JPH10277174A - スプリンクラーヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のスプリンクラーヘッドは、火災が発生
してから作動するまでに時間がかかっており、その間に
火災を大きくすることがあった。作動時間を短くするた
めには、感熱分解部分のシリンダー内に充填する低融点
合金の量を少なくすればよいが、低融点合金の量が少な
くなると耐クリープ性が弱くなって暴発の危険性が出て
くる。本発明はシリンダー内に充填する充填物の量を少
なくしなくても作動時間を短くすることのできるスプリ
ンクラーヘッドである。 【解決手段】 シリンダー内には所定の温度で溶融する
低融点合金と、該低融点合金よりも低い融点を有する低
融点合金やロウ等の補助物質を充填してある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、消火用のスプリンクラ
ーヘッド、特に分解部分に圧縮タイプを採用したスプリ
ンクラーヘッドに関する。

【０００２】

【従来の技術】スプリンクラーヘッドは、噴出口を弁体
が塞ぎ、該弁体を分解部分が保持している。従って、ス
プリンクラーヘッドが取り付けられた室内で火災が発生
すると、それまで平衡状態であった分解部分が分解し、
分解部分で保持していた弁体が噴出口を開放することに
より、水が散布されて消火を行うようになっている。

【０００３】スプリンクラーヘッドに組み込まれている
分解部分としては、ラップジョイントタイプと圧縮タイ
プがある。

【０００４】ラップジョイントタイプとは、二枚の金属
板が低融点合金で接着されており、平時この二枚の金属
板には相反する方向の力が掛けられていて、この力を係
止することにより平衡状態が保たれるようになってい
る。そして火災の異常高温で低融点合金が溶融すると、
低融点合金で接合されていた二枚の金属板は相反する方
向に分離し、分解部分の平衡状態が崩れて分解する。

【０００５】圧縮タイプとは、主要部分がシリンダー、
低融点合金、プランジャーから成るものであり、金属製
のシリンダーの中に低融点合金が充填されていて、該低
融点合金に接した状態でシリンダーの内径よりも小径の
金属製プランジャーが載置されている。圧縮タイプで
は、平時、シリンダーとプランジャーに低融点合金を圧
縮する方向に力が掛けられ、この力を係止することによ
り平衡状態が保たれている。この圧縮タイプでは、火災
の異常高温で低融点合金が溶融すると、プランジャーが
シリンダー内に没入し、分解部分の平衡状態が崩れて分
解するようになっている。

【０００６】つまり、スプリンクラーヘッドの分解部分
は、低融点合金が二枚の金属板の間や金属製のシリンダ
ーの中にあり、火災の異常高温が金属板、或はシリンダ
ーやプランジャーを伝わって低融点合金を溶解すること
により分解が起こる。

【０００７】ところでスプリンクラーヘッドでは、火災
が発生したならば火災が小さいうちに水を散布して消火
を行うことができるようなものが望ましい。なぜなら
ば、火災が小さいうちに消火できれば、火災による損失
が少なくなり、また一つのスプリンクラーヘッドの作動
だけで消火が行えるため、水が多量に散布されることに
よる水損も少なくなるからである。このように小火災の
うちにスプリンクラーヘッドを作動させるためには、分
解部分の低融点合金に伝播してきた火災の熱で低融点合
金が短時間のうちに急速に溶融すればよいわけである。

【０００８】従来よりシリンダー内の低融点合金の溶融
速度を早める手段としてシリンダーに伝播する熱量を多
く採り入れるようにすることが行われていた。その手段
とはシリンダーに広い面積の集熱板と称する熱伝導の良
好な金属板を設置することである。（参照：特公昭５８
−３６９８５号公報、実公昭５４−１８０７８号公報実
開平５−９１７１４号公報）

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】ところで集熱板の面積
を広くしたり複数の集熱板を設置したりすれば、確かに
スプリンクラーヘッドの作動を早める効果はあるが、そ
れでも火災発生からスプリンクラーヘッドの作動までに
時間がかかっており、その間に火災が大きくなることが
あった。特に一般住宅のように建築材料が木材中心で、
しかも襖や障子、壁等に紙を使用している建物で火災が
発生すると火のまわりが早くなるため、ここに取り付け
るスプリンクラーヘッドでは作動が早いことが望まれて
いたものである。

【００１０】従来のスプリンクラーヘッドで作動時間を
短縮できない原因は、シリンダー内に充填する低融点合
金の量が或る量以上は必要であるからである。つまりス
プリンクラーヘッドでは、平時噴出口の弁座からの漏水
を防ぐために、弁座に弁体を強く押し付けており、この
弁体の押圧力が分解部分の低融点合金に掛かる。低融点
合金に直接弁体の大きな力が掛かったのでは、低融点合
金が押し潰されてプランジャーが没入し、分解部分が分
解するという暴発を起こしてしまう。そのため一般にス
プリンクラーヘッドでは弁体の力を梃子の原理で減少さ
せた力が低融点合金に掛かるようになっている。しかし
ながら如何に力を減少させても、スプリンクラーヘッド
の取付期間、即ち建物の存在期間の長期間にもわたって
低融点合金に力が掛かっているとクリープ現象により、
ついには低融点合金が変形して暴発事故になってしまう
ことがある。そのためスプリンクラーヘッドではシリン
ダーに充填する低融点合金を多くして機械的強度の向上
を図っていたものである。

【００１１】このように従来のスプリンクラーヘッドで
は、シリンダーを大きくしてクリープ現象に耐えるだけ
の充分な量の低融点合金をシリンダー内に充填しなけれ
ばならなかったため、スプリンクラーヘッドの作動が遅
れていたものである。本発明はクリープに耐えるに充分
な大きさのシリンダーにするにもかかわらず、作動速度
を早めることのできるスプリンクラーヘッドを提供する
ことにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明者は、シリンダー
の容積が一定であっても、この中に充填する低融点合金
の量を少なくすれば、火災発生時に全体の低融点合金が
早く溶融することに着目して本発明を完成させた。

【００１３】本発明は、シリンダーの中に低融点合金が
充填されており、該低融点合金がプランジャーで押圧さ
れている構造の分解部分を有するスプリンクラーヘッド
において、シリンダー内には所定温度の融点を有する低
融点合金と該低融点合金の融点以下の温度で液状の補助
物質とから成る充填物が充填されていることを特徴とす
るスプリンクラーヘッドである。

【００１４】

【発明の実施の形態】本発明に使用する補助物質とは、
スプリンクラーヘッドの作動温度である所定の融点より
も低い融点を有する低融点合金やロウ等が適している。
例えばスプリンクラーヘッドの作動温度が９６℃であれ
ば所定の融点である９６℃の低融点合金と、該低融点合
金よりも融点が低い７２℃の低融点合金をシリンダーの
中に充填する。またスプリンクラーヘッドの作動温度が
７２℃であれば所定の融点である７２℃の低融点合金と
軟化点が６０℃のロウを充填する。

【００１５】所定の融点の低融点合金と補助物質から成
る充填材料をシリンダー内に充填する状態は、低融点合
金と補助物質がプランジャーの力を均等に受けるように
する。図２に示すようにシリンダー１９への充填状態
は、低融点合金２１の周囲に補助物質２２を環状に設置
したり、図３、４に示すように円筒体を縦方向に等分割
して低融点合金２１と補助物質２２を互い違いに設置し
たりするのが適当である。

【００１６】また常温で液状２３の補助物質は、図５に
示すように低融点合金２１の内部に漏出しないように閉
じ込めておくようにしてもよい。

【００１７】

【実施例】以下、図面に基づいて本発明を説明する。図
１は本発明のスプリンクラーヘッドの正面断面図であ
る。

【００１８】実施例に示すスプリンクラーヘッドはフラ
ッシュ型であり、本体１、フレーム２、弁体３、デフレ
クター４、分解部分５、および集熱板６等から構成され
ている。

【００１９】本体１は、中央に導水孔７が穿設されてお
り、その下端は弁座８となっていて、外周上部には牡ネ
ジ９が螺設され、また下端にはフランジ１０が形成され
ている。

【００２０】フレーム２は、円筒状であり、下端は内方
フランジ１１となっていて、上端は前述本体１のフラン
ジ１０に螺合している。

【００２１】弁体３は、上部にパッキンが被着されてお
り、平時、本体１の弁座８を閉塞している。

【００２２】デフレクター４は、皿状で周囲に多数の羽
根が形成されており、羽根の上にはリング１２が載置さ
れていて、作動時、リングで吊設されるようになってい
る。デフレクター４は前述弁体３の下部に設置されてい
る。

【００２３】分解部分５は、フレーム２の下部に設置さ
れており、ガイドポスト１３を介して弁体３を保持して
いる。

【００２４】ここで分解部分について詳細に説明する。
上部が外方に屈曲した一対のレバー１４、１４は、屈曲
した部分の下端が前述フレーム２の内方フランジ１１に
係合している。該レバーには上方に支持板１５が係合
し、下方には天秤１６が係合している。

【００２５】支持板１５には、先端が半球状となった止
めネジ１７が螺合されており、天秤１６には上部が太径
となったプランジャー１８が嵌合されている。

【００２６】プランジャー１８の上部にはプランジャー
１８の外径よりも少し太い内径を有するシリンダー１９
が開口部を下にして置かれている。シリンダー１９は有
底筒状で、従来のスプリンクラーヘッドに使用されるも
のと同一容積のものである。このシリンダーの容積はシ
リンダーの中に充填された低融点合金が長期間のクリー
プに対しても充分耐えられる機械的強度となる大きさの
ものである。該シリンダーには底部に充填物２０が充填
されているれている。充填物とは、所定の融点を有する
低融点合金２１と該低融点合金よりも融点の低い補助物
質２２である。実施例に示す補助物質は低融点合金であ
り、シリンダー１９への充填物２０の充填状態は図２に
示すように円柱状の所定の融点の低融点合金２１の周囲
を、該低融点合金よりも融点の低い低融点合金２２が円
筒状に取り巻いている形状となっている。

【００２７】プランジャー２３の上面は円柱状の低融点
合金２１と円筒状の低融点合金２２に接している。従っ
て、プランジャー２３は従来のスプリンクラーヘッド同
様、クリープに耐えられる容積のシリンダーの充填物で
力が受けられている。シリンダー１９の上部には逆円錐
形の溝が刻設されており、該溝には前述止め螺子１７の
下端部が載置されている。

【００２８】集熱板６は椀状をしており、プランジャー
１８の下部に熱伝導が良好な状態で設置されている。椀
状の大きな集熱板６は、分解部分５を覆い隠す効果と、
火災の熱を収集する効果を有している。

【００２９】充填物２０の上には、プランジャー２３が
載置されており、プランジャー２３の上部の逆円錐形の
溝に前述止めネジ１７の下端部が載置されている。

【００３０】次に上記構造の分解部分を有する本発明ス
プリンクラーヘッドの作動状態について説明する。

【００３１】火災が発生すると、火災の熱が上昇気流と
なって天井に達し、天井に取り付けたスプリンクラーヘ
ッドを熱する。スプリンクラーヘッドでは集熱板６が火
元に近い下部に設置されており、しかも表面積が大きく
なっているため、気流の熱を多く受けてプランジャー１
８に伝播する。そして熱が伝播されたプランジャー１８
は、さらにその熱をシリンダー１９内に充填された充填
物２０に熱を伝播する。

【００３２】シリンダー１９内の充填物２０は、円柱状
の高融点の低融点合金２１（例えば融点：９６℃）の周
囲に低融点の低融点合金２２（例えば融点：７２℃）が
円筒状になって充填されているため、プランジャー１８
の温度が７２℃になると先ず低融点の低融点合金２１を
溶融させ、そしてプランジャー１８の温度が９６℃にな
ると高融点の低融点合金２２が溶融する。つまりプラン
ジャーの温度が９６℃になると直ぐに高融点の低融点合
金が溶融するようになる。

【００３３】従来のスプリンクラーヘッドでは、シリン
ダーの温度がシリンダー内の低融点合金の融点の温度に
なっても低融点合金は直ぐには溶融しなかった。その原
因は、プランジャーから低融点合金への熱の伝播が遅
く、また低融点合金全体をその融点に加熱するまでに時
間がかかっていたからである。

【００３４】シリンダー１９内の充填物２０が溶融する
と、シリンダー１９は押しネジ１７で押圧されているた
め、プランジャー１８はシリンダー１９内に没入し、溶
融した充填物２０はプランジャー１８とシリンダー１９
の間隙から外部へ流出していく。

【００３５】このように充填物２０が溶融してプランジ
ャー１８がシリンダー１９内に没入すると、天秤１６で
係止されていた一対のレバー１４、１４の係止が解かれ
る。するとそれぞれのレバーの下部が外方に回動し、フ
レーム２の内方フランジ１１に係合していたレバーの屈
曲端部が外れ、分解部分５が分解して全ての構成部品は
下方に落下していく。

【００３６】分解部分５の分解落下とともに、レバー１
４の屈曲頂部で保持していたガイドポスト１３が落下
し、デフレクター４と一体となった弁体３およびデフレ
クター４で保持されていたリング１２も落下する。とこ
ろがデフレクター４は、リング１２に吊設され、またリ
ング１２はフレーム２の内方フランジ１１で係止される
仕組みとなっているため、リング１２が内方フランジ１
１で係止されるとデフレクター４も途中で落下が停止す
る。

【００３７】弁体３が落下して弁座８を開放するため、
図示しない配管で送られる水が導水孔７を通って弁座８
から噴出される。噴出された水は、途中で止まったデフ
レクター４に当たって四方に散布され、火炎にかかって
消火を行う。

【００３８】なお本発明の実施例ではフラッシュ型スプ
リンクラーヘッドで説明したが、本発明は圧縮型タイプ
の分解部分を設置できるものであれば如何なる構造のス
プリンクラーヘッド、例えばフレームヨーク型スプリン
クラーヘッドやマルチ型スプリンクラーヘッドにも採用
できることは言うまでもない。

【００３９】

【発明の効果】以上説明した如く、本発明のスプリンク
ラーヘッドは、シリンダー内に充填した充填物が所定の
温度になると瞬時にして溶融するため、火災が小さいう
ちに作動して完全な消火を行うことができる。従って、
本発明のスプリンクラーヘッドは散水量が少なくて済む
ことから水損も軽減され、さらには長期間のクリープに
対しても充分な機械的強度を有しているという、従来の
スプリンクラーヘッドにはない優れた速動性と信頼性を
有するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のスプリンクラーヘッドの正面断面図

【図２】ａは実施例におけるシリンダーの平面拡大断面
図、ｂはａのＡ−Ａ線断面図

【図３】ｃは他の実施例におけるシリンダーの平面拡大
断面図、ｄはｃのＢ−Ｂ線断面図

【図４】ｅはもう一つの他の実施例におけるシリンダー
の平面部拡大断面図、ｆはｅのＣ−Ｃ線断面図

【図５】ｇはさらにもう一つの他の実施例におけるシリ
ンダーの平面部拡大断面図、ｈはｇのＤ−Ｄ線断面図

【符号の説明】

１ 本体 ２ フレーム ３ 弁体 ４ デフレクター ５ 分解部分 ６ 集熱板 １８ プランジャー １９ シリンダー ２０ 充填物 ２１ 低融点合金 ２２ 補助物質

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダーの中に低融点合金が充填され
   ており、該低融点合金がプランジャーで押圧されている
   構造の分解部分を有するスプリンクラーヘッドにおい
   て、シリンダー内には所定温度の融点を有する低融点合
   金と該低融点合金の融点以下の温度で液状の補助物質と
   から成る充填物が充填されていることを特徴とするスプ
   リンクラーヘッド。
2. 【請求項２】 前記補助物質は、低融点合金であること
   を特徴とする請求項１記載のスプリンクラーヘッド。
3. 【請求項３】 前記補助物質は、ロウであることを特徴
   とする請求項１記載のスプリンクラーヘッド。
4. 【請求項４】 前記補助物質は、室温で非圧縮性の流体
   であることを特徴とする請求項１記載のスプリンクラー
   ヘッド。