JP3740641B2 - セメント分散剤および該分散剤を含むコンクリ―ト組成物 - Google Patents

セメント分散剤および該分散剤を含むコンクリ―ト組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセメント分散剤および該分散剤を含むコンクリート組成物に関する。より詳しくは、本発明は共重合体1分子中にポリアマイドポリアミン基、長鎖ポリアルキレングリコール基と短鎖ポリアルキレングリコール基を併せもつことにより、低い水結合材比領域での分散性及びスランプフローの持続性、硬化後の強度発現性に優れ、特にこの領域に特有の高いコンクリートペースト粘性が低減され作業性が良好である超高性能コンクリートに適するセメント分散剤、および該分散剤を含む超高性能コンクリート組成物等のコンクリート組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セメント分散剤としては、ポリメラミンスルホネート、リグニンスルホネート、オレフィンとマレイン酸の共重合体、公知のポリカルボン酸系分散剤等が使用されてきた。しかし最近では建築物件の都市部へ移行や、強度に関するJIS改正などの業界背景があり高強度が要求される建造物は増加している。高強度構造体を得るためには低熱セメント、シリカフュームセメントなど従来の汎用構造物とは異なったコンクリート配合で施工されるケースも多く、これに適するポリカルボン酸系セメント分散剤への要求が高い。主な要求としては低い水/セメント比(以下W/Cと略す。また水/結合材比はW/Bと略す。)での施工に対応できる減水性、スランプフローの持続性、また添加量が多いため凝結遅延性が生じることへの対応、硬化後の強度発現性が優れること、またW/Cが低くなるほど特有のコンクリート粘りが生じ施工性に支障をきたすことがあるのでこれに対応するべくコンクリートペーストの粘性低下に優れることなどへの要求が挙げられる。
【0003】
これらを受けて種々のポリカルボン酸系セメント分散剤が提案されている。例えば、特許文献1には(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリルスルホン酸塩、ポリエチレングリコ−ルアルキルエ−テルのモノアクリル酸エステルまたはポリプロピレングリコ−ルアルキルエ−テルのモノアクリル酸エステルの共重合体が開示されている。また特許文献2では、共重合体1分子中に異なった鎖長のポリアルキレングリコール鎖を含むセメント分散剤を開示し、それを高シェアー下の粘性低減と凝結遅延抑制の両方を満足するものとしてW/C=29.0%時のフロー値および50cmに達するコンクリートの広がり速度(秒)で評価している。また特許文献3では、共重合体1分子中に異なった鎖長のポリアルキレングリコール鎖を含むセメント分散剤を開示し、そのW/C=25%時のフロー値を評価している。同様に特許文献4では共重合体1分子中に異なった鎖長のポリアルキレングリコール鎖を含むセメント分散剤を挙げ、それをW/C=40%におけるフロー値および空気量を経時的に評価している。さらに特許文献5、特許文献6、特許文献7では重合時の長鎖ポリアルキレングリコール基と短鎖ポリアルキレングリコール基を含む各単量体が反応途中において少なくとも1回変化される重合方法で製造されるセメント分散剤の開示がある。
【0004】
また本発明の特徴であるポリアマイドポリアミン系単量体を共重合体に含むセメント分散剤を開示するものとしては特許文献8、特許文献9が挙げられる。しかしながら前述した通り高強度構造物に使用する分散剤への要求は高度なものになっており、より総括的に要求を満たす分散剤の提供が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−226757号公報(第1頁,第3−6頁)
【特許文献2】
特許第3285526号公報(第2−5頁,第7−9頁)
【特許文献3】
特開平9−286645号公報(第2−6頁)
【特許文献4】
特許第3184698号公報(第1−8頁)
【特許文献5】
特開2002−003258号公報(第2−6頁,第8−11頁)
【特許文献6】
特開2002−179448号公報(第2−5頁,第7−17頁)
【特許文献7】
特開2002−179449号公報(第2−5頁,第9−20頁)
【特許文献8】
特許第3235002号公報(第1−8頁)
【特許文献9】
特許第3336456号公報(第1−11頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況を考慮してなされたものであり、従来のセメント分散剤が有する問題点を解決する。すなわち低い水結合材比領域での減水性、スランプフローの持続性、早い強度発現性をバランス良く満足し、特に高いコンクリートペースト粘性の低減化に優れるセメント分散剤および該分散剤を含むコンクリート組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、共重合体1分子中にポリアルキレンポリアマイド系単量体、長鎖ポリアルキレングリコール系単量体、短鎖ポリアルキレングリコール系単量体、ならびに(メタ)アクリル酸系単量体からなる共重合体が所望の効果を奏することを見出して本発明に至った。
すなわち、本発明は、
ポリアルキレンポリアミン1.0モルと、二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステル0.5〜0.95モルと、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステル0.05〜0.70モルを縮合させたポリアマイドポリアミンのアミノ残基1当量に対して、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキサイド0〜8モルを付加させた少なくと1種から選ばれる化合物(化合物A)と、
一般式(1):
【化4】
Figure 0003740641
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基またはアルカノールアンモニウム基を表す)で表される少なくとも1種から選ばれる化合物(化合物B)と、
一般式(2):
【化5】
Figure 0003740641
(式中、R2は水素原子またはメチル基を表し、R3は炭素原子数2ないし4のアルキレン基を表し、R4は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、そしてmは1〜35の平均付加モル数を表す)
で表される少なくとも1種から選ばれる化合物(化合物C)と、
一般式(3):
【化6】
Figure 0003740641
(式中、R5は水素原子またはメチル基を表し、R6 は炭素原子数2ないし4のアルキレン基を表し、R7は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、そしてnは40〜100の平均付加モル数を表す)
で表される少なくとも1種から選ばれる化合物Dとを、
主な単量体成分として含む単量体混合物を共重合することにより得られる水溶性両性型共重合体、またはその部分中和、もしくは完全中和塩からなるセメント分散剤に関する。
【0008】
本発明はまた、特に超高性能コンクリート組成物に配合される上記本発明のセメント分散剤に関する。さらに本発明は、上記本発明のセメント分散剤を含有することを特徴とするコンクリート組成物、そして特に超高性能コンクリート用の該コンクリート組成物に関する。本明細書において、超高性能コンクリートとは低いW/Cで得られる状態の良いコンクリートを指す。
【0009】
本発明において使用される化合物Aは上記したように、ポリアルキレンポリアミン(化合物a)と二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステル(化合物b)とアクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステル(化合物c)とを特定の割合で縮合させたポリアマイドポリアミンに、アルキレンオキサイド(化合物d)を特定量付加させた化合物である。
化合物aのポリアルキレンポリアミンとして、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン等を挙げることができるが、効果と経済性の点からジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が好ましい。
化合物bの二塩基酸およびその炭素原子数1ないし4の低級アルコールエステルとして、例えばマロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバチン酸、またはこれらの炭素原子数1ないし4の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたは存在する場合にはそれらの異性体とのエステルを挙げることができる。その中でも効果と経済性の点からアジピン酸が最も好ましい。
化合物cのアクリル酸またはメタクリル酸およびその炭素原子数1ないし4の低級アルコールエステルとして、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記の化合物a、bおよびcの3成分からなるポリアマイドポリアミンは公知の縮重合技術により容易に得ることができる。また、ポリアマイドポリアミンのアミノ残基に付加させる化合物dである炭素原子数2ないし4のアルキレンオキサイドとはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイドである。これらアルキレンオキサイドは1種類のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0010】
ポリアマイドポリアミンの製造、すなわち化合物a、bおよびcの縮重合反応には、例えば、最初に化合物aと化合物bのみを縮重合させ、しかる後に一塩基酸である化合物cを加えて更に縮重合を継続させる2段反応法、または最初から化合物a、bおよびcを同時に混合して縮重合を行わせる一括反応法等がある。しかしながら、いずれの方法を用いるにしてもこの縮重合反応すなわちアマイド化反応はアマイド交換反応と並行して進行するため、最終的には化合物cに由来するアクリル酸残基またはメタクリル酸残基はポリアマイド鎖の末端に位置することになり、同じ結果を与えるとみなしてよい。
【0011】
次に、ポリアマイドポリアミンを構成する上記3成分の反応モル比について説明する。化合物a(ポリアルキレンポリアミン)1.0モルに対する化合物b(二塩基酸またはそのエステル)の反応比は0. 5〜0.95モルである。この範囲のモル比で反応させた化合物aと化合物bの縮重合物は平均的には(ポリアルキレンポリアミン2モル:二塩基酸1モル) 〜(ポリアルキレンポリアミン20モル:二塩基酸19モル) の縮重合によって構成される一定範囲の鎖長を有するポリアマイドとなり、このことより、これを用いて得られる分散剤は高い減水性およびスランプフローの持続性を発揮する。このポリアマイドの鎖長がこれよりも短い場合(上記反応比が0.5モル未満の場合)には、一定のポリアマイドポリアミン構造が得られない。また、鎖長がこれより長い場合(上記反応比が0.95モルを越える場合)には減水性がかなり低下し、好ましくない。
【0012】
本発明に係わるポリアマイドポリアミンは1分子当たり0. 10モル〔a:b:c=1.0:0.5:0.05(モル)の場合〕から、14モル〔a:b:c=1.0:0.95:0.70(モル)の場合〕のアクリル酸残基またはメタクリル酸残基を有するが、効果の面から好ましい範囲は0. 5〜2. 0モルである。この値が0.5モルを下回る場合(例えばa:b=1.0:0.5であって、化合物aに対する化合物cのモル比が0.25未満の場合)には、これから得られる化合物Aが最終共重合体に組み込まれる割合が低下し、セメント分散剤としての性能を著しく低下させる。一方2.0モルを越えると(例えばa:b=1.0:0.95であって、化合物aに対する化合物cのモル比が0.10を越える場合)、共重合体が三次元構造をとり過ぎてしまい十分な効果が得られない。
【0013】
特にポリアルキレンポリアミン1.0モルに対する、二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルのモル数をxモルとし、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルのモル数をyモルとした場合、両者のモル数の関係が、0.6<y/(1−x)<1.4の条件を満たすことが好ましい。0.6≧y/(1−x)の場合にはポリアマイドポリアミン系単量体が十分に共重合体に含まれず、y/(1−x)≧1.4の場合には反応性基を両端に有するジアマイドポリアマイドポリアミン系単量体を共重合体に多く含有することとなるため、重合体の高分子量化、ゲル化を生じてしまい、いずれにせよ十分な粘性低減効果を示さない。
【0014】
ポリアマイドポリアミンに付加させるアルキレンオキサイドの量はポリアマイドポリアミンのアミノ残基1当量に対し0〜8モルである。8モルを越えると化合物Aの分子量が大きくなるためにカチオン当量が低下し、本発明の両性型ポリマーとしての十分な効果が得られない。本発明においては、上記アルキレンオキサイドの付加が行われることが好ましく、その量は好ましくはポリアマイドポリアミンのアミノ残基1当量に対し0.5〜6.0モル、特に好ましくは1.0〜5.5モルである。
【0015】
本発明において使用される化合物Bは、例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミン塩類を挙げることができるが、性能および経済性の面からアクリル酸もしくはメタクリル酸が好ましい。
【0016】
最終的に共重合体に組み込まれた後の化合物Bの形態としては、酸または/およびナトリウム、カリウム、アンモニウムによる(部分又は完全)中和塩であることが水溶性の面から好ましい。中和は酸の形態で合成した後に中和しても良く、また重合前から塩の形態として中和してあっても良い。
【0017】
本発明において使用される化合物C及び化合物Dは、例えばメトキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、メタノールのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0018】
本発明において使用される化合物Cのアルキレンオキサイド平均付加モル数は1〜35モルである。1以下では重合物の水溶性を著しく低下させてしまうし、35以上ではスランプフローの持続性を低下させてしまう。
【0019】
本発明において使用される化合物Dのアルキレンオキサイド付加モル数は40〜100である。40以下である場合には減水性能が低下するし、100を超える場合にはスランプフローの持続性を著しく低下させてしまう。
【0020】
本発明のセメント分散剤としての共重合体には化合物A,B,C,D以外で共重合可能なその他の単量体を含むことができる。このような単量体としては以下の公知の単量体が挙げられる。(非)水系単量体類:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンなど、アニオン系単量体類:イタコン酸、(無水)マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸など、アミド系単量体類:アクリルアミド、アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物など、ポリアルキレングリコール系単量体類:アリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコールと無水マレイン酸のモノまたはジエステル、ポリアルキレングリコールとイタコン酸のエステルなどである。
【0021】
上記その他共重合可能な単量体の配合割合は、全単量体の仕込み割合の30重量%以下、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。
【0022】
本発明において使用される化合物A、化合物B、化合物Cおよび化合物Dの配合割合は、これらの合計を100重量%として、5〜25重量%:5〜30重量%:5〜40重量%:20〜80重量%であり、この範囲において各々の化合物を適正量、選択することによって、バランスの取れた減水性、スランプフローの持続性、早い強度発現性、及び高いコンクリート粘性の低減化が得られるが、これを外れると効果が得られない。
【0023】
本発明のセメント分散剤を得る為の製造方法としては、特に限定されず、例えば、重合開始剤を用いる溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法が採用できる。
【0024】
溶液重合方法は回分式でも連続式でも行うことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられるが、原料単量体および得られる共重合体の溶解性から、水および炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いることがさらに好ましい。
【0025】
水溶液重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチリロニトリル等のアゾニトリル化合物の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフォン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩類、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。
【0026】
また、低級アルコール、芳香族あるいは脂肪族炭化水素、エステル化合物、あるいはケトン化合物を溶媒とする溶液重合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチリロニトリル等のアゾ化合物;等がラジカル重合開始時として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせから適宜選択して用いることができる。
【0027】
塊状重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチリロニトリル等のアゾ化合物が用いられる。
【0028】
共重合の際の反応温度は、特に制限はないが、例えば、過硫酸塩を開始剤とした場合は反応温度が30〜95℃の範囲が適当である。
【0029】
共重合の際には、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤を用いることができ、2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。
【0030】
共重合の際の重合時間は、特に限定されないが、例えば、1〜10時間の範囲が適当であり、好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは1.5〜6時間の範囲が良い。重合時間がこの範囲より短すぎたり長すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0031】
共重合の際の滴下方法は特に限定されないが、各単量体の一部または全量を反応容器に仕込み開始剤等を滴下する方法、各単量体の1種以上を反応容器に仕込みその他単量体、開始剤、連鎖移動剤等を滴下する方法、また特許第3235002号公報、特許第3336456号公報で開示されている単量体の混合物、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を各々滴下する方法、各単量体と連鎖移動剤の混合物、ラジカル重合開始剤を各々滴下する方法が挙げられる。
【0032】
本発明で得られる共重合体の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール換算)で3,000〜500,000の範囲が良く、これを外れると分散性が低下する。
【0033】
このようにして得られた本発明における水溶性両性型共重合体は、セメント分散剤として低い水結合材比領域での減水性、スランプフローの持続性、早い強度発現性に優れ、特に高いコンクリート粘性を低減させる効果を有し、従来使用されまた提案されているセメント分散剤では得られなかった性能を発揮する。これらの効果は共重合体の分子構造中のカルボキシル基(アニオン性基)、ポリアルキレンポリアマイド基(カチオン性基)および長鎖及び短鎖ポリアルキレングリコール基からなる非イオン性親水性基を併せ持つことによりもたらされると考える。このような特異的構造を有する共重合体を使用することが本発明の根幹をなすものである。特に前記ポリアマイドポリアミン基のカチオン性基部分の電気作用、水酸基の親水作用、および短鎖ポリアルキレングリコール基、長鎖ポリアルキレングリコール基が適度に組み合わされることにより長鎖ポリアルキレングリコールの立体障害作用が有効に機能することなどが相乗効果となって、低い水結合材比領域における少量の水の中でも無機材質(セメント粒子)にセメント分散剤が効率的に吸着し、また短鎖ポリアルキレングリコール基の存在が長鎖ポリアルキレングリコール基を効率良く機能させる役目を果たし、本発明の効果に結びついている。さらにセメント分散剤が効率的に機能するということは、セメント分散剤の添加量を減らすことができることであり、セメント分散剤の過剰投入による凝結遅延性を低減して早い強度発現などにも結びついているものと推察する。この様に本発明のセメント分散剤が発揮する効果から、前記のメカニズムを推察しているが解明にまでは至っていない。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の水溶性両性型共重合体からなるセメント分散剤はコンクリートの材料を含めた結合材に対し固形分換算で0.1〜1.8%程度添加される。特に水結合材比がW/B=20%以下と低い場合には1.0%を越え添加されることが多い。すなわち減水性、スランプフローの持続性を得るためには、添加量が多いほど良いが、多過ぎると凝結遅延を起こし最悪の場合硬化不良となる。使用する方法は一般のセメント分散剤の場合と同じであり、コンクリート混練時に原液添加するか、予め混練水に希釈して添加する。あるいはコンクリートまたはモルタルを練り混ぜた後に添加し再度均一に混練しても良い。本発明は上記本発明のセメント分散剤を含有するコンクリート組成物をも提供する。ここで、セメント分散剤以外の成分は従来慣用のコンクリート用成分であり、セメント、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱・中庸熱ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカフュームセメント、VKC−100SF等、骨材、すなわち細骨材および粗骨材、混和材、例えばシリカフューム、フライアッシュ、炭酸カルシウム粉末、高炉スラグ粉末、膨張材および水を挙げることができる。
また、本発明のセメント分散剤以外の慣用のセメント分散剤、空気連行剤、消泡剤、凝結遅延剤、促進剤、増粘剤、分離低減剤、収縮低減剤、剥離剤等も適宜配合し得ることはいうまでもない。それら各成分の配合割合は選択された成分の種類や使用目的に応じて容易に決定され得る。
【0035】
本発明の分散剤は低い水結合材比領域での減水性、スランプフローの持続性、早い強度発現性をもち、特に高いコンクリートペーストの粘性低減に優れるが、汎用の水結合材比領域で使用することも可能である。例えば本発明のセメント分散剤の単独もしくは、慣用のセメント分散剤との配合で使用したプレキャスト用途、汎用の水結合材比領域への応用が挙げられる。これらの場合において、本発明のセメント分散剤を配合することによる、初期減水性の改善、早期強度発現性の付与は当然期待される効果である。
【0036】
本発明のセメント分散剤と慣用のセメント分散剤とそれぞれ1〜99/99〜1の割合で配合できる。通常の配合割合はその水と結合材の比率およびその用途により異なる。
【0037】
本発明のセメント分散剤に配合可能な慣用のセメント分散剤としては特に限定はなく、公知のセメント分散剤が挙げられる。例えばリグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリスチレンスルホン酸縮合物の塩等であり、ポリカルボン酸系分散剤としては特公昭58−383380号公報に示されるポリエチレングリコールモノアリルエーテルと不飽和ジカルボン酸との共重合体、特公昭59−18338号公報に示されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸との共重合体、特許2628486号公報に示される末端にスルホン酸基を有する単量体とポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルとポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との4者共重合体、特許第2774445号公報に示されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸との共重合体、ポリアマイドポリアミン系単量体を有する特許第3235002号公報の共重合体、特許第3336456号公報などの共重合体が挙げられる。
【0038】
状態の良いコンクリート組成物を得るためには先に挙げた空気連行剤、凝結遅延剤、促進剤、分離低減剤、増粘剤等などを配合することも通常行われる。本明細書では、本発明以外のセメント分散剤およびこれらの薬剤をあわせて、他のモルタル、コンクリート用添加剤と称する。
従って本発明はまた、本発明のセメント分散剤と、上記他のモルタル、コンクリート用添加剤との配合物であるモルタル、コンクリート用混和剤、ならびに該モルタル、コンクリート用混和剤を含有するコンクリート組成物をも提供する。
【0039】
セメント分散剤以外の他のモルタル、コンクリート用添加剤としては先に挙げた、空気連行剤、消泡剤、凝結遅延剤、促進剤、増粘剤、分離低減剤などである。これらはコンクリートペースト形成前に本発明のセメント分散剤に配合、または練り水に配合することもできる。
【0040】
これら他のモルタル、コンクリート用添加剤を具体的に例示すると空気連行剤としては一般に▲1▼アニオン系空気連行剤、▲2▼ノニオン系空気連行剤、▲3▼アニオン、カチオンからなる両性系空気連行剤が挙げられる。▲1▼アニオン系空気連行剤としては高級アルコール(アルコキシレート)硫酸エステル塩、樹脂石鹸塩、高級アルコール(アルコキシレート)燐酸エステル塩など、▲2▼ノニオン系空気連行剤としてはポリアルキレングリコール、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸とポリアルキレングルコールとのエステル、糖アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキサイド付加物など、▲3▼アニオン、カチオンからなる両性系空気連行剤としてはアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、アミノ酸系両性活性剤型などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0041】
他のモルタル、コンクリート用添加剤として消泡剤を具体的に例示すると▲1▼活性剤系消泡剤、▲2▼シリコーン系消泡剤、▲3▼鉱油系消泡剤に分類されるが、▲1▼活性剤系消泡剤としては、ポリアルキレングリコール、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸のエステル、ポリアルキレングリコールと脂肪酸のエステルなど、▲2▼シリコーン系消泡剤としてはジメチルシリコーン、シリコーンエマルションなど、▲3▼鉱油系消泡剤としては、鉱油エマルション、パラフィンワックスエマルション、高級アルコールエマルションなどが挙げられる。
【0042】
他のモルタル、コンクリート用添加剤として凝結遅延剤を例示すると、▲1▼無機質系凝結遅延剤:リン酸塩、珪フッ化物、酸化亜鉛、炭酸化亜鉛、塩化亜鉛、一酸化亜鉛、水酸化銅、マグネシア塩、ホウ砂、酸化ホウ素、▲2▼有機質系凝結遅延剤:ホスホン誘導体、糖類やその誘導体、オキシカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩が挙げられ、さらに詳しく例示するとホスホン誘導体:アミノトリ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のホスホン酸およびその誘導体、糖類:サッカロ−ス、マルト−ス、ラフィノ−ス、ラクト−ス、グルコ−ス、フラクト−ス、マンノ−ス、アラビノ−ス、キシロ−ス、アビト−ス、リポ−ズ、オキシカルボン酸塩:グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、リンゴ酸、酒石酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。本剤の好ましい添加量はセメント等の結合材料に対して0.1〜20重量部である。
【0043】
他のモルタル、コンクリート用添加剤として促進剤を例示すると塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムなどで代表される無機系促進剤、アルカノールアミンなどで代表される有機系促進剤が挙げられる。
【0044】
他のモルタル、コンクリート用添加剤として増粘剤・分離低減剤を例示すると(1)セルロ−ス系水溶性高分子:セルロ−スエ−テル(MCなど)、(2)ポリアクリルアミド系水溶性高分子:ポリアクリルアミド、(3)バイオポリマ−:カ−ドラン、ウエランガム、(4)非イオン系増粘剤:ポリアルキレングリコールの脂肪酸ジエステル、ポリアルキレングリコールのウレタン縮合物などが挙げられる。本剤の好ましい配合割合は無機材料に対し0.5〜3.0kg/m3である。
【0045】
【実施例】
次に実施例に基づいて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1
<化合物A−1の製造方法>
攪拌器付き反応容器にジエチレントリアミン103g(1.00モル)、アジピン酸97.3g(0.67モル)を仕込み、窒素の導入による窒素雰囲気下で攪拌混合する。150℃になるまで昇温し縮重合に伴う反応生成物の水を除きながら、酸価が22となるまで20時間反応させた。次にハイドロキノンメチルエーテル1.1g、メタクリル酸27.5g(0.32モル)を仕込み、同温度(150℃)で10時間反応させた。これにより反応留出水の合計42gと共にポリアマイドポリアミン187g(融点122℃、酸価23)を得た。このポリアマイドポリアミン全量を水272gに溶解させ温度50℃となるまで昇温した。同温度(50℃)でエチレンオキサイド220g(未反応アミノ基を含めた総アミノ残基に対し3.0モル相当)を4時間かけて逐次導入し、2時間の熟成を行った。これにより本発明の化合物A−1(固形分60%)680gを得た。
<共重合体の製造方法1>
撹拌器付き反応容器に水180gを仕込み、窒素を導入し合成系内を窒素雰囲気とし温度80℃になるまで昇温した。また水150g、化合物A−1を98.2g、メタクリル酸(化合物B)72.0gおよび短鎖メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(化合物C,分子量1000)60.9g、長鎖メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(化合物D,分子量2000)183gの混合物(化合物BをNa塩とした場合の配合計算比は化合物A:化合物B:化合物C:化合物D=15重量%:23重量%:15重量%:47重量%の割合で合計100重量%)と5%チオグリコール酸水溶液66.4gとを各々2時間、また5%過硫酸ソーダ水溶液123gを3時間、合成系内へ滴下した。その後2時間熟成、冷却を行った。その後48%NaOH水溶液でpH7まで中和を行い、水溶性両性型共重合体(共重合体(A);以下、「実施例1の共重合体」としても表記する)を1,029g得た。この共重合体(A)はGPC分子量測定により重量平均分子量が46,000の共重合体であった。なおその測定条件は以下のとおりである:
カラム:OHpak SB-803HQ, OHpak SB-804HQ(昭和電工製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの比80:20
検出器:示差屈折計
検量線:ポリエチレングリコール。
【0047】
<共重合体の製造方法2>
撹拌器付き反応容器に水180gを仕込み、窒素を導入し合成系内を窒素雰囲気とし温度80℃になるまで昇温した。また水150g、化合物A−1を98.2g、メタクリル酸(化合物B)72.0gおよび短鎖メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(化合物C,分子量1000)60.9g、長鎖メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(化合物D,分子量2000)183gの混合物(化合物BをNa塩基準とした場合の配合計算比は化合物A:化合物B:化合物C:化合物D=15重量%/23重量%/15重量%/47重量%の割合で合計100重量%)と5%チオグリコール酸水溶液66.4gとの混合物、5%過硫酸ソーダ水溶液82gを2時間かけ、合成系内へ滴下した。その後1時間かけ5%過硫酸ソーダ水溶液41gを滴下した。その後2時間熟成、冷却を行った。その後48%NaOH水溶液でpH7まで中和を行い、水溶性両性型共重合体(共重合体(B))を1,029g得た。この共重合体(B)はGPC分子量測定により重量平均分子量が45,000の共重合体であった。なおその測定条件は以下のとおりである:
カラム:OHpak SB-803HQ, OHpak SB-804HQ(昭和電工製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの比80:20
検出器:示差屈折計
検量線:ポリエチレングリコール。
<製造方法1及び2で得られた共重合体(A)及び(B)の比較>
上記の製造方法1で得られた共重合体(A)と製造方法2で得られた共重合体(B)はGPC測定結果においてほぼ同一であり、同一化合物が得られたと考えることができる。
【0048】
実施例2〜10
表1に示す割合の化合物を基に、実施例1における化合物A−1を得る製造方法と同様な方法でポリアマイドポリアミンアルキレンオキサイド付加物である化合物A−2〜A−6を得た。また表2に示す割合の化合物A、化合物B、化合物Cおよび化合物Dを用い実施例1の製造方法1と同様な方法で共重合を行い水溶性両性型共重合体(実施例2〜10)を得た(ただし、得られた共重合体の最終濃度が固形分40%になるよう水分を調整した)。
【0049】
【表1】
Figure 0003740641
*1 表中の化合物Aを製造するために使用される成分(a)〜(d)は上記した化合物a〜dに相当し、各数値は構成モル比を表す。
*2 ジエチレントリアミン
*3 トリエチレンテトラミン
*4 化合物aと化合物bとの縮合物(中間縮合物)の酸価
*5 化合物aと化合物bと化合物cとの縮合物(最終縮合物)の酸価
【0050】
【表2】
Figure 0003740641
配合比の計算方法:得られた共重合体における各単量体の割合を把握する為に、化合物Bは塩の形で計算している。
実施例1の配合比計算例)
化合物A−1:98.2g(固形分は98.2×0.6=58.9),
化合物B:72.0g(固形分は108(メタアクリル酸ナトリウム分子)×72g/86(メタアクリル酸分子)=90.4g)
化合物C:60.9g,化合物D:183gは100%固形分である。
化合物A:化合物B:化合物C:化合物D=58.9:90.4:60.9:183(固形分)=15重量%:23重量%:15重量%:47重量%
*1表中の化合物A〜Cの値は固形分を基準とした構成重量部である。
*2 メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量250)
*3 メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量1000)
*4 メトキシポリエチレングリコールアクリレート(分子量250)
*5 メトキシポリエチレングリコールアクリレート(分子量1000)
*6 メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量2000)
*7 エトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量3000)
*8 メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量4000)
【0051】
比較例1〜4
ポリアルキレンポリアミン1.0モルに対する、二塩基酸(xモル)および(メタ)アクリル酸(yモル)の反応割合を0.6<y/(1−x)<1.4を外れる本発明の範囲外としたことを除いて実施例1に示す方法と同様にして縮合化合物を合成した(化合物A’−1〜化合物A’−4)。表3にこの合成例に使用する成分の配合割合を示す。次いでこれらの化合物A’−1〜A’−4と化合物B、化合物C及び化合物Dとを共重合させ、水溶性両性型共重合体(比較例1〜4)を得た。表4にはその合成例に使用する成分の配合割合を示す。
【0052】
【表3】
Figure 0003740641
*1 表中の化合物A’を製造するために使用される成分(a)〜(d)は上記した化合物a〜dに相当し、各数値は構成モル比を表す。
*2 ジエチレントリアミン
*3 トリエチレンテトラミン
*4 化合物aと化合物bとの縮合物(中間縮合物)の酸価
*5 化合物aと化合物bと化合物cとの縮合物(最終縮合物)の酸価
【0053】
【表4】
Figure 0003740641
表4では、表2の配合比計算方法に準じて処方を決めている。
*1 表中の化合物A’、化合物Bおよび化合物Cの値は固形分を基準とした構成重量部である。
*2 メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量1000)
*3 メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量2000)
【0054】
比較例1〜4の合成結果
【表5】
Figure 0003740641
*1 ○・・・高分子領域に肩が認められない。 △・・・高分子領域にピークとして確認できる程の肩を持つ。
*2 実施例1での化合物Aの反応割合を1とした時の反応割合の比率
【0055】
化合物A’を構成する二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルのモル数(=xモル)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルのモル数(=yモル)の割合が0.6≧y/(1−x)の場合には、化合物A’の水溶性両性型共重合体への反応割合が極端に低下し、またy/(1−x)≧1.4である場合には高分子量化、さらにはゲル化した。
【0056】
比較例5〜9
以下の割合で化合物A−1〜A−3、A−6と化合物B、化合物C又は化合物Dとを共重合させ、単一鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する水溶性両性型共重合体(比較例5〜9)を得た。
【表6】
Figure 0003740641
表6では、表2の配合比計算方法に準じて処方を決めている。
*1表中の化合物A、化合物B、化合物Cおよび化合物Dの値は固形分を基準とした構成重量部である。
*2メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量250)
*3メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量1000)
*4メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量2000)
*5メトキシキシポリエチレングリコールメタアクリレート(分子量4000)
【0057】
試験例1:モルタルフロー試験
<試料の調製>
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)200g、けい砂6号(日本プラスター社製)260gを秤りとり、これを90秒間空練りした。また実施例1〜10及び比較例5〜で得られた共重合体を0.448g(固形分基準)秤りとり、これを水で希釈し総量で80gになるよう練り水を準備した(水/セメント比=40%、砂/セメント比=130%)。セメントと砂の混合物を練り水に投入し、180秒間混合しモルタルペーストを作製した。空練り及びモルタルの混合条件は常に均一になるよう細心の注意をはらった。
【0058】
<測定及び測定結果>
調製したモルタルをアクリル樹脂板の上でφ50mm×H50mmの中空円筒容器に流し込み、容器の上端が一杯になるまで充填した。充填後、すぐに中空円筒容器をアクリル樹脂板に対し垂直な方向へ、一定の速度で持ち上げた。モルタルが広がり完全に静止するまで待ち、モルタルの広がりの最大径とこれに垂直な径を測定し、この2点の平均値を求めた。これらの操作はモルタルペースト作製直後、60分後、120分後に行った。但し60分後、120分後の測定に際しては、水分が蒸発しないようモルタルペーストが入った容器にビニールシートを被せ、静置し、測定を行う前に再度90秒間モルタルを混合してから中空容器へ充填した。
【表7】
Figure 0003740641
*1減水性能:
120以上を○、110以上〜120未満△、100以上〜110未満×
*2スランプフローの持続性能:
│(直後のモルタルフロー値)―(2時間後のモルタルフロー値)│が
25未満○、25以上〜30未満△、30以上×
【0059】
化合物C―2及び化合物D―1を共重合体1分子中に含んだ実施例1の共重合体及び化合物C―1及び化合物D―1を共重合体1分子中に含んだ実施例2の共重合体は、化合物D―1を単独で含む比較例5の共重合体及び化合物C−2を単独で含む比較例7の共重合体に比べて、減水性とスランプフローの持続性能に優れる結果になった。
【表8】
Figure 0003740641
*1減水性:直後のモルタルフロー値が185以上◎、175以上〜185未満○、170以上〜175未満△、170未満×
*2スランプフローの持続性能:
│(直後のモルタルフロー値)―(2時間後のモルタルフロー値)│が
5未満◎、5以上〜10未満○、10以上〜20未満△、20以上×
【0060】
モルタルフロー試験に於ける実施例3〜10で得られた共重合体は減水性、スランプフローの持続性にバランス良く優れるが、比較例6で得られた共重合体の長鎖のポリアルキレングリコール基である化合物D−3を単独で含む共重合体の場合には、減水性が向上するがスランプフローの持続性が著しく低下した。モルタルフロー試験とコンクリート試験では同じサンプル評価であっても減水性能、スランプフローの持続性能、コンクリート粘性が変わることは知られており、上記モルタル試験結果で得た性能をより正確に評価する為に、コンクリート試験へ拡大評価を行った。
【0061】
試験例2: コンクリート試験
コンクリート試験1〜4で使用するコンクリート配合を次の表に示す。
【表9】
Figure 0003740641
単位:kg/m3
*1:配合−1〜3 シリカフュームセメント (密度:3.08g/cm3
配合−4 普通ポルトランドセメント (密度:3.15g/cm3
*2:砕砂 (密度:2.64g/cm3
*3:硬質砕石 (密度:2.65g/cm3
コンクリート試験1
試験条件 水結合材比(W/B)=20%
本試験では表9に示した配合のうち配合−1を用いた。
【表10】
Figure 0003740641
表中の添加量は結合材に対する分散剤固形分の割合を示す。
【0062】
本試験結果から示されるように低い水結合材比領域(W/B=20%)でのコンクリート試験において、実施例3〜5の共重合体は減水性、スランプフローの持続性、早い凝結と強度発現に優れ、コンクリート粘性にも優れる結果になった。
【0063】
コンクリート試験2
試験条件 水結合材比(W/B)=15%
本試験では表9に示した配合のうち配合−2を用いた。
【表11】
Figure 0003740641
表中の添加量は結合材に対する分散剤固形分の割合を示す。
モルタル練り上がり時間:練り初めから完全にモルタルになるまでの時間を目視で評価した。
【0064】
実施例4、6、8の共重合体は低い水結合材比(W/B=15%)の領域においても、高い減水性、スランプフローの持続性、早い強度発現に優れ、低いコンクリート粘性を維持できる結果が得られた。さらに均一なモルタルになる迄の時間が短く、状態の良いコンクリートが得られる時間も早い。
【0065】
コンクリート試験3
試験条件 水結合材比(W/B)=12%
本試験では表9に示した配合のうち配合−3を用いた。
【表12】
Figure 0003740641
表中の添加量は結合材に対する分散剤固形分の割合を示す。
【0066】
本試験に示されるように更に低い水結合材比領域(W/B=12%)のコンクリートにおいては分散剤の添加量を極端に増加させざるを得ず、その結果凝結時間が非常に遅くなる。実施例4,6,8の共重合体は減水性、スランプフローの持続性、早い凝結性能に優れ、コンクリート粘性にも優れる結果になった。
【0067】
コンクリート試験4
試験条件 水セメント比(W/C)=30%
本試験では表9に示した配合のうち配合−4を用いた。
【表13】
Figure 0003740641
表中の添加量は結合材に対する分散剤固形分の割合を示す。
【0068】
本発明の実施例4の共重合体は単独で高い水セメント比領域(W/C=30%)で使用すると著しくスランプフロー持続性を低下させる結果になるが、スランプフローの持続性を重視しないコンクリート二次製品向けの分散剤としても好適であるし、汎用の分散剤と配合することにより高い初期減水性、早い凝結時間、コンクリート粘性の低減を付与することも可能である。
【0069】
【発明の効果】
以上詳細に記載したように、本発明のセメント分散剤は、低い水結合材比の領域において減水性が高く、スランプフローの持続性に優れたものであり、かつ早い強度発現性を有し、更に特有のコンクリート粘性を低減する効果を持つため、超高性能コンクリートのための分散剤として好適である。また本発明における上記水溶性両性型共重合体は高性能AE減水剤等としても好適に使用できる。上記の優れた特性を有する本発明のセメント分散剤が配合されたコンクリート組成物は、減水性、スランプフローの持続性、強度発現性、およびコンクリート粘性の低減が非常に良好であるため、現場作業性に優れるものである。このように、本発明は当該分野で切望されていた分散剤ないしは減水剤を提供するものであり、当該分野への寄与は多大である。

Claims (6)

  1. ポリアルキレンポリアミン1.0モルと、二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステル0.5〜0.95モルと、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステル0.05〜0.70モルを縮合させたポリアマイドポリアミンのアミノ残基1当量に対して、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキサイド0〜8モルを付加させた少なくとも1種から選ばれる化合物(化合物A)と、
    一般式(1):
    Figure 0003740641
    (式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基またはアルカノールアンモニウム基を表す)で表される少なくとも1種から選ばれる化合物(化合物B)と、
    一般式(2):
    Figure 0003740641
    (式中、R2は水素原子またはメチル基を表し、R3は炭素原子数2ないし4のアルキレン基を表し、R4は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、そしてmは1〜35の平均付加モル数を表す)
    で表される少なくとも1種から選ばれる化合物(化合物C)と、
    一般式(3):
    Figure 0003740641
    (式中、R5は水素原子またはメチル基を表し、R6は炭素原子数2ないし4のアルキレン基を表し、R7は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、そしてnは40〜100の平均付加モル数を表す)
    で表される少なくとも1種から選ばれる化合物(化合物D)とを、
    主な単量体成分として含む単量体混合物を共重合することにより得られる水溶性両性型共重合体、またはその部分中和、もしくは完全中和塩からなり、
    前記水溶性両性型共重合体は化合物AないしDを、それらの合計を100重量%として、化合物A:化合物B:化合物C:化合物D=5〜25重量%:5〜30重量%:5〜40重量%:20〜80重量%になる割合で共重合することにより得られたものであるセメント分散剤。
  2. 前記化合物Aにおいて、ポリアルキレンポリアミン1.0モルに対する、二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルのモル数をxモルとし、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルのモル数をyモルとして、
    0.6<y/(1−x)<1.4
    の条件を満たすことを特徴とする請求項1記載のセメント分散剤。
  3. 請求項1または2記載のセメント分散剤と、それ以外のセメント分散剤、消泡剤および空気連行剤からなる群より選択されてなる他のモルタル、コンクリート用添加剤の少なくとも1種との配合物であるモルタル、コンクリート用混和剤。
  4. 請求項1または2記載のセメント分散剤を含有することを特徴とするコンクリート組成物。
  5. 請求項記載のモルタル、コンクリート用混和剤を含有することを特徴とするコンクリート組成物。
  6. 超高性能コンクリート用である請求項または記載のコンクリート組成物。
JP2002382014A 2002-12-27 2002-12-27 セメント分散剤および該分散剤を含むコンクリ―ト組成物 Expired - Lifetime JP3740641B2 (ja)

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