JP5585789B2 - カムシャフトの潤滑構造 - Google Patents
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Description
近時では、コストや摺動抵抗の低減化により、別体に成形されたカムローブを中空の鋼製のシャフト部材に組み付けるカムシャフト(組立式カムシャフト)を用い、同カムシャフトのカムジャーナル部を転がり軸受でシリンダヘッドに支持させる構造が検討されてきている。
滑り軸受では、カムシャフトが組み付くカムジャーナル部の周壁に給油孔を穿設して、カムシャフトの軸部内に形成されている送油路の潤滑油を直接、滑り軸受部へ供給している。しかし、転がり軸受は、僅かなクリアランスへ潤滑油を供給する滑り軸受とは異なり、クリアランスが大きいので、カムジャーナル部に給油孔を設けて給油する構造では、過剰にクリアリンスから潤滑油がリークしてしまい、エンジンの潤滑油の循環系に負担を与えてしまう。
そのため、組立式のカムシャフトにおいて転がり軸受へ潤滑油を導く給油路には、特許文献1に開示されているようなスリーブを用いて間接的に供給する構造が提案されている。これは、カムローブと転がり軸受との間に存するシャフト部材の周壁に、給油孔を穿設し、同給油孔を含むカムローブと転がり軸受間の周壁部分にスリーブをルーズに嵌めて、給油孔から供給される潤滑油を、シャフト部材とスリーブとの間に形成される潤滑油が通過可能な隙間(給油路)を通じて、転がり軸受へ導く構造である。
そこで、本発明の目的は、簡単な構造、かつコストを抑えた構造で、給油孔の大きさの制約を回避しながら、シャフト部材内からの潤滑油で、転がり軸受の潤滑を可能としたカムシャフトの潤滑構造を提供することにある。
請求項3に記載の発明は、さらに中継構造が転がり軸受に影響を与えないよう、中継溝は、シャフト部材の軸心方向において、転がり軸受を構成する外装部材と重なる位置まで延びた溝で形成した。
請求項3の発明によれば、さらに中継溝が、ころ部材の位置する地点まで形成されないために、中継溝が転がり軸受に影響を与えることはない。
請求項4の発明によれば、さらに転がり軸受から潤滑油が抜けやすくなるため、潤滑油が転がり軸受の内部で流動しやすくなり、その分、転がり軸受へ潤滑油が供給しやすく、転がり軸受を効果的に潤滑することができる。
図1はレシプロ式エンジン(内燃機関:以下、単にエンジンという)の平面を示し、図2は図1中のA−A線に沿う断面を示し、図3は図2中のB部を拡大した断面を示している。
図1および2中1は例えばアルミ合金製のシリンダヘッド、2は例えばアルミ合金製のシリンダブロック(図2に図示)、3はシリンダブロック2に形成されたシリンダ(図2に図示)、4は同シリンダ3内に往復可能に収められたピストン(図2に図示)を示している。シリンダ3は、エンジンの前後方向に沿って複数、配置されている。
転がり軸受13は、両側の隣接した一対の吸気用カムロ−ブ9、一対の排気用カムローブ(図示しない)により、軸方向の動きが規制されている。
このうち例えば吸気用のカムシャフト6内から、シリンダ3を挟んだ両側の転がり軸受13へ潤滑油を導く給油路29に(両端の転がり軸受を除く)、本発明の要部となる、中継溝35(後述)を用いて間接的に潤滑油を転がり軸受13へ導く構造が用いられている。同転がり軸受13の潤滑構造は、いずれも同じ構造が採用されている。図2には、そのうち2番気筒と隣り合う転がり軸受13へ給油する給油路29構造が示されている。
すなわち、中継溝35は、シャフト7の外周面に潤滑油の通過が可能な隙間を形成する帯形の溝で形成される。中継溝35は、シャフト7の軸心方向に沿って給油孔30から、吸気用カムローブ9と隣り合うカムジャーナル部11(転がり軸受13)へ向かって延びた溝から構成され、給油孔30からカムジャーナル部11(転がり軸受13)へ潤滑油が導けるようにしている。さらに述べれば、中継溝35は、シャフト7の軸心方向において、外装シース15端と重なる位置まで延びた溝で形成、ここでは中継溝35端が、外装シース15の端とシャフト7の外周面との間に存する隙間δ内に臨む地点まで延びた溝で形成されていて、中継溝35で導かれる潤滑油を転がり軸受13の両側から同軸受13内部の各摺動部分(ころ部材14、外装シース15など)へ供給できるようにしている。つまり、給油路29を構成している。この中継溝35は、給油孔30から転がり軸受13へ向かう方向のみしか形成していない。
こうした潤滑構造によると、エンジンの運転に伴い、エンジンのオイルギャラリ(図示しない)から潤滑油が、回転する吸気用のカムシャフト6の送油路27へ圧送される。図2および図3に示されるように圧送された潤滑油の一部は、図2および図3に示されるように各給油孔30を通じて、吸気用カムローブ9の内面(取付孔)とシャフト7の外周面との間へ導かれる。
こうした給油路29で行われる間接的な給油は、中継溝35で潤滑油が制御されるため、給油孔30を小さくせずにすむ。しかも、中継構造は、別途部材を必要とせずに、吸気用カムローブ9(排気用カムローブを含む)が組み付くシャフト7の周壁に、加工しやすい大きさの範囲内で給油孔30を形成し、シャフト7の外周面に、加工が容易な中継溝35を形成するだけでよく、簡単な構造であり、安価である。特にシャフト7の外周面に中継溝35を設ける構造は、加工がしやすい。
また中継溝35は、外装シース15と重なる位置まで延びた溝であるため、ころ部材14の位置する地点に形成されずにすみ、転がり軸受13に影響を与えることはない。
図4は、本発明の第2の実施形態を示す。
具体的には、外装シース15の背面をなす周壁部に油導出孔40を形成して、転がり軸受13内部に導入された潤滑油を、油導出孔40、外装シース15とハウジング17の内面およびキャップ18の内面との間の隙間α(ルーズ構造で形成)を通じ、外部へ抜けやすくしたものである。
なお、図4において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
また、本発明の潤滑構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。上述した実施形態では、吸気側と排気側とに分かれたDOHC式エンジンの吸気用のカムシャフトに本発明を適用した例を挙げたが、これに限らず、排気用のカムシャフトや吸気バルブと排気バルブとが1つのシャフトに有するSOHC式のエンジンのカムシャフトに本発明を適用してもよい。
6 カムシャフト
7 シャフト(シャフト部材)
9 カムローブ
11 カムジャーナル部
13 転がり軸受
14 ころ部材
15 外装シース(外装部材)
27 送油路
29 給油路
30 給油孔
35 中継溝
40 油導出孔(孔部)
Claims (4)
- 内部に送油路を有するシャフト部材の外周面に、バルブを駆動するカムローブを組み付け、同カムローブと隣接した前記外周面にカムジャーナル部を形成したカムシャフトと、前記カムジャーナル部をシリンダヘッドに対して回転自在に支持する転がり軸受と、前記送油路内の潤滑油を前記転がり軸受へ導く給油路とを有したカムシャフトの潤滑構造であって、
前記給油路は、
前記カムローブが組み付く前記シャフト部材の周壁に穿設され、前記送油路の潤滑油を前記カムローブと前記シャフト部材間へ導く給油孔と、
前記シャフト部材の外周面に形成され、前記シャフト部材の軸心方向に沿って前記給油孔から前記カムジャーナル部まで延びた中継溝とを有して構成される
ことを特徴とするカムシャフトの潤滑構造。 - 前記中継溝は、前記給油孔から前記転がり軸受へ向う方向のみに形成されることを特徴とする請求項1に記載のカムシャフトの潤滑構造。
- 前記転がり軸受は、前記カムジャーナル部の外周面を囲むように配置された多数のころ部材と、同ころ部材を周囲から回転自在に収める筒形の外装部材とを有し、
前記中継溝は、前記シャフト部材の軸心方向において前記外装部材と重なる位置まで延びた溝である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカムシャフトの潤滑構造。 - 前記転がり軸受の外装部材は、油導出用の孔部を有していることを特徴とする請求項3に記載のカムシャフトの潤滑構造。
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