JP5168069B2 - アルミニウム合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金の製造方法に関するもので、特にAl‐Fe系化合物を微細に晶出させることができるアルミニウム合金の製造方法に関する。
耐摩耗性に優れたアルミニウム合金として多量のSiを含有するアルミニウム合金が広く用いられている。さらに、多量のSiを含むアルミニウム合金の剛性を改善するためにFeを含有させることもよく知られている。しかし、多量のSiとFeを含むアルミニウム合金を製造するに際し、溶湯を冷却凝固する過程で晶出する初晶Siなどの単体Si、Al‐Fe系化合物が粗大化してしまい、これにより強度、伸び、疲労などの機械特性が低下し、加工性が低下してしまうという問題があった。
特に、Al‐Fe系化合物は硬度が高く針状に晶出するため、押し出し成形や圧延成形などの二次加工の障害となっていた。
これに対し、組織微細化を図るためのプロセスとして、溶湯への微細化剤の添加とともに、超音波鋳造法が知られている。このうち、超音波鋳造法は、アルミニウム合金溶湯の凝固時、すなわち液相線温度から固相線温度の間にアルミニウム合金溶湯に超音波振動を付与することにより、粗大な晶出物の晶出を抑制するものであり、初晶デンドライト、初晶Siなどの単体Si、様々な組織の微細化が可能であることが報告されている。しかし、超音波鋳造法を用いても、Al‐Fe系化合物の微細化効果は満足できるものではなかった。
特許文献1には、Feを含むアルミニウム合金溶湯に対し液相線をまたいで超音波振動を付与し、晶出するAl‐Fe系化合物を微細化する方法が提案されている。
また、特許文献2には、溶湯が液相線を下回る前に、溶湯に超音波振動を付与し、結晶核の芽であるエンブリオの数を増大することにより、晶出物を微細化する方法が提案されている。
特開2007‐239102号公報 特開2007‐216239号公報
しかしながら、特許文献1、2で提案された方法でもAl‐Fe系化合物の微細化効果は満足できるものではなかった。
特許文献1に記載された方法は、溶融状態のFeを含むアルミニウム合金溶湯が凝固するときに超音波振動を付与することにより、Al‐Fe系化合物の初晶を微細粉粒化し、Feを含むアルミニウム合金中のAl‐Fe系化合物を微細粒状にするというものである。この方法は、結晶が晶出し始める凝固初期の核形成時に液相線をまたいで超音波を付与することにより初晶は充分に微細粉粒化されるため、固相線まで超音波振動を付与する必要がないというメリットがある。しかし、この方法は、すでに晶出したAl‐Fe系化合物を微粉砕するものであるため、Al‐Fe系化合物の微細化効果は満足できるものではなかった。
特許文献2に記載された方法は、溶湯が液相線を下回る前に、すなわち溶湯の液相線温度以上で、溶湯に超音波振動を付与し、結晶核の芽であるエンブリオの数を増大することにより、晶出物を微細化するというものである。溶湯の液相線温度以上で超音波振動を付与された溶湯を液相線温度以下に冷却したとき、超音波振動によりその数を増大されたエンブリオがそれぞれ結晶核に成長し、この結晶核を核として晶出物が晶出するため、晶出物は微細化される。
この方法は、溶湯が液相線温度を下回る前に溶湯に超音波振動を付与するため、鋳型内で超音波振動を付与する必要がない。よって、鋳型内に超音波振動を付与する機構を設ける必要がなく、ダイカスト法など凝固時間の短い鋳造法にも適用可能であるなど多くのメリットがある。
しかも、結晶核の芽であるエンブリオを増大させるものであるから、晶出物を微細化する特許文献1に記載の方法よりも晶出物の微細化効果は大きい。しかし、この方法でも、Al‐Fe系化合物の微細化の程度は満足できるものではなかった。
本発明は、上記の問題を解決するもので、多量のSiとFeを含むアルミニウム合金の製造方法において、溶湯を冷却凝固する過程で晶出する晶出物、特にAl‐Fe系晶出物の粗大化を防止し、微細に晶出させるアルミニウム合金の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のアルミニウム合金の製造方法は、その目的を達成するため、Si:15〜20質量%、Fe:1〜4質量%、P:0.004〜0.02質量%、Ti:0.15〜0.4質量%、Cr:0.15〜0.55質量%、Mn:0.4〜2.4質量%を、Si含有量が1.7×Fe含有量+13〜13.7質量%、Ti含有量が0.05〜0.07×Fe含有量+0.1質量%、Cr含有量が0.1×Fe含有量+0.05〜0.15質量%、Mn含有量が0.4〜0.6×Fe含有量なる関係で含み、残部がAlと不可避的不純物からなる、鋳型内、保持炉内、坩堝内、或いは保持炉から鋳型への流路内のアルミニウム合金溶湯に、液相線温度以上で超音波振動を照射し、その後に前記溶湯を凝固させることを特徴とする。
前記アルミニウム合金溶湯に、さらにTi:0.005〜0.05質量%、B:0.0005〜0.02質量%分のTiB2を存在させておくとよい。
また、冷却速度が速いほどよりAl‐Fe系晶出物の微細化が進む。そのため、冷却速度は20℃/sec以上であることが好ましい。
本発明のアルミニウム合金の製造方法によれば、アルミニウム合金溶湯に液相線温度以上で超音波振動を照射することにより、アルミニウム溶湯から晶出する晶出物の結晶核の芽であるエンブリオを増大させて、多数の微細な結晶核を生成し、微細な晶出物を晶出させることができる。その上、アルミニウム合金溶湯の成分、組成範囲を上記のとおりに調整したことにより、各種晶出物を短時間の間に、しかもAl‐Ti系晶出物、Al‐Cr系晶出物、Al‐Fe系晶出物、単体Siの順となるように晶出させて、Al‐Fe系晶出物がAl‐Ti系晶出物およびAl‐Cr系晶出物を核として晶出するようにした。
Al‐Fe系晶出物の核となるAl‐Ti系晶出物およびAl‐Cr系晶出物は、液相線温度以上での超音波振動の照射によりアルミニウム合金溶湯中に微細な状態で多数存在するため、Al‐Fe系晶出物は微細に晶出することができる。
アルミニウム合金溶湯に、さらにTi:0.005〜0.05質量%、B:0.0005〜0.02質量%分のTiB2を存在させておくことにより、微細なTiB2を存在させた状態のアルミニウム合金に液相線温度以上で超音波を照射することになり、TiB2がAl‐Ti系晶出物、Al‐Cr系晶出物の核となって、Al‐Fe系晶出物をさらに微細に晶出することができる。
本発明者等は、多量のSiとFeを含むアルミニウム合金の製造方法において、溶湯の冷却・凝固の過程で晶出する晶出物、特にAl‐Fe系晶出物の粗大化を防止し、微細に晶出させる方法について、鋭意検討を重ねてきた。
特に、溶湯が液相線を下回る前に、溶湯に超音波振動を付与し、結晶核の芽であるエンブリオの数を増大することにより晶出物を微細化する、特許文献2で提案された方法を多量のSiとFeを含むアルミニウム合金の製造方法に適用した場合におけるAl‐Fe系の晶出物の微細化について検討を重ねた。
その結果、多量のSiとFeを含むアルミニウム合金溶湯に対し、溶湯が液相線を下回る前に、溶湯に超音波振動を付与すると、単体Siの晶出については高い微細化効果を示すものの、Al‐Fe系の晶出物については、微細化はするが粗大な晶出物も残るため、全体として微細化効果が低いことを見出した。
この理由は明確でないが、液相線以上の温度の溶湯に超音波振動を付与すると、結晶核の芽であるエンブリオの数が増大することに加え、溶湯中の介在物の濡れ性が向上し、異種核として機能して晶出物の微細化効果が得られると考えられる。単体Siの微細化にはこの効果が加わるものと考えられるが、Al‐Fe系の晶出物についてはこの効果が少ないと考えられる。
そこで、Al‐Fe系の化合物の晶出における異種核として機能する介在物について検討した。
アルミニウム合金溶湯にTiおよびCrを添加することにより晶出するAl‐Ti系の化合物およびAl‐Cr系の化合物はAl‐Fe系の化合物よりも融点が高い。しかも、溶湯との濡れ性が良好である。よって、Feを含むアルミニウム合金溶湯への液相線以上での超音波振動の照射によりエンブリオの数を増大させてAl‐Ti系の化合物およびAl‐Cr系の化合物を微細に晶出させ、このAl‐Ti系の化合物およびAl‐Cr系の化合物をAl‐Fe系の化合物晶出の際の異種核とすることにより、Al‐Fe系の化合物を微細に晶出させることができることを見出した。
すなわち、Feを含むアルミニウム合金溶湯の成分、組成範囲を、Al‐Ti系の化合物およびAl‐Cr系の化合物が晶出した後にAl‐Fe系の化合物が晶出するように調整し、アルミニウム合金への液相線以上での超音波振動により微細に晶出したAl‐Ti系の化合物およびAl‐Cr系の化合物を核にしてAl‐Fe系の化合物を晶出させることにより、Al‐Fe系晶出物を微細化させようとするものである。
Al‐Fe系晶出物をさらに微細化させるために、超音波処理前のアルミニウム合金溶湯中にTiB2を含んだAl-Ti-B合金を添加しておくとよい。こうすれば、Al‐Fe系晶出物の晶出時にアルミニウム合金溶湯中にTiB2がすでに微細粒子として存在しているため、これがAl‐Fe系晶出物の核になり、さらなる微細化が達成される。
また、Al‐Fe系晶出物をさらに微細化させるために、冷却速度は20℃/sec以上であることがより好ましい。冷却速度を変化させても成分組成が同一の場合は、各晶出物の晶出温度が同一であるため、冷却速度により各晶出物の晶出する順番が変化することはないが、冷却速度が速いほどよりAl‐Fe系晶出物の微細化が進み、さらなる微細化が達成される。
本発明におけるアルミニウム合金溶湯の成分、組成範囲について説明する。
Si:15〜20質量%
Siは、アルミニウム合金の耐摩耗性を向上させるために必須の元素であり、15〜20質量%の範囲で含有させる。Si含有量が、15質量%に満たないと充分な耐摩耗性が得られず、20質量%を超えるほどに多いと加工性が低下する。さらに、20質量%を超えると晶出温度が、Al-Fe系晶出物の晶出温度を超えてしまい、Al-Ti系の化合物およびAl-Cr系の化合物の異種核を単体Siが晶出する際に使用してしまうため,Al-Fe系晶出物の微細化が低下する恐れがある。
Al-Fe系の晶出物と単体Siを比較すると、Al-Fe系の晶出物の方が微細化し難くなる。このため、Al-Fe系の晶出温度以上で超音波処理を行ってAl-Fe系を先に晶出させることが好ましい。しかし、この処理でも単体Siに対しても同時に効果を出すために晶出温度差を小さくすることが必要となる。すなわち、晶出温度差が大きすぎると単体Si用に超音波処理を行う必要が出てきて,その温度がAl-Fe系の晶出温度を下回ってしまう。このような理由から、Al‐Fe系の晶出物と単体Siが晶出する温度差を極力小さくするために、後記のFe含有量との関係で、Si添加量を1.7×Fe含有量+13〜13.7質量%となるように調整することが好ましい。
Fe:1〜4質量%
Siを多量に含むアルミニウム合金において剛性ないし常温強度を高めるためにFeを含有させる。Fe含有量が、1質量%より少ないと剛性を高めるために必要な量のAl‐Fe系晶出物が得られず、4質量%より多いと加工性が低下する。さらに、4質量%を超えると、核となるTi,Cr添加量の増加も必要となる。このとき液相線が高くなり、鋳造温度を高くする必要がある。これにより溶湯中のガス量が増加し、鋳造欠陥が発生する。また、鋳造温度の上昇は耐火材寿命の低下を招くことにもなる。
P:0.004〜0.02質量%
Pは単体Siの微細化剤として働く。その作用を有効に発現させるためには0.004質量%の含有が必要である。しかしながら、Pを必要量以上いれてしまうと湯流れ性が悪くなり、湯まわり不良等の鋳造欠陥が発生しやすくなる。そこで、P含有量の上限は0.02質量%とする。
Ti:0.15〜0.4質量%
本発明では、Feを含むアルミニウム合金溶湯を冷却・凝固させる際、Al‐Fe系の化合物の晶出に先立ってAl‐Ti系の化合物を晶出させるために添加・含有させる。添加量が0.15質量%に満たないとAl‐Fe系化合物の晶出の際の核になるのに十分なAl‐Ti系化合物の晶出物が形成されない。逆に0.4質量%を超える程に多く添加すると、液相線が高くなり,鋳造温度を高くする必要がある。鋳造温度の上昇は、溶湯中のガス量の増加を招き、鋳造欠陥の原因となる。また、耐火材寿命の低下を招くことにもなる。
このとき、前記のFe含有量との関係で、Ti添加量を0.05〜0.07×Fe含有量+0.1質量とするとよい。一度の超音波照射で処理を行う必要があるため、Al-Fe系との晶出温度の差を小さくする目的でこのようにTi添加量とFe含有量の関係を定めた。
Cr:0.15〜0.55質量%
本発明では、Feを含むアルミニウム合金溶湯を冷却・凝固させる際、Al‐Fe系の化合物の晶出に先立ってAl‐Cr系の化合物を晶出させるために添加・含有させる。添加量が0.15質量%に満たないとAl‐Fe系化合物の晶出の際の核になるのに十分なAl‐Cr系化合物の晶出物が形成されない。逆に0.55質量%を超える程に多く添加すると、液相線が高くなり、鋳造温度を高くする必要がある。これにより溶湯中のガス量が増加し、鋳造欠陥が発生する。また、耐火材寿命の低下を招くこととなる。
このとき、前記のFe含有量との関係で、Cr添加量を0.1×Fe添加量+0.05〜0.15質量とするとよい。一度の超音波照射で処理を行う必要があるため、Al-Fe系との晶出温度の差を小さくする目的でこのようにCr添加量とFe含有量の関係を定めた。
Mn:0.4〜2.4質量%
Mnは、Feを含むアルミニウム合金溶湯を冷却・凝固させる際、粗大針状Al−Fe系晶出物の生成を抑制するために添加する。添加量が0.4質量%に満たないとその効果が低く、2.4質量%を超える程に多く添加すると粗大なAl(FeMn)Si金属間化合物が増大し、核が足りなくなるため伸びが低下してしまう。Cr、Tiを増やせば良いが、その場合液相線が高くなってしまうので、2.4質量%までの添加にする。
このとき、粗大針状Al−Fe系晶出物を塊状にするための必要量として前記のFe含有量との関係で、Mn添加量を0.4〜0.6×Fe含有量とするとよい。
Ti:0.005〜0.05質量%,B:0.0005〜0.02質量%分のTiB 2
Al‐Fe系晶出物をさらに微細化させるために、アルミニウム合金溶湯中にTi:0.005〜0.05質量%,B:0.0005〜0.02質量%分のTiB2を添加する。添加量がこれより少ないと微細化効果が期待できず、これより多く添加してもTiB2が凝集した粗大な化合物が形成され、伸びが低下する。また、これより多く添加すると、アルミニウム合金溶湯の粘性が上がり,鋳造性を阻害する。
各元素の組成範囲を上記のとおりに調整し、溶湯の液相線温度以上で当該アルミニウム合金溶湯に超音波振動を与えることによって、晶出物の晶出順を、Al‐Ti系、Al‐Cr系、Al‐Fe系、単体Siとすることができる。しかも、これら晶出物の晶出温度を近接した温度として、一回の超音波処理ですべての晶出物を微細に晶出させる。
超音波振動の付与は、振動発生器を溶湯中に浸漬して行うことが好ましい。溶湯としては、鋳型に鋳込まれた溶湯に限らず、保持炉ないし坩堝、あるいは保持炉から鋳型への流路内の溶湯に、例えば超音波ホーンを浸漬して行う。
なお、付与する超音波振動としては、振幅約20μm、周波数21.8kHz、出力2.4kW程度の超音波を5〜30秒程度の付与することが好ましい。
すなわち、前述したように、本発明では、先に晶出したAl‐Ti系晶出物およびAl‐Cr系晶出物がAl‐Fe系晶出物の核となりAl‐Fe系晶出物が微細に晶出するが、この微細化効果を発現させるためには、Al‐Ti系晶出物からAl‐Fe系晶出物までを75℃以内の温度範囲で晶出させる。その理由はAl‐Ti系晶出物の晶出温度とAl‐Fe系晶出物の晶出温度の差が75℃より大きいと、Al‐Fe系晶出物が晶出するまでの間にAl‐Ti系晶出物などが一部粗大に成長してしまいAl‐Fe系晶出物の核として機能しなくなる。
さらに、一度の超音波処理でAl-Ti系晶出物から単体Siまでを微細化させるために、Al‐Fe系晶出物と単体Siの晶出温度を20℃以内とし、各晶出物の晶出開始温度を80℃以内にすることが好ましい。
このように、各元素の組成範囲を上記のとおりに調整することにより、各種の晶出物の晶出順を制御し、しかもこれら晶出物の晶出温度を近接した温度としたことにより一回の超音波処理でAl‐Fe系晶出物を含むすべての晶出物を微細に晶出させることができた。
なお、超音波処理の冷却速度は早い方が好ましい。冷却速度が速くなるほど、より晶出物の微細化が進むことになる。本発明の超音波処理を適用する際には、20℃/sec以上の冷却速度とすることが好ましい。
以下、具体的な製造事例を実施例によって説明する。
実施例1〜9
炉内に配置した坩堝内において、TiとしてAl-10質量%Ti合金、CrとしてAl-5質量%Cr合金、FeとしてAl-5質量%Fe合金、MnとしてAl-10質量%Mn合金、SiとしてAl-25質量%Si合金を使用し、表1に記載の成分組成のアルミニウム合金溶湯を調製した。なお、実施例9では、TiB2を添加するためロッドハードナー(Al-5%Ti-1%B)を用いてアルミニウム合金溶湯を調製した。
次に超音波ホーンを溶湯内で予熱したあと、炉内徐却中の坩堝内の溶湯1kgに液相線以上で超音波振動を15秒付与し、坩堝をとりだして直径13mm,長さ100mmの銅製のランズレー鋳型に注湯して冷却速度93.2℃/secで凝固させた。
なお、各実施例において、Al‐Ti系晶出物の晶出温度がアルミニウム合金溶湯の液相線温度である。
このとき使用した超音波発生装置は、VIATECH社(ロシア)製の超音波発生装置であり、周波数21.8kHz、出力2.4kWに設定した。超音波振動を溶湯中に伝えるためのホーンは、Nb−Mo合金製で、ホーン先端はホーン直下の溶湯量を増加させるためにφ55mmのフランジ状にした。なお、ホーン先端の振幅は20μmである。
実施例10
実施例1〜9と同じ母合金を使用して、実施例5と同様の成分組成の合金溶湯を調整した後、冷却速度を27.0℃/secにした以外は、実施例1〜9と同じ処理を行った。
実施例11
実施例1〜9と同じ母合金を使用して、実施例5と同様の成分組成の合金溶湯を調整した後、冷却速度を5.7℃/secにした以外は、実施例1〜9と同じ処理を行った。
比較例1,2
実施例と同じ母合金を試用して、表1に記載の成分組成のアルミニウム合金溶湯を調製し、実施例と同じ処理を行った。ただし、比較例1(試験No.12)においてはCrおよびTiを添加していない。また、比較例2(試験No.13)においては超音波照射を行っていない。
表2に見るとおり、実施例である試験No.1〜11における晶出物の晶出順は、晶出物の晶出温度からみてAl‐Ti系晶出物,Al‐Cr系晶出物,Al‐Fe系晶出物,単体Siの順である。しかも、Al‐Ti系晶出物からAl‐Fe系晶出物までの晶出温度は75℃以内で、Al‐Fe系晶出物から単体Siまでの晶出温度は20℃以内、Al‐Ti系晶出物から単体Si晶出物までの晶出温度は80℃以内となっている。
図1は、実施例である試験No.8および9で製造されたアルミニウム合金の金属組織を示す顕微鏡写真である。図1(a),(b)の金属組織写真において、灰色部分はAl‐Fe系の化合物であり、黒色部分は単体Siの結晶である。試験No.1〜7及び10,11で製造されたアルミニウム合金からも試験No.8で製造されたアルミニウム合金(図1(a))とほぼ同一の金属組織をもつアルミニウム合金が得られている。
実施例である試験No.1〜11で製造されたアルミニウム合金の金属組織から、これらのアルミニウム合金にはAl‐Fe系の化合物が微細に晶出していることが確認された。特に試験No.9では、TiB2の添加によりAl‐Fe系晶出物のさらなる微細化が達成されていることが確認できる。
また、表3に実施例である試験No.5,10および11で製造されたアルミニウム合金の金属組織において、冷却速度の影響によるAl‐Fe系化合物および単体Siの粒径の変化を観察した結果を示した。
冷却速度が速いほど、より晶出物の微細化が進むことがわかる。これより、冷却速度は20℃/sec以上であることがより好ましいことが確認できる。
図2は、比較例1,2(試験No.12および13)で製造されたアルミニウム合金の金属組織を示す顕微鏡写真である。超音波照射をしていない比較例2で製造されたアルミニウム合金の金属組織(図2(b)は、粗大なAl−Fe系の化合物および粗大な単体Siの結晶が目立つ。比較例1で製造されたアルミニウム合金の金属組織(図2(a))からは、超音波照射によって比較例2よりも晶出物の組織微細化が進んでいるが、Ti,Crを添加してアルミニウム合金溶湯の組成を調整していないため組織微細化が不十分であることが確認できる。
本発明により製造されたアルミニウム合金の金属組織を示す図 比較例により製造されたアルミニウム合金の金属組織を示す図

Claims (3)

  1. Si:15〜20質量%、Fe:1〜4質量%、P:0.004〜0.02質量%、Ti:0.15〜0.4質量%、Cr:0.15〜0.55質量%、Mn:0.4〜2.4質量%を、Si含有量が1.7×Fe含有量+13〜13.7質量%、Ti含有量が0.05〜0.07×Fe含有量+0.1質量%、Cr含有量が0.1×Fe含有量+0.05〜0.15質量%、Mn含有量が0.4〜0.6×Fe含有量なる関係で含み、残部がAlと不可避的不純物からなる、鋳型内、保持炉内、坩堝内、或いは保持炉から鋳型への流路内のアルミニウム合金溶湯に、液相線温度以上で超音波振動を照射し、その後に前記溶湯を凝固させることを特徴とするアルミニウム合金の製造方法。
  2. 前記アルミニウム合金溶湯に、さらにTi:0.005〜0.05質量%、B:0.0005〜0.02質量%分のTiB2を存在させておくことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金の製造方法。
  3. 前記アルミニウム合金を冷却させる際に、冷却速度を20℃/sec以上としたことを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金の製造方法。
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