JP2014019792A - 導電性ポリカーボネート樹脂組成物及び導電性ポリカーボネート樹脂成形体 - Google Patents

導電性ポリカーボネート樹脂組成物及び導電性ポリカーボネート樹脂成形体 Download PDF

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暢彦 山内
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Takayuki Odajima
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Abstract

【課題】炭素材料を含有する成形用ポリカーボネート樹脂組成物において、少量の炭素材料で射出成型においても良好な導電性を発現し、かつ高射出速度の射出条件下においても導電性の低下が少ない樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート(A)と、カーボンナノチューブ(B)とエステル化合物(C)を含有する導電性ポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記エステル化合物(C)が、ジペンタエリスリトール(D)と、モノカルボン酸(E)又はその酸無水物とを反応させて得られたものであり、前記エステル化合物(C)の水酸基価が100KOHmg/g以上であり、かつ前記エステル化合物(B)中のアルカリ金属含有量が10〜200ppmの範囲であることを特徴とする、導電性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い導電性を有するポリカーボネート組成物及びポリカーボネート樹脂成形体に関する。
ポリカーボネートは、広範な分野で利用されるエンジニアリングプラスチックの一種であり、耐熱性、耐衝撃性、透明性、寸法安定性、難燃性等に優れているためパソコン、電子機器、液晶テレビ等のきょう体、ランプカバー、内外装用部品等、電子機器、自動車分野など、あらゆる産業において幅広く使用されている。
これらに使用される樹脂成形品には、それらの高度な進歩に従い、良好な導電性が求められている。電子機器においては、高性能化、小型化、軽量化に伴う半導体パッケージの高密度化、LSIの高速化及び高集積化等により、複雑形状化する成型材料を得るための成型法として射出成型の意義がより高まる中、一層の高品質化が求められ、部材自身はもちろんのこと、運搬用部材、組立を行う設備環境、組立器具等、関連する周辺部剤への静電気対策が必須となり、導電性樹脂の要求が高まっている。
樹脂成形品に導電性を付与する方法の1つとして、樹脂材料に導電性充填剤を配合する方法がある。近年、電気伝導性を有する銅、アルミニウム、ステンレススチール等の金属類に代わり、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料を熱可塑性樹脂に混合する手法が盛んに研究されている。これらの炭素材料は、少ない含有量で高い導電性を発現できる上に、金属材料と比べ成型加工性の悪化、外観の悪化、高比重化、などを低減する事ができる。
しかしながら、従来熱可塑性樹脂と繊維状、又は板状の形体を持つ炭素材料からなる導電性樹脂成形用材料においては、射出成型時、特に高射出速度の条件下においては導電性が低下してしまう問題があった。プレス成形により得られた成形体であるならば、良好な導電性を示す炭素材料の含有量であっても、射出成形においては、高い射出速度条件、即ち成形時により高いせん断がはたらく条件になる程、炭素材料が樹脂流動方向に配向し、炭素材料同士の接触確率が低下する結果、十分な導電性を発現しない問題である。その結果、少量で高導電性を発現するという炭素材料の利点が活かせず、プレス成型と比較し、極めて高い炭素材料の含有量が必要となり、樹脂本来の特性を損なう結果となる。
少量の炭素材料を用いてより良好な導電性を得る方法の1つとして、非相溶の2種以上の樹脂をブレンドすることにより海島構造を形成させ、海相に炭素材料を偏在させる方法が知られている。一方の相に炭素材料を偏在させ、濃縮させることで、炭素材料同士の接触確率が高まり、少ない炭素材料含有量で効率的な導電パスを形成させることができると考えられている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、炭素材料の濃縮を高めるため、炭素材料を偏在させない樹脂を多量に含む必要があり、樹脂本来の持つ特性を損なう結果となってしまう。また、相溶性の良好な樹脂、例えば表面自由エネルギーにより求められる分散成分、極性成分値の差が小さい樹脂のブレンドである場合、炭素材料と樹脂の親和性においても2種の樹脂による差が少なくなり、炭素材料が一方の樹脂に偏在し濃縮する効果が得られないことが示唆される。
また、常温(25℃)常圧(1気圧)で液状であるエステル系分散剤により、炭素材料であるカーボンナノチューブが熱可塑性樹脂に良分散させることで、導電性を向上する方法が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、これらは低分子量であるため、エンジニアリングプラスチックを加工する高温領域(280℃)で加工した場合の耐熱性に劣り、特に高いせん断力がかかる射出成型においては、シルバーストリーククスやフラッシュの発生による表面外観不良の問題を引き起こす事が示唆される。
また、射出成型、押出成形等の成形加工時に、成形体を特定の条件で加熱処理することで、極細導電繊維を成形体表面に露出、または突出することで導電性を高める方法が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、これらは成形後の温度条件の調節に長い時間を要するため、射出成型のサイクル時間が大幅に増大するという点、及び特定の射出成型機が必要であるという点より、生産面で課題がある。
特開平02−113068号公報 特開2007−077370号公報 特開2007−297501号公報
本発明の課題は、炭素材料を含有する成形用ポリカーボネート樹脂組成物において、少量の炭素材料で射出成型においても良好な導電性を発現し、かつ高射出速度の射出条件下においても導電性の低下が少ない樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、導電性充填剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物に、特定のエステル化合物を配合したところ、驚くべきことに、良好な導電性が発揮され、かつ高射出速度の射出条件下においても導電性の低下が改善されることを見出した。本発明の導電性改良方法は、従来の非相溶性樹脂、または非相溶性分散剤を配合する方法に反し、前記エステル化合物はポリカーボネート樹脂と相溶性が高く、樹脂本来の特性を損ねることなく高い導電性を発現する事ができる。
ポリカーボネート(A)と、カーボンナノチューブ(B)とエステル化合物(C)を含有する導電性ポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記エステル化合物(C)が、ジペンタエリスリトール(D)と、モノカルボン酸(E)又はその酸無水物とを反応させて得られたものであり、前記エステル化合物(C)の水酸基価が100KOHmg/g以上であり、かつ前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量が10〜200ppmの範囲であることを特徴とする、導電性ポリカーボネート樹脂組成物、及び前記導電性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにより、上記課題を解決する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネートの機械的特性、透明性、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性を損なわずに、高い導電性を有する。したがって、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、より薄肉化が望まれている導電性樹脂成形品に適しており、例えば、自動車、電車等の車両部品;テレビ、パソコン用ディスプレイ等の表示装置の筐体部品;冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体及び各種成形部品;OA機器部品、電動工具部品等の各種成形品;CD、DVD、ブルーレイ等の光学記録媒体用材料、建材等のシートなどに好適に用いることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート(A)と、カーボンナノチューブ(B)とエステル化合物(C)を含有する導電性ポリカーボネート樹脂組成物である。また、前記エステル化合物(C)は、ジペンタエリスリトール(D)と、モノカルボン酸(E)又はその酸無水物とを反応させて得られたものである。さらに、前記エステル化合物(B)は、水酸基価が100KOHmg/g以上であり、かつアルカリ金属を10〜200ppmの範囲で含有するものである。
〔ポリカーボネート(A)〕
前記ポリカーボネート(A)としては、特に制限はなく、種々の構造単位を有するポリカーボネートが挙げられる。例えば、2価のフェノールとハロゲン化カルボニルとを界面重縮合させる方法や、2価のフェノールと炭酸ジエステルとを溶融重合法(エステル交換法)させる方法等によって製造したものを用いることができる。
また、前記ポリカーボネート(A)としては、ポリカーボネート単独のみならず、ポリカーボネートとアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)とのポリマーアロイ、ポリカーボネートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)とのポリマーアロイ、ポリカーボネートとスチレン−ブタジエンゴムとのポリマーアロイ、ポリカーボネートとポリメチルメタクリレート樹脂とのポリマーアロイ、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)のポリマーアロイ、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)のポリマーアロイ等も用いることができる。
ポリカーボネート(A)の原料である2価のフェノールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これら2価のフェノールの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、さらに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料としたものが特に好ましい。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等が挙げられる。具体的には、ホスゲン;二価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物などが挙げられる。
また、前記ポリカーボネート(A)としては、そのポリマー鎖の分子構造が直鎖構造であるもののほか、これに分岐構造を有していても良い。このような分岐構造を導入するための分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等を用いることができる。また、分子量調節剤として、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール等を用いることができる。
さらに、本発明に用いる前記ポリカーボネート(A)としては、上記の2価のフェノールのみを用いて製造された単独重合体のほか、ポリカーボネート構造単位とポリオルガノシロキサン構造単位を有する共重合体、又はこれら単独重合体と共重合体からなる樹脂組成物であっても良い。また、テレフタル酸などの二官能性カルボン酸やそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下にポリカーボネートの重合反応を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネートであっても良い。
さらに、種々の構造単位を有するポリカーボネートを溶融混練して得られる樹脂組成物を用いることもできる。なお、前記ポリカーボネート(A)としては、その構造単位中に実質的にハロゲン原子が含まれないものが好ましい。
前記ポリカーボネート(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜200,000の範囲が好ましい。この重量平均分子量(Mw)が10,000以上であると、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性及び耐衝撃性がより向上し、200,000以下であると、得られるポリカーボネート樹脂組成物の成形加工性がより良好となる。また、耐熱性、耐衝撃性及び成形加工性をより向上するためには、前記ポリカーボネート(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜100,000の範囲がより好ましく、12,000〜50,000の範囲がさらに好ましい。また、前記ポリカーボネート(A)の分散度は、1〜2.5の範囲が好ましく、1.2〜2の範囲がより好ましく、1.4〜1.8の範囲がさらに好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する)測定装置を用いて測定することができる。
〔カーボンナノチューブ(B)〕
本発明で使用するカーボンナノチューブ(B)は後述のグラファイトの一枚面を巻いて円筒状にした形状を有しており、1層で巻いた構造を持つシングルウォールナノチューブ(SWNT)、2層以上で巻いたマルチウォールナノチューブ(MWNT)などの種類が挙げられるが、いずれも使用することができる。これらの中でもマルチウォールナノチューブで直径は20nm以下のものが好ましく、長さは特に限定されないが、カーボンナノチューブ同士が隣接する事により形成される導電性パスが効率的に行われるよう、100nm以上が好ましい。
本発明で用いられるカーボンナノチューブ(B)は、一般にレーザーアブレーション法、アーク放熱CVD法、プラズマCVD法、気相法、燃焼法などで製造できるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでも構わない。
また多層カーボンナノチューブの表面、および末端は本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて、樹脂との親和性を増すために、官能基で修飾して用いてもよく、例えば酸やアルカリによって水酸基、カルボキシル基、アミノ基で官能基化を施してもよい。更にカーボンナノチューブをカップリング剤で予備処理して使用してもよく、かかるカップリング剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
前記カーボンナノチューブ(B)の含有量は、前記ポリカーボネート(A)とカーボンナノチューブ(B)の合計を100質量%としたとき、ポリカーボネート(A)が80〜99.9質量%、カーボンナノチューブ(B)が0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.15〜15重量部である。カーボンナノチューブ(B)の含有量が少なすぎると、成形品中のカーボンナノチューブ同士が隣接する事により形成される導電性パスの量が不十分となり、好ましい導電性が得られず、一方多すぎると成形品中のカーボンナノチューブと樹脂の界面が増大し、その相互作用による粘度上昇により流動性が低下し、外観不良をもたらす場合がある。
〔エステル化合物(C)〕
本発明において、ポリカーボネート(A)とカーボンナノチューブ(B)との組成物に対し、後述するエステル化合物(C)を加えることで、耐熱性の低下や成形不良を起こすことなく、カーボンナノチューブ(B)をより高分散させた導電性組成物及び導電性成形体を得ることができる。
本発明におけるエステル化合物(C)は、ジペンタエリスリトール(D)と、モノカルボン酸(E)又はその酸無水物とを反応させて得られたものであり、前記エステル化合物(C)の水酸基価が100KOHmg/g以上であり、かつ前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量が10〜200ppmの範囲であることを特徴とする。
また、本発明におけるエステル化合物(C)は、粘度が、25℃1気圧において11000cP以上であることが好ましく、特に固体または半固体であることが好ましい。これは、エステル化合物(C)が25℃1気圧において液状である場合、カーボンナノチューブに対する高い分散効果があったとしても、ポリカーボネートと配合して成形する際に、エステル化合物自体がブリードアウトしてしまい、得られる成形体の強度や外観等に問題が出るためである
前記エステル化合物(C)の原料となるジペンタエリスリトール(D)は、ペンタエリスリトールを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒とし、2量化して合成されるものである。なお、このジペンタエリスリトール(D)には、ペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールをそれぞれ10質量%以下で含有するものも使用することができる。また、より流動性を安定的に良好なものとできることから、原料として用いるジペンタエリスリトール(D)中のジペンタエリスリトールの含有量は80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、88質量%以上がさらに好ましい。
前記ジペンタエリスリトール(D)は、その合成に用いた触媒残渣であるアルカリ金属を不純物として含有していても良い。前記ジペンタエリスリトール(D)中のアルカリ金属含有量は、前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量が、最終的に10〜150ppmの範囲になる範囲であることが好ましい。具体的には、前記ジペンタエリスリトール(D)のアルカリ金属含有量としては、1〜1,000ppmの範囲が好ましく、10〜500ppmの範囲がより好ましい。また、前記ジペンタエリスリトール(D)は、前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量が、最終的に10〜150ppmの範囲になるように、アルカリ金属含有量が異なる複数のものを併用しても構わない。
前記エステル化合物(C)の原料となるモノカルボン酸(E)又はその酸無水物は、脂肪族モノカルボン酸であっても芳香族モノカルボン酸であっても良い。また、前記モノカルボン酸(E)の炭素原子数は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、熱安定性、耐加水分解性、及び難燃性を優れたものにできることから2〜28の範囲が好ましい。また、得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより向上できることから2〜22の範囲がより好ましく、2〜18の範囲がさらに好ましい。
前記モノカルボン酸(E)の具体例としては、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデシル酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、セロチン酸、モンタン酸、安息香酸等が挙げられる。また、これらのモノカルボン酸の酸無水物も前記モノカルボン酸(E)と同様に前記エステル化合物(C)の原料として用いることができる。これらの中でも、得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性に優れることから、酢酸、無水酢酸、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましく、酢酸、無水酢酸、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸はさらに得られるポリカーボネート樹脂組成物の透明性に優れるためより好ましい。これらのモノカルボン酸(E)又はその酸無水物は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
前記エステル化合物(C)は、上記で説明したジペンタエリスリトール(D)とモノカルボン酸(E)又はその酸無水物とをエステル化反応して得られたものであるが、部分エステルであっても、部分エステルとジペンタエリスリトールとの混合物であっても、部分エステルとフルエステルとの混合物であっても、ジペンタエリスリトールと部分エステルとフルエステルとの混合物であっても良い。
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、熱安定性、耐加水分解性、及び難燃性を優れたものにできることから、前記エステル化合物(C)の酸価は、低いほど好ましく、具体的には、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が特に好ましい。
得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性を優れたものにできることから、前記エステル化合物(C)の水酸基価は、100〜600の範囲である。前記エステル化合物(C)の水酸基価が100未満では、エステル化合物(C)をポリカーボネート(A)に添加した際のエステル交換反応が不十分となり、ポリカーボネート樹脂組成物の中の樹脂の分子量を下げられないために十分な流動性が得られず、水酸基価が600より大きい場合では、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐加水分解性が不十分となる問題がある。また、得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより向上し、耐衝撃性を維持し、耐加水分解性を優れたものにできることから、前記エステル化合物(C)の水酸基価は、120〜580の範囲が好ましく、130〜550の範囲がより好ましい。
得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性を優れたものにできることから、前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量は、10〜200ppmの範囲である。アルカリ金属含有量が10ppm未満では、エステル化合物(C)をポリカーボネート(A)に添加した際に、アルカリ金属が触媒となったポリカーボネート(A)とエステル化合物(C)とのエステル交換反応が不十分となり、ポリカーボネート樹脂組成物の中の樹脂の分子量を下げられないために十分な流動性が得られず、アルカリ金属含有量が150ppmより多い場合では、エステル化合物(B)をポリカーボネート(A)に添加した際に、アルカリ金属が触媒となったポリカーボネート(A)とエステル化合物(C)とのエステル交換反応が起こりすぎて、ポリカーボネート樹脂組成物中の樹脂の平均分子量を大きく低下させるため、耐衝撃性が低下する問題がある。さらに、アルカリ金属含有量が200ppmより多い場合では、エステル化合物(C)をポリカーボネート(A)に添加した際に、ポリカーボネート(A)中の水分と、エステル化合物(C)中のアルカリ金属によって、ポリカーボネート(A)の加水分解反応を生じ、ポリカーボネート(A)の平均分子量を低下させるために、耐衝撃性が低下するという問題もある。また、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐加水分解性を向上することから、前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量は、10〜150ppmの範囲がより好ましく、10〜100ppmの範囲がさらに好ましく、10〜70ppmの範囲が特に好ましく、15〜60ppmの範囲がとりわけ好ましい。なお、前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量は、10〜150ppmの範囲に調整する必要があるが、その方法として、別途アルカリ金属化合物の添加よって調整する方法でも構わないが、前記ジペンタエリスリトール(C)が含有するアルカリ金属量によって調整する方法の方が得られるポリカーボネート樹脂組成物の流動性を向上できるので好ましい。
前記エステル化合物(C)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、前記ジペンタエリスリトール(D)とモノカルボン酸(E)又はその酸無水物とをエステル化反応させることにより製造することができる。また、このエステル化反応を必要に応じてエステル化触媒を存在下で行っても良い。このエステル化反応の際、生成するエステル化合物(C)の着色を抑制するため、リン酸系、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の酸化防止剤を、エステル化合物(C)の原料である前記ジペンタエリスリトール(D)と前記モノカルボン酸(E)の合計量に対し、100〜5000ppmの範囲で用いても構わない。また、エステル化反応は常圧下、減圧下いずれでも構わない。また、溶媒を使用しても構わない。
前記エステル化触媒としては、無水酢酸等のモノカルボン酸無水物を使用する場合は、アミン等の塩基性触媒が好ましく、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。また、モノカルボン酸を使用する場合は、硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒、又は周期律表2族、4族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属又はそれらの金属化合物を用いることが好ましい。前記金属としては、例えば、Ti、Sn、Zn、Al、Zr、Mg、Hf、Ge等の金属が挙げられる。また、前記金属化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等が挙げられ、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、2−エチルヘキサン酸スズ、アルミニウムアセチルアセトナート/リン酸化合物、ルミニウムアセチルアセトナート/亜リン酸化合物が好ましく、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、2−エチルヘキサン酸スズは反応速度が速く特に好ましい。
前記エステル化触媒の使用量は、通常、反応が制御でき、かつ良好な品質が得られる量であればよく、前記ジペンタエリスリトール(D)とモノカルボン酸(E)又はその酸無水物の合計量に対し、5〜10,000ppmの範囲であることが好ましく、10〜1,000ppmの範囲であることがより好ましく、30〜300ppmの範囲であることがさらに好ましく、エステル化合物(C)の着色を低減する観点から、30〜200ppmの範囲が特に好ましい。なお、前記エステル化触媒は、前記多価ジペンタエリスリトール(D)とモノカルボン酸(E)又はその酸無水物を反応容器に仕込む際に同時に加えても、反応途中で加えても構わない。
また、エステル化合物(C)の製造後に、触媒失活剤を加えても構わない。触媒失活剤としては、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子として窒素原子を有するフェノール類やカルボン酸、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物が挙げられ、これらの中でもリン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物がより好ましい。
触媒失活剤を使用する際の添加量は、多量に添加すると加水分解させるため、使用した触媒の0.1〜4倍モルが好ましく、0.1〜2.5倍モルがより好ましく、0.2〜1.2倍モルがさらに好ましい。
前記エステル化合物(C)を製造する際の温度は、100〜260℃の範囲であることが好ましく、110〜240℃の範囲であることがより好ましい。製造する際に減圧する場合の減圧度は、1.33kPa以下であることが好ましく、0.26kPa以下であることがより好ましい。
上記溶媒としては、高沸点のものが好ましく、具体的には、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アニソール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン等が挙げられる。これら溶媒の使用量は、前記エステル化合物(C)の原料である前記ジペンタエリスリトール(D)と前記モノカルボン酸(E)又はその酸無水物の合計量に対し、1〜100質量%の範囲が好ましく、1〜50質量%の範囲がより好ましく、1〜30質量%の範囲が更に好ましく、1〜5質量%の範囲が特に好ましい。
前記エステル化合物(C)の製造で使用する反応器は、高真空かつバッチ式又は連続式に対応した縦型又は横型タンク式リアクターが好ましい。反応器に用いる翼は特に限定されないが、製造されるエステル化合物(C)の粘性又は分子量に応じて適宜選択すれば良い。翼の形状としては、縦型反応器の翼としては、例えば、パドル型、アンカー型、ヘリカル型、大型翼等が挙げられ、横型反応器の翼としては、例えば、格子型、メガネ型、リブ型等が挙げられる。
前記エステル化合物(C)は、ポリカーボネート(A)に添加する際、より均一に混合しやすくするために、予めポリカーボネート(A’)と混合して、エステル化合物(B)をより高濃度で含有するポリカーボネート樹脂組成物であるマスターバッチとしても良い。このマスターバッチ中のポリカーボネート(A’)とエステル化合物(C)との質量比[(A’)/(C)]は、10/90〜90/10の範囲が好ましいが、少量添加で流動性を向上させ、より均一に混合できるようにするためには、30/70〜80/20の範囲がより好ましく、40/60〜80/20の範囲がさらに好ましい。
前記ポリカーボネート(A’)とエステル化合物(C)とを用いて、マスターバッチを製造する方法は特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート(A’)とエステル化合物(C)の両方又は片方を溶解する溶媒を使用し、ポリカーボネート(A’)とエステル化合物(C)の溶液、もしくはスラリーを作製後、乾燥し、得られた固形のマスターバッチを粉砕又はペレット化する方法;押出機、連続式ニーダー、バッチ式ニーダー等を用いてポリカーボネート(A’)とエステル化合物(C)とを溶融混合後、冷却して得る方法;ポリカーボネート(A’)とエステル化合物(C)とを溶融混合後、得られた固形のマスターバッチを粉砕又はペレット化する方法等が挙げられる。
マスターバッチの製造に用いる前記ポリカーボネート(A’)は、上述したポリカーボネート(A)と同様なものを用いることができる。なお、前記ポリカーボネート(A’)は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート(A)と、平均分子量等が異なるものを用いても構わない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート(A)とエステル化合物(C)の質量比[(A)/(C)]は、流動性、機械的特性(耐衝撃性)、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性のバランスに優れることから、質量基準で99.8/0.2〜80/20の範囲が好ましい。また、より流動性、機械的特性(耐衝撃性)、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性に優れることから、99.8/0.2〜90/10の範囲がより好ましく、99.7/0.3〜95/5の範囲がさらに好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、エステル化合物(C)が分岐構造を有するため、エステル化合物(C)とポリカーボネート(A)との分子鎖同士がからみ合い、耐衝撃性をほとんど損なわず、流動性を向上できるため、従来のようにポリカーボネート(A)の平均分子量を大きく下げることで流動性を向上しなくても良い点が特徴である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、耐加水分解性を向上する目的で、モノカルボジイミドを配合しても良い。このモノカルボジイミドとしては、例えば、ジフェニルカルボジイミド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(o−メチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−メチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)カルボジイミド、2,4,6−トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリイソブチルフェニル)カルボジイミド等の芳香族モノカルボジイミド;ジ−シクロヘキシルカルボジイミド等の脂環族モノカルボジイミド;ジ−イソプロピルカルボジイミド、ジ−オクタデシルカルボジイミド等の脂肪族モノカルボジイミドなどが挙げられる。
上記のモノカルボジイミドの中でも、耐加水分解性がより良好となり、ポリカーボネート樹脂組成物に配合する各ポリマーのカルボキシル基末端濃度を下げる目的から、芳香族モノカルボジイミドが好ましく、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミドがさらに好ましい。これらのモノカルボジイミドは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
〔導電性ポリカーボネート樹脂組成物〕
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記ポリカーボネート(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、エステル化合物(C)とを含有することを必須とするが、本発明の効果を損なわない範囲において、公知の添加剤を添加してもよい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤、その他の合成樹脂、エラストマー等を、本発明の目的を阻害しない範囲で配合することができる。
前記添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系(亜リン酸エステル系、リン酸エステル系等)、アミン系等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;脂肪族カルボン酸エステル系、パラフィン系、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス等の内部滑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、各種の有機フィラー、無機充填剤、ブロッキング防止剤、各種カップリング剤、界面活性剤、着色剤、発泡剤、天然材料などが挙げられる。
前記その他の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート等の合成樹脂が挙げられる。また、前記エラストマーとしては、イソブチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル系エラストマー等が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に無機充填剤を配合すると、機械的強度、寸法安定性等が向上するため好ましい。また、増量を目的で、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に無機充填剤を配合して良い。
前記無機充填剤としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウムニウム、硫酸アンチモン、硫酸エステル、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム等の硫酸金属化合物;酸化チタン等のチタン化合物;炭酸カリウム等の炭酸塩化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化金属化合物;合成シリカ、天然シリカ等のシリカ系化合物;アルミン酸カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂;硝酸ナトリウム等の硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物及びその変性物;二酸化珪素及び酸化アルミニウムニウムの複合体微粒子などが挙げられる。
また、上記以外の無機充填剤として、例えば、チタン酸カリウムウイスカー、鉱物繊維(ロックウール等)、ガラス繊維、金属繊維(ステンレス繊維等)、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、ボロン繊維、テトラポット状酸化亜鉛ウイスカー、タルク、クレー、カオリンクレー、天然マイカ、合成マイカ、パールマイカ、アルミ箔、アルミナ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アスベスト、石英粉等が挙げられる。
これらの無機充填剤は、無処理であっても、予め化学的又は物理的表面処理を施しても良い。その表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤系、高級脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、不飽和有機酸系、有機チタネート系、樹脂酸系、ポリエチレングリコール系等が挙げられる。
前記難燃剤としては、例えば、ホウ酸系難燃化合物、リン系難燃化合物、窒素系難燃化合物、ハロゲン系難燃化合物、有機系難燃化合物、コロイド系難燃化合物等が挙げられる。
前記の各成分を配合し、混練する方法は通常の方法で行えばよく、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。なお、混練に際しての加熱温度は、通常150〜320℃の範囲が適当である。
カーボンナノチューブ(B)、エステル化合物(C)およびその他の添加剤の混練機への供給方法は特に制限されない。ドライブレンドによる一括供給でもよく、また個別の供給機を用い各添加剤を個別に供給しても良い。また、各添加剤はポリカーボネート(A)に一部を混合し供給してもよく、全量を混合し供給してもよい。
また、カーボンナノチューブ(B)は、上述したポリカーボネート(A‘)とエステル化合物(C)のマスターバッチを製造する際に加えてもよい。その際に予め溶媒中でビーズミルや超音波ホモジナイザー等の分散機を用い、カーボンナノチューブを十分に分散した後にマスターバッチ中に加え、溶媒を乾燥除去する工程を経ることで、カーボンナノナノチューブの分散性が極めて高いマスターバッチが得られ、そのマスターバッチを用い成形することで、導電性が極めて良好なポリカーボネート樹脂成形品とすることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、公知慣用の方法で成形し、導電性ポリカーボネート樹脂成型品とすることができる。射出成形(射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形)はもとより、各種押出(コールドランナー方式、ホットランナー方式)、さらには発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、及び超高速射出成形などの射出成形法)により各種異形押出成形品、押し出し成形によるシート、フィルムなどの形で用いることもできる。また、シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物及び該導電性ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる導電性ポリカーボネート樹脂成形品は、OA機器や家電製品の外装材、各種容器、雑貨、例えば、パソコン、ノートパソコン、ゲーム機、ディスプレイ装置(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、及び有機ELなど)、マウス、並びにプリンター、コピー機、スキャナー及びファックス(これらの複合機を含む)などの外装材、キーボードのキー、スイッチ成形品、携帯情報端末(いわゆるPDA)、携帯電話、携帯書籍(辞書類等)、携帯テレビ、記録媒体(CD、MD、DVD、ブルーレイディスク、ハードディスクなど)のドライブ、記録媒体(ICカード、スマートメディア、メモリースティックなど)の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、及びタイプライターなどに形成された樹脂製品を用いることができる。また、トレー、カップ、皿、シャンプー瓶、OA筐体、化粧品瓶、飲料瓶、オイル容器、射出成形品(ゴルフティー、綿棒の芯、キャンディーの棒、ブラシ、歯ブラシ、ヘルメット、注射筒、皿、カップ、櫛、剃刀の柄、テープのカセット及びケース、使い捨てのスプーンやフォーク、ボールペン等の文房具等)等に有用である。
また、結束テープ(結束バンド)、プリペイカード、風船、パンティーストッキング、ヘアーキャップ、スポンジ、セロハンテープ、傘、合羽、プラ手袋、ヘアーキャップ、ロープ、チューブ、発泡トレー、発泡緩衝材、緩衝材、梱包材、煙草のフィルター等の多分野にわたる用途に用いることが可能である。
さらに、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビケーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品などの車両用部品にも用いることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形した樹脂成形品には、表面改質を施すことにより、他の機能を付与することが可能である。ここでいう表面改質とは、物理蒸着、化学蒸着等の蒸着、電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等のメッキ、塗装、コーティング、印刷等の樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の樹脂成形品に用いられる方法が適用できる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、その良好な色相により遮蔽性の低い塗装であっても1コートで良好な製品を提供することが可能である。
以下に具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
製造例、実施例及び比較例で得られたものの物性は、下記の試験方法により測定した。
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
下記の測定条件でGPC測定装置を用い、標準ポリスチレンとの比較で重量平均分子量(Mw)を測定した。
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220」
カラム:東ソー株式会社製「TSK SuperH−H」(ガードカラム)
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35mL/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
[酸価の測定方法]
100mL三角フラスコに試料約10gを電子天秤にて正確に秤量し、トルエン/メタノール(7/3質量比)混合溶媒50mLを加えて溶解した。溶解後、市販のフェノールフタレイン指示薬を約0.1mL添加し、0.01モル/L水酸化カリウムアルコール溶液で滴定した。30秒間持続する微紅色を呈した点を終点とし、その滴下量を読み、次式から酸価を求めた。
酸価=V×F×0.5611/S
V:0.01モル/L水酸化カリウムアルコール溶液の使用量(mL)
F:0.01モル/L水酸化カリウムアルコール溶液の力価
S:試料採取量(g)
[水酸基価の測定方法]
300mL三角フラスコに試料を約10g電子天秤にて正確に秤量し、無水酢酸/ピリジン(1/19容量比)混合剤25mLをホールピペットで加えた。次いで、冷却管を付けて80℃の湯浴中入れ、冷却管に水を通して振とうさせながら1時間反応させた。反応後湯浴から取り出し、イオン交換水約10mLを冷却管頂上から加えて振とうした。室温まで冷却後、n−ブタノールを加え、フェノールフタレイン指示薬を約0.1mL添加し、0.5モル/L水酸化カリウムアルコール溶液で滴定した。30秒間持続する微紅色を呈した点を終点とし、その滴下量を読み取った。同時に空試験も行い、次式から水酸基価を求めた。
水酸基価=(B−T)×F×28.5/S+酸価
B:空試験での0.5モル/L水酸化カリウムアルコール溶液の滴下量(mL)
T:本試験での0.5モル/L水酸化カリウムアルコール溶液の滴下量(mL)
F:0.5モル/L水酸化カリウムアルコール溶液の力価
S:試料採取量(g)
[アルカリ金属含有量の測定方法]
マイクロ波分解法により試料を処理した溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製「Optima 4300DV」)にて測定した。
[流動性の測定方法]
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットについて、メルトインデクサー(東洋精機工業株式会社製)を用いて、下記の測定条件で、ピストンが2.54cmの距離を移動する時間(t)を測定し、以下の計算式より、メルトボリュームレート(以下、「MVR」と略記する。)(単位:cm/10分)を算出した。
(測定条件)
標準オリフィス(直径:2.096×8.001mm)、荷重:1.2kg、温度300℃、測定時間:荷重開始5分後からの時間で測定した。
MVR=426×2.54/t
《製造例1》エステル化合物(C−1)の製造
3Lセパラブルフラスコに、ジペンタエリスリトール(純度85%、ナトリウム含有量460ppmのもの;以下、「DPE(1)」と略記する。)33.6g、ジペンタエリスリトール(純度90%、ナトリウム含有量31ppmのもの;以下、「DPE(2)」と略記する。)729.3g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸473.6gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−1)を得た。このエステル化合物(C−1)は常温で固体、水酸基価は948、酸価は0.52、ナトリウム含有量は40ppmであった。
《製造例2》エステル化合物(C−2)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)33.6g、DPE(2)729.3g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸789.4gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−2)を得た。このエステル化合物(C−2)は常温で半固体、水酸基価は546、酸価は0.70、ナトリウム含有量は35ppmであった。
《製造例3》エステル化合物(C−3)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)33.6g、DPE(2)729.3g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,073.5gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−3)を得た。このエステル化合物(C−3)は常温で半固体、水酸基価は362、酸価は1.10、ナトリウム含有量は32ppmであった。
《製造例4》エステル化合物(C−4)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)122.8g、DPE(2)640.0g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,073.5gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−4)を得た。このエステル化合物(C−4)は常温で半固体、水酸基価は363、酸価は0.64、ナトリウム含有量は64ppmであった。
《製造例5》エステル化合物(C−5)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)211.3g、DPE(2)551.5g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,073.5gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−5)を得た。このエステル化合物(C−5)は常温で半固体、水酸基価は361、酸価は0.54、ナトリウム含有量は96ppmであった。
《製造例6》エステル化合物(C−6)の製造
3Lセパラブルフラスコに、ジペンタエリスリトール(純度95%、ナトリウム含有量11ppmのもの;以下、「DPE(3)」と略記する。)762.8g及び酢酸ブチル762.8gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,073.5gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−6)を得た。このエステル化合物(C−6)は常温で半固体、水酸基価は365、酸価は0.54、ナトリウム含有量は7ppmであった。
《製造例7》エステル化合物(C−7)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)371.5g、DPE(2)391.3g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,073.5gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−7)を得た。このエステル化合物(C−7)は常温で半固体、水酸基価は363、酸価は0.44、ナトリウム含有量は153ppmであった。
《製造例8》エステル化合物(C−8)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)33.6g、DPE(2)729.3g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,862.9gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−9)を得た。このエステル化合物(C−9)は常温で液体、水酸基価は9、酸価は0.53、ナトリウム含有量は25ppmであった。
《製造例9》エステル化合物(C−9)の製造
3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)762.8g及び酢酸ブチル763gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら120℃まで昇温した。昇温後、滴下ロートにて、無水酢酸1,862.9gを10mL/分の速度でフラスコ内に滴下した。反応温度は120℃になるよう制御した。滴下終了5時間後、生成した酢酸及び酢酸ブチルの除去を開始し、常圧で1時間、さらに0.1kPaまで減圧を行い、酢酸及び酢酸ブチルを2時間留去して、エステル化合物(C−10)を得た。このエステル化合物(C−10)は常温で液体、水酸基価は8、酸価は0.64、ナトリウム含有量は233ppmであった。
《製造例10》エステル化合物(C−10)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)33.6g、DPE(2)729.3g、2−エチルヘキサン酸865.2g及びキシレン49gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応の2−エチルヘキサン酸を留去して、エステル化合物(C−11)を得た。このエステル化合物(C−11)は常温で半固体、水酸基価は443、酸価は0.58、ナトリウム含有量は25ppmであった。
《製造例11》エステル化合物(C−11)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)33.6g、DPE(2)729.3g、オクタン酸1,081.5g及びキシレン55gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応のオクタン酸を留去して、エステル化合物(C−12)を得た。このエステル化合物(C−12)は常温で半固体、水酸基価は350、酸価は0.82、ナトリウム含有量は22ppmであった。
《製造例12》エステル化合物(C−12)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた3Lセパラブルフラスコに、DPE(4)を762.8g、ステアリン酸を734g及びキシレン45gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応のステアリン酸を留去して、エステル化合物(C−13)を得た。このエステル化合物(C−13)は常温で固体、水酸基価は602、酸価は0.24、カリウム含有量は26ppmであった。
《製造例13》エステル化合物(C−13)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた3Lセパラブルフラスコに、DPE(2)762.8g、ステアリン酸1,578.9g及びキシレン70gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応のステアリン酸を留去して、エステル化合物(C−14)を得た。このエステル化合物(C−14)は常温で固体、水酸基価は322、酸価は0.19、ナトリウム含有量は11ppmであった。
《製造例14》エステル化合物(C−14)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた3Lセパラブルフラスコに、DPE(1)33.6g、DPE(2)729.3g、ステアリン酸1,578.9g及びキシレン70gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応のステアリン酸を留去して、エステル化合物(C−15)を得た。このエステル化合物(C−15)は常温で固体、水酸基価は320、酸価は0.11、ナトリウム含有量は17ppmであった。
《製造例15》エステル化合物(C−15)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた3Lセパラブルフラスコに、ジペンタエリスリトール(純度85%、カリウム含有量99ppmのもの;以下、「DPE(5)」と略記する。)762.8g、ステアリン酸1,578.9g及びキシレン70gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応のステアリン酸を留去して、エステル化合物(C−16)を得た。このエステル化合物(C−16)は常温で固体、水酸基価は325、酸価は0.30、カリウム含有量は35ppmであった。
《製造例16》エステル化合物(C−16)の製造
キシレンを予め満たしたデカンターを取り付けた5Lセパラブルフラスコに、DPE(1)140.9g、DPE(2)367.7g、ステアリン酸3,158.0g及びキシレン110gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで昇温後、8時間反応させた。その後0.1kPaまで減圧を行い、未反応のステアリン酸を留去して、エステル化合物(C−18)を得た。このエステル化合物(C−18)は常温で固体、水酸基価は16、酸価は0.50、ナトリウム含有量は22ppmであった。
上記で得られたエステル化合物(C−1)〜(C−16)の原料組成、性状、水酸基価、酸価、及びアルカリ金属含有量(ナトリウム又はカリウムの含有量)を表1及び2に示す。
エステル化合物の粘度については、ブルックフィールド社製粘度測定器DV−IIIUltra(コーンスピンドルタイプCPE−41)(測定粘度範囲600〜11000CP)を用い、測定温度25℃の条件で粘度を測定したところ、固体、半固体の形状のものは何れも流動を殆ど示さず正しい測定値を得られない結果となった。ここで、固体、半固体は流動を示さず容器より流れ落ちないものとする。流動性も可塑性も殆どなく、衝撃を加えても跡が残らないものを固体といい、流動性はないが可塑性を持つ為、衝撃を加えた場合に跡が残され、その後変形せず跡がそのまま残るものを半固体とした。また、容器内に充填し傾けた場合に、流動を示し、容器より流れ落ちたものを液体とした。
Figure 2014019792
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《製造例20》マスターバッチ(MB−1)の製造(溶液法)
2Lのビーカーに、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製「パンライトL−1225Y」、低粘度グレード、重量平均分子量:43,500、数平均分子量:27,700、分散度:1.57;以下、「L−1225Y」と略記する。)50g及び塩化メチレン900gを仕込み、攪拌、溶解させた後、製造例1で得られたエステル化合物(C−1)50gを添加して、さらに10分間攪拌した溶液をステンレスバットに入れ、塩化メチレンを蒸発、乾燥させることで、固形物を得た。これを粉砕機で粉砕し、エステル化合物(C−1)とポリカーボネートとのマスターバッチ(MB−1)の粉体を得た。
《製造例21》マスターバッチ(MB−2)の製造(溶融法)
ラボプラストミル(東洋精機工業株式会社製)を用いて、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製「パンライトAD−5503」、光学用グレード、重量平均分子量:29,700、数平均分子量:18,900、分散度:1.57;以下、「AD−5503」と略記する。)50g及び製造例2で得られたエステル化合物(C−2)50gを、200℃で10分間混練して固形物を得た。これを粉砕機で粉砕し、エステル化合物(B−2)とポリカーボネートとのマスターバッチ(MB−2)の粉体を得た。
《製造例22〜29》マスターバッチ(MB−3)〜(MB−10)の製造(溶液法)
製造例20で用いたエステル化合物(C−1)に代えて、製造例3〜10で得られたエステル化合物(C−3)〜(C−10)をそれぞれ用いた以外は製造例20と同様に操作し、マスターバッチ(MB−3)〜(MB−10)を得た。
《製造例30、31》マスターバッチ(MB−11)、(MB−12)の製造(溶融法)
製造例21で用いたエステル化合物(C−2)に代えて、製造例11及び12で得られたエステル化合物(C−11)及び(C−12)をそれぞれ用いた以外は製造例21と同様に操作し、マスターバッチ(MB−11)、(MB−12)を得た。
《製造例32〜34》マスターバッチ(MB−13)〜(MB−15)の製造(溶液法)
製造例20で用いたエステル化合物(C−1)に代えて、製造例14〜16で得られたエステル化合物(C−13)〜(B−15)をそれぞれ用いた以外は製造例20と同様に操作し、マスターバッチ(MB−13)〜(MB−15)を得た。
《製造例35》マスターバッチ(MB−16)の製造(溶融法)
製造例21で用いたエステル化合物(C−2)に代えて、製造例16で得られたエステル化合物(C−16)を用いた以外は製造例21と同様に操作し、マスターバッチ(MB−16)を得た。
上記で得られたマスターバッチ(MB−1)〜(MB−16)の原料組成、性状、水酸基価、酸価、及びアルカリ金属含有量(ナトリウム又はカリウムの含有量)含有量を表3及び4に示す。
Figure 2014019792
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《実施例1〜16》及び《比較例1〜9》ポリカーボネート樹脂組成物の調製及び試験片の作製
上記の製造例20〜35で得られたマスターバッチ(MB−1)〜(MB−16)及びエステル化合物(C−3)と、炭素材料としてカーボンナノチューブ(ナノシル製の「NC7000」(径9.5nm、長さ1.5μm))、真空乾燥機を用い120℃、8時間の条件で乾燥したポリカーボネート(L−1225Y、AD−5503、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製「パンライトLN−2250Y」、難燃性グレード、重量平均分子量:43,300、数平均分子量:27,500、分散度:1.57;以下、「LN−2250Y」と略記する。)を表5〜7に示す配合量にて、ヘンシェルミキサーで予備混合した後、株式会社日本製鋼所製の二軸押出機「TEX−30」(シリンダ径30mmL/D=52)を用い、シリンダ(ダイス温度250℃、スクリュウ回転数250r.p.m、供給量10kg/h)で混練した。又、二軸押出機の先端に3mm径の穴が3本開いたダイを装着し、混練物のストランドを得た。得られたストランドを水冷した後、ペレタイザーに通しカットし、円柱状のペレットを得た。
得られたペレットを120℃の真空乾燥機で8時間乾燥後、東芝機械製の射出成型機「MS−55」を用い、シリンダ設定温度300℃、背圧1MPa 金型温度90℃、射出速度20mm/s、及び40mm/sの二水準の条件で成形し、長径90mm×短径50mm×厚み3mmの平板状の試験片を得た。
[評価項目]
評価項目は、以下の項目について行った。
[導電性]
得られた各試験片の移動金型側の面につき、中央にあたる箇所の表面抵抗値を、三菱化学製の抵抗率計 ロレスタEP MCP−T360型(10^6Ω/cm2未満)、及びハイレスタハイレスタUP MCP−HT450型(10^6Ω/cm2以上)を用いて測定した。
[平板の表面外観]
得られた試験片の移動金型側の面につき、フローマーク、シルバーストリーク、粗大異物、表面べとつきの有無を目視等により評価した。
実施例1〜16及び比較例1〜9で得たポリカーボネート樹脂組成物の配合成分及び配合量、並びに得られた成形品の物性値を表5〜7に示す。
Figure 2014019792
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表5〜7に示した評価結果より、以下のことが分かった。
実施例1〜16のものは、水酸基価が100以上であり、かつアルカリ金属であるナトリウム又はカリウム含有量が10〜200ppmの範囲であるエステル化合物(C)と、ポリカーボネート(A)、および炭素材料(B)を用いた本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物の例である。これらは、射出速度40mm/secの条件において、表面抵抗率が帯電防止域である10^11Ωより低い値となる結果が得られ、エステル化合物(C)を配合していないポリカーボネート(A)とカーボンナノチューブ(B)のみの(比較例7)から大幅に導電性が向上していることが分かった。また、ポリカーボネート(A)の種類を変えた実施例6、実施例7においても、エステル化合物(C)を配合していない比較例8、比較例9から大幅に導電性が向上していることが分かった。
また、実施例4と実施例16の最終配合は同じであるが、実施例4はマスターバッチ(MB−3)を用いるのに対し、実施例16はエステル化合物(C−3)を用いポリカーボネート樹脂組成物を得た例である。これらは同様の導電性が得られており、配合方法による差がないことが分かった。
一方、比較例1〜6のポリカーボネート樹脂組成物は、水酸基価が100未満又はアルカリ金属含有量が10ppm未満又は200ppmを超えた比較エステル化合物(C)を用いた例である。この比較例1〜6のポリカーボネート樹脂組成物は、エステル化合物(C)がいかなる性状であっても、射出速度20mm/sec、40mm/secの成形条件において、表面抵抗率がエステル化合物(C)を配合していないポリカーボネート(A)とカーボンナノチューブ(B)のみの(比較例7)と変わらず、エステル化合物(C)配合の効果がないことが分かった。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネートの機械的特性、透明性、耐熱性、耐加水分解性、及び難燃性を損なわずに、高い導電性を有する。したがって、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、より薄肉化が望まれている導電性樹脂成形品に適しており、例えば、自動車、電車等の車両部品;テレビ、パソコン用ディスプレイ等の表示装置の筐体部品;冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体及び各種成形部品;OA機器部品、電動工具部品等の各種成形品;CD、DVD、ブルーレイ等の光学記録媒体用材料、建材等のシートなどに好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリカーボネート(A)と、カーボンナノチューブ(B)とエステル化合物(C)を含有する導電性ポリカーボネート樹脂組成物であって、
    前記エステル化合物(C)が、ジペンタエリスリトール(D)と、モノカルボン酸(E)又はその酸無水物とを反応させて得られたものであり、前記エステル化合物(C)の水酸基価が100KOHmg/g以上であり、かつ前記エステル化合物(C)中のアルカリ金属含有量が10〜200ppmの範囲であることを特徴とする、導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記エステル化合物(C)の粘度が、25℃1気圧において11000cP以上である、請求項1に記載の導電性ポリカーボネート組成物。
  3. 前記ポリカーボネート(A)と、前記カーボンナノチューブ(B)の合計を100質量%としたとき、ポリカーボネート(A)が80〜99.9質量%、カーボンナノチューブ(B)が0.1〜20質量%の範囲である、請求項1または2に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記ポリカーボネート(A)と、前記カーボンナノチューブ(B)合計を100質量%としたとき、ポリカーボネート(A)とカーボンナノチューブ(B)の合計に対して、前記エステル化合物(C)が0.2〜20質量%の範囲である、請求項1から3のいずれか記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記エステル化合物(C)の酸価が10以下である請求項1から4のいずれかに記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 前記モノカルボン酸(E)が、酢酸、無水酢酸、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1から5のいずれかに記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物を、射出成型して得られることを特徴とする、導電性樹脂成形品。
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