JP5564500B2 - 平板ガラスを熱調整することによりガラス表面を処理する装置及びその方法 - Google Patents

平板ガラスを熱調整することによりガラス表面を処理する装置及びその方法 Download PDF

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Description

本発明は、平らなガラス、特にはリボンあるいは平板形状のガラスの表面を処理をするための装置に関するものであり、この処理はガラスの一方の面の温度を、効果的な処理を該面に生じせしめるに必要な時間に亘って所定値に上昇せしめるための熱調整をガラスに施すことによるものであり、特には化学的、光学的あるいは機械的特性を変化せしめることあるいは一つ以上の薄層を堆積させることによりこの処理は為される。
このガラスの調整はフロートガラス法、ローリング法、ドローイング法により連続的に製造されたガラスリボンに対して施される。この調整は又、連続的あるいはバッチフィードにより製造される平板ガラスの処理のためのプロセスにおいても適用できる。このようなガラスは予め処理をされたもの、例えばスズ溶湯(フロート浴)において生成された層により被覆されたものであってもいい。
本発明は、より具体的には、とはいえそれに限定されないが、建築、車両、あるいは太陽発電用の平板ガラスの製造のための処理装置に関連する。
以下に述べる用途のいくつかにおいては、薄層、多くの場合複数の連続薄層を堆積させることによるガラス表面処理を求められる傾向が強くなっている感がある。これらの層は、例えば、太陽光反射、低放射性、電気伝導度、色調付与、防汚性等の特性をガラスに与える。
本書記載を簡潔にする目的で、以下においては表面処理が上面についてのみなされる場合の説明をする。ただし、本発明において、処理される面は上面あるいは下面あるいは両面の場合もありうる。
ガラス表面の光学的あるいは機械的特性の修正は、ガラスリボンの片面にエングレーヴィングロール(彫刻ロール)を用いて構造を形作る方法により達成される。
他の用途においては、ガラスの機械的、化学的あるいは光学的特性の変性を、ガラスの一定の深さまでにおいて化学的かつ構造的性質を変える方法により達成することが求められる。
大気圧において薄膜を付着するのに用いられる主な方法は、CVD(化学気相成長法)、火炎CVD、大気中プラズマ、SP(スプレイ熱分解法)である。これらの方法によるならさまざまの程度にまでガラス表面を加熱あるいは冷却することが可能である。熱分解方法においては、反応物の分解と層の形成のためにガラスに高い温度を与えることが求められ、従って、平らなガラスがその形成過程あるいは処理過程(たとえばガラス焼き戻し)にあってまだ高温状態であるときになされることが特に好適である。
フロートガラス法による形成過程は、ソーダ石灰ガラスの場合は、1000℃の温度から約620℃の温度の溶融スズ湯の上でガラスリボンを形成するものである。リボンを一定の厚さおよび幅に形成できるのは約800℃以上の温度においてである。この温度を下ると、リボンの形状は安定して、リボンはスズ湯上で温度制御されつつ冷却される。許容上限温度620℃においてリボンは機械ローラによりわずかに湯面より持ち上げられ徐冷がま(lehr)に移される。この徐冷がまにおいてリボンは620℃から約50℃まで冷却されたところで切断されてパネルになる。
上限温度である約620℃とは、粘度が約 2.3 x 1010 dPasになる温度であり、これによりENあるいはASTM基準を満たす品質を得ることができる。ガラス支持手段による刻印きずや平面欠陥についての低品質設定のものの場合、離湯温度はもっと高くてもいい。
スタンダードのソーダ石灰ガラスの組成とは異なる組成のガラスの場合、フロート浴金属からの離湯時の許容上限温度も異なる。
リボン表面へのアクセスが比較的難しくなるにもかかわらず、薄膜付着が好適になされる理由で、CVD方法の一部はガラスの高温状態からの恩恵を得るべくスズ溶湯槽において行われる。スズ溶湯槽は、スズ溶湯の酸化を防止するために、N2+H2混合気による還元性雰囲気において保護される。この雰囲気は、金属層などの還元性雰囲気を必要とする層の蒸着を促進する。他の方法、例えばSP法は、槽上の雰囲気を汚染するのでスズ溶湯槽において用いることはできない。
徐冷がまのような焼きなましトンネルにおいては、雰囲気は空気であり、リボンはローラー上を搬送される。ガラス表面は従って、より蒸着しやすくなる。よってすべてのSPシステムおよびCVDプロセスの一部は徐冷がまの入口部に設けられ、そこではガラス温度は許容上限温度の620℃に制限される。
リボン表面の温度は、効率、品質、熱分解蒸着、あるいは例えば拡散による表面変性に対して重要な役割を果たす。
標準的熱分解CVD処理の例としては、建築に用いられる反射層などになるアモルファスケイ素の薄層の蒸着がある。この蒸着は気体水素化ケイ素の分解によってなされる。水素化ケイ素の熱分解速度は650℃より低いところでは遅く、610℃より低ければ部分的にしか進行しない。徐冷がまにおけるガラス温度は制限されているので分解プロセスの効率を無視できないほどに低めるものである。冷却された反応器がガラスにごく接近しているので、これもガラスが熱を失う要因である。
SP処理はCVDプロセスの場合よりガラスリボンの温度を下げるので、例えばソーダ石灰ガラスの場合、温度が局部的に約570℃を下ると、ガラスが変形するという問題がある。このような低温はまた反応物分解効率の低下や薄層の付着不良を引き起こす。
例えばガラス中に着色性イオンを拡散することにより色調を付与したり、アルミナの拡散により化学的あるいは機械的硬度を高めるようなガラス表面処理方法は、高いガラス温度を要する。
蒸着層及び/又はガラス中におけるイオンの拡散を促進するために電界を負荷することもある。
化学物質をガラス表面に付着させる方法としては様々なものがあるが、例えば、火炎においてナノ粒子を生成するものや、CVD反応器における反応物の分解を行うものがある。ガラス中における元素の拡散の速度は温度に直接依存する。そして徐冷がまにおける温度は制限されており、ガラスはソーダ石灰ガラスの許容上限温度である約620℃より低い温度にある。
米国特許第4536204号は、リボンの幅方向の温度不均一を低めるために、コーティングの前に、リボンの上表面を加熱することを記載している。輻射加熱手段が採用されている。しかしながら、ガラス中に注入された熱フラックス量は、許容上限温度を超えないように制限されねばならない。従って、上面においての到達温度レベル及び温度持続時間は制限されねばならない。
米国特許第4022601号は、スズ溶湯槽と徐冷がまとの間に設置されたSPコーティング装置について記載している。ガラスが製造され且つ求められる品質レベルが達成されるための許容上限温度は、槽の出口において649℃である。コーティング装置はガラスを無視できないほどに冷やすので、コーティング装置のすぐ上流の上面付近に加熱装置が設置され、以てこの冷却を相殺しつつガラスを当初の温度に戻すのである。コーティング装置の下面付近に設けられた第2の加熱手段は、コーティングプロセスにより生じた冷却を相殺するためのものであり、以てガラスの時期尚早の凝固により生じる変形を防止する。この発明はガラスを、溶湯槽の出口における温度以上の温度に加熱することを許容しないものである。
米国特許第4536204号公報 米国特許第4022601号公報
本発明の最も重要な目的は、処理される方のガラス面の温度を上昇せしめて上記諸々の方法の効果がいかんなく発揮され、同時に変形及び/又は処理面とは反対側の面に置かれる支持手段、特には支持ローラによるガラスへの刻印きずを生じさせないようにすることである。
本発明の主要な構成要素は、平らなガラス、特にはリボンや平板の形状をしたガラスの表面を処理するための装置、特には化学的、光学的あるいは機械的特性の変性、あるいは単数又は複数の薄層を堆積させることにより処理する装置であり、その特徴とするところは、該装置が、ガラスにおいてその厚さ方向に制御された温度勾配を生じせしめるための加熱および冷却手段と、ガラス処理面を加熱してその面が効果的な処理を施されるに必要な時間に亘り常時必要な温度に保たれるようにした手段と、ガラスの反対面(非処理面)を冷却して該反対面の粘度が 1013 dPas と 2.3 x 1010 dPasの間、好ましくは約1.9 x 1012 dPasであるようにする手段と、より成る。
好適には、本装置は順に下記のものを含んで構成される:
・ 処理されようとする面を加熱する手段と反対面を冷却する手段とを有して、処理されようとする面と反対面とが各々の目標温度になるようにした初期設定ゾーン(initialization zone)、
・ 処理されようとする面を加熱する手段と、その面を処理する手段と、処理されようとする面の反対側の面を冷却する手段と、を有した処理ゾーン、
・ 冷却手段を有した均一化ゾーン、
・ 処理装置の入り口と出口に置かれた熱損失と換気を制限するためのデヴァイス
前記初期設定ゾーンの長さが、下記定義によるペクレ数 Pe が 0.5と15の間、好ましくは3と5の間にあるようにすることにより、処理されようとするガラス面とその反対面とにおいてそれぞれの目標温度が前記初期設定ゾーン内で到達することを可能とするようにした、
Figure 0005564500
式中、
tdiff は深部における熱拡散のための指標時間であって、tdiff
tdiff = (厚さ/2)2/熱拡散率
の式から求められ、
tconv は初期設定ゾーンにおけるリボンの水平搬送のための指標時間であって、tconvは tconv = ゾーン長さ/リボン速度
の式から求められる。
本装置は、一つ又はそれ以上の連続した処理デヴァイスをガラスの同一面に集積して配置したり、あるいは両面に分けて配置する。
平板ガラス表面処理装置は、支持手段によるガラスへのきず及び/又は機械的強度不足によるガラスの変形を防止するに適した温度に反対面を維持しつつ、且つ過度の冷却によるガラスの凝固を防止する冷却手段を含んでいる。
本発明はまた、平らなガラス、特にはリボンあるいは平板形状のガラスの表面を処理をするための方法に関するものであり、特には化学的、光学的あるいは機械的特性を変化せしめることあるいは一つ以上の薄層を堆積させることによりこの処理を為すものであり、その特徴とするところは、ガラス処理面を加熱してその面が効果的な処理を施されるに必要な時間に亘り常時必要な温度に保たれるようにした手段と、ガラスの反対面を冷却して該反対面の粘度が 1013 dPas と 2.3 x 1010 dPasの間、好ましくは約1.9 x 1012 dPasであるようにする手段とにより、当該ガラスにおいてその厚さ方向に制御された温度勾配を生じせしめることである。
好適には、本方法によると、
・ 初期設定ゾーンにおいて、処理されようとする面を加熱しつつ反対面を冷却し、以て処理されようとする面と反対面とが各々の目標温度になるようにする、
・ 処理ゾーンにおいて、処理されようとする面を加熱処理し、同時に処理されようとする面の反対側の面が冷却される、
・ 均一化ゾーンにおいて、処理された面の反対側の面が冷却される。
初期設定ゾーンにおいて、両面上の熱フラックス量は、正及び負であって、リボンの平均温度をわずかに上昇せしめる程度に均衡を崩していることが好ましい。
処理ゾーンにおいて、両面への加熱及び冷却は、ガラスリボンにおける温度勾配が安定に保たれるようバランスがとられていてもいい。
均一化ゾーンにおいては、冷却が継続中に、加熱が停止されてもいい。
本方法によると、支持手段によるガラスへのきず及び/又は機械的強度不足によるガラスの変形を防止するに適した温度に反対面が維持されており、同時に過度の冷却によるガラスの凝固が防止される。
本発明を実施することにより、表面処理が行われる温度に昇温がなされ、処理効果が向上する。この昇温は短期的処理を行うことが必要なときには短時間で達成でき、あるいは当該表面処理が必要とするなら長時間に亘っても温度を保持できる。
本発明では、この昇温は、処理面と反対の面において同時冷却をすることによって可能とされる。この同時冷却は反対側の面の温度を制限する効果があるので、ガラスのきずやいたみを防止することができる。これはガラスの部分的凝固による平面欠陥を防ぐためにも抑制せねばならない。
本発明の方法はまた、ガラスの熱調整が、デヴァイスによる処理の前及び/又は後に行われることが特徴である。この熱調整は、デヴァイスによる処理中に為されてもいい。
熱調整が、処理中に為される場合には、処理デヴァイスは加熱及び/又は冷却手段を組み込んでもいい。
本発明方法はまた、ガラスの上面の温度が表面処理装置に沿って調節されるので施される諸々の処理を最適化することができることが特徴である。
処理の種類によっては、上面が目標温度に加熱され、該処理が施されるに必要なだけの時間この温度が保持される。
上面の加熱と反対面の冷却により、ガラス中に高い温度勾配が生じる。処理が終わった後に、処理装置出口及び徐冷がま入口において通例の温度条件を回復させるべく、例えば上面を冷却することにより、ガラスの厚み方向での温度を均一化しておくことが望まれる。
本発明の別の態様によると、ガラスが処理装置の出口において通例の徐冷がま入り口温度にまで達していない。この場合、徐冷がまの初期冷却を、例えば上部冷却を強化すること及び/又は第1ゾーンを延長することにより調整する必要がある。
さらにまた別の処理例によると、リボン表面が昇温される温度は、処理効果を最適化する目的で熱調整装置に沿って調節され、このとき処理面の温度は620℃より高くし、反対面の温度は、ソーダ石灰ガラスの場合には、その推奨される温度範囲である550℃乃至620℃に保つ。
他のグレードのガラスの場合、それぞれの好適な温度レベルは粘度によって表すことにより得られる。処理される面の粘度は約2.3 x 1010 dPas,より高く、且つ反対面の温度は推奨される粘度範囲である約1013 dPas 乃至2.3 x 1010 dPasにで保つ。
本発明の模範的態様においては、処理されようとする面の温度はガラス上の任意の一点に着目すると平均温度からある高い温度とある低い温度の間を上下し、且つ反対面は、ソーダ石灰ガラスの場合に、約570℃の温度に保たれ、これは約 1.9 x 1012の粘度に対応する。本態様は、ガラスの厚みに対する拡散処理を強化するものであり、この拡散がアレニウスの法則に従うとき、温度ピークがあることにより、単なる平均温度にて保持するよりも大きな拡散が得られる。
本発明の方法の更なる特徴は、処理装置が一つあるいはそれ以上の連続したガラス処理デヴァイス、例えば種々の層の積層をおこなうもの、層を拡散方法で組み合わせるもの、あるいは単一の非常に厚い層を作るもの、を組み込むことである。これらの連続した処理デヴァイスは、違いに異なるタイプのものであってもいい、例えばSPの後にCVDがあり、その次に火炎CVDがくるというふうに。本発明で特許請求されているこの表面処理装置は、通例はスズ溶湯中あるいは徐冷がまで行われる処理を自らの中で行うのである。また本装置は種々の方法が実行される順序を入れ替えることで流れの制限を克服するのである。実際、SP処理を初めにして、次に高温CVD処理をスズ溶湯槽にて為すことが可能であるが、これはSPを溶湯槽の中で用いることは禁じられていたのでこれまでは不可能であった。
本発明方法では、処理デヴァイスをガラスの片面あるいは両面に設置する。両面に処理を施すなら、例えば片面に機能層を載せ、他方の面に例えば反射防止膜及び電導性の透明層を載せる組み合わせが考えられる。
実行される処理方法のタイプや順序は意図されたガラス処理結果に応じて調節される。
種々の処理のための温度的要求は異なっており、従ってガラスの両面に付加される熱フラックス量は調節されねばならない。ガラスの処理されようとする面上での熱フラックスの流れの調節は、各処理において求められる温度を得るのに役立つ。例えば、SPの上流よりも下流のほうをより強く加熱することが必要である。
本発明方法はまた、ガラスの上面の温度が各連続処理を最適化するために当該熱調整装置に沿って調節されることを特徴とする。
本発明方法はさらに、ローラなどの機械手段により支持されたソーダ石灰ガラスの場合、ガラスの処理されようとする面の温度が620℃より高く、且つガラスの反対面の温度が熱調整装置の内部において550℃と620℃の間にあることを特徴とする。
本発明の模範的態様によると、処理をなすために高い熱フラックス量と高い表面温度が必要な時には、より多くの熱を除くために、処理ののち被処理面の冷却が為される。
本発明による加熱手段は、横波(トランスヴァース)温度プロファイル(transverse temperature profile)を生じ、異なる温度レベルの間を上下する。下面の冷却の強さは、また横波的に調整される。上面におけるこれらの異なる温度レベルは、ガラスの幅方向に亘っての堆積体の厚さ、拡散の規模、あるいはその他の変性について変化をもたらす。例えば、光電池セルの製作においていくつかの光電池セルを接触させる目的で連続した切片よりなる金属蒸着層を施すことが可能である。
本発明によると、処理装置内の雰囲気の化学組成、圧力、温度は実行される各処理に応じて決められる。
ある種の層、例えば金属層、を蒸着する時には還元性雰囲気が必要である。処理装置内にある物種によっては、安全性を考慮して、装置内の気圧を大気圧より高くしたり低くしてもいい。処理装置は複数の部分に区画されていてよく、各部分で実施される処理に対応してそれぞれ異なる気圧としていい。処理装置内の雰囲気は、スズ溶湯槽から供給してよく、途中濾過器を介してもいい。一般的には、処理装置内の雰囲気は無埃でなくてはならず、このためには噴射ガスを濾過することが肝要であろう。
フロートガラス法の場合、本発明で特許請求された処理装置は、溶湯槽の出口と徐冷がまの間に置かれるか、徐冷がまの発端に組み込まれる。同装置はスズ溶湯槽及び/又は徐冷がまと分離していても合体していてもかまわない。
ガラスの熱調整のための温度パラメタを定義するためには以下のものを考慮する必要がある、
・ 処理のために必要な温度に加熱される厚さ
・ ガラスの速度
・ ガラスの熱拡散率
・ ガラスのエンタルピー
・ ガラスの輻射率
本発明で特許請求された処理装置は、広い範囲の厚みのガラス、例えば2乃至25mmの厚みのガラスを処理するのに好適である。様々の種類の処理が可能であるが、望ましい結果を得るためには、適切な温度設計が必要であり、同時にガラスの過度の加熱や、過大な装置設計や、過度のエネルギー消費は避けねばならない。
本発明で特許請求された方法によると、膨大なる範囲のフロートガラス製品を得るために種々の深さにプリントされるリボンの加熱及び冷却のための最適条件を容易且つ迅速に決定することが為される。それは模範的実施例のため記載される。
上記された態様とは別に、本発明は、いくつもの違った態様をも包含するのであり、これらについては添付された図面を参照しつつソーダ石灰ガラスの場合においての模範的実施例に関連して以下により詳しく説明する、が図面は発明を限定するものではない。これら図面を説明すると、
図1は、本発明方法を採用するフロートガラス製造ラインの略式縦断面である。 図2は、熱調整装置のより細部を示す、第1図の部分拡大略図である。 図3は、処理温度を一定にした場合で、長さ方向の位置をx軸にとってこれに対応するリボン温度をy軸にとって示したダイアグラムである。 図4は、処理温度を一定にした場合で、厚さ方向の位置をx軸にとってこれに対応するリボン温度をy軸にとって示したダイアグラムである。 図5は、本発明で特許請求された処理装置であって、ガラス上面側に4つの連続した処理デヴァイスを有したものの縦断面図である。 図6は、透明ソーダ石灰フロートガラスの吸収スペクトラムと黒体のスペクトラムとを示すダイアグラムである。 図7は、処理温度を、上面側に3つのCVD反応器、下面側に一つのCVD反応器を配して、計4つのCVD反応器で処理温度を調節する場合で、長さ方向の位置をx軸にとってこれに対応するリボン温度をy軸にとって示したダイアグラムである。
高温におけるリボンの搬送は、ローラによるきずあるいはローラ間でのガラスのいたみや変形といった、大きな問題に直面する。
ソーダ石灰ガラスの場合、経験によるなら、典型的搬送スピードである 10−20m/minにおいて、約620℃の温度が支持ローラによるリボンへのきず付けあるいはローラ間でのいたみを防止できる上限温度である。例えば平板ガラス処理炉において行われるより低いスピードの場合、許容上限温度はもっと低く、約580℃である。
ソード石灰ガラスの場合、経験が教えるところによると、約570℃がガラスが凝固し始める下限温度値である。
ガラス平板あるいはリボンの冷却時に、両面は対称的に冷却されねばならない。ガラスはその転移温度 Tgより高い温度においては、対称的冷却によってまず両面の対称的凝固が為され、次いで全体の凝固が為される。両面において凝固が対称的に起こらなければ、ガラスは湾曲する。もし片面のみが凝固し始めると、ガラス平板やリボンは変形する。
これらのリスクを鑑みた上で、本発明は、ソーダ石灰ガラスの場合、ローラに接している反対側のガラス面の温度を550と620℃の間に保つことを規定する。
ローラ間におけるいたみや変形はガラスの温度に依存する。ソーダ石灰ガラスの場合、均一温度約620℃が許容上限となり、その温度では、徐冷がまの標準的仕様であるローラ間隙500mm を通るガラスにはひどいいたみが観察される。
ローラ間でのひどいいたみはガラスに永続的たわみを植えつける。
ある種のガラス処理、例えばCVDによる薄膜の蒸着においては、ガラス表面とCVD反応器とのすきまが減少する危険があるので、ガラスの平坦度は最大限守られねばならない。
ガラスを搬送するためにリフティングテーブルも用いられる。機械的接触がないぶん620℃よりわずかに高い温度まで許容されよう。しかしながら、粘度の低下がガラスの機械的強度を急激に低める。
従って、機械的搬送装置を有した平板ガラス用の熱調整システムにおけるソーダ石灰ガラスの許容上限温度は約620℃ということとなる。
例えばCVDによる、表面処理方法の効果を向上する目的で、本発明は、処理を受ける面の温度を、例えば650度に上げることを規定する。CVD反応器のすぐ上流に配置されたヒータはガラスの上面、通例被処理面の温度を、反対面の温度を上昇させることなく、上昇する働きがある。この熱フラックスはガラスがCVD反応器を過ぎたときには速やかに除かれねばならない、なぜならば温度が下面で許容限度温度を越えることを避けねばならないからである。反応器が幾ばくかの熱損失を引き起こす場合には、これは意図された層の付着には好都合なのであるが、反応器を過ぎてから被処理面の冷却を行ってもいい。しかしながら、この選択は通例の厚み、すなわち3−5mmを有したガラスにとっては好ましくない、なぜならば、加熱および蒸着の際に生じる熱拡散が、反対面の温度を急激且つ過度に上昇せしめ、以てローラがガラスを傷つけるのを促すからである。複数の層を堆積すべく連続したCVD反応器を用いる場合、リボンの厚みに亘って起きる熱拡散の問題はより深刻である。この態様は、CVD処理にとっては有害なローラ間でのリボンの更なる損傷を招く。
本発明は、支持手段によるガラスへのきず付け及び/又は機械的強度不足によるガラスの変形を防ぐために、反対面を冷却してその強度を保つ必要がある一方、過度の冷却によるガラスの凝固も防がねばならない。
図1は、本発明の第一の模範的実施例であって、フロートガラスプロセスによるガラスリボン製造設備を大まかに示すものである。
この設備は、ガラスの生成に用いられるガラス原料、砂、フラックス、キュレット等が導入される炉1を含む。ガラスリボンBはペイスト状態のまま、還元雰囲気の中、特には窒素・水素雰囲気の中、フロート室3の低部を占める溶融スズ浴に支えられつつ炉1を離れる。ガラスは、約1000℃と600℃の間の温度においてスズ浴上で形成される。
フロート室3の出口において、ガラスリボンBはスズ浴から持ち上げられ、リフトアウトローラと呼ばれるローラ4に乗ってドロスボックスDB(あるいは浴出口)に送り込まれる。リボンBは次いで、大気の中、数十センチの距離のスペース5を通過する。場合によっては、このスペースは封じられておりスズ浴からガスを除去する手段を備えている。
リボンBは次は、本発明によるところの表面処理装置Aに入る。これはガラス搬送手段としてのローラ6と、ガラスの上面側に設けられた加熱デヴァイス7と処理ユニット8と、ガラスの下面側であって加熱デヴァイス7に対向して設けられた冷却デヴァイス9を含んで構成される。表面処理装置Aの入口と出口に設けられたデヴァイスEは熱損失と雰囲気の流出入を制限するものである。
処理装置を出たら、ガラスは徐冷がまLに入る。徐冷がまの中ではガラスリボンはずっと、リボン搬送スピードで回転するローラ10によって水平に支持されている。調節可能な張力FがリボンBに掛けられる。この張力Fの強度はスズ浴槽3におけるリボンBの形成に影響を与える。クーラKがリボンの上下に設けられる。
本実施例に置いて考慮されたデータは次の通りである。
・ 幅が3.7 m、厚さが 4 mm、移送速度が
15m/minの薄膜層を有さない透明ソーダ石灰ガラスリボン
・ 表面処理はLORローラ4の後であってリボンのアニーリングの開始前に行われ、ガラスは610℃の温度に保たれる。
・ 表面処理は上面を650℃の温度にまで加熱することを要する。
・ 表面処理はこの温度を12秒間保持することが必要であり、これは長さ3m と速度 15m/minによる。
・ 表面処理システムはリボンの熱伝導には何らの影響も与えない、すなわち、同システムはリボンの温度を変えない。
以下に論じられる他の実施例は、表面処理システムがリボンの熱伝導に影響を与える場合に関わる。
我々はここでこの実施例をより詳細にわたって考察する。
望まれる温度と維持期間を得るために、本発明では下記に示し、第2図に示されたごとくに加熱及び冷却システムが設計されている。
60kW/m2の正熱フラックス量が0.7mの長さ(初期設定ゾーン11)に亘って上面に付加されるが、具体的にはこれは燃焼ヒーティング11aによってなされる。
反対面(下面)において、同じ長さに亘って、熱フラックス −15 kW/m2によって冷却が為され、これは特には空気流を伴う対流冷却デヴァイス11bによって為される。
次に、上面は長さ3.1m(ホールディングゾーン12)に亘ってフラックス25 kW/m2によって加熱が為され、これは特には輻射加熱デヴァイス12aによって為される。
反対面において、0.7mの位置から、長さ4mに亘ってフラックス−25 kW/m2によって冷却が行われる。
均一化ゾーン13がホールディングゾーン12に続く。
図3は、ガラスリボンにおける温度プロファイルを示すもので、曲線 Tsupは上面の温度であり、 Tinfは下面の温度であり、Tcentreは中央の温度である。y軸は単位℃の温度、x軸はメートル位置をプロットしている。
調整開始時における強化加熱の熱フラックスは、リボンにおける熱勾配をより迅速に確立させる。熱フラックスは、この部位では、両面において、正負のバランスがとれておらず、以てリボンの平均温度をわずかに上昇せしめる働きがある。
リボン表面における望ましい温度である650℃はすばやく得られる。冷却により、下面の温度が、ローラによってリボンが傷つけられるか否かを左右する臨界温度である620℃以上になるのを防止する。
下面の温度は約580℃に低下する。しかしこの温度はリボンの変形をもたらすおそれのあるリボンの時期尚早の凝固を防ぐには十分である。
0.7m位置と3.8m位置との間の長さ3.1mの間隔に亘って両面間で加熱と冷却とがバランスがとれており、従ってガラスリボンには安定した温度勾配が保持される。これにより表面処理プロセスを通して、上面は温度650℃に、下面は580℃に維持される。
図3のダイアグラムにおいて、3.8mの位置で上面の加熱は停止され、厚さ方向でリボン温度が均一となるべく、冷却は継続される(均一化ゾーン)。上面の温度は、このとき、リボンからの熱の深い拡散によって、上面をあえて冷却しなくとも、急激に低下するのである。この上面の温度低下はこの温度均一化を加速する効果がある。この下面の温度低下は4.8m位置まで継続される。このようにして、リボンの平均温度は低下し、これにより、およそ7m位置で本発明の熱調整を施す前の初期のリボン温度に復帰がなされることとなる。
徐冷がまの第1ゾーンが温度的に調節されている場合には、熱調整装置は3.8mの位置で終結してもいい。この場合、徐冷がまの入口においてリボンの温度差を制限された距離に亘って上面を強化冷却することにより解消することが重要である。
図4のダイアグラムは、熱調整ゾーンに沿ってのリボンの縦温度プロファイルを示す。温度はy座標に、厚さ位置はx座標にプロットしている。実線は装置の0.7m位置におけるプロファイルであり、点線は1m位置におけるプロファイルであり、破線は3.8m位置でのものである。
温度が650℃に達する時にはプロファイルはまだ曲線ではあるが急激に直線化している。1m位置において、温度プロファイルはまだわずかに曲線である。3.8m位置において、プロファイルは直線である。しかしながら、0.7m位置ですでに目標温度には到達しているのでガラスの表面処理は0.7m位置で開始されているであろう。
リボンの熱調節に必要な熱フラックス量を決定するためには、ガラスの伝導度を特定しておく必要がある。ガラスは音子(phonons)と光子(photons)によって同時に伝導性が発するという特質があるが、吸収スペクトラムの不透明部分(opaque part)において放たれている光子のみが作用伝導度(active conductivity)に寄与する。
透明ソーダ石灰フロートガラスの600乃至700℃の範囲での作用伝導度は次のリニア近似式で求められた。
λ(T) = (a0 + a1・T)[W/m・K]
ここで、 係数a0 は 0.9 であり、 a1は8.910-4*K-1である。
他のグレードのガラスについては、いくつかの文献群が詳細に伝導度、熱拡散率、及びその決定方法を記載しているが、一例として、 M. Lazard, S. André, D. Maillet, Int. J. of Hear and Mass Transfer 47 (2004)の第477ページから第487ページがある。
ガラスシートの厚さ(4mm)と、処理に求められる表面温度(650℃)と、下面での固定温度(580℃)がわかれば、シート全体に付加されるべき熱フラックス量は次のようにして決定される。
Figure 0005564500
上掲した例のパラメタの場合、ホールディングゾーンで付加されねばならないフラックスは25kW/m2であることがわかる。このフラックスは第3図において示されたシミュレイションにおいて用いられた。目標温度に近い温度が効果的に得られている。
初期設定ゾーンの長さ、すなわち上面と下面とにおいて目標温度に到達し、且つほぼ直線の温度勾配を達成するまでに要する時間を決定するために、諸々のガラススピード、諸々の厚さあるいは熱拡散率に適する初期設定ゾーンの長さを求めるための他のアプローチが用いられている。
ペクレ数という単位を有さない数が、移動するガラスを加熱する本発明において適用される質量移送と組み合わされた熱拡散プロセスにおける最適条件群を決定するのに役立つ。我々の場合、熱拡散方向は、リボン搬送に対応した質量移送方向に垂直である。この特徴により、拡散と移送の方向が一致したことによる単一方向性のアプローチを用いて従来のペクレ数を最定義することが必要である。
この再定義は、深さ方向への熱の拡散のための指標時間とガラスの水平方向移送のための指標時間の二つの指標時間に基づいて為される。
深さ方向の熱拡散のための指標時間tdiffは次の式で与えられる、
tdiff = (厚さ/2)/熱拡散率。
初期設定ゾーンにおけるリボンの水平方向移送のための指標時間 tconvは次の式で与えられる、
tconv = ゾーン長さ/リボン速度。
これらの比tdiff/ tconvがペクレ数Peを定義する。
Figure 0005564500
初期化設定ゾーンの長さは、ペクレ数が0.5と15の間、好ましくは3と5の間にくるようにする。こうして深さ方向の温度プロファイルは十分に確立され、上面と下面とにおいてよい温度安定性が保証される。
上記例において、初期設定ゾーンの長さは、ペクレ数3に基づいて0.7mとしたのであった。第4図は、この長さによって、0.7m位置における深さ方向の熱拡散が良好となるようなガラス厚さ方向の温度プロファイルが確立できたことを示している。意図された処理をここで止めることも可能である。
長さを決定した後に初期設定ゾーンへ注入される熱フラックスを算定することは容易である。初期ガラス温度と目標表面温度との平均値が計算される。次に、ガラスのスピード、濃度および比熱とより、この平均値温度に到達するに要するエネルギーフラックスが計算される。このフラックスを初期設定ゾーンの長さで割るとガラスに注がれるべき熱フラックスの濃度が得られる。
同様の手法を用いて、初期設定ゾーンにおける下面を冷却するための熱フラックス濃度が求められる。同じ方法を用いてさらに処理装置の連続する熱調整ゾーンの長さとフラックスを求める。
図5に示された本発明の次の実施例は、温度初期設定ゾーン11と、処理ゾーン12と、温度均一化ゾーン13とを含んだ処理装置を用いる。
初期設定ゾーン11は燃焼加熱装置11aを含んでいる。
処理ゾーン12において、いくつかの連続したユニットが、ガラスの化学的変化及び/又は薄層の堆積を成さしめる。第5図の例によると、処理ゾーン12は以下のものを含んで構成される、
・ ローラに支持されたガラスリボンの上方に、順に配置された、プラズマ処理ユニット12b1、CVDユニット(又は反応器)12b2及びSPユニット12b3、及び火炎CVDユニット12b4、
・ 次に、リボンの下面を処理すべくリボンの下方に配置された、CVDユニット12b5、なおこれはローラがない部分でリボンの下からガスを吹き付け以ってリボンを支持する手段を備えている、
・ 例えば赤外線あるいはマイクロウェイヴを輻射する加熱手段12a。
特には空気吹きつけ式の、複数の冷却デヴァイス11bは処理面の反対面側に設置される。
均一化ゾーン13は、順に、インシュレイション13bと、リボン温度を測定するための熱電対を備えた上下クロスビーム付きのデヴァイス13cと、を有した水冷器を含んで構成される。
本発明によるなら、処理面の表面温度はこのゾーンの長さに鑑みて調節され、以って各々の処理が最適化されるが、下面の温度は目標範囲、ソーダ石灰ガラスの場合は550℃と620℃の間、に保持される。この温度調節は、直前の処理工程の出口温度及び次の処理工程の入り口での目標温度を目安としてのガラスの上面を加熱、均等化、あるいは冷却する必要に従って、加熱手段、均等化手段、あるいは冷却手段によって実行される。
図5において、例えば光学的高温計あるいは堆積装置に組み込まれた熱電対より成る、温度測定手段14が示されている。また、加熱システム(燃焼炎管)、堆積システム及び冷却器からのガスを回収するための複数のデヴァイス15も示されている。リボンにより予め加熱される冷却空気は溶融炉での燃焼のために回収される。リボンを処理するに用いられるガスの種類によっては、そのガスを濾過及び/又は溶融炉での燃焼により回収される。
我々は次に、ガラスの加熱についてのいくつかの可能性について考察する。加熱方法は、表面を介して熱を注入する場合に特に適した表面方法、及び物質全体を一気に加熱することのできることで知られる体積方法に分類できる。
1.表面方法:
例えば電熱器、輻射炎あるいはレーザなどによる輻射法(ガラスの不透明スペクトラムにおける輻射熱の吸収によりなされる加熱)
熱風法(ガラス表面への対流及び伝熱)
熱ガス法(燃焼による輻射、対流、および伝熱)
プラズマ(ガラスシートへのイオン化ガスの接触)
2.体積方法:
マイクロウェイヴ(誘電加熱)
誘導加熱[電流の散逸(dissipation)による加熱]
ガラスの種類と厚さにより求められる光学的厚さ約1に対応する波長を用いた輻射加熱、
一般に、マイクロウェイヴあるいは誘導加熱による薄いガラス板の過熱には二つの大きな困難を呈する:
・ 特に低温におけるガラスに対して、吸収が弱く、歩留まりも悪い、
・ 熱が(コントロールされた深さでなく)体積の深部まで浸透する
体積加熱手段は、処理表面の下に非直線温度勾配を有した熱保留をガラスの厚さ方向に生じせしめる有利な点がある。このことは、冷却処理の間に被処理面の表面温度が低下することに対しての抑制となる。同時に、下面の冷却は被処理面を目標温度に保持することに役立つ。
電気的伝導によるコーティング、反射コーティングあるいは低放射コーティングは、赤外線放射の反射を招く。よって、コーティングされた面を介して赤外線放射でガラスを十分に加熱することは不可能と思われる。ガラスあるいは層を輻射で加熱するのは、例えばマイクロウェイヴや誘導式のように輻射が異なる波長を有している場合には可能であろう。用いられる加熱手段はまた対流式であってもいい。
加熱手段としてははまたすでに堆積された複数層の特性を利用することができるようなものを選択してもいい。従って、誘導加熱式のものは例えば金属のような導電層の加熱に主に有用である。
加熱手段は、例えば二つの温度レヴェルを互い違いにするように、ガラスの幅方向に沿って異なる強度の処理を施す目的で、幅方向温度プロファイルを得るように用いることができる。
表面加熱のための手段としては、象形(engrave)されるリボン面に火炎が向けられるようリボンの幅に亘って傾斜して並んだバーナ列が一例である。
ガラスの上面のための加熱および冷却手段は処理装置に組み込まれてもいい。
冷却手段としては、例えば、内部を空気や水のような冷却媒体が流れる管体をガラスの処理面に近付けてガラス幅方向に亘って伸びるよう設置した輻射式手段であってもいい。冷却手段はまた、ガラスにガスを吹き付ける対流式手段であってもいい。このガスは処理装置内の雰囲気ガスと異なっても同じでもいい。
本発明の方法また、ガラス下面用の冷却手段が機械的ガラス支持装置を過度に冷却することのないようにしたことが特徴である。
一方の面を冷却することが必要になったとき、この冷却は、冷却デヴァイスあるいは表面処理装置のチャンバー設計に由来した自然冷却によって可能である。例えば、チャンバーの薄い断熱体又はハッチ群を開にすることによりガラスの自然冷却を促せる。
我々は次に、徐冷がまにおいて通例用いられている電熱器の輻射熱による電気的加熱について詳細に考察する。ガラスの一方の表面のみを加熱するとき、加熱のスペクトラル特性を考慮せねばならない。
図6において、実線は4mm厚の透明ソーダ石灰フロートガラスの吸収スペクトラムを示している。波線は825℃における黒体のスペクトラムである。ミクロンで表した波長はx座標にプロットした。光学的厚さはy座標の左側スケールにプロットし、W/m2 μmで表した黒体輻射量はy座標の右側スケールにプロットした。
この図は、黒体エミッタの輻射が2.7μmを越える波長のものはガラス表面に実質的に吸収されることを示している。二つの無限プレイトの間の放射交換の計算により、第1の実施例によるところの定常状態において必要とされる 25 kW/m2の正味熱輻射量を伝導するのに必要な条件群を決定するのに役立つ。この目的では、黒体エミッタは825℃の表面温度を持っていなければならない。この温度で、黒体はまたガラスの光学的ウィンドウに22kW/m2だけ放射する。放射はリボンを通過し、その下にあるローラや他の器具を加熱する。黒あるいは灰色のエミッタは従って、ガラス表面を加熱するための適正としては半端なものに過ぎない。放射波長を2.7μmより低くしてスペクトラルエミッタを用いることが好ましい。他の解決法は、空気あるいは低放射熱気送管ガスを用いた対流式加熱を用いることである。
図7は、3つのCVD反応器が上面側に、1つのCVD反応器が下面側に配置された本発明による他の実施例の温度シミュレイションを示している。フロートガラスリボンは3mmの厚さと5m/minのスピードを有している。ガラスは透明ソーダ石灰品である。各反応器は800mmの長さを有しており、これによりリボン表面の熱損失が反応器の始点で25 kW/m2、終点で10 kW/m2になるようにこれらの間を変化することとなる。
図7において、処理装置に沿ってメートル単位で表示された位置がx座標にプロットされ、℃で表示された温度がy座標にプロットされている。実線の曲線はガラスリボンの上面の温度変化を示しており、破線は下面の温度変化を示し、点線はリボン中央の温度変化を示す。
初期設定ゾーンは第1の実施例で述べられているように、ガラス厚さ方向の温度勾配を確立する役割がある。次に、CVD反応器の熱損失を予測して、各反応器の上流で短時間の加熱が行われる。この加熱によって、処理されようとする面は約750℃の温度に加熱され、以って反応器の中間点でのガラス表面温度が650℃より高く保持されうる。第1の反応器(長さ0.8m)の位置は、第7図に示されているように、1m位置(反応器の発端)と1.8m位置(反応器の終端)との間に配置され、他の反応器はそれぞれ短時間加熱エリアを間において同様の位置に配置される。
上面の上方に配置された第3の反応器のすぐ下流に位置する新たな初期設定ゾーンがガラスの温度勾配を逆転させるよう働く。上面はこうして約580℃となり、従ってリボンの機械的安定性が確保される。下面は必要な処理を施すために約750℃に加熱され、続いて冷却されねばならない。2つの支持ローラ間に通常確保できる距離はガラスのこの加熱、処理及び冷却のためには不十分である。従ってCVD反応管はリボンを持ち上げるようにも設計されている。反応管の上流加熱デヴァイスと下流冷却デヴァイスとはガラスを支持する働きもある。7m位置において、リボンの支持は再びローラによって引き継がれる。この位置においては、温度は厚さ方向にほぼ均一化され、処理装置内のリボン入り口温度である610℃に近づく。
処理されようとする面を加熱する手段はすでに堆積された層を加熱する働きがある。
処理されようとする面を加熱する手段はすでに堆積された層を加熱するのが主目的である。
処理されようとする面を加熱する手段は輻射される放射波のほとんどがその中ではガラスが不透明となるような波長を有している。
堆積層及び/又はガラス中のイオンの拡散を促進する目的で処理装置内に電界が負荷される。
1 炉
3 フロート室
4 ローラ
5 スペース
6 ローラ
7 加熱デヴァイス
8 処理ユニット
9 冷却デヴァイス
10 ローラ
11 初期設定ゾーン
12 処理ゾーン
13 均一化ゾーン
14 温度測定手段
15 デヴァイス

Claims (21)

  1. リボン形状及びプレイト形状から選ばれる形状の平板ガラスの表面処理装置であって、化学的特性、光学的特性、及び機械的特性の少なくとも1つを変性させる、あるいは単数又は複数の薄層を堆積させる、ことにより処理する装置であって、その特徴とするところが、該装置が、ガラスに遍く熱フラックスを生じせしめるための加熱手段および冷却手段と、処理されようとするガラス処理面を加熱してその面が効果的な処理を施されるに必要な時間に亘り常時必要な温度に保たれるようにした手段と、ガラスの反対面を冷却して該反対面の粘度が 1013 dPas と 2.3 x 1010 dPasとの間となるような温度に至らしめる手段と、を含んで構成されたことであり、
    前記表面処理装置は順に:
    (a)処理されようとする面を加熱する手段とその反対面を冷却する手段とを有し、以ってガラス内に遍く熱フラックスを生じせしめ、且つ処理されようとする面と反対面とが各々の目標温度になるようにしてなる初期設定ゾーン(11)と、
    (b)処理されようとするガラス面を加熱する手段とその面を処理する手段と、反対面を冷却する手段とを有し、以って表面処理プロセスの作動中にガラスリボン内に遍く安定した温度勾配が保持されるようにしてなる処理ゾーン(12)と、
    (c)処理された面の反対面を冷却する手段を有し、該反対面を冷却するようにしてなる均一化ゾーン(13)と、
    を含んで構成されてなる表面処理装置。
  2. 前記処理装置は、ガラスの反対面を冷却して該反対面の粘度が1.9 x 10 12 dPasとなるような温度に至らしめる手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
  3. 熱損失と換気を制限するためのデヴァイス群(E)が処理装置(8)の入り口と出口に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
  4. 前記初期設定ゾーンの長さが、下記の式により定義されるペクレ数 Peが 0.5と15の間にあるようにしてなり、以って処理されようとするガラス面とその反対面とにおいてそれぞれの目標温度が前記初期設定ゾーン内で到達することを可能とするようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理装置。
    Figure 0005564500
    式中、
    tdiff は深部における熱拡散のための指標時間であって、tdiff
    tdiff = (厚さ/2)2/熱拡散率
    の式から求められ、
    tconv は初期設定ゾーンにおけるリボンの水平搬送のための指標時間であって、tconvは tconv = ゾーン長さ/リボン速度
    の式から求められる。
  5. ペクレ数 Pe が3と5の間にあることを特徴とする請求項4に記載の表面処理装置
  6. 前記処理装置は、ガラスの同一面にあるいは両面に分けて配置された一つ又はそれ以上の連続した処理デヴァイスを組み込んで構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理装置
  7. リボン形状及びプレイト形状から選ばれる形状のガラスの表面処理方法であって、化学的特性、光学的特性及び機械的特性の少なくとも1つを変化せしめること、あるいは一つ以上の薄層を堆積させることによりこの処理を為す方法であって、その特徴とするところは、ガラス処理面を加熱してその面に効果的な処理を施すに必要な時間に亘り常時必要な温度に保たれるようにした手段と、ガラスの反対面を冷却して該反対面の粘度が 1013 dPas と 2.3 x 1010 dPasの間にあるようにする手段と、により当該ガラスの厚さ方向に制御された温度勾配を生じせしめるようにしたことであり、
    (a)初期設定ゾーン(11)において、処理されようとするガラス面を加熱し反対面を冷却し、以て処理されようとする面と反対面とが各々の目標温度になるようにし、
    (b)処理ゾーン(12)において、処理されようとする面を加熱処理し、同時に処理されようとする面の反対側の面を冷却し、
    (c)均一化ゾーン(13)において、処理された面の反対側の面が冷却される、ようにしてなることを特徴とする表面処理方法。
  8. 前記初期設定ゾーンにおいて、両面上の熱フラックス量は、正及び負であって、リボンの平均温度をわずかに上昇せしめる程度に均衡を崩していることを特徴とする請求項に記載の方法。
  9. 前記処理ゾーンにおいて、両面への加熱及び冷却は、ガラスリボン内の温度勾配が安定に保たれるように、バランスがとられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
  10. 前記均一化ゾーンにおいて、冷却が継続中に、加熱が停止されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 一方のガラス面の冷却が冷却デヴァイスあるいは当該表面処理装置のチャンバー設計にリンクした自然冷却によって為されることを特徴とする請求項〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. ガラスの上面の温度が各々の処理を最適化するように表面処理装置内の位置に応じて調節されることを特徴とする請求項〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. ガラスがソーダ石灰ガラスあって、熱的調節装置の中において処理されようとするガラスの面の温度は620℃より高く、ガラスの反対面の温度は550℃と620℃の間であり、ガラスがローラのような機械的手段で支持されることを特徴とする請求項〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. ガラスの上面の温度はガラス上の任意の一点に着目すると平均温度からある高い温度とある低い温度の間を上下することを特徴とする請求項〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記加熱手段は、異なる温度レベルの間を上下する横波温度プロファイル(transverse temperature profile)を生じせしめることを特徴とする請求項〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 処理されるべき面の加熱は体積加熱手段によって為され、処理表面の下に熱保留を生じせしめ、これによりガラスの厚さに亘って非直線温度プロファイルを生じせしめることを特徴とする請求項〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 処理されようとする面を加熱する手段がすでに堆積された層を加熱することを特徴とする請求項〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 処理されようとする面を加熱する手段が主にすでに堆積された層を加熱するためのものであることを特徴とする請求項〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 処理されようとする面を加熱する手段から輻射される放射波のほとんどがその中ではガラスが不透明となるような波長を有していることと特徴とする請求項〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 堆積層又はガラス中のイオンの拡散を促進する目的で処理装置内に電界が負荷されることを特徴とする請求項〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 処理装置内の雰囲気の化学組成、圧力、温度は実行される各処理に応じて調整されることを特徴とする請求項〜20のいずれか1項に記載の方法。
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