JP5581460B1 - セメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法、並びにこれを用いたセメント組成物 - Google Patents

セメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法、並びにこれを用いたセメント組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】セメント混和剤の性能(特に、スランプ保持性能及び凍結融解抵抗性)をより一層向上させうる手段の提供。
【解決手段】重量%で第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)X、第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)X、(メタ)アクリル酸若しくはその金属塩かアンモニウム塩単量体(c)Y、及び、前記(a)〜(c)と共重合可能なその他の単量体(d)Zであり、X+X+Y+Z=100としたときに、X:X:Y:Z=5〜90:5〜90:5〜40:0〜35かつX+X=60〜95であり、第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(a)の鎖長分布係数B1と、第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)の鎖長分布係数B2との差の絶対値(|B1−B2|)が100以上である共重合体のセメント混和剤。
【選択図】図3

Description

本発明は、セメント混和剤用共重合体(塩)およびその製造方法、並びにこれを用いたセメント組成物に関する。さらに詳しくは、セメントペースト、モルタル、コンクリートといったいわゆるセメント組成物において、その流動性が経時的に低下することを防止するスランプ保持型セメント混和剤に用いられる共重合体(塩)およびその製造方法、並びに当該共重合体(塩)を含有してなるセメント組成物に関する。
1981年にコンクリート構造物の早期劣化が社会問題化して以来、コンクリート中の単位水量を減らしてその施工性と耐久性を向上させることが強く求められてきたなかで、セメント配合物の品質、性能に多大なる影響を与えるセメント分散剤に対する技術革新が盛んに行われている。
従来の手法としては、AE剤もしくはAE減水剤を添加した流動性(以下「スランプ」という。)の低い生コンクリートをプラントで製造し、生コン車にて打設現場まで運搬した後、これに流動化剤を添加して流動化させ、スランプを所定の値まで高める流動化工法がとられていた。しかしながら、この工法には、生コン車で流動化剤をコンクリートに添加して攪拌混合する際に発生する騒音および排気ガスの環境問題、得られた流動化コンクリートの品質の責任の所在、流動化コンクリートのスランプの著しい経時低下、等の諸問題があった。
そこで、生コンプラントで添加できるいわゆる高性能AE減水剤の開発が各混和剤メーカーで精力的に行なわれ、現在、ナフタレン系、アミノスルホン酸系およびポリカルボン酸系等が市販されている。この中で、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、最も高い減水率を得ることができるという優れた特徴を有するが、得られた生コンクリートを夏場に遠隔地へ搬送する等の過酷な使用条件下においては、他の高性能AE減水剤と同じく、スランプロスを十分に抑えきれない場合があるといった課題があった。
ここで、上記ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸(塩)を必須成分として含有する単量体成分を重合開始剤の存在下で重合することにより得られる共重合体の構成を有するものである。そして、上述した課題を解決するための当該ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の改良技術として、例えば特許文献1では、単量体成分の構成要素である(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートとして少なくとも2種を用い、これら少なくとも2種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートにおけるオキシアルキレン基の平均付加モル数が、その差が3以上異なるように1〜97の範囲および4〜100の範囲から選ばれるようにし、さらに(メタ)アクリル酸(塩)も含めた3種の必須成分の混合比率を所定の範囲内に設定して、セメント混和剤を構成する技術が提案されている。
特許第3423853号
上述した特許文献1に開示されたセメント混和剤は、一定の優れた効果を示すものではあるが、より高性能なセメント混和剤の開発に対する要望は依然として強い。
そこで、本発明は、セメント混和剤の性能(特に、スランプ保持性能および凍結融解抵抗性)をよりいっそう向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体およびカルボン酸系単量体を必須に含有する単量体成分を用いてセメント混和剤用共重合体(塩)を製造する際に、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体として、オキシアルキレン基の平均付加モル数の分布がある程度以上異なる2種以上のものを用いることで、スランプ保持性能や凍結融解抵抗性といったセメント混和剤としての性能がよりいっそう向上した共重合体(塩)が得られることが判明した。そして本発明者は、この知見に基づき、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明に係るセメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法は、下記一般式(1):
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、ROはオキシアルキレン基を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表し、Rは水素原子または炭素原子数1〜22のアルキル基を表す、
で示される第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)X重量%、
下記一般式(2):
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、ROはオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表し、Rは水素原子または炭素原子数1〜22のアルキル基を表す、
で示される第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)X重量%、
下記一般式(3):
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Mは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表す、
で示されるカルボン酸系単量体(c)Y重量%、および、
前記(a)〜(c)と共重合可能なその他の単量体(d)Z重量%、
を含む単量体成分を重合して共重合体を得る工程、および、
必要に応じて前記共重合体をアルカリ性物質で中和する工程、
を含む、セメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法であって、
+X+Y+Z=100としたときに、X:X:Y:Z=5〜90:5〜90:5〜40:0〜35かつX+X=60〜95であり、
前記第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)の鎖長分布係数B1と、前記第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)の鎖長分布係数B2との差の絶対値(|B1−B2|)が100以上である点に特徴を有するものである。
本発明によれば、セメント混和剤としての性能(特に、スランプ保持性能および凍結融解抵抗性)がよりいっそう向上した共重合体(塩)を得ることができる。
鎖長分布係数Aおよび鎖長分布係数Bの測定において、液体クロマトグラフィーにより得られる、鎖長(オキシアルキレン基の付加モル数)ごとにピークが分離したクロマトグラム1である。 クロマトグラム1から、オキシアルキレン基の付加モル数ごとのピーク面積、面積百分率、および保持時間(R.T.)を算出し、算出されたオキシアルキレン基の付加モル数ごとの面積百分率の値を、保持時間に対してプロットして得られるチャート2である。 同一の合成方法で合成されたオキシアルキレン基の平均付加モル数の異なる複数の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体について、鎖長分布係数Aを、平均付加モル数に対してプロットしたグラフである。図3に示すように、同一の合成方法で合成された複数の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体の鎖長分布係数Aは、平均付加モル数に対して線形性を示す(1次関数上に乗る)ことがわかる。
本発明の一形態によれば、セメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法が提供される。この製造方法は、
・一般式(1)で示される第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)X重量%、
・一般式(2)で示される第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)X重量%、
・一般式(3)で示されるカルボン酸系単量体(c)Y重量%、および、
・前記(a)〜(c)と共重合可能なその他の単量体(d)Z重量%、
を含む単量体成分を重合して共重合体を得る工程を含む。また、必要に応じて前記共重合体をアルカリ性物質で中和する工程を含む。以下ではまず、上記(a)〜(d)について説明する。
[一般式(1)で示される第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)]
成分(a)は、下記一般式(1):
で示される(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(本明細書において、「第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体」とも称する)である。
一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
また、一般式(1)において、ROはオキシアルキレン基を表す(つまり、Rはアルキレン基を表す)。ここで、Rの炭素原子数は、好ましくは2〜18である。すなわち、ROで表されるオキシアルキレン基は、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシド付加物であることが好ましい。このようなアルキレンオキシド付加物の構造は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド等のアルキレンオキシドの1種または2種以上により形成される構造である。このようなアルキレンオキシド付加物の中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド付加物であることがより好ましく、エチレンオキシド付加物であることが特に好ましい。
さらに、一般式(1)において、mはオキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数であり、1〜100の数であり、好ましくは1〜80の数であり、より好ましくは4〜70の数であり、さらに好ましくは4〜70の数であり、特に好ましくは4〜60の数である。mが1未満であると、十分なセメント分散性能が発揮されない虞がある。一方、mが100を超えると、セメント組成物としたときに粘性が高くなり取り扱いにくくなる虞がある。なお、本明細書において「平均付加モル数」とは、一般式(1)〜(2)の各成分1モル中において付加しているオキシアルキレン基のモル数の相加平均値を意味する。また、mが2以上の数である場合、一般式(1)におけるROで表されるオキシアルキレン基は同一の化合物中に2個以上必須に存在するが、ROで表されるオキシアルキレン基のそれぞれはランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態を有していてもよい(後述するROについても同様)。
さらに、一般式(1)において、Rは水素原子または炭素原子数1〜22のアルキル基を表す。Rの炭素原子数は、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜4であり、特に好ましくは1〜2であり、最も好ましくは1である。このようなRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基などが挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基またはtert−ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
[一般式(2)で示される第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(b)]
成分(b)は、下記一般式(2):
で示される(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(本明細書において、「第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体」とも称する)である。
一般式(2)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
また、一般式(2)において、ROはオキシアルキレン基を表し、その定義および好ましい実施形態は、上述した一般式(1)におけるROと同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
さらに、一般式(2)において、nはオキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数であり、その定義および好ましい実施形態は、上述した一般式(1)におけるmと同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
また、一般式(2)において、Rは水素原子または炭素原子数1〜22のアルキル基を表し、その定義および好ましい実施形態は、上述した一般式(1)におけるRと同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
なお、上記の説明において一般式(1)および一般式(2)の構造上の定義が同一であることから明らかなように、本発明における第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体と、第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体とは分子構造上は同一の物質となりうる可能性がある。ただし、このような場合であっても、詳細を後述する鎖長分布係数(B1およびB2に相当)の値が異なるものであれば本発明の定義上は別の物質として扱い、第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体および第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体の2種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体が用いられるという要件を満足するものとする。
本発明は、上述した第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)の鎖長分布係数B1と、上述した第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)の鎖長分布係数B2との差の絶対値(|B1−B2|)が100以上である点に特徴を有するものである。このようにして本発明に係るセメント混和剤用共重合体(塩)のモノマー成分が構成されることで、セメント混和剤としての性能(特に、スランプ保持性能および耐凍結融解性)がよりいっそう向上した共重合体(塩)を得ることができることを本発明者らは見出したものである。なお、「鎖長分布係数B1」および「鎖長分布係数B2」とは、それぞれ、第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)の鎖長分布係数Bおよび第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)の鎖長分布係数Bを意味し、「鎖長分布係数B」は、後述する実施例の欄に記載の手法により算出される値である。
|B1−B2|の値は、好ましくは100以上であり、より好ましくは100〜500であり、さらに好ましくは100〜400であり、特に好ましくは100〜300である。
ここで、上述した第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数(m)と、上述した第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数(n)とが実質的に同じである場合における好ましい実施形態が規定される。かような場合において、上述した第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)の鎖長分布係数A1と、上述した第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)の鎖長分布係数A2との差の絶対値(|A1−A2|)は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10〜50であり、さらに好ましくは10〜30である。かような構成とすることにより、より優れたセメント混和剤としての性能(特に、スランプ保持性能および耐凍結融解性)を示す共重合体(塩)を得ることができる。なお、「第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数と、第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数とが実質的に同じである」とは、|m−n|/min{m,n}(ここで、|m−n|はmとnとの差の絶対値を表し、min{m,n}はmとnとの大きくない方を表す)の値が10以下であることを意味し、この定義を満たす場合に鎖長分布係数Aの差に基づく比較が可能となるものである。また、「鎖長分布係数A1」および「鎖長分布係数A2」とは、それぞれ、第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)の鎖長分布係数Aおよび第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)の鎖長分布係数Aを意味し、「鎖長分布係数A」は、後述する実施例の欄に記載の手法により算出される値である。
なお、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体の鎖長分布係数Aおよび鎖長分布係数Bの値は、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体を合成する際の反応温度や反応時間などの合成条件を適宜調節することにより、制御することが可能である。例えば、反応温度が高くなるように、および/または反応時間を長くなるように変化させると、鎖長分布係数が大きくなるように調節することが可能である。また、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体の原料物質のうち、(ポリ)アルキレングリコール構造を有する原料について、よりオキシアルキレン基の付加モル数の分布が大きいものを選択することで、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体の鎖長分布係数が大きくなるよう調整することができる。
[カルボン酸系単量体(c)]
成分(c)は、一般式(3):
で示されるカルボン酸系単量体である。
一般式(3)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
また、一般式(3)において、Mは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表す。なかでも、Mは、一価金属原子または二価金属原子であることが好ましい。ここで、一価金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等が挙げられ、二価金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等が挙げられる。また、アンモニウム基は、「−NH4」で表される官能基である。そして、有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン等の、有機アミン由来の残基が挙げられる。
一般式(3)で表されるカルボン酸系単量体(c)としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム等が挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。なかでも、カルボン酸系単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられ、メタクリル酸が最も好ましく用いられる。これらの化合物は、市販されている化合物を用いてもよいし、自ら合成することにより準備してもよい。
[(a)〜(c)と共重合可能なその他の単量体(d)]
成分(d)は、上述した(a)〜(c)と共重合可能なその他の単量体である。その他の単量体の具体的な構成について特に制限はなく、上述した(a)〜(c)と共重合可能な化合物であればよい。一例として、以下の化合物が挙げられる。ただし、以下の化合物以外の化合物がその他の単量体として用いられても、もちろんよい。
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類。
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、(ポリ)エチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類。
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;(ポリ)ジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、(ポリ)ジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、(ポリ)ジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、(ポリ)ジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、(ポリ)ジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、(ポリ)ジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、(ポリ)ジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、(ポリ)ジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
なお、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物に該当する(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体がその他の単量体(d)として用いられることもありうる。この場合には少なくとも3種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体が単量体成分に含まれることとなるが、このような場合には、上記少なくとも3種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体のうちの任意の2種をそれぞれ第1の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体および第2の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体としたときに本発明における必須の構成要件を満たす限り、そのような場合も本発明の技術的範囲に包含されるものとする。
以上説明した本形態に係るセメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法によれば、成分(a)〜(d)が特定の比率で導かれた共重合体(塩)が得られる。ここで、得られた共重合体(塩)においては、成分(a)〜(d)に含まれる二重結合が開裂して単結合となり、さらに単結合を介して隣接する単量体と連結された構造が連なったものとなる。また、各成分の配列についても特に制限はなく、ランダム重合、ブロック重合等が考えられるが、通常はランダム重合の形態で配列している。
また、本発明に係るセメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法では、成分(a)〜(d)の使用量が規定されている点にも特徴がある。以下、成分(a)〜(d)の含有量の規定について説明するが、本明細書では、成分(a)〜(d)のそれぞれの含有量を以下のように定める:
・成分(a) X重量%
・成分(b) X重量%
・成分(c) Y重量%
・成分(d) Z重量%
本発明に係るセメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法における各成分の使用量の特徴は、X+X+Y+Z=100としたときに、X:X:Y:Z=5〜90:5〜90:5〜40:0〜35かつX+X=60〜95の関係を満たすことにある。好ましくはX:X:Y:Z=10〜80:10〜80:5〜35:0〜30かつX+X=65〜95であり、より好ましくはX:X:Y:Z=20〜60:20〜60:5〜30:0〜30かつX+X=70〜95であり、さらに好ましくはX:X:Y:Z=30〜50:30〜50:5〜20:0〜25かつX+X=70〜90である。各成分の使用量がかような範囲内の値であることで、セメント混和剤としての分散性能が向上する。
(製造方法の詳細)
上述した単量体成分を用いて共重合体を得るには、重合開始剤を用いて上記(a)〜(d)を上記の量で含む単量体成分を共重合させればよい。ここで、上記(a)〜(d)を上記の量で含む単量体成分を調製する具体的な方法について特に制限はなく、例えば、(a)〜(d)の成分をそれぞれ別途準備して混合することにより単量体成分を調製すればよい。
共重合は、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;等が挙げられる。原料単量体および得られる共重合体の溶解性ならびに該共重合体の使用時の便からは、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。その場合、炭素原子数1〜4の低級アルコールの中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が特に有効である。
水媒体中で重合を行うときは、重合開始剤としてアンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等の芳香族アゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常0〜120℃の範囲内で行われる。
塊状重合は、重合開始剤としてベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等を用い、50〜200℃の温度範囲内で行われる。
また、得られる共重合体の分子量調節のために、チオール系連鎖移動剤を併用することもできる。この際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、一般式HS−R−E(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜2のアルキル基を表し、Eは−OH、−COOM、−COORまたは−SO基を表し、Mは水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、gは1〜2の整数を表わす。)で表され、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
[その他の形態]
このようにして得られた共重合体は、そのままでもセメント分散剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和して得られる共重合体塩をセメント混和剤に用いてもよい。このようなアルカリ性物質としては、一価金属および二価金属の水酸化物、塩化物および炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等が好ましいものとして挙げられる。
また、本発明に係る混和剤用共重合体(塩)の重量平均分子量(Mw)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)によるポリエチレングリコール換算で500〜500,000、特に5,000〜300,000の範囲とすることが好ましい。重量平均分子量が500未満では、セメント混和剤としての減水性能が低下するため好ましくない。一方、重量平均分子量が500,000を超えると、セメント混和剤としての減水性能、スランプロス防止能が低下するために好ましくない。
本発明に係る共重合体(塩)は、単独で、または2種以上の混合物としてそのままセメント混和剤として使用されうる。また、共重合体(塩)を主成分とし、他の公知のセメント混和剤と組み合わせて使用することもできる。このような公知のセメント混和剤としては、例えば従来のセメント分散剤、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤等を挙げることできる。
なお、公知のセメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント混和剤用共重合体(塩)と公知のセメント分散剤との配合質量比は、使用する公知のセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、それぞれ固形分換算での重量割合(重量%)として、1〜99/99〜1が好ましく、5〜95/95〜5がより好ましく、10〜90/90〜10がさらに好ましい。上記併用する公知のセメント分散剤としては、例えば、以下に記載するようなセメント分散剤が挙げられる。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤。
特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報、特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報に記載の如く不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体または(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤。
特開2006−52381号公報に記載の如く(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤。
また、消泡剤としては、以下の(1)〜(2)に例示するような公知の消泡剤が好適である。
(1)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(2)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
本発明に係るセメント混和剤は、ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料などに用いることができる。
本発明に係るセメント混和剤は、従来のセメント混和剤に比較して少量の添加でも優れた効果を発揮する。たとえば水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.01〜1.0%、好ましくは0.02〜0.5%となる比率の量を、練り混ぜの際に添加すればよい。この添加により高減水率の達成、スランプロス防止性能の向上、単位水量の低減、強度(圧縮強度)の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。添加量が0.01%以上であれば十分な性能が発揮され、1.0%以下であれば経済性の面からも有利である。
本発明に係るセメント組成物は、セメント組成物1mあたりのセメント使用量、単位水量にはとりたてて制限はないが、単位水量120〜185kg/m、水/セメント重量比=0.15〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m、水/セメント重量比=0.2〜0.5が推奨される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
〔製造例〕
(製造例1)
温度計、攪拌機、原料導入管および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、メタノール180重量部と水酸化ナトリウム1.3重量部を投入し、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで昇温した。150℃を保持したままエチレンオキシドの分圧が45%以下になるような圧力以下を保ちながらエチレンオキシドを2477.8重量部投入して、目的のメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:10モル)[1]を得た。
(製造例2)
温度計、攪拌機、原料導入管および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、メトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:10モル)1200重量部を投入し、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで昇温した。150℃を保持したままエチレンオキシドの分圧が45%以下になるような圧力以下を保ちながらエチレンオキシドを1454.3重量部投入して、目的のメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23モル)[2]を得た。
(製造例3)
温度計、攪拌機、原料導入管および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、メタノール180重量部及び水酸化ナトリウム1.1重量部を投入し、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで昇温した。150℃を保持したままエチレンオキシドの分圧が45%以下になるような圧力以下を保ちながらエチレンオキシドを1982.3重量部投入後、100℃・50Torr・2時間で低付加モル数のアルコールを系外に除去して、メトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:8モル)を得た。
続いて、温度計、攪拌機、原料導入管および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、上記で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:8モル)1200重量部を投入し、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで昇温した。150℃を保持したままエチレンオキシドの分圧が45%以下になるような圧力以下を保ちながらエチレンオキシドを2062.7重量部投入して、目的のメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23モル)[3]を得た。
(製造例4)
温度計、攪拌機、原料導入管および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、メタノール180重量部及び水酸化ナトリウム1.1重量部を投入し、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。120℃を保持したままエチレンオキシドの分圧が45%以下になるような圧力以下を保ちながらエチレンオキシドを1982.3重量部投入後、100℃・50Torr・2時間で低付加モル数のアルコールを系外に除去して、メトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:8モル)を得た。
続いて、温度計、攪拌機、原料導入管および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、上記で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:8モル)1200重量部を投入し、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで昇温した。120℃を保持したままエチレンオキシドの分圧が45%以下になるような圧力以下を保ちながらエチレンオキシドを2062.7重量部投入して、目的のメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23モル)[4]を得た。
上記の製造例1〜4で得られたメトキシポリエチレングリコール(MPEG)について、その構造およびオキシアルキレン基の付加モル数の分布の状態をまとめたのが下記の表1である。
なお、付加モル数の分布は、以下の測定条件で液体クロマトグラフィーを実施し、得られたクロマトグラムのピークを、平均付加モル数の同じもの同士で比較することにより判定した。
(測定条件)
使用カラム:東ソー株式会社製
TSK guard column SWXL
TSKgel G2500PWXL 2本
溶離液:アセトニトリル540g、水1260gの溶液に硝酸ナトリウム17.0gを溶かしたものを使用した。
サンプル:製造例1〜4で得られたMPEGを上記溶離液にて0.5質量%となるように溶解させたもの。
サンプル打ち込み量:100μL
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:日本Waters社製2414示差屈折計検出器
解析:日本Waters社製 Empower Software
表1に示すように、異なる合成方法を用いて合成することで、オキシアルキレン基の平均付加モル数が同じであっても、付加モル数の分布には違いが生じることがわかる。
(製造例5)
1000mlのセパラブルフラスコに温度計、撹拌機およびラシヒリングを充填した充填塔を設け、還流比を任意に変えられるようにした。この充填塔に、メチルメタクリレート606g、製造例1に記載の手法で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:10モル)[1]408g、重合禁止剤としてフェノチアジン0.12gを仕込み、塔頂温度が50℃に達したときに49重量%濃度の水酸化ナトリウム2.65gを1時間30分かけて滴下した。減圧下にメタノール−メチルメタクリレート共沸物を留去して、目的のメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート[A]を得た。
(製造例6)
ガラス製反応容器に、製造例1に記載の手法で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:10モル)[1]200重量部を仕込んだ。次にハイドロキノン0.19重量部、p−トルエンスルホン酸16.0重量部を投入した。空気と窒素を投入しながら、メチルメタクリレート423.8重量部を投入し、加熱および反応容器内の減圧を開始した。圧力を30〜80kPaに制御し、反応液温度を100℃に維持して反応を行った。反応開始から12時間後に圧力を常圧に戻し、p−トルエンスルホン酸に対して1.1倍等量の49重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより中和を行って、反応を終了させた。
反応終了後、反応液温度を130℃以下に維持し、真空蒸留法により未反応のメチルメタクリレートを回収して、目的のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート[B]を得た。
(製造例7)
温度計、撹拌機、生成水分離器、還流冷却管を備え付けたガラス製反応容器に、製造例3の手法で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23)[3]1000重量部、メタクリル酸222.4重量部、フェノチアジン0.61重量部、シクロヘキサン244.5重量部、パラトルエンスルホン酸12.2重量部を仕込み、撹拌下に105℃まで昇温してエステル化反応を開始した。所定量の生成水が留去されたのを確認後、水酸化ナトリウム2.8重量部を投入した。シクロヘキサンを留去した後、所定量の水を加えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含む単量体混合物[C]の80重量%水溶液を得た。
(製造例8)
温度計、撹拌機、生成水分離器、ガス投入口、還流冷却管を備え付けたガラス製反応容器に、製造例4の手法で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23)[4]1000重量部、メタクリル酸222.4重量部、フェノチアジン0.24重量部、パラトルエンスルホン酸12.2重量部を仕込み、酸素濃度5体積%に調整した窒素/酸素混合ガスを導入する。撹拌下に50Torrまで減圧した後90℃まで昇温して、エステル化反応を開始した。所定量の生成水が留去されたのを確認し常圧に戻した後、水酸化ナトリウム2.8重量部を投入した。シクロヘキサンを留去した後、所定量の水を加えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含む単量体混合物[D]の80重量%水溶液を得た。
(製造例9)
温度計、撹拌機、生成水分離器、還流冷却管を備え付けたガラス製反応容器に、製造例2の手法で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23)[2]1000重量部、メタクリル酸222.4重量部、フェノチアジン0.24重量部、シクロヘキサン61.1重量部、パラトルエンスルホン酸61.1重量部を仕込み、撹拌下に120℃まで昇温して、エステル化反応を開始した。所定量の生成水が留去されたのを確認後、水酸化ナトリウム14.2重量部を投入した。シクロヘキサンを留去した後、所定量の水を加えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含む単量体混合物[E]の80重量%水溶液を得た。
(製造例10)
温度計、撹拌機、生成水分離器、ガス投入口、還流冷却管を備え付けたガラス製反応容器に、製造例3の手法で得られたメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:23)[3]1000重量部、メタクリル酸222.4重量部、フェノチアジン0.24重量部、パラトルエンスルホン酸12.2重量部を仕込み、酸素濃度5体積%に調整した窒素/酸素混合ガスを導入する。撹拌下に50Torrまで減圧した後90℃まで昇温して、エステル化反応を開始した。所定量の生成水が留去されたのを確認し常圧に戻した後、水酸化ナトリウム2.8重量部を投入した。シクロヘキサンを留去した後、所定量の水を加えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含む単量体混合物[D]の80重量%水溶液を得た。
上記の製造例5〜10で得られたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)について、その構造およびオキシアルキレン基の付加モル数の分布の状態をまとめたのが下記の表2である。
表2に示すように、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)もまた、異なる合成方法を用いて合成することで、オキシアルキレン基の平均付加モル数が同じであっても、付加モル数の分布には違いが生じることがわかる。例えば、製造例5および製造例6は、同一の付加モル数分布を有する同一の原料アルコールを用いているが、メタクリル酸とのエステル化工程の手法が異なることで、最終的に得られるMPEGMAの段階では付加モル数分布に違いが生じている。
このように、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体におけるオキシアルキレン基の付加モル数の分布は、アルキレンオキシドの付加反応の段階と、当該単量体を得るためのエステル化の段階との双方の影響を受けるのである。
〔鎖長分布係数AおよびBの測定〕
上記の製造例5〜10で得られたポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体であるメトキシポリエチレングリコールメタクリレートについて、それぞれ、以下の手法により鎖長分布係数AおよびBを測定した。なお、以下の説明では、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン基の平均付加モル数:9)の市販品であるブレンマー(登録商標)PME−400(日油株式会社製)の鎖長分布係数Aおよび鎖長分布係数Bを測定する場合を例に挙げる。
まず、以下の条件により液体クロマトグラフィーを行い、図1に示すような鎖長(オキシアルキレン基の付加モル数)ごとにピークが分離したクロマトグラム1を得る。
使用カラム:東ソー株式会社製
ODS−80Ts
ODS−120T
溶離液:アセトニトリルとPWを25:70体積%の割合で混合したもの。
サンプル:測定物質を上記溶液にて測定物の固形分濃度が10%になるように溶解させたもの。
サンプル打ち込み量:100μl
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
検出器:日本Waters社製 Empower Software
得られたクロマトグラム1から、オキシアルキレン基の付加モル数ごとのピーク面積、面積百分率、および保持時間(R.T.)を算出する(下記の表3)。
そして、上記で算出されたオキシアルキレン基の付加モル数ごとの面積百分率の値を、保持時間に対してプロットして、図2に示すようなチャート2を得る。
このようにして得られたチャート2の最大ピークに対する保持時間の半値幅を、「鎖長分布係数A」とする。図2に示すチャート2において、最大ピークの面積百分率は21%であり、この半値(10.5%)に対応する保持時間は34分および60分であるから、ブレンマー(登録商標)PME−400の鎖長分布係数Aは60−34=26分と算出される。
鎖長分布係数Aは(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体におけるオキシアルキレン基の付加モル数の分布の度合いを示しており、値が小さいほど分布の広がりは小さく、シャープな分布を有していることを示す。ここで、異なる2種以上の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体におけるオキシアルキレン基の付加モル数の分布の度合いを比較する際に、平均付加モル数が同一の単量体どうしであれば、鎖長分布係数Aを単純に比較することで、オキシアルキレン基の付加モル数の分布の度合いを比較することが可能である。しかしながら、一般に単量体におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数が大きくなるにつれて、オキシアルキレン基の付加モル数の分布の度合いも大きくなる傾向にあることから、オキシアルキレン基の平均付加モル数の異なる単量体どうしでの分布の度合いの比較を可能とするためには、以下のように算出される鎖長分布係数Bを用いる必要がある。
まず、本発明者は、オキシアルキレン基の平均付加モル数の異なる複数の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体を同一の合成方法で合成した。そして、それぞれの単量体について上述した手法により求めた鎖長分布係数Aを、平均付加モル数に対してプロットした。そうしたところ、同一の合成方法で合成された複数の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体の鎖長分布係数Aは、平均付加モル数に対して線形性を示す(1次関数上に乗る)ことがわかった。この1次関数は、以下の数式1で表される(図3に示すグラフも参照):
この式を変形すると、以下の数式2のようになる。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が同一の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体であれば、理論上は、合成方法によらず上記の関係を満たすはずである。しかしながら、本発明者らの検討によれば、合成方法の異なる(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体は、たとえ平均付加モル数が同一のものであっても、上記の関係を満たさないことを見出した。そこで、合成方法の異なる(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体どうしの鎖長分布の比較に用いるためのパラメータとして、数式2の左辺に100を乗じたパラメータを鎖長分布係数Bと定義した。すなわち、鎖長分布係数Bは、以下の数式3のように定義される。
このようにして、上記の製造例5〜10で得られたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MPEGMA)について、鎖長分布係数Aおよび鎖長分布係数Bを算出した結果をまとめたのが下記の表4である。
〔実施例〕
(実施例1)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水129.6重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例6の手法で得られた単量体[B]21.4重量部と水10重量部を混合した水溶液、製造例5の手法で得られた単量体[A]150重量部と水40重量部を混合した水溶液、メタクリル酸42.9重量部、3−メルカプトプロピオン酸3.5重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.8重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量13000のポリカルボン酸(1)を得た。なお、得られたポリカルボン酸の重量平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
(GPC測定条件)
使用カラム:東ソー株式会社製
TSK guard column SWXL
TSKgel G4000SWXL
TSKgel G3000SWXL
TSKgel G2000SWXLをこの順で連結させたもの。
溶離液:アセトニトリル6000g、水11000gの溶液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH6.0に調整したものを使用した。
サンプル:重合体水溶液を上記溶離液にて重合体濃度が0.5質量%となるように溶解させたもの。
サンプル打ち込み量:100μL
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:日本Waters社製2414示差屈折計検出器
解析:日本Waters社製 Empower Software
検量線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470]
検量線:上記のポリエチレングリコールのMp値と溶出時間を基にして3次式で作成した。
(実施例2)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水179.2重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例5の手法で得られた単量体[A]70.7重量部と水20重量部を混合した水溶液、製造例9の手法で得られた単量体[E]200重量部、メタクリル酸5.0重量部、3−メルカプトプロピオン酸2.3重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.2重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量20000のポリカルボン酸(2)を得た。
(実施例3)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水158.3重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例7の手法で得られた単量体[C]110.0重量部、製造例8の手法で得られた単量体[D]110.0重量部、メタクリル酸18.5重量部、3−メルカプトプロピオン酸2.5重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.3重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量22000のポリカルボン酸(3)を得た。
(実施例4)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水167.1重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例5の手法で得られた単量体[A]42.4重量部と水20重量部を混合した水溶液、製造例9の手法で得られた上記単量体[E]150重量部、製造例8の手法で得られた単量体[D]60重量部、メタクリル酸1.7重量部、3−メルカプトプロピオン酸1.9重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.0重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量23000のポリカルボン酸(4)を得た。
(実施例5)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水181.4重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例6の手法で得られた単量体[B]70.7重量部と水20重量部を混合した水溶液、製造例10の手法で得られた単量体[F]150重量部、メタクリル酸メチル(MMA)23.6重量部、メタクリル酸21.4重量部、3−メルカプトプロピオン酸3.7重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム2.0重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量20000のポリカルボン酸(5)を得た。
(比較例1)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水129.6重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例5の手法で得られた単量体[A]171.4重量部と水50重量部を混合した水溶液、メタクリル酸42.9重量部、3−メルカプトプロピオン酸3.5重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.8重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量12000の比較ポリカルボン酸(6)を得た。
(比較例2)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水179.2重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例6の手法で得られた単量体[B]70.7重量部と水20重量部を混合した水溶液、製造例9の手法で得られた単量体[E]200重量部、メタクリル酸5.0重量部、3−メルカプトプロピオン酸2.3重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.2重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量21000の比較ポリカルボン酸(7)を得た。
(比較例3)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管を備えたガラス製反応容器に、水158.3重量部を仕込み、撹拌下に反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。製造例8の手法で得られた単量体[D]110.0重量部、製造例10の手法で得られた単量体[F]110.0重量部、メタクリル酸18.5重量部、3−メルカプトプロピオン酸2.5重量部と水20重量部を混合した水溶液、過硫酸アンモニウム1.3重量部と水20重量部を混合した水溶液を各々4時間かけて反応器内に滴下した。そして滴下終了後、さらに2時間95℃を維持して、重量平均分子量21000のポリカルボン酸(8)を得た。
上記の実施例1〜5および比較例1〜3で得られたポリカルボン酸(1)〜(5)およびポリカルボン酸(6)〜(8)について、その詳細をまとめたのが下記の表5である。
〔コンクリート試験〕
上記で得られた実施例のポリカルボン酸(1)〜(5)および比較例のポリカルボン酸(6)〜(8)のそれぞれをそのままセメント混和剤として用い、以下のコンクリート試験方法に従ってセメント組成物を調製し、下記の方法でスランプフロー値、スランプフロー値の経時変化、空気量、気泡間隔係数を測定した。なお、コンクリート組成物の温度が20℃の試験温度になるように、試験に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類をこの試験温度雰囲気下で調温し、混練および各測定もこの試験温度雰囲気下で行った。
(コンクリート試験配合)
単位セメント量:573.3kg/m
単位水量:172.0kg/m(ポリマー、消泡剤などの混和剤を含む)
単位細骨剤量:737.2kg/m
単位粗骨剤量:866.0kg/m
水/セメント比(W/C):30.0%
骨材量比(s/a):47.0%
セメント:太平洋セメント社製 普通ポルトランドセメント
細骨剤:君津産山砂と掛川水系産陸砂を3/7で混合したもの
粗骨剤:青梅産砕石
(コンクリート組成物の調整)
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の混練を実施した。
まず細骨材を10秒間混練した後、セメントを加えて10秒間混練した。その後セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて90秒間混練した。その後更に粗骨材を加えて90秒間混練して、コンクリート組成物を得た。また評価試験においては、セメント混和剤を含む水道水を加えた後の混練開始時間をゼロ分とした。
(セメント混和剤の調整)
セメント分散剤と消泡剤を用いて調整した。セメント分散剤としては、実施例に係るポリカルボン酸(1)〜(5)および比較ポリカルボン酸(6)〜(8)のいずれかを用いた。セメント分散剤の必要量は、下記の方法で測定したセメント分散剤中の不揮発分の量を用いて算出した。消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が5.0±1.0体積%となるように調整した。
(不揮発分の測定)
アルミカップに重合体水溶液を約0.5g測り採り、イオン交換水約1gを加えて均一に広げた。これを窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥し、乾燥前後の重量差から不揮発分を計算した。
(評価試験項目と測定方法)
スランプフロー値:JIS−A−1101
圧縮強度:JIS−A−1108(供試体作製:JIS−A−1132)
空気量:JIS−A−1128
気泡間隔係数:下記に詳細を示す
気泡間隔係数の測定方法
エアボイドアナライザー(AVA;商品名、ジャーマンインストゥルメンツ社製)にて耐凍結融解性の指標となる気泡間隔係数の測定を行った。予め、グリセリン(試薬(和光純薬工業株式会社製))および水を重量比でグリセリン/水=83/17の割合で混合し、AVA測定用溶液を調製した。
ミキサーから取り出されたフレッシュコンクリートの空気量(空気量=5±1%)を測定した後、6mm以上の骨材を取り除き、気泡間隔係数評価用モルタルを専用のシリンジに20ml採取した。測定用カラムに水約2000mlを注入し、カラム壁面に付着した気泡を刷毛で取り除いた後、予め上記で調製したAVA測定用溶液250mlを専用の器具を用いてカラムの底部に注入した。注入後、カラムの水面付近に気泡採取用のペトリ皿を設置し、測定部分に固定した。シリンジに採取したモルタル20mlをカラムの底部に注入した後、モルタルを30秒間撹拌し、液中にモルタルの連行空気を十分に放出させた。放出させた気泡を経時で測定することにより、気泡間隔係数を測定した。
気泡間隔係数の計算に際して、フレッシュコンクリートの空気量以外にコンクリート全体積より6mm以上の骨材の占める体積を除いた値(モルタル容積率)およびペーストの占める体積(ペースト容積率)が必要となる。モルタル容積率およびペースト容積率は下記の式(I)および(II)より算出した。
モルタル容積率(%)=[(V+V+V)/1000]×100 (I)
ペースト容積率(%)=[(V+V)/1000]×100 (II)
:結合材の体積(=結合材単位量(kg)/結合材の比重)
:水と混和剤の体積(単位水量と同じとする)
:6mm以下の骨材の体積(=細骨材の単位量/細骨材の比重)
(試験結果)
以下の3つの結果について、下記の表6に示す。
(1)コンクリート組成物の調製直後のフロー値が500±50mmになるときの添加量
(添加量)=(セメント混和剤使用量)/(セメント重量)×100
(2)60分後の保持率=(60分後のフロー値)/(直後のフロー値)×100
(3)気泡間隔係数
表5および表6に示す結果から、ポリカルボン酸の合成に用いた2種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(ポリエチレングリコールメタクリレート)の鎖長分布係数Bの差が100以上である実施例1〜3では、比較例1〜2のものと比べて、添加量を増加させることなく、優れたスランプ保持性能(保持率)を示すことがわかる。また、気泡間隔係数も小さいことから、凍結融解抵抗性にも優れるセメント混和剤用共重合体が提供されることが示された。
また、平均付加モル数が同じ場合の比較が可能な鎖長分布係数Aについて見ると、実施例1および実施例3のいずれも、ポリカルボン酸の合成に用いた2種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(ポリエチレングリコールメタクリレート)の鎖長分布係数Aの差が10以上となっていることで、より優れたスランプ保持性能(保持率)を示すことがわかる。なお、表5に示すように、比較例1では、ポリカルボン酸の合成に用いた2種の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(ポリエチレングリコールメタクリレート)の鎖長分布係数Aの差は0であった。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1):
    式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、ROはオキシアルキレン基を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表し、Rは水素原子または炭素原子数1〜22のアルキル基を表す、
    で示される第1のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)X重量%、
    下記一般式(2):
    式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、ROはオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表し、Rは水素原子または炭素原子数1〜22のアルキル基を表す、
    で示される第2のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)X重量%、
    下記一般式(3):
    式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Mは水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表す、
    で示されるカルボン酸系単量体(c)Y重量%、および、
    前記(a)〜(c)と共重合可能なその他の単量体(d)Z重量%、
    を含む単量体成分を重合して共重合体を得る工程、および、
    必要に応じて前記共重合体をアルカリ性物質で中和する工程、
    を含む、セメント混和剤用共重合体(塩)の製造方法であって、
    +X+Y+Z=100としたときに、X:X:Y:Z=5〜90:5〜90:5〜40:0〜50であり、
    前記第1のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(a)の鎖長分布係数B1と、前記第2のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート単量体(b)の鎖長分布係数B2との差の絶対値(|B1−B2|)が100以上であることを特徴とする、製造方法。
  2. 請求項に記載の製造方法によって製造されたセメント混和剤用共重合体(塩)、セメントおよび水を少なくとも含有してなるセメント組成物。
  3. 前記セメント混和剤用共重合体の含有量が、セメントに対して0.01〜1.0重量%であり、かつ、水/セメントの重量比が0.15〜0.7である、請求項に記載のセメント組成物。
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