JP5573791B2 - メタルハライドランプ - Google Patents

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Description

この発明は、インキや塗料、樹脂等の硬化をはじめとする光化学反応に好適なメタルハライドランプに関するものである。
インキや塗料、樹脂等の硬化をはじめとする光化学反応には紫外線が利用されることが多いが、近時、紫外線照射用の光源として従来用いられてきた高圧水銀ランプに代えて、発光管内にハロゲンとともに種々の発光金属が封入されたメタルハライドランプが広く用いられている(特許文献1)。
このようなメタルハライドランプのうち、発光金属として鉄及び錫が封入されたものは、高圧水銀ランプに比べて紫外線域、特に280〜420nmの波長域での発光効率が高く、このため、当該波長域に感応するインキや塗料、樹脂等の硬化に適している。
特公昭58−18743号公報
ところが、鉄及び錫が封入されたメタルハライドランプには点灯開始初期に急激にランプ電圧が低下するという問題がある。このため、従来は鉄及び錫が封入されたメタルハライドランプを製造するに際しては、ランプ電圧を規格より1割程度高めに設定している。しかしながら、このようにランプ電圧を高めに設定したメタルハライドランプでは、エージング処理後にランプ電圧が安定しても発光強度は安定しない場合がある。
そこで本発明は、上記現状に鑑み、点灯開始初期のランプ電圧の急激な低下を抑制することが可能なメタルハライドランプを提供すべく図ったものである。
本発明者は、鋭意検討の結果、鉄及び錫とともにタリウムを発光管内に封入することにより、点灯開始初期のランプ電圧の急激な低下が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本明細書において、点灯開始初期とは、メタルハライドランプの点灯開始から約16時間以内をいう。
すなわち本発明に係るメタルハライドランプは、一対の電極を備えた発光管の内部に、希ガスと、水銀と、ハロゲンと、発光金属とが封入されてなるメタルハライドランプであって、前記発光金属が、鉄及び錫であり、更に、ランプ電圧維持成分としてタリウムが前記発光管内に封入されていることを特徴とする。
本発明において、タリウムの前記発光管内への封入量は、単位内容積あたり3.0×10−5mmol/cm以下であることが好ましい。また、本発明において、鉄(Fe)と錫(Sn)との前記発光管内への封入量の比は、モル比Fe/Snで、Fe/Sn=1〜12であることが好ましい。
発光金属として鉄及び錫が封入されてなるメタルハライドランプの発光管内に、ランプ電圧維持成分としてタリウムを封入して、点灯開始初期のランプ電圧の低下を抑制する方法もまた、本発明の1つである。すなわち本発明に係るランプ電圧低下抑制方法は、一対の電極を備えた発光管の内部に、希ガスと、水銀と、ハロゲンと、発光金属として鉄及び錫とが封入されてなるメタルハライドランプの、点灯開始初期のランプ電圧の低下を抑制する方法であって、前記発光管内にランプ電圧維持成分としてタリウムを封入しており、タリウムの前記発光管内への封入量を、単位内容積あたり3.0×10 −5 mmol/cm 以下とし、鉄(Fe)と錫(Sn)との前記発光管内への封入量の比を、モル比Fe/Snで、Fe/Sn=1〜12とすることを特徴とする。

本発明は、上述した構成よりなるので、点灯開始初期のランプ電圧の急激な低下を抑制することができる。このため、本発明に係るメタルハライドランプによれば、製造時にランプ電圧を高めに設定する必要がなくなり、このため、製造時にランプ電圧を高めに設定することにともなう、エージング処理後の発光強度の不安定さを回避することができる。
本発明の一実施形態に係るメタルハライドランプの構成を示す模式的断面図である。 タリウムの封入量とランプ電圧維持率との関係を示すグラフである。
以下に、本発明に係るメタルハライドランプの実施形態を説明する。
本発明に係るメタルハライドランプは、内部に一対の電極が対向して配置された発光管を備え、当該発光管内に、希ガスと、水銀と、ハロゲンと、発光金属とが封入されてなるものである。
このようなメタルハライドランプとしては、例えば、図1に示すような形態のものが挙げられる。当該メタルハライドランプ1では、石英ガラスや透光性セラミックスからなる発光管2内に一対の電極3が対向して配置されており、発光管2の両端に設けられた細径部にはモリブデン箔4が封入されるとともに、口金5が設けられている。電極3としては、例えば、タングステンや酸化トリウムを含有するトリエーテッドタングステンからなる電極芯棒の先端部にタングステン線がコイル状に複数回巻かれてなるものが用いられる。
前記希ガスとしては、一般的にメタルハライドランプに用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス等が挙げられる。
前記水銀は、金属水銀として封入されてもよいが、後述するハロゲンとともに、ハロゲン化水銀として封入されてもよく、金属水銀とハロゲン化水銀とが併用されてもよい。
前記ハロゲンとしては特に限定されず、例えば、ヨウ素、臭素、塩素等が挙げられる。これらのハロゲンは、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。前記ハロゲンは、上述した水銀や、前記発光金属、又は、後述するタリウムとともに金属ハロゲン化物として封入することができる。
本発明では、前記発光金属として鉄及び錫が封入されている。ここで鉄と錫とは、鉄が紫外線の主たる発光源として機能し、錫が分光特性を改良するための従たる発光金属として機能する。これらの金属は、それぞれ金属単体(金属鉄、金属錫)として封入されてもよいが、前記ハロゲンとともに金属ハロゲン化物(ハロゲン化鉄、ハロゲン化錫)として封入されてもよく、金属単体と金属ハロゲン化物とが併用されてもよい。前記発光金属としては、更に、鉄及び錫に加えて、適宜用途・目的に応じて他の公知の発光金属が封入されてもいてもよい。
本発明における発光金属の発光管内への封入量は、インキや塗料、樹脂等の硬化をはじめとする光化学反応に必要な発光強度の観点からは、単位内容積あたり1.0×10−4〜1.5×10−3mmol/cmであることが好ましい。
また、鉄(Fe)と錫(Sn)との封入量の比は、モル比Fe/Snで、Fe/Sn=1〜12であるのが好ましく、より好ましくはFe/Sn=3〜5である。鉄と錫とをこのような比率で封入することにより、目的とする波長領域(350nm付近)の光を安定して得ることができる。また、鉄と錫とがこの範囲の比率で封入されていれば、後述するタリウムを添加することにより、点灯開始初期のランプ電圧の急激な低下を良好に抑制することができる。
本発明においては、希ガス、水銀、ハロゲン、並びに、発光金属である鉄及び錫に加えて、更に、タリウムがランプ電圧維持成分として発光管内に封入されている。このように発光管内にタリウムを封入することにより、点灯開始初期のランプ電圧の急激な低下を抑制することができる。このような効果が発揮される理由としては次のようなことが推測される。すなわち、ランプ電圧は封入物の蒸発量に依存して変動するものであり、封入物の蒸発量が低下するとランプ電圧も低下するが、ハロゲン化タリウムの蒸気圧は、ハロゲン化錫やハロゲン化鉄の蒸気圧よりも高いので、ハロゲン存在下に、鉄及び錫とともにタリウムを発光管内に封入すると、鉄及び錫のみが封入されている場合に比べて、封入物全体としての蒸発量が増大し、この結果、発光管内の蒸気圧を向上させることができ、点灯開始初期の急激なランプ電圧の低下を抑制することができると思われる。
本発明におけるタリウムの発光管内への封入量は、単位内容積あたり3.0×10−5mmol/cm以下であることが好ましい。3.0×10−5mmol/cmを超える量のタリウムを封入しても、ランプ電圧の維持率を高める効果はそれ以上は向上しないうえ、タリウムが発光物質として寄与してしまうため、目的とする波長領域(350nm付近)の発光効率が低下する一方、535nm近辺にピーク波長を有するタリウムに由来する緑色光が顕著になる傾向がある。
なお、タリウム封入量が3.0×10−5mmol/cm以下である場合は、タリウムの封入量が多いほどランプ電圧を維持する効果も向上するが、得られるランプ電圧維持効果に鑑みると、タリウム封入量は1.5×10−6mmol/cm以上であることが好ましい。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下の仕様を有するUVメタルハライドランプを試験用ランプとして作製した。
(1)ランプ仕様
発光管の材質:石英
発光管内径:22mm
発光管内容積:150cm
電極間距離:350mm
封入ガス:アルゴン(2000Pa)
ランプ電力:5600W
このような仕様を有するUVメタルハライドランプに次の発光物質を封入した。
(2)発光物質
FeIとSnIとを、その和が14mgとなり、かつFeIとSnIとのモル比FeI/SnIが、FeI/SnI=5となるようにランプに封入した。より具体的には、FeIを11.28mg、SnIを2.72mg封入した。
更に、下記表1に示す量のタリウムをTlIとして封入して、各試験用ランプを作製し、これらを16時間点灯して、点灯開始直後と点灯から16時間経過後のランプ電圧を測定し、その維持率を算出した。なお、点灯開始直後のランプ電圧は水銀の封入量を調整することで、全てのランプで530Vになるように設定した。具体的には、TlIを添加していないランプでは、水銀封入量を178mgとすると、点灯開始直後のランプ電圧が530Vとなる。得られた結果は表1及び図2に示した。なお、表1及び図2において、「(数値)E±X」は「(数値)×10±X」を表す。
得られた結果より、タリウムを発光管内に封入することにより、発光管内に封入したタリウムがランプ電圧維持成分として機能して、点灯開始初期のランプ電圧の急激な低下が良好に抑制されることが確認された。
タリウムのランプ電圧低下に対する抑制効果は、その封入量が増加するにつれ増大したが、タリウム封入量が3.0×10−5mmol/cmを超えるとその効果は飽和した。
なお、本試験はハロゲンとしてヨウ素(I)を用いたが、ハロゲンとして臭素(Br)を用いた場合も同様な効果が得られることが確認された(データ省略。)。
1・・・メタルハライドランプ
2・・・発光管
3・・・電極
4・・・モリブデン箔
5・・・口金

Claims (2)

  1. 一対の電極を備えた発光管の内部に、希ガスと、水銀と、ハロゲンと、発光金属とが封入されてなるメタルハライドランプであって、
    前記発光金属が、鉄及び錫であり、
    更に、ランプ電圧維持成分としてタリウムが前記発光管内に封入されており、
    タリウムの前記発光管内への封入量は、単位内容積あたり3.0×10 −5 mmol/cm 以下であり、
    鉄(Fe)と錫(Sn)との前記発光管内への封入量の比は、モル比Fe/Snで、Fe/Sn=1〜12であるメタルハライドランプ。
  2. 一対の電極を備えた発光管の内部に、希ガスと、水銀と、ハロゲンと、発光金属として鉄及び錫とが封入されてなるメタルハライドランプの、点灯開始初期のランプ電圧の低下を抑制する方法であって、
    前記発光管内にランプ電圧維持成分としてタリウムを封入しており、
    タリウムの前記発光管内への封入量を、単位内容積あたり3.0×10 −5 mmol/cm 以下とし、
    鉄(Fe)と錫(Sn)との前記発光管内への封入量の比を、モル比Fe/Snで、Fe/Sn=1〜12とすることを特徴とするランプ電圧低下抑制方法。
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