JP5578387B2 - 着色剤組成物、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、成形品および芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤 - Google Patents

着色剤組成物、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、成形品および芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤 Download PDF

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Description

本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を含む着色剤組成物、該着色剤組成物を用いて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
従来より、芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性などに優れ、しかも、得られる成形品は寸法安定性などにも優れることから、電気・電子機器のハウジング類、自動車用部品類、または、光ディスク関連の部品などの精密成形品類の製造用原料樹脂として広く使用されている。特に、家電機器、電子機器、画像表示機器の筐体などにおいては、その美麗な外観を活かし、商品価値の高い成形品が得られるため使用されている。
上記ポリカーボネート樹脂の成形品の装飾性を向上させるために成形品の着色が行われる。
一般に、上記ポリカーボネート樹脂を含むプラスチック類の着色は射出成形や押出成形の段階で行われ、この段階で様々な形態の着色剤が使用される。着色剤は顔料や染料に分散助剤を加えた着色成分か、或いは樹脂を加え単に混合したり溶融混練したりして得られるものであるが、プラスチック類の使用目的や種類によってその着色成分は種々変化する。
従来、上記着色剤としては粉末状着色剤である通称ドライカラー、液状着色剤である通称リキッドカラー、或いは粒状着色剤である通称マスターバッチカラーなどの着色剤組成物が使用されている。何れの着色剤組成物も樹脂成形品が必要とする顔料や染料を成形品中の濃度以上に濃縮したものであり、着色対象の樹脂と同類の担体樹脂へ混練したものである。従って成形段階では顔料の濃縮比に応じて希釈して使用される。
着色剤組成物の調製に用いる顔料は一般に有機顔料、無機顔料等が用いられる。それらの顔料は何れも、着色剤組成物中での含有率が、例えば5〜70質量%と極めて高いため、担体樹脂と溶融混練しても凝集した顔料粒子が上手くほぐれずに、いわゆる未解膠物(未ほぐれ物)と呼ばれる粗大粒子を形成する。このような粗大粒子を含む着色剤組成物とポリカーボネート樹脂とを混合して得られる成形用の着色された樹脂組成物には該粗大粒子が混在することになる。この粗大粒子は得られる成形物の外観不良を引き起こす。このように、粗大粒子を含む着色剤組成物は、成形品の商品価値を損ない、歩留まりを低下させる原因となるため、通常、溶融混練機に設けたフィルターにより粗大粒子の除去を試みているが、粗大粒子の粒径が大きい場合や数が多い場合には該フィルターの目詰まりを引き起こしやすく、成形品の生産性を悪化させる要因になる。
顔料のほぐれ性を改善するため、モンタン酸エステルワックスなどの鉱物系ワックスを顔料と共に混合する方法が一般的に用いられている。しかしながらモンタン酸エステルワックスなどの天然資源は、近年、その乱獲により存在量が枯渇し少なくなってきており、石油系ワックスや合成系ワックスなどによる代替材料の開発が求められている。そこで、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アマイドなどの界面活性剤等を顔料と共に混合する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、こうした脂肪族系の界面活性剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が十分でなく、そのため、顔料の配合量が多い上記着色剤組成物を得る為に、芳香族ポリカーボネート樹脂と顔料と、上記界面活性剤を混合し混練すると、顔料が系外へ押し出されてしまい、効果的に混練できず、その結果上記粗大粒子を含む着色剤組成物となってしまう。そして、このような粗大粒子を含む着色剤組成物を用いて着色された芳香族ポリカーボネートの成形品を成形しようとすると、上記のような生産性の悪化を引き起こす。
特開平11−148020号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、芳香族ポリカーボネート樹脂との溶融混練に耐えうる優れた耐熱性を有し、かつ高濃度の顔料を含む組成物中において顔料のほぐれ性(解膠性)を向上させ、未解膠物などの粗大粒子の形成を防止することが可能な芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤を提供することにあり、さらに、当該可塑剤を用いた着色剤組成物、該着色剤組成物を芳香族ポリカーボネート樹脂で希釈して得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖であるエステル化合物が耐熱性に優れ、かつポリカーボネート中においても顔料のほぐれ性(解膠性)を向上させ、未解膠物などの粗大粒子の形成を防止することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を含有する着色剤組成物であり、該エステル系添加剤が芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖であることを特徴とする着色剤組成物を提供するものである。
また、本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を含有する着色剤組成物で、該エステル系添加剤が芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖である着色剤組成物と、希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂とを溶融混練して得られ芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であり、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の該エステル系添加剤の含有量が、着色剤組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂と希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂との合計100質量部に対して0.00001質量部〜0.14質量部であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品を提供するものである。
更に、本発明は、芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤を提供するものである。
本発明により、芳香族ポリカーボネート樹脂との溶融混練に耐えうる優れた耐熱性を有し、かつ高濃度の顔料を含む組成物中において顔料のほぐれ性(解膠性)を向上させ、未解膠物などの粗大粒子の形成を防止することが可能な芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤を提供することができ、さらに、当該可塑剤を用いた着色剤組成物、該着色剤組成物を芳香族ポリカーボネート樹脂で希釈して得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供することができる。
本発明の着色剤組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を含有する着色剤組成物である。そして、該エステル系添加剤は、芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖である。
本発明の着色剤組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体とを反応させることにより容易に製造される。反応は公知の方法、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、又炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法等が採用される。
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が代表的である。その他、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用される。これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。更に、フロログルシン等の多官能性化合物を併用した分岐を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも出来る。
前記芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
また、本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマロフラフィー(GPC)容易に測定することが出来る。重量平均分子量(Mw)としては、10,000〜100,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mw)は以下の条件に従って測定した
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテック製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
本発明において用いる芳香族ポリカーボネート樹脂として所望の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、例えば、末端停止剤或いは分子量調節剤を用いる方法や重合反応条件の選択等公知の方法が採用される。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを含有していても良い。芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、例えば、末端停止剤あるいは分子量調節剤を用いて芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルを反応させることで得られる。芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビスフェノールA或いはビスフェノールAと他の2価のフェノールとの混合物が好ましい。
末端停止剤あるいは分子量調節剤としては、例えば、フェノール、p−t−アルキルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、脂肪族カルボン酸クロライド等が挙げられる。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの具体例としては、好ましくは、p−t−ブチルフェノールで末端停止されたビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、p−t−ブチルフェノールで末端停止されたテトラブロムビスフェノールAとビスフェノールAからのコポリカーボネートオリゴマー等が挙げられるが、必ずしも前記芳香族ポリカーボネート樹脂と同じ原料や反応方法で製造されたオリゴマーである必要はない。
更に、本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、単独で使用しても良いが、流動性を改善する為に、他の樹脂と混合しアロイ化して得られる樹脂を用いても良い。アロイ化する際に用いる樹脂としては、例えば、アクリル−スチレン(AS)樹脂、アクリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。アロイ化する際の芳香族ポリカーボネート樹脂とAS樹脂やABS樹脂等の他の樹脂との混合割合としては、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して他の樹脂5〜900質量部であり、好ましくは、樹脂10〜500質量部である。
本発明に用いる顔料としては、顔料として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサンジン系、ペリレン系、イソインドリノン系等の各有機顔料;カーボンブラック;酸化チタン系、酸化鉄系、酸化クロム系、黄鉛系等の無機顔料が挙げられる。このうちカーボンブラックが好ましい。顔料は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤組成物中の顔料の含有量は、耐熱性に優れ、かつ後述する担体樹脂(希釈樹脂)への親和性が良好で、その結果、より良好な混練効果を発現することができることから、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.1〜235質量部の範囲が好ましく、0.1〜150質量部がより好ましく、5〜150質量部が更に好ましく、10〜150質量部が特に好ましい
本発明に用いるエステル系添加剤は、芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルであり、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖であることを特徴とする。ここで、アルキル鎖の中でも炭素原子数18〜24のアルキル鎖が耐熱性に優れ、かつ担体樹脂(芳香族ポリカーボネート樹脂)への親和性に対してより良好な混練効果を発現するエステル系添加剤となることから好ましく、炭素原子数20〜24のアルキル鎖がより好ましく、炭素原子数20〜23のアルキル鎖が更に好ましい。
本発明に用いるエステル系添加剤(エステル化合物)は、例えば、芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物(A)と、炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖を有するモノアルコール(B)とをエステル化反応させることにより好適に得ることができる。なお、本発明において芳香族多価カルボン酸の価数とは、1分子中のカルボキシル基の数を言うものとし、酸無水物においては、脱水縮合前のカルボキシル基の数を言うものとする。
前記芳香族多価カルボン酸(A)は、カルボキシル基を2つ以上有する芳香族化合物であれば特に限定されないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸が挙げられ、芳香族多価カルボン酸の無水物としては、これらの酸無水物等が挙げられる。このうち、担体樹脂(芳香族ポリカーボネート樹脂)への親和性に対してより良好な混練効果を発現することができる点から、カルボキシル基を3つ以上有する芳香族化合物が好ましく、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの酸無水物が好ましいものとして挙げられる。これらの芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物は、1種類のみで用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いるモノアルコール(B)は、炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖を有するモノアルコールである。このようなアルコールとしては、例えば、ヘキサデカノール(C16)、オクタデカノール(C18)、エイコサノール(C20)、ヘンエイコサノール(C21)、ドコサノール(C22)、トリコサノール(C23)、テトラコサノール(C24)、ペンタコサノール(C25)、ヘキサコサノール(C26)等が挙げられる、中でも、耐熱性に優れ、かつ担体樹脂への親和性に対してより良好な混練効果を発現することができる点から、炭素原子数が18〜24の直鎖状のアルキル鎖を有するモノアルコールが好ましく、炭素原子数20〜24のアルキル鎖を有するモノアルコールがより好ましく、炭素原子数20〜23のアルキル鎖を有するモノアルコールが更に好ましい。具体的には、オクタデカノール(C18)、エイコサノール(C20)、ヘンエイコサノール(C21)、ドコサノール(C22)、トリコサノール(C23)、テトラコサノール(C24)が好ましく、エイコサノール(C20)、ヘンエイコサノール(C21)、ドコサノール(C22)、トリコサノール(C23)、テトラコサノール(C24)がより好ましく、エイコサノール(C20)、ヘンエイコサノール(C21)、ドコサノール(C22)、トリコサノール(C23)が更に好ましい。
本発明において、上記モノアルコール(B)以外のモノアルコールを本発明の効果を損なわない範囲でモノアルコール(B)と併用しても良い。モノアルコール(B)以外のモノアルコールとしては、例えば、オクタノール(C8)、デカノール(C10)、ドデカノール(C12)、テトラデカノール(C14)、ヘプタコサノール(C27)、オクタコサノール(C28)、ノナコサノール(C29)、トリアンコンタノール(C30)、ヘントリアンコンタノール(C31)、ドトリアコンタノール(C32)、セロメリシルアルコール(C33)、テトラトリアコンタノール(C34)、ヘプタトリアコンタノール(C35)、ヘキサトリアコンタノール(C36)等が挙げられる。
本発明で用いるモノアルコール(B)やモノアルコール(B)以外のモノアルコールにおける水酸基の置換位置は、1位または2位いずれでもよいが、1位のものを用いることが好ましい。
本発明で用いるエステル系添加剤(エステル化合物)の製造方法としては、前記芳香族多価カルボン酸(A)と、前記モノアルコール(B)とを反応器に仕込み、通常のエステル化反応させる方法等が挙げられる。また、このエステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。
前記エステル化触媒として、金属又は有機金属化合物を用いることができる。具体的には、周期律表2族、4族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物の保存安定性が良好であることから、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイドが好ましい。
また、前記エステル化触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ得られるエステル化合物の着色を抑制できる範囲の量であればよく、前記芳香族多価カルボン酸(A)と前記モノアルコール(B)との合計量に対し、10〜2,000ppmの範囲が好ましく、20〜1,000ppmの範囲がより好ましい。
前記エステル化合物を製造する際、前記エステル化触媒を添加する時期は、前記芳香族多価カルボン酸(A)と前記モノアルコール(B)とを反応器に仕込むのと同時に添加してもよく、昇温途中に添加してもよく、エステル化触媒を分割して添加してもよい。
前記エステル化反応において、前記多価カルボン酸(A)と前記モノアルコール(B)と仕込み比は、前記モノアルコール(B)のアルコール性水酸基に対して多価カルボン酸(A)は特に制限されるものではないが、例えば、前記モノアルコール(B)のアルコール性水酸基1.00当量に対して多価カルボン酸(A)のカルボキシル基が0.80〜1.20当量の範囲、より好ましくは0.90〜1.10当量の範囲となるよう調整することが好ましい。
前記エステル化合物を製造する際の反応温度は、各原料が蒸発や昇華することを抑制しつつ反応を促進し、反応により生成するエステル化合物の熱分解、着色を抑制できることから、60〜300℃の範囲が好ましく、100〜250℃の範囲がより好ましい。
上記の製造方法により得られるエステル化合物は、高温高湿下でも加水分解をうけにくく安定であり、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が良いためブリードを引き起こしにくい。また、顔料の表面処理状態に応じて、酸価や水酸基価を調整し、親和性を調節することにより、目的とする着色剤のほぐれ性を向上させることが可能であることから、30以下の水酸基価を有し、且つ、15以下の酸価を有するものが好ましく、20以下の水酸基価を有し、かつ10以下の酸価を有するものがより好ましい、特に好ましいのは15以下の水酸基価を有し、且つ、5以下の酸価を有するものである。
この様にして得られたエステル化合物(エステル系添加剤)の形態としては、特に限定されないが、例えば、粉状、粒状、ペレット状、板状、フレーク状等が挙げられる。それらの作製方法も特に制限されないが、溶融状態のエステル化合物をステンレス製バットや冷却装置付のベルトコンベアーに取り出し、粉砕機等により粉、板、フレーク等する方法;固化・粉砕品を圧縮もしくは加熱等により造粒する方法;溶融状態から直接、粒子、ペレット状に取り出す方法;担体樹脂である芳香族ポリカーボネート樹脂と一定の割合で混練しマスターバッチ化して取り出す方法等が挙げられる。
この様にして得られたエステル系添加剤の着色剤組成物中の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100部に対して0.1〜235質量部が好ましく、0.5〜120質量部がより好ましく、0.8〜100質量部が更に好ましい。
前記エステル系添加剤が優れた顔料のほぐれ性(解膠性)をしめす作用機作は、現時点では定かではないが、芳香族骨格を有することにより、従来の脂肪族骨格のものよりも耐熱性に優れ、溶融混練時の高温下でも分解され難く、本来の可塑化効果や界面活性効果を示し続けることができ、その結果、高濃度で顔料を含む着色剤組成物においても溶融粘度を低減させることができたものと考えられる。また、その構造から担体樹脂である芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性も高く、前記エステル系添加剤が効果的に担体樹脂と顔料に作用し、混練効果を高めたものと考えられる。それらの結果として、着色剤組成物中の顔料のほぐれ性を改善し、未解膠物などの粗大粒子の形成を低減して溶融混練機に設置したフィルターの濾過圧を低減することにもつながったものと考えられる。このように前記エステル系添加剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して可塑剤として、また顔料の分散剤として好適に用いることができる。
本発明の着色剤組成物は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を混合して得られるものであるがこれらの混合の順序は特に限定されない。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を同時に混練しても良いし(方法1)、あらかじめ顔料およびエステル系添加剤の混練物を得た後に、芳香族ポリカーボネート樹脂と混練しても良い(方法2)。より具体的には、例えば、方法1の場合には、芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤をあらかじめ材料同士が良く混ざるように混合してから220〜300℃の範囲の温度下で、単軸または2軸押出機を用いて溶融混練しても良い。また、方法2の場合には、顔料およびエステル系添加剤を、80〜150℃の範囲の温度下で、単軸または2軸押出機を用いて溶融混練し、次いで、得られた混練物を芳香族ポリカーボネート樹脂とともに押出機等で溶融混練しても良い。
この様にして得られた着色剤組成物はマスターバッチカラーとして用いられ、その形態としては、特に限定されないが、例えば、ペレット状、板状、フレーク状等が挙げられる。
なお、本発明の着色剤組成物は、上記成分以外に他の任意の成分、例えば、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が必要に応じて添加されていてもよい。
この様にして得られた本発明の着色剤組成物は、希釈用の芳香族ポリカーボネート樹脂(本発明において希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂という)と混練して着色された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。より具体的には本発明の着色剤組成物100質量部に対して希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂100〜1,000,000質量部の範囲を、好ましくは200〜100,000質量部の範囲を希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂の融点以上の温度下、例えば250〜300℃といった範囲の加熱下で溶融混錬して芳香族ポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。
このときに得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中のエステル系添加剤の含有量としては、例えば、着色剤組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂と希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂との合計100質量部に対して0.00001重量部〜0.14質量部であることが好ましく、0.00008重量部〜0.10質量部がより好ましい。
そして、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形することにより芳香族ポリカーボネート樹脂の成形品を形成することができる。具体的には、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を各種の押出機、射出成形機等を用いて、射出成形やTダイフィルム成形等を行うことにより各種形状の成形品を得ることができる。希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、着色剤組成物に用いた芳香族ポリカーボネート樹脂と同様のものが挙げられ、着色剤組成物に用いた芳香族ポリカーボネート樹脂と同種のものを組み合わせて用いることが好ましい。上記のような成形方法の他に、予め着色剤組成物と希釈用芳香族ポリエステル樹脂をミキサー、ブレンダーなどで混合した後に、射出成形機内に投入して溶融混練して直接成形する方法などのもあげられる。
本発明の成形品は、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる。このような成形品としては、例えば、テレビ部品、VTR部品、ヘアドライヤハウジング、アイロン部品、電子レンジ部品、各種光ディスク等の家電部品;リレーケース、LEDランプ、コンピュータ構造部品等の電子通信用部品;照明カバー、懐中電灯の筐体等の照明器具部品;ヘッドランプレンズ、ドアハンドル、メータカバー、二輪車風防、ルーバー等の自動車・車両部品;カメラボディ及び部品等の光学機械部品;複写機やプリンタの構造部品、FDD部品、パソコン部品等のOA機器部品;ポンプ部品、電動工具ハウジング等の機械部品などに代表される電気・電子機器用途向けの成形品;
玩具、ベビーカー部品、水道器具部品、水筒、くし等の日用品;万年筆、鉛筆削り等の文房具;スキーゴーグル、剣道防具、ウィンドサーフィンのフィン、パチンコ部品、ヘルメット等のスポーツ・レジャー用品に代表される雑貨関係用途向けの成形品;
人工腎臓ケース、目薬容器、工事用ヘルメット、保護眼鏡、消火器部品等に代表される医療・保安用途向けの成形品;
包装用フィルム、コンデンサフィルム、FPD(フラットパネルディスプレイ)用光学フィルム等に代表されるシート・フィルム用途向けの成形品等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を挙げ、比較例と比較しながら本発明を詳述する。例中、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。
実施例1(芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤の調製)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、無水フタル酸(以下、「PA」と略記する。)を176.8gと、ドコサノール(98%含有品)を847.6gと、トルエンを51gと、チタンテトライソプロポキシド(以下、「TiPT」と略記する)を0.31gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.25g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(1)を得た。可塑剤(1)の数平均分子量(Mn)は1,090、重量平均分子量(Mw)は1,160、酸価は2.2、水酸基価は3.3であった。また、可塑剤(1)の外観は白色固体であった。
実施例2(同上)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、無水トリメリット酸(以下、「TMA」と略記する。)を220.8gと、ドコサノール(98%含有品)を534.2gと、オクタデカノール(オクタデカノール98%含有品)を442.5gと、トルエンを60gと、TiPTを0.36gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.29g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエンを除去した。トルエンの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、液温を100℃に維持しながら金属製SUSバットに取り出し、芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(2)を得た。可塑剤(2)の数平均分子量(Mn)は1,850、重量平均分子量(Mw)は1,930、酸価は3.3、水酸基価は4.5であった。また、可塑剤(2)の外観は白色固体であった。
実施例3(同上)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、TMAを192.0gと、ドコサノール(98%含有品)を929.1gと、トルエンを56gと、TiPTを0.33gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.27g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエンを除去した。トルエンの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、液温を100℃に維持しながら金属製SUSバットに取り出し、芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(3)を得た。可塑剤(3)の数平均分子量(Mn)は1,670、重量平均分子量(Mw)は1,750、酸価は2.0、水酸基価は7.3であった。また、可塑剤(3)の外観は白色固体であった。
実施例4(同上)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、ピロメリット酸(以下、「PMA」と略記する。)を218.4gと、オクタデカノール(98%含有品)を882.4gと、トルエンを55gと、TiPTを0.33gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.26g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエンを除去した。トルエンの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、液温を100℃に維持しながら金属製SUSバットに取り出し、芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(4)を得た。可塑剤(4)の数平均分子量(Mn)は1,900、重量平均分子量(Mw)は1,970、酸価は5.5、水酸基価は4.1であった。また、可塑剤(4)の外観は白色固体であった。
実施例5(同上)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、ピロメリット酸(以下、「PMA」と略記する。)を190.5gと、ドコサノール(98%含有品)を929.1gと、トルエンを56gと、TiPTを0.34gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.27g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエンを除去した。トルエンの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、液温を100℃に維持しながら金属製SUSバットに取り出し、芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(5)を得た。可塑剤(5)の数平均分子量(Mn)は2,260、重量平均分子量(Mw)は2,390、酸価は4.1、水酸基価は8.1であった。また、可塑剤(5)の外観は白色固体であった。
比較例1(比較対照用芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤の調製)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、ペンタエリスリトールを108.8gと、ステアリン酸を908.8gと、トルエンを51gと、TiPTを0.31gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85%リン酸水溶液を0.24g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエンを除去した。トルエンの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、液温を100℃に維持しながら金属製SUSバットに取り出し、比較対照用芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(1´)を得た。この可塑剤(1´)の数平均分子量(Mn)は1,620、重量平均分子量(Mw)は1,680、酸価は1.9、水酸基価は15.0であった。また、可塑剤(1´)の外観は白色固体であった。
芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(1)〜(5)及び比較対照用芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(1´)の調製に用いた原料と特性値を第1表及び第2表に示す。
Figure 0005578387
第1表の脚注
PA:無水フタル酸
TMA:無水トリメリット酸
PMA:ピロメリット酸
Figure 0005578387
実施例6(着色剤組成物の調製)
カーボンブラック700部、芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA、p−tert−ブチルフェノール(分子量調節剤)とホスゲンから常法により得られた、粘度平均分子量21,500の粉粒状芳香族ポリカーボネート樹脂)1265g部及び芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤(1)35gポリエチレンの袋に入れて袋の口を閉めた。その後、材料同士が混ざるように袋をよく振って、混合物を得た。
次に、2軸押出機を用いて上記混合物を混練し、本発明の着色剤組成物(1)を得た。2軸押出機はスクリュー径32mmでL/D値が52のものを用い、ジャケット温度は270〜280℃に設定した。樹脂着色剤組成物(1)の調製において、スクリューの回転数が200rpmとなる条件で混練した時の電流値を測定し、その電流が安定したときの値を下記基準に従って評価した。この値が低い程、溶融混練物の溶融粘度が低いことを表し、混練性に優れ、かつ生産性にも優れていることを意味する。評価結果を第3表に示す。
<混練時の電流の評価基準>
◎:30A(アンペア)未満
○:30〜32A
×:32A以上
更に、上記着色剤組成物(1)と希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂とを単軸押出機により溶融混練し、着色された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(1)を調製した。この組成物を調製する際に、下記方法に従って着色剤組成物(1)のほぐれ性(解こう性)の評価を行った。尚、希釈用ポリカーボネートとしては、上記着色剤組成物の調製に用いた芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた。
<解こう性(=ほぐれ性)の確認方法>
スクリュー径が30mmでL/D値が30である単軸押出機の出口側に濾圧試験機を取り付けた試験機に着色剤組成物(1)と希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂とを、質量比で9.52/90.48となる混合割合で流通させ、最終的に上記濾圧試験機から押し出し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(1)を得た。ここで、単軸押出機のジャケットの温度は280℃に設定した。濾圧試験機に取り付けたフィルターの構成は#80×焼成40μm×#80とした。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(1)を上記濾圧試験機から押し出す際に、フィルター入側に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(1)を流入させる時の圧力(樹脂圧)とフィルター出側から排出させる際の圧力を測定し、その差(濾過圧。Mpa)を求め、これを濾過圧試験値とし、下記基準に従って評価した。濾圧試験値が低いほど、未解膠物などの粗大粒子形成も低減され、「ほぐれ性(解膠性)」に優れていることを意味する。
◎:濾過圧が6MPa未満
○:濾過圧が6〜9MPa
△:濾過圧が9MPaを超える
×:目詰まりのため試験中断
実施例2〜5
第3表に示す芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の着色剤組成物(2)〜(5)を得た。着色された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(2)〜(5)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第3表に示す。
比較例2〜4
第4表に示す比較対照用芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤を用いた以外は実施例1と同様にして比較対照用着色剤組成物(1´)〜(3´)を得た。着色された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(1´)〜(3´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第3表に示す。
Figure 0005578387
Figure 0005578387
第4表の脚注
比較対照用ポリカーボネート用可塑剤(2´):モンタン酸エステルワックス〔クラリアント株式会社製、Licolub WE4。〕
比較対照用ポリカーボネート用可塑剤(3´):変性ポリエチレンワックス〔EVONIK INDUSTRIES製、TEGOMER E 525。〕
測定できず:フィルターの目詰まりにより測定できなかった。

Claims (10)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を含有する着色剤組成物であり、該エステル系添加剤が芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖であることを特徴とする着色剤組成物。
  2. 前記エステル系添加剤が芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物(A)と、炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖を有するモノアルコール(B)とをエステル化反応させて得られたものである請求項1記載の着色剤組成物。
  3. 前記モノアルコール(B)がエイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノールおよびテトラコサノールからなる群から選ばれる1種以上のモノアルコールである請求項1記載の着色剤組成物。
  4. 前記芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物(A)が、3価以上のものである請求項1〜3のいずれか1項記載の着色剤組成物。
  5. 前記芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物(A)が、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物からなる群から選ばれる1種以上のものである請求項1〜3の何れか1項記載の着色剤組成物。
  6. 前記顔料がカーボンブラックである請求項1〜5の何れか一項記載の着色剤組成物。
  7. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、顔料を10〜150質量部含み、かつエステル系添加剤を0.8〜100質量部含む請求項1〜6の何れか1項記載の着色剤組成物。
  8. 芳香族ポリカーボネート樹脂、顔料およびエステル系添加剤を含有する着色剤組成物で、該エステル系添加剤が芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖である着色剤組成物と、希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂とを溶融混練して得られ芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であり、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の該エステル系添加剤の含有量が、着色剤組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂と希釈用芳香族ポリカーボネート樹脂との合計100質量部に対して0.00001質量部〜0.14質量部であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項8記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
  10. 芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルで、該アルキルエステルのアルキル鎖が炭素原子数16〜26の直鎖状のアルキル鎖であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂用可塑剤。
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