JP2012078457A - 赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版、その製造方法、平版印刷版、並びに平版印刷版の作製方法 - Google Patents

赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版、その製造方法、平版印刷版、並びに平版印刷版の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】現像ラチチュード、及び耐刷性に優れた赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上に、下層、中間層、および上層をこの順に設けてなり、前記下層、中間層、および上層がそれぞれ異なる構造の、水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
【選択図】なし

Description

本発明は、赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版、その製造方法、平版印刷版、並びに平版印刷版の作製方法に関する。
従来、種々の感光性組成物が、可視画像形成や平版印刷版材料として使用されている。特に、平版印刷における近年のレーザーの発展は目覚ましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザー・半導体レーザーは高出力かつ小型の物が容易に入手できるようになり、コンピュータ等のデジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収剤等とを必須成分とする。この赤外線吸収剤等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働き、露光部(非画像部)では、発生した熱により赤外線吸収剤等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。しかしながら、このような赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版では、活性度の落ちた疲労現像液での処理性(現像ラチチュード)は十分なものではなかった。
このような、現像ラチチュードの問題を解決するために、非画像部をより容易に現像し得る、即ち、アルカリ水溶液に対する溶解性がより良好な特性を有する材料からなる記録層を用いることが考えられるが、このような記録層は、画像部領域においても化学的に弱くなり、通常印刷における耐久性、更には、現像液や印刷中に使用されるインキ洗浄溶剤、プレートクリーナー等によりダメージを受け易くなるなど、耐薬品性に劣るといった問題があった。
この問題を解決する目的で、記録層を重層化するという方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、記録層を重層化するという方法だけでは、様々な使用条件における未露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差(ディスクリミネーション;以下、「溶解ディスクリ」又は「溶解識別性」ともいう。)が未だ十分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすいという問題があり、特に、現像ラチチュード、未露光部領域における耐久性に優れる材料が熱望されていた。
重層構造の記録層を有する平版印刷版原版において、現像ラチチュード、画像部領域における耐久性を向上させる技術として、上層に酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタン樹脂を用いることが提案されているが(例えば、特許文献2、3参照。)、未だ充分ではなく、赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の更なる改良が待ち望まれていた。
特開平11−218914号公報 特開2007−17913号公報 特開2000−112119号公報
本発明の課題は、現像ラチチュード、及び耐刷性に優れた赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版、およびその製造方法を提供することである。また、それを用いたポジ型平版印刷版、およびその作製方法を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の手段により解決された。
<1> 親水性表面を有する支持体上に、下層、中間層、および上層をこの順に形成して設けられた層を有してなり、前記下層、中間層、および上層がそれぞれ異なる構造の、水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<2> 前記上層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂が、ポリウレタン樹脂である<1>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<3> 前記中間層の乾燥後の塗布量が、0.05g/m〜0.5g/mである<1>または<2>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<4> 前記中間層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂が、前記上層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂よりも親水性である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<5> 前記中間層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を含む<1>〜<4>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
[一般式(A)中、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1から6のアルキル基であり;Xは酸素原子、硫黄原子、またはイミノ基であり;Lはn+1価の連結基であり;nは1、2または3であり、Yはカルバモイル基、スルホンアミド基、スルホン酸基、ベタイン基、およびスルホベタイン基から選ばれる置換基である。]
<6> 前記下層、および前記中間層の少なくとも一方が、赤外線吸収剤を含む<1>〜<5>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<7> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、前記下層、中間層、および上層を構成するそれぞれの塗布液組成物を、この順に前記支持体上に逐次塗布によって塗布されたことを含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
<8> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、前記下層、および中間層を構成する成分を含むそれぞれの塗布液組成物を、前記支持体上に同時重層塗布によって塗布されたことを含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
<9> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、前記下層、および中間層を構成する成分を含む1種類の塗布液組成物を、前記支持体上に塗布し、乾燥することにより形成されたことを含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
<10> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光し、現像することより得られた平版印刷版。
<11> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、
アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
本発明の平版印刷版原版は、下層の上に、上層よりも親水性である中間層が存在するため、一般的に有機溶剤で塗布される上層を塗布した際、中間層が有機溶剤に対する保護層として働き、下層と上層との混合が抑制される。その結果、上層と下層との間の成分の移動が抑えられると考えられ、このことにより、混合による現像ディスクリの低下が抑制される。また、一般的に有機溶剤により塗布されるポリウレタン樹脂を上層に用い、上記中間層の形成を行うことにより、現像ラチチュード向上と画像部領域における耐久性の向上の両立を図ることができる。
本発明によれば、現像ラチチュード、及び耐刷性に優れた赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を提供することができる。さらに、それを用いてポジ型平版印刷版、およびその製造方法を提供することができる。
(赤外線感光性平版印刷版原版)
本発明の赤外線感光性平版印刷版原版(以下、適宜「平版印刷版原版」と称する。)は、下層、中間層、および上層をこの順に設けてなり、前記下層、中間層、および上層がそれぞれ異なる構造の、水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂(以下、適宜「アルカリ可溶性樹脂」と称する。)を含むことを特徴とする。
なお、さらに、下塗り層、保護層など、所望により設けられる他の層を有するものであってもよい。
本発明の平版印刷版原版は、広く赤外線に感応して製版され、特に赤外線レーザー露光に適し、また、ポジ型の画像を与える平版印刷版原版である。
本発明において、樹脂の「水不溶性」とは水に対する常温での溶解度が約1質量%以下であることを意味し、より好ましくは、水に対する常温での溶解度が約0.1質量%以下であることを意味する。樹脂の「アルカリ可溶性」とは、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味し、樹脂の「アルカリ分散性」とは、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液において一般にエマルジョンあるいはコロイダルディスパ−ジョンと称される状態を意味するものである。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の親水性は、接触角計を用い、純水を用いた空中水滴による接触角により評価することができる。
また、「互いに親水性が異なる」とは、上記評価方法により判定する場合、その値が互いに10°以上異なっていることを意味する。
<上層>
本発明に用いる平版印刷版原版における上層は、優れた画像形成性を有し、上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂としては、ポリウレタン樹脂が好ましいが、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等のアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。
これらのうち、上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂としては、ポリウレタン樹脂が好ましい。
また、上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂は2種以上を併用してもよい。
以下、上層に含まれる好ましいアルカリ可溶性樹脂であるポリウレタン樹脂について説明し、順次、上層に含むことが好ましい成分を説明する。
(アルカリ可溶性樹脂であるポリウレタン樹脂)
上層は、アルカリ可溶性樹脂であるポリウレタン樹脂を含有する。
アルカリ可溶性樹脂であるポリウレタン樹脂としては、ポリマー主鎖にカルボキシル基を有するものが好ましく、具体的には、下記一般式(I)で表されるジイソシアネート化合物と、下記一般式(II)又は一般式(III)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物を基本骨格とするポリウレタン樹脂が挙げられる。
一般式(I)中、Rは二価の炭化水素基を表し、好ましくは、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基が挙げられる。Rは、イソシアネート基と反応しない他の官能基を有していてもよい。
一般式(II)中、Rは、水素原子又は炭化水素基を表し、好ましくは、水素原子、炭素数1〜8個の無置換のアルキル基、炭素数6〜15個の無置換のアリール基が挙げられる。
一般式(II)及び一般式(III)中、R、R及びRは、各々独立に、単結合、又は二価の連結基を表す。該二価の連結基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜20個の無置換のアルキレン基、炭素数6〜15個の無置換のアリーレン基が挙げられ、更に好ましいものとしては炭素数1〜8個の無置換のアルキレン基が挙げられる。
一般式(III)中、Arは三価の芳香族炭化水素を表し、好ましくは炭素数6〜15個のアリーレン基を示す。
なお、R〜R、及びArは、ぞれぞれ、イソシアネート基と反応しない置換基を有していてもよい
一般式(I)で表されるジイソシアネート化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。
中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのような芳香族環を有するものが耐刷性の観点より好ましい。
また、一般式(II)又は一般式(III)で示されるカルボキシル基を有するジオール化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。
中でも、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸がイソシアネートとの反応性の観点より好ましい。
更に、本発明に係るアルカリ可溶性樹脂であるポリウレタン樹脂を得るためのジオール化合物としては、上層における現像液への溶解性及び現像液の浸透性を向上させる観点から、下記一般式(IV)で表されるジオール化合物を用いることが望ましい。
一般式(IV)中、nは4〜12の整数を表し、好ましくは6〜10の整数である。
本発明に係るポリウレタン樹脂は、前記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性を有する公知の触媒を添加し、加熱することにより合成することができる。
使用するジイソシアネート化合物及びジオール化合物のモル比(ジイソシアネート化合物:ジオール化合物)は、好ましくは0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
本発明に係る水不溶性アルカリ可溶性ポリウレタン樹脂の分子量は、好ましくは重量平均で1,000以上であり、更に好ましくは5,000〜10万の範囲である。これらのポリウレタン樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
上層中に含まれる前記ポリウレタン樹脂の含有量は、上層の組成物の全固形分中、2.0〜99.5質量%であることが好ましく、10.0〜99.0質量%であることがより好ましく、20.0〜90.0質量%であることが更に好ましい。前記ポリウレタン樹脂の含有量が10.0質量%以上であると耐刷性の向上効果がみられる。
なお、ここで「固形分」とは、上層を形成するためのポジ型組成物中の溶剤を除いた成分の合計量を表す。
上層にはさらに赤外線吸収剤、酸発生剤、酸増殖剤等を含有することが好ましい。以下に、上層に含むことが好ましい成分について説明する。
<赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版は、赤外線吸収剤を上層に含んでもよい。赤外線吸収剤を上層に添加することで、感度に優れる。
赤外線吸収剤としては、赤外線を吸収し熱を発生する染料、顔料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料、顔料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としての染料は、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外線又は近赤外線を発光するレーザーでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
そのような赤外線又は近赤外線を少なくとも吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外線吸収染料を挙げることができる。
特に好ましい染料は、以下のシアニン染料Aである。
また、赤外線吸収剤としての顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
本発明においては、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
上層における赤外線吸収剤の添加量としては、上層の全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜30質量%であることが特に好ましい。赤外線吸収剤の添加量が0.01質量%以上であると、感度が低くなり、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
<酸発生剤>
上層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、上層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特願平8−9444号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4 -、PF6 -、ClO4 -などが好ましい。
本発明において酸発生剤として用いうるオニウム塩としては、下記一般式(i)〜一般式(iii)で表されるオニウム塩が挙げられる。
式(i)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホン酸イオン、および、ペルフルオロアルキルスルホン酸イオン等フッ素原子を有するスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、アリールスルホン酸イオン、及びペルフルオロアルキルスルホン酸である。
式(ii)中、Ar21は炭素原子数20個以下のアリール基を示す。Ar21は置換基を有していてもよい。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
式(iii)中、R31、R32及びR33は、それぞれ炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。これらは置換基を有していてもよい。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(i)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−6])、一般式(ii)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−2])、及び一般式(iii)で示されるオニウム塩([OS−1]〜[OS−4])の具体例を以下に挙げる。
また、一般式(i)〜一般式(V)で表される化合物の別の例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0036〕〜〔0045〕において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物を、本発明における酸発生剤として好適に用いることができる。
本発明に用いられる酸発生剤として好ましいオニウム塩の別の例として、下記一般式(iv)で表されるアジニウム塩化合物が挙げられる。
一般式(iv)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、または一価の置換基を表す。
一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
一般式(iv)で表される化合物としては、一般式(iv)で表される化合物における特定構造の骨格(カチオン部)が、R41を介して結合し、カチオン部が分子中に2個以上含まれる化合物(多量体型)も包含され、このような化合物も好適に用いられる。
41-はZ11-と同義の対イオンを表す。
上記一般式(iv)で示されるアジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
本発明に用いうる酸発生剤のより好ましい例として、下記化合物(PAG−1)〜(PAG−5)が挙げられる。
これらの酸発生剤を本発明における上層を構成するポジ型感光性組成物中に含有させる場合、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸発生剤を上層に添加する場合の、好ましい添加量は、上層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
〔酸増殖剤〕
本発明における上層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
酸増殖剤は、WO95/29968号、WO98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等に記載の酸増殖剤を1種、或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明における酸増殖剤の好ましい具体例としては、例えば、特開2001−66765号公報段落番号〔0056〕〜〔0067〕に記載される化合物を挙げることができる。なかでも、例示化合物(ADD−1)、(ADD−2)、(ADD−3)として記載された下記化合物を好適に用いることができる。
これらの酸増殖剤を上層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01〜20質量%,好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成されるとともに、画像部の膜強度低下が抑制され、特定ポリウレタンに起因する優れた膜強度が維持される。
更に、本発明における上層中には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を併用してもよい。
<中間層>
次に中間層について説明する。
中間層には、上層、および下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂とは異なる構造のアルカリ可溶性樹脂を含む。中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂は、上層に含まれるアルカリ可溶性樹脂よりも親水性であることが好ましい。
このような中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、ヒドロキシアミノ基、スルホアミノ基、ニトロアミノ基、ニトロソアミノ基等を含む)、イミノ基(オキシイミノ基、ヒドロキシイミノ基、スルホイミノ基、ニトロイミノ基、ニトロソイミノ基等を含む)、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィノ基、スルホン酸基、メルカプト基、カルバモイル基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
具体例として、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂としては、中でも、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
[一般式(A)中、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1から6のアルキル基であり;Xは酸素原子、硫黄原子、またはイミノ基であり;Lはn+1価の連結基であり;nは1、2または3であり、Yはカルバモイル基、スルホンアミド基、スルホン酸基、ベタイン基、スルホベタイン基から選ばれる置換基である。]
前記一般式(A)におけるR11、R12およびR13の、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、および沃素原子であり、好ましくは塩素原子である。
また、炭素原子数が1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基などである。
11としては好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、R12としては好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、R13としては好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
Xとしては、好ましくは酸素原子、イミノ基である。
Lはn+1価の連結基であり、炭素数1〜20の直鎖または分岐、または環状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐、または環状のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基(単環、複素環)、−C(=O)N−、−OC(=O)N−、−NC(=O)N−、−SC(=O)N−、−C(=S)−、−OC(=S)−、−NC(=S)−、−SC(=S)−、−O−、−C(=O)O−、−C(=O)−、−S−、−SO−、−SO−、−SON−、−NH−、−NR−、−NAr−、−N=N−、−N(=NH)N−等が好まく、上記2価の連結基は置換基を有していてもよい。ここで、Rはアルキル、アルケニル、アルキニルを表し、Arは、アリール(単環、ヘテロ環)を表す。Lとして、好ましくはアルキル基、アリール基、−OC(=O)N−基、−NC(=O)N−基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基である。
nとしては1が好ましい。
Yとしては、好ましくはカルバモイル基、スルホンアミド基、スルホベタイン基であり、より好ましくはスルホンアミド基、スルホベタイン基である。
一般式(A)で表される繰り返し単位としては、下式で表される繰り返し単位が好ましい。
中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂における、一般式(A)以外の共重合成分としては、例えば、下記(1)〜(13)に挙げるモノマーを用いることができる。
(1)フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン類
(2)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(3)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(4)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(5)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド。
(6)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(7)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(8)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(9)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(10)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(11)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(12)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(13)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
後述するように、下層を設けた上に中間層を逐次塗布法、重層塗布法などで設けてもよいが、下層を構成する成分を含む組成物(塗布液)に中間層を構成する成分を混合し、1種類の塗布液とし、下層と同時に中間層を設けることもできる。このようにして中間層を設ける場合は、下層を構成する成分を含む組成物と中間層を構成する成分を含む組成物とを混合して1種類の塗布液組成物を調製し、これを所望により下塗り層を設けた支持体上に塗布し、塗布層を乾燥させる過程において、互いに親水性の異なる2種の組成物同士が相分離し、結果として、下層と中間層とが形成されるものと考えられる。
中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂としては、前記一般式(A)で表される構造単位を繰り返し単位として10.0質量%〜90.0質量%含む樹脂であることが好ましく、より好ましくは30.0質量%〜80.0質量%含む樹脂であることが、画像形成性とアルカリ可溶性を両立する観点で好ましい。
中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂の総含有量に対し、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を含む樹脂の場合の好ましい含有量は、20質量%以上、より好ましくは40質量%以上含むことである。これによって現像性が良好となり、画像形成性に優れた平版印刷版原版が得られる。
中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂の、中間層の組成物の固形分に対する総含有量は、10.0〜99.0質量%であり、より好ましくは40.0〜90.0質量%である。この範囲とすることによって、画像形成性と上層と下層との間の密着性の両立がなされる。
本発明の中間層には、前記アルカリ可溶性樹脂以外の成分として、上層の項で述べた赤外線吸収剤、酸発生剤、酸増殖剤、および後述する界面活性剤、現像促進剤等を含有してもよい。
<下層>
本発明の平版印刷版原版において、支持体側に設けられる層である下層は、上層、および中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂とは異なる構造のアルカリ可溶性樹脂を含有する。
以下、下層が含有する各成分について説明する。
下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂としては、上層、および中間層に含まれるアルカリ可溶性樹脂とは異なる構造のアルカリ可溶性樹脂であれば、特に制限はないが、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂として、下記のようなアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。
本発明の下層に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。前記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が好ましく例示できる。なお、下式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。
本発明の下層に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、上記重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
前記アルカリ可溶性樹脂に使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他の重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
また、アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂が好ましく挙げられる。
本発明に用いることができるノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の下層において、アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における下層の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、50〜98質量%の添加量で用いられることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が50質量%以上であると記録層(感光層)の耐久性に優れ、また、98質量%以下であると、感度、及び、耐久性の両方に優れる。
<赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版は、赤外線吸収剤を下層に含むことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料、顔料であれば特に制限はなく、上層に用いると記載した化合物を同様に用いることができる。
特に好ましい染料は、上記シアニン染料Aである。
下層における赤外線吸収剤の添加量としては、下層全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜30質量%であることが特に好ましい。添加量が0.01質量%以上であると、感度が高くなり、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
<その他の添加剤>
前記下層、中間層、及び上層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。以下に挙げる添加剤は、下層のみに添加してもよいし、中間層のみ、あるいは上層のみに添加してもよいし、任意の2つ以上の層、または全ての層に添加してもよい。
〔現像促進剤〕
前記上層、中間層、及び下層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
〔界面活性剤〕
上層、中間層、及び下層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2.0質量%が更に好ましい。
〔焼出し剤/着色剤〕
上層、中間層、及び下層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。光酸放出剤としては、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドや、オキサゾール系化合物としてトリアジン系化合物とトリハロメチル化合物とが挙げられる。
着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の公知の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレットラクトン、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料が特に好ましく挙げられる。
これらの染料は、上層、中間層、または下層のそれぞれの全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
〔可塑剤〕
上層、中間層、および下層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、上層、中間層、または下層のそれぞれの全固形分に対し、0.5〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
〔ワックス剤〕
上層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、上層中に占める割合が上層の全固形分に対し、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
<下層、中間層、及び上層の形成>
本発明の平版印刷版原版における下層、中間層、及び上層は、通常、前記各成分を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独で使用、又は2種以上を併用して使用される。
なお、下層、中間層、及び上層は、原則的に3つの層を分離して逐次塗布によって形成することが好ましい。
3つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層を構成する成分と、中間層を構成する成分と、上層を構成する成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、又は、下層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させてその上に中間層を設け、中間層を乾燥した後に上層を設ける方法などが挙げられる。
以下、これらの方法について詳述するが、3つの層を分離して塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
下層を構成する成分と、中間層を構成する成分と、上層を構成する成分との溶剤溶解性の差を利用する方法としては、中間層用塗布液を塗布する際に、下層を構成する成分のいずれもが不溶な溶剤系を用い、さらに上層用塗布液を塗布する際に、中間層を構成する成分のいずれもが不溶な溶剤系を用いるものである。これにより、三層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、下層を構成する成分として、中間層を構成する成分であるアルカリ可溶性樹脂を溶解するメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等の溶剤に不溶な成分を選択し、該下層を構成する成分を溶解する溶剤系を用いて下層を塗布・乾燥し、その後、下層を構成するアルカリ可溶性樹脂とは異なる構造のアルカリ可溶性樹脂を主体とする中間層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等で溶解し、塗布・乾燥することにより下層と中間層との二層化が可能になる。さらに中間層の上にこれと類似の方法で上層を設けることにより、下層と中間層と上層との三層化が可能となる。
次に、2層目(中間層または上層)を塗布後に、極めて速く溶剤を乾燥させる方法としては、ウェブの走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エアーを吹きつけることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロール(加熱ロール)よりウェブの下面から伝導熱として熱エネルギーを与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
また、下層と中間層とを同時に設ける方法として、それぞれの層を構成する塗布液を異なるノズルから供給し、重層の塗布液を支持上に設ける同時重層塗布による方法がある。
さらに、下層を構成する成分と中間層を構成する成分とを混合して1種類の塗布液とし、支持体上に1層の塗布液の層を1回の塗布で設け、乾燥し塗膜を形成する間に、それぞれの層を構成する成分の相分離を利用して、2層に分離させて下層と中間層とを同時に設ける方法を用いてもよい。
支持体上に塗布される下層、中間層、及び上層用各塗布液中の、溶剤を除いた前記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
特に、第2層(第1層が下層にあっては中間層、第1層が中間層にあっては上層)塗布時に第1層へのダメージを防ぐため、第2層の塗布方法は、非接触式であることが好ましい。また、接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いることも可能であるが、第1層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の支持体上に塗布される下層を構成する成分の乾燥後の塗布量は、0.5〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.6〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.5g/m以上であると、耐刷性により優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度により優れる。
また、中間層を構成する成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜0.5g/mの範囲にあることが好ましく、0.1〜0.5g/mの範囲であることがより好ましい。0.05g/m以上であると、現像ラチチュードにより優れ、0.5g/m以下であると耐刷性が良好である。
また、上層を構成する成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.08〜0.7g/mの範囲であることがより好ましい。0.05g/m以上であると、現像ラチチュード、及び、耐傷性に優れ、1.0g/m以下であると、感度に優れる。
下層、中間層、及び上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.6〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.7〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.6g/m以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、又は、プラスチックフィルム等が挙げられる。
中でも、本発明においては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。以下、このような表面処理について簡単に説明する。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
以上のように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であることが好ましい。陽極酸化皮膜の量は、1.0g/m以下であることが好ましい。1.0g/m以下であると、耐刷性に優れ、平版印刷版の非画像部に傷が付きにくく、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」を抑制することができる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。
本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号の各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
<下塗層>
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に前記下層、中間層、及び上層の3層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、並びに、トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
この下塗層は次のような方法で設けることができる。すなわち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤又はそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
下塗層の塗布量は乾燥後で、2〜200mg/mであることが好ましく、5〜100mg/mであることがより好ましい。乾燥後の塗布量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
(平版印刷版の製版方法)
本発明の平版印刷版の作製方法は、本発明の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、アルカリ水溶液(現像液)を用いて現像する現像工程、をこの順で含むことが好ましい。
また、本発明の平版印刷版は、本発明の平版印刷版の製版方法により得られた平版印刷版である。
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程を含むことが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cm2であることが好ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
<現像工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、現像液を用いて現像する現像工程を含むことが好ましい。
現像工程に使用される現像液(以下、「処理液」ともいう。)は、pH6〜13.5の水溶液が好ましく、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液がより好ましく、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液が特に好ましい。また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性のいずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
本発明においては、ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステル、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物がより好ましい。
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、HLB値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
両性界面活性剤は、界面活性剤の分野においてよく知られているように、アニオン性部位とカチオン性部位とを同一分子内に持つ化合物であり、アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系等の両性界面活性剤が含まれる。
現像液に用いることができる両性界面活性剤としては、下記式<1>で表される化合物及び下記式<2>で表される化合物が好ましい。
式<1>中、R8はアルキル基を表し、R9及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R11はアルキレン基を表し、Aはカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを表す。
式<2>中、R18、R19及びR20はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。ただし、R18、R19及びR20の全てが、水素原子であることはない。
前記式<1>において、R8、R9又はR10におけるアルキル基、及び、R11におけるアルキレン基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、さらに、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<1>で表される化合物において、R8〜R11の炭素数の総和は、8〜25であることが好ましく、11〜21であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
また、有機溶剤、例えば、アルコール等の溶解助剤を添加することにより、界面活性剤の水系の現像液への溶解性を上げることも可能である。
前記式<2>において、R18、R19又はR20におけるアルキル基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、さらに、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<2>で表される化合物において、R18〜R20の炭素数の総和は、8〜22であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
両性界面活性剤の総炭素数は、感光層に用いる材料、とりわけバインダーの性質により影響を受けることがある。親水度の高いバインダーの場合、総炭素数は比較的小さいものが好ましく、用いるバインダーの親水度の低い場合には、総炭素数が大きいものが好ましい傾向にある。
現像液に用いることができる両性界面活性剤の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤が更に好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
前記現像液をpH6〜13.5に保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液のpHは、現像可能であれば特に限定されないが、pH8.5〜10.8の範囲であることが好ましい。
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全質量に対して、0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的に他のアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。湿潤剤は、現像剤の全質量に対し、0.1〜5質量%の量で使用されることが好ましい。
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対して、0.01〜4質量%の範囲が好ましい。
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類又はホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。キレート剤は現像液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量は、現像液の全質量に対して、0.001〜1.0質量%が好適である。
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系の化合物を使用することができ、HLB値が5以下の化合物であることが好ましい。シリコーン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化等がいずれも使用できる。消泡剤の含有量は、現像液の全質量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲が好適である。
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対して、0.01〜0.5質量%が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、ガソリン、若しくは、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、又は、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が好ましい。
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01〜0.5質量%が好ましい。
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体における腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20〜400μm、毛の長さは5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去がさらに確実となる。更に、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
まず、実施例、比較例に用いた化合物を略号と共に記す。
(アルカリ可溶性樹脂成分A)
・(a−1):下記2種のイソシアネート化合物の合計と下記2種のジオール化合物の合計とが、1:1のモル比となるように重合させたポリウレタン1(重量平均分子量36,000)
・(a−2):下記2種のイソシアネート化合物の合計と下記2種のジオール化合物の合計とが、1:1のモル比となるように重合させたポリウレタン2(重量平均分子量43,000)
(アルカリ可溶性樹脂成分B)
・(b−1):N−フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミド=60/15/25(モル比)の共重合体(重量平均分子量:50,000)
・(b−2)スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸=69/25/6(モル比)の共重合体(重量平均分子量:45,000)
(アルカリ可溶性樹脂成分C)
・(c−1):N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル=35/35/30(モル比)の共重合体 (重量平均分子量6.5万)
・(c−2)下記構造の共重合体(組成比はモル比を表す。重量平均分子量10万)
・(c−3):N−(p−アミノカルボニルフェニル)メタクリルアミド/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル=35/35/30(モル比)の共重合体(重量平均分子量5万)
・(c−4):メタクリル酸メチル/メタクリル酸=80/20(モル比)の共重合体(重量平均分子量4.7万)
(その他の成分)
・赤外線吸収剤:下記構造のシアニン染料A
・エチルバイオレット
・クリスタルバイオレット(保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−177(DIC(株)製)
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−780(DIC(株)製)
(溶剤)
・3−ペンタノン
・プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート
・プロピレングリコールモノメチルエーテル
・γ−ブチロラクトン
・メチルエチルケトン
・1−メトキシ−2−プロパノール
・水
(実施例1)
<支持体の作製>
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0.06%、Fe:0.30%、Cu:0.014%、Mn:0.001%、Mg:0.001%、Zn:0.001%、Ti:0.03%を含有し、残部はAl及び不可避不純物のアルミニウム合金である。)に対し、以下に示す表面処理を連続的に行った。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル、アンモニウムイオンを0.007%含む。)であり、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26%、アルミニウムイオン濃度6.5%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25%水溶液(アルミニウムイオンを0.5%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1%水溶液の処理槽中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の塗布量は15mg/mであった。
−下塗り液−
・β−アラニン 0.5部
・メタノール 95部
・水 5部
<下層の形成>
上記により得られた支持体に、下記組成の下層用塗布液1を塗布量が1.5g/mになるようバーコーターで塗布したのち、160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却した。
−下層用塗布液1−
・アルカリ可溶性樹脂:(b−1) N−フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミドの共重合体 5.21部
・赤外線吸収剤:シアニン染料A 0.94部
・その他:クリスタルバイオレット 0.08部
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−177(DIC(株)製) 0.05部
・溶剤:γ−ブチロラクトン 10部
・溶剤:メチルエチルケトン 61部
・溶剤:1−メトキシ−2−プロパノール 14部
・溶剤:水 9.34部
<中間層の形成>
上記により下層を設けた支持体の下層上に、下記組成の中間層用塗布液1を乾燥後の塗布量が0.5g/mになるようバーコーターで塗布したのち、160℃で40秒間乾燥し、さらに20〜26℃の風で徐冷した。
−中間層用塗布液1−
・アルカリ可溶性樹脂:(c−1) N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/メタクリル酸メチル/アクリロニトリルの共重合体 3.5部
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−780 0.02部
・溶剤:メチルエチルケトン 60部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル 20部
・溶剤:γ−ブチロラクトン 20部
<上層の形成>
その後、中間層を設けた支持体の中間層上に、下記組成の上層用塗布液1を塗布量が0.5g/mになるようバーコーター塗布したのち、130℃で40秒間乾燥し、さらに20〜26℃の風で徐冷し、実施例1の平版印刷版原版を作製した。
−上層用塗布液1−
・アルカリ可溶性樹脂:(a−1)ポリウレタン1 10部
・エチルバイオレット 0.03部
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−177 0.05部
・溶剤:3−ペンタノン 60部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート 8部
(実施例2〜5、並びに、比較例1及び2)
上層用塗布液、中間層用塗布液、及び下層用塗布液を表2に記載の組成に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜6、及び比較例1の平版印刷版原版を作製した。
(平版印刷版原版の製版及び評価)
得られた実施例1〜6、及び比較例1の平版印刷版原版を用い、本発明の作製方法に係る露光工程及び現像工程により製版処理を行った後、以下に示す各評価を行った。各評価に適用した露光工程及び現像工程及び評価方法の詳細は、以下の通りである。評価結果を表2に示した。
(平版印刷版原版の評価)
富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−9800HSにて、ビーム出力100%、ドラム回転速度150rpmの条件で、実施例1〜5及び比較例1〜2の平版印刷版原版の画像露光を行った。露光後の平版印刷版原版を、PSプロセッサーPK−910(大日本スクリーン株式会社製)を用いて、下記表1の組成を有する希釈現像液で現像処理した。現像条件は30℃で12秒であった。希釈現像液のpHは10.7から10.0であった。またガム液としては、富士フイルム(株)製FG−1を水で1:1に希釈した液を用いた。
(現像ラチチュード)
平版印刷版原版を120mJ/cmの割合で露光し、幾つかの希釈率を有する現像液を用いて現像した。レーザー露光領域の現像性と画像領域の状態を評価した。現像ラチチュードは良好な画像特性を示す希釈率の範囲によって評価した。現像液の最適な希釈率は現像ラチチュード幅の中央である。表2に示す現像ラチチュードは、良好な画像特性を示す希釈率の下限値−良好な画像特性を示す希釈率の上限値を表す。
(耐刷性)
平版印刷版原版を120mJ/cmの割合で露光し、最適な現像液を用いて現像した。こうして得られた平版印刷版を次に、小森コーポレーション(株)製のリスロン印刷機を、インキとしてはDIC(株)製のバリウスGの墨インキを、湿し水としては富士フイルム(株)製のIF−102を水で4%の濃度に希釈した液を、それぞれ用いて印刷を行った。
上質紙に印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。表2にはベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数を示した。
(実施例7〜9、及び、比較例2、3)
中間層用塗布液の塗布量を表3に記載したものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例7〜9、及び、比較例2、3の平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を実施例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
(実施例10、11、及び、比較例4、5)
下層用塗布液を表4に記載のように変更し、且つ中間層を塗布を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例10、11、及び、比較例4、5の平版印刷版原版を作製した。
得られた平版印刷版原版を実施例1と同様に評価し、結果を表4に示した。
(相分離による中間層形成の確認)
実施例10、11、及び、比較例4、5について、下層塗布後の平版印刷版原版をミクロトームで切断し、記録層断面に導電性をもたせた後、走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影し、観察したところ、表4に示すように、実施例10および11において、実施例1の下層、および中間層塗布後の平版印刷版原版と同様の層構造が存在していることが確認された。
また、実施例10、11、及び、比較例4、5について、下層塗布後の平版印刷版原版、および実施例1の中間層塗布後の平版印刷版原版について表面接触角(空中水滴)を協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定したところ、表5に示すように近い値を示すことから、実施例10および11の下層塗布後の表面には、実施例1と同様に中間層が形成していることがわかる。
表2〜4の結果から、本発明の平版印刷版は、高耐刷性を維持したまま、現像ラチチュードの改良がなされていることがわかる。

Claims (11)

  1. 親水性表面を有する支持体上に、下層、中間層、および上層をこの順に形成して設けられた層を有してなり、前記下層、中間層、および上層がそれぞれ異なる構造の、水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  2. 前記上層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂が、ポリウレタン樹脂である請求項1に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  3. 前記中間層の乾燥後の塗布量が、0.05g/m〜0.5g/mである請求項1または請求項2に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  4. 前記中間層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂が、前記上層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂よりも親水性である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  5. 前記中間層に含まれる水不溶性で且つアルカリ可溶性またはアルカリ分散性の樹脂が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。

    [一般式(A)中、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1から6のアルキル基であり;Xは酸素原子、硫黄原子、またはイミノ基であり;Lはn+1価の連結基であり;nは1、2または3であり、Yはカルバモイル基、スルホンアミド基、スルホン酸基、ベタイン基、およびスルホベタイン基から選ばれる置換基である。]
  6. 前記下層、および前記中間層の少なくとも一方が、赤外線吸収剤を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、前記下層、中間層、および上層を構成するそれぞれの塗布液組成物を、この順に前記支持体上に逐次塗布によって塗布されたことを含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、前記下層、および中間層を構成する成分を含むそれぞれの塗布液組成物を、前記支持体上に同時重層塗布によって塗布されたことを含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
  9. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、前記下層、および中間層を構成する成分を含む1種類の塗布液組成物を、前記支持体上に塗布し、乾燥することにより形成されたことを含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
  10. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光し、現像することより得られた平版印刷版。
  11. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、
    アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
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