以下、本発明の一実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。図1に示した車両のドア90は、板金のプレス部品で外殻壁91(インナーパネル及びアウターパネル)が構成され、ドア90の回動中心とは反対側の端部に、本発明の車両用ドアロック装置10を内蔵している。
車両用ドアロック装置10は、ドア90の回動中心とは反対側のドア端部壁91Aと、ドア90の車内側に配置されるドア内側壁91Bとの角部内側に固定され、そのコーナー部に沿うように略直角に屈曲した(略L字形の)ハウジング11の内部に複数の部品を組み付けてなる。そして、車両用ドアロック装置10の外面のうち、屈曲部より一方側の第1外側面11Aがドア端部壁91Aに内面から宛がわれ、屈曲部を挟んで第1外側面11Aとは反対側の第2外側面11Bがドア内側壁91Bに内面から宛がわれている。
車両用ドアロック装置10の第1外側面11A及び第2外側面11Bと、ドア90のドア端部壁91A及びドア内側壁91Bとの間には、本発明に係る帯状シール部材100が押し潰された状態で挟まれている。帯状シール部材100については後述することとし、まずは、それ以外の構成について説明する。
車両のドア枠92の内面にはストライカ93が設けられている。ストライカ93は、例えば断面円形の線材を屈曲させた門形構造をなし、その門形構造の1対の脚部がドア枠92の内面から突出しかつ内外方向に並べられている。これに対し、図2に示すようにドア90の外殻壁91のうち、ドア端部壁91Aとドア内側壁91Bとが交わる角部には、ドア90の内外方向に延びたストライカ挿入孔94が切り欠き形成されている。そして、ドア90を閉めたときに、ストライカ93の1対の脚部のうち外寄りに配置された一方の脚部がストライカ挿入孔94に進入して、車両用ドアロック装置10と係合する(図9を参照)。なお、図8及び図9には、ストライカ93のうち車両用ドアロック装置10と係合する部分のみの断面図が示されている。
車両用ドアロック装置10は、ドア90のドア端部壁91Aに対向した部分にストライカ93と係脱するラッチ機構を備えている。また、ドア90のドア内側壁91Bに対向した部分には、本発明に係る「ロック機構」を備えている。ロック機構は、ドア90に備えられたドアロック操作部(具体的には、車内面のドアロックノブ95及び車外面のキーシリンダ)の操作により、車両用ドアロック装置10とストライカ93とを係合状態でロックした「ロック状態」と、そのロックを解除した「アンロック状態」とに切り替え可能となっている。さらに、これらラッチ機構とロック機構との中間部分には動力伝達機構が備えられている。動力伝達機構は、ドア90の車内面に備えられたインサイドドアハンドル96(図4参照)又は車外面に備えられたアウトサイドドアハンドル97(図6参照)に対する操作力をラッチ機構に伝達する。ここで、上記ロック機構は、動力伝達機構における力の伝達経路を途中でカットしたり繋いだりすることができ、力の伝達経路をカットした状態が「ロック状態」であり、力の伝達経路を繋いだ状態が「アンロック状態」となる。そして、ラッチ機構、ロック機構及び動力伝達機構のほぼ全体がハウジング11に収容されている。
車両用ドアロック装置10の外壁を構成するハウジング11は、ハウジングベース50とハウジングカバー70と機構ケース60とから構成されている(図1及び図2参照)。ハウジングベース50は、容器状の樹脂成形品であって、図1に示すように、ドア内側壁91Bに対向したメインベース部55とドア端部壁91Aに対向したサブベース部51とからなる。そして、メインベース部55の開口部がハウジングカバー70によって覆われ、サブベース部51の内側に機構ケース60が嵌め込まれている。
サブベース部51は、ドア90のドア端部壁91Aに対向したサブベース部主板壁52を備え(図3参照)、その上縁部とメインベース部55から離れた一側縁部とからドア端部壁91Aに向かってサブベース部囲壁53が張り出している。サブベース部主板壁52の上縁部は、メインベース部55から離れるに従って斜め下方に傾斜しており、サブベース部主板壁52の一側縁部は、メインベース部55の開口面に沿って延びている。
一方、メインベース部55は、ドア90のドア内側壁91Bに対向したメインベース部主板壁56を備え(図11(A)参照)、その上縁部とサブベース部51から離れた一側縁部とからドア内側壁91Bに向かってメインベース部囲壁57が張り出している。サブベース部囲壁53とメインベース部囲壁57とは一体になって連続している。
機構ケース60は、後述するラッチ機構を内蔵している。機構ケース60は、略偏平容器状の樹脂部品601を、板金で構成されたアウタプレート602とインナプレート603(図9及び図10参照)とで挟んでなり、アウタプレート602が、車両用ドアロック装置10の第1外側面11Aを構成してドア90のドア端部壁91Aに宛がわれている。
これに対し、インナプレート603は、サブベース部主板壁52の内面に宛がわれている。図3に示すように、サブベース部主板壁52を貫通した複数の螺子52N,52Nを、インナプレート603及び樹脂部品601に形成された螺子孔に螺合することで、機構ケース60がハウジングベース50(サブベース部51)に固定されている。そして、機構ケース60の後方と上方及び一側方とが、サブベース部51(サブベース部主板壁52及びサブベース部囲壁53)によって覆われている。
機構ケース60のアウタプレート602は、図2に示すようにボルト固定部60Bを例えば3カ所に備えている。そして、ドア端部壁91Aの内面にアウタプレート602(第1外側面11A)を宛がい、ドア端部壁91Aを外側から貫通した複数のボルト(図示せず)をボルト固定部60Bに螺合することで、車両用ドアロック装置10がドア90に固定されている。また、アウタプレート602のうち、メインベース部57から離れた一側縁部は、サブベース部主板壁52側に直角曲げされている。なお、アウタプレート602のボルト固定部60Bに相当する部位をインナプレート603に設けてもよい。
図2に示すように、機構ケース60のうちドア90のドア端部壁91Aに宛がわれる部分(車両用ドアロック装置10の第1外側面11A)には、ストライカ受容溝62が形成されている。ストライカ受容溝62は、ドア90に形成されたストライカ挿入孔94に対応して略水平方向に延びており、そのストライカ受容溝62の一端のストライカ受容口62Kが、車両用ドアロック装置10の第2外側面11Bに開口している。そして、ストライカ挿入孔94を通してストライカ受容溝62がドア90の外部に露出して、ドア90を閉めた際に、ストライカ93がストライカ受容口62Kからストライカ受容溝62内に進入するようになっている。
図8及び図9に基づいてラッチ機構について説明する。ラッチ機構の基本構造は、従来の車両用ドアロック装置に備えられたものと同様であり、機構ケース60の内部に組み付けられたラッチ13、ラチェット14(「ポール」と呼ばれることもある)等で構成されている。図8に示すようにラッチ13は、互いに平行になった第1と第2の係止爪13A,13Bを有し、それら第1と第2の係止爪13A,13Bの間がストライカ受容部13Cになっている。ラッチ13のうち第1と第2の係止爪13A,13B同士を連絡する部分に備えたラッチ回動軸13Jが、車両用ドアロック装置10の第1外側面11Aに開放したストライカ受容溝62より上側部分に回動可能に支持されて、ラッチ13が第1外側面11Aと平行な面内で回動する。ラッチ13は、ドア90を開けた状態で、機構ケース60に備えたラッチストッパ60Xと図示しないトーションバネとにより、図8に示すアンラッチ位置に位置決めされている。そして、ドア90を閉めた際には、図8から図9への変化に示すように、ラッチ13は、ストライカ受容溝62内に進入したストライカ93に押されて回動しながらストライカ93をストライカ受容部13Cに受容し、図9に示すフルラッチ位置に至る。
ここで、ラッチ13がラチェット14に係合した状態において、ドア90が勢いよく閉められた場合、ラッチ13はフルラッチ位置を越えて回動(オーバーストローク)するが、その場合には、ラッチ13の第2係止爪13Bが機構ケース60の側壁61に当接して過剰なオーバーストロークが禁止される。この側壁61は、板金製のアウタプレート602の一側縁部をサブベース部51側に直角曲げすることで構成されているので、ラッチ13の衝撃に十分耐えることができる。
ラチェット14は、図9に示すようにラッチ13をフルラッチ位置(ストライカ93と噛み合った位置)に保持するためのものであり、ストライカ受容溝62より下方位置に配置されたラチェット回動軸14Jを中心にしてラッチ13と同じ平面内で回動する。ラチェット14は、通常は、機構ケース60に備えたラチェットストッパ60Dとトーションバネ(図示せず)とにより、図8及び図9の実線で示す原点位置に位置決めされている。この原点位置では、ラチェット14とラッチ13の第1係止爪13A及び第2係止爪13Bとが干渉可能となり、ラッチ13がフルラッチ位置に配置されると、ラチェット14とラッチ13の第2係止爪13Bとが干渉してラッチ13がフルラッチ位置に保持される。
一方、ラチェット14が原点位置から図9における時計回りに回動して、同図の二点鎖線で示したリリース位置に至ると、ラチェット14とラッチ13の第1係止爪13A及び第2係止爪13Bとが干渉しなくなる。従って、ラッチ13をフルラッチ位置に保持した状態からラチェット14がリリース位置に至ると、ラッチ13はフルラッチ位置からアンラッチ位置に向かって(ストライカ93との噛み合いが解除される方向に)回動可能になる。即ち、ドア90を開けることが可能になる。
次に、ロック機構及び動力伝達機構の構成を説明する。ロック機構及び動力伝達機構は、ドア90に設けられたドアロックノブ95及びキーシリンダ(図示せず)の操作により回動するアクティブレバー25、ドア90に備えたインサイドドアハンドル96の操作により回動するインサイドオープンレバー20、ドア90に備えたアウトサイドドアハンドル97の操作により回動するアウトサイドオープンレバー17、アウトサイドオープンレバー17に対して傾動可能に連結されたオープンリンク19、ラチェット回動軸14Jを中心にしてラチェット14と一体回転するリフトレバー16等を備えている。
インサイドオープンレバー20は、第2外側面11Bと直交する方向を向いたインサイドオープンレバー回動軸20Jを中心にして回動する。インサイドオープンレバー回動軸20Jは、車両用ドアロック装置10の下端寄り位置に配置されている。インサイドオープンレバー20とインサイドドアハンドル96との間はケーブルW1(図4参照)によって接続されている。詳細には、ケーブルW1は、中空構造のアウターケーブルの内側にインナーケーブルが移動可能に挿通された、所謂、コントロールケーブルであり、インサイドオープンレバー20の下端部に設けられたケーブル係止片20A(図10参照)にケーブルW1のうち、アウターケーブルの端部から露出したインナーケーブルが係止されている。ここで、インサイドドアハンドル96は本発明における「ハンドル」に相当し、ケーブルW1は本発明の「ハンドル連動部材」に相当し、ケーブル係止片20Aは、本発明の「第1動力入力部」に相当する。なお、ケーブルW1に替えてロッドを用いてもよい。
図6に示すように、アウトサイドオープンレバー17は、第1外側面11Aと直交する方向を向いたアウトサイドオープンレバー回動軸17Jを中心に回動する。アウトサイドオープンレバー回動軸17Jは、ラッチ13及びラチェット14より下方に配置されている。また、アウトサイドオープンレバー17は、アウトサイドオープンレバー回動軸17Jから相反する方向に突出した支持アーム17Aと操作アーム17Dとを備え(図11参照)、操作アーム17Dの先端部に、図示しないロッドを介してアウトサイドドアハンドル97が連結されている。また、図12及び図13に示すように、支持アーム17Aの先端に備えた受圧片17Cには、インサイドオープンレバー20に備えた押上当接部20Bが下から当接可能となっている。
アクティブレバー25は、第2外側面11Bと直交する方向を向いたアクティブレバー回動軸25Jを中心にして、図12に示すアンロック位置と、図13に示すロック位置との間で回動する。アクティブレバー25は、車両用ドアロック装置10に内蔵(ハウジング11に固定)された節度スプリング27(図11参照)によって付勢されており、アンロック位置とロック位置との中間位置で止まらない(アンロック位置とロック位置とのどちらかに位置決めされる)ようになっている。また、アクティブレバー回動軸25Jもインサイドオープンレバー回動軸20Jと同様に、車両用ドアロック装置10の下端寄り位置に配置されている。
アクティブレバー25とドアロックノブ95との間はケーブルW2(図4参照)によって接続されている。詳細には、図10に示すように、アクティブレバー25は、アクティブレバー回動軸25Jから上方に張り出した第1扇形突片25Aと、アクティブレバー回動軸25Jから斜め左下方に張り出した扇形の第2扇形突片25Dとを備えており、第2扇形突片25Dの下端部からケーブル係止片25E(本発明の「第2動力入力部」に相当する)が張り出している。また、ケーブルW2は、中空構造のアウターケーブルの内側にインナーケーブルが移動可能に挿通された、所謂、コントロールケーブルであり、アウターケーブルの端部から露出したインナーケーブルがケーブル係止片25Eに接続されている。なお、ケーブルW2の替わりにロッドを用いてもよい。
オープンリンク19は、上下方向に延びた形状をなしており、その下端部がアウトサイドオープンレバー17における支持アーム17Aの先端部に傾動可能に連結され、上端部に押上突片19Cが形成されている(図11参照)。オープンリンク19は、アウトサイドオープンレバー17の回動によって上下動する。また、オープンリンク19とアクティブレバー25は、両者からそれぞれ突出したロック解除片19Bとアクティブ作用アーム25Cとで連結されており(図12参照)、アクティブレバー25の回動に伴い、オープンリンク19がその下端部を中心にしてロック位置とアンロック位置との間で傾動する。ここで、オープンリンク19とアウトサイドオープンレバー17との間には、トーションバネ29が設けられ、このトーションバネ29によってオープンリンク19は、アンロック位置側に付勢されている。
リフトレバー16は、その回動中心(ラチェット回動軸14J)からストライカ受容口62K側に向かって突出しかつ先端部が折れ曲がった傾動アーム16Aを備えている(図11参照)。そして、オープンリンク19がアンロック位置のとき、オープンリンク19の押上突片19Cが、リフトレバー16の傾動アーム16Aに下方から突き合わされる。
図12に示すようにアクティブレバー25がアンロック位置(オープンリンク19がアンロック位置)のときにインサイドドアハンドル96を操作すると、その操作力は、インサイドオープンレバー20(押上当接部20B)、アウトサイドオープンレバー17(受圧片17C)、オープンリンク19(押上突片19C)、リフトレバー16(傾動アーム16A)の順に伝達されて、ラチェット14が原点位置からリリース位置に向かって回動する。即ち、ドア90が閉じた状態でインサイドドアハンドル96を操作すると、ラッチ13とラチェット14との係合が解除されて、ドア90を開けることが可能となる。
また、アクティブレバー25がアンロック位置のときにアウトサイドドアハンドル97を操作すると、その操作力は、アウトサイドオープンレバー17、オープンリンク19、リフトレバー16の順に伝達され、インサイドドアハンドル96を操作したときと同様に、閉じた状態のドア90を開けることが可能となる。
一方、アクティブレバー25がアンロック位置から図13に示すロック位置に移動すると、オープンリンク19のロック解除片19Bがアクティブレバー25のアクティブ作用アーム25Cに押し上げられて、オープンリンク19がアンロック位置からロック位置へと移動する。そのロック位置では、オープンリンク19の押上突片19Cが、リフトレバー16における傾動アーム16Aの先端部下方からずらされるので、オープンリンク19とリフトレバー29とが当接不可能となる。即ち、オープンリンク19とリフトレバー16との間で力の伝達が遮断される。従って、ドア90が閉じた状態で、インサイドドアハンドル96又はアウトサイドドアハンドル97を操作しても、ラッチ13とラチェット14との係合は維持されることになり、ドア90を開けることは不可能となる。
ここで動力伝達機構は、インサイドオープンレバー20、アウトサイドオープンレバー17、オープンリンク19、リフトレバー16によって構成されている。また、本発明の「ロック機構」は、アクティブレバー25とオープンリンク19とによって構成されている。
なお、アクティブレバー25は、ドア90の車内面に備えたドアロックノブ95だけでなく、車外面に備えたキーシリンダ(図示せず)によってもアンロック位置とロック位置とに切り替えることができる。詳細な説明は省略するが、キーシリンダから入力した力は、キー操作伝達リンク30(図10〜図13参照)を介してアクティブレバー25に伝達される。
さらに、アクティブレバー25は、ドアロックノブ95やキーシリンダ以外にも、車内の集中ロックや無線キーによってアンロック位置とロック位置とに切り替えることができる。そのために、図10に示したモータ22(本発明の「電気駆動源」に相当する)がハウジング11に内蔵されている。モータ22は、ハウジング11のうちアクティブレバー25の上方に配置され、モータ22から斜め下方に延びた回転出力軸にウォームギヤ23が固定されている。また、ウォームギヤ23に噛合するウォームホイール24が、ホイール回転軸24Jを中心に回転し、そのホイール回転軸24Jは、アクティブレバー回動軸25Jとモータ22との中間位置に配置されている。
図10に示すように、ウォームホイール24は、アクティブレバー25の第1扇形突片25Aとハウジング11のメインベース部主板壁56との間に配置されており、第1扇形突片25Aに貫通形成された円弧孔25Sにホイール回転軸24Jが突入している。図12に示すように、ウォームホイール24のうち第1扇形突片25Aとの対向面には、ホイール回転軸24Jを挟んだ2位置に回転押圧突部24A,24Aが突出形成されている。これに対し、第1扇形突片25Aのウォームホイール24との対向面には、ウォームホイール24が回転したときに回転押圧突部24A,24Aが進入可能な係合溝25Mが陥没形成されている。
ウォームホイール24は、通常は、回転押圧突部24A,24Aが円弧孔25Sの周方向に沿って並んだ位置(図12参照)に保持されていて、集中ロックや無線キーをロック操作すると、ウォームホイール24が図12における反時計回り方向に180度回転する。すると、そのウォームホイール24の回転中に一方の回転押圧突部24Aが係合溝25Mに進入してから係合溝25Mにおける左側の溝内面25Nを押圧し、アクティブレバー25が反時計回り方向に回動して、図12に示したアンロック位置から図13に示したロック位置に切り替わる。
一方、集中ロックや無線キーをアンロック操作すると、ウォームホイール24が図13における時計回り方向に180度回転する。すると、ウォームホイール24の回転中に一方の回転押圧突部24Aが係合溝25Mに進入してから係合溝25Mにおける右側の溝内面25Lを押圧し、アクティブレバー25が時計回り方向に回動して、図13に示したロック位置から図12に示したアンロック位置に切り替わる。
上記したモータ22やアクティブレバー25等の各部品は、ハウジングベース50のメインベース部55に組み付けられている。詳細には、メインベース部主板壁56の上端部にはモータ22が組み付けられている。メインベース部主板壁56のほぼ中央部からハウジングカバー70に向かってホイール回転軸24Jが起立しており、そこにウォームホイール24が回動可能に支持されている。また、ホイール回転軸24Jの斜め下方位置からハウジングカバー70に向かってアクティブレバー回動軸25Jが起立しており、そこにアクティブレバー25が回動可能に支持されている。さらに、メインベース部主板壁56のうちサブベース部51に近い位置には、アクティブレバー25の位置(ロック位置、アンロック位置)を検出するための検出スイッチ26がモータ22と隣り合わせにして設けられている
メインベース部主板壁56の上端部のうち、モータ22よりもサブベース部51から離れた側端部にはコネクタ本体28が設けられている。コネクタ本体28は有底角筒状の雌コネクタであり、側方に張り出した1対のフランジ部28F,28Fがメインベース部主板壁56の内面から起立した支持柱(図示せず)とハウジングカバー70の内面から突出した押え柱70B,70Bとの間で挟持されている。
メインベース部主板壁56の上端寄り位置には、板金を打ち抜いて形成されたバスバー回路21が敷設されている。バスバー回路21は、メインベース部主板壁56の内面から突出した位置決めピン56A,56Aによって位置決めされ、ハウジングカバー70の内面から突出したバスバー押え壁70A,70Aとメインベース部主板壁56との間で挟まれて位置決めピン56A,56Aからの抜け止めが図られている。そのバスバー回路21の一端部を曲げ起こしてなるオスターミナルに検出スイッチ26及びモータ22が接続され、バスバー回路21の他端部を曲げ起こしてなるオスターミナルがコネクタ本体28の底壁を貫通して内側で起立している。そして、コネクタ本体28に接続された図示しない電気ケーブルによって、モータ22に対する給電及び検出スイッチ26と図示しない車載制御装置との間の通信が行われるようになっている
メインベース部主板壁56の上縁部は、サブベース部51側(ドア端部壁91A側)の前端部が略水平に延び、途中で緩やかに屈曲して上方に傾斜している。また、メインベース部主板壁56の上縁部とサブベース部51から離れた一側縁部の間の角部は円弧状に湾曲している。さらに、メインベース部主板壁56の一側縁部は波形に湾曲しており、下方に向かうに従ってドア端部壁91A側に接近すると共に、下端寄り部分がドア端部壁91Aから離れる側に屈曲して斜め下方に延びている。そして、メインベース部囲壁57は、図10に示すように、メインベース部主板壁56の上縁部全体と一側縁部全体とに沿って連続して延びている。また、メインベース部囲壁57の先端部には外側に張り出したフランジ部57Fが形成されている。フランジ部57Fは、メインベース部囲壁57の下端寄り部分を除く全体に亘って連続して設けられている。メインベース部囲壁57の下端寄り部分は他の部分よりも高くなっており、前記ケーブルW1,W2を通すために略U字形の切り欠き部57A,57Aが形成されている。なお、本実施形態では、各ケーブルW1,W2のアウターケーブルに備えた端部口金が切り欠き部57A,57Aに固定されている。
メインベース部55の開口部を覆ったハウジングカバー70は樹脂成形品であって、メインベース部主板壁56に対向したハウジングカバー主板壁71とその外縁部からメインベース部55に向かって張り出したハウジングカバー囲壁72とを有している。ハウジングカバー主板壁71は、車両用ドアロック装置10の第2外側面11Bを構成してドア90のドア内側壁91Bに宛がわれている。ハウジングカバー主板壁71の上縁部及びサブベース部51から離れた一側縁部は、メインベース部主板壁56の上縁部及び一側縁部と同一の輪郭となっており(図11参照)、それら上縁部及び一側縁部からハウジングカバー囲壁72が張り出している。ハウジングカバー囲壁72の先端部には外側に張り出したフランジ部72Fが形成されている。フランジ部72Fは、ハウジングカバー囲壁72の全体に亘って連続して設けられており、そのフランジ部72Fとメインベース部囲壁57のフランジ部57Fとが重ね合わされて、例えば、レーザー溶着により接合されている。
ハウジングカバー主板壁71のうち、コネクタ本体28との対向位置には、コネクタ挿通口73が貫通形成されている(図4,図7,図11参照)。コネクタ挿通口73は、1対の直線部とそれら1対の直線部の端部同士を連絡した1対の円弧部とを有した形状(略小判形)をなしており、そのコネクタ挿通口73にコネクタ本体28の開口端が臨んでいる。
コネクタ挿通口73の開口縁からは、ドア90のドア内側壁91Bに向かって円筒状のコネクタガイド74が起立している。コネクタガイド74の内径は、コネクタ挿通口73の円弧部の直径と同一となっている。コネクタガイド74とコネクタ本体28とが第2外側面11Bと直交する同軸線上に配置されて、本発明の「コネクタ」を構成している。そして、コネクタガイド74は、車両用ドアロック装置10をドア90に組み付けた状態でドア内側壁91Bに形成された貫通孔91Cの内側を貫通する(図1参照)。
図2及び図4に示すように、ハウジングカバー70は、メインベース部55の開口部のうち下端部を除く全体を覆うように構成されており、メインベース部55の下端部には、ハウジングカバー70で覆われずに内部が露出した露出開口部58が形成されている。この露出開口部58は、アクティブレバー25とケーブルW2との接続作業及び、インサイドオープンレバー20とケーブルW1との接続作業を行うために設けられており、露出開口部58の奥側には、アクティブレバー25のケーブル係止片25Eとインサイドオープンレバー20のケーブル係止片20Aとが配置されている。
図2及び図4に示すように、ハウジングカバー主板壁71の外面(車両用ドアロック装置10の第2外側面11B)には、複数の排水誘導路76,76が突出形成されている。排水誘導路76,76は、第2外側面11Bから段付き状に突出した突条で構成されている。排水誘導路76,76は、コネクタガイド74(コネクタ挿通口73)より下方かつ露出開口部58より上方で対をなして互いに平行に設けられており、サブベース部51から離れるに従って直線状に下るように傾斜している。
さて、図2に示すように、車両用ドアロック装置10のうち、ドア90のドア端部壁91A及びドア内側壁91Bに宛がわれる第1外側面11A及び第2外側面11Bには、帯状シール部材100が敷設されている。帯状シール部材100は、柔軟性を有するエラストマー(ゴムやゴム状弾性を有する合成樹脂)を所定の長さに成形、或いは、所定の長さに分断したものであり、例えば、断面が矩形状をなしている。そして、例えば、帯状シール部材100の一側面に貼着又は塗布された粘着材(両面テープ又は接着剤等)によって第1外側面11A及び第2外側面11Bに貼り付けられている。なお、帯状シール部材100の材質としては、ポリ塩化ビニルを基材とした独立気泡構造のものが特に好ましく、その他、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリオレフィン系のエラストマーでもよい。
帯状シール部材100は、車両用ドアロック装置10の第1外側面11A及び第2外側面11Bに開放したストライカ受容溝62、コネクタガイド74及び露出開口部58を、上方から覆うように配置されている。詳細には、帯状シール部材100は、車両用ドアロック装置10の第1外側面11Aのうち、第2外側面11Bから離れた側の一側縁部に沿って延びかつ下端部がストライカ受容溝62より下方に位置する第1シール部101と、第1シール部101に連続し、第1外側面11Aの上縁部全体に亘って延びた第2シール部102と、第2シール部102に連続し、第2外側面11Bの上縁部全体に亘って延びた第3シール部103と、第3シール部103に連続し、コネクタガイド74の周りに半周以上巻回された第4シール部104とから構成されている。第4シール部104の末端側は、コネクタガイド74の接線方向に沿って斜め上方に延び、第3シール部103に下方から突き合わされている。
帯状シール部材100は、上記した第1シール部101、第2シール部102、第3シール部103及び第4シール部104が連なって延びた単一部品で構成されている。また、帯状シール部材100は、第1外側面11A及び第2外側面11Bに取り付ける前の形状(原形)が直線状であり、その両端部間で幅及び厚さ寸法が一定となっている。
ここで、本実施形態では、サブベース部55におけるサブベース部囲壁53の内側に機構ケース60が嵌合しており、それらサブベース部囲壁53の上縁部と機構ケース60の上縁部との間には、第1外側面11Aの上縁部に沿って延びかつ第1外側面11Aに開放した嵌合隙間S2が形成されている(図7参照)。これに対し、帯状シール部材100(詳細には、第2シール部102)は、第1外側面11Aの上縁部全体に亘って貼り付けられているから、帯状シール部材100(第2シール部102)によって嵌合隙間S2の防水が図られている。
図5及び図7に示すように、車両用ドアロック装置10の第2外側面11B(ハウジングカバー主板壁71の外面)の上縁部のうち、第1外側面11Aとの角部からコネクタガイド74の上方位置に至る帯状領域75Aと、コネクタガイド74を包囲した環状領域75Bは、それらより下側部分に対して段付き状に隆起した取付台座75となっている。この取付台座75の座面は、帯状領域75Aと環状領域75Bとで面一に繋がっており、帯状領域75Aの座面は、環状領域75Bから離れてサブベース部51に接近するに従って徐々に低くなっている。そして、取付台座75の座面に、帯状シール部材100の一部(第3シール部103と第4シール部104)が貼り付けられている。なお、取付台座75の幅は、帯状シール部材100の幅より若干幅広である。
そして、図1に示すように、車両用ドアロック装置10は、コネクタガイド74がドア内側壁91Bの貫通孔91Cを貫通し、車両用ドアロック装置10の外面(第1外側面11A及び第2外側面11B)とドア90の外殻壁91(ドア端部壁91A及びドア内側壁91B)の内面との間で帯状シール部材100を押し潰した状態で、ドア90に組み付けられている。このとき、帯状シール部材100のうち、第1シール部101と第2シール部102とがストライカ受容溝62を上方と側方とから覆い、第3シール部103が露出開口部58を上方から覆い、第3シール部103と第4シール部104とが、ドア内側壁91Bの貫通孔91Cとコネクタガイド74との間の環状隙間をシールしている。
本実施形態の車両用ドアロック装置10の構成に係る説明は以上である。次に、この車両用ドアロック装置10の作用効果について説明する。
雨天走行時又は洗車時にドア90に水が掛かっても車両用ドアロック装置10はドア90の外殻壁91に覆われているので、車両用ドアロック装置10に直接水がかかることはない。しかしながら、ドア90の隙間(例えば、ドアガラスの昇降口)から侵入した水が車両用ドアロック装置10の上面にかかる場合がある。このような場合でも、帯状シール部材100がその下方領域に対して「庇」として機能するから、水が第1外側面11Aや第2外側面11Bを伝わり落ちることを防止することができる。これにより、コネクタ(コネクタガイド74及びコネクタ本体28)やケーブルW1,W2におけるインサイドオープンレバー20及びアクティブレバー25との接続端部(詳細には、アウターケーブルから露出したインナーケーブル)の水濡れを防止することができ、ストライカ受容溝62から車両用ドアロック装置10内に水が侵入することを防止することができる。
また、仮に、車両用ドアロック装置10の第2外側面11Bで結露が発生して、水滴が第2外側面11Bを伝わり落ちたとしても、その水は、排水誘導路76,76によって、露出開口部58の側方に誘導されるから、ケーブルW1,W2の接続端部(インナーケーブル)の水濡れをより確実に防止することができる。
このように、本実施形態の車両用ドアロック装置10によれば、第1外側面11Aの上縁部全体と第2外側面11Bの上縁部全体とに亘って延び、コネクタガイド74の周りに半周以上巻回させた帯状シール部材100によって、ストライカ受容溝62の上方全体と、露出開口部58の上方全体と、コネクタ(コネクタガイド74及びコネクタ本体28)の上方全体及び一側方全体とを覆うことができる。即ち、本実施形態によれば、帯状シール部材100を設けるだけで、コネクタ(コネクタガイド74及びコネクタ本体28)やケーブルW1,W2の接続端部(インナーケーブル)の水濡れを防止することができ、さらには、ストライカ受容溝62からの水の侵入を防止することができるから、コストを抑えて防水性を確保することができる。
また、本実施形態によれば、サブベース部囲壁53と機構ケース60との間に形成され第1外側面11Aに開放した嵌合隙間S2を、帯状シール部材100(第2シール部102)によって防水することができる。
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、帯状シール部材100における第4シール部104の末端側が、コネクタガイド74の接線方向に沿って斜め上方に延び、第3シール部103に下方から突き合わされていたが、図14に示すように、第4シール部104を末端部に至るまでコネクタガイド74の周りに巻き付けてもよいし、図15に示すように、第4シール部の末端側をコネクタガイド74の接線方向に沿って斜め下方に延ばしてもよい。何れの構成でも防水性を確保することができるが、防塵性まで考慮すれば、第4シール部104の末端部と第3シール部103との間の隙間がより小さい構成(図14に示す構成)が好ましい。
(2)上記実施形態では、帯状シール部材100がその一端から他端まで連なった単一部品で構成されていたが、帯状シール部材100を複数のシール断片で構成して、それらシール断片同士を繋ぎ合わせて帯状シール部材100が構成されていてもよい。例えば、複数のシール断片を、第1外側面11Aの一側縁部及び上縁部、第2外側面11Bの上縁部及びコネクタガイド74を上方及び側方から囲うように貼り付けて、ハウジング11の外面(第1外側面11A及び第2外側面11B)とドア90の外殻壁91(ドア端部壁91A及びドア内側壁91B)との間で複数のシール断片が押し潰されたときに、それら複数のシール断片同士が隙間無く一本に繋がって帯状シール部材100が構成されるように構成してもよい。
(3)上記実施形態では、帯状シール部材100の寸法がその両端部間で一定であったが、厚みや幅の寸法を異ならせてもよい。その場合には、厚みや幅を段付き状に変化させてもよいし徐変させてもよい。
(4)上記実施形態では、ハウジングベース50とハウジングカバー70との接合面(フランジ部57F,72Fの接合面)がハウジング11の上面に配置されていたが、図16(A)及び同図(B)に示すように、互いに接合することでハウジング11を構成する複数のハウジング構成部品150,170の接合面の一部を、車両用ドアロック装置10の第2外側面11Bの上縁部に配置して、第2外側面11Bに配置された接合面の一部を、帯状シール部材100によって防水してもよい。複数のハウジング構成部品150,170を樹脂で構成して、それらの接合面を溶着(例えば、レーザー溶着)した場合に、第2外側面11Bに配置された接合面に溶着不良があり防水が不完全であったとしても、帯状シール部材100によって防水性を確保することができる。なお、図16では、ハウジング構成体150,170の接合面を第2外側面11Bに設けた構成を例示したが、接合面の一部を第1外側面11Aの上縁部に設けてその接合面を帯状シール部材100によって防水した構成としてもよい。
ここで、図16(B)に示すように、第2外側面11B(又は第1外側面11A)の上端縁から帯状シール部材100の幅寸法分だけ下方にずれた位置に、上縁部に沿って突出した段差部D1を形成しておけば、その段差部D1をガイドにして帯状シール部材100を取り付けることができるから、帯状シール部材100の取り付け作業性が向上する。
(5)上記実施形態のように、帯状シール部材100を車両用ドアロック装置10の外面に貼り付ける構成とした場合には、図17に示すように、車両用ドアロック装置10の第1外側面11A又は第2外側面11Bに、帯状シール部材100の貼り始めの位置を示すマーク11C,11Cを設けてもよい。マーク11C,11Cを設けることで、帯状シール部材100の貼り始め位置が一定になるから、貼り始め位置とは反対側で帯状シール部材100が余ったり、不足することを防止することができる。
(6)本発明の車両用ドアロック装置10は、上記実施形態のように、回動式(ヒンジ式)のドア90に取り付けてもよいし、スライド式のドアに取り付けてもよい。
(7)上記実施形態の帯状シール部材100は、エラストマを予め帯状に成形したものであったが、ペースト状のシーリング材を車両用ドアロック装置10の第1外側面11Aの上縁部、第2外側面11Bの上縁部等にライン状に塗布してこれを固化させたものでもよい。
(8)上記実施形態では、帯状シール部材100が、ドアロック装置10の第2外側面11Bの上縁部に沿って延びていたが、必ずしも上縁部に沿って延びている必要はなく、例えば、図18に示すように、ドアロック装置10の第2外面11Bの上縁部が山形状をなしている場合には、その上縁部より下方にずれた位置で帯状シール部材100を横方向に延ばして配置しても、上記実施形態と同等の効果を奏する。
(9)上記実施形態では、第2外側面11Bから突出したコネクタガイド74が設けられていたが、そのコネクタガイド74を無くしてコネクタ本体28のみで本発明に係る「コネクタ」が構成されていてもよい。
(10)上記実施形態では、アクティブレバー25及びインサイドオープンレバー20がハウジング11の内部に組み付けられており、その一部であるケーブル係止片20A,25Eだけが、ハウジング11の露出開口部58を介して第2外側面11Bの外側に露出した構成であったが、本発明はこのような構成に限るものではなく、例えば、アクティブレバー25及びインサイドオープンレバー20を第2外側面11B(ハウジングカバー主板壁71の外面)に支持して、ケーブル係止片20A,25Eだけでなく、アクティブレバー25及びインサイドオープンレバー20の全体が第2外側面11Bから露出した構成であってもよい。