JP5582556B2 - 鋼板一体型耐力壁 - Google Patents

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本発明は、住宅用の耐力壁の構造に関する。耐力壁とは、建築物に風や地震による外力がかかった際に、建物に作用する水平力に抵抗して建物の変形を抑制させるための壁構造要素であって、建築基準法第20条で定められた要件を満たすものを指す。
一般的に住宅用建築物の耐力壁構造は、形鋼等を組合せた壁枠組または木造の壁枠組の枠材に、合板、集成材、石膏ボードなどの面材を、ドリルねじなどで取付けることで構成されている。そして、昨今のスチールハウス等にあっては、面板をも鋼板で構成したスチール製の耐力壁が多用されるようになっている。
スチール製の耐力壁は、通常、コの字断面の形鋼を溶接やボルトで接合して長方形に組付けた枠材と、この枠材に取り付けられた筋交いや面板から構成されている。筋交いや面板の取り付けにはドリルねじなどが用いられている。
筋交いよりも面板の方が高いせん断抵抗を有しているので優位ではあるが、枠材全面に接合する必要があり、施工が煩雑となるといった問題点がある。
枠材に面板が取り付けられた耐力壁に水平力が作用するとき、面板は対角線方向に膨出し、ひずみが集中する対角部において枠体から剥がれようとする。作用する水平力が大きくなると、前記面板が剥がれるか、剥がれないまでもドリルねじなどの頭の方が面板を貫通して急激な耐力低下が起こる。
このような耐力低下を防ぎ、耐力壁としての機能向上のためにはドリルねじなどでの固着箇所の増加が挙げられるが、その個数を増加するにも限界があり、例えば特許文献1で紹介されるような押さえ具の利用も想定される。
特開2006−177081号公報
特許文献1で紹介された方法は、図1に見られるように、枠体2a,2bにドリルねじなどで取り付けられた面材3の外側に、当該面板の上下端部の横幅方向全長に、押さえ具4a,4bを、前記面板3を螺通させて前記枠体2a,2bに螺着させようとするものである。
この技術は、ドリルねじなどでの面板への取り付け箇所の低減によって所要の壁耐力を得ようとする観点からは有意なものである。しかしながら、押さえ具なる副資材を必要とするばかりでなく、手間を要するため、耐力壁の製造の観点からは高コストなものとなってしまう。
ところで、枠材とこの枠材に取り付けられた筋交いや面板とからなる耐力壁においては、多用なニーズに対応させるため、様々な板厚の鋼材が用いられ、多様な形状に形作られている。枠材の製造および枠材への面板などの取り付けの際の接合工程に時間と費用がかかるといった問題点がある。また、枠材の製造に溶接法を用いようとすると、溶接ヒュームの発生など作業環境を悪くする。しかも、めっき鋼材を素材としていると、溶接時にめっき層がなくなるので、溶接部の補修が必要になることもある。また、素材ボルト接合法を採用しようとすると、副資材が必要となるばかりでなく、手間を要するといったデメリットもある。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、形状を工夫することにより、一枚の鋼板を素材として、高く、かつ安定的なせん断抵抗を有する耐力壁を提供することを目的とする。
本発明の鋼板一体型耐力壁は、その目的を達成するため、一枚の矩形鋼板に絞り加工を施すことにより枠材部と面板部が形成されている矩形の耐力壁であって、前記枠材部が素材矩形鋼板の各側端部に形作られたL字形断面形状を有するとともに、前記面板部に当該面板部の同一平面とされた周縁部及び対角線部に対して段差を有するリブが形成されていることを特徴とする。
本発明の鋼板一体型耐力壁は、従来の耐力壁の枠材と面板とを、一枚の鋼板に絞り加工あるいは折り曲げ加工を施すことにより、一体成形したものとしている。このため、多様な形状、板厚の鋼材を必要とせず、所望のせん断抵抗を発揮し得る板厚の鋼板を素材とすることで足りる。また、枠材と面板の接合の必要もないので、溶接に伴う環境悪化や、ドリルねじ固着に伴う副資材及び手間の増加もない。
また、溶接法やドリルねじ固着が採用されないので、所望のせん断抵抗を有する耐力壁が安定的に提供される。さらに、めっき鋼板を素材としても、溶接法の採用がないので耐食性の低下のおそれもない。
したがって、本発明により、従来品よりも安定したせん断抵抗を有する耐力壁が環境悪化を伴うことなく、低コストで提供できる。
なお、本発明では、従来の枠材と面板とからなる耐力壁を一枚の鋼板で形成している。一枚の鋼板から形成した部位を区分するために、本明細書中では「枠体部」、「面板部」と記載しているが、機能的には従来の「枠材」や「面板」と同じである。
本発明者等は、枠材と面板とからなる耐力壁を溶接法やドリルねじを用いることなく、製造できる体力壁構造について鋭意検討を重ねた。その過程で、一枚の鋼板から枠材部と面板部を形作ることにより、溶接法やドリルねじを用いることなしに耐力壁を得たものである。
また、従来の耐力壁の構造をみると、断面L字形や断面コ字形の形鋼を矩形に組付け、このフランジ部に別途準備した面板を取り付けている。そこで、面板部を供えた一枚の鋼板の四側辺に断面L字形の枠材部を形作れば、溶接法やドリルねじを用いることなしに一枚の鋼板からなる耐力壁が得られることに到達したものである。
以下に、その詳細を説明する。
前記した通り、溶接法やドリルねじを用いることなしに耐力壁を形作るには、一枚の鋼板の四側辺に断面L字形の部位を形成し、この部位を枠材部とすればよいことになる。
まず、一枚の鋼板の四側辺に断面L字形の部位を形成するには、絞り加工法が採用される。耐力壁の外側寸法に合った寸法の凹部を有するダイ上に被加工鋼板を載置し、ブランクホルダーにてしわ押え力を付与した被加工鋼板の上から耐力壁の内側寸法に合った形状のパンチを押込む絞り加工を行うことにより、鋼板の四側辺部に断面L字形部が形成される。この断面L字形部が枠材部となり、断面L字形部で囲まれた平坦な板部が面板部となった耐力壁が得られる(図2参照)。
なお、絞り加工の際、断面L字形の先端部に異形部が残存することがあるが、この異形部はカットして除去することが好ましい。
ところで、耐力壁としてのせん断抵抗を高めるには、面板部の剛性を高めることも有効である。
面板部を構成する板に高い剛性を付与するためには、リブを形成することが好ましい。
上記した通り、絞り加工法で、プレス法を採用する際に、ダイやパンチの被加工鋼板への当接面に凹凸模様を形成し、プレス時にこの凹凸模様を転写させることにより、面板部に容易にリブを形成することができる。
なお、耐力壁としては、耐久性の観点から、耐食性も必要である。耐食性に優れた素材鋼板としては、めっき鋼板を用いることが好ましい。めっき鋼板としては、Znめっき、Alめっき、Zn−Al合金めっき、あるいはZn−Al−Mg合金めっきが施された鋼板が用いられるが、特に、Al:4.0〜10.0質量%、Mg:1.0〜4.0質量%を含み、残部がZnからなるもの、さらに微量のTiやBを含むもの、あるいはさらにSiを含むZn−Al−Mg系合金めっきが施された鋼板を素材としたものが好ましい。
本発明の鋼板一体型耐力壁は、基本的には溶接接合法を採用していないので、めっき鋼板の耐食性が十分に発揮・維持される。
2520mm×1030mmにカットした、板厚1.2mmの400MPa級のZn−Al−Mg系めっき鋼板に絞り加工を施し、側辺(側壁)部を内側に曲げた部分が無い形状(L字形断面形状)の、高さ2600mm、幅910mm、奥行き60mmの耐力壁を製造した。なお、絞り加工を考慮し、図3に示すように、枠の隅部には60Rのコーナー部を設けている。また、高さ5mmのリブ6を図3に示すように設けている。
得られた耐力壁について変形性能を調査した。
併せて、同じ400MPa級のZn−Al−Mg系めっき鋼板を素材とした図4に示すような構造・サイズの筋交い型の耐力壁(従来の耐力壁)の変形性能を調査し、両者を比較した。
なお、従来構造の耐力壁は、枠材である縦フレームと上下のフレームの板厚は2.3mm、筋交いの板厚は3.2mmとした。
耐力壁の変形性能は、図5に示す面内せん断試験機を用い、JISA1414に準じて行った。Pなる荷重を加えたときの各部位の変形量H1,H2,V3,V4を変位計で測定し、下記の式(1)で示すせん断変形角R(rad)にて評価した。
せん断変形角R(rad)=(H1−H2)/H−(V3−V4)/W ・・・・(1)
その結果である荷重‐せん断変形角曲線を図6に示す。
従来構造の耐力壁と比較して板厚の薄い本発明品の方が、同じ荷重ではせん断変形角が小さく、変形し難かったことがわかる。
本実施例で作製した鋼板一体型耐力壁には接合部がないため、安定しかつ優れたせん断抵抗を有しており、接合部の接合不良の心配もない。
特許文献1で紹介されている耐力壁 断面L字形の枠体部を形成した鋼板一体型耐力壁の形状を説明する斜視図 実施例で作製した鋼板一体型耐力壁を示す図 実施例で比較対象とした従来の耐力壁を示す図 面内せん断試験の方法を説明する概略図 実施例で調査した耐力壁の荷重‐せん断変形角曲線

Claims (1)

  1. 一枚の矩形鋼板に絞り加工を施すことにより枠材部と面板部が形成されている矩形の耐力壁であって、前記枠材部が素材矩形鋼板の各側端部に形作られたL字形断面形状を有するとともに、前記面板部に当該面板部の同一平面とされた周縁部及び対角線部に対して段差を有するリブが形成されていることを特徴とする鋼板一体型耐力壁。
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