JP5562215B2 - 化学除染方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化学除染方法に係り、特に、原子力プラントの構成部材の表面に付着している放射性核種を除去するのに好適な化学除染方法に関する。
放射性物質を含む流体と接触する、原子力プラントの構成部材の表面には、原子力プラントの運転に伴って放射性核種を含む酸化皮膜が生成される。このため、原子力プラントの運転期間が長くなると、原子力プラントの構成部材である配管及び機器の表面線量率が増大し、配管及び機器の周囲で放射線量が高まる。原子力プラントの定期点検作業または原子力プラントの廃止措置時における解体作業において、作業員の被ばく線量を低減するために、構成部材の表面に形成された放射性核種を含む酸化皮膜を化学的に溶解し除去する化学除染方法が実施される。
原子力プラントの運転により構成部材、特にステンレス鋼製の構成部材の表面に生成する酸化被膜は、クロム系酸化物及び鉄系酸化物を含んでおり、構成部材の表面からクロム系酸化物及び鉄系酸化物の順に形成され、二層構造になっていることが知られている。また、クロム系酸化物及び鉄系酸化物がともに放射性核種であるコバルト−60(Co−60)を取り込んでいるため、構成部材の化学除染を実施する際には、クロム系酸化物及び鉄系酸化物をともに溶解除去する必要がある。
原子力プラントを対象にした従来の化学除染方法は、構成部材の表面に形成された酸化皮膜に含まれるクロム系酸化物を酸化性の除染液(酸化除染液)を用いて酸化溶解する酸化除染工程、及び酸化皮膜の主要成分である鉄系酸化物を還元性の除染液(還元除染液)により還元溶解する還元除染工程を含んでいる。
特公平3−10919号公報に記載された化学除染方法では、酸化除染液として過マンガン酸水溶液を用いた酸化除染工程、及び還元除染液としてシュウ酸などのジカルボン酸水溶液を用いた還元除染工程が実施される。特許第4131814号公報に記載された化学除染方法は、酸化除染液としてオゾン、過マンガン酸あるいは過マンガン酸塩を含む溶液を用いた酸化除染工程、及び還元除染液としてギ酸及びシュウ酸を含む溶液を用いた還元除染工程を実施している。さらに、特許第3977963号公報は、水素注入を経験した原子力プラントにおいて、最初に酸化除染工程を実施し、その後に還元除染工程を実施する化学除染方法を記載している。
特開2010−96582号公報には、ニッケルフェライト皮膜を除去する化学除染方法が記載されている。この化学除染方法は、クロム酸イオン溶液を化学除染対象物である再循環系配管内に供給して平衡時の所定のクロムイオン濃度にし、再循環系配管を流れる循環水の水質を還元調整する酸化皮膜改質工程を含んでおり、酸化皮膜改質工程により再循環系配管の内面に生成される酸化皮膜にクロム沈着現象が現れる。クロム化合物が沈着した再循環系配管の酸化皮膜に対し、酸化除染工程及び還元除染工程を繰り返して実施し、酸化皮膜を再循環系配管の内面から除去する。
原子力プラントの表面への放射性核種の付着を抑制するために、原子力プラントの構成部材の表面にフェライト皮膜を形成することが、特開2006−38483号公報に記載されている。具体的には、フェライト皮膜形成対象物である構成部材の表面を化学除染した(酸化除染工程及び還元除染工程を含む)後、鉄(II)イオン、酸化剤及びpH調整剤を含み、pHが5.5〜9.0の範囲内にある皮膜形成液を構成部材の表面に接触させ、この表面に緻密なフェライト皮膜を形成している。
特公平3−10919号公報 特許第4131814号公報 特許第3977963号公報 特開2010−96582号公報 特開2006−38483号公報
従来の化学除染方法では、構成部材の表面に生成したクロム系酸化物及び鉄系酸化物のどちらも溶解除去する必要があるため、酸化除染工程及び還元除染工程の両方を実施している。化学除染による原子力プラントの放射線量の低減率を高めるため、酸化除染工程及び還元除染工程を2〜3サイクル繰り返して実施しており、化学除染に要する時間が長くなる傾向がある。
本発明の目的は、除染に要する時間を短縮することができる化学除染方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子力プラントの、表面にフェライト皮膜が形成されたステンレス鋼製の構成部材の化学除染を行う際に、化学除染液を使用する除染工程として、還元除染液を使用する還元除染工程のみを実施することにある。
酸化除染工程が不要になるので、化学除染の工程を簡素化することができ、化学除染に要する時間を短縮することができる。
本発明によれば、原子力プラントの構成部材の除染に要する時間を短縮することができる。
本発明の好適な一実施例である化学除染方法における工程を示すフローチャートである。 図1に示す化学除染方法を実施する際に用いられる化学除染装置の構成図である。 予め酸化皮膜を形成していないステンレス鋼製の試料A及び表面にマグネタイト皮膜を形成したステンレス鋼製の試料BにおけるCo−60の付着量を比較した説明図である。 予め酸化皮膜を形成していないステンレス鋼製の試料Aと、表面にマグネタイト皮膜を形成したステンレス鋼製の試料Bにおける除染前後のCo−60付着量を比較した説明図である。
特開2006−38483号公報に記載されているように、原子力プラントの表面への放射性核種の付着を抑制するために、原子力プラントの構成部材の表面にフェライト皮膜を形成することが提案されている。発明者らは、構成部材の表面にフェライト皮膜を形成した原子力プラントに対する化学除染について検討した。
そこで、発明者らは、金属製、例えば、ステンレス鋼製の試料の表面にフェライト皮膜を形成し、原子炉運転条件の高温水にその試料を浸漬してCo−60の付着量を調べた。比較のために、表面を機械的に研磨して、表面にフェライト皮膜を形成していない試料に対しても、同様にしてCo−60の付着量を調べた。これらの実験結果を、図3に示す。試料Aは、ステンレス鋼製であり、表面を機械的に研磨している。試料Bは、ステンレス鋼製であり、表面にフェライト皮膜を形成している。このフェライト皮膜の形成は、特開2006−38483号公報に記載されている方法によって行った。試料A及びBを、Co−60を含む高温水に、同じ時間、浸漬させて、これらの試料の表面にCo−60を付着させた。図3は、この実験により試料A及びBのそれぞれに付着したCo−60の付着量の相対値を示している。図3において、内層はクロム系酸化物が主成分の内層酸化皮膜、外層は鉄系酸化物が主成分の外層酸化皮膜を示している。試料Bにおいて、外層の主成分は予め形成されたフェライト皮膜である。図3に示す実験結果より、試料Aでは内層及び外層の両方にCo−60が取り込まれているのに対し、試料Bでは実質的に外層にのみCo−60が取り込まれていることが分かる。
以上の実験結果から、予めフェライト皮膜形成の表面処理を施していない構成部材に対して化学除染を行う場合には、構成部材の表面に原子力プラントの運転中に形成された酸化皮膜の内層及び外層をともに溶解除去する必要があるが、表面に予めフェライト皮膜を形成した構成部材は、外層のフェライト皮膜のみを溶解除去することによって十分な除染効果が得られることが分かった。
そこで、発明者らは、高温水に浸漬させてCo−60を付着させた各試料について、鉄系酸化物を溶解する還元除染液を用いた還元除染を行い、Co−60の低減量を調べた。前述のようにCo−60を付着させた試料A及びBのそれぞれを、90℃の還元除染液を用いて、1時間、還元除染を行った。そして、除染終了後に試料A及びBのそれぞれに付着しているCo−60の付着量を調べた。還元除染液として、シュウ酸及びヒドラジンを含む溶液を用いた。還元除染終了後における試料A及びBのそれぞれのCo−60付着量を図4に示す。図4に示した還元除染終了後における試料A及びBのそれぞれのCo−60付着量は、それぞれの試料の除染前のCo−60付着量を基準にした相対値で示されている。還元除染前における試料BのCo−60付着量の絶対値は、図3に示すように、還元除染前における試料Aのその絶対値に比べて非常に少なくなっている。
図4に示すように、還元除染を行った試料AではCo−60付着量がほとんど低減していないのに対し、試料Bでは還元除染によりCo−60付着量が約4割に低減している。この図4に示す実験結果から、従来の化学除染では、酸化除染液を用いた酸化除染工程及び還元除染液を用いた還元除染工程を実施することによって構成部材の表面に付着した放射性核種を除去して構成部材の線量を低減するのに対し、表面に予めフェライト皮膜を形成した構成部材では、除染液を使用する除染工程として還元除染工程のみを実施することによって、構成部材の表面に付着した放射性核種を除去して構成部材の線量を大幅に低減できることが分かった。
発明者らは、図3及び図4に示す新たな知見に基づき、原子力プラントの構成部材の表面にフェライト皮膜を形成して、原子力プラントを運転した後、構成部材の表面に付着した放射性核種を除去する化学除染を行う際、除染液を使用する除染工程として、還元除染工程のみを実施する本発明を創生した。
なお、図3に示したように、構成部材表面にフェライト皮膜を形成した試料BのCo付着量は、試料Aのそれより大きく抑制されている。すなわち、原子力プラントの構成部材の表面にフェライト皮膜を形成することで、構成部材の表面にCo−60が付着するのを抑制することができるため、定期検査ごとに化学除染を行う必要がなくなり、構成部材に対して化学除染を行う定期検査の頻度を低減することができる。
上記の検討結果を反映した、本発明の実施例を、以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である化学除染方法を、図1及び図2を用いて説明する。
まず、本実施例の化学除染方法に用いられる化学除染装置を、図2を用いて説明する。この化学除染装置1は、循環配管2、還元除染液注入装置8、pH調整剤注入装置13、鉄(II)イオン注入装置18、酸化剤注入装置23、循環ポンプ28、加熱器29、陽イオン交換装置30、分解装置33及び分解剤供給装置34を備えている。開閉弁39、循環ポンプ28、加熱器29、弁40、42、43、還元除染液注入装置8、pH調整剤注入装置13、鉄(II)イオン注入装置18、酸化剤注入装置23及び開閉弁44が、上流よりこの順に循環配管2に設けられる。
還元除染液注入装置8は、薬液タンク9、注入ポンプ10及び注入配管8を有する。薬液タンク9は、注入ポンプ10及び弁11を設置した注入配管12によって循環配管2に接続される。薬液タンク9には、還元除染液であるシュウ酸溶液が充填されている。pH調整剤注入装置13は、薬液タンク14、注入ポンプ15及び注入配管17を有する。薬液タンク14は、注入ポンプ15及び弁16を設置した注入配管17によって循環配管2に接続される。薬液タンク14には、pH調整剤であるヒドラジンが充填されている。鉄(II)イオン注入装置18は、薬液タンク19、注入ポンプ20及び注入配管22を有する。薬液タンク19は、注入ポンプ20及び弁21を設置した注入配管22によって循環配管2に接続される。薬液タンク19には、フェライト皮膜の形成に用いる鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬剤が充填されている。鉄(II)イオンは二価の鉄イオンを意味している。鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬剤としては、例えば鉄をギ酸で溶解して調整したものが使用できる。酸化剤注入装置23は、薬液タンク24、注入ポンプ25及び注入配管27を有する。薬液タンク24は、注入ポンプ25及び弁26を設置した注入配管27によって循環配管2に接続される。薬液タンク24には、酸化剤として過酸化水素水溶液が充填されている。
弁43をバイパスする配管45の両端が、循環配管2に接続される。弁46、分解剤供給装置34、分解装置33及び弁47が、上流よりこの順で配管45に設けられる。分解装置33は、内部に、貴金属(白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、バナジウム及びパラジウムのいずれか)を活性炭に担持して構成された触媒を充填している。分解剤供給装置34は、薬液タンク35、注入ポンプ36及び注入配管38を有する。薬液タンク35は、注入ポンプ36及び弁37を設置した注入配管38によって配管45に接続される。薬液タンク35には酸化剤である過酸化水素水溶液が充填される。
弁42をバイパスする配管48の両端が、循環配管2に接続される。配管48には、弁49、陽イオン交換装置30、弁50がこの順に設置される。陽イオン交換装置30内には、陽イオン交換樹脂層が形成されている。陽イオン交換樹脂層の代わりに陽イオン交換膜を設けてもよい。弁49、陽イオン交換装置30及び弁50をバイパスする配管51の両端が、配管48に接続される。弁52、混床樹脂塔32及び弁53が、この順に配管51に設置される。混床樹脂塔32は、内部に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填している。
冷却器31及び弁41が設けられた配管が、加熱器29及び弁40をバイパスして循環配管2に接続される。
化学除染装置1を用いた本実施例の化学除染方法を、図1に示した手順に基づいて説明する。本実施例の化学除染方法は、構成部材の表面に予めフェライト皮膜が形成された沸騰水型原子力プラントの、1つの運転サイクルにおける運転を開始し、この運転サイクルにおける沸騰水型原子力プラントの運転中に構成部材に付着した放射性核種を、その運転サイクルでの沸騰水型原子力プラントの運転を終了した後に化学除染により除去する方法である。
沸騰水型原子力プラントの構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成から説明する。構成部材の表面にフェライト皮膜を形成する(ステップS1)。新設の沸騰水型原子力プラントの建設が終了した後、この沸騰水型原子力プラントの運転が開始される前に、沸騰水型原子力プラントの構成部材の表面にフェライト皮膜が形成される。新設の沸騰水型原子力プラントでは、このプラントの運転が行われていないので、構成部材の表面に放射性核種が付着していない。このため、構成部材に対する化学除染が行われずに、ステップS1におけるフェライト皮膜の形成が実行される。このフェライト皮膜の形成は、沸騰水型原子力プラントの定期検査時における後述のステップS7での構成部材表面へのフェライト皮膜の形成と同じである。ステップS1での構成部材表面へのフェライト皮膜の形成については、ステップS7で詳細に説明する。
構成部材の表面にフェライト皮膜を形成した後、原子炉の運転を開始する(ステップS2)。原子炉の運転、すなわち、沸騰水型原子力プラントの運転を開始する。原子炉の定格出力運転を行う(ステップS3)。原子炉の運転を開始した後、原子炉の炉心内に挿入されている複数の制御棒が順次引抜かれて、原子炉が臨界状態になり、昇温昇圧過程を経て原子炉出力が定格出力(100%出力)まで上昇される。その後、その運転サイクルが終了するまで、原子炉の定格出力運転が継続される。この運転サイクルでの原子炉の運転が終了した後、原子炉の運転が停止される(ステップS4)。原子炉の運転が停止された後、沸騰水型原子力プラントの定期検査が行われる(ステップS5)。
定期検査が行われるとき、構成部材に対して化学除染が行われる(ステップS6)。沸騰水型原子力プラントの化学除染を行った構成部材の表面に、フェライト皮膜を形成する(ステップS7)。構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成が終了し、かつ、沸騰水型原子力プラントの定期検査が終了した(ステップS8)後、原子炉の運転が再び開始される(ステップS9)。その後、ステップS3〜S9の工程が繰り返される。これらの工程が繰り返される過程において、実施されるそれぞれのステップS6の化学除染では、表面にフェライト皮膜が形成された構成部材に対する化学除染が行われる。
ステップS6における化学除染、及びステップS7におけるフェライト皮膜の形成について、詳細に説明する。
まず、ステップS6の化学除染について説明する。化学除染を行う化学除染対象部位56として、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器に接続された再循環系配管を想定する。内面にフェライト皮膜を形成している再循環系配管の内面の化学除染を行うために、化学除染装置1の循環配管2の両端が、再循環系配管に接続される。
化学除染対象部位56の1つである再循環系配管に接続されている循環配管2内に、弁55を開いて配管54より水を注入する。循環配管2及び再循環系配管内に所定量の水を供給し、弁55を閉じる。弁39、40、42、43及び44を開き、残りのすべての弁を閉じた状態にして、循環ポンプ28を駆動する。循環ポンプ28により昇圧された水は、再循環系配管に導かれ、再循環系配管及び循環配管2により構成される閉ループ内を循環する。この循環水は加熱器29により加熱され、この水の温度が90℃から100℃(但し沸点未満)の範囲、例えば90℃に調節される。
循環している水が設定温度まで上昇したとき、弁49及び50を開いて弁42を閉じ、循環配管2内を流れる水を、配管48を通して陽イオン交換装置30に供給する。その後、弁11を開いて注入ポンプ10を駆動し、薬液タンク9内からシュウ酸溶液を、注入配管12を通して循環配管2内を流れる水に注入する。これと並行して、弁17を開いて注入ポンプ15を駆動し、薬液タンク内14からヒドラジンを、注入配管17を通して循環配管2内を流れる水に注入する。シュウ酸溶液の注入量は、循環配管2内を流れる水に含まれるシュウ酸濃度が10ppmから4000ppm、好ましくは100ppmから2000ppmになるように制御される。循環配管2内を流れる水にシュウ酸溶液を注入することによって、シュウ酸濃度が所定濃度になっている還元除染液が生成される。循環配管2内を流れる還元除染液のシュウ酸濃度は、循環配管2のいずれかの場所に設置された水質モニタ(図示せず)で計測される。
ヒドラジンの注入量は、再循環系配管に供給される還元除染液のpHが2〜3の範囲、好ましくは2.3〜2.7の範囲になるように、注入ポンプ15の回転速度(または弁16の開度)を制御することによって調節される。シュウ酸及びヒドラジンを含む還元除染液を用いて、再循環系配管の内面の還元除染を、例えば、4時間から15時間程度実施する。この還元除染により、ステップS1において構成部材の表面に形成され、原子炉の運転中に放射性核種が付着したフェライト皮膜が溶解除去される。フェライト皮膜の除去により循環配管2内を循環する還元除染液に溶解した陽イオンは、陽イオン交換装置30にて循環する還元除染液より除去される。
還元除染液を使用する還元除染が終了した後、弁11及び17を閉じて注入ポンプ10及び15を停止し、シュウ酸溶液及びヒドラジンの循環配管2への供給を停止する。その後、還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンの分解を行う。弁46及び47を開いて分解装置33への還元除染液の供給を開始し、弁43の開度を調節して分解装置33への還元除染液の供給量を制御する。弁38を開いて注入ポンプ36を駆動し、薬液タンク35から注入配管38を通して分解装置33の上流側で配管45内を流れる還元除染液に過酸化水素水溶液を注入する。過酸化水素を含む還元除染液が分解装置33に供給される。還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンは、それぞれ、分解装置33内で触媒の作用により過酸化水素と反応し、シュウ酸は水と二酸化炭素に、ヒドラジンは水と窒素に分解される。
分解装置33の下流側に設置した水質モニタ(図示せず)で、分解装置33から排出されて配管45内を流れる水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンのそれぞれの濃度を測定する。測定されたシュウ酸濃度及びヒドラジン濃度に基づいて、注入ポンプ36の回転速度(または弁37の開度)を制御し、薬液タンク35から分解装置33に供給する過酸化水素の量を調整する。循環配管2内を流れる水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンのそれぞれの濃度が例えば10ppm程度まで低下したとき、還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンのそれぞれの分解が完了したと判定し、注入ポンプ36を停止して弁37を閉じる。これにより、薬液タンク35から配管45への過酸化水素の供給を停止する。過酸化水素の配管45への注入が停止された時、弁46及び47を閉じて分解装置33への通水を停止する。
pH調整剤であるヒドラジン及び還元除染剤であるシュウ酸の分解を完了した後、弁4を開いて弁40を閉じ、循環配管2内を循環している水溶液を、冷却器31で冷却する。さらに、弁52及び53を開いて弁49及び50を閉じ、この水溶液を、配管51を通して混床樹脂塔32に供給する。陽イオン交換装置30で除去されずに循環配管2内を流れている水溶液に含まれている、還元除染時の溶出物、残っているシュウ酸及びヒドラジンが、混床樹脂塔32で除去される。混床樹脂塔32に充填された陰イオン交換樹脂は高温で劣化しやすいので、混床樹脂塔32に供給される水溶液は、冷却器31によって例えば約60℃以下に冷却される。混床樹脂塔32への水溶液の供給は、例えば、6時間から12時間程度実施される。これにより、再循環系配管及び循環配管2内を流れる水溶液が浄化されて水になる。
以上の手順により、化学除染の全工程が終了する。本実施例で実施される化学除染は、還元除染液を使用した還元除染工程、還元除染液に含まれる薬剤(例えば、シュウ酸及びヒドラジン)を分解する薬剤分解工程、及び混床樹脂塔によって水溶液を浄化する浄化工程を含んでいる。フェライト皮膜が予め表面に形成された構成部材を対象にした、このような本実施例の化学除染方法は、除染液を使用する除染工程として、還元除染工程のみを実施している。
ステップS6の化学除染が終了した後、引き続いて、構成部材の表面にフェライト皮膜を形成する(ステップS7)。構成部材の表面へのフェライト皮膜の形成は、特開2006−38483号公報に記載された実施例1におけるステップS3〜S8の各工程を実行することによって行われる。以下に、フェライト皮膜形成の概要を説明する。弁39、40、49、50、43及び44を開いて他の弁は閉じ、循環ポンプ28を駆動して、循環配管2、及び除染対象部位56であり皮膜形成対象部位でもある再循環系配管に水を循環させる。加熱器29を用いて、再循環系配管及び循環配管2を含む閉ループ内を循環する水を加熱し、この水の温度を60℃〜100℃の範囲、例えば、90℃に調節する。
上記の閉ループ内を循環する水が所定の温度に達した後、弁21を開いて注入ポンプ20を駆動し、薬液タンク19から、鉄をギ酸で溶解して調整した鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬剤を、注入配管22を通して循環配管2に注入する。続いて、弁16を開いて注入ポンプ15を駆動し、薬液タンク14から、ヒドラジンを、注入配管17を通して循環配管2に注入する。弁26を開いて注入ポンプ25を駆動し、薬液タンク24からの過酸化水素を、注入配管27を通して循環配管2に注入する。鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬剤、ヒドラジン及び過酸化水素を循環配管2内に注入することにより、循環配管2内で、鉄(II)イオン、ヒドラジン及び過酸化水素を含むpHが7.0で温度が90℃の皮膜形成水溶液(皮膜形成液)が生成される。この皮膜形成水溶液のpHは、注入ポンプ15の回転速度(または弁16の開度)を制御することにより循環配管2へのヒドラジンの注入量を調節して所定のpHに調節される。このような制御により循環配管2内を流れる皮膜形成水溶液のpHが、5.5〜9.0の範囲、例えば、7.0に調節される。
皮膜形成水溶液は、循環配管2から再循環系配管に供給され、再循環系配管の化学除染が行われた内面に接触する。このため、皮膜形成水溶液に含まれた鉄(II)イオンが、構成部材である再循環系配管の内面に吸着される。皮膜形成水溶液に含まれる過酸化水素が、その内面に吸着された鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに酸化してフェライト化させる。マグネタイトを主成分とするフェライト皮膜が、皮膜形成対象部位である再循環系配管の内面に形成される。再循環系配管に供給された皮膜形成水溶液が循環配管2に戻され、鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬剤、ヒドラジン及び過酸化水素が循環配管2内を流れている皮膜形成水溶液に順次注入される。鉄(II)イオン及びギ酸を含む薬剤、ヒドラジン及び過酸化水素が注入された皮膜形成水溶液が、再び、再循環系配管に供給される。皮膜形成水溶液が、循環配管2及び再循環系配管を含む閉ループ内を循環する間に、再循環系配管の内面に設定厚みのフェライト皮膜が形成される。設定厚みのフェライト皮膜が再循環系配管の内面に形成されたとき、フェライト皮膜の形成が終了する。
フェライト皮膜の形成が終了した後、弁16、21及び26を閉じて注入ポンプ15、20及び25を停止し、鉄(II)イオン、ヒドラジン及び過酸化水素の循環配管2への注入を停止する。その後、循環配管2内を流れる皮膜形成水溶液に含まれるギ酸及びヒドラジンを分解する。ギ酸及びヒドラジンの分解は、前述のステップS6で実施した化学除染と同様に、皮膜形成水溶液を分解装置33に供給し、分解剤注入装置34から供給される過酸化水素を分解装置33に導く。ギ酸及びヒドラジンは、分解装置33において触媒及び過酸化水素の作用により分解される。ギ酸及びヒドラジンの分解が終了した後、ステップS6において実施した混床樹脂塔32による循環配管2内の皮膜形成水溶液の浄化が行われる。以上により、ステップS7のフェライト皮膜形成の全工程が終了する。
本実施例の化学除染方法は、沸騰水型原子力プラントにおいて、再循環系配管以外に原子炉浄化系の配管に対して適用することができる。
本実施例の化学除染方法では、表面にフェライト皮膜を形成した構成部材を対象に化学除染を行うので、化学除染方法で実施される、化学除染液を使用する除染工程として、還元除染液を使用する還元除染工程のみを実施する。このため、本実施例では、化学除染液を使用する除染工程として酸化除染工程及び還元除染工程を行う従来の化学除染方法に比べて、酸化除染工程が不要になるので、化学除染の工程を簡素化することができ、化学除染に要する時間を短縮することができる。
また、本実施例は、酸化除染工程を実施する場合に発生する放射性廃棄物を削減することができる。
本実施例の化学除染方法では、フェライト皮膜の形成に使用した皮膜形成装置に含まれる薬剤(例えば、ギ酸及びヒドラジン)の分解を、化学除染で使用した還元除染液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンの分解に用いた分解装置33で行うので、化学除染装置の構成を簡素化することができる。
なお、上記の実施例では、フェライト皮膜の形成に用いる装置(皮膜形成装置)と、化学除染に用いる装置(化学除染装置)を統合して構成された化学除染装置1を用いている。しかしながら、還元除染液注入装置8、pH調整剤注入装置13及び酸化剤注入装置23を循環配管に接続した化学除染装置、及び鉄(II)イオン注入装置18、pH調整剤注入装置13及び酸化剤注入装置23を循環配管に接続した皮膜形成装置を別々に用いて、本実施例の化学除染方法を実行しても良い。
また、沸騰水型原子力プラントの、フェライト皮膜が表面に形成された構成部材に対して上記の実施例における化学除染を行い、化学除染終了後に、この構成部材を沸騰水型原子力プラントから取り外し、別途工場等でその構成部材の表面にフェライト皮膜を形成しても良い。
上記した実施例の化学除染方法は、加圧水型原子力プラントの構成部材(表面にフェライト皮膜形成)に対しても適用することができる。
1…化学除染装置、2…循環配管、8…還元除染液注入装置、9,14,19,24,35…薬液タンク、10,15,20,25,36…注入ポンプ、12,17,22,27,38…注入配管、13…pH調整剤注入装置、18…鉄(II)イオン注入装置、23…酸化剤注入装置、28…循環ポンプ、29…加熱器、30…陽イオン交換装置、31…冷却器、32…混床樹脂塔、33…分解装置、34…分解剤供給装置、56…除染対象部位。

Claims (6)

  1. 原子力プラントの、表面にフェライト皮膜が形成されたステンレス鋼製の構成部材の化学除染を行う際に、化学除染液を使用する除染工程として、還元除染液を使用する還元除染工程のみを実施することを特徴とする化学除染方法。
  2. 前記還元除染工程において、前記還元除染液により、放射性核種が付着した前記フェライト皮膜を前記構成部材から除去する請求項1に記載の化学除染方法。
  3. 前記還元除染工程において、シュウ酸及びヒドラジンを含む前記還元除染液を使用する請求項1または2に記載の化学除染方法。
  4. 前記還元除染工程が終了した後、前記還元除染に含まれる前記シュウ酸及び前記ヒドラジンを分解する工程を含む請求項3に記載の化学除染方法。
  5. 前記放射性核種が付着した前記フェライト皮膜を除去した、前記構成部材の表面に前記フェライト皮膜を形成する請求項2に記載の化学除染方法。
  6. 前記構成部材の表面の前記フェライト皮膜が、鉄(II)イオン及び酸化剤を含んでpHが5.5〜9.0の範囲内にある皮膜形成水溶液を前記構成部材の表面に接触させることによって形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化学除染方法。
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