JP5589732B2 - ホットメルト接着剤組成物およびホットメルト接着剤付きフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ホットメルト接着剤組成物およびホットメルト接着剤付きフィルムに関する。
ホットメルト接着剤付きフィルムは、凹凸のほとんどない被着体に貼り合せる場合には、貼り合せ作業は容易であるが、数μmの凹凸がある被着体、例えば、ポリエステルフィルム上に銅箔をラミネートし、該銅箔をエッチングして形成された電極回路表面などに貼り合せるとホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまうことがあり、それがシワの原因になることや空気が混入した部分(エアポケット)を起因として剥れてしまうことがある。このため、数μmの凹凸のある部分にも柔軟に対応してホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、また、異物や埃などがあってもフィッシュアイが発生しないことが求められる。このために、弾性率の低い材料を用いて接着剤自体を柔らかくすることによって、凹凸のある部分に柔軟に対応して接着剤層と被着体の界面に空気が残ることがなく貼り合せることは出来る。この場合、接着剤自体が柔らかいため、所望の接着力を得ることができず、また、ホットメルト付き接着フィルムが、ずれてしまう問題があった。また一方では、接着温度を高くし、シールする瞬間のホットメルト接着剤を柔らかくすることで、凹凸のある部分に柔軟に対応して接着剤層と被着対の界面に空気が残ることなく貼り合せる方法が採られる。しかし、被着体の基材、および/またはホットメルト接着剤付きフィルムの基材の種類によっては、接着温度を高くすることにより、熱収縮や、分解、溶融等の熱負けが生じる場合がある。また特許文献1では、ホットメルト接着剤層の層内に複数の気泡を形成することで、ホットメルト接着剤層自体にクッション性をもたせる方法も提案されているが、段差の部分に空気を残らないようにするには不十分であった。
特開2010ー6898号公報
本発明は、前記従来技術の背景に鑑み、かかる問題点を解決し、被着体の表面に数μmの凹凸のある部分、具体的には、金属回路基板の基材と金属回路の凹凸がある部分にも柔軟に対応してホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、また、異物や埃などがあってもフィッシュアイが発生しないホットメルト接着剤組成物およびホットメルト接着剤付きフィルムを提供せんことにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)熱可塑性樹脂100質量部に対し、結晶構造が六方晶であり、層状構造を有する窒化ホウ素を1〜15量部含有すること、
(2)前記窒化ホウ素のメジアン径D50が0.5μmから10μmであること、
)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および、ポリアミド樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の組合せによる混合樹脂を含むこと、
)基材の少なくとも一方の面に、前記(1)から()のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物の層が、形成されてなること、
である。
本発明によれば、被着体の表面に数μmの凹凸のある部分、具体的には、金属回路基板の基材と金属回路の凹凸がある部分にも柔軟に対応してホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、また、異物や埃などがあってもフィッシュアイが発生しないホットメルト接着剤組成物およびホットメルト接着剤付きフィルムを提供できる。
本発明は、前記課題、つまり被着体の表面に数μmの凹凸のある部分、具体的には、金属回路基板の基材と金属回路の凹凸がある部分にも柔軟に対応してホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、また、異物や埃などがあってもフィッシュアイが発生しないホットメルト接着剤組成物およびホットメルト接着剤付きフィルムについて、鋭意検討し、特定の無機粒子を配してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明のホットメルト接着剤組成物は、基材フィルム層の少なくとも一方の面にホットメルト接着剤層を設けたホットメルト接着剤付きフィルムと被着体のそれぞれ2つの面を熱接着させるために用いられる。
本発明で用いられるホットメルト接着剤組成物は、結晶構造が六方晶であり、層状構造を有する無機粒子を熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.5〜15質量部含有してなるものである。
まず、本発明のホットメルト接着剤組成物を構成する熱可塑性樹脂は、被接着体の材質や耐熱温度、接着したものの使用温度等により、種類や融点、融解温度を適宜選択することができるものであるが、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂より選ばれる少なくとも1つ以上を含むことが、対象に合わせて選択できる幅が広いことから好ましく、これらの中でもポリエステル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および、ポリアミド樹脂からなる群より選ばれる1種、または2種以上の組合せによる混合樹脂を含むものが基材との接着力や、耐熱性などの点からより好ましい。また融点が40℃以上150℃以下のポリエステル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を使用するのが、特に好ましい。融点が40℃未満であると、熱接着する準備工程の、ホットメルト接着剤付きフィルムと被着体の接着位置を調整する段階において、前記ホットメルト接着剤層が、前記被着体に触れたとき、ブロッキングを生じてしまい、接着位置を調整することが困難であったり、また、ブロッキングした部分を無理に剥がそうとした時、ホットメルト接着剤付きフィルムや、被着体にシワ、折れ、破れが生じてしまう場合がある。150℃よりも大きいと、熱接着の際に高い温度をかけないと、接着させることができなくなる場合があって、作業効率が悪くなったり、被接着体であるシートが熱で損傷する場合がある。
本発明において熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂を使用する場合、重量平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定値でポリスチレン換算値)が8,000以上100,000以下であることが好ましい。前記重量平均分子量が8,000より小さいときは、凝集力に欠け、接着強度、特に、高温での接着強度が低下したり、軟化温度も小さくなる場合がある。また、前記重量平均分子量が100,000より大きいときは、塗工時の溶融粘度が高くなり、ホットメルト接着剤の粘度を下げるため高い熱接着温度が必要となり、基材フィルムに積層する工程において、生産速度が著しく低下したり、ホットメルト接着剤付きフィルムを被着体に熱接着する際には、接着温度を高くする必要があり、この結果、基材フィルムおよび/または被着体の熱収縮や、分解、溶融等の熱負けが生じるなどの問題が発生する場合がある。本発明において好ましいポリエステル樹脂は、重量平均分子量10,000以上80,000以下のものである。
本発明において熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂を用いる場合に、ポリエステル樹脂を構成する共重合モノマーである酸成分およびポリオール成分は、以下の成分が使用できる。
酸成分としては、芳香族二塩基性酸、脂肪族二塩基性酸および脂環式二塩基性酸等が使用できる。芳香族二塩基性酸の具体的例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、α−ナフタレンジカルボン酸、β−ナフタレンジカルボン酸、及び、そのエステル形成体等が、脂肪族二塩基性酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデシレン酸、ドデカン二酸、及びそのエステル形成体等が、脂環式二塩基性酸の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。かかる酸成分のうち、テレフタル酸及びそのエステル形成体が、接着強度の点で好ましく、テレフタル酸の含有割合は、全酸成分に対して30モル%以上であることが好ましい。テレフタル酸成分が30モル%未満であると、樹脂の凝集力や硬さが不足し、接着強度が低くなる場合がある。また、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸もポリエステル合成時のゲル化が生じず、接着強度を損なわない範囲内で併用することが可能であり、全酸成分に対して5モル%以下の範囲で使用することができる。
ポリオール成分としては、脂肪族グリコールや脂環式グリコールの2価アルコールおよび多価アルコールが使用できる。脂肪族グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、2,2,3−トリメチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が、脂環式グリコールの具体例としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールも全アルコール成分に対し、5モル%以下の範囲で使用することができる。二価アルコールとしては、1,4−ブタンジオールを使用することが好ましく、1,4−ブタンジオールの全アルコール成分に対する割合は30モル%以上であることが好ましい。1,4−ブタンジオールが30モル%未満のときは、得られたポリエステル樹脂は、凝集力に欠け、接着強度が低く、耐熱性が不足する場合がある。
上記の酸成分およびポリオール成分を用い通常の方法によりポリエステル樹脂を合成・製造することができる。例えば、原料及び触媒を仕込み、生成物の融点以上の温度で加熱する溶融重合法や、生成物の融点以下で重合する固相重合法や、溶媒を使用する溶液重合法などのいずれの方法も採用することができるが、なかでも本発明の効果をそうするのに適度な重合度のポリエステルを得ることが容易であることから溶融重合法が好ましく、エステル交換法や直接エステル化法により製造することがより好ましい。
また、市販のポリエステル樹脂をそのまま使用してもよい。例えば、“アロンメルト”(登録商標)PES−120L、PES−140H、PES−111EE、PES310S30、PES375S40、PPET1008、PPET1025、PPET2102、PPET1303S、HM−12(以上、東亞合成(株)製)、“ニチゴーポリエスター”(登録商標)SP−154、SP−165、SP−170、SP−176(以上、日本合成化学(株)製)、“バイロン”(登録商標)200、240、300、550、BX1001(以上、東洋紡(株)製)、などが挙げられる。
本発明において熱可塑性樹脂として好ましく使用されるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂とは、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルを共重合した樹脂である。(メタ)アクリル酸アルキルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチルなどが挙げられる。一般的には、(メタ)アクリル酸アルキルとして、メタクリル酸メチルが使用されるが、その頭文字を取り、これらのポリマーは、EMMA(エチレン−メチルメタクリレート)と呼ばれていることが多い。
本発明のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂の成分は、全モノマー中の(メタ)アクリル酸アルキル単位量が、20〜45質量%、好ましくは25〜40質量%、更に好ましくは、28〜45質量%の範囲内である。(メタ)アクリル酸アルキル単位量が45質量%を超えるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂を使用した場合、ホットメルト接着剤の凝集力が大幅に減少する。
本発明において熱可塑性樹脂として好ましく使用されるポリオレフィン樹脂とは、一般には炭化水素系樹脂であり、例えばポリエチレン、ポリα・オレフィン、エチレンーα・オレフィン共重合体、エチレンーα・オレフィンージエン共重合体、α・オレフィンージエン共重合体、ポリスチレン、EPDM、ジシクロペンタジェン系石油樹脂、等であり、好ましくは、エチレンーα・オレフィン共重合体、エチレンーα・オレフィンージエン共重合体、α・オレフィンージエン共重合体であり、より好ましくは、エチレンーα・オレフィンージエン共重合体である。エチレン−α・オレフィン−ジエン共重合体とは、エチレン、エチレンを除くα−オレフィン及びジエンを主成分とする共重合体である。エチレンとα−オレフィンの合計を100モル%とした場合に、エチレン含有量は50〜90モル%であることが好ましい。エチレン含有量が90モル%を超えて含有されると柔軟性が不足し易く、一方、50モル%未満であると機械的強度が不足し易く好ましくない。本発明の好ましいα・オレフィンとは、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等であり、より好ましくはプロピレン、ブテン−1である。本発明の好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどの非共役ジエンであり、より好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
本発明において熱可塑性樹脂として好ましく使用されるエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂とは、エチレンと酢酸ビニルとの共重合樹脂であり、エチレン主鎖中に酢酸ビニルがランダム状に共重合した分子構造を有する熱可塑性の樹脂である。本発明のホットメルト接着剤組成物において使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂の酢酸ビニル含有率は20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%の範囲である。酢酸ビニル含有率が20質量%未満ではホットメルト接着剤組成物の接着性が低下し、50質量%を超えるとホットメルト接着剤組成物の機械的強度が低下する。
本発明において熱可塑性樹脂として好ましく使用されるポリアミド樹脂とは、ダイマ−酸とジアミンとからなるポリアミド樹脂であってアミン価3〜30、軟化点が90℃以上、粘度が300 (cps/200℃) 以上のポリアミド樹脂が挙げられる。かかるポリアミド樹脂は、具体的には例えば大豆油、桐油、ト−ル油等の脂肪酸の二量体であるダイマ−酸と例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなアルキルジアミン類などの反応生成物が用いられる。
本発明のホットメルト接着剤組成物を構成する、結晶構造が六方晶であり、層状構造を有する無機粒子とは、例えば、窒化ホウ素(h−BN)、黒鉛、ニ硫化モリブデン、ニ硫化タングステン、フッ化黒鉛等が挙げられる。好ましくは、入手容易性等から窒化ホウ素(h−BN)、黒鉛、ニ硫化モリブデンである。市販されている具体例としては、水島合金鉄(株)製HP−40、電気化学工業(株)製デンカボロンナイトライドHGP、昭和電工(株)製SHOBN(登録商標)UHP等の窒化ホウ素(h−BN)、日本黒鉛工業(株)製GR−15、伊藤黒鉛工業(株)製ZZ−5F、(株)中越黒鉛工業所製CX−3000等の黒鉛、東レダウコーニング(株)製MOLYKOTE(登録商標)MICROSIZE、(株)ダイゾー製M−5パウダー等のニ硫化モリブデンが挙げられる。
本発明のホットメルト接着剤組成物を構成する、結晶構造が六方晶であり、層状構造を有する無機粒子は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.5〜15質量部含まれるものである。かかる比率は、0.8〜12質量部であることが好ましく、さらに好ましくは、1〜10質量部である。結晶構造が六方晶であり、層状構造を有する無機粒子を配合することにより、熱接着するときの熱によって前記ホットメルト接着剤組成物の溶融粘度が小さくなり、被着体の表面に数μmの凹凸のある部分にも柔軟に対応してホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、また、異物や埃などがあってもフィッシュアイの発生を抑えることができる。前記無機粒子を配することでホットメルト接着剤の溶融粘度が小さくなる現象について、明確な理由は定かではないが、次のように推定している。すなわち、本発明のホットメルト接着剤組成物に用いる無機粒子の結晶構造は、六方晶という六角網面の積み重なりとして規則正しい層状の結晶構造をしていることから、z軸方向(積み重なりの方向)の層と層とをつなげるのは弱いファンデルワールス力であるから結合力が弱く、x軸方向(六角網面の方向)へ互いにに滑りやすく、また、層間への熱可塑性樹脂介入によって層間の結合が更に減少するため、溶融粘度が小さくなるものと考えられる。無機粒子の量が、0.5質量部より小さいと、被着体の表面に数μmの凹凸のある部分にも柔軟に対応することができず、ホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまう場合がある。また、15質量部よりも大きいと、ホットメルト接着剤組成物中における無機粒子の体積比率が大きくなってしまうため、基材フィルムに対する密着力低下、被着体に対する接着力低下を引き起こしたり、溶融粘度が大きくなったりすることによって、被着体の表面に数μmの凹凸がある部分に対して柔軟に対応することができず、また、ホットメルト接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまう場合がある。
前記ホットメルト接着剤組成物を構成する無機粒子のメジアン径D50は、0.5μmから10μmである。一般に無機粒子の粒径が小さいと、無機粒子自体が凝集しやすくなり、熱可塑性樹脂中での無機粒子分散性が低下してしまうため、熱可塑性樹脂と無機粒子を均一に分散することが難しい。無機粒子の粒径が大きい場合は、接着材組成物を基材に積層したとき、接着剤層の表面に無機粒子の突起が発生してしまう。なお、ここで言う無機粒子のメジアン径D50とは、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所、LA−920)を用いて、レーザー回折/散乱法で測定された体積基準粒度分布から積算分布曲線の50%に相当する粒子径として算出されるメジアン径を意味する。
本発明において使用する無機粒子は、公知の方法で得ることができ、例えば、ジェットミルを用いて無機粒子を粉砕し、その後、サイクロン式分級機を用いて分級することによりメジアン径D50が0.5μmから10μmの任意の無機粒子を得ることができる。
本発明のホットメルト接着剤組成物には、接着耐久性の向上など種々の目的で、粘着性付与樹脂、粘着性付与樹脂以外の樹脂、ワックス、各種安定剤等の添加剤等を本発明のホットメルト接着剤組成物の性能を損なわない範囲内で配合することが可能である。粘着付与樹脂としては、例えば、(水素添加)テルペン系樹脂や(水素添加)石油樹脂、ロジンエステル等が使用できる。具体的には、テルペン系樹脂としては、αピネン、βピネン、ジペンテン、テルペンフェノール、スチレン変性テルペンおよびそれらの水素添加品が挙げられ、市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製の商品名YSレジン、YSポリエスター、クリアロンなど、アリゾナケミカル社製の商品名ゾナレッツ、ゾナタック、ナイレッツなどが挙げられる。石油樹脂としては、ナフサ分解油のうちのイソプレンやシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンのようなC5系留分を重合して得た樹脂とその水素添加品で、市販品としては、トーネックス(株)製の商品名エスコレッツ、日本ゼオン(株)の商品名クイントン、丸善石油(株)製の商品名マルカレッツ、グッドイヤーケミカル社せいのウィングタック、三井化学(株)製の商品名ハイレッツ、荒川化学(株)の商品名アルコンなどが挙げられる。粘着性付与樹脂以外の樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂等が使用できる。ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、更に食物油の水添品(カスターワックス)などがある。 安定剤としては、ポリカルボジイミドなどの加水分解防止剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤の添加が可能である。
本発明のホットメルト接着剤組成物を製造する際の熱可塑性樹脂と無機粒子の分散方法は特に限定されないが、例えば、単軸もしくは二軸のスクリュー方式溶融混練機、又はニーダー式加熱混練機に代表される通常の熱可塑性樹脂の混合機を用いて製造する方法で得ることができ、具体的には、熱可塑性樹脂に無機粒子及び種々の添加剤を配合し、分散する場合は、使用する熱可塑性樹脂及び添加剤樹脂の各々の軟化温度以上の温度で溶融混合することが好ましい。また例えば、熱可塑性樹脂を有機溶媒で溶解後、無機粒子および種々の添加剤を配合、攪拌する方法等で、有機溶剤に溶解したホットメルト接着剤組成物を得ることができる。
つぎに本発明のホットメルト接着剤付きフィルムについて説明を行う。本発明で用いられる基材としては、プラスチックフィルム、金属箔、合成紙、紙または表面処理が施された複合シートが好ましく用いられるが、中でも寸法安定性や耐久性等の点からプラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムの材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これらの共重合体やブレンド物やさらに架橋した化合物を用いることもできる。
さらに、上記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリエチレンα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどからなるフィルムが好ましく、これらの中で機械的特性、作業性などの品質、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが特に好ましく用いられる。
基材の厚みは特に限定されないが、通常10μm〜500μm、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μmであることが望ましい。
また、ホットメルト接着剤層の厚さは、片面1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは2〜30μmである。付着量が1μmより少ないと加工時の擦り傷等により付着層の脱落や、ピンホールが発生したり、所望の接着強度を得られなくなる場合がある。その結果、接着強度のバラツキが発生する場合がある。また、付着量が50μmより多くなると、スリット刃やトムソン刃等で所定の大きさに切断する際、切断したフィルムの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着する場合がある。
本発明のホットメルト接着剤付きフィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、予めホットメルト接着剤組成物を、融点以上の温度で溶融状態にし、スリットダイを介して、基材フィルムに塗布し、冷却固化させる方法、ホットメルト接着剤組成物を有機溶剤に溶解した塗布液を作成し、基材に塗布し、乾燥して、塗膜とすることで形成することができる。
前記塗布液の塗布方法は特に限定されないが、グラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、ダイコート法、およびバーコート法などの方法を用いることができる。この際、基材上には塗布液を塗布する前に、必要に応じて空気中あるいはそのほかの雰囲気中でのコロナ放電処理や、プライマー処理などの表面処理を施すことによって、塗布性が良化するのみならず、ホットメルト接着剤層をより強固に基材上に形成することができる。なお、塗布液濃度、塗膜乾燥条件または、塗膜の冷却条件は特に限定されるものではないが、塗膜乾燥条件は基材の諸特性に悪影響を及ぼさない範囲で行なうことが望ましい。
また、本発明のホットメルト接着剤付きフィルムにおいてホットメルト接着剤層は、上記塗布液で予め膜状物を作り、それを基材に貼着することで形成することができる。貼着する場合は、シリコーン系樹脂フィルム等の離型フィルムに塗布液を塗工し、基材に転写する方法が採用される。
以下に本発明を実施例により具体的に説明を行なうが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例において、特性の評価方法は、以下のとおりである。
〔ホットメルト接着剤組成物の溶融粘度〕
(株)島津製作所製の「フローテスタCFT−500形」(キャピラリー型粘度計)を使用して、測定条件として、プランジャー断面積=1cm、ダイ(ノズル)寸法=1mm(直径)、長さ=3mm、試験荷重=30kg/cm、試験温度=150℃を採用して評価を行った。
〔被着体凹凸部のエア抜け性〕
(1)評価用被着体の作成方法
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“ルミラー”(登録商標)(タイプS10)50μm(東レ(株)製)と、厚さ9μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業(株)製)とが、ポリウレタン系溶剤型接着剤(商品名:アドコートAD76P−1、東洋モートン(株)製)によってドライラミネーションされた2層積層物を準備した。このときの接着剤の厚さは、3μmであった。次いで、レジスト印刷、エッチングおよびレジスト剥離処理を行ない、線幅2mm、線間4mmの2本の導線回路を設けたフレキシブルフラットケーブルを作成し、これを評価用被着体とした。このときのPET基材と銅箔表面の段差は、12μmであった。
(2)試験片の作成方法
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“ルミラー”(登録商標)(タイプS10)50μm(東レ(株)製)を基材とした。また塗布液として、表1に示す組成の接着剤組成物をトルエン/MEK(メチルエチルケトン)=4/1(質量比)に溶解した42%溶液を用意した。この塗布液をコンマコーターにて基材の片面に45g/m塗布し、120℃で30秒乾燥してPET基材の片面にホットメルト層を有するホットメルト接着剤付きフィルムを得た。ホットメルト層の塗布厚さは20μmであった。
(3)凹凸部のエア抜け性評価方法
前記評価用被着体および試験片の作成方法の手順で作成した評価用被着体と試験片を重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて、シール温度120℃、シール時間2.0秒、シール圧力0.2MPaの条件で接着させた。この接着体の被着体凹凸部分、すなわち、PET基材と銅箔表面の段差部分境界を目視観察し、被着体と試験片の界面にエアポケット(空気の溜まった部分)の存在が無いものを○、有るものを×と判定した。
(実施例1〜実施例4、参考例5〜参考例11、比較例1〜比較例11)
実施例、参考例および比較例において用いたホットメルト接着剤組成物の各成分および配合は以下の通りである。
(熱可塑性樹脂成分)
成分(A)−1:熱可塑性樹脂(東亞合成(株)製、商品名:HM−12,非晶性共重合ポリエステル樹脂、ガラス転移温度=−3℃、融点=64℃、重量平均分子量=35,000)、
成分(A)−2:熱可塑性樹脂(東亞合成(株)製、商品名:アロンメルトPES−345、非晶性共重合ポリエステル樹脂、ガラス転移温度=−9℃、融点=55℃、重量平均分子量=35,000)。
成分(A)−3:成分a〜dを混合した熱可塑性樹脂
〔(成分a):熱可塑性樹脂(住友化学(株)製、商品名:アクリフトCM5021、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、メタクリル酸メチル単位量28モル%、融点67℃)29質量%、(成分b):熱可塑性樹脂(住友化学(株)製、商品名:アクリフトWD203−1、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、メタクリル酸メチル単位5モル%)1質量%、(成分c):粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、商品名:クリアロンP95、水素添加テルペン樹脂、軟化点95℃)40質量%、(成分d):ワックス(シェルMDS社製、商品名:FT−100、フィッシャートロプシュワックス、凝固点98℃)30質量%〕
(無機粒子および有機粒子)
成分(B)−1:六方晶窒化ホウ素粒子(水島合金鉄(株)製、商品名:HP−40J11、結晶構造:六方晶、層状構造、メジアン径D50:4μm)、
成分(B)−2:グラファイト粒子(日本黒鉛工業(株)製、商品名:GR−15、結晶構造:六方晶、層状構造、メジアン径D50:15μm)、
成分(B)−3:二硫化モリブデン粒子(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:MORYKOTE(登録商標)MICROSIZE、結晶構造:六方晶、層状構造、メジアン径D50:0.7μm)、
成分(B)−4:湿式シリカ粒子(富士シリシア化学(株)、商品名:サイシリア310P、結晶構造:非晶性、メジアン径D50:2.7μm)、
成分(B)−5:架橋アクリル粒子(綜研化学(株)製、商品名:MR−2G、結晶構造:非晶性、メジアン径D50:1.0μm)、
成分(B)−6:窒化アルミニウム粒子(東洋アルミニウム(株)製、商品名:トーヤルナイトJC、結晶構造:六方晶、ウルツ鉱型構造、形態:無定形、メジアン径D50:1.2μm)、
成分(B)−7:水酸化アルミニウム粒子(昭和電工(株)、商品名:ハイジライトH−43M、結晶構造:単斜晶、メジアン径D50:1.1μm)
前記各成分を下記の表1に示す割合で配合してなるホットメルト接着剤組成物を用いて、溶融粘度および被着体凹凸部のエアポケット有無の評価をした。得られた結果を表1に示した。
Figure 0005589732
表1から明らかなとおり、実施例、参考例で示すホットメルト接着剤組成物は、いずれも溶融粘度が低く、且つ、被着体に凹凸段差がある場合でもエアポケットが形成されること無く、熱溶融接着できることが判る。
これに対して、比較例で示すホットメルト接着剤組成物は、溶融粘度が高く、その結果、被着体の凹凸段差部分に熱溶融接着したとき、エアポケットが形成され、十分に熱接着できないことが判る。

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂100質量部に対し、結晶構造が六方晶であり、層状構造を有する窒化ホウ素を0.5〜15量部含有することを特徴とするホットメルト接着剤組成物。
  2. 前記窒化ホウ素のメジアン径D50が0.5μmから10μmである請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および、ポリアミド樹脂からなる群より選ばれる1種、または2種以上の組合せによる混合樹脂を含む請求項1または請求項2のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
  4. 基材の少なくとも一方の面に、請求項1から請求項のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物の層が形成されてなることを特徴とするホットメルト接着剤付きフィルム。
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