JP5569430B2 - 半導体発光素子 - Google Patents
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Description
このようなIII族窒化物半導体を用いた半導体発光素子では、基板上にn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる発光ダイオード(LED)構造を有する積層半導体層を形成し、最上部のp型半導体層に透光性の電極(透光性電極)を形成し、この透光性電極を介して発光を取り出している。
また、p型半導体層の面積に対する貫通孔の面積の割合(開口率)は、透光性電極の抵抗制御をすることになり、その結果、電流の流れをコントロールする。しかしながら、従来の技術では、発光層への均一な電流供給がなされていなかった。例えば、電極の近傍(電極に近接する領域)に電流が集中し、発光層の一部に電流が集中することにより発光効率が低下していた。
よって、半導体発光素子の発光層全体へ均一な電流を供給し、出射光量を増加させるとともに、順方向電圧の増大を抑制することが求められている。
特に、長方形の半導体素子に於いて、発光層全体へ均一な電流を供給することは大きな課題である。
なお、第1電極に近接する領域は、第1電極と第2電極と間の中点を越えない範囲内にあって、いずれかの電極に近い領域である。
そして、第1電極に近接する複数の貫通孔が設けられる領域における第2半導体層の表面が露出する割合(開口率)は、10%〜30%であることを特徴とすることができる。
さらに、第2電極に近接する領域における開口率は、15%以下であることを特徴とすることができる。
さらにまた、透光性電極は、第1電極に近接する領域と第2電極に近接する領域との間の中間領域に、第2半導体層の表面が露出するように厚さ方向に貫通する複数の貫通孔がさらに設けられていることを特徴とすることができる。
そして、第1電極に近接する領域の開口率1が、第2電極に近接する領域の開口率2より大きく、第1電極に近接する領域と第2電極に近接する領域との中間領域の開口率3は、開口率1と開口率2の間の値であることを特徴とすることができる。
そしてまた、透光性電極に設けられる複数の貫通孔による開口率は、第1電極と第2電極を結ぶ線に沿って変化していることを特徴とすることができる。この変化は、なだらかな変化でも、階段状の変化でも良い。
このような半導体発光素子の平面形状は、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上の長方形であって、第1電極と第2電極とが、長方形の長手方向の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴とすることができる。
また、開口率は、複数の貫通孔の密度または大きさによって設定されていることを特徴とすることができる。
そして、透光性電極は、酸化物導電材料で構成されていることを特徴とすることができる。
さらに、第2半導体層が、透光性電極に接するコンタクト層と、発光層に接するクラッド層とからなり、コンタクト層の透光性電極に接する部分がコンタクト層のクラッド層に接触する部分よりMgの添加量が多く構成されていることを特徴とすることができる。
また、III−V族半導体が、III族窒化物半導体であることを特徴とすることができる。
さらに、貫通孔の幅は、1μm〜10μmであることを特徴とすることができる。
さらにまた、透光性電極の厚さは、50nm〜400nmであることを特徴とすることができる。
図1は本実施の形態が適用される半導体発光素子(発光ダイオード)1の断面模式図の一例であり、図2は図1に示す半導体発光素子1の平面模式図の一例を説明する図である。なお、図1に示す半導体発光素子1の断面模式図は、図2のI−I線での断面図である。また、図2に示す半導体発光素子1の平面模式図は、図1の矢印IIから見た平面図である。
図1に示すように、半導体発光素子1は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子1は、下地層130上に積層される第1半導体層の一例としてのn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層される第2半導体層の一例としてのp型半導体層160とをさらに備える。なお、以下の説明においては、必要に応じて、これら中間層120、下地層130、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160を、まとめて積層半導体層100と呼ぶ。
そして、半導体発光素子1は、透光性電極170上の一部に積層される第1電極190と、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140c上の一部に積層される第2電極200とを備える。
さらに、半導体発光素子1は、第1電極190および第2電極200のそれぞれの表面の一部を除いて、透光性電極170の表面、積層半導体層100の表面および側面を覆う保護層210を備える。なお、保護層210は、貫通孔180においても、貫通孔180の底に露出したp型半導体層160の表面および貫通孔180の内側の側面(内壁)を覆っている。
透光性電極170の表面は、第2電極200に近接した領域A、第1電極190に近接した領域C、領域Aと領域Cとの間の領域Bの3つの領域に分けられている。第1電極190に近接した領域Cまたは第2電極200に近接した領域Aは、第1電極190と第2電極200と間の中点を越えない範囲内にあって、いずれかの電極に近い領域である。
そして、それぞれの領域において、貫通孔180は、互いに辺を共通にするように配列された複数の正三角形の頂点に位置するように配置されている。
なお、貫通孔180は、領域Aでは一辺長paの正三角形の頂点の位置に、領域Bでは一辺長pbの正三角形の頂点の位置に、領域Cでは一辺長pcの正三角形の頂点の位置に設けられている。そして、pa>pb>pcであるように、それぞれの領域の正三角形の一辺長が設定されている。よって、貫通孔180が直径dである場合、領域Aではp型半導体層160の表面が露出する割合が小さく、領域Cではp型半導体層160の表面が露出する割合が大きい。領域Bは領域Aと領域Cとの中間である。
貫通孔180の直径dは例えば3μmで、領域Aにおける正三角形の一辺長paは例えば12μm、領域Bにおける正三角形の一辺長pbは例えば9μm、領域Cにおける正三角形の一辺長pcは例えば6μmである。なお、一辺長pa、pb、pcをそれぞれ区別しないときは、一辺長pと表記する。貫通孔180の配置は、正三角形の頂点としたが、多角形の頂点あるいは不規則な配置でも良い。
すなわち、貫通孔180を設けない場合において、単位面積当たりに出射する光量を反映した電流密度により、p型半導体層160の表面が露出する割合を変えている。単位面積当たりの光量が大きい領域はp型半導体層160の表面が露出する割合を小さくし、単位面積当たりの光量が小さい領域はp型半導体層160の表面が露出する割合を大きくしている。このようにp型半導体層160の表面が露出する割合を変化させることにより、単位面積当たりの光量、電流密度を均一化することができる。
なお、貫通孔180の平面形状は、上記した円形である必要はなく、正方形、長方形、三角形または他の形状であってもよい。
<基板110>
基板110としては、表面にIII−V族半導体の結晶がエピタキシャル成長する基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。例えば、サファイア、SiC、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、GaP,GaN、酸化亜鉛等からなる基板を用いることができる。また、基板にエピタキシャル成長後、他の材質の基板を貼り付け、エピタキシャル成長させた基板を除去することで、他の材質の基板である貼り付けた基板を基板110とすることもできる。
III族窒化物半導体の結晶の場合、上記基板の中でも、特に、c面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。サファイア基板を用いる場合は、サファイアのc面上に中間層120(バッファ層)を形成すると格子定数の異なる結晶を良好な品質で成長できるので望ましい。
積層半導体層100は、III族窒化物半導体からなる層であって、図1に示すように、基板110上に、中間層120、下地層130、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層がこの順で積層されて構成されている。
また、図1に示すように、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1導電型にて電気伝導を行い、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2導電型にて電気伝導を行う。
なお、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01μm〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が、結晶性の良好な下地層130が得られやすい。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、p型不純物(アクセプター)あるいはn型不純物(ドナー)を添加することができる。
図1に示すように、n型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとから構成されるのが好ましい。なお、nコンタクト層140aがnクラッド層140bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
さらに、nコンタクト層140aの不純物の濃度と膜厚との積(Nd)は、nコンタクト層140aの電気抵抗と反比例する関係にあり、発光層150の電流密度を均一にし、順方向電圧Vfを低くするために望ましい範囲は、Nd=1×1014/cm2〜1×1016/cm2、好ましくは2×1014/cm2〜5×1015/cm2である。この積の値が小さすぎる場合は、第2電極200に近接する領域(近傍)の光量(電流密度)が大きく、順方向電圧Vfが高くなる。一方、この積の値が大きすぎる場合は、第1電極190に近い側の光量(電流密度)が大きくなり、nコンタクト層140aの結晶の品質低下により、静電破壊電圧の低下を招く。
また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することが望ましい。
図1では、発光層150を、障壁層150aと井戸層150bとが交互に積層されてなる多重量子井戸構造で示している。そして、発光層150のうち、nクラッド層140bと接する側および後述するpクラッド層160aと接する側は、それぞれ障壁層150aとなっている。多重量子井戸構造の井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1nm〜10nmとすることができ、好ましくは2nm〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物を添加してもしなくてもよい。
p型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bから構成される。また、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
pクラッド層160aのp型不純物濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019/cm3〜1×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なpクラッド層160aが得られる。
また、pクラッド層160aは、複数回積層した超格子構造としてもよく、この場合には、組成比が異なるAlGaNと他のAlGaNとの交互構造または組成が異なるAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
pコンタクト層160bでは、p型不純物を1×1018/cm3〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019/cm3〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜200nmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、順方向電圧Vfおよび出射光量Poの点で好ましい。
接触抵抗(コンタクト抵抗)はMgの添加量に比例して低下するが、層抵抗には適正なMgの添加量の範囲があり、過剰にMgを添加すると抵抗が高くなる。このため、2層に分けて接触抵抗、層抵抗とも低くすることが望ましい。
このことにより、p型半導体層160の層抵抗を低減させるとともに、p型半導体層160と透光性電極170との接触抵抗も低減させることができる。
図1に示すように、p型半導体層160の上には透光性電極170が積層されている。
図2に示すように平面視したときに、透光性電極170は、第2電極200を形成するために、エッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面160cのほぼ全面を覆うように形成されている。
例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを透光性電極170として使用する場合、エッチング性に優れたアモルファス状態のIZO膜を用いて貫通孔180が設けられた特定形状にパターニングすることができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させることで、アモルファス状態のIZO膜よりも光の透過性に優れた透光性電極170に加工することができる。
例えば、IZO中のZnO濃度は1質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%の範囲であることがさらに好ましい。10質量%であると特に好ましい。また、IZO膜の膜厚は、低接触抵抗、高光透過率を得ることができる35nm〜10000nm(10μm)の範囲であることが好ましい。膜厚が35nmより薄いと接触抵抗が高くなる。光透過率の低下および生産コストの観点から、IZO膜の膜厚は1000nm(1μm)以下であることが好ましい。さらに、接触抵抗が低く、光透過率の高い50〜400nmが最適である。
電流密度の均一化のために、IZO膜のシート抵抗を5〜50Ω/□の範囲とすることが望ましい。さらに、望ましくは10〜40Ω/□である。シート抵抗が高いと、順方向電圧Vfが高くなり、発光効率が低下する。シート抵抗が低すぎると第2電極200付近の電流密度が高くなり、半導体発光素子1全体としての効率が低下する。
貫通孔180の幅は、1〜10μmの範囲が望ましく、さらに、2〜5μmが好ましい。幅が1μmより小さい場合は、貫通孔180の幅のバラツキが大きくなり、均一な電流密度が得られにくくなる。一方、10μmより大きいと貫通孔180の領域とそれ以外の領域とで、電流密度が異なり、発光層150への電流供給が不均一になり、半導体発光素子1全体としての発光効率が低下する。
IZO膜の微細な貫通孔180のパターニングは、熱処理を行なう前に行なうことが望ましい。熱処理により、アモルファス状態のIZO膜は結晶化されたIZO膜となるため、アモルファス状態のIZO膜と比較してエッチングが難しくなる。これに対し、熱処理前のIZO膜はアモルファス状態であるため、エッチング液を用いて容易に精度良くパターニングすることが可能である。
透光性電極170上に形成され、透光性電極170とオーミック接触する第1電極190は、例えば、従来公知のAu、Al、Ti、V、Cr、Mn、Co、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Ta、Ni、Pt、Cu等の材料から構成される。第1電極190の構造は特に限定されず、従来公知の構造を採用することができる。この技術分野で従来公知の手段で設けることができる。ワイヤボンド特性の向上のため、第1電極190の下の透光性電極170には、貫通孔180を設けないことが望ましい。
第1電極190の厚さは、例えば100nm〜2000nmの範囲内であり、好ましくは300nm〜1000nmの範囲内である。
第2電極200は、n型半導体層140のnコンタクト層140aにオーミック接触している。すなわち、第2電極200は、積層半導体層100のp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を除去して、nコンタクト層140aの半導体層露出面140cを形成し、この半導体層露出面140c上に設けられている。
第2電極200は、第1電極190と同じ組成・構造でもよい。各種組成および構造の第2電極200が従来公知であり、これらの第2電極200を何ら制限無く用いることができる。この技術分野で従来公知の手段で設けることができる。
保護層210は、半導体発光素子1の内部への水分等の進入を抑制するために、第1電極190および第2電極200のそれぞれの表面の一部を除いて、透光性電極170の表面、積層半導体層100の表面および側面を覆うように設けられている。
また、本実施の形態では、発光層150からの光を、保護層210を介して取り出すことから、保護層210は発光層150から出射する光に対する透過性に優れたものであることが望ましい。本実施の形態では、保護層210をSiO2で構成している。ただし、保護層210を構成する材料についてはこれに限られるものではなく、SiO2に代えて、TiO2、Si3N4、SiO2−Al2O3、Al2O3、AlN等を用いることができる。
次に、本実施の形態である半導体発光素子1の製造方法の一例について説明する。
先ず、サファイア基板等の基板110を用意し、前処理を施す。前処理としては、例えば、スパッタ装置のチャンバ内に基板110を配置し、中間層120を形成する前にスパッタするなどの方法によって行うことができる。中間層120はスパッタ法で形成することが望ましいが、MOCVD法で形成することもできる。
下地層130の形成後、下地層130上にnコンタクト層140aおよびnクラッド層140bを積層してn型半導体層140を形成する。nコンタクト層140aおよびnクラッド層140bは、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
そして、公知の手段により積層半導体層100の一部を除去して、nコンタクト層140aの一部を露出させ、半導体層露出面140cを形成する。
最後に、第1電極190および第2電極200のそれぞれの表面の一部(開口部)を除いて、透光性電極170の表面、積層半導体層100の表面および側面を覆うように、SiO2からなる保護層210を形成する。
以上により、半導体発光素子1が得られる。
次に、透光性電極170に設けられた貫通孔180について説明する。
貫通孔180を設けない状態において、電流集中が起こっている領域では、発光層150の発光効率が低下する。この集中している電流を貫通孔180により発光層150に分散することで発光効率が向上する。すなわち、貫通孔180の開口率と配置を適正化することで、電流の流れを制御し、発光層150へ電流を均一に供給し、発光層150の発光効率を高めることができる。
また、透光性電極170は、発光層150から出射する光を約90%以上透過するように設けられているが、透過率が100%でないため、光の一部を吸収する。このため、透光性電極170の膜厚は、薄いほうが望ましく、さらに、透光性電極170に貫通孔180を設けてp型半導体層160の表面を露出させると、透光性電極170が吸収する光を抑制して、半導体発光素子1からの出射光量(放射エネルギ)を増加させる効果もある。
すなわち、透光性電極170に貫通孔180を多く設けると、表面が露出したp型半導体層160から出射した光は、透光性電極170により吸収されないため、半導体発光素子1からの出射光量が増加する。
しかし、透光性電極170に貫通孔180を多く設けると、透光性電極170とp型半導体層160との接触面積が減少し、接触抵抗が増加する。このため、半導体発光素子1の順方向電圧Vfが増大する。そして、半導体発光素子1の駆動電圧が上昇し、半導体発光素子1の発光効率が低下する。
p型半導体層160の表面が露出する割合は次のように設定されている。すなわち、透光性電極170の表面において、貫通孔180を設けない場合に、単位面積当たりに出射する光量が大きい領域は、貫通孔180によりp型半導体層160の表面が露出する割合を小さくし、単位面積当たりに出射する光量が小さい領域は、貫通孔180によりp型半導体層160の表面が露出する割合を大きくしている。すなわち、電界の向きに合わせて、開口率を変化させて発光層150へ供給される電流密度を均一化し、発光効率を高めている。第1電極190と第2電極200とを結ぶ線に沿って、開口率を変化させるのが望ましい。
図3は、透光性電極170に貫通孔180を設けない場合の、半導体発光素子1の断面模式図である。
単位面積当たりの光量が大きい領域Aは、透光性電極170側から見た場合、明るい領域であって、発光層150を流れる電流が多い(電流密度が高い)領域である。つまり、図3のIaで示すように、半導体発光素子1を流れる電流は、透光性電極170の領域Aに対応する発光層150の部分に多く流れている。一方、単位面積当たりの光量が小さい領域Cは、透光性電極170側から見た場合、暗い領域であって、図3のIcで示すように、発光層150を流れる電流が低い(電流密度が低い)領域である。そして、透光性電極170の領域Bに対応する発光層150を流れる電流(Ib)は、領域Aに対応する発光層150を流れる電流Iaと領域Cに対応する発光層150を流れる電流Icとの間の電流となる。なお、電流Ia、Ib、Icは模式的に示したものであって、実際の半導体発光素子1では、発光層150内を広がって流れている。
なお、単位面積当たりの光量が大きい領域Aは第2電極200に近接した領域であって、単位面積当たりの光量が小さい領域Cは第1電極190に近接した領域である。このように、透光性電極170の単位面積当たりの光量の分布は、第1電極190と第2電極200との間において、第1電極190から第2電極200に流れる電流の半導体発光素子1における分布(電流分布)によって決まる。
これに対し、本実施の形態では、電流密度の高い領域Aでは、p型半導体層160の表面が露出する割合を小さくし、透光性電極170とp型半導体層160との接触抵抗の増加を抑制している。一方、電流密度の低い領域Cでは、p型半導体層160の表面が露出する割合を大きくし、接触抵抗の増加を抑制するよりも、発光層150の出射する光の取り出しを優先するようにしている。これにより、半導体発光素子1の出射光量Poを増加させるとともに、順方向電圧Vfの増大を抑制している。
図4は、透光性電極170に貫通孔180を設ける領域と半導体発光素子1の出射光量Po(mW)と順方向電圧Vf(V)との関係を調べた実験例を説明する図である。ここでは、貫通孔180の部分を除いて、図1に示したのと同様の構成の半導体発光素子1を用いている。そして、貫通孔180は、領域A、Cのいずれか1つの領域にのみ設けている。なお、順方向電流Ifは20mAである。
貫通孔180の直径dは3μmである。図4においては、領域Aで貫通孔180が配列される正三角形の一辺長pa(μm)、領域Cで貫通孔180が配列される正三角形の一辺長pc(μm)により(pa、−、pc)で表記している。そして、「−」は、貫通孔180が設けられていないことを示している。図4では、一辺長pa、pcはすべて6μmとしている。よって、例えば領域Aにのみ貫通孔180を設けた場合を#A(6、−、−)と表記している。
図4では、一辺長p(pa、pb、pc)が6μmの場合を示したが、9μm、12μmの場合も同様であった。
ここでは、第2電極200に近接する領域が、単位面積当たりの光量が大きく、発光層150を流れる電流が多い(電流密度が高い)とし、第1電極190に近接する領域が、単位面積当たりの光量が小さく、発光層150を流れる電流が少ない(電流密度が低い)とする。
図5(a)は、透光性電極170の表面を2つの領域(領域A、B)に分けている。そして、単位面積当たりの光量が大きく、発光層150を流れる電流が多い(電流密度が高い)、第2電極200に近接する領域Aには貫通孔を設けていない。一方、単位面積当たりの光量が小さく、発光層150を流れる電流が少ない(電流密度が低い)、第1電極190に近接する領域Bには、貫通孔180を設けている。
このような場合であっても、半導体発光素子1の出射光量Poを増加させるとともに、順方向電圧Vfの増大が抑制できる。
このような場合であっても、半導体発光素子1の出射光量Poを増加させるとともに、順方向電圧Vfの増大が抑制できる。
なお、図5(a)、(b)における領域Aと領域Bとは、必ずしも透光性電極170の表面を2等分して設ける必要はなく、適宜設定すればよい。
このような場合であっても、半導体発光素子1の出射光量Poを増加させるとともに、順方向電圧Vfの増大が抑制できる。
なお、領域A、B、Cは、必ずしも透光性電極170の表面を3等分して設ける必要はなく、適宜設定すればよい。
表1には、実施例1〜4および比較例1、2のそれぞれの半導体発光素子1の透光性電極170に設けられる貫通孔180の構成および評価結果として、順方向電流Ifを20mA流した時の出射光量Po(mW)および順方向電圧Vf(V)を示している。このときの発光波長は、450nmであった。
実施例1〜4および比較例1、2のそれぞれの半導体発光素子1は、透光性電極170に設けられる貫通孔180を除いて、図1に示したのと同様の構成を有している。
そして、実施例1〜4においては、図1に示したように、透光性電極170は領域A、B、Cに分けられ、それぞれの領域に、表1に示す正三角形の一辺長p(pa、pb、pc)で、貫通孔180が設けられている。貫通孔180の直径dは3μmである。実施例1〜4では、いずれにおいても、領域Cが領域Aに比べ、p型半導体層160の表面が露出する割合が高くなっている。なお、p型半導体層160が露出する割合(開口率)は、貫通孔180が配置される正三角形の一辺長p(pa、pb、pc)が6μmである場合は20%、9μmである場合は10%、12μmである場合は5%である。表1では()内に示している。
一方、比較例1は、透光性電極170に貫通孔180を設けていない。この場合、第2電極200に近接する領域(実施例1〜4においては領域A)の単位面積当たりの光量が大きく、第1電極190に近接する領域(実施例1〜4においては領域C)の単位面積当たりの光量が小さくなっている。
そして、比較例2は、正三角形の一辺長p(pa、pb、pc)を6μmとして、透光性電極170に貫通孔180が一様に設けられている。
表1および図6から分かるように、実施例1〜4では、出射光量Po(mW)が23.8mW〜22.1mWと、透光性電極170に貫通孔180を設けない比較例1の20.0mWに比べ、いずれも増加している。
一方、透光性電極170に貫通孔180を一様に設けた比較例2では、出射光量Po(mW)が21.1mWと、透光性電極170に貫通孔180を設けない比較例1の20.0mWに比べ増加している。しかし、比較例2の順方向電圧Vf(V)は3.14Vと、比較例1の3.07Vに比べ大幅に増大している。
これに対し、実施例1〜4では、順方向電圧Vf(V)が3.06V〜3.09Vと、比較例1の3.07Vに近い値に維持され、貫通孔180を設けることによる順方向電圧Vf(V)の増大が抑制されている。
Claims (13)
- n型のIII−V族半導体の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に当該第1半導体層に接して設けられ、通電により発光するIII−V族半導体の発光層と、
前記発光層上に当該発光層に接して設けられ、p型のIII−V族半導体の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に当該第2半導体層に接して設けられ、前記発光層が出射する光に対して透過性を有する透光性電極と、
前記透光性電極上の一部に当該透光性電極に接して設けられ、前記発光層に通電するための一方の端子となる第1電極と、
前記第1半導体層に接続されるとともに、前記第1電極と同一面側に設けられ、前記発光層に通電するための他方の端子となる第2電極と、を備え、
前記透光性電極は、前記第1電極に近接する領域に、前記第2半導体層の表面が露出するように厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が設けられるとともに、
前記透光性電極は、前記第2電極に近接する領域に、前記第2半導体層の表面が露出するように厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられていないか、または、当該第2半導体層の表面が露出するように厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が当該第2半導体層の表面が露出する割合(開口率)において前記第1電極に近接する領域よりも小さく設けられているかのいずれかであって、
前記第1半導体層は、前記第2電極に接続されるコンタクト層と前記発光層に接するクラッド層とからなり、当該コンタクト層の不純物濃度と当該コンタクト層の厚さとの積が1×1014cm−2〜1×1016cm−2であり、
前記透光性電極は、シート抵抗が5Ω/□〜50Ω/□であることを特徴とする半導体発光素子。 - 前記第1電極に近接する領域における前記開口率は、10%〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
- 前記第2電極に近接する領域における前記開口率は、15%以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
- 前記透光性電極は、前記第1電極に近接する領域と前記第2電極に近接する領域との間の中間領域に、前記第2半導体層の表面が露出するように厚さ方向に貫通する複数の貫通孔がさらに設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記第1電極に近接する領域の開口率1が、前記第2電極に近接する領域の開口率2より大きく、当該第1電極に近接する領域と当該第2電極に近接する領域との間の中間領域の開口率3は、開口率1と開口率2の間の値であることを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
- 前記透光性電極に設けられる前記複数の貫通孔による開口率は、前記第1電極と前記第2電極を結ぶ線に沿って変化していることを特徴とする請求項4または5に記載の半導体発光素子。
- 前記半導体発光素子の平面形状は、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上の長方形であって、前記第1電極と前記第2電極とが、長方形の長手方向の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記開口率は、前記複数の貫通孔の密度または大きさによって設定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記透光性電極は、酸化物導電材料で構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記第2半導体層が、前記透光性電極に接するコンタクト層と、前記発光層に接するクラッド層とからなり、当該コンタクト層の当該透光性電極に接する部分が当該コンタクト層の当該クラッド層に接触する部分よりMgの添加量が多く構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記III−V族半導体が、III族窒化物半導体であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記貫通孔の幅は、1μm〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
- 前記透光性電極の厚さは、50nm〜400nmであることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
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