JP7171335B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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タルク等の珪酸塩化合物系の無機フィラーは、無機フィラーとして一般的に用いられるガラス繊維と比較して、1)良外観が得られる、2)剛性と衝撃のバランスが良い、3)成形機スクリューや金型の摩耗が少ない、といった利点がある一方で、タルク等の珪酸塩化合物はそれ自体アルカリ性の性質を持つため、ポリカーボネート樹脂に配合した場合、樹脂の分解に伴う滞留熱安定性等の熱安定性及び機械的物性の低下や、シルバーストリーク等の外観上の問題があった。
また、ポリエステル成分を添加することにより、樹脂の分解に伴う滞留熱安定性等の熱安定性の低下を抑制する方法(特許文献4)が提案されているが、寸法安定性が悪くなるという問題がある。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
[2]顆粒状タルク(B)が、タルクと水溶性ポリエステル樹脂バインダからなる顆粒状タルクである上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)が、イソフタル酸を共重合成分として3モル%以上50モル%未満含有する共重合ポリエチレンテレフタレートである上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を含有する。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
また、上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-3、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインドール(即ち、イサチンビスフェノール)、5-クロルイサチン、5,7-ジクロルイサチン、5-ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシルフェニル)エタン又は1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01~10モル%となる量であり、より好ましくは0.1~2モル%となる量である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
本発明の樹脂組成物は顆粒状タルク(B)を使用する。顆粒状タルク(B)を用いることにより、樹脂組成物の剛性と成形品の表面平滑性を良好にすることができ、表面に蒸着を施す場合には平滑な蒸着面を形成できる。また溶融混練時にはフィードしやすくなる。
ここで、顆粒状とは、タルクが粒状または塊状物に集合したものをいい、その形状は問わず、タルクが互いに結着して粒状または塊状物となったものを意味する。
表面処理剤としては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類、トリエチルアミン等のアルカノールアミン、オルガノポリシロキサン等の有機シリコーン系化合物、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、流動パラフィン等の炭化水素系滑剤、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、ポリグリセリン及びそれらの誘導体、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
水溶性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸類またはその反応性誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオール類またはそのエステル誘導体からなるジオール成分と、水溶性付与成分とを原料主成分とし、これらを縮合反応させることにより得られる共重合体であり、水に対する溶解度を有するものを言う。水に対する溶解度は、適宜選択して決定すれば良く、水溶性付与成分の含有量で調整することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、イソフタル酸を共重合成分として含有するイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)を含有する。イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)は通常は非晶性で、顆粒状タルク(B)との親和性が大きく、樹脂組成部中で顆粒状タルク(B)を包み込むような形となり、タルクによるポリカーボネート樹脂の分解作用を抑えることが可能となり、成形品の表面粗さも小さくすることができる。ポリエチレンテレフタレートのホモポリマーは結晶性であるので、これを使用すると樹脂組成物の寸法安定性を悪くしやすくなる。
共重合ポリエチレンテレフタレート(C)は、テレフタル酸を有するジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分との重縮合物であり、上記ジカルボン酸成分の一部としてイソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートである。
上記範囲を外れ、イソフタル酸の共重合割合が少な過ぎると、共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の結晶性が高くなり、製品の寸法安定性が悪くなる。一方、イソフタル酸の共重合割合が多過ぎると耐熱性の低下を起こすため好ましくない。
ここで、ガラス転移温度はJIS K7121に基づき、DSC法により測定される値である。
なお、共重合ポリエチレンテレフタレート(C)の固有粘度(IV)は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましく、安定剤としてはリン系安定剤やフェノール系安定剤が好ましい。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
このような有機ホスフェート金属塩としては、具体的には、例えば、城北化学工業社製「JP-518Zn」、ADEKA社製「AX-71」等が挙げられる。
このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、滑剤を含有することができる。滑剤を含有することで、溶融混練時の熱劣化を抑制したり、成形時の離型性を向上させることができる。
これらのなかで好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、着色剤(染顔料)を含有することも好ましい。着色剤(染顔料)としては、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、酸化チタン、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料が挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、カーボンブラック、酸化チタン、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は黒色化することも好ましく、特にカーボンブラックを含有することが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のその他の樹脂、その他の樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、脂肪族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
その他の樹脂添加剤としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
更にフィブリル化したポリテトラフルオロエチレンを難燃助剤として配合すると、より高度な難燃性を発現させることもできる。ポリテトラフルオロエチレンの配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01~0.3質量部が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、顆粒状タルク(B)及びイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形品(樹脂組成物成形品)として用いる。この成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればく塗装や蒸着によって表面に意匠や機能を付与してもよい。
なお、実施例及び比較例で用いた使用材料は、以下の表1の通りである。
上記表1に示した各成分を、後記表2及び表3に記した割合(全て質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX25αIII)に供給し、スクリュー回転数250rpm、吐出量30kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化して、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
なお、比較例9~10は、上記表1に示した各成分のうち、B5のガラス繊維を除く成分を、後記表3に記した割合で配合し、タンブラーにて20分混合した後、B5のガラス繊維を後記表3に記した割合でサイドフィードにて添加した以外は上記と同様にして、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
また、住友重機械工業社製射出成形機「SE50DUZ」を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で、90mm×50mm、厚みが2mmと3mmの2段プレートを作成した。
さらに、日精樹脂工業社製「NEX80-9E」を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒、保圧として射出ピーク圧の50%を10秒かけた条件で、100mm×100mm×3mm厚の成形品を作成した。
上記で得られたペレットを、120℃で5時間以上乾燥した後、JIS K7210-1付属書JAに基づき、高架式フローテスターを用いて、280℃の温度、荷重1.60kgf/cm2の条件下で、単位時間あたりの流れ値(単位:×10-2cm3/sec)を測定した。オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
なお、流れ値では予熱時間を420秒とし、滞留流れ値では予熱時間を900秒とした。流れ値の値は大きくなり過ぎないことが望ましく、また、流れ値と滞留流れ値の数値が大きく変わらないことが望ましい。
上記で得られた多目的試験片TypeA(厚さ4mm)を用い、荷重たわみ温度(単位:℃)および曲げ弾性率(単位:MPa)を、それぞれISO75-1及び2に基づき、荷重1.8MPaにて、ISO178に基づいて測定した。
上記で得られた100mm×100mm×3mm厚の成形品について、用いた金型のキャビティー寸法と成形品の寸法から金型のキャビティーに対する百分率(%)として、MD方向とTD方向の成形収縮率を算出した。
上記で得られた厚みが2mmと3mmの2段プレートの厚み2mm部分について、東京精密社製表面粗さ計「サーフコム3000A-STD-3DF」を用いて、JIS B0601に基き、表面粗さRaを測定した。
Claims (3)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、顆粒状タルク(B)3~20質量部、及びイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)1~10質量部を含有し、顆粒状タルク(B)がタルクと水溶性ポリエステル樹脂バインダからなる顆粒状タルクであって、顆粒状タルク(B)のバインダ含有量は、顆粒状タルク(B)100質量%中、0.01~5質量%であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
- イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(C)が、イソフタル酸を共重合成分として3モル%以上50モル%未満含有する共重合ポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
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