JP5578801B2 - コーティング層の物性値測定方法 - Google Patents
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または、電子ビーム物理蒸着法で柱状晶を有する遮熱コーティングを形成することができる。
この縦割れ、または柱状晶は、熱応力緩和効果があることから、TBCの長寿命化のために一部のガスタービンで適用されている。
また、縦割れ遮熱コーティングの物性値を推定することが可能な縦割れ遮熱コーティング層の物性値測定方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明のコーティング層の物性値測定方法は、
縦割れを含まない遮熱コーティング層と縦割れ遮熱コーティング層との厚さ比が異なる複数種の試験片を製造し、それぞれの試験片について熱伝導率及びヤング率の少なくとも一方の物性値を測定する過程と、測定された前記厚さ比の前記物性値から、測定された以外の厚さ比の当該物性値を推定する過程と、を備え、前記試験片の製造が、基材の表面にボンドコート層を形成し、前記ボンドコート層上にトップコート層を形成して、前記ボンドコート層と前記トップコート層とからなるコーティング層を前記基材上に形成して試験片基材を作成する過程と、ボンドコート層または、トップコート層形成を形成した後に試験片基材を熱処理する過程と、被検査面を形成する過程と、被検査面が形成された試験片基材の基材を溶解除去する過程と、を含み、前記トップコート層が、前記ボンドコート層側に設けられた、縦割れを含まない遮熱コーティング層と、前記縦割れを含まない遮熱コーティング層上に設けられた縦割れ遮熱コーティング層との2層以上の、試験片加工中に割れや欠けが発生しにくい積層構造である試験片の製造方法によることを特徴とする。
また、前記被検査面を形成する過程が、前記熱処理された試験片基材について、端部のR部を除去する過程であることを特徴とする。
被検査面を形成する際に、熱処理された試験片基材の端部のR部を除去することにより、全体として平坦な試験片となるため、物性値の測定精度を向上することができる。
本発明を適用した第1の実施形態は、縦割れ遮熱コーティング層を有するコーティング層の試験片を製造し、この試験片を用いて縦割れ遮熱コーティング層を有するコーティング層の熱伝導率を測定する方法である。
本実施形態の縦割れ遮熱コーティング層を有するコーティング層の試験片の製造方法は、基材の表面にボンドコート層とトップコート層とからなるコーティング層を形成して試験片基材を作成する過程(試験片基材の作成過程)と、コーティング層が形成された試験片基材を熱処理する過程(熱処理過程)と、被検査面を形成する過程(被検査面形成過程)と、被検査面が形成された試験片基材の基材を溶解除去する過程(基材除去過程)と、を備えている。以下、各過程について詳細に説明する。
先ず、図1を参照して、試験片基材の作成過程について説明する。
図1に示すように、遮熱コーティング層を有する基材(以下、試験片基材10と称す)は、基材1の表面にボンドコート層3とトップコート層4とからなるコーティング層2が設けられた積層構造体である。
基材1のサイズは、熱伝導率測定用のサンプルサイズとしてJIS R−1611 1997でφ8〜10mmの円板または凸多角形が規定されているが、φ10mmの円板が好ましく、後述する被検査面形成過程において、試験片基材10の端部のR部を除去する部分を考慮してφ13mm以上であることが好ましい。
また、基材1の厚さは、特に限定されるものではないが、熱処理過程等において反りが発生せず、且つ基材除去過程において容易に除去できる程度の厚さであることが好ましい。上記厚さとしては、基材1としてSUS304を用いた場合には、例えば厚さ4mmを用いることができる。
ボンドコート層3の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01mm以上1mm以下である。0.01mm未満では耐酸化性が不充分となる場合があり、1mmを超えると皮膜の延性や靱性が不充分となる場合がある。
トップコート層4の厚さは、約1mmとする。上述したように、コーティング層2の厚さを約2mmとすると、ボンドコート層3の厚さは1mm未満であるため、トップコート層4の厚さが支配的となるためである。
縦割れを含まない遮熱コーティング層5の材質は、層中に縦割れを含まないセラミックス層を形成するものであれば特に限定されるものではない。上記材質としては、例えば、YSZ(部分安定化ジルコニア)を挙げることができる。YSZ(部分安定化ジルコニア)は、安定化剤としてY2O3を添加して部分安定化させたZrO2である。また、YSZ以外にも、後述する縦割れ遮熱コーティング層6に適用する材質をセラミックス層中に縦割れが含まれない条件で製作したものを用いることが可能であるが、製造コストの観点からはYSZの適用が好ましい。
また、縦割れを含まない遮熱コーティング層5は、図1に示すように、層中に微細気孔5aが分散されたポーラス層であってもよい。なお、縦割れを含まない遮熱コーティング層5中に、微細気孔5aが均一に分散されていることが好ましい。
さらに、後述するように複数種の試験片の熱伝導率を測定するため、縦割れを含まない遮熱コーティング層5の微細気孔5aによる気孔率は、複数種の試験片間でほぼ同一とすることが好ましい。
また、後述するように複数種の試験片の熱伝導率を測定するため、縦割れ遮熱コーティング層6の縦割れ6aの分散状態は、均一に分散されていることが好ましく、複数種の試験片間でほぼ同一とすることが好ましい。ただし、縦割れ6aの分散状態を厳密に制御することは困難であるため、少なくとも縦割れ遮熱コーティング層6の溶射条件をそろえることが好ましい。
また、後述するコーティング層の熱伝導率の測定方法において、縦割れを含まない遮熱コーティング層5と縦割れ遮熱コーティング層6との厚さ比の異なる複数種の試験片を製造する際には、t=1mm且つT=0mmの水準、t=0.5mm且つT=0.5mmの水準、コーティング層2が割れない範囲で限りなくt=0mm且つT=1.0mmに近い水準の、少なくとも3水準の試験片を製造することが好ましい。
例えば、先ず、基板1上に耐酸化膜としてボンドコート層3を溶射により形成する。
次に、溶射ガンの先端(噴射口)を基材1に対して所定の溶射距離(溶射ガンと基材1との距離)に配置し、縦割れを含まない遮熱コーティング層5の材料であるYSZの粉末を溶射ガンから噴射して縦割れを含まない遮熱コーティング層5を形成する。具体的には、溶射距離は、例えば、通常の150mmから210mmに増加させることにより、気孔率を5%程度から8%にまで増加させることができる。また、溶射距離を短くすることにより、気孔率を低下させることも可能である。更に、これらの組み合わせにより、気孔率を1%程度から最大30%程度の気孔率まで適宜調整することができる。
次に、熱処理過程では、コーティング層2が形成された試験片基材10の熱処理を行う。この熱処理は、試験片基材10に、実製品における基材とボンドコート層との拡散熱処理と同じ熱履歴を施すために設けられている。
次に、被検査面形成過程では、被検査面を形成する。具体的には、熱処理された試験片基材10の端部のR部の除去を行う。上述したように試験片基材10は溶射により製作されており、図1に示すように基材の端部には溶射時のダレによってR部が形成される。したがって、熱伝導率を精度良く測定するために、試験片基材10の端部から長さLの部分を研削して除去する。
上記長さLは、R部を確実に除去できる長さであれば、特に限定されるものではないが、長さLを除去した後に試験片基材10のサイズがJIS規格であるφ10mmとなるように調整することが好ましい。具体的には、例えば、基材1のサイズをφ13mmとした場合には、端部からL=1.5mm除去することにより、φ10mmの全体として平坦な試験片とすることができる。
次に、基材除去過程では、被検査面が形成された試験片基材10の基材1を溶解して除去する。基材1の除去は、先ず、試験片基材10を予め用意した王水に浸漬させて、約60℃に加熱する。浸漬当初は、基材1の溶解により王水中に気泡が発生するが、王水への溶解量が飽和に近づくと気泡の発生が少なくなる。次に、気泡の発生が少なくなってきたら、新たな王水を用意して再び浸漬させる。これを何度か繰り返し、気泡の発生が完全もなくなったことを確認した後、コーティング層2を王水から取り出して十分に乾燥させる。なお、基材1の溶解に用いることができる酸は、上記王水に限られない。具体的には、例えば、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)等の溶液、又はそれらにインヒビター(腐食抑制剤)を加えた溶液を適宜用いることができる。
なお、基材除去過程において、ボンドコート層3が溶解除去されることが好ましい。
本実施形態のコーティング層の熱伝導率の測定方法は、上記方法により、縦割れを含まない遮熱コーティング層と縦割れ遮熱コーティング層との厚さ比が異なる複数種の試験片を製造し、それぞれの試験片について熱伝導率を測定する過程(測定過程)と、測定された厚さ比が異なる試験片の熱伝導率から、測定された以外の厚さ比の熱伝導率を推定する過程(推定過程)と、を備えている。以下、各過程について説明する。
測定過程では、上記方法により製造した、縦割れを含まない遮熱コーティング層と縦割れ遮熱コーティング層との厚さ比の異なる複数種の試験片について、それぞれ熱伝導率を測定する。
厚さ比が異なる複数種の試験片は、後述する推定過程における外挿で推定する値の精度を向上させるため、少なくとも3種以上用意することが好ましい。
また、厚さ比の異なる複数種の試験片としては、例えば以下の3種が挙げられる。
試験片1: 縦割れを含まない遮熱コーティング層/縦割れ遮熱コーティング層=1mm/0mm
試験片2: 縦割れを含まない遮熱コーティング層/縦割れ遮熱コーティング層=0.5mm/0.5mm
試験片3: 縦割れを含まない遮熱コーティング層/縦割れ遮熱コーティング層=0.1mm/0.9mm
ここで、上記試験片3では、縦割れを含まない遮熱コーティング層の比率を究極的には0mmに近いサンプルとすることが好ましい。
上記レーザフラッシュ法において、直径10mm、厚さ約1mmの均質な試験片の片面にパルスレーザを均一に照射する際のレーザ照射面は、特に限定されるものではなく、縦割れを含まない遮熱コーティング層側であっても良く、縦割れ遮熱コーティング層側であっても良い。
ここで、縦割れを含まない遮熱コーティング層側をレーザ照射面とする場合は、縦割れ遮熱コーティング層にレーザが均一に通過するというメリットがある。
一方、縦割れ遮熱コーティング層側をレーザ照射面とする場合は、縦割れ皮膜にレーザが均一に通過しないため、サンプルによる測定バラツキが大きくなるというデメリットがある。
なお、レーザ照射方向は、縦割れ遮熱コーティング層側からより、縦割れを含まない遮熱コーティング層側から照射したほうが、実機を模擬している。
次に、推定過程では、厚さ比が異なる複数種の試験片について実際に測定した熱伝導率のそれぞれの測定値から、実際に測定された以外の厚さ比の試験片の熱伝導率を、外挿により推定する。具体的には、図2に示すように、トップコート層中の縦割れ遮熱コーティング層の比率(%)を横軸とし、熱伝導率の測定値を縦軸として、厚さ比の異なる上記試験片1〜3の測定値をプロットする。次いで、測定値を外挿することにより、トップコート層中の縦割れ遮熱コーティング層の比率が100%の場合の熱伝導率を推定することができる。
本発明の第2の実施形態は、縦割れ遮熱コーティング層を有するコーティング層の試験片を製造し、この試験片を用いて縦割れ遮熱コーティング層を有するコーティング層のヤング率を測定する方法である。
本実施形態の縦割れ遮熱コーティング層を有するコーティング層の試験片の製造方法は、基板サイズ以外は、第1の実施形態と同様の方法を用いることができるため、説明を省略する。
本実施形態では、基材として、例えば、長さ106mm、幅16mm、厚さ4mmのSUS304からなる平板基材を用いることができる。
本実施形態のコーティング層のヤング率の測定方法は、第1実施形態と同様の方法により、縦割れを含まない遮熱コーティング層と縦割れ遮熱コーティング層との厚さ比が異なる複数種の試験片を製造し、それぞれの試験片についてヤング率を測定する過程(測定過程)と、測定された厚さ比の試験片のヤング率から、測定された以外の厚さ比のヤング率を推定する過程(推定過程)と、を備えている。以下、各過程について説明する。
測定過程では、第1実施形態で説明した方法により製造した、縦割れを含まない遮熱コーティング層と縦割れ遮熱コーティング層との厚さ比が異なる複数種の試験片について、それぞれヤング率を測定する。
厚さ比が異なる複数種の試験片の水準は、第1の実施形態と同様である。
図3は、本実施形態で用いるヤング率測定装置(装置名:MS−Fyme)の模式図である。本実施形態のヤング率の測定方法は、横共振法により測定した一次共振振動数を用いて算出する。
次に、図3に示すように、電極A及び電極Bに発振器の振動数を1Hzから徐々に増加させながら検出器の出力を観察し、最大振幅を生じた際の最も低い振動数を一次共振振動数として記録する。
次いで、上記一次共振振動数の値を用いて、下記(1)式により各温度におけるヤング率ER(GPa)を算出する。
次に、推定過程では、第1の実施形態の場合と同様に、厚さ比の異なる複数種の試験片について実際に測定したヤング率のそれぞれの測定値から、実際に測定された以外の厚さ比の試験片のヤング率を、外挿により推定する。具体的には、図2に示すように、トップコート層中の縦割れ遮熱コーティング層の比率(%)を横軸とし、ヤング率の測定値を縦軸として、厚さ比が異なる上記試験片1〜3の測定値をプロットする。次いで、測定値を外挿することにより、トップコート層中の縦割れ遮熱コーティング層の比率が100%の場合のヤング率を推定することができる。
2…コーティング層
3…ボンドコート層
4…トップコート層
5…縦割れを含まない遮熱コーティング層
5a…微細気孔
6…縦割れ遮熱コーティング層
6a…縦割れ
10…試験片基材
Claims (2)
- 縦割れを含まない遮熱コーティング層と縦割れ遮熱コーティング層との厚さ比が異なる複数種の試験片を製造し、それぞれの試験片について熱伝導率及びヤング率の少なくとも一方の物性値を測定する過程と、
測定された前記厚さ比の前記物性値から、測定された以外の厚さ比の当該物性値を推定する過程と、を備え、
前記試験片の製造が、基材の表面にボンドコート層を形成し、前記ボンドコート層上にトップコート層を形成して、前記ボンドコート層と前記トップコート層とからなるコーティング層を前記基材上に形成して試験片基材を作成する過程と、
ボンドコート層または、トップコート層形成を形成した後に試験片基材を熱処理する過程と、
被検査面を形成する過程と、
被検査面が形成された試験片基材の基材を溶解除去する過程と、を含み、
前記トップコート層が、前記ボンドコート層側に設けられた、縦割れを含まない遮熱コーティング層と、前記縦割れを含まない遮熱コーティング層上に設けられた縦割れ遮熱コーティング層との2層以上の、試験片加工中に割れや欠けが発生しにくい積層構造である試験片の製造方法によることを特徴とするコーティング層の物性値測定方法。 - 前記被検査面を形成する過程が、前記熱処理された試験片基材について、端部のR部を除去する過程であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング層の物性値測定方法。
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