「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態の流体圧緩衝器を図1〜図3を参照して以下に説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態の流体圧緩衝器を示す部分断面図である。図2は、本発明に係る第1実施形態の流体圧緩衝器の第1ピストン体を示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は背面図である。図3は、本発明に係る第1実施形態の流体圧緩衝器の第2ピストン体を示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は背面図である。
第1実施形態の流体圧緩衝器11は、自動車のサスペンション装置に用いられるもので、図1に要部の断面を示すように、流体である作動油が封入されたシリンダ12と、このシリンダ12内に摺動可能に設けられた略円板状のピストン13と、一端がシリンダ12の外部へ延出され他端がピストン13に連結されたピストンロッド14とを有している。
ピストンロッド14のシリンダ12内側の他端には、中間部の軸部14aよりも小径の嵌合軸部14bと、嵌合軸部14bの軸部14aとは反対側のメネジ14cとが形成されており、ピストン13はピストンロッド14の嵌合軸部14bに保持されている。
ピストン13は、2つの円板状の第1ピストン体(ピストン体)15および第2ピストン体(ピストン体)16からなり、これら第1ピストン体15および第2ピストン体16を同軸上に配置し軸方向に重ね合わせて結合して構成されている。具体的には、第1ピストン体15の軸方向一側の結合面(平面図,シール面)15Aと、第2ピストン体16の軸方向一側の結合面(平面図,シール面)16Aとを突き合わせ、第1ピストン体15の軸方向他側の非結合面15Bと、第2ピストン体16の軸方向他側の非結合面16Bとを反対向きにして、これら第1ピストン体15および第2ピストン体16が結合されることでピストン13が構成されている。言い換えれば、ピストン13は、第1ピストン体15および第2ピストン体16の結合体として構成されている。
第1ピストン体15は、焼結金属製のもので、ピストン13におけるピストンロッド14の軸方向の一端延出側に配置される。第1ピストン体15は、中央に、ピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿入される貫通穴17が軸方向に貫通して形成されている。
第1ピストン体15の第2ピストン体16とは反対側の端面である非結合面15Bには、図2に示すように、貫通穴17の周囲に、全周に亘って連続する円環状の中央側突出部18が、径方向の外端側に、全周に亘って連続する円環状の外周側突出部19が、いずれも第1ピストン体15と同心状をなして軸方向に突出形成されている。その結果、非結合面15Bには、中央側突出部18と外周側突出部19との間に、全周に亘って連続する円環状の環状凹部22が軸方向に凹んで形成されることになり、また、外周側突出部19の径方向外側に、全周に亘って連続する円環状の環状段差部23が軸方向に凹んで形成されている。他方、第1ピストン体15の第2ピストン体16側の端面である結合面15Aは、全面的に略平面とされている。
そして、第1ピストン体15には、第2ピストン体16とは反対側の端面である非結合面15Bの外周側突出部19よりも径方向内側且つ中央側突出部18よりも径方向外側に一端開口部20aが開口して、軸方向に貫通する第1連通路(連通路)20が、円周方向に等間隔で複数(具体的には5カ所)形成されている。つまり、すべての第1連通路20は、第1ピストン体15の径方向の中間部に形成されており、一端開口部20aが環状凹部22に形成されている。
ここで、すべての第1連通路20の一端開口部20aは、同一流路断面積となる丸穴形状をなしている。また、すべての第1連通路20の他端開口部20bは、同一流路断面積となる、第1ピストン体15の中心側が幅狭の略扇形形状をなしており、一端開口部20aよりも大きい流路断面積となっている。すべての第1連通路20において、一端開口部20aが最小流路断面積となっている。
他端開口部20bは、より詳しくは、他端開口部20bにおける第1ピストン体15の外径側の端部にあって円周方向に沿う直線状部20baと、直線状部20baの両端部から第1ピストン体15の中心側に互いに平行に延出する一対の直線状部20bbと、これら直線状部20bbの直線状部20baとは反対側から第1ピストン体15の中心側ほど互いに近接するように延出する一対の傾斜部20bcと、これら傾斜部20bcの直線状部20bbとは反対側同士を結ぶ第1ピストン体15の中心側に凸の円弧状部20bdとからなっている。
また、第1ピストン体15には、非結合面15Bの外周側突出部19よりも径方向外側に一端開口部21aが開口して、軸方向に貫通する第2通路(通路)21が、隣り合う第1連通路20同士の中央に配置されるように円周方向に等間隔で複数(具体的には5カ所)形成されている。
つまり、すべての第2連通路21は、第1ピストン体15の径方向の中間部に形成されており、一端開口部21aが環状段差部23に形成されている。また、すべての第2連通路21の一端開口部21aは、同一流路断面積となる角穴形状であって、第1ピストン体15の円周方向に沿って長い長穴形状をなしている。また、すべての第2連通路21の他端開口部21bは、同一流路断面積となる、第1ピストン体15の中心側が幅狭の略扇形形状をなしており、一端開口部21aよりも大きい流路断面積となっている。すべての第2連通路21において、一端開口部21aが最小流路断面積となっている。ここで、一端開口部20aおよび一端開口部21aのうち、内周側の一端開口部20aが上記のように丸穴、外周側の一端開口部21aが長穴となっている。
一端開口部21aは、より詳しくは、一端開口部21aにおける第1ピストン体15の外径側の端部にあって円周方向に沿う直線状部21aaと、直線状部21aaの両端部から第1ピストン体15の中心側に互いに平行に延出する一対の直線状部21abと、これら直線状部21abの直線状部21aaとは反対側同士を結ぶ、直線状部21aaと平行な直線状部21acとからなっている。
他端開口部21bは、より詳しくは、他端開口部21bにおける第1ピストン体15の外径側の端部にあって円周方向に沿う直線状部21baと、直線状部21baの両端部から第1ピストン体15の中心側に互いに平行に延出する一対の直線状部21bbと、これら直線状部21bbの直線状部21baとは反対側から第1ピストン体15の中心側ほど互いに近接するように延出する一対の傾斜部21bcと、これら傾斜部21bcの直線状部21bbとは反対側同士を結ぶ第1ピストン体15の中心側に凸の円弧状部21bdとからなっている。
また、軸方向長が長いこの第1ピストン体15の外周面には、軸線方向に交互に凹凸が配置される形状の装着部24が形成されており、この装着部24には、シリンダ12の内周面に摺接してシリンダ12との隙間をシールする四フッ化エチレンバンド等の樹脂製の円環状のピストンバンド(摺動部材)25が装着される。ピストンバンド25は、装着部24よりも大径の状態で装着部24に被せられ、加熱されることで径方向に縮小して装着部24に接合される。つまり、このピストンバンド25は、一方の第1ピストン体15の外周に設けられる。
第1ピストン体15の結合面15Aの貫通穴17側には、第2ピストン体16に結合する際に円周方向に所定の位相関係で位置決めするための複数(具体的には5カ所)の軸方向に凹む凹部26が第2連通路21と円周方向の位相を合わせて形成されている。すべての凹部26は同一形状をなし、軸直交断面が略矩形状をなしており、第1連通路20および第2連通路21よりも第1ピストン体15における内周側に設けられている。なお、第1ピストン体15の貫通穴17の凹部26の間位置は、第1ピストン体15の一方の結合面15Aから他方の非結合面15Bまで連続して肉が延びている。また、第1ピストン体15の非結合面15Bの環状凹部22には、その底部から軸方向に外周側突出部19よりも低く突出する円弧状突起部27が、円周方向に隣り合う開口部20a同士の中央位置にそれぞれ形成されている。
凹部26は、より詳しくは、貫通穴17から第1ピストン体15の外径側に互いに平行に延出する一対の平面部26aと、これら平面部26aの貫通穴17とは反対側同士を結ぶ円周方向に沿う平面部26bと、これら平面部26a,26bに直交する平面部26cとからなっている。
第1ピストン体15は、以上の形状に、焼結およびサイジング加工により形成される。
第2ピストン体16も、焼結金属製のもので、図1に示すように、第1ピストン体15に対して軸方向長が異なっており、具体的には第1ピストン体15よりも軸方向長が短くて、ピストン13におけるピストンロッド14の軸方向の他端側(延出側とは反対)に配置される。第2ピストン体16には、中央に、ピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿入される貫通穴30が軸方向に貫通して形成されている。
図3に示すように、第2ピストン体16の第1ピストン体15とは反対側の端面である非結合面16Bには、貫通穴30の周囲に、全周に亘って連続する円環状の中央側突出部31が、径方向の外端側に、全周に亘って連続する円環状の外周側突出部32が、いずれも第2ピストン体16と同心状をなして軸方向に突出形成されている。その結果、非結合面16Bには、中央側突出部31と外周側突出部32との間に、全周に亘って連続する円環状の環状凹部33が軸方向に凹んで形成され、外周側突出部32の径方向外側に、全周に亘って連続する円環状の環状段差部34が軸方向に凹んで形成されている。他方、第2ピストン体16の第1ピストン体15側の端面である結合面16Aは、全面的に略平面とされている。
そして、第2ピストン体16には、第1ピストン体15とは反対側の端面である非結合面16Bの外周側突出部32よりも径方向外側に一端開口部35aが開口して軸方向に貫通する第1連通路(連通路)35が、円周方向に等間隔で複数(第1連通路20と同数)形成されている。つまり、すべての第1連通路35は、第2ピストン体16の径方向の中間部に形成されており、一端開口部35aが環状段差部34に形成されている。
すべての第1連通路35の一端開口部35aは、同一流路断面積となる角穴形状であって、第2ピストン体16の円周方向に沿って長い長穴形状をなしている。また、すべての第1連通路35の他端開口部35bは、同一流路断面積となる、第2ピストン体16の中心側が幅狭の略扇形形状をなしており、一端開口部35aよりも大きい流路断面積となっている。すべての第1連通路35において、一端開口部35aが最小流路断面積となっている。なお、第2ピストン体16のすべての第1連通路35の他端開口部35bは、第1ピストン体15の第1連通路20の他端開口部20bと同形状をなしており、第1ピストン体15および第2ピストン体16を所定の回転位置で位置決めして結合する際に、一対一で対応する他端開口部20bと合致する。その際に、第1ピストン体15の結合面15Aおよび第2ピストン体16の結合面16Aが、いずれも平面部であって第1連通路20および第1連通路35の連通部分の全周囲で互いに密着することになり、よって、この連通部分からの流体の流出を遮断するシール面となる。
一端開口部35aは、より詳しくは、一端開口部35aにおける第2ピストン体16の外径側の端部にあって円周方向に沿う直線状部35aaと、直線状部35aaの両端部から第2ピストン体16の中心側に互いに平行に延出する一対の直線状部35abと、これら直線状部35abの直線状部35aaとは反対側同士を結ぶ、直線状部35aaと平行な直線状部35acとからなっている。
他端開口部35bは、より詳しくは、他端開口部35bにおける第2ピストン体16の外径側の端部にあって円周方向に沿う直線状部35baと、直線状部35baの両端部から第2ピストン体16の中心側に互いに平行に延出する一対の直線状部35bbと、これら直線状部35bbの直線状部35baとは反対側から第2ピストン体15の中心側ほど互いに近接するように延出する一対の傾斜部35bcと、これら傾斜部35bcの直線状部35bbとは反対側同士を結ぶ第2ピストン体15の中心側に凸の円弧状部35bdとからなっている。
また、第2ピストン体16には、非結合面16Bの外周側突出部32よりも径方向内側且つ中央側突出部31よりも径方向外側に一端開口部36aが開口して軸方向に貫通する第2連通路(連通路)36が、隣り合う第1連通路35同士の中央に配置されるように円周方向に等間隔で複数(第2連通路21と同数)形成されている。つまり、すべての第2連通路36は、第2ピストン体16の径方向の中間部に形成されており、一端開口部36aが環状凹部33に形成されている。
すべての第2連通路36の一端開口部36aは、同一流路断面積となる丸穴形状をなしている。よって、一端開口部35aおよび一端開口部36aのうち、内周側の一端開口部36aが上記のように丸穴、外周側の一端開口部35aが長穴となっている。また、すべての第2連通路36の他端開口部36bは、同一流路断面積となる、第2ピストン体16の中心側が幅狭の略扇形形状をなしており、一端開口部36aよりも大きい流路断面積となっている。すべての第2連通路36において、一端開口部36aが最小流路断面積となっている。なお、第2ピストン体16のすべての第2連通路36の他端開口部36bは、第1ピストン体15の第2連通路21の他端開口部21bと同形状をなしており、第1ピストン体15および第2ピストン体16の位置決め状態での結合時に、一対一で対応する他端開口部21bと合致する。その際に、第1ピストン体15の結合面15Aおよび第2ピストン体16の結合面16Aが、いずれも平面部であって第2連通路21および第2連通路36の連通部分の全周囲で互いに密着することになり、よって、この連通部分からの流体の流出を遮断するシール面となる。
他端開口部36bは、より詳しくは、他端開口部36bにおける第2ピストン体16の外径側の端部にあって円周方向に沿う直線状部36baと、直線状部36baの両端部から第2ピストン体16の中心側に互いに平行に延出する一対の直線状部36bbと、これら直線状部36bbの直線状部36baとは反対側から第2ピストン体15の中心側ほど互いに近接するように延出する一対の傾斜部36bcと、これら傾斜部36bcの直線状部36bbとは反対側同士を結ぶ第2ピストン体16の中心側に凸の円弧状部36bdとからなっている。
なお、第2ピストン体16の外周面には、ピストンバンド25を装着するための装着部は形成されていない。つまり、軸方向長が長い第1ピストン体15のみにピストンバンド25を装着する装着部24が設けられている。また、第2ピストン体16の結合面16Aの貫通穴30側には、第1ピストン体15に結合する際に凹部26に嵌合する位置決め用の軸方向に突出する凸部38が1つだけ第2連通路36と円周方向の位相を合わせて形成されている。凸部38は、軸直交断面が略矩形状をなしており、軸方向高さは凹部26の軸方向深さよりも低く、いずれの凹部26に対しても実質的に円周方向(回転方向)に隙間がない状態で嵌合される。
凸部38は、より詳しくは、貫通穴30の軸線方向に延長される湾曲面部38aと、湾曲面部38aの円周方向の両端から第2ピストン体16の外径側に互いに平行に延出する一対の平面部38bと、これら平面部38bの湾曲面部38aとは反対側同士を結ぶ円周方向に沿う平面部38cと、軸方向先端の頂上平面部38dとからなっている。
ここで、第1ピストン体15の結合面15Aに設けられた凹部26および第2ピストン体16の結合面16Aに設けられた凸部38が、第1ピストン体15および第2ピストン体16を所定の回転位置で位置決めし、この位置からの相対回転を規制する係合部(回転規制手段)39を構成する。上記したように、凹部26は第1ピストン体15における第1連通路20および第2連通路21よりも内周側に設けられており、凸部38も第2ピストン体16における第1連通路35および第2連通路36よりも内周側に設けられている。その結果、係合部39が、第1ピストン体15および第2ピストン体16における第1連通路20,35および第2連通路21,36よりも内周側に設けられている。なお、第2ピストン体16の貫通穴30は、全周に亘って第2ピストン体16の一方の結合面16Aから他方の非結合面16Bまで連続して肉が延びている。また、第2ピストン体16の非結合面16Bの環状凹部33には、その底部から軸方向に外周側突出部32よりも低く突出する円弧状突起部37が、円周方向に隣り合う開口部36a同士の中央位置にそれぞれ形成されている。
第2ピストン体16は、以上の形状に、焼結およびサイジング加工により形成される。
上記したように、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、貫通穴17,30の位置を合わせて結合面15A,16A同士を当接させる結合時に、係合部39を構成する凸部38が凹部26に嵌合することになり、その際に、凸部38の一対の平面部38bのいずれか一方が凹部26の一対の平面部26aのいずれか一方に、一対の平面部38bのいずれか他方が一対の平面部26aのいずれか他方にそれぞれ当接する。これにより、第1ピストン体15および第2ピストン体16が、互いに回転方向(円周方向)に所定の回転位置で位置決めされる。なお、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、凸部38をいずれの凹部26と嵌合させても、円周方向に位置決めされ、円周方向の相対回転が規制されることになる。
ここで、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、凸部38をいずれの凹部26と嵌合させても、第1ピストン体15の第1連通路20と第2ピストン体16の第1連通路35とが互いに開口部20bおよび開口部35bの位置を合わせて連通して第1流体通路(流体通路)40を形成することになり、このような第1流体通路40がピストン13において円周方向に等間隔で複数(具体的には5カ所)形成される。また、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、凸部38をいずれの凹部26と嵌合させても、第1ピストン体15の第2連通路21と第2ピストン体16の第2連通路36とが互いに開口部21bおよび開口部36bの位置を合わせて連通して第2流体通路(流体通路)41を形成することになり、このような第2流体通路41がピストン13において円周方向に等間隔で複数(第1流体通路40と同数)形成される。
第1ピストン体15の第1流体通路40の外端部となる第1連通路20の流路断面積と第2ピストン体16の第1流体通路40の外端部となる第1連通路35の流路断面積とが異なっており、具体的には、第1連通路20の流路断面積の最狭部となる開口部20aよりも第1連通路35の流路断面積の最狭部となる開口部35aの方が小さくなっている。同様に、第1ピストン体15の第2流体通路41の外端部となる第2連通路21の流路断面積と第2ピストン体16の第2流体通路41の外端部となる第2連通路36の流路断面積とが異なっており、具体的には、第2連通路21の流路断面積の最狭部となる開口部21aよりも第2連通路36の流路断面積の最狭部となる開口部36aの方が小さくなっている。これにより、第1ピストン体15および第2ピストン体16のうちのいずれか一方である第2ピストン体16に、第1流体通路40を構成する第1連通路20,35の最小面積部である開口部35aと、第2流体通路41を構成する第2連通路21,36の最小面積部である開口部36aとが両方設けられている。
また、図1に示すように、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、結合時に、貫通穴17および貫通穴30を連続する一つの挿通孔42とし、ピストン13はこの挿通孔42にピストンロッド14を挿通させる。
第1ピストン体15の第2ピストン体16とは反対側には、減衰力を発生させるための複数のディスクバルブ43が積層状態で配置されており、第2ピストン体16の第1ピストン体15とは反対側にも、減衰力を発生させるための複数のディスクバルブ44が積層状態で配置されている。
ディスクバルブ43は、中央にピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿通される挿通穴43aが形成された有孔円板状をなしており、第1流体通路40の第1ピストン体15側の開口部20aを覆い且つ第2流体通路41の第1ピストン体15側の開口部21aを覆うことのない大きさとされ、第1ピストン体15の弁座としての外周側突出部19に離着座することで第1流体通路40を開閉する。
ディスクバルブ44も、中央にピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿通される挿通穴44aが形成された有孔円板状をなしており、第2流体通路41の第2ピストン体16側の開口部36aを覆い且つ第1流体通路40の第2ピストン体16側の開口部35aを覆うことのない大きさとされ、第2ピストン体16の弁座としての外周側突出部32に離着座することで第2流体通路41を開閉する。
複数のディスクバルブ43は、上記したように第1ピストン体15の非結合面15Bに形成された環状の弁座としての外周側突出部19に当接して外周側突出部19の内周側に形成された第1連通路20および第1連通路35からなる第1流体通路40を閉じることになり、流体圧緩衝器11の縮み側にピストン13が移動すると、差圧で弾性変形し外周側突出部19から離れて、縮み側の第1連通路20および第1連通路35からなる複数の第1流体通路40を開く。なお、複数のディスクバルブ43は、外周側突出部19の外周側に形成された第2流体通路41は常時開放する。
他方、複数のディスクバルブ44は、上記したように第2ピストン体16の非結合面16Bに形成された環状の弁座としての外周側突出部32に当接して外周側突出部32の内周側に形成された第2連通路21および第2連通路36からなる第2流体通路41を閉じることになり、流体圧緩衝器11の伸び側にピストン13が移動すると、差圧で弾性変形し外周側突出部32から離れて、伸び側の第2連通路21および第2連通路36からなる複数の第2流体通路41を開く。なお、複数のディスクバルブ44は、外周側突出部32の外周側に形成された第1流体通路40は常時開放する。
複数のディスクバルブ43のピストン13とは反対側にはディスクバルブ43よりも小径のスペーサ46が配置されており、このスペーサ46のピストン13とは反対側にはスペーサ46よりも大径のストッパ47が配置されている。スペーサ46は、中央にピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿通される挿通穴46aが形成された有孔円板状をなしており、ストッパ47も、中央にピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿通される挿通穴47aが形成された有孔円板状をなしている。ストッパ47は、弾性変形するディスクバルブ43のピストン13とは反対側に当接することでディスクバルブ43のそれ以上の変形を規制する。同様に、複数のディスクバルブ44のピストン13とは反対側にスペーサ48が、その外側にストッパ49が配置されている。スペーサ48も、中央にピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿通される挿通穴48aが形成された有孔円板状をなしており、ストッパ49も、中央にピストンロッド14の嵌合軸部14bが実質的に隙間なく挿通される挿通穴49aが形成された有孔円板状をなしている。
ピストンロッド14には、その嵌合軸部14bが、一方のストッパ47、一方のスペーサ46、一方のディスクバルブ43、一方のピストン体15、他方のピストン体16、他方のディスクバルブ44、他方のスペーサ48、他方のストッパ49に挿入されることになり、この状態で他方のストッパ49よりも外に突出するメネジ14cにナット51が螺合される。これにより、ピストンロッド14の軸部14aの嵌合軸部14b側の段部14dおよびナット51で、両ストッパ47,49、両スペーサ46,48、両側のディスクバルブ43,44およびピストン13が挟持されることになり、これらがピストンロッド14に締結される。このとき、ピストン13は、第1ピストン体15が軸部14aの段部14d側に第2ピストン体16がナット51側に配置される。
このように、ピストンロッド14へナット51により2つのピストン体15,16を締結することで2つのピストン体15,16が結合される。言い換えれば、ピストンロッド14の他端には、2つのピストン体15,16およびディスクバルブ43,44を締結するナット51が設けられており、ピストン13は、ピストンロッド14に挿通されナット51により固定される。そして、ピストンロッド14に取り付けられた状態で、ピストン13の軸方向両面には、減衰力を発生するディスクバルブ43,44が設けられることになる。
ピストンロッド14との接触面を構成する第1ピストン体15の貫通穴17の内周面には、径方向に凹む凹部26が軸方向の位置を合わせて円周方向に断続的に複数形成されており、ピストンロッド14との接触面を構成する第2ピストン体16の貫通穴30の内周面には径方向に凹む部分が一切形成されていないため、ピストン13のピストンロッド14が挿通される挿通孔42には、円周方向の凹部26の位置を除いて、ピストン13の一方の非結合面15Bから他方の非結合面16Bまで軸方向全長に亘って連続して延びる肉からなって、ナット51の締め付け軸力を受ける軸力受け部52が形成されている。
ここで、上記した特許文献1に記載された従来技術1においては、ピストンを製造する場合に、2つのピストン体の外周に両方に跨って装着部を形成し、この装着部に摺動部材を装着する必要があるので、装着部の加工時にピストン体同士が位置ずれしないように、ピストン体同士を圧入して貼り合わせ一体化する必要があったため、圧入の工数がかかってコスト高になってしまうという問題があった。つまり、2つのピストン体にまたがってピストンバンドを装着するので、圧入後にサイジング加工が必要であり、詳しくは、2つのピストン体を焼結により製作し、それぞれのピストン体をサイジング加工し、これら2つのピストン体を圧入して一体化し、一体化後にさらにサイジング加工して、ピストンバンドを装着するという工程が必要であった。
また、他の従来技術2として、米国特許第5259294号明細書がある。この従来技術2においては、凹状のピストン体の内部に凸状のピストン体を圧入嵌合して、ピストンを構成している。このため、やはり、圧入の工数がかかってコスト高になってしまうという問題があった。加えて、従来技術2においては、凹状のピストン体には縮み側の連通路と伸び側の連通路とが形成されているものの、凸状のピストン体には伸び側の連通路のみが形成されており、縮み側の連通路を凹状のピストン体との間に形成する構造となっている。また、従来技術2においては、一方の凸状のピストン体のみがピストンロッドと接触し、他方の凹状のピストン体はピストンロッドではなく一方のピストン体の外周と接触している。このため、圧入なら成り立つが、ナットによる締め上げでは軸力がでないという問題があった。
さらに、他の従来技術3として、特許第3383865号公報がある。この従来技術3においては、3つの部材でピストンを構成している。しかしながら、実質的にピストンというのはピストン15のみで、ピストン15を挟むように設けられる弁座部材26,27はディスクの外形を大きくするために設けられたアダプタ部材となっている。つまり、アダプタ部材には、縮み側連通路および伸び側連通路のいずれか一方しか形成されておらず、アダプタ部材の外周がシリンダとの間に環状の連通路を形成している。このように3つの部材でピストンを構成しているため、部品点数が多くなってしまう。また、3つの部材からなるピストンは、ピストンロッドが挿通される挿通孔にピストンの一方の面から他方の面まで連続して延びる肉からなる部分がないため、ナットの締め付け軸力を受けることができない。
これに対して、第1実施形態によれば、一方または他方のピストン体15の外周に、摺動部材25が設けられているため、従来技術1,2のように、2つのピストン体を圧入して貼り合わせる必要がなく、各ピストン体15,16の結合面15A,16Aの回転規制手段39で各ピストン体15,16の相対回転を規制しつつ、ナット51でピストンロッド14の他端に、各ピストン体15,16およびディスクバルブ43,44を締結することができるため、工数を低減できて低コストで製造でき、ピストン13の作りやすさを向上させることにより、生産性を向上させることができる。
詳しくは、2つのピストン体15,16を焼結により製作し、それぞれのピストン体15,16をサイジング加工し、一方のピストン体15に摺動部材25を装着し、その後、回転規制手段39で各ピストン体15,16の相対回転を規制しつつ、ナット51でピストンロッド14の他端に各ピストン体15,16およびディスクバルブ43,44を締結するという工程で済むことになり、工数を低減できて低コストで製造できる。
また、縮み側の連通路20,35および伸び側の連通路21,36がそれぞれ複数設けられた2つのピストン体15,16でピストン13を構成し、言い換えれば、ピストン13は結合面15A,15Bを有する2つのピストン体15,16からなり、さらに言い換えれば、ピストン13は2つのピストン体15,16の結合体として構成されるため、3つのピストン体でピストンを構成する従来技術3に対して部品点数を低減できる。
また、第1実施形態によれば、ピストン13のピストンロッド14が挿通される挿通孔42には、ピストン13の一方の面15Bから他方の面16Bまで連続して延びる肉からなりナット51の締め付け軸力を受ける軸力受け部52が設けられており、言い換えれば、2つのピストン体15,16のピストンロッド14との接触面に軸方向全長に亘って軸力受け部52が形成されているため、従来技術2,3に対して、ピストン13がナット51の締め付け軸力を良好に受けることになり、ナット51およびピストンロッド14を小径化できる。
また、第1実施形態によれば、各ピストン体15,16の結合面15A,16A側の縮み側の連通路20,35および伸び側の連通路21,36の周囲には、結合時に流体の流れを遮断するシール面となる平面部15A,15Bが形成されており、言い換えれば、2つのピストン体15,16の結合面15A,16Aは略平面であるため、2つのピストン体15,16でピストン13を構成しても縮み側の連通路20,35および伸び側の連通路21,36を良好に画成できる。
加えて、回転規制手段は、2つのピストン体15,16の互いの結合面15A,16Aに設けられた凹部26および凸部38からなる係合部39であるため、簡素な構造で確実に2つのピストン体15,16の所定の回転位置からの相対回転を規制することができる。
また、係合部39が連通路20,35および連通路21,36よりも第1ピストン体15および第2ピストン体16における内周側に設けられているため、係合部39に加わる相対回転のトルクが小さくなり、よって、係合部39を小型化することができる。
また、2つのピストン体15,16は、互いに軸方向長が異なるため、容易に見分けることができ、管理が容易となる。
また、軸方向長が長いピストン体15に摺動部材25を装着するため、摺動部材25の軸方向長を確保できる。したがって、ピストン13の外周側のシール性を向上できるとともにピストン13の倒れを規制できる。
また、連通路20,21,35,36の開口端の形状は、内周側が丸穴、外周側が長穴であるため、これらの間の弁座としての外周側突出部19,32の外径を大きくできる。したがって、ディスクバルブ43,44の外径を大きくでき、その開弁特性の設定自由度を向上できる。
また、2つのピストン体15,16のいずれか一方のピストン体16に、縮み側の連通路20,35の最小面積部35aおよび伸び側の連通路21,36の最小面積部36aが設けられているため、焼結用の型の共用化が図れる。つまり、ピストン体15,16の一方のピストン体16に、減衰力を決める絞った連通路21,36の最小面積部36aおよび縮み側の連通路20,35の最小面積部35aを集中させることで、他方のピストン体15は、他の特性のものと共用化することができる。車はマイナーチェンジなどで特性の変更が短期間のうちになされることが多いので、型を一部でも共用化できると型の製作コスト低減等のメリットが大きい。具体的には、特性の種類がXコの場合、2X−(X+1)コの型を削減することができる。
以上、第1実施形態の詳細について説明したが、第1実施形態の作用効果を以下に示す。
第1実施形態によれば、ピストン13を構成する2つの第1ピストン体15および第2ピストン体16のうちの一方の第1ピストン体15のみに、シリンダ12とピストン13との隙間をシールするピストンバンド25が設けられているため、2つのピストン体を圧入して貼り合わせる必要がない。つまり、まず、第1ピストン体15を焼結およびサイジング加工で形成し、第2ピストン体16を焼結およびサイジング加工で形成して、第1ピストン体15にピストンバンド25を装着する。そして、ピストンロッド14にその嵌合軸部14bを挿通させるように、ストッパ47、スペーサ46、ディスクバルブ43および第1ピストン体15、第2ピストン体16、ディスクバルブ44、スペーサ48およびストッパ49を装着し、この状態でメネジ14cにナット51を螺合させる。これにより、ピストンロッド14の軸部14aの嵌合軸部14b側の段部14dおよびナット51で、両ストッパ47,49、両スペーサ46,48、両側のディスクバルブ43,44およびピストン13が挟持されることになり、これらがピストンロッド14に締結される。このとき、第1ピストン体15の結合面15Aおよび第2ピストン体16の結合面16Aに設けられた凹部26および凸部38からなる係合部39を係合させることで、第1流体通路40および第2流体通路41を画成するべく第1ピストン体15および第2ピストン体16の回転方向の位相を合わせ且つこの位置からの相対回転を規制することができる。したがって、2つのピストン体の圧入および圧入後のサイジング加工が不要となるため、工数を低減できて低コストで製造でき、生産性を向上できる。
また、第1ピストン体15には縮み側の第1連通路20および伸び側の第2連通路21がそれぞれ径方向の中間部にのみ複数設けられており、第2ピストン体16にも縮み側の第1連通路35および伸び側の第2連通路36がそれぞれ径方向の中間部にのみ複数設けられているため、これら第1ピストン体15および第2ピストン体16は外周側で連通路を形成する必要がなくなる。
また、縮み側の第1連通路20および伸び側の第2連通路21がそれぞれ複数設けられた第1ピストン体15と、縮み側の第1連通路35および伸び側の第2連通路36がそれぞれ複数設けられた第2ピストン体16の2つのみでピストン13を構成し、言い換えれば、ピストン13は結合面15Aを有する第1ピストン体15および結合面16Aを有する第2ピストン体16のみからなり、さらに言い換えれば、ピストン13は2つのみの第1ピストン体15および第2ピストン体16の結合体として構成されるため、3つのピストン体でピストンを構成する場合に対して部品点数を低減できる。
また、ピストン13のピストンロッド14が挿通される挿通孔42には、ピストン13の一方の非結合面15Bから他方の非結合面16Bまで連続して延びる肉からなりナット51の締め付け軸力を受ける軸力受け部52が設けられており、言い換えれば、2つの第1ピストン体15および第2ピストン体16のピストンロッド14との接触面である挿通孔42の内周面に軸方向全長に亘って軸力受け部52が形成されているため、ピストン13がナット51の締め付け軸力を良好に受けることになり、ナット51およびピストンロッド14を小径化できる。
また、第1ピストン体15の結合面15A側における縮み側の第1連通路20および伸び側の第2連通路21の周囲には、結合時に流体の流出を全周に亘って遮断するシール面となる結合面15Aが形成され、第2ピストン体16の結合面16A側における縮み側の第1連通路35および伸び側の第2連通路36の周囲には、結合時に流体の流出を全周に亘って遮断するシール面となる結合面16Aが形成されており、言い換えれば、第1ピストン体15の結合面15Aおよび第2ピストン体16の結合面16Aが略平面であるため、2つの第1ピストン体15および第2ピストン体16でピストン13を構成しても縮み側の第1連通路20,35および伸び側の第2連通路21,36をそれぞれ良好に外部に対して画成できる。
加えて、第1ピストン体15および第2ピストン体16の結合時に、第1ピストン体15の結合面15Aに設けられた凹部26と、第2ピストン体16の結合面16Aに設けられた凸部38とからなる係合部39が、凸部38の一対の平面部38bを凹部26の一対の平面部26aに当接させることにより、第1ピストン体15および第2ピストン体16の位相合わせと相対回転規制を行うため、簡素な構造で確実に第1ピストン体15および第2ピストン体16の位相合わせと相対回転規制とを行うことができる。
また、係合部39を構成する第1ピストン体15の凹部26と第2ピストン体16の凸部38とがすべての縮み側の第1連通路20,35およびすべての伸び側の第2連通路21,36よりも第1ピストン体15および第2ピストン体16における内周側に設けられているため、これらに加わる第1ピストン体15および第2ピストン体16の相対回転のトルクが小さくなり、よって、凹部26および凸部38からなる係合部39を小型化することができる。
また、第1ピストン体15は軸方向長が長く、第2ピストン体16は軸方向長が短いため、これらを容易に見分けることができ、管理が容易となる。
また、軸方向長が長い第1ピストン体15にピストンバンド25を装着するため、ピストンバンド25の軸方向長を確保できる。したがって、ピストン13の外周側のシール性を向上できるとともにピストン13の倒れを規制できる。
また、連通路20,21,35,36の開口端の形状は、いずれも内周側にある第1連通路20の一端開口部20aおよび第2連通路36の一端開口部36aが丸穴であり、いずれも外周側にある第2連通路21の一端開口部21aおよび第1連通路35の一端開口部35aが円周方向に長い長穴であるため、外周側の一端開口部21aおよび一端開口部35aの径方向寸法を小さくでき、これらの間の弁座としての外周側突出部19および外周側突出部32の外径を大きくできる。したがって、外周側突出部19に当接して開閉するディスクバルブ43および外周側突出部32に当接して開閉するディスクバルブ44の外径をそれぞれ大きくでき、これらディスクバルブ43,44の開弁特性の設定自由度を向上できる。
また、一方の第2ピストン体16に、縮み側の第1流体通路40の最小面積部である一端開口部35aおよび伸び側の第2流体通路41の最小面積部である一端開口部36aの両方が設けられているため、焼結用の型の共用化が図れる。つまり、第1ピストン体15および第2ピストン体16の一方である第2ピストン体16に、減衰力を決める絞った縮み側の第1流体通路40の一端開口部35aおよび伸び側の第2流体通路41の一端開口部36aを集中させることで、他方の第1ピストン体15は、他の特性のものと共用化することができる。車はマイナーチェンジなどで特性の変更が短期間のうちになされることが多いので、型を一部でも共用化できると型の製作コスト低減等のメリットが大きい。
具体的には、特性の種類がXコの場合、2X−(X+1)コの型を削減することができる。言い換えれば、2つの第1ピストン体15および第2ピストン体16は、第1流体通路40の端部となる第1連通路20,35の流路断面積が異なっており、第2流体通路41の端部となる第2連通路21,36の流路断面積も異なっているため、例えば、小さい流路断面積となる第1連通路35および第2連通路36が形成された第2ピストン体16として、流路断面積が異なるものを複数種類設定すれば、大きい流路断面積となる第1連通路20および第2連通路21が形成された共通形状の第1ピストン体15に対して第2ピストン体16のみを異ならせることで減衰力特性を異ならせることができる。つまり、共通形状の第1ピストン体15に、第1連通路35の流路断面積が狭い第2ピストン体16を組み合わせたり、第1連通路35の流路断面積が広い第2ピストン体16を組み合わせたりすることで、縮み側の減衰力特性を変えることができ、第2連通路36の流路断面積が狭い第2ピストン体16を組み合わせたり、第2連通路36の流路断面積が広い第2ピストン体16を組み合わせたりすることで、伸び側の減衰力特性を変えることができる。
「第2実施形態」
次に、本発明に係る第2実施形態の流体圧緩衝器を図4〜図6に基づいて、第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図4は、本発明に係る第2実施形態の流体圧緩衝器を示す部分断面図である。図5は、本発明に係る第2実施形態の流体圧緩衝器の第1ピストン体を示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は背面図である。図6は、本発明に係る第2実施形態の流体圧緩衝器の第2ピストン体を示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は背面図である。
第2実施形態の流体圧緩衝器11は、図4および図5に示すように、第1ピストン体15に第1実施形態の凹部26は設けられていない。また、図4および図6に示すように、第2ピストン体16の結合面16Aの貫通穴30側ではなく、第2連通路36よりも半径方向外側に位置決め用の凸部55が1カ所だけ、第2連通路36と円周方向の位相を合わせて形成されている。
凸部55は、より詳しくは、凸部55における第2ピストン体16の径方向外端側で円周方向に沿う平面部55aと、平面部55aの円周方向の両端から第2ピストン体16の中心側に互いに平行に延出する一対の平面部55bと、これら平面部55bの平面部55aとは反対側から第2ピストン体16の中心側ほど互いに近接するように傾斜する一対の傾斜平面部55cと、これら傾斜平面部55cの平面部55bとは反対側同士を結ぶ、平面部55aと平行な平面部55dと、軸方向先端の頂上平面部55eとからなっている。
そして、第2実施形態において、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、貫通穴17,30の位置を合わせて結合面15A,16A同士を当接させる結合時に、凸部55が複数の第2連通路21のいずれか一つに、実質的に円周方向に隙間がない状態で嵌合することになり、その際に凸部55の一対の平面部55bの一方が第2連通路21の他端開口部21bの一対の直線状部21bbの一方に、一対の平面部55bの他方が一対の直線状部21bbの他方に当接する。これにより、第1ピストン体15および第2ピストン体16が、互いに円周方向に位置決めされ、円周方向の相対移動が規制される。なお、凸部55がいずれの第2連通路21の他端開口部21bと嵌合しても、第1実施形態と同様に、第1ピストン体15および第2ピストン体16が、互いに円周方向に位置決めされ、円周方向の相対移動が規制される。この状態で、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、第1連通路20と第1連通路35とが一対一で合致し連通して第1流体通路40を形成し、第2連通路21と第2連通路36とが一対一で合致し連通して第2流体通路41を形成する。これにより、第2実施形態では、凸部55と第2連通路21とが、第1ピストン体15および第2ピストン体16の相対回転を規制しつつ円周方向の位置決めを行う係合部(回転規制手段)57を構成する。
以上に述べた第2実施形態によれば、係合部57を構成する凹部を連通路21で兼用できるため、凹部を別途形成する必要がなくなる。
以上、第2実施形態の詳細について説明したが、第2実施形態の作用効果を以下に示す。
第1ピストン体15および第2ピストン体16の位相合わせおよび相対回転規制を行う係合部57が、その凹部を第2連通路21で兼用することになるため、凹部を別途形成する必要がなくなる。
また、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、一方の第2ピストン体16の凸部55が他方の第1ピストン体15の第2連通路21に係合することで、円周方向に位置決めされるため、流路断面積を大きく確保することができ、得られる減衰力特性の範囲が広くなる。
「第3実施形態」
次に、本発明に係る第3実施形態の流体圧緩衝器を図7および図8に基づいて、第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図7は、本発明に係る第3実施形態の流体圧緩衝器の第1ピストン体を示すもので、(a)は側断面図、(b)は背面図である。図8は、本発明に係る第3実施形態の流体圧緩衝器の第2ピストン体を示すもので、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
第3実施形態において、軸方向長が長い第1ピストン体15の結合面15Aの貫通穴17側には、第2ピストン体16に結合する際に円周方向に位置決めするための複数(具体的には5カ所)の軸方向に凹む凹部60が第1連通路20と円周方向の位相を合わせて形成されている。すべての凹部60は同一形状をなし、軸直交断面が略円弧形状をなしており、第1連通路20および第2連通路21よりも第1ピストン体15における内周側に設けられている。これにより、第1ピストン体15の結合面15A側には、円周方向に隣り合う凹部60同士の間に、径方向内方に突出する凸部61が第2連通路21と円周方向の位相を合わせて形成されている。
凸部61は、軸直交断面が略矩形状をなしており、より詳しくは、貫通穴17の内周面の延長上に配置される湾曲面部61aと、湾曲面部61aの両端から第1ピストン体15の外径側に互いに平行に延出する一対の平面部61bと結合面15Aの一部を構成する頂上平面部61cとからなっている。
なお、結合面15Aおよび貫通穴17から凹む凹部60は、互いに円周方向で対向する上記した平面部61bと、これら平面部61bの貫通穴17とは反対側同士を貫通穴17と同心状に結ぶ湾曲面部60aと、平面部61bおよび湾曲面部60aの結合面15Aとは反対側を結ぶ結合面15Aと平行な平面部60bとからなっている。
第2ピストン体16の結合面16Aの貫通穴30側には、結合面16Aよりも軸方向に突出する2カ所の円周方向に隣り合う凸部63と、結合面16Aよりも軸方向に突出する複数(具体的には3カ所)の凸部64とが、第1連通路35と円周方向の位相を合わせて形成されている。そして、円周方向に隣り合う2カ所の凸部63の間には、第1ピストン体15に結合する際に凸部61のいずれか一つを、円周方向に実質的に隙間がない状態で嵌合させる位置決め用の凹部65が第2連通路36と円周方向の位相を合わせて形成されており、残りの円周方向に隣り合う凸部64同士の間あるいは凸部63および凸部64の間には、複数カ所(具体的には4カ所)に、それぞれ凸部61を円周方向に隙間をもって嵌合させる凹部66が第2連通路36と円周方向の位相を合わせて形成されている。凹部65は、軸直交断面が略矩形状をなしており、いずれの凸部63に対してもこれを実質的に回転方向の隙間がない状態で嵌合させる。
凹部65は、より詳しくは、貫通穴30から第2ピストン体16の外径側に延出する一対の平面部65aと、これら平面部65aの結合面16A側同士を結ぶ結合面16Aと平行な底面部65bとからなっている。
凹部66も、軸直交断面が略矩形状をなしており、より詳しくは、貫通穴30から第2ピストン体16の外径側に延出する一対の平面部66aと、これら平面部66aの結合面16A側同士を結ぶ結合面16Aと平行な底面部66bとからなっている。そして、一対の平面部66aの間隔が一対の平面部65aの間隔よりも広くなっている。
凸部63は、円周方向に隣り合って互いに反対に向く上記した平面部65aおよび平面部66aと、結合面16Aと平行をなす突出先端の平面部63aとからなっている。
凸部64は、円周方向に隣り合って互いに反対に向く上記した2カ所の平面部66aと、結合面16Aと平行をなす突出先端の平面部64aとからなっている。
そして、第3実施形態において、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、貫通穴17,30の位置を合わせて結合面15A,16A同士を当接させる結合時に、第1ピストン体15のいずれか一つの凸部61が、第2ピストン体16の凹部65に、実質的に円周方向に隙間がない状態で嵌合することになり(いわゆる、しっくり嵌合)、残りの凸部61が一対一で対応する凹部66に、それぞれ円周方向に隙間をもって嵌合することになる(いわゆる、だぼ穴嵌合)。また、その際に凸部61の一対の平面部61bの一方が凹部65の一対の平面部65aの一方に、一対の平面部61bの他方が一対の平面部65aの他方に当接する。
言い換えれば、第1ピストン体15および第2ピストン体16は、貫通穴17,30の位置を合わせて結合面15A,16A同士を当接させる結合時に、第2ピストン体16の凹部65の両側2カ所の凸部63が、第1ピストン体15の凸部61の両側2カ所の凹部60に、2カ所の凸部63の円周方向で近接し対向する2カ所の平面部65aの一方を、2カ所の凹部60の円周方向で近接し反対を向く2カ所の平面部61bの一方に対して、実質的に円周方向に隙間なく当接させ、同じく2カ所の平面部65aの他方を、同じく2カ所の平面部61bの他方に対して、実質的に円周方向に隙間なく当接させて、嵌合することになり、残りの凸部64が対応する凹部60に、それぞれ円周方向に隙間をもって嵌合することになる。
以上により、第1ピストン体15および第2ピストン体16が、互いに円周方向に位置決めされ、円周方向の相対移動が規制される。なお、第1ピストン体15のいずれの凸部61が第2ピストン体16の凹部65と嵌合しても、言い換えれば、第1ピストン体15の凹部65の両側2カ所の凸部63がいずれの2カ所の凹部60に嵌合しても、第1ピストン体15および第2ピストン体16が、互いに円周方向に位置決めされ、円周方向の相対移動が規制される。この状態で、第1実施形態と同様に、第1連通路20と第1連通路35とが一対一で合致し連通して第1流体通路40を形成し、第2連通路21と第2連通路36とが一対一で合致し連通して第2流体通路41を形成する。
また、第3実施形態では、第1ピストン体15のいずれか一つの凸部61と第2ピストン体16の凹部65とが、円周方向に実質的に隙間なく嵌合して第1ピストン体15および第2ピストン体16を円周方向に位置決めしつつ円周方向の相対移動を規制する係合部68を構成することになる。
言い換えれば、第2ピストン体16の2カ所の隣り合う凸部63と第1ピストン体15のいずれか隣り合う2カ所の凹部60とが、第1ピストン体15および第2ピストン体16を円周方向に位置決めしつつ円周方向の相対移動を規制する係合部71を構成することになる。また、第2ピストン体16の残りの凸部64と第1ピストン体15の残りの凹部60とが、第1ピストン体15および第2ピストン体16の円周方向の相対移動を規制する係合部72を構成する。
上記した第2ピストン体16の2カ所の凸部63と残り3カ所の凸部64とが、高さつまり平面部63aおよび平面部64aの軸線方向位置を合わせており、その結果、2カ所の凸部63および3カ所の凸部64を有する第2ピストン体16は、凸部63,64を下にした状態で傾倒不可な形状をなしている。なお、傾倒不可とするためには、第2ピストン体16が、突出する凸部を3カ所以上有するのが良い。
ここで、圧入を廃止してピストン体をピストンロッドに挿通させて固定することを検討した場合、連通路をあわせるための円周方向の回り止めが必要となる。従来技術4として、特公昭48−21378号公報があり、この従来技術4には回り止めとして互いに嵌合するピンと孔とからなる嵌合部が設けられている。しかしながら、この従来技術4では、嵌合部は一カ所であった。一カ所であると、例えばパーツフィーダを使って部品を供給する場合、すわりが悪く、供給性能に影響を及ぼす。このため、嵌合部を複数設けることが考えられるが、複数の嵌合部を設けた場合、すべての凸部と凹部とを実質的に隙間のない「しっくり嵌合」にすると、公差の関係上、結合が難しくなってしまう。
これに対して、第3実施形態においては、凸部63,64を有するピストン体16は、凸部63,64を下にした状態で傾倒不可な形状をなしているため、例えばパーツフィーダによって部品供給がなされる場合でも、すわりが良く、パーツフィーダによる供給性能が良好となる。
また、第2ピストン体16は、凸部63,64が3カ所以上あるため、簡素な形状で傾倒不可にできる。
また、係合部71,72のうち、少なくとも一つの係合部71が実質的に隙間なく嵌合し、残りの係合部72が隙間をもって嵌合するため、第1ピストン体15および第2ピストン体16を良好に結合することができる。
以上、第3実施形態の詳細について説明したが、第3実施形態の作用効果を以下に示す。
第3実施形態においては、軸方向外方に突出する凸部63,64を有する第2ピストン体16は、凸部63,64を下にした状態で、これら凸部63,64の端面である平面部63a,64aが位置を合わせることで傾倒不可な形状をなしているため、例えばパーツフィーダを使って部品供給がなされる場合に、凸部63,64を下にした状態でも、すわりが良く、パーツフィーダによる供給性能が良好となる。
また、2カ所の凸部63および3カ所の凸部64の合計5カ所の凸部が円周方向に略等間隔で形成されているため、簡素な形状で傾倒不可にできる。
また、係合部71,72のうち、一つの係合部71を構成する2カ所の凸部63および2カ所の凹部60が実質的に円周方向に隙間なく嵌合し、残りの3カ所の係合部72を構成する凸部64および凹部60が円周方向に隙間をもって嵌合するため、第1ピストン体15および第2ピストン体16を良好に結合することができる。
「第4実施形態」
次に、本発明に係る第4実施形態の流体圧緩衝器を図9に基づいて、第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第4実施形態の流体圧緩衝器11は、第1ピストン体15の第2ピストン体16側にその外周面を構成する装着部24よりも若干小径の嵌合穴75が第1ピストン体15と同心状に形成されており、この嵌合穴75の底部に、上記した第1連通路20および第2連通路21が開口している。そして、この第1ピストン体15の嵌合穴75内に第2ピストン体16が嵌合している。このとき、第2実施形態と同様、第2ピストン体16の突起部55が第1ピストン体15の第2連通路21に嵌合することになり、これにより、第1ピストン体15および第2ピストン体16が互いに円周方向に位置決めされる。従来技術2とは第1ピストン体15および第2ピストン体16がそれぞれピストンロッド14と軸方向全長に亘って接している点が異なり、本実施形態によれば、ピストン13がナット51の締め付け軸力を良好に受けることになり、ナット51およびピストンロッド14を小径化できる。
以上に述べた第4実施形態によれば、第1ピストン体15内に第2ピストン体16のほぼ全体が嵌合されるため、ピストン13の小型化を図ることができる。