JP5577952B2 - 純度の高い微細な炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

純度の高い微細な炭素繊維およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性に優れ、純度の高い微細な炭素繊維およびその製造方法に関する。詳しくは、触媒を使用する気相成長法によって製造される微細な炭素繊維を、効率よく高純度化する方法に関する。
微細な炭素繊維は、導電性、熱伝導性、耐熱性、加工性等に優れ、多くの分野でその応用が期待されている。円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン、カップ積層型)、トランプ状(プレートレット)等、様々な形態や機能の微細な炭素繊維が製造されている。とりわけ、円筒チューブ状の微細な炭素繊維(カーボンナノチューブ)は従来の炭素材料と比較し、強度、導電性等に優れるため、次世代の導電性材料として注目を集めている。
微細な炭素繊維の製造方法として、アーク放電法、気相成長法、レーザー法、鋳型法等が知られている。これら製造方法においては金属触媒を用いることが多いが、製造後の未精製の生成物には、製造に使用した触媒や、副生成物であるアモルファスカーボン等が混入しており、純度が低く、微細な炭素繊維の特徴を生かした産業上の利用に不向きである。
生成した微細な炭素繊維を高純度化するため、残留する金属触媒等を液相操作によって除去する方法が、報告されている。例えば、特許文献1には、所定の炭化水素化合物を含む液体にカーボンナノチューブを浸し、液相分離により精製する方法、特許文献2には、未精製カーボンナノチューブを、有機酸と過酸化水素の混合液と接触させて精製する方法、特許文献3には、カーボンナノチューブを含む粗生成物に、硫酸と硝酸カリウムの混合溶液を加えて精製する方法が記載されているが、いずれの方法も、精製処理を行う際のカーボンナノチューブを含むスラリーの濃度が約0.1%〜1%と低く、工業的方法として効率が悪いという問題がある。
また、酸処理により残留する金属触媒等の不純物を除去する方法も報告されている。例えば、特許文献4には、多層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理することにより精製する方法、特許文献5には、裁断処理により破片化したカーボンナノチューブを電気泳動した後、硝酸や硫酸等の無機酸で処理することにより精製する方法、特許文献6には、単層カーボンナノチューブを硝酸溶液で処理することにより精製する方法、特許文献7には、カーボンナノチューブを塩酸溶液と硫酸―硝酸の混合溶液で処理することにより精製する方法が記載されている。しかし、塩酸や硫酸を含む水溶液による処理では、炭素繊維の表面にClやSが化学結合してしまい、また硝酸による処理では炭素繊維の表面が酸化されてしまい、炭素繊維の表面を損なうことなく高純度化することができないという問題がある。
特開2005−097029号公報 特開2005−015252号公報 特開2004−059326号公報 特開2009−149503号公報 特開2008−280227号公報 特開2008−100895号公報 特開2007−237170号公報
本発明は、上記問題を解決し、生産性が高く、炭素繊維の表面が損なわれない率が高い、高純度の微細な炭素繊維を製造する方法および該方法により製造された微細な炭素繊維を提供することを目的とする。
本発明は、以下の事項に関する。なお、本発明において、「微細な炭素繊維」とは、気相成長法により得られる炭素繊維のことを言う。また、「高純度の微細な炭素繊維」とは、微細な炭素繊維を本発明の洗浄方法により高純度化した炭素繊維のことをいう。
1.触媒上に、CO及びHを含む混合ガスを供給して反応させることにより製造した微細な炭素繊維を、有機カルボン酸の水溶液で洗浄する工程を含むことを特徴とする、高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
2.前記触媒が、マグネシウムが置換固溶したコバルトのスピネル型酸化物を含む触媒であることを特徴とする、上記1に記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
3.前記スピネル型酸化物を、MgCo3−xで表したとき、マグネシウムの固溶範囲を示すxの値が、0.5〜1.5であることを特徴とする、上記2に記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
4.気相成長法により製造され、炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2〜30個積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head−to−Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成している微細な炭素繊維を、有機カルボン酸の水溶液で洗浄する工程を含むことを特徴とする、高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
5.前記集合体胴部の端の外径Dが5〜40nm、内径dが3〜30nmであり、該集合体のアスペクト比(L/D)が2〜150であることを特徴とする上記4に記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
6.前記有機カルボン酸が、水溶性を示し、25℃、イオン強度0.1mol/Lの条件での酸解離定数pKaが5以下となる解離平衡段を含むことを特徴とする、上記1から5のいずれかに記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
7.微細な炭素繊維を有機カルボン酸の水溶液と混合させる際に、その混合液のスラリー濃度が、2重量%以上12重量%以下であることを特徴とする、上記1から6のいずれかに記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
8.上記1〜7記載のいずれかの製造方法により、製造された高純度の微細な炭素繊維。
9.気相成長法により製造され、炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2〜30個積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head−to−Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成し、含有する灰分が2重量%以下であることを特徴とする、高純度の微細な炭素繊維。
本発明の方法によると、高純度の微細な炭素繊維を製造する際、触媒金属等不純物を除去する洗浄処理の工程において、混合液のスラリー濃度を高くして反応させることができるため、生産効率が高くなる。また、当該工程において、微細な炭素繊維の表面を損なうことがないため、高品質で純度の高い微細な炭素繊維を得ることができる。
さらに、本発明に用いる微細な炭素繊維および本発明の方法により製造された高純度の微細な炭素繊維は、従来の炭素繊維と比較すると、単独の繊維における長軸方向の伝導性と隣接する繊維間での導電性とをバランスよく両立させることができる。
(a)微細な炭素繊維を構成する最小構造単位(釣鐘状構造単位)を模式的に示す図である。(b)釣鐘状構造単位が、2〜30個積み重なった集合体を模式的に示す図である。 (a)集合体が間隔を隔てて連結し、繊維を構成する様子を模式的に示す図である。(b)集合体が間隔を隔てて連結する際に、屈曲して連結した様子を模式的に示す図である。 参考例1で製造した微細な炭素繊維のTEM写真像である。 参考例2で製造した微細な炭素繊維のTEM写真像である。
<微細な炭素繊維の製造方法>
微細な炭素繊維の製造方法としては、アーク放電法、気相成長法、レーザー法、鋳型法等が知られているが、この中で気相成長法は、安価な合成方法として注目されている。気相成長法は、原料ガスと金属触媒を反応させて微細な炭素繊維を製造する方法である。以下、気相成長法による微細な炭素繊維の製造方法の一例を示す。本方法は、PCT/JP2009/054210に記載があるとおり、従来の気相成長法に比べて不純物の少ない微細な炭素繊維を効率的に製造することができる製造方法である。
微細な炭素繊維の製造方法の一例は、次のとおりである。コバルトのスピネル型結晶構造を有する酸化物に、マグネシウムが固溶置換した触媒を用いて、CO及びHを含む混合ガスを触媒粒子に供給して気相成長法により、微細な炭素繊維を製造する。
Mgが置換固溶したコバルトのスピネル型結晶構造は、MgCo3−xで表される。ここで、xは、MgによるCoの置換を示す数であり、形式的には0<x<3である。また、yはこの式全体が電荷的に中性になるように選ばれる数で、形式的には4以下の数を表す。即ち、コバルトのスピネル型酸化物Coでは、2価と3価のCoイオンが存在しており、ここで、2価および3価のコバルトイオンをそれぞれCoIIおよびCoIIIで表すと、スピネル型結晶構造を有するコバルト酸化物はCoIICoIII で表される。Mgは、CoIIとCoIIIのサイトの両方を置換して固溶する。MgがCoIIIを置換固溶すると、電荷的中性を保つためにyの値は4より小さくなる。但し、x、y共に、スピネル型結晶構造を維持できる範囲の値をとる。
触媒として使用できる好ましい範囲として、Mgの固溶範囲は、xの値が0.5〜1.5であり、より好ましくは0.7〜1.5である。xの値が0.5未満の固溶量では、触媒の活性は低く、生成する微細な炭素繊維の量は少ない。xの値が1.5を超える範囲では、スピネル型結晶構造を調製することが困難である。
触媒のスピネル型酸化物結晶構造は、XRD測定により確認することが可能であり、結晶格子定数a(立方晶系)は、0.811〜0.818nmの範囲であり、より好ましくは0.812〜0.818nmである。aが小さいとMgの固溶置換が充分でなく、触媒活性が低い。また、0.818nmを超える格子定数を有する前記スピネル型酸化物結晶は調製困難である。
このような触媒が好適である理由として、本発明者らは、コバルトのスピネル構造酸化物にマグネシウムが置換固溶した結果、あたかもマグネシウムのマトリックス中にコバルトが分散配置された結晶構造が形成されることにより、反応条件下においてコバルトの凝集が抑制されていると推定している。
また、触媒の粒子サイズは、適宜選ぶことができるが、例えばメジアン径として、0.1〜100μm、好ましくは、0.1〜10μmである。
触媒粒子は、一般に基板または触媒床等の適当な支持体に、散布するなどの方法により載せて使用する。基板または触媒床への触媒粒子の散布は、触媒粒子を直接散布して良いが、エタノール等の溶媒に懸濁させて散布し、乾燥させることにより所望の量を散布しても良い。
触媒粒子は、原料ガスと反応させる前に、活性化させることも好ましい。活性化は通常、HまたはCOを含むガス雰囲気下で加熱することにより行われる。これらの活性化操作は、必要に応じて、HeやNなどの不活性ガスで希釈することにより実施することができる。活性化を実施する温度は、好ましくは400〜600℃、より好ましくは450〜550℃である。
気相成長法の反応装置に特に制限はなく、固定床反応装置や流動床反応装置といった反応装置により実施することができる。
気相成長の炭素源となる原料ガスは、CO及びHを含む混合ガスが利用される。
ガスの添加濃度{H/(H+CO)}は、好ましくは0.1〜30vol%、より好ましくは2〜20vol%である。添加濃度が低すぎると円筒状のグラファイト質網面が繊維軸に平行したカーボンナノチューブ様の構造を形成してしまう。一方、30vol%を超えると釣鐘状構造体の炭素側周面の繊維軸に対する傾斜角が大きくなり、魚骨形状を呈するため繊維方向の導電性の低下を招く。
また、原料ガスは不活性ガスを含有していてもよい。不活性ガスとしては、CO、N、He、Ar等が挙げられる。不活性ガスの含有量は、反応速度を著しく低下させない程度が好ましく、例えば80vol%以下、好ましくは50vol%以下の量である。また、HおよびCOを含有する合成ガスまたは転炉排出ガス等の廃棄ガスを、必要により適宜処理して使用することもできる。
気相成長を実施する反応温度は、好ましくは400〜650℃、より好ましくは500〜600℃である。反応温度が低すぎると繊維の成長が進行しない。一方、反応温度が高すぎると収量が低下してしまう。反応時間は、特に限定されないが、例えば2時間以上であり、また12時間程度以下である。
気相成長を実施する反応圧力は、反応装置や操作の簡便化の観点から常圧で行うことが好ましいが、Boudouard平衡の炭素析出が進行する範囲であれば、加圧または減圧の条件で実施しても差し支えない。
この微細な炭素繊維の製造方法によれば、触媒単位重量あたりの微細な炭素繊維の生成量は、従来の製造方法に比べて格段に大きいことが示された。この微細な炭素繊維の製造方法による微細な炭素繊維の生成量は、触媒単位重量あたり40倍以上であり、例えば40〜200倍である。その結果、後述する洗浄処理前でも不純物、灰分の少ない微細な炭素繊維の製造が可能である。
この微細な炭素繊維の製造方法により製造される微細な炭素繊維に特有な接合部の形成過程は明らかではないが、発熱的なBoudouard平衡と原料ガスの流通による除熱とのバランスから、前記触媒から形成されたコバルト微粒子近傍の温度が上下に振幅するため、炭素析出が断続的に進行することにより形成されるものと考えられる。即ち、[1]釣鐘状構造体頭頂部形成、[2]釣鐘状構造体の胴部成長、[3]前記[1]、[2]過程の発熱による温度上昇のため成長停止、[4]流通ガスによる冷却、の4過程が触媒微粒子上で繰り返されることにより、微細な炭素繊維構造特有の接合部が形成されると推定される(構造の詳細は後述する)。
上記方法により製造された微細な炭素繊維の炭素純度は、通常96%以上99%以下、好ましくは96.5%以上99%以下、更に好ましくは97%以上99%以下である。なお、炭素純度は、試料を燃焼分解させ発生した二酸化炭素を測定することから決定される。
また、上記方法により製造された微細な炭素繊維に含有される灰分は、4重量%以下である。通常、0.3重量%以上4重量%以下であり、より好ましくは0.3重量%以上3重量%以下である。尚、灰分は、繊維を0.1グラム以上燃焼して残った酸化物の重量から決定される。
<微細な炭素繊維の洗浄処理による高純度化>
次に、以上のように気相成長した微細な炭素繊維を洗浄処理することにより、微細な炭素繊維に含まれる触媒金属等の不純物を除去して高純度化する。
まず、微細な炭素繊維を洗浄するため、少なくとも有機カルボン酸を含む水溶液で加熱処理を行う。
有機カルボン酸とは、分子内にカルボキシル基(−COOH)を有する化合物であり、典型的には炭化水素残基にカルボキシル基が結合し、例えば一般式R−(COOH)で表されるn価のカルボン酸を意味する。ここで、Rは、単結合、水素、直鎖状または分岐状のn価の飽和脂肪族炭化水素残基、n価の不飽和脂肪族炭化水素残基、n価の飽和環状炭化水素残基、n価の不飽和環状炭化水素残基またはn価の芳香環残基を示し、1個または2個以上の置換基を有していてもよい。
上記有機カルボン酸のなかでも水溶性を示し、25℃、イオン強度0.1mol/Lの条件での酸解離定数pKaが5以下となる解離平衡段を含むものが好ましく、不揮発性であっても揮発性であってもよい。Rは、単結合、水素、飽和脂肪族炭化水素残基、芳香環残基であることが好ましい。Rが飽和脂肪族炭化水素残基のときは、R中の炭素数は、1個〜10個が好ましく、1個〜6個がより好ましく、nは1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。Rが芳香環残基のときは、フェニル基又はビフェニル基(2価または多価である場合を含む)であることが好ましく、nは1〜4であることが好ましい。また、Rが置換基を有するときは、悪影響を与えない範囲で、カルボキシル基以外の官能基であることが好ましく、より好ましくはカルボキシル基より反応性の低い基、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリロキシ基、アリール基が挙げられる。
前記の、25℃、イオン強度0.1mol/Lの条件での酸解離定数pKaについては、例えば文献{丸善 化学便覧 基礎編(日本化学会編改訂5版)第II分冊pp340−341}に記載されている。
上記有機カルボン酸のうち、不揮発性或いは揮発性を殆ど有さない有機カルボン酸として、具体的には、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸等が挙げられ、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸が好ましく、フタル酸およびシュウ酸がさらに好ましい。
揮発性を有する有機カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を挙げることができ、中でもギ酸、酢酸が好ましい。揮発性の有機カルボン酸を使用した場合には、洗浄処理後の微細な炭素繊維からの未反応有機カルボン酸の分離が、減圧乾燥や熱風乾燥などの操作によって簡便に実施できるという利点がある。
なお、有機カルボン酸で処理する際は、1種類の有機カルボン酸でもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
洗浄に用いる水溶液中の有機カルボン酸の濃度は、灰分を含有する炭素繊維の洗浄水溶液中濃度に応じて決定されるが0.2重量%以上7重量%以下が好ましく、0.3重量%以上5重量%以下がより好ましい。有機カルボン酸の濃度が高すぎると未反応の有機カルボン酸を炭素繊維から洗浄除去することが煩雑になり、一方低すぎると灰分の洗浄除去速度が低下してしまう。また、微細な炭素繊維を洗浄する水溶液は、悪影響を与えない範囲で分散剤等の有機カルボン酸以外の化合物を含んでもよく、好ましくは、有機カルボン酸より反応性が低い化合物、例えば、ステアリン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどの塩類や、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
微細な炭素繊維と有機カルボン酸の水溶液とを混合した混合液のスラリー濃度は、限定されないが、2重量%以上12重量%以下であることが好ましく、5重量%以上12重量%以下であることがより好ましい。スラリー濃度は、高いほど工業的効率の面において好ましいが、高すぎると粘度が上昇するなどして工業的にハンドリング困難になり、一方低すぎると生産性が悪化する。
上記洗浄処理工程における加熱処理の処理温度は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることが特に好ましい。加熱方法としては、特に限定されないが、例えばグラスライニングされた攪拌槽やステンレス製のオートクレーブを用いることができる。処理時間は、限定されないが、0.5時間以上24時間以下が好ましく、1時間以上12時間以下がより好ましい。
上記加熱処理後、微細な炭素繊維を分離する操作(例えば、ろ過や遠心分離等)、水洗浄、乾燥処理を行い、高純度の微細な炭素繊維を回収する。このとき、ろ液等に含まれる触媒金属成分を回収することもできる。
上記により洗浄処理された高純度の微細な炭素繊維の炭素純度は、洗浄処理前の炭素純度より高ければよく、特に限定はされないが、好ましくは97%以上99.5%以下、更に好ましくは97.5%以上99.5%以下である。
上記により洗浄処理された高純度の微細な炭素繊維に含有される灰分は、洗浄処理前の灰分より少なければよいが、通常2重量%以下であり、好ましくは0.1重量%以上1重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上0.6重量%以下である。
上記により洗浄処理された高純度の微細な炭素繊維は、表面が損なわれない率が高い。このため、洗浄処理過程での酸化などによる組成中の酸素濃度の増加が少ないか或いは殆どない。洗浄処理された高純度の微細な炭素繊維に含有される酸素分は通常2重量%以下であり、好ましくは1.5重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下である。
<微細な炭素繊維の構造>
上記により製造された微細な炭素繊維および洗浄処理され高純度化された微細な炭素繊維は、図1(a)に示すような釣鐘状構造を最小構造単位として有する。釣鐘(temple bell)は、日本の寺院で見られ、比較的円筒形に近い胴部を有しており、円錐形に近いクリスマスベルとは形状が異なる。図1(a)に示すように、構造単位11は、釣鐘のように、頭頂部12と、開放端を備える胴部13とを有し、概ね中心軸の周囲に回転させた回転体形状となっている。構造単位11は、炭素原子のみからなるグラファイト網面により形成され、胴部開放端の円周状部分はグラファイト網面の開放端となる。なお、図1(a)において、中心軸および胴部13は、便宜上直線で示されているが、必ずしも直線ではなく、後述する図3のように曲線の場合もある。
胴部13は、開放端側に緩やかに広がっており、その結果、胴部13の母線は釣鐘状構造単位の中心軸に対してわずかに傾斜し、両者のなす角θは、15°より小さく、より好ましくは1°<θ<15°、更に好ましくは2°<θ<10°である。θが大きくなりすぎると、該構造単位から構成される微細繊維が魚骨状炭素繊維様の構造を呈してしまい、繊維軸方向の導電性が損なわれてしまう。一方θが小さいと、円筒チューブ状に近い構造となり、構造単位の胴部を構成するグラファイト網面の開放端が繊維外周面に露出する頻度が低くなるため、隣接繊維間の導電性が悪化する。
微細な炭素繊維には、欠陥、不規則な乱れが存在するが、このような不規則性を排除して、全体としての形状を捉えると、胴部13が開放端側に緩やかに広がった釣鐘状構造を有していると言える。本発明の微細な炭素短繊維、および微細な炭素繊維は、すべての部分においてθが上記範囲を示すことを意味しているのではなく、欠陥部分や不規則な部分を排除しつつ、構造単位11を全体的に捉えたときに、総合的にθが上記範囲を満たしていることを意味している。そこで、θの測定では、胴部の太さが不規則に変化していることもある頭頂部12付近を除くことが好ましい。より具体的には、例えば、図1(b)に示すように釣鐘状構造単位集合体21(下記参照)の長さをLとすると、頭頂側から(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点においてθを測定してその平均を求め、その値を、構造単位11についての全体的なθとしてもよい。また、Lについては、直線で測定することが理想であるが、実際は胴部13が曲線であることも多いため、胴部13の曲線に沿って測定した方が実際の値に近い場合もある。
頭頂部の形状は、微細な炭素繊維として製造される場合、胴部と滑らかに連続し、上側(図において)に凸の曲面となっている。頭頂部の長さは、典型的には、釣鐘状構造単位集合体について説明するD(図1(b))以下程度であり、d(図1(b))以下程度であるときもある。
さらに、後述するように活性な窒素を原料として使用しないため、窒素等の他の原子は、釣鐘状構造単位のグラファイト網面中に含まれない。このため繊維の結晶性が良好である。
本発明の微細な炭素繊維においては、図1(b)に示すように、このような釣鐘状構造単位が中心軸を共有して2〜30個積み重なって釣鐘状構造単位集合体21(以下、単に集合体という場合がある。)を形成している。積層数は、好ましくは2〜25個であり、より好ましくは2〜15個である。
集合体21の胴部の外径Dは、5〜40nm、好ましくは5〜30nm、更に好ましくは5〜20nmである。Dが大きくなると形成される微細繊維の径が太くなるため、ポリマーとのコンポジットにおいて導電性能等の機能を付与するためには、多くの添加量が必要となってしまう。一方、Dが小さくなると形成される微細繊維の径が細くなって繊維同士の凝集が強くなり、例えばポリマーとのコンポジット調製において、分散させることが困難になる。胴部外径Dの測定は、集合体の頭頂側から、(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点で測定して平均することが好ましい。なお、図1(b)に胴部外径Dを便宜上示しているが、実際のDの値は、上記3点の平均値が好ましい。
また、集合体胴部の内径dは、3〜30nm、好ましくは3〜20nm、更に好ましくは3〜10nmである。胴部内径dの測定についても、釣鐘状構造単位集合体の頭頂側から、(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点で測定して平均することが好ましい。なお、図1(b)に胴部内径dを便宜上示しているが、実際のdの値は、上記3点の平均値が好ましい。
集合体21の長さLと胴部外径Dから算出されるアスペクト比(L/D)は、2〜150、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20である。アスペクト比が大きいと、形成される繊維の構造が円筒チューブ状に近づき、1本の繊維における繊維軸方向の導電性は向上するが、構造単位胴部を構成するグラファイト網面の開放端が繊維外周面に露出する頻度が低くなるため、隣接繊維間の導電性が悪化する。一方、アスペクト比が小さいと構造単位胴部を構成するグラファイト網面の開放端が繊維外周面に露出する頻度が高くなるため、隣接繊維間の導電性は向上するが、繊維外周面が、繊維軸方向に短いグラファイト網面が多数連結して構成されるため、1本の繊維における繊維軸方向の導電性が損なわれる。
微細な炭素繊維は、図2(a)に示すように、前記集合体がさらにHead−to−Tailの様式で連結することにより形成される。Head−to−Tailの様式とは、微細な炭素繊維の構成において、隣り合った前記集合体どうしの接合部位が、一方の集合体の頭頂部(Head)と他方の集合体の下端部(Tail)の組合せで形成されていることを意味する。具体的な接合部分の形態は、第一の集合体21aの下端開口部において、最内層の釣鐘状構造単位の更に内側に、第二の集合体21bの最外層の釣鐘状構造単位の頭頂部が挿入され、さらに、第二の集合体21bの下端開口部に、第三の集合体21cの頭頂部が挿入され、これがさらに連続することによって繊維が構成される。
微細な炭素繊維の1本の微細繊維を形成する各々の接合部分は、構造的な規則性を有しておらず、例えば第一の集合体と第二の集合体の接合部分の繊維軸方向の長さは、第二の集合体と第三の集合体の接合部分の長さと必ずしも同じではない。また、図2(a)のように、接合される二つの集合体が中心軸を共有して直線状に連結することもあるが、図2(b)の釣鐘状構造単位集合体21bと21cのように、中心軸が共有されずに接合して、結果として接合部分において屈曲構造を生じることもある。前記釣鐘状構造単位集合体の長さLは繊維ごとにおおむね一定である。しかしながら、気相成長法では、原料及び副生のガス成分と触媒及び生成物の固体成分が混在するため、発熱的な炭素析出反応の実施においては、前記の気体及び固体からなる不均一な反応混合物の流動状態によって一時的に温度の高い局所が形成されるなど、反応器内に温度分布が生じ、その結果、長さLにある程度のばらつきが生じることもある。
このようにして構成される微細な炭素繊維は、前記釣鐘状構造単位下端のグラファイト網面の開放端の少なくとも一部が、前記集合体の連結間隔に応じて、繊維外周面に露出する。この結果、1本の繊維における繊維軸方向の導電性を損なうことなく、前記π電子の飛び出しによるジャンピング効果(トンネル効果)によって隣接する繊維間の導電性を向上させることができる。
さらに炭素繊維では、繊維を構成するグラファイト網面の開放端が繊維側周面に適当な間隔で露出していると共に、グラファイト網面からなる側周面と繊維軸とのなす角が小さい繊維構造を有する。この微細な炭素繊維の釣鐘状構造単位集合体の繊維軸方向の結合は連続した炭素SP2結合であり、その結合力は大きく、また良好な繊維軸方向の導電性が得られる。また、本炭素繊維は繊維軸方向に対してアスペクト比が2から150程度の頻度でグラファイト網面の開放端が繊維側周面に適当な間隔で露出している部分が存在する。このため、単独の繊維における長軸方向の導電性と隣接する繊維間での導電性とをバランスよく両立させることができる。
以上のような微細な炭素繊維の構造は、TEM画像によって観察できる。また、本発明の微細な炭素繊維の効果は、集合体自体の曲がり、集合体の連結部分における屈曲が存在しても、ほとんど影響がないと考えられる。従って、TEM画像の中で、比較的直線に近い形状を有する集合体を観察して、構造に関する各パラメータを求め、その繊維についての構造パラメータ(θ、D、d、L)としてよい。
微細な炭素繊維および高純度の微細な炭素繊維の学振法によるXRDにおいて、測定される002面のピーク半価幅W(単位:degree)は、2〜4の範囲である。Wが4を超えると、グラファイト結晶性が低く導電性も低い。一方、Wが2未満ではグラファイト結晶性は良いが、同時に繊維径が太くなり、ポリマーに導電性等の機能を付与するためには多くの添加量が必要となってしまう。
微細な炭素繊維および高純度の微細な炭素繊維の学振法によるXRD測定によって求められるグラファイト面間隔d002は、0.350nm以下、好ましくは0.341〜0.348nmである。d002が0.350nmを超えるとグラファイト結晶性が低くなり、導電性が低下する。一方、0.341nm未満の繊維は、製造の際に収率が低い。
本発明の高純度の微細な炭素繊維は、金属不純物が少ないことから、電池電極の導電化剤などに好適に用いることが出来る。
以下に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
炭素繊維中の炭素純度、灰分の測定方法は前に記載したとおりである。また、炭素繊維中の酸素濃度は、炭素繊維をHeガス気流中、950〜1050℃で加熱分解させ、生成した酸素を白金炭素粒で一酸化炭素に、続いて酸化銅で二酸化炭素に変え、これを測定することによって求められる。この方法における酸素濃度の検出下限は0.5重量%である。一方、含有される水分量は、炭素繊維をNガス流通下で300℃に加熱し、気化した水分を流通Nガスと共にカールフィッシャー水分計に導入することによって測定した。なお、炭素純度、灰分、酸素の測定値は、炭素繊維試料に付着した水分の重量影響を補正して記載した。
<参考例1:微細な炭素繊維の合成>
イオン交換水500mLに硝酸コバルト〔Co(NO・6HO:分子量291.03〕115g(0.40モル)、硝酸マグネシウム〔Mg(NO・6HO:分子量256.41〕102g(0.40モル)を溶解させ、原料溶液(1)を調製した。また、重炭酸アンモニウム〔(NH)HCO:分子量79.06〕粉末220g(2.78モル)をイオン交換水1100mLに溶解させ、原料溶液(2)を調製した。次に、反応温度40℃で原料溶液(1)と(2)を混合し、その後4時間攪拌した。生成した沈殿物のろ過、洗浄を行い、乾燥した。
これを焼成した後、乳鉢で粉砕し、43gの触媒を取得した。本触媒中のスピネル構造の結晶格子定数a(立方晶系)は0.8162nm、置換固溶によるスピネル構造中の金属元素の比はMg:Co=1.4:1.6であった。
石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて設置し、その中央部に石英ウール製の支持体を設け、その上に触媒0.9gを散布した。He雰囲気中で炉内温度を550℃に加熱した後、CO、Hからなる混合ガス(容積比:CO/H=95.1/4.9)を原料ガスとして反応管の下部から1.28L/分の流量で7時間流し、微細な炭素繊維を合成した。
収量は53.1gであり、灰分を測定したところ1.5重量%であった。生成物のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.156、d002は0.3437nmであった。またTEM画像から、得られた微細な炭素繊維を構成する釣鐘状構造単位及びその集合体の寸法に関するパラメータは、D=12nm、d=7nm、L=114nm、L/D=9.5、θは0から7°であり、平均すると約3°であった。また、集合体を形成する釣鐘状構造単位の積層数は4乃至5であった。尚、D、dおよびθについては、集合体の塔頂から(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点について測定した。元素分析による炭素純度は97.72wt%であり、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。また、水分は0.20wt%であった。
参考例1で得られた微細な炭素繊維のTEM像を図3に示す。
<参考例2:微細な炭素繊維の合成>
イオン交換水900mLに硝酸コバルト〔Co(NO・6HO:分子量291.03〕123g(0.42モル)を溶解させた後、さらに酸化マグネシウム(MgO:分子量40.30)17g(0.42モル)を加えて混合し原料スラリー(1)を調製した。また、重炭酸アンモニウム〔(NH)HCO:分子量79.06〕粉末123g(1.56モル)をイオン交換水800mLに溶解させ、原料溶液(2)を調製した。次に、室温で原料スラリー(1)と原料溶液(2)を混合し、その後2時間攪拌混合した。生成した沈殿物のろ過、洗浄を行い、乾燥した。これを焼成した後、乳鉢で粉砕し、48gの触媒を取得した。本触媒中のスピネル構造の結晶格子定数a(立方晶系)は0.8150nm、置換固溶によるスピネル構造中の金属元素の比はMg:Co=1.2:1.8であった。
石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて設置し、その中央部に石英ウール製の支持体を設け、その上に触媒0.3gを散布した。He雰囲気中で炉内温度を500℃の温度に加熱した後、反応管の下部からHを0.60L/分の流量で1時間流し、触媒を活性化した。その後、He雰囲気中で炉内温度を575℃まで上げ、CO、Hからなる混合ガス(容積比:CO/H=92.8/7.2)を原料ガスとして0.78L/分の流量で7時間流し、微細な炭素繊維を合成した。
収量は30.8gであり、灰分は0.6重量%であった。生成物のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.141、d002は0.3433nmであった。またTEM画像から、得られた微細な炭素繊維を構成する釣鐘状構造単位及びその集合体の寸法に関するパラメータは、D=10nm、d=5nm、L=24nm、L/D=2.4、θは1から14°であり、平均すると約6°であった。また、集合体を形成する釣鐘状構造単位の積層数は4乃至5であった。尚、D、dおよびθについては、集合体の塔頂から(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点について測定した。元素分析による炭素純度は98.18wt%であり、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。また、水分は0.17wt%であった。
参考例2で得られた微細な炭素繊維のTEM像を図4に示す。
<実施例1>
内部にバッフルの付いた円筒型のガラス製セパラブルフラスコ(容量300mL)を用い、参考例1で得られた微細な炭素繊維18.12gをシュウ酸二水和物10.07g、脱イオン水171.62gと混合し、120℃のオイルバスにて10h加熱還流処理した。ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.018、d002は0.3433nmであり、水分は0.60wt%であった。また炭素純度は98.66wt%、灰分は0.5wt%であったのに対し、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。以上のことから表面が変わることなく高純度化されていることがわかった。
<実施例2>
ステンレス製オートクレーブを用い、参考例2で得られた微細な炭素繊維18.44gをフタル酸3.45g、脱イオン水149.20gと混合し、220℃/2.4MPa(水の蒸気圧)/4hの条件で処理した。ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.168、d002は0.3434nmであり、水分は0.63wt%であった。また炭素純度は98.26wt%、灰分は0.2wt%であり、酸素分は1.0wt%であった。以上のことから表面が大きく損なわれることなく高純度化されていることがわかった。
<実施例3>
ステンレス製オートクレーブを用い、参考例1で得られた微細な炭素繊維3.02gをフタル酸0.92g、脱イオン水134.42gと混合し、200℃/1.6MPa(水の蒸気圧)/1hの条件で処理した。ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.195、d002は0.3435nmであり、水分は1.14wt%であった。また炭素純度は97.80wt%、灰分は0.5wt%であり、酸素分は1.3wt%であった。以上のことから表面が大きく損なわれることなく高純度化されていることがわかった。
<実施例4>
内部にバッフルの付いた円筒型のガラス製セパラブルフラスコ(容量300mL)を用い、参考例2で得られた微細な炭素繊維8.98gをシュウ酸二水和物15.23g、脱イオン水283.12gと混合し、120℃のオイルバスにて6h加熱還流処理した。ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.089、d002は0.3425nmであり、水分は0.15wt%であった。また炭素純度は99.17wt%、灰分は0.2wt%であったのに対し、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。以上のことから表面が変わることなく高純度化されていることがわかった。
<実施例5>
内部にバッフルの付いた円筒型のガラス製セパラブルフラスコ(容量300mL)を用い、参考例1と同じ触媒及び合成条件で調製した微細な炭素繊維10.15gを酢酸2.46g、脱イオン水87.89gと混合し、120℃のオイルバスにて4h加熱還流処理した。その後、ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。原料として使用した微細な炭素繊維の灰分は1.6wt%であり、XRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は2.921、d002は0.3432nmであった。また、水分は0.11wt%であり、元素分析による炭素純度は97.96wt%、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。一方、回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.089、d002は0.3428nmであり、水分は0.28wt%であった。また元素分析による炭素純度は99.15wt%、灰分は0.3wt%であったのに対し、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。以上のことから表面が変わることなく高純度化されていることがわかった。
<実施例6>
実施例5で原料として使用したものと同じ微細な炭素繊維10.04gを、ギ酸1.90g、脱イオン水90.02gと混合し、内部にバッフルの付いた円筒型のガラス製セパラブルフラスコ(容量300mL)を用いて120℃のオイルバスにて4h加熱還流処理した。ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は3.128、d002は0.3429nmであり、水分は0.31wt%であった。また炭素純度は99.01wt%、灰分は0.4wt%であったのに対し、酸素分は検出されなかった(0.5wt%以下であった)。以上のことから表面が変わることなく高純度化されていることがわかった。
<比較例1>
参考例1で得られた微細な炭素繊維円筒型のガラス製セパラブルフラスコ(容量300mL)を用い、参考例2で得られた微細な炭素繊維3.06gを60%硝酸300gと混合し、120℃のオイルバスにて4h加熱還流処理した。ろ過/水洗浄/乾燥してほぼ定量的に炭素材料を回収した。回収した炭素材料のXRD分析で観察されたピーク半価幅W(degree)は2.983、d002は0.3436nmであり、水分は2.51wt%であった。灰分は0.2wt%であったが、炭素純度は95.23wt%に低下し、新たに4.2wt%の酸素分が検出され、炭素繊維の表面が酸化により変質していることがわかった。
11 構造単位
12 頭頂部
13 胴部
21、21a、21b、21c 集合体

Claims (7)

  1. マグネシウムが置換固溶したコバルトのスピネル型酸化物を含む触媒上に、CO及びHを含む混合ガスを供給して反応させる気相成長法により製造した微細な炭素繊維を、有機カルボン酸の水溶液で洗浄する工程を含み、
    前記微細な炭素繊維が、炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2〜30個積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head−to−Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成していることを特徴とする、高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
  2. 前記スピネル型酸化物を、MgCo3−xで表したとき、マグネシウムの固溶範囲を示すxの値が、0.5〜1.5であることを特徴とする、請求項に記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
  3. 前記集合体胴部の端の外径Dが5〜40nm、内径dが3〜30nmであり、該集合体のアスペクト比(L/D)が2〜150であることを特徴とする請求項1または2に記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
  4. 前記有機カルボン酸が、水溶性を示し、25℃、イオン強度0.1mol/Lの条件での酸解離定数pKaが5以下となる解離平衡段を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
  5. 微細な炭素繊維を有機カルボン酸の水溶液と混合させる際に、その混合液のスラリー濃度が、2重量%以上12重量%以下であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の高純度の微細な炭素繊維の製造方法。
  6. 請求項1〜記載のいずれかの製造方法により、製造された高純度の微細な炭素繊維。
  7. マグネシウムが置換固溶したコバルトのスピネル型酸化物を含む触媒上に、CO及びH を含む混合ガスを供給して反応させる気相成長法により製造された後、有機カルボン酸の水溶液で洗浄された微細な炭素繊維であって、
    前記微細な炭素繊維が、炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2〜30個積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head−to−Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成し、含有する灰分が2重量%以下であることを特徴とする、高純度の微細な炭素繊維。
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