JP5577702B2 - 大豆蛋白ゲル及びその製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、大豆蛋白ゲル及びその製造法に関する。
大豆は重要な食糧資源であり、古くから、煮豆、豆乳、豆腐、がんも、油揚げ、凍り豆腐、納豆、テンペ、味噌、醤油などの大豆食品として利用されてきた。その蛋白質は良質の食用蛋白質であって、ゲル物性、乳化性、保水性などをはじめとする様々な物理特性も有しており、従来より大豆から大豆蛋白質を分離して食品への利用が推し進められてきた。更に近年においては、大豆蛋白を主体とした組立食品のような新しいソイ・フードも提案され定着してきている。
特に最近では健康志向の高まりから、大豆を主体とした食品のニーズの高まりがあり、美味しさと栄養健康といった価値に加えて、携帯性、簡便性、ゲルテクスチャー改良による食べやすさ・飲み込みやすさといったような価値の創出が求められているところである。
大豆の貯蔵蛋白はpH4.5付近で等電点沈澱させることにより、比較的簡単に沈殿画分として回収することができ、食品工業において多くはこの画分、すなわち「分離大豆蛋白」の形態で利用されている。例えば、この分離大豆蛋白は、そのまま、あるいは必要によりさらに加工して他の食材に添加するなどして、大豆蛋白主体食品や畜肉製品や水産練り製品などの惣菜をはじめ、スナック・栄養バー・菓子類・飲料などの嗜好品、純植物性食材、乳・卵アレルギー患者用食品、嚥下・咀嚼困難者用食品、高蛋白食品、栄養バランス食品などの特殊用途食品などへ利用されている。
この大豆の貯蔵蛋白質は超遠心分析による沈降定数から、2S、7S、11S、15Sの各グロブリンに分類され、このうち、7Sグロブリンと11Sグロブリンはグロブリン画分の主要な構成蛋白質成分である。一方、大豆由来の蛋白質には、細胞膜をはじめプロテインボディーやオイルボディー等の膜を構成する極性脂質との親和力の高い蛋白質群(脂質親和性蛋白質)が存在し、工業的に生産する分離大豆蛋白の約35%をも占めていることが佐本らにより報告されている(非特許文献1)。
この脂質親和性蛋白質は膜蛋白質を主体とする蛋白群の総称で、特にSDS−ポリアクリルアミド電気泳動による推定分子量において主に34kDa、24kDa、18kDaを示す蛋白質を含み、クロロホルム:エタノール=2:1の極性溶媒により抽出される極性脂質を10〜12重量%程度含有することが知られている。
このように、広く利用されてきた分離大豆蛋白を構成する蛋白質には、7Sグロブリンと11Sグロブリンの他にも脂質親和性蛋白質が存在することがわかってきた。そして各々の蛋白質は大豆から食品工業的に分画できるようになってきた(特許文献1、特許文献2、非特許文献2)。
しかしながら、個々の蛋白質の物理特性、特に脂質親和性蛋白質の物理特性は未だ充分に明らかにはなっていなかった。
一方、トランスグルタミナーゼを利用して食用蛋白質を架橋して改質するなどの方法が知られている。この酵素は、ペプチド鎖内にあるグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基のアシル転移反応を触媒する酵素である。このトランスグルタミナーゼは、アシル受容体としてのタンパク質中のリジン残基のε−アミノ基に作用し、タンパク質分子の分子内において及び分子間においてε−(γ−Glu)−Lys架橋結合を形成する。また、水がアシル受容体として機能するときは、グルタミン残基が脱アミド化されてグルタミン酸残基になる反応を進行させる。トランスグルタミナーゼを大豆蛋白に作用させる例に関しては、特許文献3〜5にみられるように、大豆蛋白含有スラリーにトランスグルタミナーゼを添加してゲル化させる手法が開示されている。
(参考文献)
国際公開WO2002/028198号公報 国際公開WO2006/129647号公報 特開昭58−149645号号公報 特開昭64−27471号公報 国際公開WO2005−94608号公報 M Samoto etc, Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(5), 935-940, 1998. M Samoto etc, Food Chemistry, 102, 317-322, 2007.
大豆蛋白素材を加熱しゲル化させた大豆蛋白ゲルの場合、ゲルの硬さや崩れやすさなどの物性の相違は食品への適性や嗜好性に大きく影響する。
例えば比較的柔い食感の大豆蛋白ゲルにする場合、つるりと飲み込みやすくて豆腐のように崩れすぎない物性を求めるニーズがある(ちなみに寒天などの多糖類やゼラチンなどの他の原料が主体のゲルは大豆蛋白ゲルではない)。一方、比較的硬い食感の大豆蛋白ゲルにする場合、子供や老人にも好まれる食感のコンニャクのような、たわみのある硬い食感の物性を求めるニーズがある。
上記の文献では、従来の分離大豆蛋白を構成している分画大豆蛋白の画分の違いや加熱変性の有無によって、発現するゲル物性が異なることが明らかとなってきた。また沈殿大豆蛋白(分離大豆蛋白)、7Sグロブリン、11Sグロブリンのトランスグルタミナーゼによるゲル化の状態には差がないということなどが教示されている。
しかしながら大豆蛋白ゲルでいかにして上述の物性を得るかについて、従来の研究だけでは有効な知見が得られていなかった。
そこで本発明は、従来は得ることができなかったゲル物性を有する大豆蛋白ゲルであってさらに風味や色調にも優れたものを提供すること、そしてこのゲル物性を利用した大豆蛋白食品を提供することを課題とする。具体的には、硬くたわみのあるコンニャク様の食感、或いは、柔くつるりとして飲み込みやすく豆腐のように崩れすぎない食感を有する大豆蛋白ゲルを提供し、これらのゲルの食品への利用用途を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、分画大豆蛋白の物性挙動や、各種酵素や各種金属塩による物性改変効果を鋭意研究する中で、意外にも、脂質親和性蛋白を低減した大豆蛋白素材を使用してゲルを調製すること、さらにゲル化には加熱のほか、蛋白質架橋酵素の作用を寄与させることによって、ゲルの物性改変の程度が著しく増大し、目的とする大豆蛋白ゲルが得られることを見出した。
さらに、上記知見を応用し、脂質親和性蛋白質が低減された大豆蛋白素材を含む材料に蛋白質架橋酵素を作用させることによって引き出されるゲル化能を利用することで、食品などの物理特性を望ましい方向へと改変したり、食品などの物理特性を殆ど変化させることなく他素材から大豆蛋白へ代替できることも見出した。
すなわち、本発明は、
1.大豆蛋白素材を含む材料を加熱して得られるゲルであって、該大豆蛋白素材は脂質親和性蛋白質が低減されたものであり、かつ、該ゲルは蛋白質架橋酵素が作用したものであることを特徴とする大豆蛋白ゲル、
2.大豆蛋白素材が全脂豆乳、脱脂豆乳、分離大豆蛋白、7S大豆蛋白、11S大豆蛋白である前記1.記載の大豆蛋白ゲル、
3.破断応力が50〜1000(×1000N/m)であって、かつ破断歪率が50〜100%である前記1.記載の大豆蛋白ゲル、
4.破断応力が5〜50(×1000N/m)であって、かつ破断歪率が40〜80%である前記1.記載の大豆蛋白ゲル、
5.前記1.記載の大豆蛋白ゲルを利用した食品、
6.脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材を原料とし、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白質架橋酵素を作用させた後、加熱することを特徴とする大豆蛋白ゲルの製造法、
7.蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆蛋白素材を含む材料のpHが6〜9である前記6.記載の大豆蛋白ゲルの製造法、
8.蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆蛋白素材への食塩添加量が大豆蛋白を含む材料中1重量%以下である前記6.記載の大豆蛋白ゲルの製造法、
9.脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材が予め変性温度以上の予備加熱を施されておらず、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵素を作用させた後、該大豆蛋白素材の変性温度以上で加熱を施すことを特徴とする前記6.記載の方法、
10.脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材が予め変性温度以上の予備加熱を施されていて、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵素を作用させた後、該酵素が失活するに充分な加熱を施す加熱である前記6.記載の方法、
11.脂質親和性蛋白質が低減されており、蛋白質架橋酵素が作用したものであって、かつ、大豆蛋白ゲル調製用であることを特徴とする大豆蛋白素材、
12.脂質親和性蛋白質が低減されており、蛋白質架橋酵素を作用させて使用するものであって、かつ、大豆蛋白ゲル調製用であることを特徴とする大豆蛋白素材、
13.大豆蛋白ゲルを予め調製し、これを混合してなるものである前記5.記載の食品、
14.食品原料中に脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材及び蛋白質架橋酵素が配合され、製造過程で大豆蛋白ゲルが形成されてなるものである前記5.記載の食品、
である。
本発明により、従来の大豆蛋白ゲルでは体現しえなかった、つるりとした柔い食感や、たわみのある硬い食感などの新規な物性を有する大豆蛋白ゲルを得ることができる。これにより、新規な大豆蛋白ゲル化食品を創出することが可能である。
また本発明の大豆蛋白ゲルは大豆由来の雑味を感じにくく風味にも優れたものであるので、従来にはない薄い味付けや、爽やかなデザート風味のような大豆食品とは異なる風味付けを行うことができ、新しい大豆食品(ニューソイフード)のバリエーションを増やすことができる。
さらに、本発明による大豆蛋白ゲルを利用することにより、食品の物理特性を望ましい方向へと改良したり、既存食品の物理特性を殆ど変化させることなくその主原料を大豆蛋白へ代替することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の大豆蛋白ゲルは、大豆蛋白素材を含む材料を加熱して得られるゲルであって、該大豆蛋白素材は脂質親和性蛋白質が低減されたものであり、かつ、該ゲルは蛋白質架橋酵素が作用したものであることを特徴とする。また本発明の大豆蛋白ゲルの製造法は、脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材を原料とし、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白質架橋酵素を作用させた後、加熱することを特徴とする。
(大豆蛋白素材)
本発明において「大豆蛋白素材」は、大豆由来の蛋白質が抽出された素材を意味し、具体的には丸大豆や脱脂大豆などから蛋白質を抽出して必要により精製して得られる抽出大豆蛋白素材である。例えば、全脂豆乳、脱脂豆乳、分離大豆蛋白、7S大豆蛋白、11S大豆蛋白などが該当し、これらの混合物も含まれる。ただし、蛋白質が抽出されている限り、不溶性のオカラ分が含まれることを除外するものではない。
なお、特許文献2に記載の通り、11S大豆蛋白とは、11Sグロブリン(グリシニンとも呼ばれる)の純度を高めた大豆蛋白素材であり、大豆蛋白質あたりの含量が少なくとも45%以上のものをいう。特に75%以上、さらには85%以上、さらには90%以上であるのが好ましい。
また7S大豆蛋白は7Sグロブリン(β−コングリシニンとも呼ばれる)の純度を高めた大豆蛋白素材であり、大豆蛋白質あたりの含量が少なくとも25%以上であるのが好ましい。特に40%以上、さらには50%以上、さらには60%以上であるのが好ましい。
一方、7Sと11Sの分画を行っていない一般の分離大豆蛋白の大豆蛋白質中の11S蛋白質含量はおよそ30〜40%程度であり、7S蛋白質含量はおよそ13〜22%程度である。
大豆蛋白素材中の7Sグロブリンと11Sグロブリンの大豆蛋白質あたりの含量はSDS−ポリアクリルアミド電気泳動法(SDS-PAGE)により測定することができる。Laemmli( Nature, 227, 680, 1970 )の方法に基づき、ゲル濃度10〜20%のグラジエントゲルで分析し、クマシーブリリアントブルー(CBB)にて染色した後、得られた泳動パターンをデンシトメー ターで測定し、その全体に対する該当蛋白質の面積比率を純度とする。7Sグロブリンはα,α’,βサブユニットの総量とし、11S蛋白質の含量は酸性ポリ ペプチド(A)と塩基性ポリペプチド(B)の総量とする。
上記に例示される大豆蛋白素材は、いずれも公知の方法によって得ることができる。11S大豆蛋白や7S大豆蛋白の場合、例えば、一般的な組成を有する大豆から調製した豆乳や分離大豆蛋白などから7S蛋白質と11S蛋白質を分画する技術を用いて上記の組成に調製した大豆蛋白質素材を得ることができる。11S蛋白質を分画除去する技術としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、工業的規模での製造を可能とする国際公開WO2000/58492号、国際公開 WO2002/028198号、国際公開WO2004/043160号、国際公開WO2006/129647号等に開示されるような技術を利用することができる。また、予め7S蛋白質や11S蛋白質の一部もしくは全部を遺伝子操作や育種技術により欠失させた大豆(Breeding Science, 46, 11, 1996など)から通常の方法を用いて、上記の組成に調製した大豆蛋白質素材を得ることもできる。また上記の分画技術と欠失大豆を使用する技術の両方を用いることもできる。
(大豆蛋白素材における脂質親和性蛋白質の低減)
本発明の大豆蛋白ゲルに使用される大豆蛋白素材は、特に「脂質親和性蛋白質」(Lipophilic Proteins、以下「LP」と称することがある。)を低減したもの、ないしは除去したものであることが必須である。
LPは大豆の酸沈殿性大豆蛋白質の内、7Sグロブリンと11Sグロブリン以外のマイナーな酸沈殿性大豆蛋白質群をいい、レシチンや糖脂質などの極性脂質を多く随伴するものである。以下、単に「LP」と略記することがある。このLP中にはSDS-PAGEによる推定分子量において主に34kDa、24kDa、18kDaを示す蛋白質、リポキシゲナーゼ、γ−コングリシニンや、その他多くの雑多な蛋白質が含まれる。
LPの低減化は7S大豆蛋白や11S大豆蛋白の場合、これらを上記の方法、特に国際公開WO2002/028198号や国際公開WO2004/043160号や国際公開WO2006/129647号の方法により調製することによって達成される。またこれらの分画蛋白質や豆乳や分離大豆蛋白は、蛋白質の水溶液を比較的強力な遠心力によって遠心分離し、沈殿物を除去することによっても達成される。LPの低減の程度はLP推定含量(Lipophilic proteins Content Index、以下LCIと略する。)を算出することによって確認できる。これは7S、11S、LPの各蛋白質中の主要な蛋白質を選択し、それらのSDS-PAGEでのCBB染色比率を求め、これらの比率からLP含量を簡易的に推定したものである。LCI値の算出方法は、本出願人による特許文献2(WO2006/129647号公報)に記載の[LP含量の推定方法](a)〜(d)及び(表1)に記載の方法に従い、(数1)の計算式により算出するものとする。詳細の方法は以下に説明する。本発明の大豆蛋白素材のLCI値は38%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。
〔LP含量の推定方法〕
(a) 各蛋白質中の主要な蛋白質として、7Sはαサブユニット及びα'サブユニット(α+α')、11Sは酸性サブユニット(AS)、LPは34kDa蛋白質及びリポキシゲナーゼ(P34+Lx)を選択し、SDS−PAGEにより選択された各蛋白質の染色比率を求める。電気泳動は下表の条件で行うことが出来る。
(b) X(%)=(P34+Lx)/{(P34+Lx)+(α+α’)+AS}×100(%)を求める。
(c) 低変性脱脂大豆から調製された分離大豆蛋白のLP含量を加熱殺菌前に上記方法1,2の分画法により測定すると凡そ38%となることから、X=38(%)となるよう(P34+Lx)に補正係数k*=6を掛ける。
(d) すなわち、以下の(式1)によりLP推定含量(Lipophilic Proteins Content Index、以下「LCI」と略する。)を算出する。
〈電気泳動条件〉
Figure 0005577702
(式1)
Figure 0005577702
LPが低減されていない大豆蛋白素材は低減された大豆蛋白素材と比較すると大豆の雑味を感じ、風味の面で劣る。また、後述のトランスグルタミナーゼを作用させたときのゲル物性は破断応力が低下し不十分なものとなってしまう。
本発明の大豆蛋白素材は粉末状のものを使用することができるが、液状のものもそのまま使用することができる。ただしゲル化させる工程がかなり離れている場合やゲル化させる前に一旦大豆蛋白素材を含む材料として保存しておきたい場合などは、後述するトランスグルタミナーゼを添加する前又は後において、濃縮、冷凍又は粉末化しておくことができる。
(大豆蛋白素材を含む材料)
この大豆蛋白素材を適当な濃度に水と必要により他の原料に分散させ、大豆蛋白ゲルの調製に供する。この大豆蛋白素材を含む材料は粘土状、ペースト状、スラリー状、液状などの所望の性状のものとすることができる。
大豆蛋白素材を含む材料に必要により含まれる他の材料としては、動物・植物・微生物・鉱物・有機物・無機物などを由来とする、天然物又はその抽出物もしくは加工物、あるいはそれらの混合物からなる群から選択することができる。例えば、畜肉の薄切り・ミンチ・ペースト、魚肉のフィレ・ミンチ・すり身、卵類・乳類の加工品などの動物由来のものや、とうもろこし・小麦等の穀物、大豆・小豆等の豆類、大根・人参等の根菜類などの植物由来のものや、油脂・炭水化物・糖類・アミノ酸・ペプチドなどの有機物や、塩類などの無機物などが挙げられる。
(蛋白質架橋酵素の作用)
本発明の大豆蛋白ゲルは、上記の大豆蛋白素材が使用されることに加え、蛋白質架橋酵素が作用したものであることが重要である。蛋白質架橋酵素を作用させることによって大豆蛋白ゲルはつるりとした柔い食感のゲルや、たわみのある硬い食感のゲルに改質することが可能となる。蛋白質架橋酵素は蛋白質分子同士の架橋を触媒する酵素であり、例えばアミノ基が関与するグルタミン残基[−(CH2)2−CO−NH2]とリジン残基[NH2−(CH2)4−]の縮合反応、アスパラギン残基[−CH2−CO−NH2]とリジン残基の縮合反応などのε−アミ ノ基が関与する反応を触媒するものが挙げられる。代表的にはグルタミン残基とリジン残基の縮合を触媒するトランスグルタミナーゼ(EC2.3.2.13)を例示することができる。トランスグルタミナーゼの起源は特に限定されず、動物由来、微生物由来、植物由来のものをいずれも使用できる。また精製した酵素を使用しても良いし、市販の「アクティバ」シリーズ(味の素(株))などの酵素製剤を使用することができる。
トランスグルタミナーゼの添加量は使用する大豆蛋白素材やこれを含む材料の固形分によっても変動するが、酵素反応後に大豆蛋白素材を含む材料がサクい寒天様のゲルを形成する程度が好ましく、この量は当業者がゲルの状態を見つつ適宜設定することができる。具体的には該材料中の大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり、トランスグルタミナーゼ製剤は0.1〜5ユニット程度添加すればよい。該材料の固形分が低いほどユニット量の下限は大きくするのが好ましく、0.75ユニット以上、さらに1.5ユニット以上とすることができる。また、該材料の固形分が高いほどユニット量の上限は小さくすることができ、3.2ユニット以下、さらに1.6ユニット以下とすることができる。
蛋白質架橋酵素を作用させるpHや温度は当業者が適宜選択でき、その酵素の基質に対する至適pHや至適温度を参考にすることができ、さらに大豆蛋白のゲル物性の側面から作用pHを選択することが好ましい。例えば、市販のトランスグルタミナーゼ剤の至適pHはpH5〜8で、好ましくはpH6〜7であって、そのようなpH域で架橋反応による高分子化は進みやすい。
ただし、大豆蛋白のゲル形成(特に11S大豆蛋白)にとっては、必ずしもそのようなpH域が望ましいわけではない。例えば、11S大豆蛋白を12%濃度含む材料にトランスグルタミナーゼを作用させて加熱し、大豆蛋白ゲルを得ようとした場合、pH5.5程度ではボソボソして離水の多いゲルとなり、pH6.5程度ではたわんで途中でシャキっと切れるゲルとなり、pH7.5〜8.5程度ではたわんで最後にプチっと切れるコンニャク的な好ましいゲルとなる。このように、架橋させるための酵素化学的な反応至適pHと、好ましい物性となることを考慮した反応至適pHとは、若干のずれがある。すなわち、物性向上のための反応pHは、大豆蛋白質の等電点である4.5からより遠いpH域であって、かつトランスグルタミナーゼが作用し得るpH域から選択する必要があり、pH6〜9が好ましい。
(食塩の添加による影響)
大豆蛋白ゲルに食塩を添加する場合には、大豆蛋白を含む材料中の食塩添加量はゲル物性に影響を与えるので重要である。特に大豆蛋白の溶解性が低くなる食塩添加量域では、ゲルネットワークが水を保持しにくくなるためか、好ましい物性には至らない。例えば、12%程度濃度の11S大豆蛋白を含む材料(pH7.5)に、食塩を添加しない場合には、たわんで最後にプチっと切れるコンニャク的な好ましいゲルとなる。これに対して、該材料に食塩を添加して、大豆蛋白ゲルを得ようとした場合、該材料中の食塩添加量が0.6重量%程度では、ややボソボソしてやや離水を伴うゲルとなり、該材料中の食塩添加量が1.2重量%程度では、ボソボソして離水の多いゲルとなる。更に該材料中の食塩添加量を1.8重量%程度まで高めて溶解性を向上させた場合は、塩味が生じてくるものの物性的には再びゲル化能を発揮してたわんで途中でシャキっと切れるゲルとなる。このように、大豆蛋白を含む材料への食塩添加量は、求める味や物性に応じて選択することができ、食塩添加量は、該材料あたり1重量%以下、又は1.6重量%以上が好ましい。
(加熱による大豆蛋白ゲルの改質)
本発明の大豆蛋白ゲルを得るには上述の大豆蛋白素材を含む材料を加熱することが必須である。加熱によって酵素を失活させると共に、蛋白質架橋酵素を作用させて得られるゲルを本発明が目的とする物性に改質することができる。例えば、LPを低減した大豆蛋白素材を12%含有する材料に蛋白質架橋酵素を作用させるのみでは、ゲルは形成されるものの寒天のような脆くてたわみにくいゲルにしかならない。そして酵素反応後に加熱を行うことによって、たわみがあって最後にプチンと切れる、コンニャク様の特徴的な食感のゲルを得ることができる。
加熱の方式は、公知の方法を用いることができ、具体的な加熱条件の例を挙げると、LPが低減された大豆蛋白素材がその固有の変性温度域以上の加熱変性を予め受けていない場合は、蛋白質架橋酵素を作用させた後に、その固有の変性温度域又はそれを超える温度域での加熱を施すことで、そのゲルの破断応力は極大となる。
なお、示唆熱熱量計による11Sグロブリンの吸熱ピークは80〜92℃の間に、7Sグロブリンの吸熱ピークは67〜78℃の間に現れる。
したがって例えば、破断応力を高める目的においては、未変性の11S大豆蛋白に蛋白質架橋酵素を作用させた後に加熱する場合、80〜120℃、好ましくは85〜100℃で、1〜60分、好ましくは10〜40分の範囲での加熱を行うことが適当であり、90℃30分の加熱でゲルの破断応力は極大となる。
また未変性の7S大豆蛋白に蛋白質架橋酵素を作用させた後に加熱する場合、70〜120℃、好ましくは75〜100℃で、1〜60分、好ましくは10〜40分の範囲での加熱を行うことが適当であり、80℃30分の加熱でゲルの破断応力は極大となる。なお、加熱なしでは破断応力が低く、120℃10分の加熱を行う場合も過度の加熱履歴となるためか破断応力が低くなる傾向にある。その他の7Sグロブリンと11Sグロブリンを両方含む大豆蛋白素材については、吸熱ピークの高い11Sグロブリンの条件に準ずれは良い。
一方、LPを低下させた大豆蛋白素材が直接蒸気吹込方式や間接加熱やジュール加熱やマイクロ波加熱等の加熱手段によって、予め含有する蛋白質に固有の変性温度域又はそれ以上の加熱変性を受けている場合は、蛋白質架橋酵素を作用させることで、冷却ゲル形成能が顕著に引き出され、上述のレベルの加熱を行わなくとも破断応力が高いものとすることが可能である。そして、蛋白質架橋酵素を失活させるに足る加熱を施すことで、本発明の大豆蛋白ゲルを得ることができる。酵素を失活させるに足る加熱条件としては、酵素剤の性質にもよるが例えば80℃以上で30分程度である。ただし120℃を超える加熱を行うと過度の加熱履歴によるためか破断応力は低下する傾向となるため、120℃以下が好ましい。
(大豆蛋白ゲルの物性)
以上述べたように、本発明の大豆蛋白ゲルは、大豆蛋白素材、加熱条件、酵素反応条件などの選択によって、使用用途に合わせて多様な物性を有するゲルに適宜調製することができる。そして、本発明の大豆蛋白ゲルの物性は、数値的には破断応力と破断歪率の組合せによって表現することができる。
例えば、たわみのある硬い物性のゲルを調製したい場合、破断応力が50〜1000(×1000N/m)、好ましくは100〜800(×1000N/m)であって、かつ破断歪率が50〜100%となるようにすることが好ましい。特に、コンニャク的なゲルを調製したい場合、破断応力が150〜250(×1000N/m)となるようにすることが好ましい。また、蒲鉾的なゲルを調製したい場合、破断応力が250〜600(×1000N/m)となるようにすることが好ましい。この際の大豆蛋白を含む材料中の大豆蛋白素材の濃度は1〜50重量%、好ましくは11〜30重量%、より好ましくは11〜20重量%の範囲から選ぶことができる。
また、つるりとした柔い物性のゲルを調製したい場合、破断応力が5〜50(×1000N/m)であって、かつ破断歪率が40〜80%となるようにすることが好ましい。この際の大豆蛋白素材を含む材料中の大豆蛋白素材の濃度は1〜10重量%、好ましくは5〜10重量%、より好ましくは7〜10重量%の範囲から選ぶことができる。
なお、これらの物性値は室温において大豆蛋白ゲルをレオメーター(山電(株)製など)を用いて破断強度解析を行うことによって求める。測定条件として、サンプル高は20mm、進入速度は1mm/秒とし、プランジャーは硬い物性のゲルの場合はφ5mm球を用い、柔い物性のゲルの場合はφ15mm球を用いることとする。破断強度解析にて得られた破断荷重に(式2)を適用して破断応力を求める。また、破断強度解析にて得られた破断変形に(式3)を適用して破断歪率を求める。
(式2)破断応力Y=F×9.8÷(r×r×3.14)×1000
式中、F:破断荷重(g)、r:プランジャー半径
(式3)破断歪率X=T÷h×100
式中、T:破断変形(mm)、h:サンプル高さ(mm)とした。
なお、ゲルの硬さの程度は破断応力Yでほぼ表現することができ、ゲルのたわみの程度は破断歪率Xでほぼ表現することができるが、更にゲルのしなやかさの程度を客観的に表現できる指標として、「破断指標Z」を用いることができる。破断指標Zは、破断強度解析で得られた波形データを、縦軸が破断応力Yで横軸が破断歪率Xで表した座標上に描いて、その破断点と原点を通る完全弾性体を仮想し、原点O(0,0)から破断点P(a,ma)までの曲線の軌跡がどの程度その仮想曲線に沿っているかを表したもので、(式4)を用いて求める。
(式4)
Figure 0005577702
破断指標Zの値が正の値や0%に近い値である場合、そのゲルはしなやかではなく、破断指標Zが負の値であってZ=−40%のように低い数値であれば、そのゲルは非常にしなやかなゲルであることが、市販ゲル食品の物性評価結果からわかっている。
例えば、コンニャクや蒲鉾などのようにたわんでしなやかなゲルを調製したい場合、破断指標Zが−10%〜−80%、好ましくは−15%〜−60%、更に好ましくは−20%〜−40%となるように調製することが適当である。
(大豆蛋白ゲルの風味・色調)
本発明で得られる大豆蛋白ゲルは従来の大豆蛋白ゲルよりも風味と色調に優れることも特徴である。
LPが低減化されていない大豆蛋白ゲルでは大豆の雑味を感じやすくて風味が劣る。また大豆蛋白素材の中でも11S大豆蛋白を使用したゲルが最も大豆の雑味を感じにくく風味が優れている。また、11S大豆蛋白のゲルが最もくすみや黄色みが少なく、そのような色調が求められる用途において有利である。
一方、7S大豆蛋白のゲルは黄色みがあって透明感のあるゲルである。また、7S大豆蛋白及び11S大豆蛋白の両方からなるゲルも、くすみや黄色みが少ないゲルである。このようにLPを除去することで、物性・風味以外にも色調面においても改善効果がある。
(大豆蛋白ゲルの食品への応用)
本発明の大豆蛋白ゲルはその特徴的な物性や色調を利点として様々なゲルが利用される食品へ応用することが可能である。大豆蛋白ゲルを食品へ利用する態様としては、予め大豆蛋白ゲルを調製しておき、これをそのまま食品へ加工したり、食品中に混合する場合は無論、食品の製造過程においてLPを低減した大豆蛋白素材と蛋白質架橋酵素を他の原料と共に配合しておき、ゲルを形成させる場合を含む。後者においては公知の食品の物理特性を改良したり、逆に食品の物理特性を殆ど変化させることなくその原料である他素材を大豆蛋白に代替させたりすることができる。
予め大豆蛋白ゲルを調製し、これを利用する例として、新食感の大豆食品などや低糖・低脂質で高蛋白質のニーズを満たす食品などに利用できる他、大豆由来の栄養分を摂取できるたわむ食感のグミ菓子・栄養バーや栄養ゼリーなどに利用でき、おでんの具材や炊き込みご飯などの惣菜用途として利用するコンニャク代替物などとしても利用できる。
また、豚のゼラチン質や牛筋肉のようなプルプルした食感を楽しむような用途の代替品などとして使用したり、すり身などの魚肉やミンチなどの畜肉を使用しない純植物性の食品に使用したり、必要に応じてゲルに切れ目を入れるなどしてアワビ風・貝柱風のような魚介類風のゲルなどとしたり、刻んでハンバーグ・ソーセージ・餃子・しゅうまいなどに混ぜ込んでヘテロな食感を与えたり、適当な大きさにカットしてグラタンやシチューなどの具材として利用したり、薄くスライスするなどしてピザトッピングなどにしたりすることができる。
また、ゲルを形成させる際に、薄く膜状に成型するなどして、生春巻のたわむ皮などの代替や、寿司の海苔などの代わりとして具を巻く用途に用いたり、湯葉の代替としたり、刻んで海藻の代替としたり、サラダトッピングなどとしたりすることができる。
また、シート状に成型して細長く切れ目を入れて束ねるなどして蟹足風などに加工したり、麺帯のような形状に成型してたわみある栄養麺などとして使用したり、餃子の皮やラザニアなどのようにして利用したり、サラダや寿司などを包むための薄焼き卵のフィルムなどの代替として用いたりすることができる。
また、球状に成型して魚卵代替などとして用いたり、栄養ドリンク中に球状ゲルを浮遊させるなど、視覚に訴えるような製品にも用いることもできる。また、甘みと鮮やかな色を付けるなどして、和菓子や洋菓子のトッピングなどに用いることもでき、プラスチック成型を参考にして金型を選択することで、金魚などのような形に成型して食を楽しむこともできる。また、ゲルを味噌や醤油やタレやダシなどに付けて、味噌漬や佃煮などといった惣菜として利用することもできる他、味噌汁やスープの具材などや、咀嚼・嚥下困難者の食事用などに使用することができる。
次に、食品の製造過程においてLPを低減した大豆蛋白素材と蛋白質架橋酵素を配合しておき、ゲルを形成させる例を挙げると、畜肉製品(ハンバーグ、ソーセージ、ハムなど),魚肉製品(カニ、ホタテ、アワビ風等のイミテーション蒲鉾・揚蒲鉾、蒸蒲鉾、焼蒲鉾などの蒲鉾類・ちくわ類・フィッシュボールなど),乳製品(チーズ・ヨーグルトなど),卵製品(玉子焼き・茶碗蒸しなど),穀物製品(餅・麺など),肉や魚介などのイミテーションフード,低炭水化物食・高蛋白食・嚥下食・大豆たん白主体食品などの機能性食品などの製造過程において原料中にLPを低減した大豆蛋白素材と蛋白質架橋酵素を配合しておき、酵素を作用させてゲルを形成させることができる。
また、LPが低減された大豆蛋白素材に蛋白質架橋酵素を作用できる水系であれば、非食品であってもそのゲルを利用することができる(例えばペットフード、飼料、肥料などの他、砂漠の緑化を行う為の保水剤や水系塗料など)。
より具体的には、本発明の大豆蛋白ゲルと食品原料から生成するゲルの物理特性を踏まえつつ、大豆蛋白素材の配合量、蛋白質架橋酵素の添加量、生地のpH、塩濃度、油脂添加量、糖添加量、ミネラル(Ca、Mg等)添加量などのファクターを適宜変更することで上記の食品等に利用することができる。
例えば、ミンチ肉の一部をLPの低減された大豆蛋白に置換し、これに蛋白質架橋酵素を作用させることで、やや脆いソーセージの物性をたわみある物性へと改変することができる。また、すり身の一部をLPの低減された大豆蛋白に置換し、これに架橋酵素を作用させることで、たわみある物理特性が特徴である蒲鉾の物性を殆ど損うことなく、すり身と大豆蛋白のハイブリッド蒲鉾を製造できる。
(大豆蛋白ゲル調製用大豆蛋白素材)
以上の知見から、本発明は特徴的な大豆蛋白ゲル及びそれを利用した食品を提供するほか、このような大豆蛋白ゲルを消費者や製造メーカーにおいても容易に調製でき、種々の食品へ利用されることを可能とするため、大豆蛋白ゲル調製用大豆蛋白素材を提供する。この大豆蛋白素材はLPが低減され、かつ、蛋白質架橋酵素が作用したものであることを特徴とするものである。
また本発明は製造メーカー自身が蛋白質架橋酵素を作用させて本発明の大豆蛋白ゲルを容易に調製することを可能とする大豆蛋白素材も提供する。この大豆蛋白素材はLPが低減されていることを特徴し、食品の製造において蛋白質架橋酵素を作用させて使用するものである。
これらの大豆蛋白素材は、求められる用途・粘度・色調・物性などに応じて、7S大豆蛋白や11S大豆蛋白、分離大豆蛋白など前述した種々のタイプの大豆蛋白素材とすることが可能である。これらの素材は凍結品・乾燥品などの形態で流通させることが可能である。
(LPが低減された大豆蛋白素材の調製)
非特許文献2(M Samoto etc, Food Chemistry, 102, 317-322, 2007.)に記載の方法に準じて以下の通り、LPが低減されたタイプの大豆蛋白素材を調製した。
1)低変性脱脂大豆に加熱処理を施してNSI(水溶性窒素指数)を低下させた脱脂大豆(NSI70%)の温水抽出スラリーを遠心分離機にてオカラ画分を除き脱脂豆乳とした。
2)脱脂豆乳を更に遠心分離機にかけ、沈殿してくる難溶性の画分を除いた。この画分は比較的親水性の低い脂質親和性蛋白であり、以下「難溶性LP」と称する。次に残りの上清のpHを5.8に調整して遠心分離機にて沈殿カード画分を回収した。この画分が11S大豆蛋白であり、これを「11S蛋白」と称することとする。
3)次に、残りの上清のpHを5.0に調整し、55℃で10分間放置後、次いでpH5.5に調整後、遠心分離機にて沈殿カード画分を回収した。この画分も上記難溶性LP画分と同様に、脂質親和性蛋白であり、これを「LP」と称することとする。
4)次に、残りの上清のpHを4.5に調整し、遠心分離機にて沈殿カード画分を回収した。この画分が7S大豆蛋白であり、これを「7S蛋白」と称することとする。
5)得られた各画分(11S蛋白,7S蛋白,LP)より、中和後加熱処理を行わずに噴霧乾燥した未変性大豆蛋白素材(A)と、中和後140℃×10秒の加熱変性処理後、噴霧乾燥した変性大豆蛋白素材(B)の2タイプを調製した。
6)本操作による乾物収率比は、11S蛋白:LP:7S蛋白の比はおよそ2:2:1であった。この11S蛋白(A)、LP(A)及び7S蛋白(A)を2:2:1の比率で混合したタイプの大豆蛋白素材を得た。これは上記の難溶性LP画分のみを除去したものであるので、「脱難溶性LP蛋白」と称することとする。
7)11S蛋白(A)及び7S蛋白(A)を2:1の比率で混合したタイプの大豆蛋白素材を得た。これは上記の難溶性LP画分と3)のLP画分を両方とも除去したものであり、「脱LP蛋白」と称することとする。
(LPが低減されていない大豆蛋白素材の調製)
別途、特許文献5に準じて以下の通り、LPが低減されていないタイプの大豆蛋白素材、すなわち分離大豆蛋白を調製した。
1)低変性脱脂大豆の温水抽出スラリーを遠心分離機にてオカラ画分を除き脱脂豆乳とした。
2)得られた脱脂豆乳をpHを4.5に調整して等電点沈殿せしめ、遠心分離機にて酸沈殿カードを得て中和した。
3)次にこの中和液を140℃10秒の予備加熱を行った上で、噴霧乾燥して分離大豆蛋白(SPI)として調製した。一方で、この中和液を140℃10秒の予備加熱を行った上で、トランスグルタミナーゼ製剤「アクティバ」(味の素(株)製、以下「TGase」と称する。)を粗蛋白質1gあたり0.5ユニット添加し、50℃で30分反応させて、140℃10秒の加熱を施し噴霧乾燥させたものをTGase処理分離大豆蛋白「TG−SPI」として調製した。
表1に、得られた各種大豆蛋白素材のリストと、各素材のLPの推定含量であるLCI値の測定結果を示した。LCI値の測定方法は前述の通りである。
(表1)
Figure 0005577702
(試験例1)硬い大豆蛋白ゲルの調製とゲル物性・風味の評価
表1の各種大豆蛋白素材を12%濃度となるよう水に溶解してpH7.5に調整し、遠心脱泡してスラリー状とした。TGaseを添加するものについては、大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるよう添加後、ケーシングチューブに充填し、55℃×30分の酵素反応を行った。引き続き90℃×30分の加熱を行った後、一晩冷蔵し、室温に戻して、物性評価用の大豆蛋白ゲルとした。大豆蛋白ゲルはケーシング剥離し、山電(株)製レオメーターにて測定を行い、破断強度と破断変形の解析を行った(測定条件:サンプル高20mm、φ5mm球プランジャー、1mm/秒)。得られた破断荷重及び破断変形に(式2)及び(式3)を適用して破断応力(×1000N/m)及び破断歪率(%)を求めた。また、ゲルを試食し、風味の評価を10点満点で点数で表し、食感について評価を行った。結果を表2及び表3に示した。
(表2)変性大豆蛋白素材のゲルに対するTGaseの物性への効果
Figure 0005577702
表2の結果の通り、大豆蛋白素材が変性タイプの場合、TGase無添加区と比較して、TGase添加区では、破断応力と破断歪率が大きくなり、いずれもたわみのある硬い食感の方向へと改質されていた。同じ濃度での比較において、7S(B)、11S(B)が最もたわみのある硬い食感となり風味も良好であった。一方、LP(B)はたわみと硬さが不十分で風味が悪く、SPI(B)は、たわみがあって硬い食感であったものの、風味面では7S(B)や11S(B)の方が顕著に優れていた。
本発明の課題の一つである「たわみのある硬い食感の大豆蛋白ゲル」について、我々は、この評価法において満足できる目標レベルとして、風味8〜10点、破断応力50〜1000(×1000N/m)、破断歪率50〜100%と設定した。従い、本実験例において、課題を解決しうるものとしては、T−1の11S蛋白(B)(TGase処理)及びT−2の7S蛋白(B)(TGase処理)であった。すなわち、従来の分離大豆蛋白から、LP画分を低減させることが重要であった。
(表3)未変性大豆蛋白素材のゲルに対するTGaseの物性への効果
Figure 0005577702
表3の結果の通り、大豆蛋白素材が未変性タイプの場合でも、TGase無添加区と比較し、TGase添加区では、破断応力と破断歪率が大きくなり、いずれもたわみのある硬い食感の方向へと改質されていた。しかし、LP(A)についてはTGaseの添加によっても殆ど改質されなかった。したがって、風味がよくてたわみのある硬い食感の大豆蛋白ゲルを得るには、LP画分を低減化する工程が必須であることが示された。
(試験例2)柔い大豆蛋白ゲルの調製とゲル物性の評価
表4に示したように各種大豆蛋白素材を材料中の濃度が所定の濃度(重量%)となるよう水に溶解してpH7.5に調整し遠心脱泡してスラリー状の材料とした。TGaseを大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるよう添加後、亀甲容器に充填して蓋をし、55℃×30分の酵素反応を行った。引き続き90℃×30分の加熱を行った後、一晩冷蔵し、室温に戻して、物性評価用の大豆蛋白ゲルとした。大豆蛋白ゲルについて試験例1と同様にして物性、風味、食感の評価を行った。ただし柔い食感のゲル物性を評価できるように、レオメーターのプランジャーは大きなプランジャー(φ15mm円柱プランジャー)を用いた。
(表4)各大豆蛋白素材濃度におけるTGase作用ゲルの物性
Figure 0005577702
本発明の課題の一つである「つるりとした柔い食感の大豆蛋白ゲル」について、我々は、この評価法において満足できる目標レベルとして、風味8〜10点、破断応力5〜50(×1000N/m)、破断歪率40〜80%と設定した。従い、表4において課題を解決しうる条件はT−18、T−20、T−21、T−24であった。すなわち、従来型の分離大豆蛋白から、LP画分を低減することによって、初めて課題を解決しうるものである。
(試験例3)大豆蛋白ゲルの物性に与える油脂・塩・pHの影響
11S蛋白(A)の濃度が12%となるよう水に溶解し、パーム油「パームエース10」(不二製油(株)製)、食塩、砂糖を溶解・分散させ、表5の所定のpH(pH5.5〜8.5)に調整して遠心脱泡してスラリー状の材料とした。TGaseを大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるよう添加後、ケーシングチューブに充填し、55℃×30分の酵素反応を行った。引き続き95℃×30分の加熱を行った後、一晩冷蔵し、室温に戻して、物性評価用のゲルとした。大豆蛋白ゲルについて試験例1と同様にして物性、風味、食感の評価を行った。風味は点数が10点満点中8点以上であったものに○を付した。
(表5)大豆蛋白素材を含む材料に加える他の原料による物性への影響
Figure 0005577702
大豆蛋白素材を含む材料に加える他の原料やpHによって、大豆蛋白ゲルの風味・物性は影響を受ける場合があった。具体的には、pH5.5(T−32)では酸味が強くてボソボソした食感となり、大豆蛋白素材を含む材料への食塩添加量が1.2重量%(T−30)ではボソボソした食感となっていた。なお、各々のゲルをSDS−PAGE(電気泳動)に供し、TGaseによって生じた分子間架橋の程度(高分子の量)を調べたところ、いずれのゲルも同程度に分子間架橋を生じていたことから、これらの現象は、TGaseが反応しにくくなり生じた結果ではなく、各々の条件下での大豆蛋白の溶解性や保水性やゲル形成能と関連していると考えられた。従い、ある程度の食塩量が必要になってくるような惣菜用途に応用したい場合は、大豆蛋白素材濃度を少し高めにして、pHをやや高めにするなどの工夫を施すことができそうであると期待でき、実際、以降の実施例にて工夫できることを実証する。
なお、油脂によって破断応力はやや低下するが破断歪率は低下せず、たわみのある食感を維持した。この理由としては、LPを低減することによって、油脂が、大豆蛋白素材の液に対して相分離しやすくなっているからではないかと考えられる。また、データには示していないが、大豆蛋白素材を含む材料中に砂糖を5%添加しても物性の変化はさほど大きくはなかったことから、甘味系のデザート的なものへの応用が可能であると示唆され、以降の応用例にて説明する。
(応用例1)大豆蛋白ゲルを利用した食品(生貝柱風の大豆蛋白ゲル)
グルタミン酸Na:0.05重量部、グリシン:0.5重量部、アラニン:0.2重量部、食塩:0.1重量部、コハク酸Na:0.3重量部、砂糖:0.2重量部、ホタテエキス「TC−F2」(焼津水産化学工業(株)製):0.05重量部を、冷水:8.6重量部に溶解して調味液(H)とした。
11S蛋白(A)の粉末12.9重量部を73.3重量部の冷水に溶解し、上記の調味液(H)を10重量部添加し、pH8.0に調整して遠心脱泡してスラリー状の材料とした。TGaseを10重量%となるよう冷水に溶解させた液を、TGase1.6重量%(対大豆蛋白素材固形分重量)となるようスラリー状の材料に添加後、折径6.4cmのケーシングチューブに充填(大豆蛋白素材の濃度は12重量%)し、55℃×30分の酵素反応を行った。引き続き95℃×30分の加熱を行った後、一晩冷蔵し、室温に戻して、大豆蛋白ゲルとした。大豆蛋白ゲルは試験例1と同様にして物性について評価した。一方で、大豆蛋白ゲルを厚さ1.5cmの輪切りにし、得られた円柱ゲルの両面について、幅1mm前後の鹿の子模様(細かい斜めの格子状の模様)となるよう深さ5mmの切り込みを入れて、貝柱の繊維風に調理し、風味を確認した。
(表6)
Figure 0005577702
T−35では生貝柱的食感にはならなかったが、切り込みを適度に入れることで、ゲルの束からなる繊維感を舌で感じうるものとなった。このゲルは比較的つるりとした食感を有していた。加熱済の貝柱は繊維感が目立ちすぎ、一方、生貝柱は繊維感が少ないが、このゲルは比較的つるりとした食感であって適度な繊維感も有していた。すなわち、本発明で得られる大豆蛋白ゲルに切り込みなどの公知の調理加工を施すことで、更にテクスチャーの幅が広がるものとなる。なお、鹿の子状に切り込みを入れたT−36の「生貝柱風の大豆蛋白ゲル」を寿司の具とし、甘しょうゆダレをつけると、鹿の子状の切れ目が美しく映え、食欲をそそるものとなり、更に美味しく食せるものであった。
(応用例2)大豆蛋白ゲルを利用した食品2(杏仁風味の大豆蛋白ゲル)
市販の甜杏仁粉20重量部を60重量部の温水に分散後、遠心分離して得た上清から40重量部を採取して冷却し、砂糖5重量部を加えて調味液(N)とした。なお、表7のT−40では、砂糖5重量部の代わりに、ステビア甘味料製剤(大日本インキ化学工業製)を0.05重量部加えて調味液(N)の代わりとした。
先に調製した脱難溶性LP蛋白、脱LP蛋白、11S蛋白(A)の粉末24重量部を、各々136重量部の冷水に溶解し、上記の調味液(N)を40重量部添加し、pH7.5に調整して遠心脱泡してスラリー状の材料とした。TGaseを10重量%となるよう冷水に溶解させた液を、TGaseの添加量が大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるよう該材料に添加後、蓋のできるプラスチック容器に60重量部充填し(大豆蛋白素材の濃度9.9%)、55℃の温浴中にセットして、毎分2℃上昇するように徐々に90℃まで湯温を昇温させた後、90℃20分の加熱を行った後、一晩冷蔵し、室温に戻して大豆蛋白ゲルとした。これらの大豆蛋白ゲルは容器の蓋を外し、試験例1と同様にして物性、風味、食感を評価した。
(表7)
Figure 0005577702
脱難溶LP蛋白を使用したT−37のゲルで感じられた大豆由来の雑味が、脱LP蛋白を使用したT−38や11S(A)を使用したT−39のゲルでは感じられず、雑味のない杏仁味となった。食感はT−38のゲルの方がT−39のゲルよりもつるりとしていて好ましく、砂糖の代わりにステビア甘味料製剤を用いたT−40のゲルは爽やかな甘みを呈し好ましかった。T−40の「大豆でできた杏仁ゼリー」を角切りにしてシロップ漬し、レトルト袋に充填して加熱殺菌後、冷蔵して食しても、型崩れなく、美味しく食せるものであった。
(応用例3)大豆蛋白ゲルを利用した食品3(蒲鉾風の大豆蛋白ゲル)
グルタミン酸Na:0.02重量部、食塩:0.7重量部、砂糖:0.7重量部、「サカナエキスHN−55」(仙味エキス(株)製):1.5重量部を、冷水:7.1重量部に溶解して調味液(T)とした。
先に調製した11S蛋白(A)の粉末15.7重量部を、69.6重量部の冷水に溶解し、上記の調味液(T)を10重量部添加し、pH8.0に調整してスラリー状の材料とした。TGaseを10重量%となるよう冷水に溶解させた液を、TGaseの添加量が大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるように添加後、逆さ蒲鉾型の容器に充填(大豆蛋白素材の濃度15重量%)し、蒲鉾板を容器上に浮かせ、55℃のコンビオーブン中にセットして30分後、90℃まで昇温させ30分の加熱を行った後、容器から外して蒲鉾板ごとラッピングし、一晩冷蔵し、室温に戻して大豆蛋白ゲルとした。得られたゲルはラッピングを外し、試験例1と同様にして物性、風味、食感について評価した。
(表8)
Figure 0005577702
該材料中に食塩が1%程度存在すると、表5のT−30のように、大豆蛋白素材濃度が12%程度(pH7.5)では、保水力のあるゲルネットワークを構築しにくく、ボソついた食感になってしまう。そこでT−41のように大豆蛋白素材の濃度を15%と高くすると、食塩濃度が0.7%以上であっても、蒲鉾的なたわみのある食感にすることが可能であった。おそらく、大豆蛋白素材濃度を高めにすることでネットワークの材料が増え、該材料のpHを8.0とやや高めにして大豆蛋白素材の等電点から遠ざけることでゲルネットワークの保水力が高まったと考えられる。
このように、本発明の大豆蛋白ゲルは惣菜用途においても利用することができ、例えば、近年高騰している魚肉のすり身を使用しなくとも、蒲鉾的な食感・風味の「蒲鉾風の大豆蛋白ゲル」を製造することができる。
なお、塩の存在下で11S蛋白を含有するスラリー状の材料を加熱した場合、そのゲルは明るい白色に白濁する傾向にあるので、色調の面からも蒲鉾に近くなった。また、T−41で得られた大豆蛋白ゲルを、おでんの煮込み液にて煮込むことで、おでんの煮込み液がゲルの内部へ速やかに浸透するため味浸みが良く、型崩れもなく、美味しく食せるものであった。
(応用例4)大豆蛋白ゲルを利用した食品4(他素材代替)
冷凍すり身(スケソウFA:水分75%)67重量部、食塩2.1重量部を塩擂りし、冷水33重量部を加え、T−42のゲル調製用の生地を調製した。
冷凍すり身45重量部、LPが低減された大豆蛋白素材液(11S蛋白(A)ペースト(水分80%))を55重量部、食塩2.1重量部、TGaseを生地中蛋白1gあたり8ユニットとなるよう加えて塩ズリし、T−43のゲル調製用の生地を調整した。
各生地は、真空脱泡してケーシングチューブに充填し、30℃×30分加温後、90℃×30分で加熱し、一晩冷蔵後、室温に戻した後、ケーシング剥離し、試験例1と同様にして物性の評価を行った。ただし、プランジャーはφ3mm円柱プランジャーを用いた。φ3mm円柱プランジャーでの測定は、T−41のゲルについても実施し(T−44)、市販の蒲鉾についても実施した(T−45、46)。表9の結果は、φ3mm円柱プランジャーで測定したためφ5mm球プランジャーの場合よりもT−41の破断応力が高い数値となっているが、表9のデータにおける相対比較は可能である。なお、ゲルのたわみの程度は破断歪率Xでほぼ表現することができるが、更にゲルのしなやかさの程度を客観的に表現できる指標として、破断指標Z(式4)を用いて物性を評価した。
(表9)
Figure 0005577702
すり身100%品や市販板付蒲鉾や市販成型蒲鉾(T−42、T−45、T−46)では、破断変形XがX>50%で、破断指標ZはZ<−20%であって、食感はたわみある蒲鉾的でしなやかさを有するものあった。なお、T−45は、硬さとたわみとしなやかさに優れた比較的高級な蒲鉾であり、T−46は、硬さとたわみとしなやかさを有した中級の蒲鉾であった。T−42は、硬さとたわみに優れしなやかさにやや欠けるものであったが、蒲鉾的食感の範疇であった。従い、T−42、T−45、T−46の各々の食感は、硬さやたわみやしなやかさの程度は異なってはいたが、いずれも蒲鉾的な食感として認識できるものであった。
本応用例における測定値によれば、破断応力Yが250〜600(×1000N/m)、破断歪率Xが50%以上、破断指標Zが−20%以下であれば、蒲鉾的食感の範疇にあることが期待できた。
そこでT−43を評価すると、大豆蛋白をすり身と半量置換してもなお、蒲鉾的食感の範疇にあって、たわみのある蒲鉾の物性を殆ど損うことなくすり身と大豆蛋白素材のハイブリッド蒲鉾にすることができた。これはすり身が不足したり、高騰した場合などに有効に利用することができるものであった。更にT−44では、すり身を全く使用しなくても蒲鉾的食感にすることができるものであった。
すなわち、LPを低減させた大豆たん白素材を用いることにより、風味・色調は良好なものとなっており、蒲鉾のような薄味の食品への利用にも適していることが示された。
また、LPが低減された大豆蛋白素材液100重量部に、なたね油を10重量部加えて乳化させておくことで、破断応力Yが0.8倍となったが、破断歪率Xや破断指標Zは殆ど変化させることなく、蒲鉾的なたわむ食感を作り上げることができ、T−42よりも白っぽい食品に仕上げることも可能であった。

Claims (8)

  1. 大豆蛋白素材を含む材料を加熱して得られるゲルであって、該大豆蛋白素材が全脂豆乳,脱脂豆乳又は分離大豆蛋白であり、該大豆蛋白素材は脂質親和性蛋白質がLCI値として38%以下に低減されたものであり、かつ、該ゲルは蛋白質架橋酵素が作用したものであり、さらに、該ゲルは破断応力が50〜1000(×1000N/m)であって、かつ破断歪率が50〜100%であることを特徴とする大豆蛋白ゲル。
  2. 該ゲルの破断指標Z値が−10%〜−80%である、請求項1記載の大豆蛋白ゲル。
  3. 請求項1又は2記載の大豆蛋白ゲルを利用した食品。
  4. 脂質親和性蛋白質をLCI値として38%以下に低減した大豆蛋白素材を原料とし、該大豆蛋白素材が全脂豆乳,脱脂豆乳又は分離大豆蛋白であり、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白質架橋酵素を作用させた後、加熱することを特徴とする、破断応力が50〜1000(×1000N/m)であって、かつ破断歪率が50〜100%である大豆蛋白ゲルの製造法。
  5. 蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆蛋白素材を含む材料のpHが6〜9である請求項4記載の大豆蛋白ゲルの製造法。
  6. 蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆蛋白素材への食塩添加量が大豆蛋白を含む材料中1重量%以下である請求項4又は5記載の大豆蛋白ゲルの製造法。
  7. 脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材が予め変性温度以上の予備加熱を施されておらず、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵素を作用させた後、該大豆蛋白素材の変性温度以上で加熱を施すことを特徴とする請求項4〜6の何れか1項記載の方法。
  8. 脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材が予め変性温度以上の予備加熱を施されていて、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵素を作用させた後、該酵素が失活するに充分な加熱を施す加熱である請求項4〜6の何れか1項記載の方法。
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