JP5565115B2 - アルミニウム合金の製造方法 - Google Patents
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一方で、機械的強度、剛性、熱膨張係数に優れたアルミニウム合金の開発がされてきており、このような特性を持つアルミニウム合金を適用することによって、前記の構成部材などの大幅な軽量化を図ることが可能になっている。
粗大晶を抑制できれば破壊の起点を減らすことができ、微細粒子による強化も期待でき、さらに粗大晶がなければCuやMg添加による時効析出強化も可能になる。そこで、特許文献2にも見られるように、組織微細化を図るために液相線温度以上でアルミニウム溶湯に超音波を照射することが行われてきた。
また、特許文献2では強度を向上させるため液相線温度以上で超音波照射をして組織微細化を行っているが、剛性は必ずしも向上していない。また熱膨張係数については何の検討もなされていない。
また、必要により前記アルミニウム溶湯にMg:0.05〜1質量%を含有させてもよい。
このため、アルミニウム合金を自動車等各種車両のフレーム,ケース類や、工作機械の構成部材などの素材としての使用が可能となる。
3:ホーン 4:ネジ方式接続
5:制御ユニット 6:電気炉
7:るつぼ 8:熱電対
9:溶湯
以下にその詳細を説明する。
Si:15〜20質量%
Siはアルミニウム合金において単体で晶出して熱膨張係数を小さくする作用を有するので、熱膨張係数を小さくする観点からはその含有量は多いほど好ましい。線膨張係数αを19.3×10−6/℃以下にするためには、15%以上のSiを含有させる必要がある。また、晶出した単体Siは、アルミニウム合金中に分散して強化に寄与する。さらに、アルミニウム合金の剛性を向上させる作用がある。この効果はSiが15%以上で特に効果を発揮し、20%を超えると超音波を照射しても単体Siが粗大化しやすくなり、強度向上効果が低下してしまい、しかも、液相線温度が高くなってしまうため鋳造性が落ちてしまう。
PはAlP化合物を形成してSiの異質核として作用する。これによって、単体Siを微細化して均一に分散させる作用がある。この作用は0.004質量%以上で特に効果を発揮し、0.02質量%を超えると湯流れ性が悪くなり、鋳造性が低下してしまう。そこでPの添加量は0.004〜0.02質量%の範囲にする。
NiはCuが存在する状態ではAl-Ni-Cu系化合物として晶出し、前記単体Siとともに剛性を向上させ熱膨張係数を低下させる作用がある。またこの作用は0.5質量%以上で特に効果を発揮し、6質量%を超えると液相線温度が高くなるため,鋳造性が悪くなる。そこでNiの添加量は0.5〜6質量%の範囲にすることが好ましい。
Cuは機械的強度を向上させる作用がある。またAl-Ni-Cu系化合物として剛性も向上させて、熱膨張係数を下げる。この作用は2質量%以上の添加で顕著となるが、8質量%を超えると化合物の粗大化が進み機械的強度が低下してしさらに耐食性も低下してしまう。そこでCuの添加量は2〜8質量%にすることが好ましい。
FeはSiを大量に含むアルミニウム合金においてAl-Fe-Si系化合物を晶出させ剛性を向上させて線膨張係数を下げる作用がある。この効果はFeが1質量%以上で顕著となるが、4質量%を超えると液相線温度が高くなるため、鋳造性が悪くなる。そこでFeの添加量は1〜4質量%にすることが好ましい。
MnはFeを含むアルミニウム合金溶湯を冷却・凝固させる際、粗大Al-Fe-Si系晶出物の生成を抑制する作用がある。この効果はMn/Fe比で0.4〜0.6で顕著となる。そこで、Mn量=0.4〜0.6Fe量とするため、0.4〜2.4質量%とすることが好ましい。
Crは初晶Siを微細かつ均一に分散させ機械的強度を向上させる。併せて微細なAl-Cr系化合物が晶出するため、剛性向上に寄与する。また微細なAl-Cr系化合物は超音波を照射したときにはAl-Fe系化合物の異質核として作用するため、Al-Fe系化合物を微細に分散させる効果がある。この効果は0.15質量%以上で顕著となり、0.55質量%を超えると粗大な化合物が形成され機械的強度が低下してしまう。そこでCrの添加量は0.15〜0.55質量%とすることが好ましい。
Tiは組織を微細かつ均一に分散させる作用がある。また微細なTi系化合物は超音波を照射したときにはAl-Fe系化合物の異質核として作用するため、Al-Fe系化合物を微細に分散させる効果がある。この作用は、Tiが0.15質量%以上になると顕著となり、逆に0.4質量%を超えると粗大な化合物が形成され機械的強度の低下を招く。そこでTi添加量は0.15〜0.4質量%にすることが好ましい。
Mgは機械的強度を向上させる作用がある。特に超音波照射する際に、Mgの添加によってキャビテーション(微細な泡)が発生しやすくなるため、微細化効果を発揮する。この作用は0.05質量%以上の添加で顕著となり、1質量%を超えると伸びが低下し鋳造性が悪化する。そこでMgの添加量は0.05%〜1質量%にすることが好ましい。
本発明方法では、上記の添加元素と不可避不純物からな組成のアルミニウム合金溶湯に、液相線以上の温度で超音波を照射し、その後、超音波照射終了から100秒以内に20℃/秒以上の冷却速度で鋳造を行っている。
用いる超音波処理用の装置としては、図1に示すような、超音波ジェネレータ1、振動子2、ホーン3と制御ユニット5から構成されているものが好ましい。
また、重力鋳造法に限らず、DC鋳造法、ダイカスト法やその他の鋳造法においても、所定の位置で超音波照射することによって、アルミニウム溶湯の微細化効果を得ることができる。
冷却速度は20℃/秒以上にする必要がある。冷却速度が20℃/秒より遅いと、超音波で処理を行って核を分散させても晶出物が成長する時間があるため、粗大化する危険がある。晶出物が粗大化するとそれを起点として破壊が起こり、機械的強度が低くなってしまう。
以下、具体的な製造事例を実施例によって説明する。
表1に示した組成のアルミニウム合金溶湯を溶解炉内に配置した坩堝内に用意した。次に、Nb-Mo合金製の超音波ホーンを予熱炉内で予熱した後、坩堝内のアルミ二ウム合金溶湯中にホーンを浸漬させて超音波を照射した。この時使用した超音波発生装置は、VIATECH社製の超音波発生装置であり、周波数20〜22kHz、音響出力2.4kWに設定し超音波照射を行った。ホーンの振動振幅は20μm(p−p)とした。坩堝を取り出し、超音波照射終了から20秒後に、冷却速度20℃/sで、金型に重力鋳造した。
なお、溶湯の液相線は616℃であり鋳造性に問題はなかった。
その結果を表2に示す。
なお、晶出物サイズ,晶出物の面積率は画像解析を行って求めた。また、σBは引張試験を行って求めた。ヤング率は引張試験を行って得られる応力‐ひずみ線図における弾性域の傾きから求めた。さらに、比剛性はヤング率/密度から算出し、密度はアルキメデス法で測定した。
最後に、線膨張係数は30℃から150℃に加熱したときの熱膨張を測定して求めた。
アルミニウム合金の組成、超音波照射終了から鋳造までの時間、冷却速度を表1のように変化させ、その他は実施例1と同様の方法で超音波を照射し、鋳造を行った。そして、実施例1と同様に、晶出物サイズ、晶出物の面積率、σB、ヤング率、比剛性、線膨張係数、液相線温度、鋳造性を測定、算出した。その結果を表2に示す。
また、図3(a)〜(d)に、実施例2及び8〜10で製造された鋳物の中心部のミクロ組織の顕微鏡写真を示す。
同様に、アルミニウム合金の組成、超音波照射終了から鋳造までの時間、冷却速度を表1のように変化させ、その他は実施例1と同様の方法で超音波を照射し、鋳造を行った。そして、実施例1と同様に、晶出物サイズ、晶出物の面積率、σB、ヤング率、比剛性、線膨張係数、液相線温度、鋳造性を測定、算出した。その結果を表2に併せて示す。
また、図3(e)〜(h)に、比較例10〜13で製造された鋳物の中心部のミクロ組織の顕微鏡写真を示す。
上記実施例2、8〜10及び比較例10〜13で製造されたアルミニウム合金の顕微鏡組織より、超音波終了から鋳造までの時間が短く、冷却速度を速くすると単体Siの結晶及び金属間化合物の粗大化を防止することができることが確認できる。
このため長時間保持すると溶湯中のガス量が増えて内部品質を悪くする虞がある。これを防ぐために鋳造温度を低くすると湯流れが悪くなり、湯周り不良を起こす危険がある。
比較例3ではSi添加量は充分であるが、超音波照射がないため、冷却速度を20℃/秒にしても初晶Siが粗大化し強度が落ちてしまい、比剛性も不十分であった。
比較例4では、比較例3と同一の組成で冷却速度を向上させたため、強度が改善した。晶出物の面積率は20%あったが密度が高いため比剛性は不十分であった。
比較例6では、Si添加量が15%であるが、超音波照射がないと初晶Siが粗大化して強度が落ちてしまった。
比較例7では、Siが25%含まれており、超音波を照射しても単体Siが粗大化し,また単体Siが多すぎて強度を改善しきれなかった。また、液相線も高く、鋳造性が悪かった。
比較例9では、晶出物の量が多過ぎるため、超音波照射を行っても強度を改善しきれず、液相線も高く鋳造性が悪かった。
比較例10では、超音波照射を行っていないため、組織が粗大で強度が低かった。
比較例11では、冷却速度が遅いため、超音波で処理を行っても組織が粗大化し、強度が低かった。
比較例13では、実施例8と組成以外の条件は同じであるが、強度向上に有効なCu,Mgを添加していないため、強度が低い。実施例1〜3もCu,Mgを添加していないが、初晶Siによる分散強化で強度は維持できる。しかし、本組成では、Siが含まれているFeとともにAl-Fe-Si系化合物としても晶出するために、単体Siが減り、分散強化も低下してしまったと推測される。
Claims (2)
- 257GPa以上の引張強度、31GPa/(g/cm 3 )以上の比剛性、及び18.8 (10 -6 (℃ -1 ))以下の膨張係数を有するアルミニウム合金の製造方法であって、
Si:15〜20質量%、P:0.004〜0.02質量%、Ni:0.5〜6質量%、Cu:2〜8質量%、Fe:1〜4質量%、Mn:0.4〜2.4質量%、Cr:0.15〜0.55質量%、Ti:0.15〜0.4質量%を含み、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金溶湯に、
液相線以上で超音波を照射し、超音波照射終了後100秒以内に20℃/秒以上の冷却速度で鋳造を行うことを特徴とするアルミニウム合金の製造方法。 - 前記アルミニウム合金溶湯に、さらにMg:0.05〜1質量%を含ませておくことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金の製造方法。
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