以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本実施の形態に係るカセット収容装置およびこのカセット収容装置を備えた貨幣処理システムを示す図である。
図1に示すように、貨幣処理システム1は、店舗10に設けられたキャッシュレジスタ11、硬貨釣銭機12および紙幣釣銭機14、ならびに出納室20に設けられたカセット収容装置30や棒金収納庫50等から構成されている。また、出納室20には、カセット収容装置30や棒金収納庫50等に通信接続された端末60が設けられている。この出納室20には、警備会社等の回収業者のセンター70から配送車74等により貨幣が配送されたり、出納室20から貨幣が回収されて配送車74等によりセンター70に送られたりするようになっている。
硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14は、それぞれ、硬貨や紙幣をその内部に収納するようになっている。そして、店舗10において顧客が商品を購入する際に、釣銭として顧客に硬貨や紙幣を支払う場合には、これらの硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14に収納された硬貨や紙幣を外部に投出し、投出された硬貨や紙幣を顧客に渡すようになっている。このような硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14として、様々なタイプのものを用いることができる。一例としては、商品の情報をキャッシュレジスタ11に入力し、顧客から預かった硬貨や紙幣を店員が硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14に投入すると、自動的に釣銭としての硬貨や紙幣が硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14から外部に投出されるものが知られている。また、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14には、それぞれ後述する収納カセット48を装填することができるようになっている。また、これらの硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14は、キャッシュレジスタ11を介して、または直接的に、出納室20に設けられた後述する端末60に通信接続されている。
カセット収容装置30は、複数の収納カセット48を収容するようになっている。収納カセット48には、バラ紙幣やバラ硬貨、棒金硬貨等の貨幣、および/または、商品券、小切手等の有価証券が収納されるようになっている。収納カセット48は、硬貨釣銭機12用および紙幣釣銭機14用の両方があるのが一般的であるが、一体型であってもよい。なお、この収納カセット48には、レシート等の、貨幣や有価証券以外のものが収納されるようになっていてもよい。また、収納カセット48は、収納物の出し入れを行うための扉および扉のロック機構を有するとともに、扉が開けられたことを検知するためのセンサを有している。
図1乃至図3に示すように、カセット収容装置30は、収納カセット48をそれぞれ収容する複数のカセット収容部32と、各カセット収容部32に収容された収納カセット48の取り出しを選択的に規制するカセット取出規制部34と、を備えている。図2に示すように、各カセット収容部32は、収納カセット48が載置される底部32aを有しており、カセット取出規制部34はこの底部32aに設けられている。より詳細には、カセット取出規制部34は底部32aから上方に選択的に突出することができるようになっており、カセット取出規制部34が底部32aから上方に突出したときに、カセット収容部32に収納カセット48を外部から収容することができなくなるとともに、カセット収容部32に収容された収納カセット48を外部から取り出すことができなくなる。一方、カセット取出規制部34が底部32a内に退避したときに、カセット収容部32に収納カセット48を外部から収容することができるようになるとともに、カセット収容部32に収容された収納カセット48を外部から取り出すことができるようになる。カセット収容部32は、図示しないカセット検知センサを備えており、このカセット検知センサにより収納カセット48の有無を検知することができるようになっている。
図2に示すように、カセット収容部32は、カセット収容装置30における対向する両側面においてそれぞれ開口しており、これらの一対の開口にそれぞれカセット取出規制部34が設けられている。
収納カセット48には、データの読み書きが可能なICタグ等の記憶部49が設けられており、この記憶部49には、収納カセット48に関する情報であるカセット情報が記憶されるようになっている。より詳細には、記憶部49には、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14、またはセンター70等に設けられた情報書き込み器(図示せず)により、カセット情報が書き込まれるようになっている。カセット情報には、収納カセット48を識別するための収納カセット48毎のID等の識別情報や、収納されている貨幣の金種別枚数等の在高情報等が含まれる。図7に、収納カセット48のカセット情報の例を示す。図7に示すように、カセット情報としては、カセットID、取出権限、内容情報、状態等が含まれる。内容情報としては、紙幣の金種毎の枚数、硬貨の金種毎の枚数、商品券Aの枚数、および未登録の有価証券等が挙げられる。また、状態としては、収納カセット48に収納された収納物の内容の少なくとも一部が不明確な未確定状態と、収納物の内容が明確な確定状態とがある。このような状態の詳細については後述する。
また、各カセット収容部32の底部32aにはカセット情報取得部36が設けられており、このカセット情報取得部36は、収納カセット48がカセット収容部32に収容されたときにこの収納カセット48に設けられた記憶部49に記憶されたカセット情報を読み取るようになっている。
また、図3に示すように、カセット収容装置30には、各カセット取出規制部34等の制御を行う制御部40が設けられている。また、この制御部40には、取出権限決定部42が接続されている。取出権限決定部42は、カセット情報取得部36により取得されたカセット情報に基づいて、各カセット収容部32に収容された収納カセット48の取り出しが可能な管理権限である取出権限を決定するようになっている。制御部40は、この取出権限に基づいて、各カセット収容部32に収容された収納カセット48の取り出しを規制するか否かを決定するようになっている。
また、図1等に示すように、カセット収容装置30の各カセット収容部32には表示部38がそれぞれ設けられている。表示部38は、対応するカセット収容部32に収容された収納カセット48が取り出し可能か否かを表示するようになっている。より詳細には、表示部38には例えば赤ランプおよび緑ランプが設けられており、赤ランプが点灯したときにはこの表示部38に対応するカセット収容部32から収納カセット48を取り出すことができないことを示し、緑ランプが点灯したときにはこの表示部38に対応するカセット収容部32から収納カセット48を取り出すことができることを示している。この表示部38も制御部40に接続されており、表示部38における表示内容は制御部40により制御されるようになっている。
なお、カセット収容装置30として、図1では複数のカセット収容部32が一体化されたものを説明したが、カセット収容装置はこのようなものに限定されることはない。他の種類のカセット収容装置としては、収納カセットを収容する各々のカセット収容部が他のカセット収容部に対して着脱自在に設けられており、複数のカセット収容部を適宜組み合わせることによりカセット収容装置が構成されるようになっていてもよい。この場合、各々のカセット収容部にカセット取出規制部および表示部が設けられており、これらのカセット収容部、カセット取出規制部および表示部によりユニットが構成され、カセット収容装置はこれらのユニットの集合体となる。
また、制御部40には通信インターフェース44が接続されており、この通信インターフェース44を介して制御部40は端末60と信号の送受信を行うことができるようになっている。
棒金収納庫50には棒金硬貨が収納されるようになっている。より具体的に説明すると、棒金収納庫50は、その筐体から引き出し可能な複数の棒金ドロアとを有しており、各棒金ドロアに棒金硬貨を収納するとともに手で取り出しが可能であり、棒金硬貨の金種や有無を検知し、出し入れが管理できるようになっている。あるいは、棒金収納庫50は、指示された棒金を自動的に投出するものであってもよい。
図1に示すように、店舗10に設けられた硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14と、出納室20に設けられたカセット収容装置30との間では、収納カセット48により貨幣等が運搬されるようになっている。すなわち、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14から取り出された貨幣等が運搬中に人の手に触れることはない。また、カセット収容装置30から取り出された貨幣等も運搬中に人の手に触れることはない。同様に、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14に貨幣が収納される際も、貨幣等が人の手に触れないことが望ましいが、例えば硬貨釣銭機12への硬貨の投入時には、収納カセット48から硬貨を取り出す場合もある。
端末60は、例えばモニタからなる表示部(図示せず)と、例えばキーボードからなる操作部(図示せず)と、カードリーダー62とを有している。端末60の表示部には、カセット収容装置30に収容された各収納カセット48に収納された貨幣の在高の情報や、棒金収納庫50に収納された棒金の在高の情報等が表示されるようになっている。また、操作者は、操作部を操作することによって端末60によりカセット収容装置30や棒金収納庫50に対して様々な指令を与えることができるようになっている。具体的には、端末60の操作部により、操作者はカセット収容装置30からの収納カセット48の取り出しや棒金収納庫50からの棒金硬貨の取り出しの操作を行うことができるようになっている。また、端末60に設けられたカードリーダー62により、操作者が携帯するIDカードのID情報の読み取りを行うようになっている。端末60は、店舗10に設けられた硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14に通信接続されるとともに、出納室20に設けられたカセット収容装置30や棒金収納庫50に通信接続されている。また、端末60は、センター70に設けられた制御装置72(後述)にも通信接続されている。
図1に示すように、警備会社等の回収業者のセンター70には例えばホストコンピュータからなる制御装置72が設けられている。また、センター70から出納室20には配送車74により貨幣が配送されるようになっている。より具体的には、配送車74には収納カセット48が積載されており、この収納カセット48が配送車74からカセット収容装置30に運ばれ、カセット収容装置30のカセット収容部32に直接的に収容されるようになっている。また、カセット収容装置30から回収業者が貨幣を回収する際には、カセット収容部32から収納カセット48を取り出し、この収納カセット48を配送車74に積載することにより、収納カセット48ごと貨幣を回収するようになっている。
次に、上述のようなカセット収容装置30およびこのカセット収容装置30を備えた貨幣処理システム1の動作について説明する。
最初に、収納カセット48の管理権限について説明する。この収納カセット48の取出権限は、少なくとも第1の管理権限と第2の管理権限に設定可能である。具体的には、第1の管理権限は、例えば店舗等の店員側の管理権限のことをいい、第2の管理権限は、例えば警備会社等の回収業者側の管理権限のことをいう。取出権限決定部42は、店舗等の店員および警備会社等の回収業者の各々について、取出権限があるか否かを決定するようになっている。なお、店員の権限は、個人毎、あるいは、一般店員や管理者という職種毎に設定することができるようになっている。
次に、センター70から出納室20に貨幣を配送する処理について説明する。このような処理は回収業者により行われるようになっている。より詳細には、まず、センター70において、収納カセット48が取り付けられた貨幣処理機(図示せず)は、配送先の店舗から注文された金種と枚数の貨幣を収納カセット48に搬送して収納する。このとき、記憶部49には、収納された貨幣の金種別の枚数が書き込まれる。そして、前述のように、配送車74により、貨幣等が収納された収納カセット48がセンター70から出納室20へ運搬される。配送車74が出納室20に到達すると、この配送車74から収納カセット48を取り出す。そして、回収業者は、携帯するIDカードのID情報を端末60に読み取らせ、収納カセット48の収容命令を入力する。このことにより、制御部40は、カセット収容装置30の各カセット収容部32のうち、収納カセット48を収容可能なカセット収容部32の取り出し規制を解除し、収納カセット48が収容されたことを検知すると、収納カセット48が収容されたカセット収容部32の取り出しを規制する。このようにして、回収業者は、配送車74から取り出された収納カセット48をカセット収容装置30の各カセット収容部32に収容する。このとき、カセット情報取得部36は、記憶部49からカセット情報を読み出す。この処理によって、収納カセット48に収納された貨幣は、回収業者側の管理権限下から、店員側の管理権限下に移り、店員側が収納カセット48の取出権限を持つようになる。
次に、出納室20から店舗10に釣銭用の貨幣を運搬する処理について説明する。このような処理は店員により行われるようになっている。より詳細には、店員は、携帯するIDカードのID情報を端末60に読み取らせ、収納カセット48の取出命令を入力する。このことにより、制御部40は、カセット収容装置30の各カセット収容部32のうち、この店員が担当するキャッシュレジスタ11で釣銭として用いる貨幣が収納された収納カセット48が収容されているカセット収容部32の取り出し規制を解除する。そして、店員は、取り出し規制が解除されたカセット収容部32から収納カセット48を取り出し、この取り出された収納カセット48を出納室20から店舗10に運び、収納カセット48を、担当するキャッシュレジスタ11に接続された硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14に装填する。
次に、店舗10から出納室20に貨幣を回収する処理について説明する。このような処理は店員により行われるようになっている。より詳細には、まず、店舗側の店員が回収命令を入力すると、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14は、回収される貨幣を収納カセット48へ搬送して収納する。このとき、記憶部49には、収納された貨幣の金種別枚数や他の情報が書き込まれる。そして、店員は、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14から収納カセット48を取り出し、この収納カセット48を店舗10から出納室20に運ぶ。そして、店員は、携帯するIDカードのID情報を端末60に読み取らせ、収納カセット48の収容命令を入力する。このことにより、制御部40は、カセット収容装置30の各カセット収容部32のうち、収納カセット48を収容可能なカセット収容部32の取り出し規制を解除し、収納カセット48が収容されたことを検知すると、収納カセット48が収容されたカセット収容部32の取り出しを規制する。このようにして、店員は、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14から取り出された収納カセット48をカセット収容装置30の各カセット収容部32に収容する。カセット情報取得部36は、記憶部49からカセット情報を読み出す。制御部40は、カセット情報に基づいて取出権限を決定する。決定方法については後述する。
次に、出納室20からセンター70に貨幣を回収する処理について説明する。このような処理は回収業者により行われるようになっている。より詳細には、回収業者は、携帯するIDカードのID情報を端末60に読み取らせ、収納カセット48の回収命令を入力する。このことにより、制御部40は、カセット収容装置30の各カセット収容部32のうち、回収業者側に取出権限がある、回収されるべき貨幣が収納された収納カセット48が収容されているカセット収容部32の取り出し規制を解除する。そして、回収業者は、取り出し規制が解除されたカセット収容部32から収納カセット48を取り出し、この取り出された収納カセット48を配送車74に積載し、配送車74により収納カセット48をセンター70まで運搬する。
本実施の形態のカセット収容装置30においては、上述のような動作が行われる際に、カセット情報取得部36により、収納カセット48に関する情報であるカセット情報を取得し、取出権限決定部42は、取得されたカセット情報に基づいて、各カセット収容部32に収容された収納カセット48の取り出しが可能な管理権限である取出権限を決定するようになっている。そして、制御部40は、決定された取り出し権限に基づいて、各カセット収容部32に収容された収納カセット48の取り出しをカセット取出規制部34により規制するか否かを決定するようになっている。
制御部40がこのような制御を行うことにより、カセット収容装置30に収容された複数の収納カセット48のうち、必要な収納カセット48のみを店員や回収業者等の操作者は取り出すことができるようになる。
なお、各カセット収容部32は、カセット情報に基づいて決定される取出権限により、収納カセット48の収容の可否がそれぞれ決定されるようになっていてもよい。
また、取出権限決定部42は、取出権限が無制限となるよう決定を行う場合もある。この場合には、店員や回収業者を含めた、いかなる操作者も各カセット収容部32から収納カセット48を自由に取り出すことができるようになる。
また、上述の態様では、カセット情報は収納カセット48に設けられた記憶部49に記憶され、各カセット収容部32に設けられたカセット情報取得部36が、記憶部49に記憶された情報を読み取るような例について説明したが、このような例に限定されることはない。例えば、記憶部49はICタグのような非接触での受信を行うものに限らず、コネクタ等を用いた接触式の交信を行ってもよい。また、収納カセット48にICタグ等の記憶部49が設けられておらず、代わりに、収納カセット48の識別情報をバーコードやカセット搭載のRFIDタグで読み取り、カセット情報取得部36は、別途ネットワークで送信されたこの識別情報に対応する情報を取得するようになっていてもよい。更に他の態様としては、収納カセット48のカセット情報を操作者が端末60の操作部により打ち込み、端末60からカセット収容装置30の制御部40にこの打ち込まれた情報が送信されるようになっていてもよい。
また、本実施の形態のカセット収容装置30においては、制御部40は、前述の取出権限と、端末60のカードリーダー62により読み取られた操作者情報に基づく操作者の管理権限とに基づいて取り出し可能な収納カセット48を決定し、取り出し可能な収納カセット48が収納されるカセット収容部32の取り出し規制を解除するようになっている。ここで、端末60のカードリーダー62は、操作者の管理権限に関する情報である操作者情報を取得する操作者情報取得部として機能するようになっている。
次に、収納カセット48の取出権限の決定方法について説明する。本実施の形態のカセット収容装置30においては、カセット情報には、収納カセット48に収納された収納物の内容である内容情報が含まれている。そして、取出権限決定部42は、この内容情報に基づいて取出権限を決定する。具体的には、内容情報は、収納カセット48に収納されている貨幣の金額または金種別の枚数である在高情報のことをいう。また、内容情報として、収納カセット48に収納されている商品券や小切手の情報も含まれる。
この内容情報には、収納カセット48に収納された収納物の内容の少なくとも一部が不明確な未確定状態と、収納物の内容が明確な確定状態とがある。ここで、回収業者によりセンター70から出納室20に貨幣が配送される際には、収納カセット48に収納された収納物の内容は基本的に明確であり、内容情報は確定状態である。しかし、配送中に収納カセット48の扉が開かれたことが検知されている場合に、収納カセット48の内容情報は未確定となる。また、店員により店舗10から出納室20に貨幣を回収する際には、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14から収納カセット48に搬送された貨幣の金種毎の枚数が確定している場合には、収納カセット48の内容情報は確定状態である。これに対して、出金時にリジェクトされた貨幣を収納していたり、機械で金種の識別ができず、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14の外で管理していた貨幣を回収時に強制的に収納カセット48に収納したり、回収業者側で対応できない商品券等の媒体を収納カセット48に収納した場合には、収納カセット48の内容情報は未確定状態となる。
また、本実施の形態のカセット収容装置30においては、カセット情報には、前述のような内容情報が含まれるとともに、この内容情報を決定した装置の所属に関する情報である所属情報が含まれていてもよい。この場合、取出権限決定部42は、内容情報および所属情報に基づいて取出権限を決定する。より詳細には、所属情報は、店員側または回収業者側のことをいう。このような所属情報は、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14によって、またはセンター70において収納カセット48の内容情報の決定が行われたときに決定される。あるいは、所属情報は、収納カセット48がカセット収容装置30のカセット収容部32に収容される際における、IDカードのID情報が端末60により読み取られることにより判別する操作者の所属(店員または回収業者)により決定される。
本実施の形態のカセット収容装置30においては、前述のように、収納カセット48の管理権限には少なくとも第1の管理権限(店舗等の店員側の管理権限)と第2の管理権限(警備会社等の回収業者側の管理権限)とがある。そして、店員により、店舗10から出納室20に収納カセット48が運ばれてカセット収容装置30のカセット収容部32に収容された後、回収業者によりこの収納カセット48がカセット収容部32から取り出される際に、制御部40は、この収納カセット48の管理権限を店員側の管理権限から回収業者側の管理権限に変更する引渡処理を行う。このときに、取出権限決定部42は、内容情報が確定状態であり所属が店員側の管理権限である収納カセット48の取出権限を、回収業者側に決定する。このようにして、硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14から回収された貨幣を収納している収納カセット48がカセット収容装置30のカセット収容部32に収容された後に、回収業者は、この収納カセット48をカセット収容部32から確実に取り出すことができるようになる。なお、前述のような引渡処理は、収納カセット48をカセット収容装置30のカセット収容部32に収容したとき、または端末60等から制御部40に対して引渡指令がなされたときに行われる。一方、内容情報が未確定の収納カセット48がカセット収容装置30のカセット収容部32に収容された場合には、取出権限決定部42は取出権限を回収業者側に変更せず、回収業者がこの収納カセット48をカセット収容部32から取り出すことができないようになる。この場合には、店員によりこの収納カセット48は硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14に戻され、これらの硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14により改めて入金処理の確定が行われることとなる。
また、上述のように、取出権限決定部42が、内容情報が確定状態であり所属が店員側の管理権限である収納カセット48の取出権限を、回収業者側に決定した際に、制御部40は、引渡処理が行われた1または複数の収納カセット48の内容情報の合計を、端末60を介して、回収業者に所属する、センター70に設置された制御装置72に送信するようになっている。このような制御部40からの送信のタイミングは、カセット収容装置30のカセット収容部32に収納カセット48を挿入したとき、または制御部40が引渡指令を処理したときとなっている。
また、回収業者により、センター70から出納室20に収納カセット48が運ばれてカセット収容装置30のカセット収容部32に収容された後、制御部40は、この収納カセット48の管理権限を回収業者側の管理権限から店員側の管理権限に変更する引渡処理を行う。このときに、取出権限決定部42は、内容情報が確定状態であり所属が回収業者側の管理権限である収納カセット48の取出権限を、店員側に決定する。このようにして、センター70で準備された収納カセット48がカセット収容装置30のカセット収容部32に収容された後に、店員は、この収納カセット48をカセット収容部32から確実に取り出すことができるようになる。なお、前述のような引渡処理は、収納カセット48をカセット収容装置30のカセット収容部32に収容したとき、または端末60等から制御部40に対して引渡指令がなされたときに行われる。
また、収納カセット48の内容情報を確認して、回収業者への引渡しを行わず、再度使用する場合もある。すなわち、本実施の形態のカセット収容装置30においては、取出権限決定部42は、内容情報が確定状態であるとともにこの内容情報が所定の範囲内であり、所属が店員側である収納カセット48を、店員側の管理権限に決定する。内容情報が所定の範囲内であるとは、例えば、収納カセット48に収納された硬貨や紙幣の枚数が所定範囲内であったり、収納カセット48に収納された硬貨や紙幣の金額が所定範囲内であったり、収納カセット48に小切手や商品券等が収納されていなかったりする場合のことをいう。これらの条件は、収納カセット48は回収業者により回収される必要がないと判断する任意の条件を、1つまたは複数組み合わせて任意に設定できる。内容情報が設定された条件を満たすとき、収納カセット48がカセット収容装置30のカセット収容部32に収容されても、取出権限決定部42は取出権限を回収業者側に変更せず、店員側のままとする。この場合には、店員によりこの収納カセット48はリサイクル用の収納カセットとして硬貨釣銭機12や紙幣釣銭機14で再び使用されることとなる。
また、本実施の形態のカセット収容装置30においては、取出権限を有する操作者がカセット収容装置30の各カセット収容部32から収納カセット48を取り出す際に、この操作者が取り出すことができる収納カセット48が収容されたカセット収容部32に対応する表示部38が表示を行うようになっている。具体的には、操作者が取り出すことができる収納カセット48が収容されたカセット収容部32に対応する表示部38では緑ランプが点灯し、操作者が取り出すことができない収納カセット48が収容されたカセット収容部32に対応する表示部38では赤ランプが点灯する。このことにより、操作者は、どのカセット収容部32から収納カセット48を取り出すことができるかを一目で判断することができるようになる。
なお、本実施の形態によるカセット収容装置30は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
例えば、図4に示すように、カセット収容装置30は、その側面が出納室20の壁22に隣接するよう設けられていてもよい。この場合、カセット収容装置30の各カセット収容部32における対向する2つの開口のうち一方の開口が壁22により塞がれるようになり、カセット収容装置30の各カセット収容部32に対して操作者は一方向のみからアクセスすることができるようになる。この場合、図4に示すように、各カセット収容部32においてカセット取出規制部34を当該カセット収容部32の一対の開口の両方に設ける必要はなく、一方の開口のみにカセット取出規制部34を設けるだけでよい。
また、図5に示すように、カセット収容装置30は、店舗10と出納室20との境界に設けられるようになっていてもよい。この場合、カセット収容装置30は、出納室20の壁22を貫通するよう設けられることとなる。そして、店員は、カセット収容装置30の各カセット収容部32に対して店舗10側(図5における左側)からアクセスするようになり、また、回収業者は、カセット収容装置30の各カセット収容部32に対して出納室20側(図5における右側)からアクセスするようになる。また、このようなカセット収容装置30においては、各カセット収容部32に設けられた一対のカセット取出規制部34はそれぞれ他のカセット取出規制部34から独立して制御部40により制御されるようになる。すなわち、各カセット収容部32に設けられた一対のカセット取出規制部34のうち一方のカセット取出規制部34(左側のカセット取出規制部34)は、店員による収納カセット48の取り出しを選択的に規制するようになり、カセット取出規制部34のうち他方のカセット取出規制部34(右側のカセット取出規制部34)は、回収業者による収納カセット48の取り出しを選択的に規制するようになる。なお、出納室20には、店舗の出納担当者を配置し、レジ担当の店員の権限と出納担当の店員の権限とを区別して、収納カセット48の取り出しを選択的に規制してもよい。
また、回収業者による収納カセット48の回収は、カセット収容装置30に収納カセット48が収納された状態で行ってもよい。すなわち、カセット収容装置30における少なくともカセット収容部32の一部を、権限を有する操作者により移動可能としてもよい。例えば、図1に示すようにカセット収容装置30が一体化されたものとなっている場合には、回収業者は、カセット収容装置30に収容された収納カセット48を回収するにあたり、このカセット収容装置30ごと回収してセンター70に運ぶようになっていてもよい。また、カセット収容装置30における各々のカセット収容部32が分割可能となっている場合には、例えば回収業者は、カセット収容装置30に収容された収納カセット48を回収するにあたり、この収納カセット48を収容するカセット収容部32ごと回収してセンター70に運ぶようになっていてもよい。
より詳細に説明すると、図6に示すように、カセット収容装置30として、店舗用のカセット収容ラック30mおよび回収用のカセット収容ラック30nから構成されるものを用いてもよい。ここで、店舗用のカセット収容ラック30mおよび回収用のカセット収容ラック30nは、それぞれ複数のカセット収容部32m、32nを有している。各カセット収容部32m、32nは、図2に示されるカセット収容部32と同様の構成となっている。ここで、店舗用のカセット収容ラック30mは出納室20に固定されるのに対し、回収用のカセット収容ラック30nは移動自在となっている。そして、これらのカセット収容ラック30m、30nはそれぞれ制御部40に接続されており、これらのカセット収容ラック30m、30nの各カセット収容部32m、32nに設けられたカセット取出規制部34は、それぞれ制御部40により制御されるようになっている。回収用のカセット収容ラック30nは、鎖や錠を用いて固定しても良いが、出納室内で固定される固定状態と固定解除状態が変更可能な固定部を備えるのが望ましい。この場合、固定部の固定状態の変更は、固定部を電気式にして制御部40からの指令に基づいて行ってもよく、固定部を機械式にして、鍵などにより手動で制御してもよい。
図6に示すようなカセット収容装置30においては、回収業者は、センター70から出納室20に貨幣を配送する際に、収納カセット48を回収用のカセット収容ラック30nに収容して運搬する。そして、回収用のカセット収容ラック30nが制御部40に接続されると、図1等で示したカセット収容装置30と同様に機能する。
また、回収業者は、出納室20からセンター70に貨幣を回収する際に、携帯するIDカードのID情報を端末60に読み取らせて回収命令を入力すると、または鍵によって固定を解除すると、回収用のカセット収容ラック30nの固定が解除される。このことにより、回収されるべき貨幣が収納された収納カセット48が収容されている回収用のカセット収容ラック30nは、出納室20から移動させることができるようになる。このようにして、回収業者は、回収用のカセット収容ラック30nごと回収し、このカセット収容ラック30nをセンター70まで運搬する。このとき、店舗に留めておくべき収納カセット48が、回収用のカセット収容ラック30nに収容されていると、端末60の警告表示とともに、対応するカセット収容ラック30nのカセット収容部32nの表示部38で赤ランプの点滅等の警告表示が行われる。
また、店舗用のカセット収容ラック30mと回収用のカセット収容ラック30nのように、複数のカセット収容ラックが設けられる場合、それぞれのカセット収容ラックに収容できる収納カセット48を、この収納カセット48の内容情報に基づいて決定してもよい。例えば、内容情報が未確定や、内容情報が確定しており所定範囲内の場合は、店舗用のカセット収容ラック30mには収納カセット48を収容可能で、回収用のカセット収容ラック30nには収納カセット48を収容不可とすることができる。これによって、店舗に留めておくべき収納カセット48が回収業者により回収されることはなくなる。