JP5584686B2 - ポリイミド繊維及びその利用、並びに当該ポリイミド繊維の製造方法 - Google Patents

ポリイミド繊維及びその利用、並びに当該ポリイミド繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はポリイミド繊維及びその利用、並びに当該ポリイミド繊維の製造方法に関する。
ポリイミド繊維は一般の有機高分子樹脂の繊維に比較して高温安定性及び耐薬品性に優れることから、排ガス処理用の耐熱性バグフィルターを構成するフェルトや耐熱服用途の織布に用いられている。更に、耐熱性に優れる繊維は、各種電気絶縁材料の基材用途の基布や補強材として広く用いられている。
従来のポリイミド繊維としては、有機溶剤可溶性のポリイミド樹脂を乾式紡糸法により紡糸したポリイミド繊維が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、乾式紡糸方法によりポリイミド繊維を作製する方法(例えば、特許文献2参照)、湿式紡糸法で作製されたポリイミド繊維(例えば特許文献3参照)、更には、ポリイミドフィルムを切削する方法で作製されるポリイミド繊維(例えば、特許文献4参照)が知られている。
特公昭63−27444号公報(1988年6月3日公開) 特公昭42−2936号公報(1967年2月8日公開) 特公昭59−163416号公報(1984年9月14日公開) 特開2006−176907号公報(2006年7月6日公開)
前記特許文献1の発明のポリイミド樹脂は、溶剤への溶解性を高めるために、側鎖に有機基を有し、構造内に屈曲性基を有する。そのため、有機溶剤可溶性であって、しかも熱可塑性のポリイミド樹脂となっている。側鎖に有機基は有機溶剤への溶解性を付与できるが、ポリイミド樹脂の耐熱性が低下し、しかも、有機溶剤への耐溶剤性が低い問題があった。また、熱可塑性のポリイミド樹脂となっているため、防護服用途に使用した場合に、高温で溶融し、皮膚等に付着する現象(ドロップ現象)が生じるので、防護服等には広くは使用できない問題があった。また、紡糸繊維の断面がダンベル型とは異なる異形断面を有しており織布等に成型する際に嵩高さの影響で収率が低下する問題があった。
前記特許文献2記載の発明では、ピロメリット酸二無水物とジアミノジフェニルエーテルもしくはジアミノジフェニルスルフィドからなるポリイミド繊維を乾式紡糸方法で製造する方法が開示されている。しかし、当該ポリイミド繊維の製造方法においては実施例3に記載されている様に丸い断面形状の繊維が得られ本発明の亜鈴形や楕円形とは異なる。そのため、ポリイミド繊維をバグフィルター等の集塵装置に使用した場合に、表面積が小さくなり集塵効率が低下する問題があった。また、特許文献2のポリイミド繊維の製造方法においては、酸素雰囲気下で紡糸繊維の溶剤を大量に除去する工程を含んでおり溶剤除去時に爆発等の危険があった。即ち、特許文献2の方法は少量の生産には適しているが大量の繊維を処理することが難しい問題があった。更に、ポリイミド繊維を成形する途中で水への浸漬処理を行い、空気中で乾燥を行っているため、加水分解耐性の悪い繊維となる問題があった。また、特許文献2の方法で作製したポリイミド繊維は高温での熱収縮率が大きくなる問題があった。
前記特許文献3記載の発明は、湿式紡糸方法で本発明と同一構造のポリイミド繊維を得る方法であるが、製造工程において硬化剤及び触媒を混合させて一部イミド化したものを、水中に紡糸する方法を採用している。しかしこの方法では、水中へ紡糸するため、加水分解耐性が低い問題が実質解決できていない。更に、ポリイミド繊維は茶色く着色し、表面の加水分解が進んでいる繊維しか得られない問題があった。
更に、前記特許文献4記載の発明は、ポリイミドフィルムを作製した後にコイル掘削法を用いてポリイミド繊維を作製する方法である。得られるポリイミド繊維は、フィルムと同様の物性値を有しているが、高い延伸処理を行っていないため繊維の強度が低い問題があった。
本発明者らは、前記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、下記構成のポリイミド繊維を用いることで上記問題点を解決しうることを見出した。
1)ポリイミド繊維の破断伸度が10%以上100%以下、破断強度が1.0cN/dtex以上8.0cN/dtex以下、繊度が0.5dtex以上20dtex以下、150℃/100%RH/48時間の条件下で処理した後の破断強度保持率が80%以上、300℃における熱収縮率が3.0%以下、切断面の扁平率が1.1以上の楕円形状、もしくは亜鈴形を有することを特徴とするポリイミド繊維。
2)前記ポリイミド繊維がピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンから選ばれる1種以上のジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸をイミド化することで得られる1)に記載のポリイミド繊維。
3)
(a)ポリアミド酸溶液を乾式紡糸して、一部溶剤を含む繊維を取得し、
(b)繊維を水に浸漬し、
(c)170℃以上の真空下で乾燥しイミド化せしめ、
(d)更に、200℃以上600℃以下の温度下で1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸し、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することを特徴とするポリイミド繊維の製造方法により作製したポリイミド繊維。
4)3)に記載のポリイミド繊維を、300℃以上の温度下で1.0倍〜1.2倍の延伸倍率で加熱することにより作製したポリイミド繊維。
5)1)〜4)のいずれかに記載のポリイミド繊維からなり、繊維長さが10mm以上1500mm以下、捲縮率が2〜100捲縮(クリンプ)/インチであることを特徴とするポリイミドステープルファイバ。
6)1)〜4)のいずれかに記載のポリイミド繊維からなるポリイミドステープルファイバを含む不織布。
7)1)〜4)のいずれかに記載の不織布を用いた耐熱性フィルター。
8)1)〜4)のいずれかに記載のポリイミド繊維からなる織布。
9)1)〜4)のいずれか1項記載のポリイミド繊維を用いた耐熱性防護服。
10)1)〜4)のいずれかに記載のポリイミド繊維からなる織布を用いたを用いた電気・電子機器材料。
11)
(a)ポリアミド酸溶液を乾式紡糸して、一部溶剤を含む繊維を取得し、
(b)繊維を水に浸漬し、
(c)170℃以上の真空下で乾燥しイミド化せしめ、
(d)更に、200℃以上600℃以下の温度下で1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸し、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することを特徴とするポリイミド繊維の製造方法。
12)さらに300℃以上の温度下で0.9倍〜1.2倍の延伸倍率で加熱することを特徴とする11)記載のポリイミド繊維の製造方法。
13)1)〜4)のいずれか1項記載のポリイミド繊維の表面に油剤を塗布し、捲縮・カットすることを特徴とするポリイミドファイバーステープルの製造方法。
本発明のポリイミド繊維は耐熱性に優れ、楕円形状もしくは亜鈴形状を有することから風合いに優れ、比表面積も大きく、また、これまでのポリイミド繊維では使用が困難であった過酷な加水分解耐性を必要とする条件下での使用も可能である。
本発明の乾式紡糸方法に係る説明図である。 本発明のポリイミド繊維の扁平率に係る説明図である。
本発明は、ポリイミド繊維の破断伸度が10%以上100%以下、破断強度が1.0cN/dtex以上8.0cN/dtex以下、繊度が0.5dtex以上20dtex以下、150℃/100%RH/48時間の条件下で処理した後の破断強度保持率が80%以上、300℃における熱収縮率が3.0%以下、切断面の扁平率が1.1以上の楕円形状、もしくは亜鈴形を有することを特徴とするポリイミド繊維に関する。
破断伸度が10%以上100%以下、破断強度が1.0cN/dtex以上8.0cN/dtex以下に制御することで、不織布や織布に成形する際に繊維が破断することなく加工することができるので好ましい。
また、ポリイミド繊維の繊度を0.5dtex以上20dtex以下に制御することで不織布や織布に成形する際の収率を良好にすることができるので好ましい。特に繊度が細い場合には不織布への成形の際に基布への編みこみ収率が低下するので上記範囲にすることが好ましい。
また、150℃/100%RH/48時間の条件下で処理した後の破断強度保持率を80%以上に制御することで、例えば不織布として成形されてバグフィルターとして使用される場合には、高温・高湿条件で使用されるが、このような条件で3年以上安定して使用することができるので好ましい。また、織布に成形された後に、防護服(例えば消防服等)に加工されて使用された場合、一般的な実使用年数(5年)よりも長い間使用しても、繊維に劣化が見られなくなるので好ましい。
また、耐熱性繊維を不織布として成形されて耐熱性フィルターとして使用される場合には、例えば焼却炉内の集塵設備に用いられるバグフィルターは、焼却炉の集塵装置内の温度が300℃近くに達する場合があるため300℃という高温に晒される場合がある。その場合に耐熱性繊維の収縮が大きいとバグフィルターを固定しているケージにフィルターが張り付いてしまい取れなくなるという問題が発生する。そのため、300℃における熱収縮率を3.0%以下に制御することが好ましい。
また、繊維の切断面の扁平率が1.1以上の楕円形状、もしくは亜鈴形を有することでポリイミド繊維表面に黄金色の着色をもたらし、繊維の搬送性を向上させることができ、更には、耐熱性フィルターに用いた際に集塵性能を向上させることができるので好ましい。
上記特性を有するポリイミド繊維を得るには鋭意検討を行った結果、ポリイミド繊維の化学構造と、ポリイミド繊維の製造方法を最適化することで上記特性を有するポリイミド繊維が得られることが明らかになった。
すなわち、上記特性を有する本発明のポリイミド繊維は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンから選ばれる1種以上のジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸をイミド化することで得られるポリイミド繊維を用いることで本発明のポリイミド繊維の特徴である各種物性値を達成しうる。
本発明におけるポリアミド酸溶液について詳述する。
本発明におけるポリアミド酸溶液とは、有機溶媒中で酸二無水物及びジアミンを反応させて得られるポリアミド酸溶液であって、好ましくは、酸二無水物の使用量をaモル、ジアミンの使用量をbモルとした場合に、モル比(a/b)が、0.80以上1.00未満となるように反応させることが最終的に得られるポリイミド繊維の加水分解耐性を向上させることができるので好ましい。モル比が0.90以上1.00未満となるように反応させることがより好ましい。このようなモル比で反応させることでポリアミド酸溶液からポリイミドへのイミド化の際に分子量の低下が起きにくく、更に、ポリイミド繊維の加水分解耐性が向上するので好ましい。
特に本発明に用いられるポリアミド酸溶液としては、耐熱性、耐薬品性、加水分解耐性が優れる繊維を得られることから、下記の組み合わせのポリアミド酸溶液が好ましく用いられる。
1.ピロメリット酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸溶液。
2.ピロメリット酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
3.3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
4.3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテル及び、p−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
5.3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテル及び、p−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
6.3,3’,4,4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
7.3,3’,4,4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテル及び、p−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
8.3,3’,4,4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテル及び、p−フェニレンジアミンからなるポリアミド酸溶液。
中でも特に、本発明においては、種々の特性を両立したポリイミド繊維を得る為に、ピロメリット酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸溶液を用いることが好ましい。
また、上記ポリアミド酸溶液の合成に用いられる有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン等の有機極性アミド系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等の水溶性エーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル系溶剤、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が用いられる。これらの溶剤を単独で使用しても、2種以上を混合して用いても良い。
特に、本発明の乾式紡糸方法では、乾燥温度の観点からN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、アセトンが好適に用いられる。
また、本発明のポリアミド酸溶液のポリマー濃度としては、固形分濃度として1〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。本発明における固形分濃度とは、固形分濃度=(ポリアミド酸溶液中の酸二無水物重量+ポリアミド酸溶液中のジアミン重量)÷(ポリアミド酸溶液の重量)×100の算出式から算出される値である。
尚、ポリアミド酸溶液の粘度は、B型粘度計で測定した場合に、23℃で100ポイズ以上10000ポイズ以下の粘度を有することが紡糸したときに安定して紡糸できるので好ましい。好ましい粘度は、200ポイズ以上6000ポイズ以下、特に好ましい溶液粘度は500ポイズ以上4000ポイズ以下である。これらの範囲に粘度を制御することが紡糸を安定化させる上で好ましい。
このような粘度に制御するためには、上記の酸二無水物とジアミンのモル比を適宜変更することが有効である。特に本発明において好ましいポリアミド酸溶液の重合方法は、ジアミンを有機溶剤に溶解した溶液中に、酸二無水物をモル比で0.80以下の条件で添加し反応させることである。次いで、酸二無水物を有機溶剤に溶解した溶液を攪拌しながら添加しポリアミド酸溶液の粘度が上記の範囲内になるように粘度を調整することで適した粘度のポリアミド酸溶液を作製することができる。
尚、ポリアミド酸の重合条件としては、不活性ガス雰囲気下で−20〜60℃、好ましくは0〜50℃で反応させることで、目的とするポリアミド酸溶液を重合することができる。
更に、上記ポリアミド酸溶液は、各種フィラー、酸化防止剤、難燃剤、消泡剤、潤滑材、着色剤等を1種あるいは2種以上、混合しておくこともできる。
本発明においては上記ポリアミド酸溶液を下記製造方法にて繊維形状に成形することで、本発明のポリイミド繊維の特徴である各種物性値を達成しうることを見出した。
すなわち、本発明のポリイミド繊維は、
(a)ポリアミド酸溶液を乾式紡糸して、一部溶剤を含む繊維を取得し、
(b)繊維を水に浸漬し、
(c)170℃以上の真空下で乾燥しイミド化せしめ、
(d)更に、200℃以上600℃以下の温度下で1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸し、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することを特徴とするポリイミド繊維の製造方法により作製されるポリイミド繊維である。
本発明における乾式紡糸としては、一般的な乾式紡糸法を用いることができる。具体的な紡糸方法の一例を図示しながら説明する。
本発明における乾式紡糸とは、図1に示す様に、紡糸直後に気流中に紡糸繊維を放出して気流中の熱交換及び溶剤交換により紡糸繊維中の溶剤を揮発させ、それぞれの紡糸繊維同士が融着しないようにする紡糸方法である。
より具体的には、紡糸原液(ポリアミド酸溶液)は、紡糸用の紡糸口金1に供給されて、紡糸口金1に開けられたオリフィス(孔)2から気流中に吐出される。オリフィス2の直径は、必要とする繊維径により適宜選定することができる。直径が0.01mm以上5.00mm以下の円形のオリフィスであることが好ましい。特に好ましい範囲は、直径が0.05mm以上2.00mm以下の範囲である。このような範囲にすることでポリアミド酸溶液の吐出時の圧力を低く抑えることができるので好ましい。また、紡糸口金1の、オリフィスの孔数は10ホール以上800ホール以下であることが好ましい。オリフィスの孔数が多い程、紡糸繊維量を多くできるが塔内の溶剤量が多くなるので上記範囲内で紡糸することが好ましい。
紡糸口金への紡糸原液の送液量は適宜選定することが好ましい。
紡糸塔内の気流は気流発生装置3から発生する気流であって、紡糸円筒4の内部温度を紡糸繊維から溶剤を揮発させる温度に加熱される。本発明における紡糸円筒4の内部温度は、100℃以上300℃以下であることが好ましく、特に130℃以上260℃以下であることが好ましい。紡糸円筒4内の温度が高い場合には、紡糸直後の繊維の粘度が低くなり繊維形状を維持できないことがあるので好ましくない。一方、紡糸円筒4内の温度が低い場合には、溶剤の揮発量が少なく紡糸繊維同士が結合し易くなることがあるので好ましくない。紡糸円筒4内の加熱には、気流発生装置3から高温給気を供給することで紡糸円筒4内の温度を昇温することもできるが、紡糸塔の側面に熱源となるヒーターを配置しておき、壁面から内部のガスを加熱する仕組みを取ることが安全上好ましい。また、気流発生装置3から発生する気流は、アルゴンガスやチッソガス等の不活性ガスや乾燥空気が好ましく、特に、溶剤ガスの爆発等の観点から、アルゴンガスやチッソガス等の不活性ガスであることが好ましい。尚、アルゴンガスやチッソガスが完全に満たされている必要は無く、安全上問題の無い範囲で酸素量を減らした状態に維持できるガス濃度であれば良い。
オリフィス2から吐出されたポリアミド酸溶液は、紡糸円筒4内で乾燥される。乾燥されて繊維形状に成形されたポリアミド酸繊維5は円筒装置から外部に取り出す際にはツイスター6等を用いて撚りをかけながら、ボビンにて巻き取られる。巻き取り装置7でボビンに巻き取られる紡糸繊維8は、イミド化が進んでいることが好ましい。また、このときの紡糸繊維8中の残存溶剤割合は1%以上70%以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、15%以上60%以下である。このようなポリアミド酸繊維内部の残存溶剤割合に制御することでポリイミド繊維の切断面の扁平率を1.1以上の楕円形状、もしくは亜鈴形に制御することができる。更に本願発明のポリポリアミド酸繊維のイミド化率は15%以上イミド化されていることが好ましく、特に20%以上イミド化が進んでいることが好ましい。ポリイミド繊維のイミド化率が向上するように紡糸することで、乾燥速度が速くなり扁平率を1.1以上に制御しやすくなるので好ましい。
本願発明のイミド化率は、例えばピロメリット酸二無水物と4,4−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸繊維及びポリイミド繊維の場合には、完全にイミド化を行ったポリイミド繊維とイミド化率の測定したいポリアミド酸繊維の赤外線吸収スペクトルを各々測定し、1780cm−1の吸光度と1500cm−1の吸光度から吸光度比(1780cm−1の吸光度÷1500cm−1の吸光度)を求め、イミド化率は、イミド化率=(測定したいポリアミド酸繊維の吸光度比)÷(完全にイミド化を行ったポリイミド繊維の吸光度比)×100の算出式より算出される値がイミド化率である。
本発明における残存溶剤割合とは、得られた紡糸繊維8の一部をサンプリングして重量を量り取りその重量をWa(g)、当該サンプルを350℃の加熱オーブン中で20分間乾燥した後の重量をWb(g)とした場合に、残存溶剤割合は、(Wa−Wb)÷Wb×100の算出式より算出される値である。
残存溶剤割合を上記範囲に制御することでポリアミド酸繊維の柔軟性が向上し繊維を巻き取る際に毛羽立ち等の問題を避けることができるので好ましい。
尚、本発明における上記ポリアミド酸繊維の製造工程においては残存溶剤割合が上記範囲内になるように紡糸塔内の温度、紡糸原液量、紡糸本数、紡糸速度、塔内に送る気流量を適宜選定することが好ましい。
次いで、本発明のポリアミド酸繊維は、上記乾式紡糸法で作製したポリアミド酸繊維を水に浸漬し、170℃以上の真空下で乾燥し、イミド化を行うことが好ましい。
上記ポリアミド酸繊維を水に浸漬する方法としては、連続式の水浴中にポリアミド酸繊維を浸漬する方法や、金属やプラスチックコアに巻きつけて、バッチ式で水に浸漬する方法、更には、カセの状態で水に浸漬する方法等の種々の方法を用いることができる。特に本発明では、ポリアミド酸繊維の取り扱いが容易なことから金属コアに巻きつけた状態で浸漬することが好ましい。尚、本発明の水としては、脱イオン水、もしくは蒸留水を用いることが好ましい。また、10℃以上100℃以下の温度範囲の水に浸漬することが好ましい。水に浸漬させることで繊維内部の溶剤を水中に染み出させ大気中で繊維が乾燥する際に、融着することを防ぐことができる。
特に本発明においては、低い温度の水に浸漬した後に、高温の水に浸漬することが好ましい。特に、10℃以上70℃以下の水に浸漬して繊維束内部にまで水を浸漬させた後に、70℃以上100℃以下の水に浸漬させることが好ましい。このようにすることでポリアミド酸繊維を真空乾燥する際にポリアミド酸繊維内部に含まれた水分を短時間で効率良く抜くことができるので好ましい。また、このような2段階の温度制御を行うことで最終的に得られるポリイミド繊維の加水分解耐性が向上するので好ましい。
ポリアミド酸繊維を浸漬する金属コアは、アルミニウムコア、もしくはステンレスコアを用いることが好ましい。
本発明のポリアミド酸繊維の水への浸漬時間は、繊維束内部にまで水が行き渡るように適宜選定することが好ましい。特に内部にまで水が染み込み易い様に上記コアには水が通る穴が開いていることが好ましい。
本発明では、水に浸漬した繊維を170℃以上の真空下で乾燥することが好ましい。本発明者らは、170℃以上の温度の真空下で乾燥することでポリアミド酸繊維内部に含まれる水を短時間で乾燥でき、ポリアミド酸繊維内部に含まれる溶剤を短時間で除去できることを見出した。更に、短時間で乾燥できるのでポリアミド酸繊維同士が染み出した溶剤により融着することを効率良く防げることも見出した。
更に、本発明は脱水後連続して加熱を続けることでポリアミド酸繊維をポリイミド繊維にイミド化することが好ましい。このように真空下でイミド化を進めることで残留する水分による加水分解を抑え、最終的に得られるポリイミド繊維の150℃/100%RH/48時間の条件下で処理した後の破断強度保持率を80%以上にすることが出来る。上記加熱温度は真空脱水処理と同一の温度であってもそれ以上の温度であってもよく、脱水処理装置と同じであっても、一度脱水処理装置からポリアミド酸繊維を取り出して別の装置で加熱することもできる。上記加熱時間と加熱温度は、ポリアミド酸の種類によって適宜選定することが好ましく、ポリアミド酸繊維が、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから成るポリアミド酸繊維の場合、ポリアミド酸繊維は170℃の真空オーブン内では、3時間以上の加熱が好ましく、200℃のオーブン内では2時間以上、250℃以上では1時間以上の加熱が好ましい。尚、ポリアミド酸繊維の真空下で乾燥する装置は、公知公用の装置を用いることができる。上記工程でポリアミド酸繊維を加熱してイミド化を進めることで繊維強度を高くすることができ、続いて行う延伸工程において十分な繊維強度を発現するので好ましい。更に、密閉された真空下で処理することになるので溶剤との接触を避け安全に作業することができるので好ましい。
また、特許文献2では空気中で繊維の水分を脱水しているため、ポリアミド酸繊維の加水分解が進み、加水分解耐性が低下することが明らかとなった。即ち、本発明者らは、真空下で脱水を行うことで最終的に得られるポリイミド繊維の加水分解耐性を向上させることができることを初めて見出したのである。
次いで本発明においては、上記真空下で乾燥・イミド化を行った繊維を、200℃以上600℃以下の温度下で1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸し、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することで本発明のポリイミド繊維を得ることができる。
発明者らは、鋭意検討を行った結果、真空乾燥を行ったポリアミド酸繊維を延伸する際に、200℃以上600℃以下の温度範囲で延伸することで繊維を熱劣化させることなく延伸することができ、最終的に得られるポリイミド繊維の破断伸度を10%以上100%以下、破断強度が1.0cN/dtex以上8.0cN/dtex以下の範囲内に制御することが可能となることを見出した。特に、延伸時のポリアミド酸繊維の延伸温度は、200℃以上600℃以下が好ましく、更に好ましくは250℃以上580℃以下、特に好ましくは300℃以上550℃以下で延伸することが好ましい。上記範囲に温度を制御することで繊維の着色や伸度低下を抑えることができる。
本発明において、延伸時の温度が600℃より高い場合には、ポリアミド酸繊維が劣化して茶色く着色し、ポリイミド繊維の伸度が10%以下に低下することがあり、延伸時の温度が、200℃未満の場合には延伸時のポリアミド酸繊維が十分に軟化しないので延伸時に繊維が破断を起こすことがあるので好ましくない。
上記延伸処理時の加熱方法としては、繊維の延伸処理に用いられる装置を用いればよく、例えば、上記温度範囲に制御された遠赤外線を用いた輻射式加熱炉や、熱風による加熱炉、マイクロ波を用いた加熱炉や、電熱線や誘導加熱コイルを用いた加熱ロールや加熱プレートを用いることができる。特に、繊維束内部まで熱を伝え易いことから電熱線や誘導加熱コイルを用いた加熱ロールや加熱プレートを用いることが好ましい。
更に、上記温度範囲内でポリアミド酸繊維を、1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸することが好ましく、特に好ましくは1.3倍以上2.3倍以下で延伸することが好ましい。このような延伸倍率で延伸することで最終的に得られるポリイミド繊維の破断伸度を10%以上100%以下、破断強度が1.0cN/dtex以上8.0cN/dtex以下の範囲内に制御できるので好ましい。尚、延伸倍率が1.0未満の場合には繊維の破断強度が小さくなることがあり、不織布や織布に成形した際に布の強度が弱くなることがあるので好ましくない。更に、2.5倍よりも大きい延伸倍率で延伸を行うと、最終的に得られるポリイミド繊維の破断強度を8.0cN/dtexよりも強くすることができるものの、破断伸度が10%未満となることがあり、更にポリイミド繊維の加水分解耐性が低下することがあるので好ましくない。つまり、本発明のポリイミド繊維の物性を発現するためには、上記延伸倍率で延伸することが好ましい。
次いで、本発明のポリイミド繊維の製造方法においては、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することが好ましい。
延伸後に200℃以上600℃以下の温度で加熱することで延伸後の繊維に残ったポリアミド酸部位をイミド化させ、加水分解耐性を向上させることができ、ポリイミド繊維の強度が向上するので好ましい。
本発明の延伸後の加熱方法は、上記延伸時に用いた加熱方法を用いることができる。更に、加熱する際の方式としては、例えば、延伸した繊維を繰り出しながら200℃以上600℃以下の温度下を搬送させて巻き取る方法や、金属ボビンに巻きつけ200℃以上600℃以下の温度下で加熱する方法等が用いられる。
加熱温度、加熱時間はポリイミド繊維の構造により適宜選定することが好ましい。例えば、ピロメリット酸二無水物とジアミノジフェニルエーテルから成るポリアミド酸繊維をイミド化して得られるポリイミド繊維の場合、最高焼成温度を450℃として焼成を行うことでポリイミド繊維を得ることが出来る。一例を述べるならば、3台の加熱炉を設置した場合、350℃、400℃、410℃と加熱を行い、例えばそれぞれのオーブンを60分、10分、1分と時間を替えて通過させて焼成後は冷却して巻き取ることで、加水分解耐性に優れたポリイミド繊維を得ることができる。
本発明のポリイミド繊維は、焼成後に、さらに300℃以上の温度下で0.9倍〜1.2倍の延伸倍率で加熱する工程を経たポリイミド繊維でもある。このようにポリイミド繊維を加熱延伸することで300℃での熱収縮率を3%以下に制御することができる。特に300℃での熱収縮率を3%以下に制御するには、310℃以上550℃以下の温度下で加熱することが好ましく、更に、320℃以上500℃以下の温度下で加熱することが好ましく、特に好ましい温度は350℃以上450℃以下で加熱することが好ましい。
上記温度範囲で加熱することで熱収縮率をより小さくすることが可能になる。更に、延伸倍率は、0.9倍〜1.2倍の延伸倍率が好ましく、特に、0.9倍〜1.1倍の範囲で延伸を行うことで300℃での熱収縮率を3%以下に制御させる上で好ましい。
得られたポリイミド繊維は静電気除去のために、再度別の装置で繰り出しながら、アニオン性、両性、カチオン性等の界面活性剤からなる油剤を表面に塗布することが好ましく、適宜油剤を選定し塗布することが好ましい。
本発明ではポリイミド繊維は、クリンプ処理とカット処理を行い繊維長さが10mm以上1500mm以下、捲縮率が2〜100捲縮(クリンプ)/インチのポリイミドステープルファイバに成形することが好ましい。特に、繊維の長さは25mm以上100mm以下、捲縮率が2〜30捲縮(クリンプ)/インチであることが特に好ましい。このようなステープルファイバに成形することで不織布への成形や、撚り糸への成形が行い易くなるので好ましい。上記得られたポリイミド繊維を、仮撚り装置で倦縮処理を行いポリイミド繊維のステープルファイバを得ることができる。クリンプ処理装置としては、スタッファボックス式や、ギヤ方式等の公知公用の方法を用いることができる。更に倦縮処理されたポリイミド繊維は、公知公用の繊維カット装置を用いて25mm以上100mm以下のステープルファイバに成形することができる。
上記ポリイミドステープルファイバは、公知公用の装置を用いて撚り糸や不織布に加工して用いられる。本発明のポリイミド繊維は、熱収縮率が小さい特徴を有しており、上記ポリイミドステープルファイバを用いて作製した不織布は熱収縮率が小さく、バグフィルター等の高温に曝される耐熱性フィルターに好適に用いることができる。更に、不織布に用いられる基布用のフィラメントとして用いた場合、耐熱性、耐加水分解耐性に優れ、高温時の寸法変化率が小さいことから高温・多湿な環境で長期間使用することができる。耐熱性フィルターに用いた場合、フィルターの目開きの変化が少なく長期間安定にろ過性能を維持することが出来るので好ましい。
また、溶鉱炉作業服や消防服等の高温に曝される温度雰囲気下で高温に暴露される作業着にも、高温での収縮率が小さい本発明のポリイミド繊維は好適に用いることができる。ポリイミド繊維は耐熱性に加えて、難燃性にも優れ、自己消火性も有しており万が一衣服に着火した場合にも短時間で自己消化が起こり人体への影響を最小限に抑える効果を有する。更に例えば、レーシングスーツ等の炎に曝される可能性の高い耐熱性防護服用途にも好適に用いることができる。
また、本発明のポリイミド繊維は耐熱性に加え、電気絶縁性にも優れるので耐アークトラッキング性を必要とするアーク溶接作業用の耐熱服等にも好適に用いることができる。
本発明のポリイミド繊維は、切断面の扁平率が1.1以上の楕円形状を有する繊維であり肌さわりも良く、産業資材用途の繊維に用いた場合には、肌と接触する用途にも好適に用いることができる。例えば、綿との混綿からなる撚り糸は各種繊維製品に広く用いることができる。更には、扁平率が1.1以上であることで繊維自体に艶が発現し、ポリイミド繊維で作製した織布に光沢を発現できるので好ましい。更には、扁平率が1.1以上のポリイミド繊維に油剤を塗布することで、織布の作製時の糸搬送性等に優れ、織布加工時の繊維の接触摩擦を大きく低減できるので、糸の摩擦による毛羽立ち等を抑え、織布の製品価値を高めることが出来るので好ましい。
更には、本発明のポリイミド繊維を用いた織布は、耐熱性、柔軟性、電気絶縁信頼性に優れることから電気・電子機器材料として好適に用いられる。より具体的には、織布にエポキシ樹脂やビスマレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸して作製した電気配線基板や電線等の表面の被覆材料に好適に用いられる。
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<繊度>
Sa本からなるポリイミド繊維のトウを10cmに切断したものの重量(Sbg)を測定して下記算出式により繊度を算出した。
繊度(dtex)=Sb÷Sa×100000
<破断伸度及び破断強度>
株式会社A&D社製 テンシロン万能試験装置(RTC―1210A)を用いて、JIS―L1015に準拠して測定を行った。
<破断強度保持率>
ポリイミド繊維の初期破断強度Ha(cN/dtex)の測定を上記方法にて行い、ポリイミド繊維を、150℃、100%RH、4気圧の飽和水蒸気下で20時間、分解加速試験を行った。加速試験後に、繊維の破断強度Hb(cN/dtex)を測定してHb/Ha×100の算出式から破断強度保持率を算出した。尚、本発明においては破断強度保持率が大きい程、加水分解耐性が良いことを意味する。
<扁平率>
ポリイミド繊維の扁平率についてポリイミド繊維の断面模式図(図2)を用いて説明を行う。ポリイミド繊維の断面形状を電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6380LA)で測定を行い、その内10本の繊維について、図2に示す様に、ポリイミド繊維の長軸の断面径をLa、長軸の中央位置の垂直方向の断面径をLbとした際に、La/Lbを算出し、10本の平均値を扁平率とした。
<300℃における熱収縮率>
ポリイミド繊維の熱収縮率は、以下のようにして求められる。500mmのポリイミド繊維1200本の束を作製し、上下100mmの所に300mmの間隔で印を付けて300℃に加熱したオーブン中に30分間投入する。次に、投入後の印を付けた繊維の長さを測定する。測定後の繊維束の長さから、熱収縮率を、熱収縮率={300−(測定後の繊維束の長さ)}÷300×100の算出式で算出する。
<ポリアミド酸繊維のイミド化率>
ポリアミド酸繊維のイミド化率は、以下のようにして求められる。乾式紡糸を行ったポリアミド酸繊維を取得し、本願発明のポリイミド繊維の製造方法により完全にイミド化されたポリイミド繊維を得た。完全にイミド化を行ったポリイミド繊維とポリアミド酸繊維の赤外線吸収スペクトルを顕微全反射赤外吸収スペクトル測定装置(Paragon1000 Perkin Elmer社製)で各々測定し、1780cm−1の吸光度と1500cm−1の吸光度を求めた。その吸光度から吸光度比(1780cm−1の吸光度÷1500cm−1の吸光度)を求め、イミド化率=(測定したいポリアミド酸繊維の吸光度比)÷(完全にイミド化を行ったポリイミド繊維の吸光度比)×100の算出式で算出する。
(合成例1)
チッソ置換を行った200Lの反応装置に、溶液を攪拌するための攪拌翼を取りつけた反応装置内で反応を行った。反応装置内に、N,N−ジメチルホルムアミドを31.44kg投入し、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.41kgを投入して完全に溶解した。
この溶液中に、ピロメリット酸二無水物4.32kgを投入して20分間均一攪拌を行った。この溶液に、ピロメリット酸二無水物0.48kgをN,N−ジメチルホルムアミド9.1kgに溶解した溶液を少量ずつ添加して、紡糸原液の粘度が、23℃の条件で、B型粘度計で測定した場合に、2300ポイズになった時点で添加を終えた。均一な粘度になった後に、引き続き1時間均一攪拌を行い、紡糸用のポリアミド酸溶液を得た。ポリアミド酸溶液の固形分濃度は18.5%であった。
(実施例1〜5)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(以下、紡糸原液)を用いて紡糸実験を行った。乾式紡糸は図1と同様の装置を用いて行った。紡糸口金1のオリフィス2の孔数は200ホールとして実験を行った。オリフィスの直径は0.20mmの円形の紡糸口金を用いた。紡糸塔内の雰囲気温度は210℃〜220℃に調整して紡糸を行い紡糸塔の下部でポリアミド酸繊維同士が融着しない程度に乾燥していることを確認してボビンに巻き取った。巻き取り速度は700m/分で巻き取った。
紡糸原液の吐出量は250g/分となるように調整してポリアミド酸繊維を取得した。このときのポリアミド酸繊維内の残存溶剤割合は35%、イミド化率は34%であった。このポリアミド酸繊維を6本づつ取得して1200本のトウ状に加工した。
このように取得したポリアミド酸繊維のトウをステンレス製の金属ボビンに500gづつ巻取った。
金属ボビンに巻き取った繊維束を25℃の蒸留水に45分間浸漬した後に、90℃に煮沸した蒸留水に15分浸漬し、浸漬後、200℃に加熱した真空オーブン中に2分以内で投入し減圧と加熱を開始した。真空オーブン中で6時間加熱・乾燥を行いイミド化したポリアミド酸繊維を得た。
イミド化したポリアミド酸繊維を表1に記載している繰り出し速度、延伸倍率で延伸を行いながら延伸を行った。
延伸後の繊維を金属ボビンに巻きつけた状態で表1の加熱条件と時間で加熱を行い、イミド化を進めた。得られたポリイミド繊維は、表1に記載の加熱条件と延伸倍率で処理を行いポリイミド繊維を得た。
得られたポリイミド繊維の、繊度、破断強度、破断伸度、150℃/100%RH/48時間の条件下で処理した後の破断強度保持率、切断面の扁平率、300℃における熱収縮率を測定した結果を表1に記載する。
(比較例1)
インスペックファイバー社製の商品名P84(平均繊度2.2dtex)の製品について、破断強度、破断伸度、破断強度保持率を評価した結果を表2に纏める。
実施例で得られたポリイミド繊維に比較して破断強度保持率が大きく低下し、加水分解耐性が低いことが明らかになった。
(比較例2)
合成例1のポリアミド酸溶液を用いて実施例1〜5と同じポリアミド酸繊維を作製した。このポリアミド酸繊維を繰り出しながら75℃の純水中に1分間浸漬し、その間に1.5倍の延伸倍率で延伸を行った。延伸した繊維は金属コアに巻き取った。巻き取った繊維を100℃の熱風装置内で4時間乾燥した。乾燥した繊維をボビンに巻きつけた状態で275℃のオーブンに25分、400℃のオーブンに25分間投入し加熱・イミド化を行ったところポリイミド繊維の表面の繊維は繰り出すことができたものの、繊維を巻きつけているボビン部分の繊維が融着してしまっていた。このような状態ではポリイミド繊維を大量に作ることは困難であった。更に、繰り出すことのできたポリイミド繊維の物性値を測定した結果を表2に記載する。
表2の結果から明らかな様にポリイミド繊維の破断強度保持率が低下し、加水分解耐性が低下することが明らかになった。また、ポリイミド繊維の熱収縮率も大きくなることが明らかになった。
Figure 0005584686
Figure 0005584686
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1 紡糸用の紡糸口金
2 オリフィス(孔)
3 気流発生装置
4 紡糸円筒
5 ポリアミド酸繊維
6 ツイスター(撚り装置)
7 巻き取り装置
8 紡糸繊維
La ポリイミド繊維の長軸の断面径
Lb 長軸の中央位置の垂直方向の断面径

Claims (13)

  1. ポリイミド繊維の破断伸度が10%以上100%以下、破断強度が1.0cN/dtex以上8.0cN/dtex以下、繊度が0.5dtex以上20dtex以下、150℃/100%RH/48時間の条件下で処理した後の破断強度保持率が80%以上、300℃における熱収縮率が3.0%以下、切断面の扁平率が1.1以上の楕円形状、もしくは亜鈴形を有することを特徴とするポリイミド繊維。
  2. 前記ポリイミド繊維がピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンから選ばれる1種以上のジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸をイミド化することで得られる請求項1に記載のポリイミド繊維。
  3. (a)ポリアミド酸溶液を乾式紡糸して、一部溶剤を含む繊維を取得し、
    (b)繊維を水に浸漬し、
    (c)170℃以上の真空下で乾燥しイミド化せしめ、
    (d)更に、200℃以上600℃以下の温度下で1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸し、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することを特徴とするポリイミド繊維の製造方法により作製したポリイミド繊維。
  4. 請求項3に記載のポリイミド繊維を、300℃以上の温度下で1.0倍〜1.2倍の延伸倍率で加熱することにより作製したポリイミド繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリイミド繊維からなり、繊維長さが10mm以上1500mm以下、捲縮率が2〜100捲縮(クリンプ)/インチであることを特徴とするポリイミドステープルファイバ。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリイミド繊維からなるポリイミドステープルファイバを含む不織布。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項記載の不織布を用いた耐熱性フィルター。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリイミド繊維からなる織布。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリイミド繊維を用いた耐熱性防護服。
  10. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリイミド繊維からなる織布を用いた電気・電子機器材料。
  11. (a)ポリアミド酸溶液を乾式紡糸して、一部溶剤を含む繊維を取得し、
    (b)繊維を水に浸漬し、
    (c)170℃以上の真空下で乾燥しイミド化せしめ、
    (d)更に、200℃以上600℃以下の温度下で1.0倍以上2.5倍以下の延伸倍率で延伸し、延伸後に、200℃以上600℃以下の温度下で加熱することを特徴とするポリイミド繊維の製造方法。
  12. さらに300℃以上の温度下で1.0倍〜1.2倍の延伸倍率で加熱することを特徴とする請求項11に記載のポリイミド繊維の製造方法。
  13. 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリイミド繊維の表面に油剤を塗布し、捲縮・カットすることを特徴とするポリイミドファイバーステープルの製造方法。
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