JP5581657B2 - 転炉排ガスの熱エネルギー回収方法およびその装置 - Google Patents

転炉排ガスの熱エネルギー回収方法およびその装置 Download PDF

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Description

本発明は、転炉排ガスの熱エネルギーを回収する方法およびその装置に関し、特に、高温の転炉排ガスの顕熱を利用して、回収する排ガス中の熱エネルギー分を増大させて回収する方法と、この方法の実施に用いる装置に関するものである。
近年、転炉吹錬は、上吹きメインランスより酸素ガス(Oガス)を上吹きするとともに、炉底羽口より燃料、Oガスあるいは不活性ガスを底吹きする上底吹き方式が主流となっている。このような転炉吹錬において、吹込まれたOガスは、溶鋼中のCと反応してCOガスを発生し、操業条件によっても異なるが炉内は、1500℃〜1700℃程度の高温になる。このとき発生したCOガスは、可燃性ガスとしても使えることから、通常、回収したこの転炉排ガスを、燃料として使用するのが一般的である。
一般に、転炉1の炉口部には、図1に示すように、上部フード3a、下部フード3bと、その下部フード3bの下端部に装着された昇降式スカート2が配設されており、該昇降式スカート2によって炉口部をシールするようになっている。
転炉1から発生する高温の排ガスは、前記昇降式スカート2、転炉排ガスダクト3(固定式の上部3a・下部フード3b)、ガス冷却器4、集塵器8、8’等を経て排出されている。なお、ガス冷却器4では、排熱回収用のボイラを介して排ガスを冷却すると共に、ここでも熱エネルギーが回収できるようになっている。そして、集塵器8、8’では、集塵用散水式スプレーノズルが配設され、排ガスの冷却と共に集塵ができるようになっている。
ところで、転炉排ガスがもつ熱エネルギーを回収する技術としては、炭化水素系ガスとCOやHOとを排ガス顕熱を利用して高温で反応させることにより、還元ガスを製造する方法が知られている。例えば、特許文献1には、転炉の排ガス煙道中の1300℃以上の排ガス中に、メタンと水蒸気を添加して水性ガス化反応を生起させ、このことにより該排ガス中の熱量(カロリー)増加を図る転炉排ガスの増熱回収方法が開示されている。さらに、特許文献2には、各種製鉄設備から発生する排ガスのもつ熱エネルギーを排ガス回収設備を用いて回収するに当たり、その排ガス回収設備の供給配管から炭化水素を含む気体や液体を供給し、高温排ガス中の二酸化炭素および/または水蒸気と反応させることにより、高温排ガスの潜熱分を増大させる方法が開示されている。
特開平2−11715号公報 特開2000−212615号公報
前記従来技術においては、排ガスダクト等の排ガス回収設備内に、吹込みノズル(吹込み管)を介して炭化水素系の気体(メタンを主成分とする都市ガスやプロパンガス等)や、液体(重油等)を吹込んでいるが、これらは転炉回収排ガス等の副生ガスに比べて高価であり、製鉄所内のエネルギーバランスによっては吹き込まない方がよいことがある。しかも、高温の排ガスに曝されている前記吹込み管内には、前記の気体もしくは液体が、常時に供給されているという訳ではなく、一方で、転炉から発生する排ガス温度は、約1300℃にもなり、常にその高温雰囲気に曝されることになる。その結果、前記吹込み管は、気体もしくは液体が供給されている間は、それらによって冷却された状態にあるが、ひとたびガス等の供給が停止になった場合には、冷却手段を失って吹込み管先端部が該高温の排ガスによって溶損してしまうという問題があった。
また、転炉からの排ガス中には、吹錬中に発生した多量のダストを含有しているため、前記吹込み管に、還元剤として気体または液体が供給されていないと、該吹込み管がダストによって閉塞するという問題もあった。この問題に対しては、吹込み管に気体または液体を供給しないときに、該吹込み管に窒素等の不活性ガスを供給するという対策が考えられるが、この場合には、回収される転炉排ガスが窒素等の不活性ガスによって希釈され、回収排ガスの発熱量が低下するという問題が発生する。しかも、窒素等の不活性ガスを必要とすることから、その不活性ガスを製造するためのエネルギーが必要になるというマイナス要因もあった。
さらには、転炉から発生した排ガスに曝されて高温になった吹込み管(供給ノズル)から気体や液体からなる還元剤(炭化水素含有流体)を供給する場合、高温になった該ノズルの内壁面で炭化水素の脱水素化反応が起こってカーボンが析出し、それが内壁面に付着してノズル詰まりを発生することがあった。このカーボンによるノズル詰まりは、特に、液体状の炭化水素を使用する場合に顕著であった。
そこで、本発明は、従来技術の下で顕在化してきた前記課題を解決することを目的とし、特に、還元剤吹込み管の保護を図りながら、回収排ガスの一層の増熱を図るための熱エネルギー回収方法と、この方法の実施に用いる回収装置とを提供することを目的とする。
本発明は、従来技術が抱えている上述した問題点を解決するために鋭意研究した結果、上記の目的を実施するには、上記吹込み管からは常時、冷却用ガスを流すことが必要であり、その冷却用ガスとしては、高価な炭化水素系のガスや液体を使うのではなく、製鉄所に自生するガス、とくに転炉から発生する排ガスの一部を利用することが有効であるとの知見を得て、本発明を開発するに到った。
即ち、本発明は、転炉排ガスのもつ熱エネルギーを、排ガス回収設備を使って回収するにあたり、該排ガス中に、転炉排ガスダクト部に取り付けた吹込み管を介して還元剤を吹込み、該排ガス中の二酸化炭素と、該還元剤とを反応させることにより、該排ガスの熱エネルギーを増大させる転炉排ガスの熱エネルギー回収方法において、
転炉排ガスの排ガス回収設備の誘引送風機の出側における改質回収排ガスの一部を、前記吹込み管還元剤と共に異なる流路から並行して同時に吹込むことを特徴とする転炉排ガスの熱エネルギー回収方法である。
そして、上記転炉排ガスの熱エネルギー回収方法においては、
(1)前記吹込み管から吹き込む改質回収排ガスと還元剤との割合は、改質回収排ガスの量を還元剤の量に対して5〜20容積%とすること、
(2)前記誘引送風機出側における改質回収排ガスは、冷却され除塵され改質された排ガスであること、
がより好ましい解決手段である。
また、本発明は、上記回収方法の実施にあたっては、転炉排ガスのもつ熱エネルギーを、排ガス回収設備を使って回収するにあたり、該排ガス中に、転炉排ガスダクト部に取り付けた吹込み管を介して還元剤を吹込み、該排ガス中の二酸化炭素と、該還元剤とを反応させることにより、該排ガスの熱エネルギーを増大させる転炉排ガスの熱エネルギー回収装置において、
前記吹込み管が、転炉の排ガスダクトの、該ダクト内ガス流れ方向および/または該ダクトの周方向のそれぞれ1〜複数箇所に配設され、転炉排ガスと反応させるための還元剤と、転炉排ガスの排ガス回収設備の誘引送風機の出側における改質回収排ガスの一部とを共に並行して吹込むことのできる同心2重管構造からなることを特徴とする転炉排ガスの熱エネルギー回収装置を用いることが有効である。
なお、本発明の上記回収装置においては、
(1)前記吹込み管は、内管内中心流路部分からは還元剤を供給し、外管内環状流路部分からは前記改質回収排ガスの一部を供給する、同心2重管構造であること、
(2)前記吹込み管は、外管の内径をDとし、その外管に比べて窪んだ位置にある内管先端部と外管先端部との該吹込み管中心軸方向の距離をLとしたとき、L/D>1.0の関係を満たすこと、
(3)前記改質回収排ガスは、冷却され除塵され改質された排ガスであること、
がより有効な解決手段となる。
上記のように構成される本発明によれば、
(1)吹込み管が、転炉排ガスを改質処理して回収される改質回収排ガスによって、常に冷却されることになるため、溶損することがない、
(2)たとえ炭化水素含有ガス等の還元剤を、この吹込み管に供給していないときでも、転炉ダストの付着による詰りが生じることがない、
(3)還元剤成分である炭化水素の脱水素による吹込み管内へのカーボンの析出、付着がなくなる、
(4)改質回収排ガスの一部を吹込み管冷却ガスとして、転炉排ガスダクト内に還流させるので、この循環によって該排ガスの熱エネルギーが、非循環系の当初の回収排ガスよりもさらに増大する、
(5)還元剤である炭化水素含有流体が転炉排ガス回収設備に逆流するようなことがなく、排ガスからの熱エネルギーを常に安全に回収することができる、
と共に、安定した転炉排ガス回収処理を行うことができる、
(6)(1)〜(5)により、安定した転炉排ガスの熱エネルギー回収ができる、
という効果がある。
本発明の排ガス回収装置の一例を示す略線図である。 本発明の排ガス回収装置に用いられる吹込み管先端部の一例を示す断面図である。 吹込み管温度とカーボン濃度等との関係を示すグラフである。 L/D比と吹込み管温度との関係を示すグラフである。
本発明は、転炉排ガス、とくに吹錬時に発生する排ガスの熱エネルギーを、排ガス回収設備を使って回収するにあたり、該排ガス中に、転炉排ガスダクト部に取り付けた吹込み管を介して還元剤を吹込み、該排ガス中の二酸化炭素と、該還元剤とを反応させることにより、排ガス中の潜熱分を増大させる転炉排ガスの熱エネルギー回収方法において、前記排ガス回収設備で改質処理されて回収される排ガスの一部を、該設備の誘引送風機の出側、好ましくは該誘引送風機の出側と放散塔との間の位置から取り出した、既に冷却され除塵されかつ改質された状態にある改質回収排ガス(以下、単に「回収排ガス」ともいう)の一部を、前記吹込み管から還元剤と共に並行して吹込む転炉排ガスの熱エネルギー回収方法であって、前記吹込み管に熱負荷がかかっているか否かには関係なく、該吹込み管内に常に該回に排ガスを、吹込み管冷却用ガスとして吹き込むことで、吹込み管の溶損が起こらないようにするものである。また、前記還元剤としては炭化水素を含む気体および/または液体を用いることが好ましい。
本発明における転炉排ガスの熱エネルギー回収方法は、基本的に、転炉から排出される1000℃以上である高温の排ガス(以下、「オフガス」という)に還元剤を添加し、このことにより、そのオフガス中に含まれている炭酸ガスと、炭化水素例えば天然ガス等の還元剤との、下記(1)式で示す改質反応を生起こさせることによって、オフガス潜熱分の増熱を図ると共に、炭酸ガスの排出量の削減を実現する転炉排ガスを改質回収する技術である。
CH+CO→2CO+2H ・・・ (1)
転炉から排出されるオフガスは、通常、10〜20容積%程度のCOと50〜80容積%程度のCOを含有し、発熱量が1500〜2000kcal/m(Normal)程度、操業中の炉口部における温度は1200〜1800℃程度である。この転炉オフガス中に、還元剤を添加して、その還元剤と炭酸ガスとによる上記(1)式の改質反応を導くことにより、回収排ガスの改質(増熱)と炭酸ガスの排出削減が同時に達成される。増熱された回収排ガス、即ち、改質された回収排ガスは、例えば、製鉄所内の各種熱源として使われるため、最終的には、炭酸ガスを排出することになるものの、製鉄所内で用いられる重油等の補助燃料を増熱分相当量削減することができるから、結果的にその分の炭酸ガスが削減できることになる。
本発明では、前記回収排ガスの一部を煙道(ダクト)内、即ち、上部フードや下部フードなどからなる排ガスダクト内へ吹込んで供給するための吹込み管として、転炉オフガスを改質して得られる改質回収排ガスの一部を吹込み管冷却ガスとして、還元剤と共に該排気ダクト内へ同時に吹き込み供給できるようにするために、改質回収排ガスの一部と還元剤とを同一の方向へ並行して吹込むことができるようにした同心2重管構造からなるものを用いる。
並行して吹込む還元剤に対する前記回収排ガスの割合は5〜20容積%とすることが好ましい。5容積%以上とすると吹込み管の冷却が十分となり、一方、20容積%以下とすると還元剤の昇温不足による改質反応の低下が生じない。
なお、前記同心2重管構造からなる吹込み管は、内管内の中心流路からは、還元剤を供給することができ、一方、その中心流路の外側にある外管内の環状流路からは、前記改質回収排ガスからなる冷却ガスが供給されるようにすることが、吹込み管の冷却のために好ましい。なお、この吹込み管冷却のためのガスとして用いられる回収排ガスは、転炉の操業停止、吹き始め、吹き止め時のような、オフガスの温度が低い場合でも、この回収排ガス単独で常時、少なくとも外管内環状流路を通じて吹き込まれることが好ましい。
かかる同心2重管構造からなる吹込み管は、内管の先端を、外管の先端よりも後方に位置させるように窪んだ位置とし、その両者の各先端位置の関係を、外管の内径をDとし、内管の先端部と外管の先端部との該吹込み管中心軸方向の距離をLとしたとき、L/D>1.0の関係を満足するように構成することが好ましい。
このような吹込み管構成とすることにより、本発明では、吹込み管が、前記回収排ガスからなる冷却用ガスによって、還元剤を吹き込むか否かに拘らず、常に冷却されることになるため、該吹込み管が転炉排ガスダクト内に露出し、輻射熱によって高温になったとしても、常に冷却された状態になるから、溶損するようなことがない。また、たとえ還元剤を吹き込まない場合であっても、ダスト付着による吹込み管の閉塞を招くことがなく、しかも、還元剤成分である炭化水素の脱水素によるカーボン析出付着もなくなり、還元剤を安定して供給することができるようになる。
また、前記吹込み管として、上記2重管構造からなるものを用いることにより、回収排ガスの一部と還元剤とは、それぞれが異なる流路から同一の方向へ同時に吹き出すようになっているため、還元剤が転炉排ガス側に逆流することもなくなる。
回収排ガスと還元剤の添加位置は、ガス滞留時間ならびに添加位置におけるオフガスの温度を考慮して決定することが好ましい。例えば、図1は、吹込み管7を排ガスダクト3内の下部フード3bに設置した例である。ただし、本発明では、上記の他、例えばスカート2、上部フード3aなどに、1以上複数個の吹込み管7を、好ましくはタンゼンシャルな向きに設置して、回収排ガスと還元剤の吹込みを行ってもよい。
とくに、転炉オフガス中の炭酸ガス量が比較的少ない場合などでは、反応時間が短くてよいので、上部フード3aまたは下部フード3bよりもさらに下流側の排ガスダクト3内、例えば、ガス冷却器4位置などにおいて吹込みを行ってもよい。また、その位置は、排ガスダクト内ガス流れ方向および/または周方向の1箇所だけに限らず、複数箇所としてもよい。
本発明で用いることのできる還元剤としては、天然ガスや液化石油ガス、メタン、エタン、軽質ナフサ、ラフィネート、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどから選ばれる物質の少なくとも1つの化石資源系化合物を用いることが好ましい。中でも天然ガスや液化石油ガス、軽質ナフサ、ラフィネート、ジメチルエーテルは、炭酸ガスとの反応性がよく、安価で大量の入手も容易であることから好ましい。
また、この還元剤としては、上記化石資源系化合物と共に、またはそれに代えて非化石資源系有機化合物を用いてもよい。非化石資源系有機化合物を用いると、炭酸ガス改質反応によってオフガスが増熱される分に加え、カーボンニュートラルな還元剤によって改質反応を行うため、炭酸ガス排出削減に大きく貢献できる点において特に好ましい。この非化石資源系有機化合物としては、バイオエタノール、バイオディーゼルまたはこれらの混合物を挙げることができる。
なお、天然ガスや液化石油ガスのように、室温で気体である還元剤を用いる場合、ガス吹込みに適した吹込み管を用いればよく、吹込み管形状や吹込み管の本数にとくに制約はない。また、ラフィネート、バイオエタノール、バイオディーゼルのように、室温で液体の還元剤の場合は、これをミスト状に噴霧して注入してもよく、気化させた後、気体で注入してもよい。
さらに、ジメチルエーテルのような液化ガス、または非化石資源系有機化合物の液化ガスを還元剤とする場合は、事前に気化させて気体として注入してもよく、液体で供給し吹込み管近傍、あるいは吹込み管内で気化させて供給してもよい。吹込み管近傍、あるいは吹込み管内で気化させる場合には、気化熱によって吹込み管が冷却されるため、吹込み管の保護の点からは好ましい。
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、250トンの底吹き転炉における排ガス回収設備例の説明図である。この例で使用した転炉1は、650m(Normal)/minの酸素ガスを18本の炉底羽口5から供給するものである。その炉底羽口5は、同心2重管で、外管内環状流路から羽口冷却用の液化石油ガスを19.5m(Normal)/min供給している。炉内の脱炭反応により、COガスが発生し、炉口部分で一部空気を吸い込むため、回収すべきオフガスの成分は、CO=82.3容積%、CO=4.3容積%、H=5.2容積%、N=8.1容積%である。オフガスの総量は、1500m(Normal)/minである。従って、COは、65m(Normal)/minの速度で発生していることになる。この転炉からのオフガスは、スカート2、下部フード3b、上部フード3aを経てガス冷却器(輻射部)4にて冷却され、1次集塵器8、2次集塵器8’により該オフガス中のダストを除塵した後、誘引送風機9によって吸引されることにより、冷却され除塵され、そして改質された回収排ガスとなる。
一方、この例において、転炉排ガスダクト内オフガス中に吹き込む還元剤6としては、天然ガスを用いた。この還元剤6は、CHを90.7容積%、その他の炭化水素ガスを9.3容積%含んでおり、吹込み管7より転炉オフガス中に供給され、オフガス中の二酸化炭素と、上記(1)式の反応を起こすことにより、高温オフガスの潜熱分を増大させた改質回収排ガスとなる。この還元剤6は、COと等モル量、すなわち65m(Normal)/minを吹き込んだ。なお、この例で用いた転炉1は底吹き転炉であるので、上吹きランスは存在しない。
なお、前記回収排ガスは、一般には、誘引送風機9により吸引、昇圧された後、副生ガスとして工場13へ送られるが、吹錬直後および完了後の回収排ガスは、燃料としての熱量が低いため、燃焼放散塔10にて燃焼され、大気中に放散される。吹錬を開始し、回収排ガスの熱量が高くなった後に、水封逆止弁12を開け、3方切替弁11を切り換えて工場13への送気を行う。
本発明において、転炉排ガスダクト内オフガス中への前記回収排ガス等の吹込み管7は、吹錬直後および吹錬完了後の回収排ガスを含めて、誘引送風機9の出側の回収排ガス管14の位置より取り出し、冷却ガス配管15によって還流送気された前記回収排ガスの一部によって常に冷却される。
上述した転炉オフガスのの熱エネルギー回収方法において、底吹き転炉のサブランスを利用し、脱炭吹錬の途中で、転炉スカート2の位置でのオフガス温度を測定したところ、還元剤(CH)の供給の有無にかかわらず、1480〜1630℃であった。一方、一次集塵器8前に設置した温度計の測温結果では、還元剤(CH)を供給しないときは480℃であり、供給したときは375℃であった。
また、一次集塵器8の位置から採取し、分析した回収排ガス組成は、還元剤(CH)を供給していないときには前述の組成であったのに対し、該回収排ガスを供給したときには、CO=80.5容積%、CO=0.2容積%、H=12.1容積%、N=7.2容積%であった。この場合、CO濃度は低下しているが、オフガス総量が1695m(Normal)/minと増加しているため、COガスとしての発生速度は、還元剤(CH)の供給により、1235m(Normal)/minから1365m(Normal)/minに増加した。また、還元剤(CH)の供給により、蒸気回収量は90kg/tから61kg/tまで低下したが、回収排ガスのカロリーは39.5×10kcal/t増加した。なお、CHのCO、Hへの転換のために消費されるガス顕熱が、そのまま蒸気回収量低減になるとすると、その低減量は、36.7kg/tになるはずであったが、29kg/tに抑えられていた。すなわち、蒸気回収効率は、還元剤(CH)供給の有無により同一ではなく、効率が多少向上したことになった。
また、吹込み管7に向う冷却ガス配管15を介して送給した回収排ガスは、還元剤(天然ガス)の約10容積%に当たる7.0m(Normal)/minとし、冷却用ガスとして転炉からの回収排ガスを使用したところ、回収排ガス中の燃焼性成分の減少が回避できるのみならずさらなる増熱を果すことができた。また、冷却用の回収排ガスの取り出し位置を、転炉排ガスの誘引送風機9の出側と放散塔10との間とすることにより、転炉排ガスの放散の有無に拘らず冷却ガス供給の遮断がなくなり、吹錬開始から終了まで安定して吹込み管7の冷却を果たすことが可能となる。
図2は、吹込み管7の一例を示すものである。この吹込み管7は、冷却ガス配管15を介して還流送気される前記回収排ガスの一部が外管内環状流路17を通って、内管内中心流路16内の還元剤のまわりを取り囲むようにして流出し乍ら、それぞれ同一の方向へ吹き出すように構成された同心2重管構造からなるものである。このように、吹込み管7を、回収排ガスの一部と還元剤とが、同心2層流となって同一方向へ吹き出す構造にすることで、還元剤の吹込みがない場合にも、転炉オフガスが該吹込み管内に逆流するようなことがなく、とくに、回収排ガスの一部が外環状流であることから、吹込み管7の内管が冷却され、吹込み管の溶損防止が常時に確保される。
次に、図3および図4は、吹込み管温度の回収排ガス中のカーボン濃度等への影響、および吹込み管7の外管内径Dに対する外管の先端部と内管先端部の距離Lの比と吹込み管温度との関係を示したものである。なお、図3および図4において、吹込み管温度は内管先端部の温度である。これらの図から判るように、外管内径Dに対し、内・外管先端部距離Lとの比L/Dを、1.0超とすることにより、吹込み管温度を常に900℃以下とすることができ(オフガス温度1300℃のとき)、ひいては還元剤中の炭化水素の脱水素によるカーボン析出、付着および吹込み管の詰まりがなくなることが判った。また、この実施形態では外管内径Dを100mmと150mmの吹込み管を用いたが、吹込み管のサイズは適用する転炉の操業条件などにより適宜選択すればよい。
また、L/Dを大きくすると、図2に示した角度θ(内管の後退程度)の値が減少することから、外環状流(冷却ガス=転炉回収ガス)による遮蔽効果により、1300℃ある転炉オフガスダクトからの輻射伝熱量が減少し、吹込み管温度が低下したものである。
このように本発明方法に適合する熱エネルギー回収装置に用いられる同心2重管構造からなる吹込み管は、上述したように形状を、L/D>1.0としたことにより、回収排ガスによる冷却効果が効果的に発揮され、該吹込み管の溶損を防止でき、たとえ還元剤(炭化水素)を吹き込まないときでも、転炉ダスト付着による吹込み管の閉塞がなく、また、炭化水素の脱水素によるカーボン析出もなく、安定した還元剤の供給ができるようになることがわかった。
上記の実施形態では、吹込み管7が1本の条件で実施した例であるが、転炉排ガスダクトの適所、例えば該ダクト内ガス流れ方向および/または該ダクトの周方向に複数の吹込み管7を設置しても同じ効果が生じる。
本発明は、転炉の排ガスだけでなく、炭酸ガスを含む高温の排ガスが排出される他の冶金炉排ガス技術としても有効である。
1 転炉
2 スカート
3 排ガスダクト
3a 上部フード
3b 下部フード
4 ガス冷却器
5 底吹きノズル
6 還元剤
7 吹込み管
8、8’ 集塵器
9 誘引送風機
10 放散塔
11 3方切替弁
12 水封逆止弁
13 工場
14 回収排ガス管
15 冷却ガス配管
16 内管内中心流路
17 外管内環状流路

Claims (7)

  1. 転炉排ガスのもつ熱エネルギーを、排ガス回収設備を使って回収するにあたり、該排ガス中に、転炉排ガスダクト部に取り付けた吹込み管を介して還元剤を吹込み、該排ガス中の二酸化炭素と、該還元剤とを反応させることにより、該排ガスの熱エネルギーを増大させる転炉排ガスの熱エネルギー回収方法において、
    転炉排ガスの排ガス回収設備の誘引送風機の出側における改質回収排ガスの一部を前記吹込み管に還元剤と共に異なる流路から並行して同時に吹込むことを特徴とする転炉排ガスの熱エネルギー回収方法。
  2. 前記吹込み管から吹き込む改質回収排ガスと還元剤との割合は、改質回収排ガスの量を還元剤の量に対して5〜20容積%とすることを特徴とする請求項1に記載の転炉排ガスの熱エネルギー回収方法。
  3. 前記改質回収排ガスは、冷却され除塵され改質された排ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の転炉排ガスの熱エネルギー回収方法。
  4. 転炉排ガスのもつ熱エネルギーを、排ガス回収設備を使って回収するにあたり、該排ガス中に、転炉排ガスダクト部に取り付けた吹込み管を介して還元剤を吹込み、該排ガス中の二酸化炭素と、該還元剤とを反応させることにより、該排ガスの熱エネルギーを増大させる転炉排ガスの熱エネルギー回収装置において、
    前記吹込み管が、転炉の排ガスダクトの、該ダクト内ガス流れ方向および/または該ダクトの周方向のそれぞれ1〜複数箇所に配設され、転炉排ガスと反応させるための還元剤と、転炉排ガスの排ガス回収設備の誘引送風機の出側における改質回収排ガスの一部とを共に並行して吹込むことのできる同心2重管構造からなることを特徴とする転炉排ガスの熱エネルギー回収装置。
  5. 前記吹込み管は、内管内中心流路部分からは還元剤を供給し、外管内環状流路部分からは前記改質回収排ガスの一部を供給する、同心2重管構造であることを特徴とする請求項4に記載の転炉排ガスの熱エネルギー回収装置。
  6. 前記吹込み管は、外管の内径をDとし、その外管に比べて窪んだ位置にある内管先端部と外管先端部との該吹込み管中心軸方向の距離をLとしたとき、L/D>1.0の関係を満たすことを特徴とする請求項4または5に記載の転炉排ガスの熱エネルギー回収装置。
  7. 前記改質回収排ガスは、冷却され除塵され改質された排ガスであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の転炉排ガスの熱エネルギー回収装置。
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