以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態は、尿中の有形成分を分析してスキャッタグラムを含む分析結果画面を表示する際に、過去に入力されたコメントのうち、当該分析結果と関連するコメントを表示する試料分析装置である。
[試料分析装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る試料分析装置の構成の概要を示す斜視図である。図1に示すように、試料分析装置1は、試料を測定する測定ユニット2と、測定ユニット2から出力された測定データを処理し、試料の分析結果を表示する情報処理ユニット3とを備えている。測定ユニット2の前側には搬送部210が設けられており、この搬送部210によって、試料(尿)が収容された試験管211を複数保持するラック212が搬送されるようになっている。
<測定ユニット2の構成>
図2は、測定ユニットの構成を示すブロック図である。測定ユニット2には、図2に示すように、試料分配部21と、試料調製部22と、光学検出部23と、光学検出部23による出力の増幅及びフィルタ処理等を行うアナログ信号処理回路24と、アナログ信号処理回路24の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ25と、デジタル信号に対して所定の波形処理を行うデジタル信号処理回路26と、デジタル信号処理回路26に接続されたメモリ27と、アナログ信号処理回路24及びデジタル信号処理回路26に接続されたCPU28と、CPU28に接続されたLANアダプタ29と、搬送部210とが設けられている。情報処理ユニット3は、LANアダプタ29を介して測定ユニット2にLAN接続されている。また、アナログ信号処理回路24、A/Dコンバータ25、デジタル信号処理回路26及びメモリ27は、光学検出部23が出力する電気信号に対する信号処理回路30を構成している。
試料分配部21は、試料である尿を所定の分配量で試料調製部22に分注するように構成されている。また、試料調製部22は、試料分配部21により分注された尿及び試薬により測定試料を調製し、調製された測定試料をシース液とともに後述する光学検出部23のシースフローセル23cに供給するように構成されている。
図3は、光学検出部23の構成を示す模式図である。光学検出部23は、図3に示すように、レーザ光を出射する発光部23aと、照射レンズユニット23bと、レーザ光が照射されるシースフローセル23cと、発光部23aから出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ23d、ピンホール23e及びPD(フォトダイオード)23fと、発光部23aから出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ23g、ダイクロイックミラー23h、光学フィルタ23i、ピンホール23j及びPD23kと、ダイクロイックミラー23hの側方に配置されているAPD(アバランシェフォトダイオード)23lとを含んでいる。
発光部23aは、シースフローセル23cの内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。また、照射レンズユニット23bは、発光部23aから出射された光を平行光にするために設けられている。また、PD23fは、シースフローセル23cから出射された前方散乱光を受光するために設けられている。
ダイクロイックミラー23hは、シースフローセル23cから出射された側方散乱光及び側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー23hは、シースフローセル23cから出射された側方散乱光をPD23kに入射させるとともに、シースフローセル23cから出射された側方蛍光をAPD23lに入射させるために設けられている。また、PD23kは、側方散乱光を受光するために設けられている。また、APD23lは、側方蛍光を受光するために設けられている。また、PD23f、23k及びAPD23lは、それぞれ、受光した光信号を電気信号に変換する機能を有する。
アナログ信号処理回路24は、図3に示すように、アンプ24a、24b及び24cを備えている。また、アンプ24a、24b及び24cは、それぞれ、PD23f及び23k並びにAPD23lから出力された電気信号を増幅及び波形処理するために設けられている。
<情報処理ユニット3の構成>
図4は、情報処理ユニット3の構成を示すブロック図である。情報処理ユニット3は、コンピュータ3aによって実現される。図4に示すように、コンピュータ3aは、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、画像出力インタフェース31i、画像表示部32、及び入力部33を備えており、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31iは、バス31jによって接続されている。
CPU31aは、RAM31cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような分析プログラム34aを当該CPU31aが実行することにより、コンピュータ3aが情報処理ユニット3として機能する。
ROM31bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
RAM31cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM31cは、ハードディスク31dに記録されている分析プログラム34aの読み出しに用いられる。また、CPU31aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する分析プログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータを情報処理ユニット3として機能させるための分析プログラム34aが格納されており、コンピュータ3aが当該可搬型記録媒体34から分析プログラム34aを読み出し、当該分析プログラム34aをハードディスク31dにインストールすることが可能である。
なお、前記分析プログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ3aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記分析プログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ3aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク31dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係る分析プログラム34aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
入出力インタフェース31fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース31fには、キーボード及びマウスからなる入力部33が接続されており、ユーザが当該入力部33を使用することにより、コンピュータ3aにデータを入力することが可能である。
通信インタフェース31gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース31gはLANを介して測定ユニット2に接続されている。コンピュータ3aは、通信インタフェース31gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された測定ユニット2との間でデータの送受信が可能である。
画像出力インタフェース31iは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部32に出力するようになっている。画像表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
[試料分析装置の動作]
以下、本実施の形態に係る試料分析装置1の動作について説明する。
図5A〜図5Cは、本実施の形態に係る試料分析装置1の動作の流れを示すフローチャートである。図5Aは、情報処理ユニット3による測定開始指示動作の流れを示すフローチャートであり、図5Bは、試料分析装置1の試料の分析動作における測定ユニット2による試料の測定動作の流れを示すフローチャートであり、図5Cは、試料分析装置1の試料の分析動作における情報処理ユニット3による測定データ解析動作の流れを示すフローチャートである。
まず、ユーザが試料分析装置1を起動すると、測定ユニット2及び情報処理ユニット3のそれぞれにおいて初期化処理が実行され、測定ユニット2は測定スタンバイ状態となり、情報処理ユニット3のCPU31aは画像表示部32にログイン画面(図示せず)を表示させる(図5AのステップS101)。この状態で、ログイン画面に設けられた入力エリアにユーザID及びパスワードを入力し、ログインの指示を入力する操作が行われると、入力されたユーザID及びパスワード並びにログインの指示がCPU31aに与えられる。CPU31aは、かかるユーザID及びパスワード並びにログインの指示データを受け付けると(図5AのステップS102)、これによりCPU31aに対する割り込み要求が発生し、ステップS103の処理が呼び出される。
ステップS103においては、CPU31aによりユーザ認証処理が行われる。このユーザ認証処理について詳しく説明する。ハードディスク31dには、ユーザ情報データベースが設けられている。図6は、ユーザ情報データベースの構造を示す模式図である。ユーザ情報データベース35は、リレーショナルデータベースであり、ユーザID35a、パスワード35b、ユーザグループ35c、ユーザの氏名35dの各フィールドを備えている。各レコードは、1人のユーザに対応しており、ユーザが図示しないユーザ登録画面において、ユーザID、パスワード、ユーザグループ、氏名を入力することによりデータが新規に登録され、入力された各情報を含む新規レコードが当該ユーザ情報データベース35に追加される。
ユーザIDは、ユーザ毎にユニークに定まる情報であり、ユーザを特定するために用いられる。パスワードは、ユーザが設定したパスワードであり、ユーザ認証に用いられる。ユーザグループには、「技師長」、「主任技師」、「技師」、「看護師」、「サービスマン」、「営業」、及び「医師」のグループが存在し、各ユーザは少なくとも1つのユーザグループに属している。かかるユーザグループ毎に、後述するコメントの閲覧権限が定められる。ユーザの氏名のフィールド35dには、各ユーザの氏名が登録される。ユーザ認証処理においては、入力されたユーザID及びパスワードが、ユーザ情報データベース35に登録されたユーザID及びパスワードに一致するかどうかを判定することにより行われる。ユーザ認証が成功した場合には(ステップS103でYES)、CPU31aは、ユーザ情報データベース35から当該ユーザのユーザID、ユーザグループ、ユーザの氏名を読み出し、これらをRAM31cに記憶し(ステップS104)、また、図示しないメイン画面を画像表示部32に表示させる(ステップS105)。一方、ユーザ認証が失敗した場合には(ステップS103でNO)、CPU31aは、処理をステップS101へと戻し、再度ログイン画面を表示する。
次に、CPU31aは、測定オーダの登録処理を実行する(ステップS106)。かかる測定オーダの登録処理では、情報処理ユニット3に、検体(試料)番号(検体ID)、当該試料が採取された患者の患者番号(患者ID)、氏名、年齢、性別、診療科、担当医師等の患者情報、及び分析項目の情報を含む測定オーダが、ネットワークを介して接続されたホストコンピュータ(図示せず)又はユーザの手入力により入力され、これらの測定オーダがCPU31aによってハードディスク31dに記憶される。
メイン画面その他の画面に表示されているスタートボタンがクリックされる等、ユーザによるスタート指示の操作が行われると、CPU31aが測定開始の指示を受け付け(ステップS107)、これによりCPU31aに対する割り込み要求が発生し、ステップS108の処理が呼び出される。
ステップS108においては、CPU31aにより測定開始指示信号が生成され、当該信号が測定ユニット2へと送信される(ステップS108)。その後、CPU31aは、この測定開始指示動作に関する処理を終了する。かかる測定開始指示が与えられることにより、図5Bに示す測定ユニット2の測定動作が開始される。測定開始指示信号が測定ユニット2に受信されると(図5BのステップS131)、測定ユニット2のCPU28に対する割り込み要求が発生し、これによりCPU28が搬送部210を制御し、試料入りの試験管211が立てられたサンプルラック212を所定の吸引位置へ移送する(ステップS132)。この吸引位置において、前記試験管211が回転させられ、当該試験管211の外周面に貼付されたIDラベルのバーコードが図示しないバーコードリーダにより読み取られ、これによって検体番号(検体ID)がCPU28により取得される(ステップS133)。CPU28は、取得した検体番号を情報処理ユニット3へ送信する(ステップS134)。
上記の検体番号の通知により、図5Cに示す情報処理ユニット3の動作が開始される。検体番号が情報処理ユニット3により受信されると(図5CのステップS111)、CPU31aに対する割り込み要求が発生し、CPU31aは当該検体番号に対応する測定オーダをハードディスク31dから検索する(ステップS112)。次に、CPU31aは、検索された測定オーダに含まれる分析項目情報を測定ユニット2へ送信する(ステップS113)。
分析項目情報が測定ユニット2に受信されると(図5BのステップS135)、測定ユニット2のCPU28に対する割り込み要求が発生し、これによりCPU28が測定試料の調製処理を実行する(ステップS136)。この測定試料の調製処理では、CPU28が試料分配部21及び試料調製部22を制御し、尿及び試薬により測定試料が調製される。調製される測定試料は、測定項目に応じて決定される。全測定項目を測定する場合には、尿沈渣成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱等)測定用の第1測定試料と、細菌測定用の第2測定試料の2種類の測定試料のそれぞれが調製される。
また、CPU28は、測定処理を実行する(ステップS137)。この測定処理では、CPU28が光学検出部23を制御し、測定試料の光学測定が実行される。この測定処理では、情報処理ユニット3から受信した測定項目に対応する測定が行われ、全測定項目の場合には、第1測定試料の測定処理である第1測定処理と、第2測定試料の測定処理である第2測定処理とが実行される。具体的には、測定処理においては、光学検出部23のシースフローセル23cにシース液が送液され、その後、まず尿中有形成分(SED)測定用の第1測定試料が光学検出部23に導かれ、前記シースフローセル23cにおいてシース液に包まれた細い流れ(シースフロー)が形成される。そして、このようにして形成されたシースフローに発光部23aからレーザビームが照射される。前記レーザビームの照射により生じる尿中有形成分の前方散乱光、蛍光及び側方散乱光は、それぞれフォトダイオード23f、23k、及びAPD23lにより受光されて電気信号に変換され、前方散乱光信号(FSC)、蛍光信号(FL)及び側方散乱光信号(SSC)として出力される。これらの出力は、プリアンプにより増幅される。このようにして第1測定処理が先に行われる。一方、第1測定処理が終了すると、引き続いて第2測定試料を用いて尿中の細菌が測定される(第2測定処理)。この場合、尿中有形成分の測定で用いた光学検出部23により、前記第1測定処理の場合と同様に前方散乱光信号(FSC)及び蛍光信号(FL)が出力され、且つ増幅される。増幅された前記前方散乱光信号(FSC)、蛍光信号(FL)及び側方散乱光信号(SSC)は、デジタル信号処理回路26においてデジタル信号に変換された後、所定の波形処理が施され、これにより、第1測定試料の前方散乱光データ、側方散乱光データ、及び側方蛍光データ、並びに第2測定試料の前方散乱光データ、側方散乱光データ、及び側方蛍光データからなる測定データが得られる。次いで、CPU28は、得られた測定データを情報処理ユニット3へ送信する(ステップS138)。
また、CPU28は、未測定の試料が収容された試験管が残っていないかどうかを判定する(ステップS139)。この処理では、搬送部210に設けられたセンサにより、吸引位置に配置されているサンプルラックに未測定の試料の試験管が存在するか否か、また、サンプルラック中の試験管全てに対して測定が完了しており、サンプルラックが吸引位置から移送された場合には、未測定の試料が収容された試験管を保持するサンプルラックが存在するか否かが判定される。そして、未測定の試料が収容された試験管が存在する場合には(ステップS139においてNO)、処理をステップS132へ戻し、未測定の試料が収容された試験管を吸引位置へ移送し、ステップS133以下の処理を再度繰り返す。一方、ステップS139において、未測定の試料が収容された試験管が残っていない場合には(ステップS139においてYES)、CPU28は処理を終了する。
測定データが情報処理ユニット3により受信されると(図5CのステップS114)、CPU31aに対する割り込み要求が発生し、CPU31aは測定データの処理を実行する(ステップS115)。図7は、情報処理ユニット3による測定データの処理の手順を示すフローチャートである。この測定データの処理では、以下のようにして、試料中に存在する粒子の分布状態を示すスキャッタグラム及びヒストグラムが作成される。
情報処理ユニット3による測定データ処理では、まず、CPU31aが、受信した測定データをハードディスク31dに記憶する(ステップS121)。次に、CPU31aは、測定データを用いて試料中の粒子の分類処理を実行する(ステップS122)。この処理は、測定データに含まれる前方散乱光データ、側方散乱光データ、及び側方蛍光データの各特徴パラメータ情報によって、試料に含まれる粒子の種類を特定するというものである。
上記の分類処理を具体的に説明する。尿中有形成分(SED)の分類は、第1測定試料の前方散乱光データ、側方散乱光データ及び蛍光データの各特徴パラメータ情報に基づいて行われる。図8Aは、横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(低感度)(FLL)とし、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)とした場合のスキャッタグラムである。このスキャッタグラムにより、蛍光信号強度の大きな領域には、核を有する大きな細胞である上皮細胞(EC)と白血球(WBC)が現れることがわかる。大半の上皮細胞は白血球より細胞が大きく、白血球より蛍光強度の大きな領域に出現するが、小型上皮細胞には白血球と出現領域がオーバラップするものもある。この両者を識別するために側方散乱光データが用いられる。図8Bは、横軸を第1測定試料を測定したときに得られた側方散乱光強度(SSC)、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。このスキャッタグラムから分かるように、上皮細胞は白血球より側方散乱光強度が大きい領域に出現する。このため、側方散乱光強度により上皮細胞の識別が行われる。
図8Cは、横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(高感度)(FLH)とし、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムであり、蛍光強度が低い領域を表したものである。赤血球(RBC)は核を有していないので蛍光強度の低い領域に分布する。結晶によっては赤血球の出現領域に現れることもあるので、結晶の出現を確認するため側方散乱光データが用いられる。図8Bに示すように、結晶は側方散乱光強度の分布中心が一定せず、大きい領域にも出現するため、図8Cのスキャッタグラムより赤血球との識別が行われる。
図8Dは、横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光信号の幅(蛍光幅、FLLW)とし、縦軸をその第2の蛍光幅(蛍光幅2、FLLW2)としたときのスキャッタグラムである。FLLWは、細胞膜が染色された有形成分を捉える蛍光信号の幅を表しており、FLLW2は、核などのより強い蛍光信号の幅を表している。図に示すように、円柱(CAST)のFLLWは大きく、内容物がある円柱(P.CAST)はFLLW2が大きい。また、内容物のない円柱(CAST)はFLLW2が低い領域に出現する。このように、内容物のある円柱及び内容物のない円柱は、蛍光幅及び蛍光幅2を用いて識別される。
一方、細菌の分類(識別)は、第2測定試料の前方散乱光データ及び蛍光データの各特徴パラメータ情報に基づいて行われる。 図8Eは、横軸を第2測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(高感度)(B−FLH)とし、縦軸をその前方散乱光強度(高感度)(B−FSC)としたときのスキャッタグラムである。尿中有形成分測定では、図8Cのスキャッタグラムのように、細菌の出現領域は粘液糸(MUCUS)、YLC(酵母様真菌)、SPERM(精子)の出現領域とオーバラップする。しかし、細菌測定では、第2測定試料の調製に用いられる細菌測定試薬によって、粘液糸や赤血球破片などの夾雑物を収縮させるため、細菌だけが独立して出現する領域が現れ、尿中有形成分測定の場合に比べて約10倍感度を上げて測定しているため、小型細菌も高精度に検出でき、かかる第2測定試料の前方散乱光データ及び蛍光データを使用することによって正確な細菌の識別が可能である。
上記のような処理が行われることにより、試料を測定することにより検出された粒子が、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、上皮細胞(EC)、円柱(CAST:内容物なし、P.CAST:内容物あり)、細菌(BACT)、結晶(X’TAL)、粘液糸(MUCUS)、酵母様真菌(YLC)、精子(SPERM)、夾雑物(DEBRIS)等に分類される。また、上記の分類処理により、後述するスキャッタグラムの表示用のデータが生成される。
上述した分類処理の後、CPU31aは、粒子数を計数する計数処理を実行する(ステップS123)。この処理では、上記の分類処理によって分類した粒子の種類毎に粒子数が計数される。次にCPU31aは、計数処理による計数結果をハードディスク31dに記憶する(ステップS124)。
次に、CPU31aは、異常判定処理を実行する(ステップS125)。この異常判定処理では、粒子の分類処理における分類異常及び計数した粒子数が正常範囲に収まっていない粒子数異常が発生したか否かを判定する。
次に、CPU31aは、粒子分布図作成処理を実行する(ステップS126)。この処理では、測定データを用いて、スキャッタグラムの表示に用いられるデータ(以下、スキャッタグラムデータという。)及びヒストグラムの表示に用いられるデータ(以下、ヒストグラムデータという。)が作成される。当該処理で作成されるスキャッタグラムデータは、(1)横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(低感度)(FLL)とし、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)とするスキャッタグラム(図8A参照)、(2)横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(高感度)(FLH)とし、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)とするスキャッタグラム(図8C参照)、(3)横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光信号の幅(蛍光幅、FLLW)とし、縦軸をその第2の蛍光幅(蛍光幅2、FLLW2)とするスキャッタグラム、(4)横軸を第2測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(高感度)(B−FLH)とし、縦軸をその前方散乱光強度(高感度)(B−FSC)とするスキャッタグラムをそれぞれ描画するためのデータである。また、当該処理で作成されるヒストグラムデータは、(1)縦軸を出現頻度とし、横軸を前方散乱光強度とする赤血球のヒストグラム、(2)縦軸を出現頻度とし、横軸を前方散乱光強度とする白血球のヒストグラムをそれぞれ描画するためのデータである。これらのスキャッタグラムでは、各粒子がその種類に応じて色分け表示される(例えば、赤血球は赤、白血球は青等)ようになっている。従って、スキャッタグラムデータは、粒子毎の色の情報が含まれる。
次に、CPU31aは、上記のような分類結果、計数結果、異常判定の結果、スキャッタグラムデータ、及びヒストグラムデータを含む分析結果と、当該試料に係る測定オーダに含まれる検体ID、患者ID、患者氏名、年齢、性別、診療科、担当医師を含む属性情報とを含む分析結果データをハードディスク31dの分析結果データベース37(図4参照)に格納する(ステップS127)。分析結果データベース37は、リレーショナルデータベースであり、検体ID、試料分析日時、患者ID、患者氏名、年齢、性別、診療科、担当医師、分類結果、計数結果、異常判定の結果、スキャッタグラムデータ、及びヒストグラムデータの各フィールドを備えている。各レコードは、1つの試料の分析結果に対応しており、上記の処理によって分析結果が生成されたときに、新規レコードが当該分析結果データベース37に追加される。かかる分析結果データの分析結果データベース37への登録を行った後、CPU31aは、測定データ解析動作(メインルーチン)における測定データ処理S115の呼出アドレスへ処理をリターンする。
上記の測定データ処理S115が終了した後、CPU31aには、分析結果画面の表示の割り込み要求が発生する。かかる分析結果画面の表示要求が発生した場合には、CPU31aは、まず、上記の分析結果データに基づいて、分析結果画面を生成する(ステップS116)。この処理においては、スキャッタグラムデータ及びヒストグラムデータに基づいて、当該スキャッタグラム及びヒストグラムのビットマップ形式の画像データがそれぞれ生成される。
次に、CPU31aは、当該分析結果画面に表示すべきコメントを検索する(ステップS117)。以下に、コメント検索処理について具体的に説明する。かかるコメント検索処理においては、ハードディスク31dに設けられたコメント検索用データベース36を用いてコメントが検索される。図9は、コメント検索用データベース36の構造を示す模式図である。コメント検索用データベース36は、リレーショナルデータベースであり、コメントに対応する項目36a、分析結果画面に表示している当該項目の情報の内容(実データ)36b、閲覧権限の設定値36c、及びコメント36dの各フィールドを備えている。各レコードは、1つのコメントに対応しており、ユーザが後述するコメント入力ダイアログにおいて、コメントに対応する項目、当該項目の実データ、閲覧対象のユーザグループ、及びコメントを入力することにより、入力された各情報を含む新規レコードが当該コメント検索用データベース36に追加される。
コメントに対応する項目のフィールド36aには、「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、「参考情報」、「粒子分布図(Scatter S1)」、「粒子分布図(Scatter S2)」、「粒子分布図(Scatter S3)」、「粒子分布図(Scatter B1)」、「粒子分布図(RBC−S_FSC)」、及び「粒子分布図(WBC−S_FSC)」の何れか1つが登録される。このフィールド36aに登録されたデータにより、そのレコードのコメントが分析結果画面のどの項目に対応しているのかが特定される。
コメントに対応する項目の実データのフィールド36bには、項目が「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、又は「参考情報」の場合には、分析結果データにおけるそれらの項目の文字データが登録される。例えば、項目フィールド36aに「検体ID」が登録されており、その「検体ID」が「00001」の場合には、当該フィールド36bに「00001」が登録される。また、項目フィールド36aに「診療科」が登録されており、その「診療科」が「泌尿器科」の場合には、当該フィールド36bに「泌尿器科」が登録される。項目が粒子分布図の何れかである場合には、当該フィールド36bには、その粒子分布図のビットマップ画像データが登録される。例えば、項目フィールド36aに「粒子分布図(Scatter S1)」が登録されている場合は、当該フィールド36bに、その「粒子分布図(Scatter S1)」の画像データが登録される。
閲覧権限設定のフィールド36cには、「制限なし」、「技師長」、「主任技師」、「技師」、「看護師」、「サービスマン」、「営業」、及び「医師」のうちの1又は複数が登録される。このフィールド36cに登録されたデータにより、現在ログインしているユーザが属するユーザグループに対して、そのレコードのコメントの閲覧権限が与えられているか否かが判断される。例えば、「制限なし」が登録されているレコードのコメントは、どのユーザグループに属しているユーザでも閲覧することが可能である。また、閲覧権限設定に「技師長」、「主任技師」、「技師」、「看護師」、「サービスマン」、「営業」、又は「医師」が登録されているレコードのコメントは、それぞれ、ユーザグループが「技師長」、「主任技師」、「技師」、「看護師」、「サービスマン」、「営業」、又は「医師」であるユーザに対して閲覧権限が与えられている。
コメントフィールド36dには、ユーザによって入力されたコメントの文字データが登録される。
図10は、コメント検索処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU31aは、変数iに1をセットし(ステップS151)、先頭からi番目のレコードをコメント検索用データベース36から読み出す(ステップS152)。次にCPU31aは、読み出したレコードの閲覧権限の設定値と現在ログインしているユーザのユーザグループとを比較し、当該ユーザが閲覧権限を有しているか否かを判定する(ステップS153)。ユーザが閲覧権限を有していない場合には(ステップS153においてNO)、CPU31aは、処理をステップS161へ移す。
また、ステップS153において、ユーザが閲覧権限を有している場合には(ステップS153においてYES)、CPU31aは、読み出したレコードの項目が「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、又は「参考情報」(実データが文字データの項目)か否かを判定する(ステップS154)。
ステップS154において、項目が「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、又は「参考情報」である場合には(ステップS154においてYES)、CPU31aは、読み出したレコードの項目(例えば、「患者ID」)と同一の項目の情報(例えば、「0002」)を、表示対象の分析結果データから読み出し(ステップS155)、コメント検索用データベース36から読み出した実データ(例えば、「0001」)と、ステップS155にて読み出した情報とを比較して、2つのデータが一致するか否かを判定する(ステップS156)。2つの実データが一致しない場合には(ステップS156においてNO)、処理をステップS161へ移す。
また、ステップS156において、2つの実データが一致する場合には(ステップS156においてYES)、CPU31aは、コメント検索用データベース36から読み出したレコードに含まれる項目及びコメントを表示対象コメントとしてRAM31cに格納する(ステップS157)。
一方、ステップS154において、項目が「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、又は「参考情報」でない場合、即ち、項目が「粒子分布図(Scatter S1)」、「粒子分布図(Scatter S2)」、「粒子分布図(Scatter S3)」、「粒子分布図(Scatter B1)」、「粒子分布図(RBC−S_FSC)」、又は「粒子分布図(WBC−S_FSC)」(実データが画像データである項目)である場合には(ステップS154においてNO)、CPU31aは、読み出したレコードの項目(例えば、「粒子分布図(Scatter S1)」)と同一の項目の画像データを、ステップS116において作成されたビットマップ形式の画像データから取得し(ステップS158)、コメント検索用データベース36から読み出した実データ(ビットマップ形式の画像データ)と、ステップS158にて取得した画像データとをパターンマッチングにより比較して、2つの画像データの類似度を算出する(ステップS159)。次にCPU31aは、類似度と所定値とを比較し(ステップS160)、2つの画像データの類似度が所定値未満である場合には(ステップS160においてNO)、処理をステップS161へ移す。
また、ステップS160において、類似度が所定値以上である場合には(ステップS160においてYES)、CPU31aは、ステップS157へと処理を進め、コメント検索用データベース36から読み出したレコードに含まれる項目及びコメントを表示対象コメントとしてRAM31cに格納する。
ステップS157において表示対象コメントを記憶した後、CPU31aは、iを1だけインクリメントし(ステップS161)、iがコメント検索用データベース36のレコード数Nよりも大きいか否かを判定する(ステップS162)。i≦Nの場合には(ステップS162においてNO)、CPU31aは、ステップS152へ処理を戻す。また、ステップS162において、i>Nの場合には、CPU31aは、測定データ解析動作(メインルーチン)におけるコメント検索処理S117の呼出アドレスへ処理をリターンする。
上記のコメント検索処理S117が終了した後、CPU31aは、ステップS116で作成した分析結果画面を画像表示部32に表示する(ステップS118)。図11は、分析結果画面の一例を示す模式図である。分析結果画面4には、検体属性情報表示部41と、数値データ表示部42と、参考情報表示部43と、粒子分布図表示部44とが含まれている。検体属性情報表示部41には、検体ID、試料分析日時、患者ID、患者氏名、診療科、担当医師等の属性情報が表示される。数値データ表示部42には、分析結果の数値データ、つまり、赤血球数、白血球数、上皮細胞数、円柱数、細菌数等の数値が表示される。参考情報表示部43には、上述した分類異常又は粒子数異常が検出された場合に、その異常の内容が文字により表示される。また、粒子分布図表示部44には、(1)横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(高感度)(FLH)とし、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラム(図8Cのスキャッタグラム。以下、「スキャッタグラムS1」という。)、(2)横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(低感度)(FLL)とし、縦軸をその前方散乱光強度(FSC)とした場合のスキャッタグラム(図8Aのスキャッタグラム。以下、「スキャッタグラムS2」という。)、(3)横軸を第1測定試料を測定したときに得られた蛍光信号の幅(蛍光幅、FLLW)とし、縦軸をその第2の蛍光幅(蛍光幅2、FLLW2)としたときのスキャッタグラム(図8Dのスキャッタグラム。以下、「スキャッタグラムS3」という。)、(4)横軸を第2測定試料を測定したときに得られた蛍光強度(高感度)(B−FLH)とし、縦軸をその前方散乱光強度(高感度)(B−FSC)としたときのスキャッタグラム(図8Eのスキャッタグラム。以下、「スキャッタグラムS3」という。)、(5)縦軸を出現頻度とし、横軸を前方散乱光強度とする赤血球のヒストグラム(以下、「RBCヒストグラム」という。)、及び、(6)縦軸を出現頻度とし、横軸を前方散乱光強度とする白血球のヒストグラム(以下、「WBCヒストグラム」という。)の6つの粒子分布図が表示される。
また、上記の分析結果画面において、表示すべきコメントが存在する場合、即ち、RAM31cに項目データとコメントデータとが格納されている場合には、分析結果画面において、そのコメントの項目と同一の項目の付近にコメントアイコン46が表示される。このコメントアイコン46は、その表示されている箇所の項目について、コメントの表示が可能であることを示すアイコンである。後述するように、ユーザがコメントアイコン46にマウスカーソルを合わせることにより、その項目に対応するコメントが表示される。
このようにコメント検索用のコメント検索用データベース36を分析結果データベース37と独立して設け、コメント検索用データベース36を利用して表示すべきコメントを検索することにより、コメント検索を効率的且つ高速に行うことが可能となる。
この状態で、分析結果画面に表示されている終了ボタンがクリックされる等、ユーザによる分析結果画面の表示終了指示の操作が行われると、CPU31aが分析結果画面の表示終了の指示を受け付け(ステップS119)、これによりCPU31aに対する割り込み要求が発生し、CPU31aが分析結果画面の表示を終了し(ステップS120)、処理を終了する。
また、分析結果画面は、上記のように、試料の測定及び測定データ処理を完了した後に表示されるだけでなく、ユーザが過去の分析結果の中から表示したい分析結果を検体番号等により指定した場合にも、その分析結果に係る分析結果画面を表示することが可能である。
本実施の形態に係る試料分析装置1は、上記のように分析結果画面が表示されている状態において、コメントを表示することが可能である。以下、このコメント表示処理について具体的に説明する。
図12は、コメント表示処理の手順を示すフローチャートである。分析結果画面が画像表示部32に表示されている状態において、情報処理ユニット3のCPU31aは、コメントアイコン46が指定されたか否かを判定する(ステップS171)。かかる指定は、ユーザが入力部33に含まれるマウスを、マウスカーソル(ポインタ)がコメントアイコン46と重なるように操作することにより行われる。つまり、ステップS171の判定処理は、マウスカーソルがコメントアイコン46に重なったか否かを判定することにより行われる。そして、CPU31aがコメントアイコン46の指定を検出した場合に、CPU31aに対する割り込み要求が発生し、以下のステップS172の処理が呼び出される。
ステップS172において、CPU31aは、指定されたコメントアイコン46に対応する項目のコメントをRAM31cから読み出す(ステップS172)。そしてCPU31aは、当該コメントをポップアップ表示する(ステップS173)。ここで、コメントが表示された分析結果画面を説明する。図13は、コメントがポップアップ表示された分析結果画面の一例を示す図である。図13には、項目「患者ID」に対して付与されたコメントが表示された例を示している。この例では、分析結果画面4の中の「患者ID」、「担当医」、及び「粒子分布図(Scatter B1)」にそれぞれコメントアイコン46が表示されている。ユーザが項目「患者ID」の付近に表示されているコメントアイコン46を指定すると、この患者ID「0001」に対応するコメント46a「この患者はPLTが低いので注意 山田技師」が表示される。かかるコメント46aは、コメントアイコン46が指定されたときに表示される四角状の吹き出しの中に表示され、かかる吹き出しは、患者IDの表示位置を指示するように、即ち、吹き出しから突出する三角状の先鋭部の先端が前記表示位置に位置するように表示される。この例においては、試料分析装置1のユーザの一人であり、患者に対して詳しい知識を有している山田技師が、当該コメントを入力した場合を想定している。かかるコメントは、かかる知識を有している山田技師により過去に入力されたものである。そして、ユーザがコメントの閲覧権限を有している限りにおいて、患者ID「0001」が一致する全ての分析結果画面で当該コメント46aが表示されることとなる。したがって、当該分析結果画面4が、山田技師以外のユーザがログインしている状態において表示されている場合には、個々の患者に対する詳しい知識を有していないユーザがこのような患者の具体的な情報を容易に得ることができ、PLT(血小板)の粒子数が通常よりも少ない分析結果が表示されていても、それがその患者の傾向であり、異常ではないことを知ることができる。換言すれば、特定のユーザ(山田技師)の個々の患者に対する詳しい情報を、複数のユーザ間で容易に共有することが可能となる。
また、「担当医」に対するコメントとして、「迅速な結果の提出が望まれる」が付与されている場合には、担当医「○○」に対する当該コメントが表示され、このコメントを読んだユーザは、迅速に分析結果を提出する必要があることを知ることができる。「粒子分布図(Scatter B1)」に対するコメントとして、「ブドウ球菌か?」が付与されている場合には、分析結果画面に表示されているスキャッタグラムB1が、コメント検索用データベース36において当該コメントに対応して記憶されているスキャッタグラムB1と類似するときに、前記コメントが表示されることとなる。スキャッタグラムを観察して、その患者の病状等を把握するためには熟練を要するが、熟練者がスキャッタグラムを参照して判断した内容をコメントとして残しておくことにより、そのスキャッタグラムと類似する形態のスキャッタグラムが分析結果として得られた場合に、当該コメントが表示され、熟練者の知識を共有することが可能となる。また、知識の浅い初心者が分析結果画面を参照する場合では、かかるコメントを表示することによって、初心者の教育を行うこともできる。
また、このようにコメント46aを付加して分析結果画面4を表示することにより、ユーザはコメントと分析結果(属性情報を含む)とを同時に参照することができ、分析結果の内容とコメントの内容とを対応付けて理解及び記憶することが可能となる。
コメントアイコン46からマウスカーソルが外れた(コメントアイコン46の指定が解除された)ことをCPU31aが検出すると(ステップS174)、CPU31aに割り込み要求が発生し、CPU31aは、コメントの表示を終了し(ステップS175)、処理を終了する。
さらに、本実施の形態に係る試料分析装置1は、上記のように分析結果画面が表示されている状態において、コメントの入力(登録)を受け付けることが可能である。以下、このコメント登録処理について具体的に説明する。
図14は、コメント登録処理の手順を示すフローチャートである。図11に示すように、分析結果画面4には、コメント入力ダイアログを呼び出すためのコメント入力ダイアログ表示ボタン45が設けられている。このコメント入力ダイアログ表示ボタン45は、クリックされるとコメント入力ダイアログを表示するコマンドが実行されるようになっている。CPU31aは、ユーザからコメント入力ダイアログをクリックする操作を受け付けると(ステップS191)、CPU31aに対する割り込み要求が発生し、ステップS192の処理が呼び出される。
ステップS192において、CPU31aは、画像表示部32にコメント入力ダイアログを表示させる。図15は、コメント入力ダイアログの一例を示す模式図である。コメント入力ダイアログ5には、コメントに対応づける項目を指定するための項目指定領域51と、コメントの閲覧対象のユーザグループを指定するための閲覧対象指定領域52と、コメントを入力するためのコメント入力領域53と、コメントを入力した後、当該入力内容を確定するためのOKボタン54と、コメントの入力処理をキャンセルするためのキャンセルボタン55とが設けられている。項目指定領域51には、6つの選択肢「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、「参考情報」、「粒子分布図」が表示される。これらの選択肢「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、「参考情報」、「粒子分布図」のそれぞれの左にはラジオボタン51a〜51fが表示される。ユーザは、ラジオボタン51a〜51fの何れかを選択(クリック)することにより、対応する(そのラジオボタンの右に表示されている)選択肢を選択することができる。また、選択肢「粒子分布図」の右側には、指定ボックス51gが表示され、その指定ボックス51gでコメントの入力対象となるスキャッタグラム又はヒストグラムを指定することが可能となっている。例えば、スキャッタグラムB1を指定する場合には、ユーザは、当該指定ボックス51gに「Scatter B1」と表示されるように操作する。ラジオボタン51fが選択された場合には、この指定ボックス51gにおいて指定されたスキャッタグラム又はヒストグラムがコメント入力対象として設定される。
また、閲覧対象指定領域52には、8つの選択肢「制限なし」、「技師長」、「主任技師」、「技師」、「看護師」、「サービスマン」、「営業」、及び「医師」が表示される。上記4つの選択肢それぞれの左側に1つずつチェックボックス52a〜52hが表示される。これらの選択肢は複数を同時に選択することが可能である。ユーザは、チェックボックス52a〜52hの1又は複数を選択(クリック)することにより、そのチェックボックスに対応する選択肢を選択することができる。ここで選択されたユーザグループに対しては、下記のコメント入力領域53で入力されたコメントの閲覧権限が付与される。
コメント入力領域53には、コメントを入力するための入力ボックス53aが表示される。かかる入力ボックス53aの内部でクリック操作が行われると、カーソルが表示され、文字を入力可能となる。その状態で、ユーザは文字データとしてコメントを入力することができる。
上記のようなコメント入力ダイアログ5において、ユーザが項目の選択、閲覧権限の設定、及びコメントの入力を行うと、CPU31aはかかる入力情報を受け付ける(ステップS193)。さらに、ユーザがOKボタン54をクリックすると、CPU31aに入力したコメントのコメント検索用データベース36への登録指示が与えられる。CPU31aがコメントの登録指示を受け付けると(ステップS194)、CPU31aに割り込み要求が発生し、CPU31aは、ステップS193で受け付けた項目、閲覧権限設定、及びコメントと、表示されている分析結果画面における前記項目に対応する情報(実データ)とをコメント検索用データベース36へ登録する(ステップS195)。例えば、参考情報に「ユニバーサル」と表示された分析結果画面が表示されている場合に呼び出されたコメント入力ダイアログ5において、項目に「参考情報」が選択され、閲覧権限が付与されるユーザグループとして「制限なし」が選択され、コメントに「ユニバーサルとは、患者情報により左右されない共通の判定閾値のこと」と入力された場合には、コメント検索用データベース36に、「項目」フィールド36aに「参考情報」を、「実データ」フィールド36bに「ユニバーサル」を、「閲覧権限」フィールド36cに「制限なし」を、「コメント」フィールド36dに「ユニバーサルとは、患者情報により左右されない共通の判定閾値のこと」を、それぞれ有する新規レコードが登録される。
続いて、CPU31aは、コメント入力ダイアログ5の表示を終了し(ステップS196)、処理を終了する。また、キャンセルボタン55がクリックされると、入力された情報が破棄された上で、コメント入力ダイアログ5の表示が終了される。
(実施の形態2)
本実施の形態は、コメント入力ダイアログにおける「項目」の選択を自動的に行う試料分析装置である。
本実施の形態に係る試料分析装置では、分析結果画面において、ユーザがコメントを付与したい項目がある場合に、その項目が表示されている領域を指定する所定の操作、例えば、当該領域内で左ボタンのダブルクリック又は右ボタンのクリックを行う等することにより、コメント入力ダイアログ5が表示される。また、このコメント入力ダイアログ5は、項目指定領域51において前記領域に対応する項目が予め指定された状態で表示される(図15参照)。本実施の形態に係る試料分析装置の構成は、実施の形態1で説明した試料分析装置の構成と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施の形態に係る試料分析装置のコメント登録処理における動作について説明する。図16は、本実施の形態に係る試料分析装置のコメント登録処理の手順を示すフローチャートである。ユーザから、分析結果画面において「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、「参考情報」、「粒子分布図(Scatter S1)」、「粒子分布図(Scatter S2)」、「粒子分布図(Scatter S3)」、「粒子分布図(Scatter B1)」、「粒子分布図(RBC−S_FSC)」、及び「粒子分布図(WBC−S_FSC)」の何れかの表示領域を指定する操作を受け付けると(ステップS291)、CPU31aに対する割り込み要求が発生し、ステップS292の処理が呼び出される。
ステップS292において、CPU31aは、画像表示部32にコメント入力ダイアログを表示させる。このコメント入力ダイアログ5は、項目指定領域51において、ユーザが指定した領域に対応する項目が予め選択された状態で表示される。例えば、ユーザが分析結果画面4の参考情報表示部43(図11参照)にマウスカーソルが位置する状態で、マウスの左ボタンをダブルクリックする動作を行うことにより、項目指定領域51において「参考情報」のラジオボタン51eが選択された状態のコメント入力ダイアログ5が表示される。このコメント入力ダイアログ5において、ユーザは、自動的に選択された項目の選択を解除することも可能であるし、他の項目に選択し直すことも可能である。また、閲覧権限の設定及びコメントの入力は、実施の形態1と同様に行われる。
図16において、ステップS293〜S296の処理は、実施の形態1で説明したコメント登録処理のステップS193〜S196と同様であるので、その説明を省略する。
このような構成とすることにより、ユーザは、コメントを付与したい項目の情報が表示されている領域を指定する操作を行うだけで、コメント入力ダイアログの表示とコメント入力ダイアログにおける項目の指定とを同時に行うことができ、ユーザの試料分析装置の操作性が向上する。
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、コメントに対応する項目が「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、又は「参考情報」の場合には、コメント検索用データベースの当該コメントに対応する当該項目の情報の内容(実データ)と、表示対象の分析結果におけるその項目の情報である文字データとが一致する場合に、そのコメントを表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。上記のコメント検索用データベースに登録されている実データ(文字データ)と、表示対象の分析結果に含まれる文字データとが、一致ではなく類似している場合でも、コメントを表示する構成とすることも可能である。この場合は、比較する両データの一致している文字数が所定値以上の場合には類似していると判定することも可能であるし、一致している文字数が一定の割合以上である場合には類似していると判定することも可能である。また、予め登録された類似文字辞書データ(例えば、漢字と同じ読みの平仮名は類似しているとして登録されている等)を利用して類似しているか否かを判定する構成とすることもできる。
また、上述した実施の形態においては、コメントに対応する項目が「粒子分布図(Scatter S1)」、「粒子分布図(Scatter S2)」、「粒子分布図(Scatter S3)」、「粒子分布図(Scatter B1)」、「粒子分布図(RBC−S_FSC)」、又は「粒子分布図(WBC−S_FSC)」の場合には、コメント検索用データベースの当該コメントに対応する画像データと、表示対象の分析結果におけるその項目の情報である画像データとの類似度をパターンマッチングにより算出し、当該類似度が所定値以上の場合に、そのコメントを表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。粒子分布図に対して付与するコメントを登録する際に、コメント付与対象のスキャッタグラムにおける各クラスターの重心位置、スキャッタグラム上で粒子群が特定の方向に延びて出現する場合に、前記特定の方向を示すデータ、及び/又は、ヒストグラムにおけるピークの位置等の粒子分布図の特徴データを、実データとして登録し、表示対象の分析結果における粒子分布図の特徴データを抽出し、両特徴データを比較することにより類似度を算出する構成、又は、両特徴データが一致若しくは類似しているか否かを判定する構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、「参考情報」、「粒子分布図(Scatter S1)」、「粒子分布図(Scatter S2)」、「粒子分布図(Scatter S3)」、「粒子分布図(Scatter B1)」、「粒子分布図(RBC−S_FSC)」、及び「粒子分布図(WBC−S_FSC)」の項目から1つを選択し、その項目に対するコメントを入力する構成について述べたが、これに限定されるものではない。予め分析結果の中の特定の情報、例えば、スキャッタグラムS1のみをコメント入力対象として定義し、その特定の情報に対するコメントのみを登録及び表示することが可能な構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、コメント検索用のコメント検索用データベースをハードディスク内に記憶しておき、そのコメント検索用データベースを用いて、表示すべきコメントを検索する構成について述べたが、これに限定されるものではない。分析結果データベースに、コメント、コメントに対応する項目のフィールドをさらに設け、分析結果画面を表示している際にコメントが入力されたときには、その分析結果データのレコードに当該コメント及び項目を追加する構成としてもよい。この場合には、分析結果データベースの項目及びその項目に対応する実データを利用して、表示すべきコメントを検索する。また、かかる場合において、分析結果データベースには、コメント及び項目のフィールドをそれぞれ複数設けることも可能である。このようにすることで、1つの分析結果に対応させて複数のコメントを登録することが可能となる。
また、上述した実施の形態においては、コメントに対応する項目が「検体ID」、「患者ID」、「担当医」、「診療科」、又は「参考情報」の場合には、コメント検索用データベースの当該コメントに対応する当該項目の情報の内容(実データ)と、表示対象の分析結果におけるその項目の情報である文字データとが一致する場合に、そのコメントを表示し、コメントに対応する項目が「粒子分布図(Scatter S1)」、「粒子分布図(Scatter S2)」、「粒子分布図(Scatter S3)」、「粒子分布図(Scatter B1)」、「粒子分布図(RBC−S_FSC)」、又は「粒子分布図(WBC−S_FSC)」の場合には、コメント検索用データベースの当該コメントに対応する画像データと、表示対象の分析結果におけるその項目の情報である画像データとの類似度をパターンマッチングにより算出し、当該類似度が所定値以上の場合に、そのコメントを表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。表示対象の分析結果情報に含まれる所定の情報が所定の条件を満たす場合に、コメントを表示する構成であればよい。例えば、分析結果データベースにおいて、項目の情報(実データ)を分類した区分の情報を項目毎に記憶しておき、表示対象の分析結果における項目の情報の区分が、コメントに対応する項目の情報の区分と一致する場合に、このコメントを表示する構成としてもよい。具体的には、コメントが付与された分析結果の患者IDの区分として「40歳台男性」が与えられている場合に、前記コメントが付与された患者IDの区分「40歳台男性」と一致する区分の患者IDを有する分析結果情報を表示する際に、前記コメントを表示する構成としてもよい。また、分析結果情報に項目の情報を補足する情報が含まれており、表示対象の分析結果における項目の情報を補足する情報が、コメントに対応する項目の情報の補足情報と一致する場合に、このコメントを表示する構成とすることもできる。具体的には、分画異常等のスキャッタグラムの異常情報が含まれる分析結果の前記スキャッタグラムに対してコメントが付与されている場合において、表示対象の分析結果に同一の異常情報が含まれているときに、前記コメントを前記表示対象の分析結果に含まれるスキャッタグラムに対応させて表示する構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、ユーザグループ毎に閲覧権限を設定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。ユーザグループ毎に閲覧権限を設定するのではなく、ユーザ毎に閲覧権限を設定する構成としてもよい。つまり、特定の医師又は特定の技師長等の個々のユーザ毎に閲覧権限を与えたり、与えないように設定する構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、コメントアイコンにマウスカーソルが重なったときに、コメントを表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。コメントアイコンの近傍を含む領域内にマウスカーソルが入ったか否かをCPUが判別し、前記領域内にマウスカーソルが入ることによって、当該領域に対応する項目が指定を受け付ける構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、分析結果画面において、コメントが付与された項目の付近にコメントアイコンを表示し、そのコメントアイコンが指定されたときに、当該項目に対応するコメントをポップアップ表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。コメントアイコンを表示することなく、分析結果画面の表示開始と同時にコメントも表示させる構成とすることもできる。この場合は、分析結果画面と独立してコメントの表示を終了させることが可能であるように構成することが好ましい。これにより、分析結果の一部がコメントによって隠れている場合に、当該コメントの表示を終了することで、隠れている分析結果を表示させることができる。また、コメントを分析結果と重ならないように表示することも可能である。
また、上述した実施の形態においては、分析結果画面において、コメントが付与された項目の付近にコメントアイコンを表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。アイコンではなく、コメントにリンクされたボタン又は文字列(テキストデータ)を表示し、当該ボタン又は文字列をマウスでクリック操作する等して選択することで、コメントをポップアップ表示する構成とすることも可能である。
また、上述した実施の形態においては、分析結果画面に表示されたコメントアイコンが指定されたときに、コメントをポップアップ表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。コメントアイコンが指定されたときに、コメントをポップアップ表示させる代わりに、コメントが表示されたウインドウを、分析結果画面が表示されたウインドウとは別に表示させる構成とすることもできる。
また、上述した実施の形態においては、別個に設けられた測定ユニットと情報処理ユニットによって試料分析装置が構成される場合について述べたが、これに限定されるものではなく、測定ユニットの機能と情報処理ユニットの機能とを一体で備えた試料分析装置としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ3aにより分析プログラム34aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述した分析プログラム34aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。