JP2015074666A - (ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体及びその用途 - Google Patents

(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】セメント組成物等における減水性や作業性等の性能を高いレベルで発揮することができ、分子構造がシンプルであり、工業的な製造に適する共重合体を提供する。
【解決手段】不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(A)及び該高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、該結合部位(X)が高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成せず、かつ、硫黄原子を含む(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体に関する。より詳しくは、分散剤、セメント混和剤等の用途に好適に用いられる(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体、該共重合体を含む分散剤、セメント混和剤、及び、セメント組成物に関する。
(ポリ)アルキレングリコール鎖を含有する重合体(以下、(ポリ)アルキレングリコール系重合体ともいう。)は、その鎖長や構成するアルキレンオキシドを適宜調整することによって親水性や疎水性、立体反発等の特性が付与されることから、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加されるセメント混和剤用途において利用されている。このようなセメント混和剤は、通常、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を発揮させることを目的として使用される。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、(ポリ)アルキレングリコール鎖がその立体反発によりセメント粒子を分散させる分散基として作用することができるため、(ポリ)アルキレングリコール鎖を含有するポリカルボン酸系減水剤が高い減水作用を発揮するものとして提案され、最近では高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
従来の(ポリ)アルキレングリコール鎖を含有する重合体に関し、エチレン系不飽和モノマー化合物等による重合部位を有するブロック共重合体の開発研究が進められている。
例えば、ブロックコポリマーと固体の水性懸濁液の混合物であり、固体−懸濁液がセメント、セッコウ、石灰及び硬セッコウをベースとする水硬性結合剤を含有し、ブロックコポリマーが特定式で表されるポリアルキレンオキシド化合物とエチレン系不飽和モノマー化合物との重合により製造された固体の水性懸濁液の分散方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ブロックコポリマーが原子移動ラジカル重合(ATRP重合)により製造された、ポリ(アルキレンオキシド)化合物とエチレン系不飽和モノマー化合物が共重合された形の共重合体に特定された水性の固体−懸濁液用の分散剤が開示されている。(例えば、特許文献2参照。)
更に、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、ビニル系単量体由来の構造単位とを有する重合体であって、(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、有機残基を介してリン原子と結合した構造を有するリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
米国特許第7425596号明細書 特許第4399574号明細書 特開2012−131997号公報
上記のようにセメントの混和剤等として用いることができる(ポリ)アルキレングリコール鎖を含有する重合体として、エチレン系不飽和モノマー化合物等による重合部位を有するブロック共重合体が開示されている。しかしながら、未だ、昨今要望される極めて高い性能(セメント分散性(減水性)、スランプフロー)を充分に発揮できる製品を工業的に効率よく供給するには至っていない。セメントの分散性は、セメントを扱う現場での作業性やセメントの硬化後の強度に関係する極めて重要な要素であり、性能がより優れたセメント組成物を実現するセメント混和剤が求められている。
特に、分子構造がシンプルであり、工業的に効率よく製造することができる、優れた特性を発揮するセメント混和剤が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント組成物等における減水性や作業性等の性能を高いレベルで発揮することができ、分子構造がシンプルであり、工業的な製造に適する共重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、セメント分散性(減水性)等の性能に優れたセメント混和剤として使用できる重合体について種々検討したところ、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、高分子鎖(A)及び高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、結合部位(X)がエステル結合を含まない共重合体(このような共重合体を非エステル型ともいう)が、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができる重合体となることを見出した。
この点において、特許文献1及び2において開示されているブロックポリマーのすべての実施形態は、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの末端をATRP−マクロ開始剤へ修飾する反応を行い、ATRP重合でt−ブチルメタクリレートを重合し、t−ブチル基を酸分解してカルボキシル(−COOH)化するものであり、ポリエチレングリコール部位とt−ブチルメタクリレートの重合部位との結合部位にエステル結合を含むことになる。このように、ブロックポリマーのブロック結合部位にエステル結合を含むと、アルカリ水溶液中でブロック結合部分(エステル結合)が急速に分解することになる(このような共重合体をエステル型ともいう)。分解して生成する(ポリ)アルキレングリコールにほとんどセメント分散性は無く、また、ポリカルボン酸ポリマーもセメント分散性は弱い。そのため、加水分解による分解生成物のセメント分散力は非常に弱く、セメントを分散させるための必要添加量が増大することになる。
また、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の結合部位(X)が硫黄原子を含むようにすれば、結合部位(X)にエステル結合を含まない共重合体を工業的に好ましい製造方法によって得られるものとすることができることも見出した。
この点において、特許文献1及び2において開示されているブロックポリマーのすべての実施形態は、原子移動ラジカル重合(ATRP重合)であり、また、特許文献3において開示されているリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、その製造において収率面で工夫の余地があり、技術的ハードルが高いものとなる。すなわち、リン原子導入において収率が低下し、またリン原子による連鎖移動能低下による重合率低下を生じることになる。
本発明は、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体のブロック結合部位(X)がエステル結合を含まず、かつ、硫黄原子を含むとの2つの要素を兼ね備えたものであり、それにより、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができ、工業的な製造に適する共重合体となることを見出したものである。
すなわち本発明は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)及び上記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、上記結合部位(X)が高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成せず、かつ、硫黄原子を含む(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体である。
本発明の好ましい形態としては、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が下記一般式(1):
Figure 2015074666
(式中、Xは、有機残基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。R、R、R、Rは、少なくとも一つが−COOMであり、残りのR、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は、−(CH)zCOOM(−(CH)zCOOMは、COOM又はその他の−(CH)zCOOMと無水物を形成していてもよい)を表し、zは同一又は異なって、0〜2の整数を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数である。mは、1〜500の数である。M及びMは同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表される構造を有する形態を挙げることができる。
上記一般式(1)において示されている−O−(AO)n−は、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を構成する(ポリ)オキシアルキレン基末端の酸素原子及び(ポリ)オキシアルキレン基である。nは(ポリ)アルキレングリコール系構成単位のオキシアルキレン基の平均付加モル数を示している。
上記(ポリ)オキシアルキレン基の片末端に位置するXは結合部位でありXを介して不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)が(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の片末端に結合している。
mは不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を示している。
本発明において、アルキル基、アルケニル基、有機残基等は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
本発明の好ましい形態としてはまた、硫黄原子の含有量が共重合体全体のうち0.1質量%以上である共重合体や、共重合体の2質量%アルカリ水溶液(好ましくはpH12.5)中での15分後の高分子鎖(A)と高分子鎖(B)への分解率が10質量%以下である共重合体を挙げることができる。
以下、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)、及び、結合部位(X)の順に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)>
本発明において、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)は、不飽和カルボン酸系単量体に由来する構成単位である。特に、上記不飽和カルボン酸系単量体単位としては、下記する単量体(a)(以下、単に「単量体(a)」ともいう。)に由来する構成単位であることが好ましい。
また、上記不飽和カルボン酸系単量体単位は、単量体(a)に由来するのと同じ構造の構成単位となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。
単量体(a)としては、例えば、下記式(2):
Figure 2015074666
(式中、R、R、R、Rは、少なくとも一つが−COOMであり、残りのR、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は、−(CH)zCOOM(−(CH)zCOOMは、COOM又はその他の−(CH)zCOOMと無水物を形成していてもよい)を表し、zは0〜2の整数を表す。M及びMは同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で示される化合物が好適である。
すなわち、単量体(a)は、C=C二重結合に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM)を有する、不飽和カルボン酸系単量体である。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(2)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記単量体(a)が一般式(1)に示す共重合体となったときに、C=C二重結合に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM)の位置は特に限定されるものではない。一般式(1)におけるXに結合する炭素原子に結合する置換基(R、R)の位置であってもよいし、一般式(1)におけるRに結合する炭素原子に結合する置換基(R、R)の位置であってもよい。各単量体単位における(−COOM)の位置はR、R、R、Rのうちのどの位置であってもよい。
上記一般式(2)において、M及びMで表される基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
上記一般式(2)で示される不飽和カルボン酸系単量体の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メチレングルタル酸等のジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム又は有機アミンの塩)が挙げられる。
中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩が特に好ましい。
また、これらの単量体は2種以上併用してもよい。
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体において、上記不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)における不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数としては1以上であることが好ましいが、2以上であることがより好ましく、更に、5以上であることが好適である。上記平均導入モル数の下限値としてはまた、より好ましくは10であり、更に好ましくは15であり、更に好ましくは20である。好ましい上限値としては500であり、より好ましくは300であり、更に好ましくは200であり、更に好ましくは100である。
上記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数とは、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体1モル中に含まれる不飽和カルボン酸系単量体単位のモル数の平均値を意味する。
上記平均導入モル数が1の場合、不飽和カルボン酸系単量体単位は高分子鎖状とはならないが、本発明に係る高分子鎖(A)おいては、このような場合も含まれるものとする。
mを上記好ましい数とすることにより、上記共重合体に不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、mが500を超える場合には、共重合体全体における不飽和カルボン酸系単量体の導入量が多くなり、その結果セメントを分散させる(ポリ)アルキレングリコール系構成単位が少なくなりすぎるためにセメント分散性能が低下することになる。適切に不飽和カルボン酸系単量体単位と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位の比率を設定する必要がある。
なお、後述する実施例においては、不飽和カルボン酸系単量体としてメタクリル酸(MAA)を用いているため、高分子鎖(A)における不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数がMAA個/SH(チオール末端に結合したMAAの重合度)にて示されている。
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体において、結合部位(X)と結合していない高分子鎖(A)の末端は水素、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルケニル基であることが好ましい。上記のように一般式(1)において、Rは不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)の重合停止末端に当たる部位であり、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルケニル基を表す。
<(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)>
(ポリ)アルキレングリコール系構成単位としては、モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール系構成単位であることが好ましく、また、高分子鎖(B)のうち、(ポリ)アルキレングリコール(以下、(ポリ)アルキレングリコールをPAGともいう)鎖の構造としては、アルキレンオキシドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキシド)であればよい。好ましくは、炭素数2〜18のアルキレンオキシドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキシド)である。
アルキレンオキシドとしてより好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位を構成するアルキレンオキシドとしては、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体に求められる用途等に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、セメント混和剤成分の製造のために用いる場合には、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキシド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキシドが主体であることである。
ここでいう「主体」とは、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成されるときに、全アルキレンオキシドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキシド100モル%中のエチレンオキシドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合は、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)としてはまた、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含む場合には、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体にある程度の疎水性を付与することが可能となるため、上記共重合体をセメント混和剤に使用した場合には、セメント粒子に若干の構造(ネットワーク)をもたらし、セメント組成物の粘性やこわばり感を低減することができる。その一方で、炭素数3以上のアルキレンオキシドを導入し過ぎると、上記共重合体の疎水性が高くなり過ぎることから、かえってセメント粒子を分散させる性能が充分とはならないおそれがある。このため、全アルキレンオキシド100質量%に対する炭素数3以上のアルキレンオキシドの含有量は、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
なお、上記共重合体に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
ここで、耐加水分解性の向上の面から、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端に炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入してもよい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基、アルキルグリシジルエーテル残基等が挙げられる。中でも、製造の容易さからオキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入する場合、その導入量としては、本発明のブロック共重合体における結合部位(X)が有する耐加水分解性を考慮して調整することが好ましく、例えば、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に対して、導入量を50モル%以上とすることが好ましい。より好ましくは100モル%以上であり、更に好ましくは150モル%以上であり、特に好ましくは200モル%以上である。
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体においては、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)の下限値としては、1であればよいが、好ましくは10であり、より好ましくは20であり、更に好ましくは50であり、更に好ましくは75であり、更に好ましくは100であり、より更に好ましくは150である。該平均付加モル数が1の場合、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位は高分子鎖状とはならないが、本発明に係る高分子鎖(B)おいては、このような場合も含まれるものとする。
上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)1モル中において付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。一般式(1)においてはアルキレンオキシドの平均繰り返し数をnで示している。
本発明において、オキシアルキレン基の平均付加モル数を上記好ましい数とすることにより、上記共重合体に(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数の上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは1000であり、より好ましくは800であり、さらに好ましくは500である。
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数が上記した上限値を超える場合には、上記共重合体を製造するために使用する原料化合物の粘性が増大したり、反応性が充分とはならなかったりする等、作業性の点で好適なものとはならないおそれがある。
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数としてはまた、下限値としては、より好ましくは25、更に好ましくは50であり、更に好ましくは75であり、より更に好ましくは100である。上限値としては、より好ましくは400であり、より好ましくは300であり、更に好ましくは250であり、更に好ましくは200であり、より更に好ましくは180である。
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体において、結合部位(X)と結合していない高分子鎖(B)の末端は、例えば、モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖の「モノアルコキシ」部分に相当する基となり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。一般式(1)においては、R−O−の部分が好ましい形態であるモノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖の「モノアルコキシ」部分に相当する。
該Rはモノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖の片方の末端に当たる部位となり、R−O−の部分は、Rが炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基又はアリール基である場合、アルコールの水酸基から活性水素を除いたアルコール残基となっている。上記アルコール残基を構成するRは直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェノール、メチルフェノール、ナフトール等が挙げられ、より好ましくはメチル基である。
<結合部位(X)>
本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体における結合部位(X)としては、高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成せず、かつ、硫黄原子を含むものであり、また、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とを化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であることが好ましく、その他の構造は特に限定されるものではない。
上記結合部位(X)の好ましい構造としては、重合反応に用いられる連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基が挙げられる。
結合部位(X)として異なった分子中に存在する有機残基の構造はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
一般式(1)においては結合部位(X)としての有機残基をXで示している。
上記硫黄原子を含む結合部位(X)としては、例えば、下記式(3):
Figure 2015074666
[式中、Rは有機残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、又は、チアゾール等の芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。)]で示される構造が挙げられる。
上記式(3)で示される構造のRは(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、硫黄原子(S)は不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記式(3)で示される結合部位は、後述するように(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端の水酸基をトシル化し、チオ酢酸によってチオアセチル化した後、加水分解して得られる末端のチオール基を連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和カルボン酸系単量体(a)をブロック重合させることにより、上記式(3)に示す構造の結合部位を形成することができる。
上記結合部位(X)が高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成しないとは、上記式(3)で示される構造のRが(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子と結合し、下記式(4):
Figure 2015074666
(式中、Rは上記と同様である。)で示される部位を形成することになるが、この部位においてエステル結合を含まないことである。
なお、一般式(1)においては、結合部位Xが高分子鎖(B)の(ポリ)アルキレングリコール系構成単位の末端酸素原子と結合し、上記式(4)で示されるような部位を形成することになる。
一方で、共重合体がメルカプトカルボン酸のカルボキシル基と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を起こし、それによって得られたチオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和カルボン酸系単量体(a)をブロック重合させて得られる場合、結合部位(X)は、下記式(5):
Figure 2015074666
[式中、Rはメルカプトカルボン酸残基であり、例えば、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール等の芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。)]で示される構造となる。
この場合、該結合部位は、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子と下記式(6):
Figure 2015074666
(式中、Rは上記と同様である。)で示される部位を形成することになり、この部位においてエステル結合を含むことになる。
このようなエステル結合がアルカリ水溶液中で急速に加水分解し、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体のもつ性能が充分に発揮されないこととなる。
上記結合部位(X)は、硫黄原子を含むものであり、これにより、後述するような製造方法を適用することによって工業的に効率よく本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を調製することができ、本発明の目的を達成し、課題を解決することが可能となる。
なお、上記結合部位(X)が高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成しない構造となる場合としては、リン原子を含む残基由来の結合部位が挙げられるが、硫黄原子を含むものではなく、そのため(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を効率的に提供することが困難である。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体>
本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の好ましい形態としては、硫黄原子の含有量が共重合体全体のうち0.1質量%以上である。すなわち、共重合体全体を100質量%とすると、硫黄原子の含有量が0.1質量%以上となることが好ましく、より好ましくは、0.2質量%以上であり、更に好ましくは、0.3質量%以上である。また、硫黄原子の含有量が10質量%以下となることが好ましく、より好ましくは、5質量%以下であり、更に好ましくは、3質量%以下である。
硫黄原子の含有量は、PAGチオール化合物における硫黄原子の含有量(後述する実施例におけるPAGチオール化合物一分子あたりのSH導入数)、高分子鎖(A)における不飽和カルボン酸系単量体単位のチオール基(SH)1個に対する個数の平均値(後述する実施例におけるMAA個/SH)から計算することができる。
硫黄原子の含有量が上記範囲内であると、後述する製造方法によって本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を効率的に製造することが可能となる。
本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の好ましい形態としてはまた、共重合体の2質量%アルカリ水溶液中での15分後の高分子鎖(A)と高分子鎖(B)への分解率が10質量%以下である。より好ましくは、5質量%以下であり、更に好ましくは、2質量%以下である。最も好ましくは、実質的に0質量%となることである。
ここにいう分解率とは、アルカリ水溶液中での加水分解率のことであり、該加水分解率が上記範囲内であると、セメント分散性(減水性)やスランプフロー等においてより優れた性能を発揮し、また、セメント混和剤用途等における作業性等もより良好なものとなる。
例えば、次のような加水分解試験によって分解率を測定することができる。
(1)共重合体の重量平均分子量(Mw)を後述するGPC測定条件によって測定し、反応前(分解前)分子量とする。
(2)共重合体をNaOH水溶液に溶解させ2質量%水溶液を作成する。その際、水溶液のpHが12.5となるように予めNaOH水溶液のpHを調整しておく。2%水溶液を15分間撹拌し、その後35%HCl水溶液にて中和を行いpHを5.0とする。
共重合体を取り出し、その重量平均分子量(Mw)を後述するGPC測定条件によって測定し、反応後(分解後)分子量とする。
(3)反応前後のGPCチャートから加水分解率を算出する。
不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが高分子鎖(A)、高分子鎖(B)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする、本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体のうち、特に好ましい構造は、下記式(7)で示す構造である。
Figure 2015074666
式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。Rは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。nは、オキシエチレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数(好ましくは75〜500の数)である。mは、1〜500の数(好ましくは20〜500の数)である。
上記構造は、不飽和カルボン酸系単量体がアクリル酸又はメタクリル酸、(ポリ)アルキレングリコール鎖が(ポリ)エチレングリコール鎖、結合部位(X)が、チオ酢酸又はその金属塩に由来する硫黄原子を含む結合部位である構造であることが好ましい。
なお、上記式(7)において、不飽和カルボン酸系単量体単位のR及びCOOH基の位置は末端の水素原子側に描いているが、単量体単位ごとにおけるR及びCOOH基の位置は硫黄原子側に位置していてもよい。上記式(7)で示す構造では、単量体単位ごとにR及びCOOH基の位置が水素原子側であるか硫黄原子側であるかがランダムに決定される。
本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体としては、その取り扱い性や、上記重合体をセメント混和剤用途に使用した場合のセメント組成物の保持性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が100万以下であることが好適である。より好ましくは50万以下、更に好ましくは30万以下、更に好ましくは20万以下、更に好ましくは15万以下、更に好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下である。また、セメント混和剤用途に用いる場合、ある程度セメント粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは1000以上であることが好ましい。より好ましくは2000以上であり、更に好ましくは3000以上であり、特に好ましくは4000以上、最も好ましくは、5000以上である。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、更に好ましくは15万以下、更に好ましくは10万以下、更に好ましくは75000以下、更に好ましくは35000以下である。また、1000以上であることが好ましい。より好ましくは2000以上であり、更に好ましくは3000以上であり、特に好ましくは4000以上であり、最も好ましくは、5000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法>
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法の一例として、チオ酢酸(又はその金属塩)に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合について以下に説明する。
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、少なくとも1つの末端にヒドロキシル基末端を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)(好ましくは、モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖)を準備し、上記ヒドロキシル基末端に対してトシル化反応を行う工程(トシル化工程)、チオ酢酸又はその金属塩を反応させてチオアセチル化反応を行う工程(チオアセチル化工程)、チオアセチル化工程によって得られたチオアセチル基を加水分解する工程(加水分解工程)、末端にチオール基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和カルボン酸系単量体をブロック重合させる工程(ブロック重合工程)を行うことにより製造することができる。
このような(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
末端にチオール基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)をPAGチオール化合物ともいう。(ポリ)アルキレングリコールが(ポリ)エチレングリコールの場合は、PEGチオール化合物ともいう。
<トシル化工程>
トシル化工程では、少なくとも1つの末端にヒドロキシル基末端を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(好ましくは、モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール)のヒドロキシル基末端とトシル化剤とを反応させてトシル基を生成し、トシル化(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(好ましくはトシル化モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール)を得る。
上記トシル化工程において用いられるトシル化剤、反応条件としては、水酸基をトシル化できる限り特に限定されず、例えば、トシルクロライド(TsCl)をトシル化剤とし、ジクロロメタン(CHCl)等を反応溶媒として用い、適宜反応条件を設定すればよい。
<チオアセチル化工程>
チオアセチル化工程では、トシル化工程によって得られた、ヒドロキシル基末端がトシル化された、少なくとも1つの末端にトシル基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖のトシル基とチオアセチル化剤とを反応させてチオアセチル基を生成し、チオアセチル化(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(好ましくはチオアセチル化モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール)を得る。
上記チオアセチル化工程において用いられるチオアセチル化剤、反応条件としては、トシル基をチオアセチル化できる限り特に限定されず、例えば、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)をチオアセチル化剤とし、アセトニトリル(CHCN)を反応溶媒として用い、適宜反応条件を設定すればよい。
<加水分解工程>
加水分解工程では、チオアセチル化工程によって得られた、トシル基末端がチオアセチル化された、少なくとも1つの末端にチオアセチル基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖のチオアセチル基を加水分解してチオール基を生成し、チオール化(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(好ましくはチオール化モノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール)を得る。例えば、下記式(8)で示すPAGチオール化合物を得ることができる。
下記式(8)で示すPAGチオール化合物は、本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を生成する中間体として好ましいものである。
上記加水分解工程においも、チオアセチル基の加水分解が進行するように適宜反応条件を設定すればよい。
Figure 2015074666
式中、R、R、AO、nは上記と同様である。
上記PAGチオール化合物は、その取り扱い性や、上記化合物を用いて製造した重合体をセメント混和剤用途に使用した場合のセメント組成物の粘性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が50万以下であることが好適である。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは、3万以下である。また、セメント混和剤用途に用いる場合、ある程度Mwが大きい方が分散性が大きくなるという観点から、Mwは100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上であり、更に好ましくは500以上であり、特に好ましくは1000以上、最も好ましくは、2000以上である。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは、3万以下である。また、100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上であり、更に好ましくは500以上であり、特に好ましくは1000以上であり、最も好ましくは、2000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
上記PAGチオール化合物は、チオ酢酸又はその金属塩由来のメルカプト基を有することに起因して、ラジカル重合反応の連鎖移動剤として作用するものであり、ラジカル重合反応を用いた種々の重合体の製造に好適に用いることができる。
<ブロック重合工程>
上述したように、上記PAGチオール化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)(好ましくは、単量体(a))を含む不飽和カルボン酸系単量体成分をラジカル重合することにより、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
不飽和カルボン酸系単量体成分中、高分子鎖(A)を形成する不飽和カルボン酸系単量体が主体であることが好ましく、実質的にすべてが高分子鎖(A)を形成する不飽和カルボン酸系単量体であることが好ましい。
上記一般式(8)で表されるPAGチオール化合物を連鎖移動剤として用いて、重合体を製造する場合、PAGチオール化合物の硫黄原子(S)を介して不飽和カルボン酸系単量体成分が次々に付加して重合体部分が形成され、このようにして形成される重合体が主成分として生成することになる。
上記重合反応にはまた、通常の連鎖移動剤を併用してもよい。使用可能な連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
上記PAGチオール化合物以外に上記連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、適宜設定すればよいが、不飽和カルボン酸系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
単量体(a)の重合率を向上させるためには、単量体(a)のカルボキシル基の中和率を適切に設定することが重要である。単量体(a)の重合率向上のためにはカルボキシル基をできるだけ中和しない方が好ましい。しかしながら、カルボキシル基の中和率が低い場合、酸型のカルボキシル基とモノアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール系構成単位の酸素原子が水素結合し、水不溶性の中間体を形成することがあり、その結果として単量体(a)の重合率が低下することがある。また、単量体(a)のカルボキシル基の中和率を上げすぎた場合、単量体(a)の重合性が低下するので、その結果として単量体(a)の重合率が低下する。
単量体(a)のカルボキシル基の中和率は好ましくは0〜100mol%、更に好ましくは10〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%である。
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、例えば、セメント混和剤用途のように水溶液として使用されることが多い用途に用いる場合には、水溶液重合法によって重合することが好適である。
上記溶液重合のうち、水溶液重合では、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、重合後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アゾアミジン化合物系開始剤が好適である。
この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤(還元剤)を併用することもできる。例えば、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせが可能であり、有機系還元剤としては、L−アスコルビン酸(塩)、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸(塩)、エリソルビン酸エステル等を好適に用いることができる。これらのラジカル重合開始剤や促進剤(還元剤)はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、更に好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、更に好ましくは400モル以下である。
また低級アルコール類、芳香族若しくは脂肪族炭化水素類、エステル類又はケトン類を溶媒とする溶液重合や塊状重合では、ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等のアゾ系開始剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、後述するようにアゾ系開始剤が好適である。なお、この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
上記ラジカル重合開始剤の使用量としては、PAGチオール化合物や不飽和カルボン酸系単量体成分の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ラジカル重合開始剤が重合に供する不飽和カルボン酸系単量体成分に対して少なすぎると、ラジカル濃度が低すぎて重合反応が遅くなるおそれがあり、また逆に多すぎると、ラジカル濃度が高すぎて、硫黄原子に起因する重合反応より不飽和カルボン酸系単量体成分からの重合反応が優先し、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の収率を高めることができないおそれがある。したがって、上記ラジカル重合開始剤の使用量は、不飽和カルボン酸系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上、更に特に好ましくは0.5モル以上、最も好ましくは1モル以上であり、また、好ましくは50モル以下、より好ましくは20モル以下、更に好ましくは15モル以下、更により好ましくは10モル以下、特に好ましくは5モル以下、最も好ましくは3モル以下である。
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
また上記不飽和カルボン酸系単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されるものではなく、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法のいずれであってもよい。なお、ラジカル重合開始剤や連鎖移動剤は、反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また、目的に応じてこれらを組み合わせてもよいが、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記PAGチオール化合物の全量を反応容器に初期に一括投入しておき、そこに、不飽和カルボン酸系単量体成分を連続的に投入する方法により製造されることが好ましい。このような方法で製造すると、得られる重合体がセメント混和剤として用いたときにセメントの流動性をより向上させることができるものとなる。
上記重合反応においてはまた、所定の分子量の重合体を再現性よく得るために、重合反応を安定に進行させることが好適である。そのため、溶液重合では、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下(好ましくは0.01〜4ppm、より好ましくは0.01〜2ppm、更に好ましくは0.01〜1ppm)の範囲に設定することが好ましい。なお、溶媒に不飽和カルボン酸系単量体成分を添加した後に窒素置換等を行う場合には、不飽和カルボン酸系単量体成分をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが適当である。
上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
上記重合反応により得られた重合体は、水溶液状態で弱酸性以上(好ましくはpH4以上、更に好ましくはpH5以上、特に好ましくはpH6以上)のpH範囲に調整しておくことで取り扱いやすいものとすることができる。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、更に好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。
上記の重合反応により得られる反応生成物には、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の他、副生成物としての種々の重合体や未反応原料、原料に含まれる不純物を含むことがあるため、必要に応じて、個々の重合体を単離する工程に付してもよいが、通常、作業効率や製造コスト等の観点から、個々の重合体を単離することなく、各種用途に使用してもよい。
上記製造方法における各工程、すなわち、トシル化工程、チオアセチル化工程、加水分解工程、ブロック重合工程の好ましい反応形態を示すと、下記式のようになる。
下記式中、R、R、R、R、R、R、R、AO、m、nは、上記と同様である。
Figure 2015074666
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体、分散剤、セメント混和剤、及び、セメント組成物>
本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、例えば、接着剤、シーリング剤、各種重合体への柔軟性付与成分、洗剤ビルダー等の種々の用途に好適に用いることができることに加え、セメントや石膏のような無機微粒子を含む組成物において、無機微粒子を分散させる分散剤としても好適に用いることができる。
このような本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含む分散剤もまた、本発明の1つである。
中でも、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、上述したように極めて高度のセメント分散性能を発揮できることから、セメント混和剤用途に用いることが好適である。このように、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。更に、上記セメント混和剤、セメント及び水を含むセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
本発明のセメント混和剤としては、高減水率領域においても流動性、保持性及び作業性をバランスよく高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に使用することが可能であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
上記セメント混和剤をセメント組成物に使用する場合、その配合割合としては、本発明の必須成分である(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜8質量%であり、更に好ましくは0.05〜6質量%である。
上記セメント混和剤としてはまた、他のセメント添加剤と組み合わせて用いることもできる。他のセメント添加剤としては、例えば、以下に示すようなセメント添加剤(材)等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、オキシアルキレン系消泡剤や、AE剤を併用することが特に好ましい。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の固形分100質量部に対し、0.0001〜10質量部とすることが好適である。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンの重合体又はそれらの共重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸の共重合体及びその四級化合物等。
(2)高分子エマルジョン。
(3)遅延剤:グルコン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシル基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、上述の構成よりなり、セメント分散性(減水性)やスランプフロー等の性能に優れ、作業性等も良好であるため、無機微粒子を分散させる分散剤としてセメント混和剤用途等に好適に用いることができる。更に、ブロック構造によって分子構造がシンプルであり、また、工業的な製造に適するものである。
図1は、実施例、比較例におけるモルタル試験結果を示し、横軸をMAA個/SH、縦軸を共重合体1との添加量比としたグラフである。 図2は、実施例、比較例における加水分解試験結果を示し、試験前後のGPCチャートを概念的に示したものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例における各種測定は、以下のようにして行った。
<GPC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
試料濃度:溶離液で1%に調整した。
<LC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
試料濃度:溶離液で1%に調整した。
<CE分析法>
装置:ベックマンコールター MDQ
解析ソフト:32Karat
使用キャピラリー:シリカ素管、50cm EfectiveLength、75μm I.D、375μm O.D
溶離液:ホウ酸1.546gをイオン交換水498.45gに溶解させたもの
検出器:UV
電圧:20kV
キャピラリー温度:25℃
測定時間:60分
試料濃度:溶離液で2%に調整した。
<製造例1:PAGチオール化合物1の製造>
(1.トシル化工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、エチレンオキシドの平均付加モル数25のメトキシポリエチレングルコール(MPEG25)を11.32部、トシルクロライド(TsCl)を2.288部、トリエチルアミン(EtN)を1.518部、ジクロロメタン(CHCl)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、ろ液を減圧下で脱溶媒を実施し、MPEG25のトシル化体(MPEG25−OTs)を得た。
(2.チオアセチル化工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、MPEG25−OTsを12.86部、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)を1.371部、アセトニトリル(CHCN)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、減圧下で脱溶媒を実施しMPEG25のチオアセチル化体(MPEG25−SAc)を得た。
(3.加水分解工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、合成したMPEG25−SAcを11.90部、メタノール(MeOH)を50.00部仕込みMPEG25−SAcを溶解させ、1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を25.00部投入し10分間撹拌した後、1Nの塩酸(HCl)を25.00部投入しさらに10分間撹拌し、ジクロロメタンを投入し抽出を行い、有機層を回収し、減圧下で脱溶媒を実施しPAGチオール化合物1を得た。得られた目的化合物のNMR分析結果は、MPEG25一分子に対する平均SH導入数は1.0個であった。
<製造例2、3:PAGチオール化合物2、3の製造>
製造例2、3は製造例1と同様の処方でPAGチオール化合物2、3を合成した。各原料の仕込み量は表1〜3に示す通りである。
Figure 2015074666
Figure 2015074666
Figure 2015074666
下記に表1〜3における記号をまとめると、MPEG25、MPEG50、MPEG75は、それぞれエチレンオキシドの平均付加モル数25、50、75のメトキシポリエチレングルコール、MPEG25−OTs、MPEG50−OTs、MPEG75−OTsは、それぞれMPEG25、50、75のトシル化体、MPEG25−SAc、MPEG50−SAc、MPEG75−SAcは、それぞれMPEG25、50、75のチオアセチル化体である。
以下の表においても同様である。
<比較製造例1、2:PAGチオール化合物4、5の製造>
(1.脱水エステル化工程)
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、エチレンオキシドの平均付加モル数25のメトキシポリエチレングリコール(MPEG25)を100.00部、3−メルカプトイソ酪酸(MiBA)を11.67部、p−トルエンスルホン酸一水和物(PTS・1HO)を2.233部、フェノチアジン(PTZ)0.5584部、シクロへキサン(CyH)を5.584部仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加え、65.0時間水を留去しながら加温還流し反応を行った。
(2.脱溶媒工程)
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、30%NaOH水溶液1.487部にイオン交換水(PW)260.57部を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、PAGチオール化合物4の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果は、MPEGの消費率92.0%、MPEG25一分子に対する平均SH導入数は0.92個であった。
比較製造例2は比較製造例1と同様の処方で合成した。各原料の仕込み量は表4に示す通りである。
Figure 2015074666
<製造例4〜10:共重合体1〜7の製造>
(4.ブロック重量工程)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、そこへメタクリル酸(MAA)2.145部とイオン交換水(PW)8.580部からなる水溶液(A)(酸水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にPAGチオール化合物1を2.855部とイオン交換水6.662部からなる水溶液(B)(PAGチオール水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にアゾ開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩[2,2’−azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride](和光純薬工業株式会社製 V−50)0.06742部とイオン交換水9.758部からなる水溶液(C)を5.0時間かけ滴下した。その後、1時間引続いて80℃に温度を維持した後、冷却して、重合を終了し、本発明の共重合体1(好ましい実施形態であるセメント混和剤用共重合体を含む水溶液)を得た。GPCとLC、CEにより反応率(消費率)%を求めたところ、それぞれPAGチオール化合物1の反応率(表中では消費率(%)のチオールの欄に示した)は95.00%、メタクリル酸の反応率(表中では消費率(%)の酸の欄に示した)は95.00%であった。
製造例5〜10は製造例4と同様の処方で共重合体2〜7を合成した。各原料の仕込み量は表5に示す通りである。
Figure 2015074666
表中、MAA個/SHはチオール末端に結合したMAAの重合度を示す。すなわち、(不飽和カルボン酸系単量体の個数)/(SHの個数)の値が上記式におけるmであり、1つのSHあたりの不飽和カルボン酸系単量体の平均重合個数となる。
また、PAGチオール水溶液におけるPAGチオール化合物の量をPAGチオール水溶液のチオールの欄に記載し、酸水溶液におけるメタクリル酸の量を酸水溶液の酸の欄に記載した。
<比較製造例3〜7:共重合体8〜12の製造>
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、そこへメタクリル酸(MAA)2.145部とイオン交換水(PW)8.580部からなる水溶液(A)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にPAGチオール化合物4水溶液(B)(PAGチオール水溶液)9.517部を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にアゾ開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩[2,2’−azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride](和光純薬工業株式会社製 V−50)0.06742部とイオン交換水9.758部からなる水溶液(C)を5.0時間かけ滴下した。その後、1時間引続いて80℃に温度を維持した後、冷却して、重合を終了し、比較の共重合体8(セメント混和剤用共重合体を含む水溶液)を得た。GPCとLC、CEにより反応率(消費率)を求めたところ、それぞれPAGチオール化合物4の反応率(表中では消費率(%)のチオールの欄に示した)は95.00%、メタクリル酸の反応率(表中では消費率(%)の酸の欄に示した)は95.00%であった。
比較製造例4〜7は比較製造例3と同様の処方で共重合体9〜12を合成した。各原料の仕込み量は表6に示す通りである。
Figure 2015074666
表中、MAA個/SHはチオール末端に結合したMAAの重合度を示す。
また、PAGチオール水溶液におけるPAGチオール化合物の量をPAGチオール水溶液のチオールの欄に記載し、酸水溶液におけるメタクリル酸の量を酸水溶液の酸の欄に記載した。
<実施例1〜5、比較例1〜5>
共重合体1、2、5〜12を用いてモルタル試験を実施した。
<モルタル試験方法>
JIS−R5201−1997に準拠した機械練り用練混ぜ機、さじ、フローテーブル、フローコーンおよび突き棒を使用した。この際、特記しない限りは、JIS−R5201−1997に準拠してモルタル試験を行なった。
試験に使用した材料およびモルタルの配合は、太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント587g、JIS−R5201−1997に準拠したセメント強さ試験用標準砂1350g、セメント混和剤用共重合体水溶液と消泡剤とを含むイオン交換水264.1g、である。共重合体水溶液中の固形分[不揮発成分]は、適量の共重合体水溶液を130℃で加熱乾燥することにより揮発成分を除去して測定し、セメントと配合する際に所定量の固形分[不揮発成分]が含まれるように共重合体水溶液を計量して使用した。消泡剤は、気泡がモルタル組成物の分散性に及ぼす影響を避けることを目的に添加し、空気量が3.0%以下になるようにした。具体的にはオキシアルキレン系消泡剤を、セメント混和剤用共重合体に対して0.1%になるような量で使用した。なお、モルタルの空気量が3.0%より大きい場合には、空気量が3.0%以下になるように消泡剤の添加量を調節した。
モルタルは、室温(20±2℃)にてホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)を用いて、4分30秒間で調製した。具体的には、練り鉢に規定量のセメントを入れ、練混ぜ機に取り付け低速で始動させる。パドルを始動させて15秒後に規定量のセメント混和剤用共重合体および消泡剤を含んだ水を15秒間で入れる。その後、砂を入れ、低速で30秒間練混ぜた後、高速にして、引き続き30秒間練混ぜを続ける。練り鉢を練混ぜ機から取り外し、120秒間練混ぜを休止した後、再度練り鉢を練混ぜ機へ取り付け、高速で60秒間練混ぜた後(1番始めに低速で始動させてから4分30秒後)、さじで左右各10回かき混ぜる。練混ぜたモルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に分けて詰める。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げた後、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。
表7に、試験実施サンプル(共重合体1、2、5〜12)におけるMAA個/SHの値(1個のチオール基(SH)に付加重合したMAAの個数の平均値)、試験実施サンプルと共重合体1との添加量比(モルタル試験における共重合体(1)の添加量を1.000とし、それを基準として計算したモルタル試験における各共重合体の添加量)を示した。
図1には、横軸をMAA個/SH、縦軸を共重合体1との添加量比としたグラフを示した。縦軸の数値が低い方がセメント流動性が高い。これにより、少なくとも鎖長(エチレンオキシドの平均付加モル数)25、75のいずれも0を超え40個/SH以下の範囲では非エステルタイプはエステルタイプと比較して、流動性が高くなることが判明した。
Figure 2015074666
<実施例6〜10、比較例6〜10>
共重合体1、2、5〜12を用いて加水分解試験を実施した。
<加水分解試験方法>
共重合体をNaOH水溶液に溶解させ2%水溶液を作成した。その際、水溶液のpHが12.5となるように予めNaOH水溶液のpHを調整しておく。2%水溶液を15分間撹拌し、その後35%HCl水溶液にて中和を行いpHを5.0とした。GPCにて反応前後のチャートから加水分解率を算出した。
分解率計算方法を次に示す。
「分解前のポリマーArea」、「分解後のポリマーArea」は、それぞれ加水分解前(試験前)、加水分解後(試験後)におけるGPCチャートの分子量分布曲線の積分値(GPCチャートのX軸と分子量分布曲線とによる領域の面積)を表す。
Figure 2015074666
表8に、試験実施サンプルの加水分解率を示した。
図2には、GPCチャートを載せた。
エステル型は試験後、ポリマーの分子量が低下し原料MPEGのピークが増加する。このことから加水分解が進行していることがわかる。しかし、非エステル型では試験前後でチャートに変化がなく加水分解が実質的に進行しないことが判明した。
Figure 2015074666

Claims (7)

  1. 不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
    該(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、
    前記該高分子鎖(A)及び前記高分子鎖(B)が、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)の順で結合部位(X)を介して結合した構造を有し、
    前記該結合部位(X)が、高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成せず、かつ、硫黄原子を含むことを特徴とする(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体。
  2. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、
    下記一般式(1):
    Figure 2015074666
    (式中、Xは、有機残基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。R、R、R、Rは、少なくとも一つが−COOMであり、残りのR、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は、−(CH)zCOOM(−(CH)zCOOMは、COOM又はその他の−(CH)zCOOMと無水物を形成していてもよい)を表し、zは同一又は異なって、0〜2の整数を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数である。mは、1〜500の数である。M及びMは同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体。
  3. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、硫黄原子の含有量が共重合体全体のうち0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体。
  4. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、共重合体の2質量%アルカリ水溶液中での15分後の高分子鎖(A)と高分子鎖(B)への分解率が10質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むことを特徴とする分散剤。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
  7. 請求項6に記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
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