JP5591746B2 - 平版印刷版原版及びそれに用いる感光性組成物 - Google Patents
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Description
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とする。このIR染料等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。
この課題を解決するために、特定の官能基を有する構造単位を含むポリマーを使用した感光性組成物や平版印刷版原版が提案されており(例えば、特許文献1、2参照)、耐薬品性が改良されたことが報告されている。しかしながら、これらポリマーを使用した感光性組成物を添加した平版印刷版では、現像時に該感光性組成物の凝集物が付着する(現像カス付着)という問題が生じている。
〔1〕支持体上に少なくとも1層の層からなる記録機能層を有し、前記記録機能層をなす層の同じ層もしくは異なる層に、アルカリ可溶性樹脂と、赤外線吸収剤と、塩基性化合物とを有する平版印刷版原版であって、
前記塩基性化合物が、pKa3〜14の酸性官能基と、pKa11〜18の共役酸をなす塩基性官能基とを有し、
前記塩基性化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする平版印刷版原版。
(酸性基:スルホンアミド基、置換スルホンアミド基、フェノール性ヒドロキシル基、チオフェノール性チオール基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる)
(ただし、前記塩基性化合物がポリマーであるものは除く。)
〔2〕前記塩基性化合物が下記一般式(II)、(III)、および(V)のいずれか、あるいは、式(IV)−1〜(IV)−5ならびに(V)−6および(V)−7のいずれかで表されることを特徴とする〔1〕に記載の平版印刷用原版。
〔4〕前記記録機能層が、上層、下層、及び下塗り層からなることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
〔5〕前記上層に赤外線吸収剤を含有することを特徴とする〔4〕に記載の平版印刷版原版。
〔6〕前記下層にアルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の平版印刷版原版。
〔7〕前記一般式(I)におけるL 4 が、炭素数1〜10の2価のアルキレン基、炭素数6〜20の2価のアリーレン基、酸素原子、窒素原子を含む連結基、またはそれらの組合せによる連結基である〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
〔8〕前記塩基性化合物が、グアニジン骨格、イソウレア骨格、またはイミノメチルアミノ骨格を有する〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
〔9〕前記塩基性化合物が下記各式のいずれかで表されることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
該感光性組成物は少なくとも塩基性化合物を含有し、前記塩基性化合物が、pKa3〜14の酸性官能基と、pKa11〜18の共役酸をなす塩基性官能基とを有し、
前記塩基性化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする感光性組成物。
(酸性基:スルホンアミド基、置換スルホンアミド基、フェノール性ヒドロキシル基、チオフェノール性チオール基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる)
(ただし、前記塩基性化合物がポリマーであるものは除く。)
〔11〕前記塩基性化合物が下記一般式(II)、(III)、および(V)のいずれか、あるいは、式(IV)−1〜(IV)−5ならびに(V)−6および(V)−7のいずれかで表されることを特徴とする〔10〕に記載の感光性組成物。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に少なくとも1層の層からなる記録機能層を有し、前記記録機能層をなす層の同じ層もしくは異なる層に、アルカリ可溶性樹脂と、赤外線吸収剤と、塩基性化合物とを含有する。そして、前記塩基性化合物が、pKa3〜14の酸性官能基と、pKa10〜18の共役酸をなす塩基性官能基とを有する。
すなわち、上記の酸性基を有する塩基性化合物は高無機性(炭素原子以外の原子を多く含むことを意味する。)であり、アルカリ可溶性樹脂(バインダーポリマー)に添加することで、組成物全体の有機性が低下する。結果として、UVインキおよび有機溶剤を含有する印刷周辺薬品に対する耐久性が向上したと考えられる。さらに、酸性基が存在することで、単に塩基性基が存在する化合物の適用に比し、アルカリ現像液に対する溶解性も同時に向上しており、現像カスの付着を効果的に防ぐことができたと考えられる。一方で、画像部のアルカリ現像液に対する耐久性(耐刷性)に関しては、上記塩基性化合物の適用により現像性が向上し、その相互作用として、例えばアルカリ可溶性樹脂として凝集性の強いアクリル樹脂や、ブチラール樹脂、ポリウレタン等を適用することを可能とし、現像性と耐刷性との高いレベルでの両立を図ることができる。以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき、詳細に説明する。
本発明に用いられる塩基性化合物は、pKaが3〜14と見積もられる酸性官能基と、共役酸としてpKaが11〜18と見積もられる塩基性官能基とを有する。
酸性官能基のpKaは、置換基の結合手にpKaに実質的に関与しない所定の原子ないし原子群(典型的には水素原子)が導入された化合物におけるpKaと定義する。酸性官能基のpKaは相対的に後記塩基性官能基との関係により定められればよく、後者よりpKaにおいて3〜15低いことが好ましく、4〜14低いことがより好ましい。酸性官能基のpKaの範囲は3〜14であるが、4〜13であることが好ましく、4〜11であることがより好ましい。ここでのpKaは、特に断らない限り、ACD/ChemSketchによる計算値とする。あるいは、日本化学会編「改定5版 化学便覧 基礎編」に掲載の値を参照してもよい。
塩基性官能基の共役酸のpKaは、その定義は上記のとおりであり、pKaの範囲は11〜18であるが、12〜17であることが好ましく、12〜16であることがより好ましい。
一般式(I)で表される化合物における酸性官能基については、そのpKaの見積もりの前提となる化合物としてA1−B(B:所定原子もしくは原子群)が定義され、そのBをメチル基とした具体例におけるpKaを上述した。塩基性官能基については、グアニジン骨格がその基にあたり、このpKaの見積もりのための化合物としてB1(B2)−N−(C=N−B1)−N−(B2)B1が想定される。このB1及びB2がHであるときその化合物はグアニジンであり、その共役酸のpKaは13.3である。B1がCH3、B2がHであるときその化合物は1,2,3−トリメチルグアニジンであり、その共役酸のpKaは13.9である。
L5は、炭素数1〜10(炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜6がより好ましい。)の2価のアルキレン基、炭素数6〜20(炭素数6〜15が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。)の2価のアリーレン基、酸素原子、窒素原子を含む連結基、またはそれらの組合せによる連結基を表す。なかでも、メチレン基、エチレン基、フェニレン基が好ましい。
A5は、酸性基を表す。好ましい基は上記A1と同様である。
L6は、炭素数1〜10(炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜6がより好ましい。)の2価のアルキレン基、炭素数6〜20(炭素数6〜15が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。)の2価のアリーレン基またはそれらの組合せによる連結基を表す。なかでも、メチレン基、エチレン基、フェニレン基が好ましい。
A6は、酸性基を表す。好ましい基は上記A1と同様である。
塩基性官能基については、イソウレア骨格がその基にあたり、このpKaの見積もりのための化合物としてB1−N=(C−O−B1)−N−(B2)B1が想定される。このB1及びB2がHであるときその化合物はイソウレアであり、その共役酸のpKaは17.3である。B1がCH3、B2がHであるときその化合物は1,2,3−トリメチルイソウレアであり、その共役酸のpKaは11.7である。
L7とL8は、互いに環を形成してもよく、炭素数1〜10(炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜6がより好ましい。)の2価のアルキレン基、炭素数6〜20(炭素数6〜15が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。)の2価のアリーレン基、酸素原子、窒素原子を含む連結基、またはそれらの組合せによる連結基を表す。
A7、A8は、酸性基を表す。好ましい基は上記A1と同様である。
塩基性官能基については、グアニジン骨格がその基にあたり、このpKaの見積もりのための化合物としてのグアニジン、1,2,3−トリメチルグアニジンの共役酸のpKaは一般式(I)における説明と同様である。
L9は、炭素数1〜10(炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜6がより好ましい。)の2価のアルキレン基、炭素数6〜20(炭素数6〜15が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。)の2価のアリーレン基、酸素原子、窒素原子を含む連結基、またはそれらの組合せによる連結基を表す。なかでも、メチレン基、エチレン基、フェニレン基が好ましい。
A9は、酸性基を表す。好ましい基は上記A1と同様である。
塩基性官能基については、イミノメチルアミノ骨格がその基にあたり、このpKaの見積もりのための化合物としてB1−N=(C−B1)−N−(B2)B1が想定される。このB1及びB2がHであるときその化合物はアミジンであり、その共役酸のpKaは11.3である。B1がCH3、B2がHであるときその化合物はジメチルアミジノメタンであり、その共役酸のpKaは12.8である。
以下に本発明に用いられる一般式(I)〜(V)で表される塩基性化合物の好ましい態様を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
酸性基を有する塩基性化合物の添加量としては、記録機能層の固形分の総量に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、十分な耐薬品性が得られ、上記上限値以下とすることで良好に現像を行うことができる。
同様の観点から、酸性基を有する塩基性化合物の含有量は、記録機能層全体のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1〜75質量%含有させるのが好ましく、1〜50質量%がさらに好ましい。
なお、本明細書において***化合物とは、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオン等を含む意味に用いる。典型的には、当該化合物及び/又はその塩を意味する。
前記特定塩基性化合物の塩に関しては、その対イオンとして、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオンなどが好適なものとして用いられる。
本発明の平版印刷版原版では、アルカリ可溶性樹脂を含有することで、赤外線吸収剤とアルカリ可溶性樹脂が有する極性基との間に相互作用が形成され、ポジ型の感光性を有する層が形成される。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。また、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂などもあげることができる。
上記酸性基を有する塩基性化合物と共存させる場合のアルカリ可溶性樹脂は、上記のうち、酸性基を有する塩基性化合物によって中和され得るカルボン酸基を有するものがより好適である。このようなアルカリ可溶性樹脂の主骨格としては、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アセタール樹脂、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂などが用いられる。特に、画像形成性、耐刷性、製造適性の観点から、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリウレタンが好ましい。その中でも、耐刷性、製造適性の観点から、アセタール樹脂、ポリウレタンがより好ましく、ポリウレタンが最も好ましい。
本発明において、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アリルエステル、など)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体を重合成分として有する共重合体のことを言う。カルボン酸基を含有するモノマー単位としては、特に限定されないが、特開2002−40652号公報、特開2005−300650号公報の〔0059〕〜〔0075〕に記載の構造が好ましく用いられる。(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位としては、特開2007−272134号公報の〔0061〕〜〔0084〕に記載の(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましく用いられる。米国特許6,358,669号明細書に記載のN−フェニルマレイミド及びメタクリルアミドをモノマー単位として含有する共重合体も好ましく用いられる。
以下に本発明に用いられる、酸性基を有する塩基性基と同一層で共存させるアクリル樹脂の好ましい態様を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明において、「ポリウレタン」とは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とヒドロキシル基を2つ以上有する化合物の縮合反応により生成されるポリマーのことをいう。
本発明において、酸性基を有する塩基性化合物と同一層で共存させるアルカリ可溶性樹脂としては、カルボン酸基を有するポリウレタンであれば特に限定されないが、特開2003−177533号公報、特開2004−170525号公報、特開2004−239951号公報、特開2004−157459号公報、特開2005−250158号公報記載の構造のポリウレタンが好ましく用いられる。
以下に本発明に用いられる酸性基を有する塩基性化合物と同一層で共存させるポリウレタンの好ましい態様について、ポリウレタンの原料として好適なポリオール成分であるマクロモノマーの具体例〔例示化合物(MM−1)〜(MM−24)〕を、作製に用いた連鎖移動剤、原料モノマーとその添加量(モル%)及び分子量を表示することにより例示するが、本発明はこれに制限されない。
上記カルボン酸基含有単位の好ましい具体例としては、下記の例が挙げられる。
中和され得るカルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の酸価としては、現像性と耐刷性の観点から、0.30mmol/g〜5.00mmol/gであることが好ましく、0.80mmol/g〜4.00mmol/gであることがより好ましく、1.50mmol/g〜3.00mmol/gであることが最も好ましい。
酸性基を有する塩基性化合物の、カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂に対する添加量(中和量)は、層間混合抑制、現像性、耐刷性の観点から、カルボン酸基100mol%に対し、10mol%〜100mol%であることが好ましく、15mol%〜80mol%であることがより好ましく、20mol%〜60mol%であることが最も好ましい。
[分子量・分散度の測定方法]
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の質量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられるが、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が好ましい。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対象となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3及びR4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
R25、R26、R27及びR28は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za-は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
赤外線吸収剤として特に好ましくは、以下に示すシアニン染料Aである。
画像記録層には、目的に応じてその他の添加剤を含有させることができる。
その他の成分としては、酸発生剤、酸増殖剤、現像促進剤、界面活性剤など、以下に述べる成分を用いることができる。
・酸発生剤
画像記録層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、上層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4 -、PF6 -、ClO4 -などが好ましい。
また、特開2008−195018公報の段落番号〔0036〕〜〔0045〕において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物を、本発明における酸発生剤として好適に用いることができる。
アジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
酸発生剤を上層に添加する場合の、好ましい添加量は、上層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
その他の成分として、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
画像記録層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
画像記録層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の画像記録層の全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2.0質量%が更に好ましい。
画像記録層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤及び着色剤としては、例えば、特開2009−229917号公報の段落番号〔0122〕〜〔0123〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも適用しうる。
これらの染料は、画像記録層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
画像記録層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、画像記録層の全固形分に対し、0.5〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
画像記録層層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、画像記録層層中に占める割合が0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版は、前記各成分を溶媒に溶解させて調製した感光性組成物(画像記録層塗布液)を、後述する支持体上に塗布することで形成される。必要に応じ支持体と画像記録層の間に後述する下塗層を塗布して設けてもよい。なお、本明細書において「組成物」というとき、複数の成分が実質的に均一に混合されたものであれば液状組成物に限定されず、ペースト状組成物、粉末状組成物を含む意味であり、広義には成形後の記録機能層ないしそれを構成する層を含む意味である。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。
この塗布液のうち、上記酸性基を有する塩基性化合物を含有するものを本発明の感光性組成物とする。本発明の感光性組成物の固形分に対する酸性基を有する塩基性化合物の添加量は、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜40質量%がより好ましく、0.05〜40質量%が更に好ましい。上記下限値以上とすることで、十分な耐薬品性を得ることができ、上記上限値以下とすることで良好に現像することができる。
画像記録層塗布液の各成分(添加剤を含む全固形分)の前記溶媒中の濃度としては1〜50質量%が好ましい。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層の塗布量(固形分)は用途によって異なるが、一般的に、0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録層の皮膜特性は低下する。
本発明に係る平版印刷版原版の画像記録層が重層構造をとる場合、その塗布量としては、支持体に近い側に設けられる下層の乾燥後の塗付量は、耐刷性確保と現像時における残膜発生抑制の観点から、0.5〜1.5g/m2の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2g/m2の範囲である。また上層の乾燥後の塗布量は0.05〜1.0g/m2の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.07〜0.7g/m2の範囲である。
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
陽極酸化処理を施されたアルミニウム表面は、必要により親水化処理が施される。
親水化処理としては、2009−175195号公報の〔0169〕に開示されている如き、アルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、フッ化ジルコン酸カリウム或いは、ポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
本発明においては、必要に応じて支持体と画像形成層との間に下塗層を設けることができる。下塗層に上記酸性基を有する塩基性化合物を含有させてもよい。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。下塗層に使用される化合物の詳細、下塗層の形成方法は、特開2009−175195号公報の段落番号〔0171〕〜〔0172〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用される。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2であることが好ましく、5〜100mg/m2であることがより好ましい。被覆量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施されて平版印刷版が作製される。すなわち、所望の画像様に露光された平版印刷版原版では、露光領域のアルカリ現像液に対する溶解性が向上し、現像により除去されて非画像部を形成し、残存した未露光部の画像記録層が平版印刷版の画像部となる。
平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザがより好ましい。中でも、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザ又は半導体レーザにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cm2であることが好
ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
・現像液
本発明の平版印刷版原版を用いた平版印刷版の製版方法はアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を含む。現像工程に使用されるアルカリ水溶液(以下、「現像液」ともいう。)は、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液であることが好ましく、pH9.0〜10.0であることがより好ましい。また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、及び、両性の界面活性剤のいずれも用いることができるが、既述のように、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
本発明の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20〜400μm、毛の長さは5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製において好適に用いられる自動処理機としては、現像部と乾燥部とを有する装置が用いられ、平版印刷版原版に対して、現像槽で、現像とガム引きとが行なわれ、その後、乾燥部で乾燥されて平版印刷版が得られる。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
<酸性基を有する塩基性化合物の合成>
(合成例1:II-9)
イソプロピルアルコール13.2gにジイソプロピルカルボジイミド6.31gを加え、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホンアミド10.0gを5分間かけて添加した。該懸濁液を80℃で3時間撹拌した。室温に冷却後、ジイソプロピルエーテル30gを加え、ろ過によって、生成した白色固体(II-9)が得られた。真空乾燥(40℃、1時間)を行ったのち、得られたII-9は15.8gであった(収率97%)。
(合成例2:II-10)
イソプロピルアルコール13.2gにジイソプロピルカルボジイミド6.31gを加え、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン6.90gを5分間かけて添加した。該懸濁液を80℃で3時間撹拌した。室温に冷却後、ジイソプロピルエーテル30gを加え、ろ過によって、生成した白色固体(II-10)をろ取した。真空乾燥(40℃、1時間)を行ったのち、得られたII-10は11.5gであった(収率88%)。
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS A 1050アルミニウム板をパミス−水懸濁液を研磨剤として回転ナイロンブラシで表面を砂目立てした。このときの表面粗さ(中心線平均粗さ)は0.5μmであった。水洗後、10%苛性ソーダ水溶液を70℃に温めた溶液中に浸漬して、アルミニウムの溶解量が6g/m3になるようにエッチングした。水洗後、30%硝酸水溶液に1分間浸漬して中和し、十分水洗した。その後に、0.7%硝酸水溶液中で、陽極時電圧13ボルト、陰極時電圧6ボルトの矩形波交番波形電圧を用いて20秒間電解粗面化を行い、20%硫酸の50℃溶液中に浸漬して表面を洗浄した後、水洗した。粗面化後のアルミニウムシートに、20%
硫酸水溶液中で直流を用いて多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。電流密度5A/dm2で電解を行い、電解時間を調節して、表面に質量4.0g/m2の陽極酸化皮膜を有する基板を作製した。この基板を100℃1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間処理して封孔率60%の基板(a)を作成した。基板(a)をケイ酸ナトリウム2.5質量%
水溶液で30℃10秒間処理して表面親水化を行った後、下記下塗り液1を塗布し、塗膜を80℃で15秒間乾燥し平版印刷版用支持体〔A〕を得た。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
・分子量2.8万の下記共重合体 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
得られた下塗り済の支持体〔A〕に、下記組成の感光液Iを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.3g/m2となるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の塗布液IIをワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.7g/m2となる赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。
(感光液I)
・表1記載のバインダーポリマー 3.5g
・表1記載の酸性基を有する塩基性化合物 表1記載の添加量
・エチルバイオレットの対アニオンを
6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.15g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 30g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 15g
・γ−ブチロラクトン 15g
・ノボラック樹脂 0.68g
(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、Mw8,000)
・赤外線吸収剤(上記シアニン染料A) 0.045g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 15.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 30.0g
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサーLP940H(商品名)を用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行った。これを、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロン(商品名)を用いて連続して印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。なお、耐刷性は、比較例(試料101)の耐刷数を1.0とした際の相対値として示した。テストパターンとしては、2cm×2cmのベタ画像(全面画像部)を用いた。印刷物の目視評価により、印刷部にカスレやヌケが発生した枚数を刷了枚数とした。
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter(商品名)にて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(商品名)(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサーLP940H(商品名)を用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行った。これを、印刷機(三菱ダイヤ社製、1F-2(商品名))により、UVインキ(ベストキュア161 商品名、東華色素(株)製)を用いて連続して印刷した。この際、UVインキ耐刷性の評価方法は、上記の耐刷性評価と同様に行った。
上記耐刷性の評価と同様の手法で、露光・現像し得られた平版印刷版を、更に蒸留水を仕込んだ現像浴に20秒間浸漬し、該平版印刷版の版面を目視で観察した。付着物が全くなく、現像浴中にもカスが浮いていないものを「◎」、付着物はないが、現像浴中に細かな現像カスが見られるものを「○」、付着物はないが、現像浴中に大きな現像カスが見られるものを「△」、明らかに着色成分(現像カス)が付着しているものを「×」として評価した。
実施例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光・現像および印刷を行った。この際、5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム社製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加え、耐薬品性を評価した。この時の耐刷性が、前述の耐刷枚数の95%〜100%であるものを◎、80%〜95%であるものを○、60〜80%であるものを△、60%以下を×とした。クリーナーで版面を拭く工程を加えた場合であっても、耐刷枚数に変化が少ないほど耐薬品性に優れるものと評価する。
結果を以下の表1に示す。
〔支持体の作製〕
実施例1と同様にして、下塗り液1の代わりに、下塗り液2を用い、支持体〔C〕を作製した。
〔下塗り液2〕
・分子量2.8万の下記共重合体 0.3g
・表3記載の酸性基を有する塩基性化合物 表3記載の添加量
・メタノール 100g
・水 1g
得られた下塗り済の支持体〔C〕を用いて、実施例1と同様にして、下記感光液IおよびIIを用いて赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。
(感光液I)
・表3記載のバインダーポリマー 3.5g
・エチルバイオレットの対アニオンを
6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.15g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 30g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 15g
・γ−ブチロラクトン 15g
・ノボラック樹脂 0.68g
(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、Mw8,000)
・赤外線吸収剤(上記シアニン染料A) 0.045g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 15.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 30.0g
3 下塗層
4 支持体
11 上層
12 下層
10、20 平版印刷版原版
A 記録機能層
Claims (11)
- 支持体上に少なくとも1層の層からなる記録機能層を有し、前記記録機能層をなす層の同じ層もしくは異なる層に、アルカリ可溶性樹脂と、赤外線吸収剤と、塩基性化合物とを有する平版印刷版原版であって、
前記塩基性化合物が、pKa3〜14の酸性官能基と、pKa11〜18の共役酸をなす塩基性官能基とを有し、
前記塩基性化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする平版印刷版原版。
(酸性基:スルホンアミド基、置換スルホンアミド基、フェノール性ヒドロキシル基、チオフェノール性チオール基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる)
(ただし、前記塩基性化合物がポリマーであるものは除く。) - 前記塩基性化合物が下記一般式(II)、(III)、および(V)のいずれか、あるいは、式(IV)−1〜(IV)−5ならびに(V)−6および(V)−7のいずれかで表されることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷用原版。
- 前記アルカリ可溶性樹脂がポリウレタン、アクリル樹脂、又はアセタール樹脂である請求項1または2に記載の平版印刷版原版。
- 前記記録機能層が、上層、下層、及び下塗り層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記上層に赤外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版原版。
- 前記下層にアルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の平版印刷版原版。
- 前記一般式(I)におけるL 4 が、炭素数1〜10の2価のアルキレン基、炭素数6〜20の2価のアリーレン基、酸素原子、窒素原子を含む連結基、またはそれらの組合せによる連結基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記塩基性化合物が、グアニジン骨格、イソウレア骨格、またはイミノメチルアミノ骨格を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 平版印刷版原版の支持体上に配設する記録機能層をなす感光性組成物であって、
該感光性組成物は少なくとも塩基性化合物を含有し、前記塩基性化合物が、pKa3〜14の酸性官能基と、pKa11〜18の共役酸をなす塩基性官能基とを有し、
前記塩基性化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする感光性組成物。
(酸性基:スルホンアミド基、置換スルホンアミド基、フェノール性ヒドロキシル基、チオフェノール性チオール基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる)
(ただし、前記塩基性化合物がポリマーであるものは除く。) - 前記塩基性化合物が下記一般式(II)、(III)、および(V)のいずれか、あるいは、式(IV)−1〜(IV)−5ならびに(V)−6および(V)−7のいずれかで表されることを特徴とする請求項10に記載の感光性組成物。
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