JP5587290B2 - 低分子ゲル化剤からなるスプレー用基材 - Google Patents
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Description
本発明のスプレー用基材は、スキンケア製品、ヘアケア製品、外用医薬品、芳香剤、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、農薬、洗浄剤、塗料、帯電防止用コーティング、防腐剤等のスプレー用基材として、さらに皮膜や薄膜形成用の基材として好適に利用可能である。
例えば、母液中に高分子増粘剤を溶解させて母液の粘度を上げることにより(3)の液だれの発生防止を図った提案がなされている[特許文献1]。しかし、通常の高分子化合物の溶液では、液だれを有効に防止する程に母液の粘度を高め過ぎると、スプレーそれ自体が不可能となることがある。従ってノズルへの吸い上げが可能であり且つ噴霧が可能であるためには、ある程度母液の粘度を低いものに設計しなければならず、その場合、今度は液だれ防止性が十分に達成できなくなる。すなわち、液だれの防止すると円滑なスプレーとを両立されることが重要であるが、そのための母液粘度の最適化は極めて困難といえるものであった。さらに、高分子化合物の溶液は噴霧の際、糸を引き易いという特有の性質(曳糸性)を有することから、液滴が個々独立している理想的なミスト状態にならず、増粘剤を加えない場合と比較してミスト化の程度が大幅に劣り、噴霧むらの原因になることも問題であった。
しかし、その母液は流動性を有するため、逆さまにした状態で噴霧ができないなど上記(1)の特性が抜本的には達成できない。さらには、液だれ防止性を高めるために界面活性剤の量を増大させると、例えば皮膚に噴霧するスプレー剤の場合には皮膚刺激性を生じ易くなり、上記(4)の安全性の点で不都合を生じる等の問題があった。
高分子化合物間を共有結合、或いはイオン結合や水素結合などを用いて架橋を行なうことで得られる高分子ゲル(化学ゲル、物理ゲル)は、スプレーに用いる場合、溶液を固化させるため容器からの液漏れを防ぐことが出来るので有効ではあるが、高分子化学ゲルのように化学架橋をしたものではゲル状態でスプレーすることは難しく、更に高分子物理ゲルでもその多くはスプレーができない。また、スプレー可能なものは薬物など低分子化合物の包接・徐放が不可能であり、さらにこれら薬剤等や他の添加物との相溶性が悪いことから相分離を起すといった問題を有していた。
また、他にも、低分子ヒドロゲル化剤には、アルコール水溶液や有機溶媒水溶液をゲル化したり、また水単体、有機溶媒単体でのゲル化はできないが、アルコール水溶液や有機溶媒水溶液をゲル化するものが報告されている。これら低分子ゲルの共通した特徴としては、外部からの応力にすばやく反応してゲルからゾルへの変換することが知られている。
生体適合性の高い素材であるヒドロゲルであっても、高分子化合物からなるヒドロゲルでは上記性能を十分に満足させることができず、低分子化合物からなるヒドロゲルを用いたスプレー用基材への提案はなされていない。
すなわち、第1観点として、媒体中の低分子ゲル化剤によりゲル化された水性媒体を含み、該低分子ゲル化剤は自己集合化を介して水性媒体をゲル化させる能力を有する低分子化合物の群から選択される1種又は2種以上の化合物からなる、スプレー用基材に関する。
第2観点として、前記低分子化合物の分子量が1000以下であることを特徴とする、第1観点に記載のスプレー用基材に関する。
第3観点として、前記ゲル化された水性媒体中の前記低分子化合物の濃度が0.0001〜20%(w/v)であることを特徴とする、第2観点又は第3観点に記載のスプレー用基材。
第4観点として、前記低分子化合物は、疎水性部位と親水性部位を有することを特徴とする、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載のスプレー用基材に関する。
第5観点として、前記低分子化合物が、式(1)
第6観点として、前記式(1)中、R3が−(CH2)n−X基であり、nが1乃至4の数であり、Xがアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至2個有し得る5員環又は5員環と6員環で構成される縮合複素環であることを特徴とする、第5観点に記載のスプレー用基材に関する。
第7観点として、前記式(1)中、R1が不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数11乃至21の直鎖状脂肪族基であることを特徴とする、第5観点に記載のスプレー用基材に関する。
第8観点として、前記式(1)中、R2が水素原子、又は炭素原子数1の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至3のアルキル基であることを特徴とする、第5観点に記載のスプレー用基材。
第9観点として、前記式(1)中、nが1乃至4の数であり、かつXがアミノ基、グアニジノ基又は−CONH2基であるか、又はnが1であり、かつXがピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基又はイミダゾール基であることを特徴とする、第6観点に記載のスプレー用基材に関する。
第10観点として、さらに、生理活性物質又は機能性物質を含有することを特徴とする、第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載のスプレー用基材に関する。
第11観点として、自己集合化を介して水性媒体をゲル化させる能力を有する低分子化合物の群から選択される1種又は2種以上の化合物と水性媒体を含む薄膜に関する。
第12観点として、前記自己集合化の形態が、ファイバー構造であることを特徴とする、第11観点に記載の薄膜に関する。
第13観点として、第1観点乃至第10観点のうちいずれか一項に記載のスプレー用基材をスプレー法により塗布することを特徴とする薄膜の作製方法に関する。
第14観点として、媒体中の低分子ゲル化剤によりゲル化された水性媒体を機械的に崩壊させることにより得られるゾルであって、該低分子ゲル化剤は自己集合化を介して水性媒体をゲル化させる能力を有する低分子化合物の群から選択される1種又は2種以上の化合物からなるものである、ゾルに関する。
第15観点として、前記ゾルを含有することを特徴とするスプレー用基材に関する。
第16観点として、前記ゾルの形成に用いる低分子ゲル化剤を成す低分子化合物が、式(1)
第17観点として、前記式(1)中、R3が−(CH2)n−X基であり、nが1乃至4の数であり、Xがアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至2個有し得る5員環又は5員環と6員環で構成される縮合複素環であることを特徴とする、第16観点に記載のスプレー用基材に関する。
第18観点として、前記式(1)中、R1が不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数11乃至21の直鎖状脂肪族基であることを特徴とする、第16観点に記載のスプレー用基材に関する。
第19観点として、前記式(1)中、R2が水素原子、又は炭素原子数1の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至3のアルキル基であることを特徴とする、第16観点に記載のスプレー用基材に関する。
第20観点として、前記式(1)中、nが1乃至4の数であり、かつXがアミノ基、グアニジノ基又は−CONH2基であるか、又はnが1であり、かつXがピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基又はイミダゾール基であることを特徴とする、第17観点に記載のスプレー用基材に関する。
第21観点として、前記式(1)で表される化合物と水性媒体を含有するゾルに関する。
第22観点として、第21観点に記載のゾルを含有することを特徴とするスプレー基材に関する。
第23観点として、前記低分子化合物が式(2)
R5乃至R8は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2)n−X基を表し、且つR5乃至R8のうち少なくとも一つ以上が−(CH2)n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)で表される脂質ペプチド又はその薬学的に使用可能な塩からなることを特徴とする、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のスプレー用基材に関する。
そのため、本発明のスプレー用基材に用いる低分子ゲル化剤によって得られたゲルは適当な応力を加えることにより速やかにゲルからゾルへ転換し、ゾル状態になったものはスプレーのノズルのような細い管を通ることが可能になる。
すなわち、水や各種水溶液等に前記低分子ゲル化剤を添加することにより、ゲルの固体状態からスプレー可能なスプレー用基材を作成することが可能になる。
また、本発明のスプレー用基材である低分子ゲルは、応力を与えてゲル状態からゾル状態へ変換しても自己集合化構造であるファイバー状態は維持され、且つそのファイバー状態により構築される網目構造もある程度は破壊されること無く存在している。このため噴霧した際、周囲に必要以上に飛散することがなく、一定範囲内の面積を均一に被覆させることができる。さらに、吹き付けられた直後も自己集合化したファイバー状態と網目構造が維持されているため、付着面でゲル状態に転換し、付着面を傾斜させてもゲル状態を維持しているため、液ダレを防ぐことができる。このように低分子ゲル化剤を用いることで、上記(2)と(3)の要求特性を満足させたスプレー用基材が提供できる。
R1及び隣接するカルボニル基で構成される脂質部(アシル基)の具体例としては、ラウロイル基、ドデシルカルボニル基、ミリストイル基、テトラデシルカルボニル基、パルミトイル基、マルガロイル基、オレオイル基、エライドイル基、リノレオイル基、ステアロイル基、バクセノイル基、オクタデシルカルボニル基、アラキドイル基、エイコシルカルボニル基、ベヘノイル基、エルカノイル基、ドコシルカルボニル基、リグノセイル基及びネルボノイル基等を挙げることができ、特に好ましいものとして、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、マルガロイル基、ステアロイル基、オレオイル基、エライドイル基及びベヘノイル基が挙げられる。
上記炭素原子数1若しくは2の分岐鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基とは、主鎖の炭素原子数が1乃至4であり、かつ炭素原子数1若しくは2の分岐鎖を有し得るアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基などが挙げられる。
炭素原子数1の分岐鎖を有し得る炭素原子数1乃至3のアルキル基とは、主鎖の炭素原子数が1乃至3であり、かつ炭素原子数1の分岐鎖を有し得るアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基又はsec−ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、i−プロピル基、i−ブチル基又はsec−ブチル基である。
上記−(CH2)n−X基において、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。
従って、上記−(CH2)n−基は、好ましくはアミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、カルバモイルメチル基、2−カルバモイルエチル基、3−カルバモイルブチル基、2−グアニジノエチル基、3−グアニジノブチル基、ピロールメチル基、イミダゾールメチル基、ピラゾールメチル基、又は3−インドールメチル基を表し、より好ましくは4−アミノブチル基、カルバモイルメチル基、2−カルバモイルエチル基、3−グアニジノブチル基、イミダゾールメチル基又は3−インドールメチル基を表し、さらに好ましくはイミダゾールメチル基である。
R5乃至R8は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2)n−X基を表し、且つR5乃至R8のうち少なくとも一つ以上が−(CH2)n−X基を表す。nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。ここでR5乃至R8の好ましい具体例としては、前出のR2又はR3で定義したものと同じ基が挙げられる。
上記式(2)で表される化合物において、低分子ゲル化剤として特に最も好適な脂質ペプチドとしては、ラウロイル−Gly−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−His−Gly、パルミトイル−Gly−His−Gly−Gly、パルミトイル−His−Gly−Gly−Gly、ステアロイル−Gly−Gly−Gly−His等が挙げられる。
前記溶媒としては、低分子ゲル化剤のファイバー化やヒドロゲル化を妨げるものでなければ特に限定されないが、好ましくは、水、アルコール、水とアルコールの混合溶媒、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。より好ましくは水又は水とアルコールの混合溶媒であり、さらに好ましくは水である。
前記アルコールは、好ましくは水に自由に溶解する水溶性アルコールであり、より好ましくは炭素原子数1乃至6のアルコールであり、さらに好ましくはメタノール、エタノール、2−プロパノール、i−ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンであり、さらに特に好ましくはエタノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン又はポリエチレングリコールである。
前記水溶性有機溶媒とはアルコール以外の有機溶媒であって、かつ水に任意の割合で溶解する有機溶媒を意味する。用いる水溶性有機溶媒の例としては、アセトン又はジオキサンなどが挙げられる。
酸及び塩は複数種加えても良く、また酸と塩を混合て加えても良いが、好ましく酸又は塩は1〜3種である。塩を2種類、又は酸を1〜2種類と塩1〜2種類を加えることで、溶液が緩衝能を持つことが望ましい。
前記の酸は、無機酸若しくは有機酸である。好ましい無機酸としては、炭酸、硫酸、若しくはリン酸が挙げられる。より好ましくは、リン酸であり、さらに好ましくはリン酸である。又、好ましい有機酸の例としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、若しくは乳酸が挙げられる。より好ましくは、乳酸である。
前記の塩は、無機塩若しくは有機塩である。好ましい無機塩の例としては無機乳酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩若しくは無機リン酸塩が挙げられる。より好ましくは、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウムであり、さらに好ましくは乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウムである。又、好ましい有機塩の例としては、有機アミンの塩酸塩若しくは有機アミン酢酸塩が挙げられる。より好ましくはエチレンジアミン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩である。
また機能性物質としては、メントール、カンフル、ローズマリー等の香料・清涼剤、ブリリアントブルー、フルオレセイン、カロチン、リボフラビン、ベントナイト、シリカ、酸化チタン、タルク、炭酸カリウム等の色素・染料・着色料・顔料、アスコルビン酸等のビタミン類、トコフェノール等の美白剤、アミノ酸、尿素、セラミド等の保湿因子等を挙げることができる。
前記ゾルは、前述の低分子ゲル化剤、好ましくは前記式(1)又は式(2)で表される低分子化合物(脂質ペプチド)の群から選択される1種又は2種以上の化合物からなるものと、前記水性媒体(溶媒)を含有して形成されたゲル化された水性媒体を、好ましくは機械的に崩壊させることにより得られる。
本発明のスプレー用基材に使用する低分子ゲル化剤、特に前記式(1)(又は式(2))で表される低分子化合物(脂質ペプチド)は、水溶液又はアルコール溶液系中に投入されると、式(1)におけるペプチド部が水素結合により分子間非共有結合を形成し、一方、式(1)における脂質部が疎水的にパッキングするように自己集合化(或いは自己組織化ともいう)し、ファイバーが形成される。ファイバーの形状は限定されないが、筒状又は板状の形状が挙げられる。
参考として図1に脂質ペプチドの自己集合化及びゲル化の概念図の一例を示す(但し、本発明のスプレー用基材において、全ての脂質ペプチドが図1に示す自己集合化及びゲル化の形態をとっているとは限らない)。該脂質ペプチド分子(a)は疎水性部位である脂質部を中心として集合し(b)、自己集合化によりファイバー(c)を形成する。
ファイバー形成には、前記低分子ヒドロゲル化剤を1種類用いても良いし2種類以上を組み合わせて用いても良い。好ましくは1種類又は2種類を用い、さらに好ましくは1種類を用いる。ただし2種類用いる場合は、1種類の場合と異なる性質を得ることが期待できる。
従って、本発明のスプレー用基材を用いると、目的物を大きく外して飛散することなくスプレーでき、目的物表面をムラ無く被覆することができ、被覆接着面からの液だれをさせずにスプレーが可能となる。
また、脂肪酸やアミノ酸といった天然由来原料により構成された低分子ゲル化剤を用いることで、皮膚面などの被覆に際し、安心、安全に使用できる。
なお、以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
Gly:グリシン
His:ヒスチジン
HBTU:2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロホスフェート(渡辺化学工業(株))
HOBt:1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール((株)ペプチド研究所)
DMF:ジメチルホルムアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン(東京化成工業(株))
TFA:トリフルオロ酢酸(渡辺化学工業(株))
TIS:トリイソプロピルシラン(渡辺化学工業(株))
DMSO:ジメチルスルホキシド
WSCD:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
また、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「tBu」は第三ブチル基、「Ac」はアセチル基、「Trt」はトリチル基(保護基)を夫々表す。
脂質ペプチドは、以下に示すFmoc固相ペプチド合成法の手順に従って合成した。樹脂は主にアミノ酸−Barlos Resinを用いた。合成スケールは0.3mmolで行なった。
ペプチド合成装置にH−His(Trt)−Trt(2−Cl)樹脂(渡辺化学工業(株))163mg(0.125mmol、0.77mmol/g)を秤取った反応容器を装着し、Fmoc−Gly−OH(渡辺化学工業(株))149mg(4eq)をFmoc法にて縮合させて、H−Gly−His(Trt)−Trt(2−Cl)樹脂を得た。
・HPLC精製条件:
カラム:YMC−Pack ODS−A (250×20mm I.D.)
流速:10ml/min
溶出:MeCN/0.1%TFAaq.
=45/55−(80min,liner gradient)−65/35
検出波長:220nm
温度:室温
<N−パルミトイル−Gly−OtBuの合成>
Gly−tBu・HCl(8.82g、52.6mmol)、塩化パルミトイル(15.2ml、50.1mmol)をクロロホルム200mlに溶解し、氷冷下攪拌した中へトリエチルアミン(14.6ml、105mmol)を10分間で滴下後、徐々に室温に戻して15時間攪拌した。水を加えて分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をヘキサンで洗浄し、濾別することで目的化合物を無色固体として17.4g(94%)得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):8.09(1H,t,J=6.3Hz),3.67(2H,d,J=6.3Hz),2.09(2H,t,J=7.8Hz),1.48(2H,m),1.39(9H,s),1.23(24H,brs),0.85(3H,t,J=6.9Hz).
・MS(EI)m/z:314.3(M+−Boc+H)
N−パルミトイル−Gly−OtBu(17.4g、47.1mmol)に、4M HCl/AcOEt(118ml、0.471mmol)を加えて、室温で1時間撹拌した。減圧濃縮後、残渣をヘキサンで洗浄し、濾別することで目的化合物を無色粉末として11.4g(77%)にて得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):12.43(1H,brs),8.07(1H,t,J=6.0Hz),3.70(2H,d,J=5.7Hz),2.09(2H,t,J=7.8Hz),1.47(2H,m),1.23(24H,brs),0.85(3H,t,J=6.9Hz).
N−パルミトイル−Gly(10.0g、31.9mmol)に、His(Trt)−OtBu(15.0g、33.1mmol)、HOBt・H2O(5.13g、33.5mmol)を加えて、氷冷下攪拌し、さらにWSCD・HCl(6.42g、33.5mmol)を加えて、氷冷下で30分間、さらに室温で18時間攪拌した。水(500ml)、酢酸エチル(400ml)を加えて分液し、水層を酢酸エチル(200ml)で抽出した。有機層を合わせて、飽和重曹水、飽和食塩水、10%クエン酸水溶液、飽和食塩水で順次洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、目的化合物を淡黄色油状物質として28.1g(118%)にて得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):7.77(1H,d,J=7.8Hz),7.35−7.29(10H,m),7.13−7.07(6H,m),6.64−6.58(2H,m),4.67(1H,m),3.98(2H,m),2.98(2H,m),2.22(2H,m),1.61(2H,m),1.34(9H,s),1.25(24H,brs),0.87(3H,t,J=6.6Hz).
N−パルミトイル−Gly−His(Trt)−OtBu(23.0g、30.8mmol)を氷冷下、TFA(206ml)−TIS(10.8ml)−H2O(10.8ml)混合物を加えて、室温で1時間攪拌した。減圧濃縮後、ジイソプロピルエーテル、次いで、ジエチルエーテル洗浄後、メンブランフィルターで濾取した。これを、TFA(35ml)−ジエチルエーテル(800ml)で再沈殿し、減圧下に乾燥し、目的化合物を16.2g(93%)で得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):8.96(1H,s),8.21(1H,d,J=8.4Hz),8.04(1H,t,J=6.0Hz),7.36(1H,s,),4.57−4.50(1H,m),3.65(2H,d=6,3Hz),3.14(1H,m),2.99(1H,m),2.10(2H,t,J=7.5Hz),1.47(2H,m),1.23(24H,s),0.85(3H,t,J=6.6Hz).
・MS(EI)m/z:451.4(M++1)
塩化パルミトイル(165ml、0.544mol)のクロロホルム1L溶液に、氷冷攪拌下、N−ヒドロキシコハク酸イミド(69.8g、0.598mol)を少量ずつ加えた後、トリエチルアミン(83.1ml、0.598mol)を30分間で滴下後、30分間氷冷下で攪拌し、徐々に室温に戻して7時間攪拌した。水(500ml×3)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して、無色固体260.3g(quant)を得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):2.80(4H,s),2.65(2H,t,J=7.2Hz),1.61(2H,quintet,J=7.2Hz)
,1.24(24H,s),0.85(3H,t,J=6.3Hz).
上記で合成したN−パルミトイルオキシ−コハク酸イミドを全量(260.3g)をDMF 750mlに懸濁させ、氷冷攪拌下、水250mlにGly(56.3g、0.750mol)とトリエチルアミン(83.2ml、0.598mol)を溶解させたものを滴下し、更に30分間氷冷下攪拌後、徐々に室温に戻して15時間攪拌した。6N塩酸100mlを水1Lに溶解して調製したpH3の水溶液を氷冷下で攪拌し、その中へ、先のN−パルミトイルオキシ−コハク酸イミドを含む反応溶液を滴下することで析出させた固体を濾取した。これを、水2L、次いで、ヘキサン1Lで洗浄した後回収し、目的化合物114g(67%)を得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):8.10(1H,t,J=6Hz), 3.71(2H,d,J=6Hz), 2.10(2H,t,J=7.2Hz),1.48(2H,m),1.23(24H,s),0.85(3H,t,J=6.3Hz).
上記で合成したN−パルトイル−Gly 114g(0.364mol)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(44.0g、0.382mol)をDMF 620mlに懸濁させて氷冷下攪拌し、その中へWSCDの塩酸塩(73.2g、0.382mol)を加えて、氷冷下で30分間、さらに室温で20時間攪拌した。氷水1.5Lを加えて不溶物を濾取し、5Lの水にて洗浄し、さらに1.5Lのエーテルにて洗浄後、得られた固形物を減圧下乾燥し、無色固体198gを定量的に得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):8.46(1H,t,J=5.7Hz),4.22(2H,d,J=5.7Hz),2.89(4H,s),2.13(2H,t,J=7.2Hz),1.49(2H,m),1.23(24H,s),0.85(3H,t,J=6.3Hz).
上記で合成したN−パルミトイルオキシ−グリシルオキシコハク酸イミド全量198gをDMFに懸濁させ、氷冷攪拌下、水350mlにL−ヒスチジン113g(0.728mol)とトリエチルアミン55.6ml(0.400mol)を懸濁させたものを加えた。その後、氷冷下で30分間攪拌後、室温に昇温させて更に17時間攪拌した。析出している固体をそのまま濾取し固体を得た。これをトリフルオロ酢酸120mlと氷水1.5Lを混合させた溶液に加え攪拌後、不溶物を濾取して、得られた固体をジョッキにあけて、水2Lでの洗浄を三回行い、その後減圧下で乾燥させた。得られた乾燥固体をトリフルオロ酢酸400mlに溶かし、メンブランフィルターで少量の不溶物を濾去後、濾液を約半量まで減圧濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、固体を減圧下で乾燥させた。この固体を、適当回数水洗浄して、得られた固体を減圧下で乾燥して、無色固体を112g(54%)で得た。
実施例3の合成中間体であるN−パルミトイルオキシ−グリシルオキシコハク酸イミド 2.0g(4.86mmol)にDMF 175mLを加え、氷浴にて冷却を行った。その後、水 45mL、トリエチルアミン 0.74mL(5.46mmol、1.1eq)、H−L−His−OH 1.50g(9.72mmol,2.0eq)を加え、30分間反応を行った。その後室温まで自然昇温させ、室温で23.5時間反応を行った。
一方で、遠心分離後の上澄(DMF/水層)を冷蔵庫で15時間冷却し、遠心分離(4℃、10,000rpm、25分間)後、上澄を取り除いて凍結乾燥を行った(7時間×3)。その後メタノール 250mLに溶解し、不溶物をろ過し、(B)液とした。
(A)液に(B)液を加え、減圧濃縮し、クロロホルム 150mL、水 150mLで洗浄し、白色固体698.3mg(32%)を得た。
・1H−NMR(300MHz DMSO−d6 δppm):8.12(1H,d,J=7.8Hz),8.06(1H,t,J=5.7Hz),7.56(1H,s),6.81(1H,s),4.38(1H,q,J=7.8Hz),3.69(2H,dd,J=5.7Hz and J=10.2Hz),2.89(2H,m),2.20(2H,t,J=6.9Hz),1.48(2H,m),1.23(24H,s),0.85(3H,t,J=7.2Hz)
・MS(EI)m/z:451.43(M++1,bp)
N−パルミトイル−Gly−Hisのトリフルオロ酢酸塩500mgをサンプル瓶に量り取り、その中へmilli−Q水を10ml入れた後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液 17.7mlを入れて混合した。これを90℃の湯浴につけ、軽く振とうさせながら完全に溶解させ、放冷後、凍結乾燥させて得た固体を水で適当回数洗浄後、減圧下で乾燥を行い、中和体399gを定量的に得た。
前記合成例2で得たN−パルミトイル−Gly−His TFA塩(250.1mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、1%(w/v)(wは質量(g)、vは体積(mL)を意味する。)の濃度になるようにリン酸緩衝液(和光純薬工業(株)製 phosphate buffer powder、1/15mol/L、pH=7.4、組成:Na2HPO4 7.6g,KH2PO4 1.8g/L)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(100℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管(スプレーバイアル)を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
実施例1で得られたゲルを、10分間、マイクロチューブミキサー((株)日伸理化製)にて2,600rpmで振動させ、ゾルを得た(ゲルを機械的に崩壊させてゾルにした。)。
前記合成例2で得たN−パルミトイル−Gly−His TFA塩(232.3mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.5%(w/v)の濃度になるように超純水(栗田工業(株)製)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(100℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
実施例3で得られたゲルを、10分間、マイクロチューブミキサー((株)日伸理化製)にて2,600rpmで振動させ、ゾルを得た(ゲルを機械的に崩壊させてゾルにした。)。
前記合成例2で得たN−パルミトイル−Gly−His TFA塩(300.0mg)を、スプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に入れ、3%(w/v)濃度になるように、70%(v/v)エタノール(EtOH)水溶液を加えて1時間ソニケーション((株)井内盛栄堂(現・アズワン(株))製 38kHz、200w)した後、1晩室温静置した。
溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
実施例5で得られたゲルを、10分間、マイクロチューブミキサー((株)日伸理化製)にて2,600rpmで振動させゾルを得た。(ゲルを機械的に崩壊させてゾルにした。)
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(10.0mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.1%(w/v)濃度になるように70%(w/w)グリセリン水溶液を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(95℃、30分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(20.0mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.1%(w/v)濃度になるように50%(w/w)グリセリン水溶液を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(95℃、30分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(19.9mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.25%(w/v)濃度になるように70%(w/w)プロピレングリコール水溶液を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(75℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(15.0mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、2%(w/v)濃度になるように70%(w/w)1,3−ブタンジオール水溶液を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(95℃、30分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(50.2mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.5%(w/v)濃度になるように50%(w/w)エタノール水溶液を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(100℃、3分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(200mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、2%(w/v)濃度になるように50%(w/w)エタノール水溶液を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(100℃、3分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(50.0mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、1%(w/v)濃度になるように超純水(栗田工業(株)製)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(110℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(100mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、2%(w/v)濃度になるように超純水(栗田工業(株)製)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(110℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(50.4mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、1%(w/v)の濃度になるようにリン酸緩衝液(和光純薬工業(株)製 phosphate buffer powder、1/15mol/L、pH=7.4、組成:Na2HPO4 7.6g,KH2PO4 1.8g/L)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で加熱(100℃、5分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(25mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.25%(w/v)濃度になるように65%(w/w)プロピレングリコール水溶液を入れ、さらに溶解液全体に対して5%(w/w)濃度となるように乳酸カリウム:乳酸(95:5(重量比))を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で75℃、10分間加熱し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前記合成例4で得たN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(80mg)をスクリュー管((株)マルエム、No.7)に入れ、0.2%(w/v)濃度になるように65%(w/w)プロピレングリコール水溶液を入れ、さらに溶解液全体に対して5%(w/w)濃度となるように乳酸カリウム:乳酸(95:5(重量比))を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で93℃、5分間加熱し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで放冷した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
国際公開第2009/005151号パンフレットに記載の方法を参考に、N−パルミトイル−Gly−Gly−Gly−His TFA塩を合成した。
得られたN−パルミトイル−Gly−Gly−Gly−His TFA塩(81.6mg)をスクリュー管((株)マルエムNo.7)に入れ、0.3%(w/v)の濃度になるように超純水(栗田工業(株)製)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で、加熱(100℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで冷却した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
前述の国際公開第2009/005151号パンフレットに記載の方法を参考に合成した、N−パルミトイル−Gly−Gly−Gly−His TFA塩(81.6mg)をスクリュー管((株)マルエムNo.7)に入れ、0.3%(w/v)の濃度になるようにリン酸緩衝液(和光純薬工業(株)製 phosphate buffer powder、1/15mol/L、pH=7.4、組成:Na2HPO4 7.6g,KH2PO4
1.8g/L)を添加し、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で、加熱(100℃、10分間)し、得られた溶解液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、室温まで冷却した。
放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
透明セルロースゲルであるセロディーヌ4M(セルロースゲル4wt%、第一工業製薬(株)製)100gに166gの日本局方水を加えて1.5%(w/v)のセルロース水分散体とし、これを攪拌装置T.K.Mixing Analyzer MA2500(プライミクス(株))を用いて、5,000rpm、240分間攪拌し、室温静置した。
溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認し、これによりゲル化したと判定した。
カルボキシビニルポリマーであるカーボポール940((株)アイ・ティー・オー製)0.252gに、2%(w/v)の濃度になるように日本局方水を加えた後、溶解するまで水浴中で加温し、室温静置してゲル化させ、ゲル化を確認した。
カルボキシビニルポリマーであるカーボポール940((株)アイ・ティー・オー製)0.252gに、2%(w/v)濃度になるように日本局方水を加えた後、溶解するまで水浴中で加温し、6N NaOH 15μlを加え、室温静置してゲル化させ、ゲル化を確認した。
キサンタンガム(東京化成工業(株)製)0.725gに、1.5%(w/v)濃度になるように日本局方水を加えた後、溶解するまで水浴中で加温し、室温静置してゲル化させ、ゲル化を確認した。
カンテン((株)朝日製)1.0gに、1%(w/v)濃度になるように日本局方水を加えた後、溶解するまで水浴中で加温し、室温静置してゲル化させ、ゲル化を確認した。
グリセリン(純正化学(株)製)3.0gに、70%(w/w)濃度になるように超純水(栗田工業(株)製)を加え、混和した。
上記実施例1〜6並びに実施例18及び19、比較例1〜5で得られたゲル又はゾルを用いてスプレー塗布を行った。
上記ゲル又はゾルを入れたスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)を、該スプレーバイアルのノズル先端から5cmの距離に置いたガラス板(5cm×5cm)の中心に向けて、連続3回スプレーをした(図1)。30秒観察後、ガラス上のスプレー物の長径、短径及び液垂れの長さを計測し、長径+短径から平均直径を算出してスプレー塗布性の指標とした。結果を表1に示す。
またスプレー物の平均直径は、セルロースゲルを用いた比較例7より同等又はそれ以上の広がりが認められ、同等以上の効果であった。
さらに1.5%(w/v)濃度のキサンタンガムを含有するゲルを用いたスプレー物(比較例10)は、スプレー噴射が棒状のためスプレー物の広がりが小さく、液垂れも認められ、1%(w/v)濃度のカンテンを有するゲル(比較例11)は、スプレー噴射が不可能であった。
上記実施例7〜17及び比較例1、3及び6にて得られたゲル又は溶液を用いてスプレー塗布を行った。
上記ゲル又は溶液を入れたスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)を、該スプレーバイアルのノズル先端から3.5cmの距離に置いたガラス板(5cm×5cm)の中心に向けて、連続2回スプレーをした(図1)。30秒観察後、ガラス上のスプレー物の長径、短径及び液垂れの長さを計測し、長径+短径から平均直径を算出してスプレー塗布性の指標とした。結果を表2に示す。
またこれらスプレー物の平均直径は、セルロースゲルを用いた比較例12と同じような広がりが認められ、ほぼ同等の効果であった。
他方、グリセリンを用いて作成した水溶液(比較例13)、並びに、N−パルミトイル−Gly−Gly−Gly−Hisを用いたゲル(比較例14)は液垂れが認められた。
前記合成例3で得られたN−パルミトイル−Gly−His TFA塩(300mg)にインドメタシン液[インドメタシン(東京化成工業(株)製)0.375g、l−メントール(純正化学(株)製)1.5g、50%塩化ベンザルコニウム(純正化学(株)製)0.005ml、プロピレングリコール(純正化学(株)製)5ml、エタノール 40ml]8mlをメノウ製乳鉢上で徐々に添加して懸濁後、水(日本薬局方水(共栄製薬(株)製))を2ml加えて十分に混合して、3%(w/v)N−パルミトイル−Gly−His TFA塩含有液を作成した。この溶液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、1晩室温静置してゲル化させた。なおゲル化の判定は、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認することで行った。
前記合成例3で得られたN−パルミトイル−Gly−His TFA塩(300mg)にインドメタシン液[インドメタシン(東京化成工業(株)製)0.375g、l−メントール(純正化学(株)製)1.5g、50%塩化ベンザルコニウム(純正化学(株)製)0.005ml、プロピレングリコール(純正化学(株)製)5ml、エタノール 40ml]7mlをメノウ製乳鉢上で徐々に添加して懸濁後、水(日本薬局方水(共栄製薬(株)製))を3ml加えて十分に混合して、3%(w/v)N−パルミトイル−Gly−His TFA塩含有液を作成した。この溶液をスプレーバイアル((株)マルエム、No.3L)に移し、1晩室温静置してゲル化させた。なおゲル化の判定は、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を確認することで行った。
セロディーヌ4M(セルロースゲル4wt%、第一工業製薬(株)製)3gに、上述インドメタシン液7ml又は同量の水(日本薬局方水(共栄製薬(株)製))を加えて、90分間攪拌を行った。攪拌は、IKA ULTR TURRAX攪拌装置及びST20攪拌チューブを用いて、4,000rpmで行い、加熱は、ドライ・バス・インキュベーター(First Gene社製)で行った。
セロディーヌ4Mは、インドメタシン液との混合により、ゲル化は認められなかった。
上記実施例39及び実施例40で得られたゲルを用いてスプレー塗布を行った。
上記ゲルを入れたスプレーバイアル((株)マルエム、3L)を、該スプレーバイオアルのノズル先端から5cmの距離に置いたガラス板(5cm×5cm)の中心に向けて、連続3回スプレーをした(図1)。30秒観察後、ガラス上のスプレー物の長径、短径及び液垂れの長さを計測し、長径+短径から平均直径を算出してスプレー塗布性の指標とした。結果を表3に示す。
Claims (8)
- 媒体中の低分子ゲル化剤によりゲル化された水性媒体を含み、該低分子ゲル化剤は自己集合化を介して水性媒体をゲル化させる能力を有する低分子化合物の群から選択される1種又は2種以上の化合物からなる、スプレー用基材であって、
前記低分子化合物が、式(1)
R2は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
R3は−(CH2)n−X基を表し、
nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)
で表される脂質ペプチド又はその薬学的に使用可能な塩からなることを特徴とする、スプレー用基材。 - 前記ゲル化された水性媒体中の前記低分子化合物の濃度が0.0001〜20%(w/v)であることを特徴とする、請求項1に記載のスプレー用基材。
- 前記式(1)中、R3が−(CH2)n−X基であり、nが1乃至4の数であり、Xがアミ
ノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至2個有し得る5員環又は5員環と6員環で構成される縮合複素環であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスプレー用基材。 - 前記式(1)中、R1が不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数11乃至21の直鎖状脂肪族基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスプレー用基材。
- 前記式(1)中、R2が水素原子、又は炭素原子数1の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至3のアルキル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスプレー用基材。
- 前記式(1)中、nが1乃至4の数であり、かつXがアミノ基、グアニジノ基又は−CONH2基であるか、又はnが1であり、かつXがピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基又はイミダゾール基であることを特徴とする、請求項3に記載のスプレー用基材。
- 媒体中の低分子ゲル化剤によりゲル化された水性媒体を含み、該低分子ゲル化剤は自己集合化を介して水性媒体をゲル化させる能力を有する低分子化合物の群から選択される1種又は2種以上の化合物からなる、スプレー用基材であって、
前記低分子化合物が式(2)
R5乃至R8は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2)n−X基を表し、且つR5乃至R8のうち少なくとも一つ以上が−(CH2)n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)
で表される脂質ペプチド又はその薬学的に使用可能な塩からなることを特徴とする、スプレー用基材。 - 前記ゲル化された水性媒体中の前記低分子化合物の濃度が0.0001〜20%(w/v)であることを特徴とする、請求項7に記載のスプレー用基材。
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