図1は、本発明の一実施の形態に係るスプリンクラヘッドの縦断面図である。図2は、図1の固定部と分割駆動部の斜視図である。なお、図2には、一つの分割駆動部のみを図示し、その他の分割駆動部の図示は省略している。図3は、図1の分割弁体とプランジャーとの接続状態を示す図で、図3(a)は斜視図、図3(b)は平面図を示している。なお、図3には一つの分割駆動部における分割弁体とプランジャーとを示しており、他の分割駆動部の図示は省略している。図4は、図1のスプリンクラヘッドを下方から見た斜視図である。図5は、図1のスプリンクラヘッドの分割散水部の動作説明図で、動作説明に必要な箇所以外の部分の図示は省略している。
このスプリンクラヘッド1は、内部に放水口12を有するヘッド本体10と、フレーム20と、固定部30と、駆動部80とを有しており、駆動部80が、放水口12の中心軸を中心として放射状に2以上の複数、例えば3つに分割されて3つの分割駆動部80A(図2参照)から構成され、それぞれが独立して作動可能としたことに特徴を有するものである。以下、各構成要素について順に説明する。なお、駆動部80の分割数は、3つに限定されるものではなく、2以上の複数に分割可能である。
ヘッド本体10は、中心部が開口されている。この開口部11は、後述の放水筒16とともに放水口12を形成する。ヘッド本体10の外周部にはフランジ13が形成されており、フランジ13より上側のヘッド本体10の外周部には給水管に接続されるねじ部14が形成されており、また、フランジ13の下側の内周部には、後述するフレーム20が取り付けられるためのねじ部15が形成されている。
ヘッド本体10の内側には円筒状の放水筒16が下方に突出して形成されている。ヘッド本体10の放水筒16の下端部には、内側に突出した係止段部16aが設けられ、係止段部16aには後述のノズル31が係止される。ノズル31は後述する弁体40の上方で、ヘッド本体10の下端部に係止される。
フレーム20は、円筒状に形成されている。フレーム20の上部の外周部にはねじ部21が形成され、ヘッド本体10の下部側に形成されたねじ部15に取付けられる。フレーム20の下部には、内側に突出した係止段部22が設けられ、係止段部22には後述のボール61が係止される。
固定部30は、ノズル31と、プランジャー32と、セットスクリュー33とを備えている。
ノズル31は、放水筒16の係止段部16aに係止される円筒部31aと、円筒部31aの内部を駆動部80の分割数と同数に分割するセパレータ31bとが一体に形成されている。セパレータ31bは、円筒部31aの中心に位置する円柱状の中心部31cの周面から円筒部31aの内面まで平板が放射状に延びた形状を有し、放水口12をほぼ扇状に各分割弁体40A毎に、本実施例の場合は3つに分割している。中心部31cの下面には凹部が形成され、その凹部の周面には、後述のセットスクリュー33がネジ固定される雌ねじ31dが形成されている。
プランジャー32は、駆動部80の中心を貫通して、上端がノズル31に固定された軸部32aと軸部32aの下部に形成され、監視時には駆動部80を係止し、作動時に後述の分割弁体40A及び分割デフレクタ51Aの落下を防止するフランジ部32bとを有し、軸部32aの上面がノズル31の中心部31cの下面に接触している。プランジャー32の内部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、その貫通孔にセットスクリュー33がノズル31の反対側から挿通され、セットスクリュー31の軸部の先端にある雄ねじとノズル31の雌ねじ31dを螺合することで、セットスクリュー33、プランジャー32及びノズル31が結合されている。また、プランジャー32の軸部32aの外周面には、図3に示すように後述の分割弁体40Aの一対の突条部40dが係止する一対の係止溝32dが、軸方向に延びて周方向に3箇所に設けられている。
プランジャー32のフランジ部32bの上面には、ノズル31のセパレータ31bと対向する位置に断熱仕切板32e(図3参照、図2では図示略)が立設されている。断熱仕切板32eによって仕切られたフランジ部32bの上面上の各領域には、後述の略扇状の分割感熱体72A(図2参照)が載置され、各分割感熱体72A同士が互いに熱的に分離するようにしている。
互いに隣接する分割感熱体72A同士を熱的に分離する方法としては、隣接する分割感熱体72A同士を空間的に離間するだけでも効果はあるが、本例では、プランジャー32のフランジ部32bの上面に、各分割駆動部80Aにおいて互いに隣接する分割感熱体の境界の位置に断熱仕切り板32eを立設した。このように互いに隣接する分割感熱体72A同士を積極的に仕切る構成としたので、熱的な分離効果、言い換えれば熱伝達防止効果は高い。他に例えば、図6に示すように、ノズル31のセパレータ(断熱材で構成)31bをプランジャー32の上面に接触するまで延ばした構造としてもよい。
以下、駆動部80の構成を説明する。駆動部80は、弁体40とデフレクタ51を有する散水部50と、感熱分解機構70とを備えており、散水部50と感熱分解機構70のそれぞれが、上述したように放水口12の中心軸を中心として放射状に3分割され、3つの分割駆動部80Aが構成されている。各分割駆動部80Aの構成は同じである。以下、各構成要素について順に説明する。
弁体40は、ノズル31の下方に配置され、全体として直径の異なる複数の円柱を同軸に重ねて一体化した形状を有しており、ノズル31の分割領域に合わせて放射状に3分割されている。そして、各分割弁体40A(図2参照)が、ノズル31によって放射状に分割された各放水口12を塞いでいる。弁体40の最上段の円柱の径はノズル31の円筒部31aの内径より小さく形成されてノズル31内に突出する凸部40aとなっており、凸部40aより下の2段の円柱は最上段の円柱よりも大径に形成されたフランジ部40bとなっている。このフランジ部40bで、ヘッド本体10の弁座17を塞いでいる。なお弁座17には環状のテフロン(登録商標)シートが設けられるか、テフロン(登録商標)コーティングが施され、放水口12からの漏水を防止している。環状のテフロン(登録商標)シートを用いた場合、一部の分割駆動部80Aのみが作動した際にその他の作動しない分割駆動部80Aの分割弁体40Aと共に現状の位置に残ることになるが、テフロン(登録商標)シートは柔らかいため放水の邪魔となることはない。
弁体40の中央部には上下方向に貫通する貫通穴40cが形成されており、貫通穴40c内部の上部側にはノズル31の中心部31cが挿入され、貫通穴40cの下部側にはプランジャー32の軸部32aが挿入される。弁体40は、後述する感熱分解機構70によって支えられ、作動前は図1の位置に保持されている。各分割弁体40Aそれぞれにおいて、貫通穴40cの内周面には、図3に示すように上下方向に渡って突出する一対の突条部40dが形成されており、プランジャー32の外周面に設けられた一対の係止溝32dに係止されている。この一対の突条部40dは、互いに交差する方向に向けて突出形成されており、放水動作時に分割弁体40Aが降下する際に、プランジャー32の軸部32aから半径方向に抜けて落下するのを防止している。これにより、分割弁体40Aがプランジャー32のフランジ部32bに係止する作動位置(図5(b)参照)まで、分割弁体40Aが安定して導びかれる。なお、分割駆動部80Aのそれぞれに設けられ、作動時に降下する分割弁体40A及び分割デフレクタ51Aを作動位置で停止させるストッパー機構としての構造は、この構造に限られず、以下に説明する散水部50におけるガイドロッド52周辺の構造によっても可能である。この構造については後述する。
散水部50は、前述の弁体40と、デフレクタ51と、ガイドロッド52とを備えており、3つの分割散水部50Aに分割され、それぞれが独立して散水可能に構成されている。各分割散水部50Aの構成は同じである。以下、順に説明する。
デフレクタ51は、中央に開口部を有し、周縁部に散水溝が形成された円板によって構成されており、その開口部に弁体40の下部が挿入された状態で、弁体40のフランジ部40b下面に接続されている(固定されている)。デフレクタ51も弁体40と同様、ノズル31の分割領域に合わせて放射状に3分割され、各分割デフレクタ51Aにはそれぞれ、ガイドロッド52が挿入される挿入穴51aが設けられている。ガイドロッド52は、その下端が拡径した段部52aとなっており、段部52aの上面がデフレクタ51の下面に接触した状態でデフレクタ51に固定されている。したがって、これらの分割弁体40A、分割デフレクタ51A及びガイドロッド52は一体的に構成されている。
ストッパー53は、全体として上下の両端が閉塞された円筒状に形成され、中心部に上下方向に貫通する貫通穴が形成された構成を有し、弁体40及びデフレクタ51と同様にノズル31の分割領域に合わせて放射状に3分割されている。各分割ストッパー53Aは、フレーム20の内周面に沿う周面部53aと周面部53aの上端及び下端のそれぞれから径方向内側に向けて放水筒16の外周まで延びる上側環状平坦部53b及び下側環状平坦部53cを有し、断面コ字状に形成されている。ストッパー53の全体としての外径は、フレーム20の係止段部22の内径よりも大きく形成され、分割ストッパー53Aは、放水動作時に分割散水部50Aより下方の後述の分割感熱分解機構70Aが落下すると、自重によりフレーム20の係止段部22まで下降するように構成されている。
分割ストッパー53Aの下側環状平坦部53cには、分割デフレクタ51Aの挿入穴51aに対向する位置に挿通穴53dが設けられており、この挿通穴53dにガイドロッド52の軸が挿通されている。ガイドロッド52の軸の上端には、挿通穴53dよりも大きいストッパー用の拡径された段部52bが形成されている。以上の構成により、分割ストッパー53Aは、放水動作時に、ガイドロッド52に摺動して係止段部22aまで移動可能となるようにガイドロッド52に取り付けられている。見方を変えると、ガイドロッド52は、放水動作時に、分割ストッパー53Aの挿通穴53dに沿って下方に移動可能となるように分割ストッパー53Aに取り付けられている。
分割ストッパー53Aの上側環状平坦部53bは、下側環状平坦部53cがフレーム20の係止段部22に係止した状態において放水筒16の下端より上方に位置し、分割ストッパー53Aが降下する際には、上側環状平坦部53bの内周面が放水筒16の外周によってガイドされると共に、周面部53aがフレーム20の内周面にガイドされる。このようにフレーム20内でガイドされて放水動作時に係止段部22aまで下降して停止する分割ストッパー53Aに、分割弁体40A及び分割デフレクタ51Aがガイドロッド52を介して上下動可能に係止されている。分割ストッパー53Aとガイドロッド52により、分割デフレクタ51A及び分割弁体40Aを放水動作時に降下させて作動位置で停止させるストッパー機構が構成されている。
分割ストッパー53Aの下側環状平坦部53cとデフレクタ51との間の隙間には、下側環状平坦部53cを上方に押し上げる方向に付勢する板バネ(図示せず)が配置され、通常時は、分割ストッパー53Aは、板バネ(図示せず)に押圧されてフレーム20内の上部側に配置されている(図5(a)参照)。放水動作時には、分割ストッパー53Aが係止段部22aに係止するまで下降すると共に、分割弁体40Aがプランジャー32のフランジ部32bに係止するまで分割デフレクタ51A及びガイドロッド52と共に下降し、このとき、ガイドロッド52の上端の段部52bが分割ストッパー53Aの下側環状平坦部53cに係止した状態となる(図5(b)参照)。また、下側環状平坦部53cとデフレクタ51との間の板バネはなくても放水動作は可能であるが、この板バネがあると、デフレクタ51を介して弁体40を下方向に押す力が働くので、放水動作時に弁体40がノズル31から離脱することを補助する。これにより、放水動作時に、より確実に動作させることが可能となる。
ストッパー53の下側環状平坦部53cは、フレーム20の高さ方向のほぼ中間であって、フレーム20に設けたスリットに対向する位置に設けられている。なお、このスリットは、必ずしもストッパー53と対向する位置に設けなくてもよい。
感熱分解機構70は、感熱板71、感熱体72、断熱材73、ボール保持機構60及び板バネ64を備えている。感熱分解機構70も放射状に3つに分割され、各分割感熱分解機構70A毎に独立して動作可能である。以下、各構成要素について順に説明する。
感熱体72は、例えば半田等で構成され、全体として環状を成し、径方向に分割された略扇状の3つの分割感熱体72Aが、上述したようにプランジャー32の軸部32aの下部に形成されたフランジ部32bの上面に載置されている。隣接する分割感熱体72A同士の間には、上述したように断熱仕切板32eが位置して熱的に分離されている。このように、隣接する分割感熱体72A同士を熱的に分離して配置することにより、火災時に何れかの分割感熱体72Aで受熱した熱が、隣接する分割感熱体72Aに伝わるのを防止でき、必要箇所のみの分割駆動部80Aの作動が可能となる。そして、各分割感熱体72Aそれぞれの上部に、略扇状であって、断面クランク型の分割感熱板71Aが設けられている。即ち、この各分割感熱板71Aは、プランジャー32のフランジ部32bに設けられた分割感熱体72Aを覆う突部71aと、この突部71aに連続し、ヘッド本体10の軸芯に対して直交する方向に延びた円板部71bとを備えている。そして、分割感熱板71Aには、後述する分割ボール保持機構60Aによって分割感熱体72Aを圧縮するように力がかかっている。
分割感熱板71Aの上部には、各分割感熱体72Aそれぞれに対応して設けられた扇状の各分割断熱材73Aが設けられ、分割感熱板71Aで受熱した熱が後述する分割バランサー63A側に逃げないようにしてある。なお、分割断熱材73Aと分割感熱板71Aとの間には、径の大きい別の分割感熱板74Aを必要に応じて設けるようにしてもよい。この分割感熱板74Aも各分割感熱体72Aそれぞれに対応して各分割感熱板71Aと同数、分割感熱板71Aと対向して設けられている。
ボール保持機構60は、ボール61、スライダー62、バランサー63及び板バネ64を備えている。ボール61の外周下部は、フレーム20の係止段部22に係止されている。この状態で、ボール61を上から押さえるのがスライダー62であり、スライダー62からボール61に力がかかることで、ボール61には内側に入り込む方向に力が作用する。
バランサー63は、ボール61の内側に設けられ、この内側に入りこもうとするボール61の動きを規制する。スライダー62及びバランサー63共に全体として円板状に形成され、各分割散水部50Aに対応して放射状に3つに分割されている。スライダー62及びバランサー63の中央には同径の貫通穴があり、スライダー62及びバランサー63の貫通穴にはプランジャー32が貫通している。プランジャー32の外径は、スライダー62及びバランサー63の貫通穴の内径よりもわずかに小さく、両者は結合していない。
バランサー63は、貫通穴を有する筒部と、その筒部の上方に設けられた円板部とを組み合わせた形状となっている。バランサー63の外周下部には段部が形成されている。この外周下部の段部は、フレーム20の係止段部22の内周下部にある段部に、当接するように構成されており、バランサー63の下側から外力がかかった場合には、この部分で衝撃を吸収する。また、バランサー63の筒部の下部であって中央の貫通穴の周りには、断熱材73がはまる段部63aが突出し、バランサー63の円板部の上部には、ボール61があたるボール受け用の段部63bが突出して形成されている。
スライダー62の外周側下部のボール61が接する面は、下方に向かって内側に傾斜するようにテーパ状(傾斜部)に形成されている。スライダー62の外周側下部のボール61が接する面に凹部62aを形成すると、組み立て易くなるので、なお良い。
上述のように、ボール61には、常に内側に移動するように力がかかるので、各分割ボール保持機構60Aにおいて、分割バランサー63Aを下方に、また分割スライダー62Aを上方に移動させるように力が作用する。従って、分割感熱体72Aである半田が溶融して流出すれば、分割バランサー63Aが下方に移動し、それに伴って、ボール61が内側に入り込み、フレーム20の係止段部22との係止状態が解除されるので、分割ボール保持機構60Aは分割感熱板71Aと共に落下する。分割ボール保持機構60Aが落下すれば、それに伴って、分割散水部50Aを構成する分割弁体40A及び分割ストッパー53A等が降下して、放水が行われることになる。
板バネ64は、弁体40とスライダー62との間に各分割散水部50Aのそれぞれに対応して1つずつ設けられ、圧縮して配置されることで、組み立て時の荷重の大半を負担する。また、板バネ64は、分割ボール保持機構60Aが落下した際に、分割スライダー62Aを下方に押圧して分割スライダー62Aを落下させやすくする役割を有している。
上記のようなスプリンクラヘッド1には、図1の状態においては、放水口12の消火水の水圧や部品の組立荷重がボール61に作用し、ボール61は内側(中心側)に移動しようとするが、ボール61は、バランサー63によってその移動が阻止されており、ボール保持機構60はボール61を保持している。そして、この状態においては、板バネ64が弁体40を上方に押圧しており、弁体40がヘッド本体10の放水口12を封止している。このため、スプリンクラヘッド1には、加圧された消火水が供給されるが、消火水は漏れない。また、散水部50は、弁体40にデフレクタ51が固定され、デフレクタ51にガイドロッド52が固定されており、弁体40が放水口12を封止している状態では、ガイドロッド52がフレーム20の上部空間に収納された状態になっている。
図7(a)〜(d)及び図8(e)〜(h)はスプリンクラヘッド1の動作過程を示した図である。本例のスプリンクラヘッド1において、分割駆動部80Aが感熱した際の動作はどの分割駆動部80Aでも同じであるため、図7及び図8には一つの分割駆動部80Aのみを図示し、図7及び図8を参照してその動作を説明する。
スプリンクラヘッド1の監視状態(図7(a))においては、ヘッド本体10の放水口12には加圧された消火水が供給されており、弁体40には消火水の圧力が加えられている(図1参照)。火災が発生し、その熱気流が感熱板71に当たると、感熱板71は加熱され、感熱板71の熱が感熱体72へ伝播する。このとき、感熱板71のうち、火源に近い分割感熱板71Aから対応の分割感熱体72Aへと熱が伝播することになる。そして、分割感熱体72Aが周囲から加熱されて溶融し始めると、溶融した分割感熱体72Aはプランジャー32と分割感熱板71A(突部71a)との間に形成された隙間から流出してその体積が減少する(図7(b))。
そして、分割バランサー63Aが降下することによって上方から押されたボール61が内側に移動し、分割スライダー62Aが降下することになるが、分割スライダー62Aが降下しても分割弁体40Aは弁座17に圧接されて、放水口12を塞いだ状態を維持する。これは、板バネ64の作用によるもので、分割ボール保持機構60Aが完全に落下するまで分割弁体40Aが弁座17から離れるのを防止している。
分割感熱体72Aが溶融して外部に流出すると、分割感熱板71Aは分割感熱体72Aの流出量に対応して降下する。分割感熱板71Aが降下すると、分割感熱板71Aの上に取り付けられている分割断熱材73A及び分割バランサー63Aが降下する(図7(c))。分割バランサー63Aが降下すると、分割バランサー63Aと分割スライダー62Aとの間の間隙が広がり、内側に付勢されているボール61が分割バランサー63Aの段部63bを越えて内側に移動し、フレーム20の係止段部22とボール61との係合が解かれ、分割感熱分解機構70A全体が落下する(図7(d))。ここで、分割感熱分解機構70Aの分割感熱板71A、分割感熱板74A、分割バランサー63A及び分割スライダー62Aは外側に重心を持つため、外側に傾いて作動し、プランジャー32の軸部32aから離れて落下する。
分割感熱分解機構70Aが落下すると、分割散水部50Aが降下する。すなわち、分割弁体40Aと、分割弁体40Aに取り付けられている分割デフレクタ51Aと、その分割デフレクタ51Aに取り付けられているガイドロッド52とが降下する。ガイドロッド52が降下すると、分割デフレクタ51Aと分割ストッパー53Aの下側環状平坦部53cとの間の板バネ(図示せず)の付勢力が解除され、分割ストッパー53Aも降下する(図8(e))。分割ストッパー53Aが更に降下して下側環状平坦部53cがフレーム20の係止段部22に係止される(図8(f))。そして、その位置から分割弁体40A及び分割デフレクタ51Aが更に降下してプランジャー32のフランジ部32bに係止した作動位置に停止し、ガイドロッド52及び分割ストッパー53Aによりフレーム20から吊り下げられた状態になる(図8(g))。
本実施の形態では、放水動作時において、分割弁体40A及び分割デフレクタ51Aが、プランジャー32の外周面の係止溝32d(図3参照)によりガイドされながらガイドロッド52と共に下降するので、分割弁体40A及び分割デフレクタ51Aの下降動作が円滑に行われる。また分割ストッパー53Aの下側環状平坦部53cをフレーム20の高さ方向のほぼ中間に設けることで、分割ストッパー53A自体の下降量も減らせるので、放水時の動作がスムーズになる。
以上のようにして分割弁体40Aが降下すると、その分割弁体40Aに対応する放水口12の分割領域が開放され、加圧された消火水が分割デフレクタ51Aから散水され(図8(h))、火災を消火する。なお、図7及び図8において他の分割駆動部80Aの図示は省略したが、非作動の分割駆動部80Aは図1の位置のまま保たれる。よって、作動した分割駆動部80Aの分割散水部50Aのみから放水が行われる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、分割駆動部80Aがそれぞれ独立して作動するようにしたので、火災時には、複数の分割駆動部80Aのうち、火源に近く、火源からの熱の影響を強く受ける分割駆動部80Aが作動する。すなわち、火源からの熱気流方向に対する面の分割感熱体72Aが溶け、その分割感熱体72Aを有する分割駆動部80Aが作動し、火源に向かって集中的に散水することができる。よって、消火効率が向上し、無駄な放水が低減され、水損失を少なくすることができる。
また、各分割駆動部80Aにおいて互いに隣接する分割感熱体72A同士を熱的に分離して配置したので、火災時に何れかの分割感熱体72Aで受熱した熱が隣接する分割感熱体72Aに伝わるのを防止でき、必要箇所の分割駆動部80Aだけを作動させることが可能となる。また、互いに隣接する分割感熱体72A同士を熱的に分離する構造として、断熱仕切板32eを設けた場合や、ノズル31のセパレータ31bをプランジャー32の上面に接触するまで延ばした構造とした場合、熱的な分離効果を更に高めることができる。
弁体40の上方でヘッド本体10の下端部に係止され、分割弁体40A毎に放水口12を分割するセパレータ31bを有するノズル31の場合、駆動部80の中心を貫通して上端がノズル31に固定された軸部32aを有し、軸部32aの下端に、感熱体72が載置されるフランジ部32bが形成されたプランジャー32を備え、ノズル31のセパレータ31bがプランジャー32のフランジ部32bの上面に達するまで下方に延出された構成を有し、延出した先端部分により各分割駆動部80Aにおいて互いに隣接する分割感熱体72A同士の間を断熱的に仕切っている。