JP3795658B2 - 平版印刷版の製版方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオフセット印刷マスターとして使用できる画像記録材料の製版方法に関するものであり、特にコンピュータ等のディジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物からなる感光層を設けた平版印刷版の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、赤外線レーザーにより直接描き込み可能なポジ型感光性平版印刷原版(以下、「赤外線感光性平版印刷原版」と称することがある)が知られてきており、その現像処理液として、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩のアルカリ性水溶液が一般に用いられている。
しかしながら、この珪酸塩のアルカリ性水溶液を現像処理液として用いた場合には、以下のような問題がある。即ち、かかる赤外線レーザー照射部と未照射部とにおける溶解性の差が、従来の感光性平版印刷原版の露光部と未露光部とにおける差に比較して非常に小さく、現像の適性範囲が狭いという問題である。また、このような赤外線感光性平版印刷原版においては、インキ着肉性が大幅に劣り、印刷開始から数十枚印刷しても良好な印刷物が得られないことがしばしばあるという問題である。これらの問題は、特にアルミニウムを支持体とする赤外線感光性平版印刷原版において顕著であることから、照射された赤外線の熱エネルギーが熱伝導性の良いアルミニウム支持体を通して発散されるため、十分な分解反応が起こらないためと推定される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、赤外線レーザーにより直接描き込み可能な赤外線感光性平版印刷原版に好適な現像処理方法を用いた平版印刷版の製版方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 親水性支持体上に、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物を塗布してなる感光層を有する平版印刷原版を、
赤外線レーザーで露光する工程と、
少なくとも一種の非還元糖と、少なくとも一種の塩基とを含有するアルカリ現像処理液で現像する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法である。
<2> 赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物が、以下の(A)〜(C)を含有する前記<1>に記載の平版印刷版の製版方法である。
(A)以下の官能基(a−1)〜(a−3)のうち少なくとも1つを有するアルカリ水溶液可溶性高分子化合物の1種以上。
(a−1)フェノール性水酸基、
(a−2)スルホンアミド基、
(a−3)活性イミド基。
(B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物。
(C)光を吸収して発熱する化合物。
<3> (B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して熱を発生する機能を持つ化合物とに換えて、双方の特性を有する一つの化合物を含有する前記<2>に記載の平版印刷版の製版方法である。
【0005】
本発明においては、前記赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物が前記(A)〜(C)を含有する場合、(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物に、(B)分子内に該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相互作用する基を有し、該高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して発熱する化合物と、を組み合わせることにより、(B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物が、塗膜形成時には、(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と均一に相溶して、均一の感光層(以下、「塗布層」と称することがある)を形成し、(A)成分のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるが、この感光層を赤外線レーザの照射による露光工程に付することにより、露光部分において(C)光を吸収して発熱する化合物が発熱し、(A)成分と(B)成分とが分離し、相互作用による溶解阻止能を低下させ、現像工程において、少なくとも一種の非還元糖と、少なくとも一種の塩基とを含有するアルカリ現像処理液によって露光部分が容易に除去されて、良好な画像形成、即ち製版が行われる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の平版印刷版の製造方法は、平版印刷原版を、赤外線レーザーで露光する工程と、アルカリ現像処理液で現像する工程とからなる。
【0007】
((平版印刷原版))
前記平版印刷原版は、親水性支持体上に、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物を塗布してなる感光層を有してなり、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。
【0008】
(感光層)
前記感光層は、前記支持体上に、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物を塗布してなる。
前記赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物は、好ましくは、(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物、(B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、及び(C)光を吸収して発熱する化合物を含有してなり、前記各成分のほか、更に必要に応じて、その他の成分として、例えば環状酸無水物等を含有してなる。
また、本発明において、前記赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物は、前記(B)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して発熱する化合物とに換えて、双方の特性を有する一つの化合物(以下、「(B+C)成分」と称することがある)を含有することもできる。
【0009】
−(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物−
本発明に使用される(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物は、以下の官能基(a−1)フェノール性水酸基、(a−2)スルホンアミド基、(a−3)活性イミド基の少なくとも一つを分子内に有する高分子化合物であるが、好ましくは、(a−1)フェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(以下、「フェノール性水酸基を有する樹脂」という)と、前記(a−1)から(a−3)の官能基うち少なくとも一つを共重合成分として10モル%以上含む共重合体(以下、「特定の共重合体」と称することがある)を用いることができる。
【0010】
−−(a-1) フェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性高分子化合物−−
該高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂を挙げることができる。
【0011】
これらのフェノール性水酸基を有する樹脂は、重量平均分子量が500〜20000であり、数平均分子量が200〜10000のものが好ましい。
更に、米国特許第4123279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用してもよい。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、1種類あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0012】
−−(a-2) スルホンアミド基を有するアルカリ水溶液可溶性高分子化合物−−
該高分子化合物を構成する主たるモノマーである(a−2)スルホンアミド基を有するモノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物とからなるモノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
このような化合物としては、例えば、下記一般式(I)〜(V)で示される化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】
Figure 0003795658
【0014】
式中、X1 及びX2 は、それぞれ−O−又は−NR7 −を示す。R1 及びR4 は、それぞれ水素原子又は−CH3 を表す。R2 、R5 、R9 、R12、及びR16は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。R3 、R7 、及びR13は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。また、R6 及びR17は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R8 、R10、及びR14は、水素原子又は−CH3 を表す。R11及びR15は、それぞれ単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。Y1 及びY2 は、それぞれ単結合又は−CO−を表す。
【0015】
具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0016】
−−(a-3) 活性イミド基を有するアルカリ水溶液可溶性高分子化合物−−
該高分子化合物は、下記式で表される活性イミド基を分子内に有するものであり、この高分子化合物を構成する主たるモノマーである(a−3)活性イミド基を有するモノマーとしては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなるモノマーが挙げられる。
【0017】
【化2】
Figure 0003795658
【0018】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0019】
−−特定の共重合体−−
本発明に係る(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物としては、前記(a−1)から(a−3)の官能基を含むモノマーを主要構成単位とする高分子化合物、及びこれらの混合物の他、前述の如く、(a−1)フェノール性水酸基を有する樹脂と、前記(a−1)から(a−3)のうち少なくとも一つを共重合成分として10モル%以上含む共重合体を用いることができる。以下、この共重合体について説明する。
【0020】
ここで、(a−1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられるが、この高分子化合物に(a−1)フェノール性水酸基を有する別のモノマーを共重合させることもでき、この共重合成分としての(a−1)に該当するモノマーとは、それぞれフェノール性水酸基を有する、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレンからなるモノマーである。
このような化合物としては、具体的には、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等を好適に使用することができる。
【0021】
また、同様に前記(a−2)スルホンアミド基を有するモノマーや(a−3)活性イミド基を有するモノマーも共重合成分として用いることができる。
【0022】
本発明に用い得るアルカリ水溶液可溶性共重合体は、前記(a−1)〜(a−3)のうち少なくとも一つを共重合成分として10モル%以上含んでいることが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。共重合成分が10モル%より少ないと、フェノール性水酸基を有する樹脂との相互作用が不十分となり、共重合成分を用いる場合の利点である現像ラチチュードの向上効果が不充分となる。
また、この共重合体には、前記(a−1)〜(a−3)以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0023】
他の共重合成分としては、例えば、下記(1)〜(12)に挙げるモノマーを用いることができる。
(1)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
【0024】
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0025】
−−(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物の分子量等−−
本発明において、(A)アルカリ水可溶性高分子化合物としては、単独重合体、共重合体に係わらず、重量平均分子量が2000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。さらに好ましくは、重量平均分子量が5000〜300000、数平均分子量が800〜250000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
【0026】
前記(a−1)フェノール性水酸基を有する樹脂が、前記特定の共重合成分と共重合体を構成する場合、これら成分の配合重量比は50:50〜5:95の範囲にあることが好ましく、40:60〜10:90の範囲にあることがより好ましい。
【0027】
これら(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物は、それぞれ1種類あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよく、感光層固形分中、30〜99重量%、好ましくは40〜95重量%、特に好ましくは50〜90重量%の添加量で用いられる。前記アルカリ水溶液可溶性高分子化合物の添加量が30重量%未満であると感光層の耐久性が悪化し、また、99重量%を越えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
【0028】
−(B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物−
前記(B)成分とは、(A)アルカリ水溶液可溶性高分子化合物との相溶性が良好であって、均一な混合液を形成し得るとともに、分子内に存在する水素結合性の基等の官能基の働きにより、(A)成分と均一に混合された塗布液により形成された感光層にあって、(A)成分である高分子化合物との相互作用により、(A)成分のアルカリ水溶液可溶性を抑制する機能を有する化合物を指す。また、この化合物は加熱によりこの溶解性低下作用が消滅するが、(B)成分自体が加熱により分解する化合物である場合、先に述べたように、分解に充分なエネルギーがレーザーの出力や照射時間等の条件によって付与されなかった場合、溶解性の抑制作用の低下が不充分であり、感度が低下するおそれがあるため、(B)成分の熱分解温度は150℃以上であることが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる好適な(B)成分としては、スルホン化合物、オニウム塩、アミド化合物、キノンジアジド類等、前記(A)成分と相互作用する化合物が挙げられる。
これらは、熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる。このため、これらの物質を併用すると、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図ることができる点で好ましい。
【0030】
前記オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等が挙げられる。
より具体的には、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同Re27,992号の各明細書、特開平4−365049号公報にそれぞれ記載のアンモニウム塩、
D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad,Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、
【0031】
J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromolecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、
【0032】
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、
C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、等が挙げられる。
これらの中でも、本発明においては、ジアゾニウム塩が特に好ましく、特に好適なジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載のものが挙げられる。
【0033】
前記オニウム塩の対イオンとしては、例えば、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
これらの中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸などが好ましい。
【0034】
前記キノンジアジド類としては、例えば、o−キノンジアジド化合物などが挙げられる。前記o−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有し、熱分解によりアルカリ可溶性を増す化合物であり、本発明においては、種々の構造の化合物を用いることができる。
本発明においては、前記o−キノンジアジドが熱分解によりアルカリ水溶液可溶性高分子化合物の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することとの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。
【0035】
本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が挙げられるが、種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物若しくは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが特に好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドと、ピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドと、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0036】
更に、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドと、フェノールホルムアルデヒド樹脂又はクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドと、ピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。
その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号の各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号の各明細書等に記載されているものが挙げられる。
【0037】
前記o−キノンジアジド化合物の前記感光層における含有量としては、該感光層における全固形分に対し、通常1〜50重量%程度であり、5〜30重量%がより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記(B)成分は、先に述べた如く前記(A)成分との相互作用を考慮して適宜選択されるべきであり、具体的には、例えば、(A)成分としてノボラック樹脂を単独で用いる場合、後述する実施例に例示するシアニン染料A等が好適に使用される。
【0038】
前記(A)成分と前記(B)成分との配合比は、通常、99/1〜75/25の範囲であることが好ましい。99/1よりも(B)成分が少ない場合、(A)成分との相互作用が不充分となり、アルカリ水溶液可溶性を阻害できず、良好な画像形成ができ難い。また、75/25よりも(B)成分が多い場合、相互作用が過大であるため著しく感度が低下し、いずれも好ましくない。
【0039】
−(C)光を吸収して発熱する化合物−
本発明において、(C)光を吸収して発熱する化合物とは、光吸収域が700nm以上の赤外域にあり、好ましくは750〜1200nmの赤外域にあり、この波長の範囲の光において、光/熱変換能を発現するものを指し、具体的には、この波長域の光を吸収し熱を発生する種々の顔料若しくは染料を用いることができる。
前記顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)等に記載されている顔料が利用できる。
【0040】
前記顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素等が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0041】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。前記表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0042】
前記顔料の粒径は、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。前記顔料の粒径が、0.01μm未満のときは分散物の感光層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを超えると感光層の均一性の点で好ましくない。
前記顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)等に記載がある。
【0043】
前記染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料等の染料が挙げられる。
本発明において、これらの顔料若しくは染料のうち、赤外光若しくは近赤外光を吸収するものが、赤外光若しくは近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
【0044】
そのような赤外光若しくは近赤外光を吸収する顔料としては、カーボンブラックが好適に用いられる。また、赤外光若しくは近赤外光を吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0045】
前記染料として米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩、特公平5−13514号、同5−19702号記載のピリリウム化合物、Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等は特に好ましく用いられる。
【0046】
また、前記染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの顔料若しくは染料は、前記感光層全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、の割合で感光層中に添加することができる。前記顔料若しくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると感光層の均一性が失われ、感光層の耐久性が悪くなる。
これらの染料若しくは顔料は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性であり、かつ分解しない状態では結着剤の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが望ましい。また、染料若しくは顔料と結着樹脂は同一の層が好ましいが、別の層でも構わない。
【0047】
−(B+C)成分−
前記(B+C)成分の化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるものが挙げられる。
【0048】
【化3】
Figure 0003795658
【0049】
前記一般式(I)中、R1 、R2 、R3 、及びR4 は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基を表し、R1 とR2 、R3 とR4 はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。ここで、R1 、R2 、R3 、及びR4 としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
5 〜R10は、それぞれ独立に置換基を有しても良い炭素数1〜12のアルキル基を表し、ここで、R5 〜R10としては、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0050】
11、R12、及びR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、ここで、R12は、R11又はR13と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR12同士が結合して環構造を形成していてもよい。R11、R12、及びR13としては、具体的には、塩素原子、シクロヘキシル基、R12同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。また、mは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜3である。
【0051】
14及びR15は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、R14はR15と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR14同士が結合して環構造を形成していてもよい。R14及びR15しては、具体的には、塩素原子、シクロヘキシル基、R14同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられる。また、これらの基が置換基を有する場合、その置換基としては、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。また、mは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜3である。
【0052】
前記一般式(I)において、X- はアニオンを表す。前記X- で示されるアニオンの具体例としては、過塩素酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸の如きアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0053】
前記一般式(I)で表される化合物は、一般にシアニン染料と呼ばれる化合物であり、具体的には、以下に示す化合物が好適に用いられるが、本発明はこれらの具体例に制限されるものではない。
【0054】
【化4】
Figure 0003795658
【0055】
前記化合物[(B+C)成分]は、光を吸収して熱を発生する性質(即ち、(C)成分の特性)を有し、しかも700〜1200nmの赤外域に光吸収域をもち、さらにアルカリ水溶液可溶性高分子化合物との相溶性も良好であり、塩基性染料であり、分子内にアンモニウム基、イミニウム基等のアルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相互作用する基を有する(即ち、(B)成分の特性を有する)ために該高分子化合物と相互作用して、そのアルカリ水溶液可溶性を制御することができ、本発明に好適に用いることができる。
【0056】
本発明において、前記(B)成分、(C)成分に換えて、前記シアニン染料の如く双方の特性を兼ね備える化合物[(B+C)成分]を用いる場合、この化合物の添加量は、前記(A)成分に対して、99/1〜70/30の範囲が感度の観点から好ましく、99/1〜75/25の範囲がより好ましい。
【0057】
−その他の成分−
本発明に係る赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物には、更に必要に応じて、その他の成分として、種々の添加剤等を添加することができる。例えば、感度を向上させる目的で、環状酸無水物、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。
【0058】
前記環状酸無水物とは、無水フタル酸の如く、環状構造を有する酸無水物であればいずれも使用することができるが、具体的には、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等を好ましく用いることができる。
前記環状酸無水物の添加量は、0.5〜20重量%が好ましく、1〜10重量%の範囲がより好ましい。添加量が20重量%を超えると、環状酸無水物の加水分解による感度変動が大きくなりすぎ、0.5重量%未満では効果が不充分であり、いずれも好ましくない。
【0059】
前記フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0060】
前記有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類等があり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
前記フェノール類及び有機酸類の前記赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物中に占める割合は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0061】
また、本発明における赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報や特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0062】
前記非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0063】
前記両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」、第一工業(株)製)等が挙げられる。前記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の前記赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0064】
本発明における赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物中には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
前記焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0065】
前記画像着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。前記塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等を挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、前記感光層全固形分に対し、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%の割合で前記赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物中に添加することができる。
【0066】
更に本発明の赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
さらに、膜強度向上のため、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸アミド等を添加してもよい。
【0067】
−感光層の製法−
本発明の製版方法を適用し得る前記感光層は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。前記溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性平版印刷原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2 が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光層の特性は低下する。
本発明における感光層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、前記感光層の0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0069】
(支持体)
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、前記金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0070】
本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
【0071】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するため、例えば、界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
前記アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法、及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。
前記機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
また、前記電気化学的な粗面化法としては、塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。該アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸、あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0072】
前記陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2 より少ないと耐刷性が不十分であったり、前記平版印刷原版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0073】
前記陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、前記支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
【0074】
(その他の層)
本発明に係る平版印刷原版は、親水性支持体上に赤外線レ−ザ用ポジ型感光性組成物を塗布してなる感光層を設けたものであるが、必要に応じてその間に下塗層を、前記その他の層として設けることができる。
前記下塗層の成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸等の有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸、グリシン及びβ−アラニン等のアミノ酸類、トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0075】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後、水等によって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸等の酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
【0076】
前記有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2 である。前記被覆量が2mg/m2 よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2 より大きくても同様である。
本発明の平版印刷原版には、必要に応じて前記感光層の上にオーバーコート層を設けてもよい。該オーバーコート層成分としては、ポリビニルアルコール、メタクリレート、アクリレートや通常の感光性平版印刷原版に用いられるマット材料等が挙げられる。
【0077】
((赤外線レ−ザ−))
上記のようにして作成された平版印刷原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
本発明に係る前記感光層は、赤外線レーザーによりポジ型の画像形成が可能であるという利点を有する。従って、露光工程(像様露光工程)において、像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域において、700nm以上の発光波長を持つ光源が好ましい。本発明の製版方法における光源は、好ましくは700〜1200nmの発光波長の赤外線の照射が可能な固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0078】
((アルカリ現像処理液))
前記アルカリ現像処理液は、少なくとも一種の非還元糖と、少なくとも一種の塩基とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0079】
前記アルカリ現像処理液を用いて、前記赤外線感光性平版印刷原版の現像処理を行うと、該赤外線感光性平版印刷原版における感光層の表面を劣化させることがなく、該感光層の着肉性を良好な状態に維持することができる。また、前記赤外線感光性平版印刷原版は、現像ラチチュードが狭く、現像液pHによる画線幅等の変化が大きいが、前記アルカリ現像処理液にはpHの変動を抑える緩衝性を有する非還元糖が含まれているため、従来におけるシリケートを含む現像処理液を用いた場合に比べて有利である。更に、前記非還元糖は、前記シリケートに比べて液活性度を制御するための電導度センサ−やpHセンサ−等を汚染し難いため、この点でも、前記アルカリ現像処理液は有利である。
【0080】
(非還元糖)
前記非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明において好適に用いることができる。なお、本発明においては、特開平8−305039号公報に記載された非還元糖を好適に使用することができる。
【0081】
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロース等が挙げられる。
前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。
前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。更に、二糖類のマルトースに水素添加したマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等が好適に挙げられる。
これらの非還元糖の中でも、トレハロース型少糖類、糖アルコールが好ましく、その中でも、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめ、等が適度なpH領域に緩衝作用があり、低価格である点で好ましい。
【0082】
本発明において、これらの非還元糖は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記非還元糖の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。前記含有量が、0.1重量%未満であると十分な緩衝作用が得られず、30重量%を越えると高濃縮化し難く、また原価アップの問題が出てくる。
なお、還元糖は、後述する塩基と併用すると、褐変し、pHも徐々に低下し、現像性が低下するため、本発明では使用されない。
【0083】
(塩基)
前記塩基としては、従来より公知のアルカリ剤、例えば、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤等が挙げられる。
前記無機アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム、燐酸三アンモニウム、燐酸二ナトリウム、燐酸二カリウム、燐酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等が挙げられる。
【0084】
前記有機アルカリ剤としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0085】
前記塩基は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの塩基の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、前記非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調整が可能となるためである。また、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0086】
前記塩基は、前記アルカリ現像処理液のpHがアルカリ性になるように、好ましくは9.0〜13.8になるように、より好ましくは10.0〜13.2になるように、前記アルカリ現像処理液に添加される。
前記塩基の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、所望のpH、前記非還元糖の種類、添加量等に応じて適宜決定される。
【0087】
なお、本発明においては、前記アルカリ現像処理液として、前記非還元糖と前記塩基との併用に代えて、前記非還元糖のアルカリ金属塩を主成分として用いることもできる。
前記非還元糖のアルカリ金属塩は、前記非還元糖と、アルカリ金属水酸化物とを混合し、該非還元糖の融点以上に加熱し脱水すること、あるいは、前記非還元糖とアルカリ金属水酸化物との混合水溶液を乾燥することによって得られる。
【0088】
本発明においては、前記アルカリ現像処理液に、前記非還元糖以外の弱酸と強塩基とからなるアルカリ性緩衝液を併用することができる。
前記弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましく、例えば、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION等に記載されているものから選択できる。
【0089】
具体的には、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノ−ル−1(pKa 12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)等のアルコール類、
ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)等のアルデヒド類、
サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルソノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)等のフェノール性水酸基を有する化合物、
【0090】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンジオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)等のオキシム類、
アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)等の核酸関連物質、
【0091】
他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)等が好適に挙げられる。
これらの弱酸の中でも、スルホサリチル酸、サリチル酸が好ましい。
【0092】
これらの弱酸に組み合わせる強塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が好適に挙げられる。
これらの強塩基は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。前記強塩基は、適宜選択した濃度及び組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0093】
(その他の成分)
本発明においては、現像性の促進や現像カスの分散、感光性平版印刷原版の画像部の親インキ性を高める等の目的で、必要に応じて界面活性剤、現像安定剤、有機溶剤、還元剤、有機カルボン酸、硬水軟化剤等、更に公知の防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤等をその他の成分として前記アルカリ現像処理液に添加してもよい。
【0094】
−界面活性剤−
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0095】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が好適に挙げられる。
【0096】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
【0097】
前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
【0098】
以上の界面活性剤の内、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。
【0099】
本発明において、好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。
このようなフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
【0100】
前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記界面活性剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、通常0.001〜10重量%であり、0.01〜5重量%が好ましい。
【0101】
−現像安定化剤−
前記現像安定化剤としては、例えば、特開平6−282079号公報に記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド等のヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。
また、特開昭50−51324号公報に記載のアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載の水溶性の両性高分子電解質等が挙げられる。
【0102】
更に、特開昭59−84241号公報に記載のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報に記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報に記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報に記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報に記載のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報に記載の酸又はアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物等が挙げられる。
【0103】
−有機溶剤−
前記有機溶剤としては、例えば、水に対する溶解度が約10重量%以下のものが好ましく、5重量%以下のものがより好ましい。前記有機溶剤の具体例としては、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0104】
前記有機溶剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、該アルカリ現像処理液の総重量に対して0.1〜5重量%程度である。
前記含有量は、前記界面活性剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量と密接な関係があり、前記有機溶剤の量が増すにつれ、前記界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは、前記界面活性剤の量を少なくし、前記有機溶剤の量を多くすると、該有機溶剤が完全に溶解せず、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0105】
−還元剤−
前記還元剤としては、有機還元剤、無機還元剤等が挙げられる。これらの還元剤は、印刷版の汚れを防止するのに役立つ。
前記有機還元剤の好ましい具体例としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシン等のフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジン等のアミン化合物等が挙げられる。
前記無機還元剤の好ましい具体例としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸、亜ジチオン酸等の無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの中でも、汚れ防止効果が特に優れている点で、亜硫酸塩が好ましい。
前記還元剤の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、該アルカリ現像処理液の総重量に対して0.05〜5重量%程度である。
【0106】
−有機カルボン酸−
前記有機カルボン酸としては、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸等が挙げられる。
前記炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸の具体例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数8〜12のアルカン酸が特に好ましい。また、これらは、炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でもよいし、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。
【0107】
前記炭素原子数6〜20の芳香族カルボン酸の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等にカルボキシル基が置換された化合物等が挙げられ、より具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシナフトエ酸が特に好ましい。
【0108】
前記脂肪族カルボン酸及び前記芳香族カルボン酸は、水溶性を高める点で、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等として用いるのが好ましい。
前記有機カルボン酸の前記アルカリ現像処理液中における含有量としては、特に制限はないが、通常0.1〜10重量%程度であり、0.5〜4重量%が好ましい。前記含有量が、0.1重量%未満であると、その添加効果が十分でなく、10重量%を越えても、それに見合う効果が得られない上、併用する別の添加剤の前記アルカリ現像処理液中への溶解を妨げることがある。
【0109】
−硬水軟化剤−
前記硬水軟化剤としては、例えば、ポリ燐酸並びにそのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸等のアミノポリカルボン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0110】
前記硬水軟化剤は、そのキレート化力と使用される硬水の硬度及び量によって前記アルカリ現像処理液中における最適含有量が変化するが、一般的には、0.01〜5重量%程度であり、0.01〜0.5重量%が好ましい。前記含有量が、0.01重量%未満であるとその添加効果が十分でないことがあり、5重量%を越えると、色抜け等画像部への悪影響が生じることがある。
【0111】
前記アルカリ現像処理液は、以上説明した各成分の外、水を含有する。
本発明における前記アルカリ現像処理液は、未使用時(保管時)には水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時には水で希釈するようにしておくと、運搬上有利である。この場合、前記アルカリ現像処理液の濃縮度は、前記各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。また、未使用時(保管時)に前記アルカリ現像処理剤を、スプレードライ法等で水分を除去しておくか、あるいは固形原料を混合した固形化現像処理剤としておくのも好ましい。
【0112】
(現像処理)
本発明においては、まず、前記赤外線感光性平版印刷原版が、近赤外から赤外領域に発光波長を持つレーザーを搭載したプレートセッター等により、露光される。
前記レーザーの照射後においては、直ちに現像処理を行ってもよいが、前記レーザーの照射と現像処理との間に加熱処理を行うことが好ましい。
前記加熱処理は、80〜150℃で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、前記レーザーの照射の際、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させることができる。
【0113】
前記赤外線感光性平版印刷原版は、必要に応じて前記加熱処理を行った後、上述したアルカリ現像処理液を用いて現像処理される。
なお、本発明における前記アルカリ現像処理液は、紫外・可視光線感光性平版印刷原版の現像処理にも使用できるため、本発明においては、前記赤外線感光性平版印刷原版と紫外・可視光線感光性平版印刷原版とを、同じ該アルカリ現像処理液を用いて共通の現像処理(以下「共通現像処理」と称することがある)を行うことができる。このため、本発明によると、前記赤外線感光性平版印刷原版、紫外・可視光線感光性平版印刷原版の種類に関係なく、同じアルカリ現像処理液を用いて効率よく現像処理を行うことができる。
【0114】
なお、前記紫外・可視光線感光性平版印刷原版については、前記現像処理の前に、透明原画を通して、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、アルゴンレーザー、YAGレーザー等により露光処理がなされる。
【0115】
前記赤外線感光性平版印刷原版の現像処理は、自動現像機に好適に適用することができる。この場合、製版作業を合理化及び標準化でき、有利である。
前記自動現像機は、一般に、現像部と後処理部とを有し、前記赤外線感光性平版印刷原版を搬送する装置、各処理液槽、スプレ−装置等からなり、露光済みの前記赤外線感光性平版印刷原版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げたアルカリ現像処理液等をスプレ−ノズルから吹き付けて現像処理及び後処理を行うものである。
【0116】
本発明においては、前記赤外線感光性平版印刷原版に対して、現像処理装置を用いてポンプで汲み上げたアルカリ現像処理液等をスプレ−ノズルから吹き付けて現像処理を行ってもよいし、また、アルカリ現像処理液が満たされた現像処理液槽中に液中ガイドロ−ル等を用いて浸漬搬送させて現像処理してもよい。
【0117】
現像処理後、得られた平版印刷版は、通常、水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液を用いて後処理が施される。
本発明においては、これらの後処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、水洗→フィニッシングガム処理、界面活性剤含有リンス液→フィニッシング処理、2段向流フィニッシングガム処理等が好ましい例として挙げられる。
なお、本発明においては、現像処理後、一定量の少量の水を版面に供給して水洗し、その廃水を前記アルカリ現像処理液の原液の希釈水として再利用してもよい。
前記現像処理は、現像処理量や稼動時間等に応じて、前記アルカリ現像処理液が適宜補充される連続方式でもよいし、また、実質的に未使用の前記アルカリ現像処理液で処理するいわゆる使い捨て方式でもよい。
【0118】
以上の現像処理により得られた平版印刷版における不要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡等)の消去が行なわれる。
このような消去は、例えば、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不要画像部に照射した後に現像処理する方法も利用できる。
【0119】
前記平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布した後、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合には、バーニング処理が施される。
前記平版印刷版をバーニング処理する場合には、バーニング処理前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その処理の方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。前記整面液の塗布量としては、一般に0.03〜0.8g/m2 (乾燥重量)程度が適当である。
【0120】
前記整面液が塗布された前記平版印刷版は、必要に応じて乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、100〜300℃で、1〜20分程度が好ましい。
前記バーニング処理された前記平版印刷版には、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来より行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合には、ガム引き等のいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0121】
以上のような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0122】
なお、本発明の平版印刷版の製版方法は、更に、ネガ型赤外線感光性平版印刷版の製版に適用してもよい。
前記ネガ型赤外線感光性平版印刷版は、(A)光又は熱により分解して酸を発生する化合物、(B)酸により架橋する架橋剤、(C)アルカリ可溶性樹脂の少なくとも1種、(D)赤外線吸収剤及び(E)その他の添加物を含有してなる。
このネガ型赤外線感光性平版印刷版においては、赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより付与されたエネルギーが、(D)赤外線吸収剤によって熱エネルギーに変換され、それによって(A)光又は熱により分解して酸を発生する化合物が分解して酸を発生する。この酸が、(B)酸により架橋する架橋剤と(C)アルカリ可溶性樹脂との架橋反応を促進することにより画像形成が行われる。
【0123】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
−特定の共重合体の合成−
<合成例1(特定の共重合体1)>
撹拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ツ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を撹拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴をとり去り、室温下で30分間混合物を撹拌した。
【0124】
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間撹拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を撹拌しながら投入し、30分間得られた混合物を撹拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することにより、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0125】
次に、撹拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三ツ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g(0.0192モル)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258モル)、アクリロニトリル0.80g(0.015モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を撹拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下2時間、混合物を撹拌した。この反応混合物に、更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミド及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、更に65℃で2時間得られた混合物を撹拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を撹拌しながら投入し、30分混合物を撹拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体(特定の共重合体1)を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりこの特定の共重合体1の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0126】
(実施例1)
厚みが0.3mmであるアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用いこの表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2 であった。次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗し乾燥し、更に、珪酸ナトリウム2.5重量%水溶液で30℃で10秒親水化処理し、下記下塗り液を塗布し、塗膜を80℃で15秒間乾燥して下塗り層を形成した支持体を得た。乾燥後の前記下塗り層の塗膜の被覆量は、15mg/m2 であった。
【0127】
−下塗り液の組成−
下記(化5)に示す化合物・・・・・・・・・・0.3g
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・100g
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1g
【0128】
【化5】
Figure 0003795658
【0129】
得られた支持体の下塗り層上に、以下の感光層塗布液[a]を、その塗布量が1.8g/m2 になるよう塗布し、ポジ型赤外線感光性平版印刷原版[A]を得た。これを1003mm×800mmサイズに裁断し、多数枚を準備した。
【0130】
−感光層塗布液[a]−
特定の共重合体1・・・・・・・・・・・・・0.75g
m,p−クレゾールノボラック・・・・・・・0.25g
(m,p比=6/4、重量平均分子量3,500、未反応クレゾール0.
5重量%含有)
p−トルエンスルホン酸・・・・・・・・・0.003g
テトラヒドロ無水フタル酸・・・・・・・・・0.03g
シアニン染料A(下記構造)・・・・・・・0.017g
ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸
アニオンにした染料・・・・・・・・・・0.015g
メガファックF−177・・・・・・・・・・0.05g
(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
γ−ブチルラクトン・・・・・・・・・・・・ 10g
メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・ 10g
1−メトキシ−2−プロパノール・・・・・・ 1g
【0131】
【化6】
Figure 0003795658
【0132】
得られた赤外線感光性平版印刷原版[A]を、出力500mW,波長830nm、ビーム径17μm(1/e2 )の半導体レーザを用いて、主走査速度5m/秒にて露光した。
次に、浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機PS−900NP(富士写真フィルム(株)製)の現像処理槽に、下記組成のアルカリ現像処理液イ(pH約13)を20リットル仕込み、30℃に保温した。PS−900NPの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フィルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を8リットル仕込んだ。
【0133】
−アルカリ現像処理液イの組成−
D−ソルビット・・・・・・・・・・・・・2.5重量%
水酸化ナトリウム・・・・・・・・・・・0.85重量%
ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩・・・0.05重量%
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・96.6重量%
【0134】
自動現像機PS−900NP内蔵の現像補充制御インピーダンス値を40.5ms/cmとして、下記の現像補充液イを補充しながら、露光済みの赤外線感光性平版印刷原版[A]を一日当たり160版づつ、3ヶ月間現像処理した。この現像処理で得られた平版印刷版上の基準細線(8μm)の線幅を測定したところ、現像処理の開始時から3ケ月処理後まで全く変化が見られなかった。
また、得られた平版印刷版をオフセット印刷機スプリント25(小森印刷機製造(株)製)で印刷を行ったところ、インキ着肉性良好で、刷り出しから15枚で汚れもなく美しい印刷物が得られ、引き続いて7万枚の満足な印刷物を得られた。
【0135】
−現像補充液イの組成−
D−ソルビット・・・・・・・・・・・・・5.6 重量%
水酸化カリウム・・・・・・・・・・・・・2.5 重量%
ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩・・・・0.2 重量%
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・91.7 重量%
【0136】
(比較例1)
実施例1において、アルカリ現像処理液イ及び現像補充液イの代わりに、下記の現像処理液ロ及び現像補充液ロを用い、インピーダンス値を56ms/cmとした他は、実施例1と同じ条件で露光済みの赤外線感光性平版印刷原版[A]を現像処理した。
現像処理の開始後1ケ月で細線線幅が6μmに細り、2ケ月目には画像表面がやられ、薄くなり始めた。
また、得られた平版印刷版をオフセット印刷機スプリント25(小森印刷機製造(株)製)で印刷を行ったところ、処理開始時の刷り出しから75枚で満足な印刷物が得られ、更に7万枚の印刷物を得た。しかし、3ヶ月処理後得られた平版印刷版からは、満足な印刷物を得るのに約100枚の印刷が必要であった。また4.5万枚印刷したところで画像が摩耗し、それ以上の印刷はできなかった。
【0137】
−現像処理液ロの組成−
[SiO2]/[K2O]モル比1.16、
SiO2 1.4重量%の珪酸ナトリウム水溶液・・99.9重量%
ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩・・・・・・・・・0.1重量%
【0138】
−現像補充液ロの組成−
[SiO2]/[K2O]モル比0.98、
SiO2 2.0重量%の珪酸ナトリウム水溶液・・99.8重量%
ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩・・・・・・・・・0.2重量%
【0139】
(実施例2)
実施例1におけるのと同じ支持体に、下記組成の感光層塗布液[b]をその塗布量が1.8g/m2 になるよう塗布し乾燥して感光層を形成し、赤外線感光性平版印刷原版[B]を得た。
【0140】
−感光層塗布液[b]の組成−
特定の共重合体1・・・・・・・・・・・・・・・0.4g
m,p−クレゾールノボラック・・・・・・・・・0.6g
(m,p比=6/4、重量平均分子量3,500、未反応クレゾール0.
5重量%含有)
p−トルエンスルホン酸・・・・・・・・・・0.003g
テトラヒドロ無水フタル酸・・・・・・・・・・0.03g
シアニン染料B(下記構造)・・・・・・・・0.017g
エチルバイオレット(オリエント化学工業(株)製)
の対イオンを1−ナフタレンスルホン酸
アニオンにした染料・・・・・・・・・・・0.015g
メガファックF−177・・・・・・・・・・・0.05g
(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系界面活性剤)
γ−ブチルラクトン・・・・・・・・・・・・・ 10g
メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・ 10g
1−メトキシ−2−プロパノール・・・・・・・ 3g
【0141】
【化7】
Figure 0003795658
【0142】
そして、赤外線感光性平版印刷原版[A]の代わりに同[B]を用いた外は実施例1と同じ現像処理を行った。
得られた平版印刷版からは刷り出しからわずか15枚で美しい印刷物を得ることができた。
【0143】
(実施例3)
実施例1で用いた感光層塗布液[a]に、熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ水溶液可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質として、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル化合物(米国特許第3,635,709号明細書の実施例1に記載されているもの)0.20gを添加した外は、実施例1と同様にして平版印刷版を得た。
得られた平版印刷版からは刷り出しからわずか15枚で美しい印刷物を得ることができた。
【0144】
(実施例4)
実施例1において、アルカリ現像処理液イを下記組成のアルカリ現像処理液ハに代えた外は、実施例1と同様にしてポジ型赤外線感光性平版印刷原版[A]を現像処理した。
その結果、実施例1と同様に良好な結果を得た。
【0145】
−アルカリ現像処理液ハの組成−
D−ソルビット・・・・・・・・・・・・・・2.5重量%
水酸化カリウム・・・・・・・・・・・・・・1.3重量%
ジエチレントリアミンペンタ
(メチレンホスホン酸)5Na塩・・・・・0.1重量%
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96.1重量%
【0146】
また、本発明におけるアルカリ現像処理液が、紫外・可視光線感光性平版印刷原版の現像処理にも併用できるかどうかを確認するため、後述するポジ型紫外線感光性平版印刷原版[C]に対して、前記アルカリ現像処理液ハを用いて現像処理を行った。
【0147】
<ポジ型紫外線感光性平版印刷原版[C]>
厚みが0.24mmであるアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液とを用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で20秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗し、次いで20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて0.7%硝酸水溶液中で400クーロン/dm2の電気量で電解粗面化処理を行った。このアルミニウム板を、10%水酸化ナトリウム水溶液中で表面のアルミニウムの溶解量が0.9g/m2になるように処理した。水洗後、20%硝酸溶液中で中和、洗浄してスマットを除いた後、18%H2 SO4 水溶液中で、酸化皮膜量が3g/m2になるように陽極酸化した。
次いで、35℃、2%の珪酸ナトリウム水溶液で親水化処理を行った。
以上により得た支持体上に下記組成の下塗り液を乾燥後の重量にして10mg/m2となるように塗布して90℃で1分間乾燥し、下塗り層を設けた。
【0148】
−下塗り液の組成−
フェニルホスホン酸・・・・・・・・・・・・・・0.06g
硫酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.12g
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100g
【0149】
続いて、下記組成の感光層塗布液[c]を調製し、前記支持体の下塗り層上に乾燥後の重量にして1.8g/m2となるように感光層を設けた。
【0150】
−感光層塗布液[c]の組成−
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂・・・・・・・ 1.9g
(3核体以上の成分含有量:94.6重量%、分子量:12,500)
1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリドと
ピロガロール−アセトン樹脂との
エステル化物(分子量:2,500)・・・・・0.76g
テトラヒドロ無水フタル酸・・・・・・・・・・・ 0.2g
4−〔p−N−(p−ヒドロキシベンゾイル)
アミノフェニル〕−2,6−ビス
(トリクロロメチル)−s−トリアジン・・・・0.02g
ビクトリアピュアブルーBOH・・・・・・・・・0.03g
(保土谷化学工業製)
メガファックF−177・・・・・・・・・・・0.006g
(大日本インキ化学工業製、フッ素系界面活性剤)
メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・ 15g
プロピレングリコールモノメチルエーテル・・・・ 15g
【0151】
この感光層の表面に、下記のようにマット層形成用樹脂液を吹き付けてマット層を設け、ポジ型紫外線感光性平版印刷原版[C]を得た。
マット層形成用樹脂液として、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸(仕込重量比=65:20:15)共重合体の一部をナトリウム塩とした12%水溶液を準備し、回転霧化静電塗装機で霧化頭回転数25,000rpm、樹脂液の送液量は40ml/分、霧化頭への印加電圧は−90kv、塗布時の周囲温度は25℃、相対湿度は50%とし、塗布後2.5秒で塗布面に蒸気を吹き付けて湿潤させ、ついで湿潤した3秒後に温度60℃、湿度10%の温風を5秒間吹き付けて乾燥させた。マットの高さは約6μm、大きさは約30μm、個数は150個/mm2であった。
このようにして得られた感光性平版印刷原版[C]を1003mm×800mmの大きさに裁断したものを多数枚用意し、これらに原稿フィルムを通して1mの距離から3kwのメタルハライドランプを用いて、60秒間露光した。
【0152】
次に、浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機PS−900NP(富士写真フィルム(株)製)の現像処理槽に、前記アルカリ現像処理液ハ(pH約13.1)を20リットル仕込み、30℃に保温した。PS−900NPの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フィルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を8リットル仕込んだ。
更に自動現像機PS−900NP内蔵の現像補充制御インピーダンス値を40.5ms/cmとして、実施例1で用いた現像補充液イを補充しながら、ポジ型紫外線感光性平版印刷原版[C]、を一日当たり各40版を現像処理した。
【0153】
画像露光の際、ステップタブレット(1段の光学濃度差が0.15で15段のもの)を同時に焼き付けて現像した。現像処理の開始時、その版上の光量に対応して残った画像の段数(クリア/ベタ段数)を読み取り、その値を紫外線感光性平版印刷版[C]の感度と定義し、処理中のこの感度の変動を調べた。その結果、3ヶ月経ても感度変動はなく、安定した画像が得られた。
3ヶ月間の処理後、現像処理槽からアルカリ現像処理液を抜き取ったところ、現像処理槽にはカスやヘドロの発生は見られなかった。
また、得られた平版印刷版を前記オフセット印刷機スプリント25(小森印刷機製造(株)製)により、印刷を行ったところ、刷り出しのインキ着肉性に優れ、汚れもなく美しい印刷物が得られた。
【0154】
(実施例5)
下記組成のオーバーコート液▲1▼又は▲2▼を、実施例1のポジ型赤外線感光性平版印刷原版[A]の感光層の上にそれぞれ乾燥後の重量にして0.2g/m2 となるように塗布し乾燥し、オーバーコート層を形成した、赤外線感光性平版印刷原版[A▲1▼]及び[A▲2▼]を得た。
得られた感光性平版印刷原版[A▲1▼]及び[A▲2▼]に対し、波長820〜850nm程度の赤外線を発する、200mJ/cm2 のエネルギー量の半導体レーザーを用いて走査露光した。露光後、パネルヒーターにて、110℃で30秒間加熱処理を行った。
次に、浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機PS−900NP(富士写真フイルム(株)製)の現像処理槽に、実施例4で用いたアルカリ現像処理液ハ(pH約13.1)を20リットル仕込み、30℃に保温した。PS−900NPの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フィルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を8リットル仕込んだ。
このように準備した自動現像機PS−900NPに、前述の露光、加熱済みの赤外線感光性平版印刷原版[A▲1▼]及び[A▲2▼]を通し、現像処理を行った。
得られた平版印刷版をオフセット印刷機スプリント25(小森印刷機製造(株)製)にセットし、印刷を行ったところ、何れも刷り出しから16枚で良好な印刷物が得られた。
赤外線感光性平版印刷原版は、現像前に付けられた感光層の傷の部分が現像中に溶解して画像が欠落してしまうことがあったが、前記オーバーコート層を設けることによって解決された。
【0155】
−オーバーコート液▲1▼の組成−
PVA−205・・・・・・・・・・・・・・・・2.5重量%
(クラレ製、ポリビニルアルコール)
メガファックF−177・・・・・・・・・・・0.03重量%
(大日本インキ化学(株)製、フッ素系ノニオン系界面活性剤)
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97.47重量%
【0156】
−オーバーコート液▲2▼の組成−
メチルメタクリレート/
エチルアクリレート/
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
(仕込み重量比70:15:15)共重合体
の一部ナトリウム塩・・・・・・・・・・・・・2.5重量%
メガファックF−177・・・・・・・・・・・0.03重量%
(大日本インキ化学(株)製、フッ素系ノニオン系界面活性剤)
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97.47重量%
【0157】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、赤外線レ−ザ−により直接描き込み可能な赤外線感光性平版印刷原版に好適な現像処理方法を用いた平版印刷版の製版方法を提供することができる。
従来の珪酸塩現像処理液で赤外線感光性平版印刷原版を処理した場合、平版印刷原版のインキ着肉性は大きく劣ったが、本発明におけるアルカリ現像処理液で赤外線感光性平版印刷原版を処理した場合には、着肉性が従来の紫外・可視光線感光性平版印刷原版並みに改善され、更に該赤外線感光性平版印刷原版の狭い現像許容幅を補完し、常に安定な印刷版を得ることができる。しかも、前記アルカリ現像処理液は、従来における紫外・可視光線感光性平版印刷原版の現像処理にも適しており、赤外線感光性平版印刷原版と紫外・可視光線感光性平版印刷原版とを一度に共通の現像処理を行うことが可能である。それゆえ、本発明によると、省スペース及び省力化も可能となる。また、本発明によると、現像処理液を長期間使用してもカスやヘドロが発生し難く、特に自動現像機を用いた処理に適している。

Claims (3)

  1. 親水性支持体上に、赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物を塗布してなる感光層を有する平版印刷原版を、
    赤外線レーザーで露光する工程と、
    少なくとも一種の非還元糖と、少なくとも一種の塩基とを含有するアルカリ現像処理液で現像する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法。
  2. 赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物が、以下の(A)〜(C)を含有する請求項1に記載の平版印刷版の製版方法。
    (A)以下の官能基(a−1)〜(a−3)のうち少なくとも1つを有するアルカリ水溶液可溶性高分子化合物の1種以上。
    (a−1)フェノール性水酸基、
    (a−2)スルホンアミド基、
    (a−3)活性イミド基。
    (B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物。
    (C)光を吸収して発熱する化合物。
  3. (B)該アルカリ水溶液可溶性高分子化合物と相溶することにより該高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物と、(C)光を吸収して熱を発生する機能を持つ化合物とに換えて、双方の特性を有する一つの化合物を含有する請求項2に記載の平版印刷版の製版方法。
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