力分布を示している。ここで、比較例1では、断面内ひずみε、鋼管断面の応力σ、およびコンクリート断面の応力σには、それぞれ圧縮側に「1a」を、引張側に「2a」の符号を付けている。また、比較例2では、断面内ひずみε、鋼管断面の応力σ、およびコンクリート断面の応力σには、それぞれ圧縮側に「1b」を、引張側に「2b」の符号を付けている。また、実施例では、断面内ひずみε、鋼管断面の応力σ、およびコンクリート断面の応力σには、それぞれ圧縮側に「1c」を、引張側に「2c」の符号を付けている。
図6に示すように、鋼管断面の圧縮側の応力を比較すると、σS1c(実施例)<σS1b(比較例2)<σS1a(比較例1)となり、本実施の形態の接合部Tを有する鋼管部材2の内側に充填したコンクリート3にプレストレスを導入した構成のものが、最も鋼管に作用する応力が小さくなっている。
また、表1は、導入軸力Nを比較例1で0kNとし、比較例2と実施例それぞれにおいて1000kNとしたときの、断面二次モーメントI(mm)と、降伏曲げモーメントMy(kN・m)を示している。なお、比較例2の場合には鋼管とコンクリートとの両方に軸力が作用し、実施例の場合にはコンクリートのみに軸力が作用するものとして検討した。なお、簡単のためPC鋼材による耐力・剛性への寄与度は無視している。
この結果、降伏曲げモーメントMyは、比較例1で129kN・m、比較例2で166kN・m、実施例で177kN・mとなり、実施例が最も大きくなることが確認できた。また、剛性についても、実施例は比較例1よりも大きくなっている。
Figure 0005915425
次に、上述した本発明のコンクリート充填鋼管構造体および施工構造による実施の形態の変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図7(a)に示すように、本実施の形態の変形例による鋼管構造体1A(コンクリート充填鋼管構造体)では、雄型継手21Aの継手端部(上端21a)に、管軸O方向に向けて突出するスペーサ6(圧縮可能部材)が設けられている。このスペーサ6は、例えば発泡スチロールなどでPC鋼材4(図2参照)により付与されるプレストレスによって圧縮可能な部材であって、コンクリート3の充填圧力よりも大きく、その硬化したコンクリート3のコンクリート強度よりも小さく、且つプレストレスの導入時の圧縮応力よりも小さい強度からなる部材から形成されている。
本変形例による鋼管構造体1Aでは、図7(b)に示すように、スペーサ6を雄型継手21Aの上端21aに設けておくことで、鋼管部材2の内部に充填されたコンクリート3にプレストレスを付与すると、スペーサ6が管軸O方向に圧縮されて押し潰されるので、雄側鋼管21と雌側鋼管22同士の管軸O方向に相対的に移動し易くなり、効率よくプレストレスを導入することができる。また、スペーサ6の厚みや硬さを適宜設定することで、雄側鋼管21と雌側鋼管22同士の移動量(移動変位P)を調整することができる。
以上、本発明によるコンクリート充填鋼管構造体および施工構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では鋼管部材2の雄型継手21と雌型継手22とからなる接合部Tを1箇所としているが、1箇所であることに限定されることはなく、複数箇所の接合部Tを備えた鋼管部材2、3本以上の鋼管を管軸O方向に直列に接合する鋼管構造体であってもよい。なお、複数箇所に接合部Tを設ける場合も、3本以上の鋼管同士を雄型継手21と雌型継手22によって嵌合により接合し、これら鋼管に共通に連通するPC鋼材4を緊張することで内部に充填されるコンクリート3にプレストレスを付与することができる。
また、本実施の形態では、雌側鋼管22を上側にし、雄側鋼管21を下側に配置しているが、これら鋼管21、22の順序を上下逆に配置することも可能である。また、本実施例では、管軸Oを上下方向に向けて鋼管構造体1を配置しているが、これに限らず、管軸Oを横方向(水平方向など)に向けて配置しても良い。
さらに、本実施の形態では、雄型継手21Aおよび雌型継手22Aのそれぞれが縮径、拡径されたテーパ形状をなし、それらテーパ面同士を嵌合させることにより、支圧接合する接合構造としているが、このような嵌合に制限されることはない。例えば継手部は、テーパ形状でなく互いに挿入により嵌合するストレート形状とすることも可能である。
また、鋼管部材2の内部に配置されるPC鋼材4の本数も、本実施の形態のように1本であることに限定されず、複数本を配置するようにしてもかまわない。そして、PC鋼材4を鋼管部材2に定着するための定着部(本実施の形態の上側定着部5A、および下側定着部5B)の構成においても、本実施の形態に限定されることはなく、鋼管部材2の外径、長さ、施工条件などに応じて、適宜な構造のものを採用することができる。また、本実施の形態のシース管51に代えて、コンクリートの付着を防止する油剤をPC鋼材に塗布するようにすることも可能である。
さらに、本実施の形態では、鋼管構造体1を用いた施工構造として、下側に配置される雄側鋼管21を管軸Oを上下方向に向けて地中に埋設させた構造としているが、これに限定されるものではない。本発明の施工構造として、落石防止工、防風柵、防雪柵、防音柵、スノーシェッド、ロックシェッド等の柱材、或いは建築物の梁、柱、トラス等、その他に架線柱など単独で剛性強度が必要な構造体に適用可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1 鋼管構造体(コンクリート充填鋼管構造体)
2 鋼管部材
3 コンクリート
4 PC鋼材(PC部材)
5A 上側定着部
5B 下側定着部
6 スペーサ(圧縮可能部材)
21 雄側鋼管
21A 雄型継手
22 雌側鋼管
22A 雌型継手
51 シース管
52A 第1支圧板
52B 第2支圧板
53A 第1ナット
53B 第2ナット
O 管軸
P 移動変位
T 接合部

Claims (5)

  1. 雄型継手と、該雄型継手に管軸方向に挿入される雌型継手と、による嵌合構造を有する接合部を、少なくとも1以上管軸方向に有する鋼管部材と、
    該鋼管部材の内部に充填されたコンクリートと、
    該コンクリートに管軸方向のプレストレスを付与するPC部材と、
    を備えたコンクリート充填鋼管構造体であって
    前記PC部材の緊張により付与される軸力により、
    前記鋼管部材の接合部は、前記鋼管部材に、前記雄型継手と雌型継手同士の嵌合接合力に応じた低いプレストレスが、また、前記コンクリートに、前記嵌合接合力を超える高いプレストレスがそれぞれ導入されており、
    前記接合部以外では、前記コンクリートと前記鋼管部材とが一体化された合成構造体としてプレストレスが導入されていることを特徴とするコンクリート充填鋼管構造体。
  2. 前記接合部は、前記雌型継手がテーパ状に拡径され、前記雄型継手がテーパ状に縮径されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート充填鋼管構造体。
  3. 前記雄型継手の継手端部には、管軸方向に向けて突出する圧縮可能部材が設けられ、
    該圧縮可能部材は、前記PC部材により付与されるプレストレスによって圧縮されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート充填鋼管構造体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンクリート充填鋼管構造体を用いたことを特徴とする施工構造。
  5. 前記接合部は、前記コンクリート充填鋼管構造体における管軸方向のうち、剛性を高めたい部分に選択的に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の施工構造。
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