JP5566267B2 - コンクリート構造物の補強工法 - Google Patents
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Description
(a)Al系めっき鋼板の場合は、接着面をAl系めっき層のまま、あるいはその上に化成処理皮膜が形成された状態とし、その表面がRa:0.2〜5.0μmの表面粗さに調整されていること。
(b)Mg含有Zn系めっき鋼板の場合は、接着面をめっき層の上に化成処理皮膜が形成した状態とし、その表面がRa:0.2〜5.0μmの表面粗さに調整されていること。
(1)補強鋼板として、少なくとも片面に、表面粗さRaが0.2〜5.0μmに調整されたAl系めっき層の表面であって、めっき後に機械的除去手段による粗面化を施していない表面(「表面A」という)を有する板厚2.5〜10.0mmの溶融Al系めっき鋼板を採用し、接着剤層と接する補強鋼板の表面を前記表面Aとすること。
(2)補強鋼板として、少なくとも片面に、Al系めっき層およびその上に形成された化成処理皮膜を有し、かつ表面粗さRaが0.2〜5.0μmに調整された前記化成処理皮膜の表面であって、めっき後に機械的除去手段による粗面化を施していない表面(「表面A」という)を有する板厚2.5〜10.0mmの溶融Al系めっき鋼板を採用し、接着剤層と接する補強鋼板の表面を前記表面Aとすること。
(3)補強鋼板として、少なくとも片面に、Mg含有Zn系めっき層およびその上に形成された化成処理皮膜を有し、かつ表面粗さRaが0.2〜5.0μmに調整された前記化成処理皮膜の表面であって、めっき後に機械的除去手段による粗面化を施していない表面(「表面A」という)を有する板厚2.5〜10.0mmのMg含有溶融Zn系めっき鋼板を採用し、接着剤層と接する補強鋼板の表面を前記表面Aとすること。
(i)耐食性の良好なAl系めっき鋼板またはMg含有Zn系めっき鋼板を補強鋼板に使用することができるので、従来の鋼板接着工法と比較して補強工事後の耐久寿命が向上する。
(ii)補強鋼板表面の煩雑な前処理(ショットブラストや防錆プライマー塗布など)や、補強鋼板外表面の塗装が省略できるので、コスト低減および工期短縮化の面で有利となる。
(iii)床版の下面など、繰り返しの撓み変形による引張応力が付与される箇所の補強に特に有効である他、各種コンクリート構造物の耐震補強やトンネル内壁の補強などにおいても上記(i)(ii)の利点が享受できる。
また本発明の工法は既設コンクリート構造物を撤去することなくそのまま利用するものであり、セメント系廃棄物の多量発生および新たなセメント生産を伴うことがないので、地球環境にも優しい。
従って本発明は、鋼板接着工法の更なる普及を通じて既設コンクリート構造物の長寿命化および安全性向上に寄与するものである。
本発明に適用する補強鋼板としては、従来から鋼板接着工法で使用されている補強鋼板の鋼板基材をベースとして耐食性めっきを施したものが使用できる。具体的には、普通鋼熱延鋼板を基材として溶融めっき法により耐食性めっきを施したAl系またはMg含有Zn系めっき鋼板が好適な対象となる。
Al系めっき層とは、いわゆる純Alめっき、またはAlを40質量%以上含有する合金めっき層をいう。具体的な成分組成としては、質量%で、Si:0〜13.0%、Zn:0〜58.0%、Mg:0〜7.0%、残部Alおよび不可避的不純物からなり、かつAl+Mg:42%以上、好ましくは45%以上を満たす組成が挙げられる。AlおよびMgは接着剤との接合強度を高める上で有効な元素である。めっき浴中のAl含有量が42質量%未満の場合にはMgを添加してAlとMgの合計含有量が42質量%以上となるようにすることが望ましい。溶融めっき法の場合、めっき層組成は、めっき浴組成をほぼ反映したものとなるが、鋼板基材に由来するFeが不可避的不純物として若干(通常は2.0質量%以下)含有される(後述のMg含有Zn系めっきにおいて同じ)。Al系めっき層の片面当たりの平均厚さは10μm以上とすることが望ましい。通常は10〜80μmの範囲とすればよい。
本発明の鋼板接着工法は、基本的に従来の鋼板接着工法の手順に従って実施することができる。ただし、従来は重要な工程であったショットブラスト処理、防錆プライマー塗布、外表面の塗装が省略可能である。以下に、床版の下面を補強する場合を例に、施工手順を例示する。
上述の鋼板を用意し、所定の寸法に切断する。
2.孔開け加工
鋼板の所定箇所にアンカーボルト挿入孔、接着剤注入口、エア抜き孔等となる孔を作製する。
3.曲げ加工
床版の下面形状に応じて、適宜曲げ加工を行い、補強鋼板とする。
以上の工程は工場内で実施され、以下の工程は施工現場で実施される。
接着剤と接触するコンクリート表面を手入れする。亀裂等の劣化部分は必要に応じて補修しておく。
5.アンカー設置
補強鋼板を取り付けるためのアンカーボルトをコンクリート面に設置する。
6.補強鋼板の取り付け
前記アンカーボルトにより、補強鋼板をコンクリート面に沿って取り付ける。その際、接着剤が充填される空隙を確保しておく。接着剤層の平均厚さは1〜10mmの範囲とすることが望ましい。隣り合う鋼板部材同士は、両者にまたがる鋼板部材を用いて外側からボルト等で固定するといった手法により締結することができる。
7.シール処理
補強鋼板の端部に生じる開口部や目地部などをシール材により封止する。
8.注入パイプ、エア抜きパイプ取り付け
補強鋼板の接着剤注入口にパイプ状部材を取り付ける。必要に応じてエア抜き孔にもパイプ状部材を取り付ける。
9.接着剤の注入
接着剤注入口のパイプ状部材にグラウト送給ホースを接続して、接着剤のグラウトを注入する。接着剤は従来の鋼板接着工法で実績のある2液混合型エポキシ樹脂系接着剤が適用できる。コンクリートと補強鋼板の間の空隙に接着剤が充填されたことが確認された時点で注入を終了する。
10.仕上げ
接着剤注入口、エア抜き孔などのパイプ状部材を撤去し、その部分を封止する。
11.タッチアップ
補強鋼板の端面、孔開け部などに存在する鋼素地露出部の樹脂による被覆や、施工中に生じた疵の手入れを行う。
従来はこのあと補強鋼板外表面の塗装(中塗り・上塗り)を行う必要があるが、本発明の鋼板接着工法ではめっき層により耐食性が確保されるので、塗装を省略できる。ただし、意匠性付与の目的で軽塗装を施してもよい。
〔化成処理〕
・記号A;クロムフリー有機処理(特許第3927167号により公知の技術)、平均膜厚約2μm
・記号B;クロムフリー無機処理(特許第3302684号により公知の技術)、平均膜厚約0.3μm
・記号C;リン酸塩処理、リン酸塩結晶の平均付着量約2g/m2
・記号D;クロメート無機処理、平均膜厚約0.2μm
・記号E;クロメート有機処理(主成分はウレタン樹脂)、平均膜厚約1.5μm
2 補強鋼板
3 接着剤層
4 シール材
10 橋脚
11 床版
12 舗装
21 鋼板基材
22 防錆塗膜
23 耐食性めっき層
24 化成処理皮膜
Claims (10)
- コンクリート構造物の表面に接着剤層を介して補強鋼板を貼り付けることにより当該コンクリート構造物を補強する工法において、
補強鋼板として、少なくとも片面に、表面粗さRaが0.2〜5.0μmに調整されたAl系めっき層の表面であって、めっき後に機械的除去手段による粗面化を施していない表面(「表面A」という)を有する板厚2.5〜10.0mmの溶融Al系めっき鋼板を採用し、前記接着剤層と接する補強鋼板の表面を前記表面Aとすることを特徴とするコンクリート構造物の補強工法。 - コンクリート構造物の表面に接着剤層を介して補強鋼板を貼り付けることにより当該コンクリート構造物を補強する工法において、
補強鋼板として、少なくとも片面に、Al系めっき層およびその上に形成された化成処理皮膜を有し、かつ表面粗さRaが0.2〜5.0μmに調整された前記化成処理皮膜の表面であって、めっき後に機械的除去手段による粗面化を施していない表面(「表面A」という)を有する板厚2.5〜10.0mmの溶融Al系めっき鋼板を採用し、前記接着剤層と接する補強鋼板の表面を前記表面Aとすることを特徴とするコンクリート構造物の補強工法。 - 化成処理皮膜は、クロムフリー有機処理、クロムフリー無機処理、リン酸塩処理、クロメート無機処理、クロメート有機処理の1種以上の処理によって形成される皮膜である請求項2に記載のコンクリート構造物の補強工法。
- Al系めっき層は、質量%で、Si:0〜13.0%、Zn:0〜58.0%、Mg:0〜7.0%、残部Alおよび不可避的不純物からなり、かつAl+Mg:42%以上を満たす組成を有するものである、請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート構造物の補強工法。
- コンクリート構造物の表面に接着剤層を介して補強鋼板を貼り付けることにより当該コンクリート構造物を補強する工法において、
補強鋼板として、少なくとも片面に、Mg含有Zn系めっき層およびその上に形成された化成処理皮膜を有し、かつ表面粗さRaが0.2〜5.0μmに調整された前記化成処理皮膜の表面であって、めっき後に機械的除去手段による粗面化を施していない表面(「表面A」という)を有する板厚2.5〜10.0mmのMg含有溶融Zn系めっき鋼板を採用し、前記接着剤層と接する補強鋼板の表面を前記表面Aとすることを特徴とするコンクリート構造物の補強工法。 - 化成処理皮膜は、クロムフリー有機処理、クロムフリー無機処理、クロムフリー有機無機複合処理、リン酸塩処理、クロメート無機処理、クロメート有機処理、クロメート有機無機複合処理の1種以上の処理によって形成される皮膜である請求項5に記載のコンクリート構造物の補強工法。
- Mg含有Zn系めっき層は、質量%で、Mg:0.5〜7.0%、Si:0〜1.0%、Al:0〜20.0%、Ni:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、B:0〜0.045%、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成を有するものである、請求項5または6に記載のコンクリート構造物の補強工法。
- 接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である請求項1〜7のいずれかに記載のコンクリート構造物の補強工法。
- コンクリート構造物は床版であり、その下部表面に補強鋼板を貼り付ける請求項1〜8のいずれかに記載のコンクリート構造物の補強工法。
- コンクリート構造物はトンネル内壁であり、その表面に補強鋼板を貼り付ける請求項1〜8のいずれかに記載のコンクリート構造物の補強工法。
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