以下に、添付の図面を参照して、この発明に係る乗員姿勢検知装置の第1の実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100は、例えば車両1の座席40の上方にある車室天井部2に少なくとも1つ設けられた主検知電極19を有する静電容量センサ部10と、座席40に着座した乗員(人体)48の周方向にそれぞれ設けられた補助検知電極41,42,43,44と、これら主検知電極19及び補助検知電極41〜44からの静電容量を示す検知信号に基づいて、座席40に着座した乗員48の着座姿勢を判定する回路部20とを備えて構成されている。
静電容量センサ部10の主検知電極19は、車室天井部2の内部或いは車室内側表面に水平方向とほぼ平行な検知面を有する状態で配置され、主に乗員48の頭部49と車室天井部2(具体的には主検知電極19)との間の静電容量を検知する。より具体的には、静電容量センサ部10の主検知電極19は、乗員48の頭部49の頭頂部との間の静電容量を検知する。
補助検知電極41は、車両1の座席40の正面に位置する座席正面部3の内部或いは表面側に垂直方向とほぼ平行な検知面を有する状態で配置され、補助検知電極42は、車両1の座席40の横のサイドドア4の内部或いは車室内側に垂直方向とほぼ平行な検知面を有する状態で配置されている。
また、補助検知電極43は、座席40のヘッドレスト5の内部或いは前面側にその表面とほぼ平行な検知面を有する状態で配置され、補助検知電極44は、座席40の背もたれ部6の内部或いは前面側にその表面とほぼ平行な検知面を有する状態で配置されている。
従って、補助検知電極41は、座席正面部3から座席40の背もたれ部6にほぼ水平に向かう方向(車両1の後方に向かう方向)の静電容量を検知し、補助検知電極42は、サイドドア4から着座部7の上方にほぼ水平に向かう方向(車両1の左から右或いは右から左へ向かう方向)の静電容量を検知する。
また、補助検知電極43は、座席40のヘッドレスト5からヘッドレスト5の前面側の表面とほぼ交差する方向(座席40が通常状態の時は着座部7の上方にほぼ水平に向かう方向(すなわち、車両1の前方に向かう方向))の静電容量を検知し、補助検知電極44は、座席40の背もたれ部6から背もたれ部6の前面側の表面とほぼ交差する方向(座席40が通常状態の時は着座部7の上方にほぼ水平に向かう方向(同じく、車両1の前方に向かう方向))の静電容量を検知する。
なお、座席正面部3は、例えば座席40が車両1の運転席である場合は、ステアリングホイール(ハンドル)やインストルメントパネルなどを含み、座席40が助手席である場合は、ダッシュボードやダッシュパネル、グローブボックスなどを含む。また、座席40が後部座席である場合は、前席の背もたれ部6の背面側を含む。このように配置された補助検知電極41〜44によって、座席40に着座した乗員48の周方向の静電容量を検知することができる。
ここで、静電容量センサ部10は、例えば部品等のモジュール化を促進するために、図示しない基板の一方の面側に、上述したような主検知電極19が形成されて車室天井部2に配置されても良い。また、回路部20は、この基板の同一面側或いは他方の面側に実装された上で配置されていても良い。なお、配置の態様によっては、各部が別体に配置されても、主検知電極19のみが直接車室天井部2に形成されても良い。更に、補助検知電極41〜44も、上記のような基板に形成されていても良い。
静電容量センサ部10等が基板に形成された場合は、この基板としては、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)、リジッド基板或いはリジッドフレキシブル基板などが用いられる。また、主検知電極19及び補助検知電極41〜44は、例えば基板がFPCからなる場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)或いはガラスエポキシ樹脂などの絶縁体からなるベース材上にパターン形成された銅、銅合金又はアルミニウムなどの導電材からなる。
その他、主検知電極19及び補助検知電極41〜44は、メンブレン回路に形成されたり、導電性粘着材や導電性フィルム、或いは一般的な電線等のその他の部材からなるものでも良く、設置される箇所によっては、透明電極により構成することもできる。この場合は、上記基板を透明性を有するパネルやフィルム材にて形成し、主検知電極19及び補助検知電極41〜44を透明電極で構成すれば良い。
ここで、透明電極は、例えばITO(錫ドープ酸化インジウム)やPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォニック酸)、或いはPEDOT/TsO(ポリエチレンジオキシチオフェン/トルエンスルフォネート)などを用いることができる。
このように構成された主検知電極19は、例えば切替スイッチSW1を介して回路部20の静電容量検知回路21に接続されると共に、この切替スイッチSW1を介してシールド駆動回路23に接続可能に構成されている。同様に、補助検知電極41〜44は、切替スイッチSW4,SW5,SW6,SW7を介して静電容量検知回路21にそれぞれ接続されると共に、これら切替スイッチSW4〜SW7を介してシールド駆動回路23に接続可能に構成されている。なお、図示は省略するが、上記シールド駆動回路23は、回路部20内に備えられていても良い。
また、補助検知電極41〜44は、上述したように乗員48の周方向に少なくとも1つ設けられていれば良く、その配置態様は、上記の通り例えば座席40に着座した乗員48の前後左右の姿勢変化や背丈などの差異を判定するための静電容量を適切に検知できる範囲を構成するように設置されていれば良い。
すなわち、主検知電極19は座席40(の着座部7)に向かう方向(垂直方向)の静電容量を検知し、補助検知電極41〜44は座席40に着座した乗員48を取り巻く周方向(水平方向)の静電容量を検知する。これにより、乗員48の着座姿勢を、図1に示すX方向、Y方向及びZ方向において詳細且つ高精度に検知することが可能となる。
一方、回路部20は、主検知電極19及び補助検知電極41〜44により検知された静電容量を示す検知信号に基づいて、それぞれの静電容量値を検出する静電容量検知回路21と、この静電容量検知回路21からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器22と、このA/D変換器22によりディジタル信号化された情報に基づき、乗員姿勢検知装置100の各種動作制御や演算処理などを司ると共に、乗員48の着座姿勢を判定し、この判定した着座姿勢に関する情報(姿勢情報)を、例えば車両1に搭載されたECU(電子制御ユニット)に対して出力するCPU29とを備えて構成されている。
ECUは、例えば車両1に搭載された運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ等の各種のエアバッグの展開を制御(すなわち、エアバッグの開く方向や膨張率などを制御)する機能を備え、第1の実施形態の乗員姿勢検知装置100からの姿勢情報をも参照して、エアバッグの展開を制御することが可能に構成されている。
各切替スイッチSW1,SW4〜SW7は、例えばマルチプレクサ、アナログスイッチ、FET或いはリレーなどのユニットからなる。また、回路部20は、図示しない情報格納領域としてのROMやCPU29の一時演算領域としてのRAMなどを備え、CPU29は、各切替スイッチSW1,SW4〜SW7の切り替え動作を切替制御信号を出力して制御する。具体的には、この乗員姿勢検知装置100では、次のような切替制御が行われる。
すなわち、CPU29からの切替制御信号により、例えば切替スイッチSW1が主検知電極19と静電容量検知回路21とが接続されるように切り替えられた場合は、切替スイッチSW4〜SW7は補助検知電極41〜44がそれぞれシールド駆動回路23と接続されるように切り替えられる。
また、例えば切替スイッチSW4が補助検知電極41と静電容量検知回路21とが接続されるように切り替えられた場合は、切替スイッチSW1,SW5〜SW7は主検知電極19及び補助検知電極42〜44がシールド駆動回路23と接続されるように切り替えられる。
このように、ある検知電極が静電容量検知回路21と接続されるように切替スイッチにより切り替えられた場合は、他の検知電極はシールド駆動回路23と接続されるように切替スイッチにより切り替えられる。そして、CPU29は、主検知電極19及び補助検知電極41〜44と静電容量検知回路21とが上記のように択一的に接続された時(例えば、順番に切り替えられて接続された時)にそれぞれ検出された静電容量値に基づいて、乗員48着座姿勢を判定する。
なお、シールド駆動回路23は、接続された検知電極に対して、静電容量検知回路21により与えられている電位と同等の電位を与えるように構成されている。これにより、主検知電極19及び補助検知電極41〜44同士の静電容量結合を防止して、それぞれの検知電極ごとに高精度な静電容量の検知を行うことが可能となる。
また、シールド駆動回路23は、例えば主検知電極19及び補助検知電極41〜44に与えられる電位よりも高いインピーダンスで1倍のアンプ(バッファ)を通して生成された電位を与えても良い。その他、静電容量検知回路21が差動動作型である場合は、オペアンプの非反転入力部分を接続して同等の電位を与えても良い。差動動作型とすることで、コモンモードノイズを除去しつつ回路内の温度特性などをキャンセルすることができる。差動動作型の回路構成や動作原理については、公知の技術であるためここでは説明を省略する。
主検知電極19及び補助検知電極41〜44は、図2に示すように、例えばそれぞれ矩形状に形成されており、その裏面側(検知面のある検知範囲側とは反対側)にそれぞれの検知電極と電気的に絶縁されてその裏面側の静電容量の検知を抑制するためのシールド部17や、それぞれの検知電極の周囲に同様の効果をもたらすシールド部18が形成された構成であっても良い。
なお、これらシールド部17,18には、例えば主検知電極19及び補助検知電極41〜44と同電位が与えられている。このようなシールド部17,18を備えれば、更に精度良く車室天井部2と頭部49との間の静電容量や、座席正面部3、サイドドア4、ヘッドレスト5及び背もたれ部6と乗員48との間の静電容量を検知することが可能となる。
第1の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100は、乗員48が主検知電極19及び補助検知電極41〜44と比較して、非常に大きい体積及び誘電率を有しているために、ほぼグランド(GND)とみなすことができる原理を利用している。このため、回路部20がそれぞれの検知電極とグランド(例えば、乗員48)との間の静電容量を用いて乗員48の着座姿勢を判定することができる構成を採用している。
従って、このような構成の乗員姿勢検知装置100によれば、従来技術の欄で説明した頭部位置検出システムなどのように、システム内において多くの信号の送受信が必要な従来のものと比較して、非常にシンプルな構成で精度の高い着座姿勢の検知を行うことができるシステムを構築することができる。この乗員姿勢検知装置100の具体的な動作は、例えば次のようなものとなる。
まず、動作が開始されたら、回路部20のCPU29は、切替スイッチSW1により主検知電極19が静電容量検知回路21と接続され、切替スイッチSW4〜SW7により補助検知電極41〜44がシールド駆動回路23と接続されるように、各切替スイッチSW1,SW4〜SW7を切り替える。
ここで、CPU29は、例えば静電容量センサ部10の主検知電極19により検知された静電容量が、予め設定された所定のしきい値(以下、単に「しきい値」と呼ぶ。)以上であるか否かを判断する。すなわち、具体的には図3に示すように、CPU29は、例えば静電容量センサ部10の主検知電極19からの静電容量値(V)が、しきい値(Th1)以上である場合は、主検知電極19と乗員48の頭部49との間の距離dが距離d1以内(すなわち、主検知電極19の検知可能な範囲のうちの適切検知範囲内)であると判断する。
主検知電極19の適切検知範囲Bは、図4に示すように、主検知電極19の検知可能な範囲Aのうち、乗員48の頭部49を適切に検知することができる範囲のことである。従って、適切検知範囲Bは範囲Aよりも狭く範囲Aに含まれる領域の範囲であると言える。なお、補助検知電極41〜44についても、図示や説明は省略するが、このような検知可能な範囲及び適切検知範囲が存在する。また、乗員48の被検知部位とは、主検知電極19(或いは補助検知電極41〜44)から最も近い乗員48の部位を言う。
この場合、CPU29は、例えば補助検知電極41〜44からの検知信号を用いずに主検知電極19からの検知信号のみに基づき乗員48の着座姿勢を判定する。これにより、乗員48の被検知部位(ここでは、頭部49)が主検知電極19の適切検知範囲B内に存する時の着座姿勢は、補助検知電極41〜44からの余計な(不要な)検知信号を用いずに信号処理を極力簡略化した状態で判定することができる。
一方、静電容量センサ部10の主検知電極19からの静電容量値(V)が、しきい値(Th)未満である場合は、主検知電極19と乗員48の頭部49との間の距離dが距離d1よりも長い(すなわち、主検知電極19の検知可能な範囲Aのうちの適切検知範囲B外である)と判断する。このような場合、CPU29は、切替スイッチSW4〜SW7により補助検知電極41〜44がそれぞれ順に静電容量検知回路21と接続され、切替スイッチSW1により主検知電極19がシールド駆動回路23と接続されるように各切替スイッチSW1,SW4〜SW7を切り替える。
そして、同様に各補助検知電極41〜44により検知された静電容量がしきい値以上であるか否かを判断し、その判断結果に基づき乗員48の着座姿勢を判定する。また、主検知電極19の適切検知範囲B外であると判断した場合であっても、補助検知電極41〜44からの静電容量値のみならず、主検知電極19からの静電容量値を更に加味して乗員48の着座姿勢を判定するようにしても良い。
なお、第1の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100は、主検知電極19及び補助検知電極41〜44を切替スイッチSW1,SW4〜SW7を介して1つの静電容量検知回路21に接続し、CPU29による切替制御により切替スイッチSW1,SW4〜SW7を切り替えて、主検知電極19及び補助検知電極41〜44にて検知された静電容量値を用いて乗員48の着座姿勢を判定するように構成したが、例えば主検知電極19及び補助検知電極41〜44に対してそれぞれ静電容量検知回路21を具備するように構成しても良い。ただし、この場合は、1つの検知電極による静電容量の検知中(測定中)に、他の検知電極の電位が変化するとその影響を受けてしまうため、各静電容量検知回路は同期させる必要がある。
ここで、静電容量検知回路21は、主検知電極19及び補助検知電極41〜44と乗員48の頭部49や乗員48の体幹部との間の静電容量に応じてデューティー比が変化するパルス信号を生成すると共に平滑化して検知信号を出力する。すなわち、静電容量検知回路21は、静電容量(Capacitance)を電圧(Voltage)に変換するC−V変換機能を有し、例えば公知のCR充放電時間を計測する回路、充電した電荷を既知のコンデンサに転送する回路、インピーダンスを測定する回路、発振回路を構成して発振周波数を計測する回路等を用いて構成することができる。
このように構成された乗員姿勢検知装置100は、乗員48の着座姿勢を、例えば次のように詳細に判定する。すなわち、上述したように主検知電極19の適切検知範囲B内であると判断した時は、乗員48の頭部49の位置が通常姿勢(すなわち、座席40の形状に合った通常基本となる姿勢で座席40に普通に座っている姿勢)であるとして、大人(背丈がある程度以上の人)が普通に着座していると判定する。
一方、主検知電極19の適切検知範囲B外であると判断した時は、座席正面部3の補助検知電極41からの検知信号がしきい値以上である時に、乗員48の頭部49の位置が座席正面部3の近傍にある姿勢(前方側に屈んでいる姿勢)であるとして、大人或いは子供が屈んでいる(子供の場合は前方に乗り出している場合も含む)と判定する。
また、主検知電極19の適切検知範囲B外であると判定した時は、サイドドア4の補助検知電極42からの検知信号がしきい値以上である時に、乗員48の体幹部がサイドドア4の近傍にある姿勢(側方側に片寄っている姿勢)であるとして、大人或いは子供がそのサイドドア4に寄り掛かっていると判定する。
更に、主検知電極19の適切検知範囲B外であると判断した場合に、例えばヘッドレスト5及び背もたれ部6の補助検知電極43,44からの検知信号を用いて、乗員48の背丈を判定するようにしても良い。乗員48の背丈の判定は、例えば、補助検知電極43からの検知信号が示す静電容量値を補助検知電極44からの検知信号が示す静電容量値で除算した値がしきい値未満である場合は、背丈がある程度未満の人であるとして、子供が通常姿勢で着座していると判定する。
また、例えば、補助検知電極43からの検知信号が示す静電容量値を補助検知電極44からの検知信号が示す静電容量値で除算した値がしきい値以上である場合は、背丈がある程度以上の人であるとして、大人が通常姿勢で着座していると判定する。そして、このような判定は、それぞれ単独で行っても良いし、これら補助検知電極41〜44からの検知信号を組み合わせて用いて行うこともできるので、第1の実施形態の乗員姿勢検知装置100は、乗員48の着座姿勢を更に詳細且つ高精度に検知することができる。
すなわち、例えば主検知電極19の適切検知範囲B外であって、補助検知電極41からの検知信号がしきい値以上であり、且つ補助検知電極42からの検知信号がしきい値Th1以上である時は、これらの組み合わせから大人が屈んでいる(若しくはこれに代えて或いは加えてそのサイドドア4に寄り掛かっている)と判定する。
また、主検知電極19の適切検知範囲B外であって、補助検知電極41からの検知信号がしきい値以上であり、且つ補助検知電極42からの検知信号がしきい値Th1より小さいしきい値Th2以下である時は、これらの組み合わせから子供が前方に乗り出していると判定する。なお、このような条件の時に補助検知電極42からの検知信号がしきい値Th1より小さくしきい値Th2より大きい時は、大人が屈んでいると判定する。
更に、主検知電極19の適切検知範囲B外であって、補助検知電極42からの検知信号がしきい値Th2以下であり、且つ補助検知電極43からの検知信号が示す静電容量値を補助検知電極44からの検知信号が示す静電容量値で除算した値がしきい値未満である時は、これらの組み合わせから子供が背もたれ部6を倒して寝ていると判定し、上記除算した値がしきい値以上である時は、大人が背もたれ部6を倒して寝ていると判定する。
なお、補助検知電極43,44からの検知信号が示す静電容量値を利用した乗員48の背丈の判定は、上述した除算の他にも種々の演算により行うことができる。また、上記に挙げた判定条件はあくまで一例であるので、第1の実施形態の乗員姿勢検知装置100はこれに限定されるものではない。乗員姿勢検知装置100によるこのような乗員姿勢検知処理を簡潔に説明すると、次のようなものとなる。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を附して説明を省略する。
図5に示すように、まず、回路部20のCPU29が各切替スイッチSW1,SW4〜SW7を切り替えることにより、静電容量検知回路21によって主検知電極19により静電容量が検知される(ステップS101)。
次に、CPU29は、静電容量検知回路21からの検知信号が示す静電容量値がしきい値以上であるか否かを判断する(ステップS102)。静電容量値がしきい値以上であると判断した場合(ステップS102のY)は、上述したような姿勢判定を行い(ステップS103)、判定結果に基づく姿勢情報を出力して(ステップS104)、本フローチャートによる一連の乗員姿勢検知処理を終了する。
一方、静電容量値がしきい値未満であると判断した場合(ステップS102のN)は、各切替スイッチSW1,SW4〜SW7を切り替えて、静電容量検知回路21によって補助検知電極41〜44により静電容量が検知され(ステップS105)、上記ステップS103に移行して、上述したような姿勢判定を行い(ステップS103)、以降の処理を実行する。
なお、回路部20は、予め座席40に乗員48が着座していない時の静電容量に基づく静電容量値を上述したROM,RAM等に記憶し、乗員48が着座した場合にこれらに記憶された静電容量値からの増加量を検出して姿勢判定に用いるように構成されていても良い。
このように、第1の実施形態の乗員姿勢検知装置100によれば、座席40に着座した乗員48の着座姿勢を詳細且つ高精度に検知し判定することができる。これにより、車両1に搭載された各種エアバッグの展開制御などを、乗員48の着座姿勢に対応して細かく行うことが可能となる。次に、本発明に係る乗員姿勢検知装置の第2の実施形態について詳細に説明する。
図6に示すように、第2の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100Aは、先の第1の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100と、静電容量センサ部10の構成及び切替スイッチの構成が相違している。すなわち、乗員姿勢検知装置100Aの静電容量センサ部10は、例えば車両1の座席40の上方にある車室天井部2に、座席40に着座した乗員48の頭部の平面上の位置(平面的な位置)を検知可能となるように配置された3つの検知電極(第1主検知電極11、第2主検知電極12及び第3主検知電極13)を有する。
第1〜第3主検知電極11〜13は、例えば第1主検知電極11が車両1の前方側の頂点となり、第2及び第3主検知電極12,13が座席40上の車両1の左右方向に離れて配置され、各主検知電極11〜13を直線的に結ぶと三角形平面状(例えば、第1主検知電極11を前方側の頂点とする二等辺三角形)となるように車室天井部2の内部或いは車室内側表面に配置されている。
第1主検知電極11は、切替スイッチSW1を介して静電容量検知回路21とシールド駆動回路23とに接続可能に配置されている。また、第2主検知電極12は、切替スイッチSW2を介して、第3主検知電極13は、切替スイッチSW3を介して、それぞれ静電容量検知回路21とシールド駆動回路23とに接続可能に配置されている。
そして、このように構成された静電容量センサ部10は、乗員48の頭部49と車室天井部2(具体的には各主検知電極11〜13)との間の静電容量を検知する。こうして検知された静電容量を示す検知信号に基づいて、回路部20のCPU29は、上述したように、乗員48の頭部49が主検知電極11〜13の適切検知範囲B内である(に存する)か否かを判断する。
なお、この場合の適切検知範囲B内であるか否かの判断は、例えば主検知電極11〜13からの合計静電容量値や平均静電容量値としきい値とを比較することにより行われる。ここで、適切検知範囲B外であると判断された場合の動作等は、先の第1の実施形態にて説明した動作と同様であるため、ここでは主に適切検知範囲B内であると判断された場合の動作等について説明する。
第2の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100Aは、乗員48の頭部49が主検知電極11〜13の適切検知範囲B内である場合に、頭部49の位置を高精度に判定することが可能に構成されている。なお、図7は、この乗員姿勢検知装置100Aの頭部位置判定の動作原理を説明するための図であり、図7におけるグラフの(1)、(2)、(3)は、それぞれ第1〜第3主検知電極11〜13と対応している。
図7(a)に示すように、例えば乗員48が座席40に対して車両1の前方右側寄りに着座している場合は、第1主検知電極11の(1)の検出された静電容量値(以下、「検出値」と呼ぶ。)ΔCが、第2主検知電極12の(2)の検出値ΔCや第3主検知電極13の(3)の検出値ΔCよりも大きくなる。このため、乗員48の頭部49(例えば頭頂部、以下同じ。)の位置が第1主検知電極11の下方近傍(すなわち、座席40の前方側)にあることが分かる。ここで、検出値ΔCは、例えば総検出値に対する検出値の割合を示している。
また、第2主検知電極12の(2)の検出値ΔCと第3主検知電極13の(3)の検出値ΔCとを比較すると、第2主検知電極12の(2)の検出値ΔCの方が大きい。このため、乗員48の頭部49の位置は、第2主検知電極12の下方近傍(すなわち、右側)に近い位置であることが分かる。つまり、このように第1〜第3主検知電極11〜13の検出値ΔCを比較することで、この場合は乗員48の着座姿勢が頭部49が座席40の右側前方に位置するような姿勢であることが分かる。
一方、図7(b)に示すように、例えば乗員48が座席40に普通の状態で寄り掛かって中央に着座している(上記通常姿勢で着座している)場合は、第2主検知電極12の(2)及び第3主検知電極13の(3)の検出値ΔCが第1主検知電極11の(1)の検出値ΔCよりも大きくなる。このため、乗員48の頭部49の位置が第2主検知電極12及び第3主検知電極13の下方側(すなわち、座席40の後方側)に近い位置であることが分かる。
また、第2主検知電極12の(2)の検出値ΔCと第3主検知電極13の(3)の検出値ΔCとを比較すると、これらの検出値ΔCがほぼ等しい値である。このため、乗員48の頭部49の位置は、第2及び第3主検知電極12,13の中間点下方にある(すなわち、座席40に寄り掛かって中央位置に着座している)ことが分かる。
このように、各主検知電極11〜13から乗員48の頭部49までの距離dは、各検出値ΔCを用いて求めることができるので、周知の三角測量法などを用いて頭部49の位置を算出することができる。しかし、検出値ΔCと頭部49の距離dとの関係は、乗員48の頭部49の大きさや車室天井部2との間の距離等にも依存するため、第2の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100Aでは、更に上述した三角測量法の他に次のような処理を行って頭部49の位置を正確に算出するようにしている。
すなわち、乗員姿勢検知装置100Aは、例えば頭部49の大きさに変化があったとしても正確に頭部49の位置を検出することができるように、回路部20にて次のような演算処理を行っている。まず、上述した動作によって得られた、頭部49の前後位置を回路部20に備えられた図示しないRAM,ROM等の記憶手段にパラメータとして記憶しておく。なお、検出値ΔCは、処理の簡素化及び正確な位置検出のために、補正値=第2主検知電極12の検出値/(第2主検知電極12の検出値+第3主検知電極13の検出値)とした式を用いた補正演算処理に利用する。
例えば、図8(a)に示すように、座席40に着座した乗員48の頭部49が左右方向(例えば、X方向)に振れた場合、乗員48の頭部49の左右方向(X方向)の位置と、第2及び第3主検知電極12,13の検出値ΔCに基づき算出される補正値(規格化検出値(左右))との関係は、図8(b)に示すグラフのように、前後方向の位置の違いによる検出値のずれがあっても近似的に表される。
図7(a)及び図7(b)に示すように、各主検知電極11〜13を直線的に結ぶと第1主検知電極11を前方側の頂点とする二等辺三角形となるように各主検知電極11〜13が配置されている乗員姿勢検知装置100Aでは、図8(b)に示すように、上述した規格化検出値(左右)は、頭部49の前後方向の位置の違いによる影響が少ない。
次に、このようにして判定した左右方向の位置の情報を上述したようにパラメータとして記憶しておき、更に検出値ΔCを用いて補正値=(主検知電極11の検出値/{主検知電極11の検出値+(主検知電極12の検出値+主検知電極13の検出値)/2})とした式を用いた補正演算処理を行っている。
例えば、図9(a)に示すように、座席40に着座した乗員48の頭部49が前後方向(例えば、Y方向)に振れた場合、乗員48の頭部49の前後方向(Y方向)の位置と、各主検知電極11〜13の検出値ΔCに基づき算出される補正値(規格化検出値(前後))との関係は、図9(b)に示すグラフのように表される。
図7(a)及び図7(b)に示すように、各主検知電極11〜13を直線的に結ぶと第1主検知電極11を前方側の頂点とする二等辺三角形となるように各主検知電極11〜13が配置されている乗員姿勢検知装置100Aでは、図9(b)に示すように、上述した規格化検出値(前後)は、頭部49の左右方向の位置の違い(例えば、右方、中央、左方等)により異なってしまう。
しかしながら、図7を用いて説明した結果に基づき左右方向の位置を決定した後、規格化検出値(前後)を反映させれば、乗員48の頭部49の前後方向の位置を正確に判定することができる。なお、図7を用いて説明した三角測量法によらずに、上述した理論式による補正演算処理を頭部49(頭頂部)の検出の主処理として採用し、直接頭部49の頭頂部の位置を検出するように構成しても良い。このようにすれば、頭部49よりもより「点」に近い頭頂部を直接検出して、処理を少なくしつつ更に正確に位置を得ることができる。
また、車両1の車室天井部2の内部や座席40には、フレーム等に金属の部材が用いられていることが多く、座席40を動かして乗員48が姿勢を変えたりすると各主検知電極11〜13,19や補助検知電極41,42等と乗員48との位置関係が変化し、このような外部環境変化による静電容量値を検出してしまい誤動作に繋がってしまう場合がある。
従って、このような外部環境変化による影響を極力受けないようにするために、図示は省略するが、上述したシールド部17,18と共に、上記静電容量変化を抑制するための補助電極(シールド電極)を、各主検知電極11〜13,19や補助検知電極41,42等の近傍位置に設けるようにしても良い。
この場合、各シールド電極には、それぞれ各主検知電極11〜13,19や補助検知電極41,42等と同等の電位が与えられていれば良い。同等の電位は、上記シールド駆動回路23の時と同様に、例えば各主検知電極11〜13,19や補助検知電極41,42等に加えられる電位から高い入力インピーダンスで1倍のアンプ(バッファ)を通して生成するようにしても良いし、差動動作型の静電容量検知回路21の場合では、オペアンプの非反転入力の部分をシールド電極に接続して与えるようにしても良い。次に、本発明に係る乗員姿勢検知装置の第3の実施形態について詳細に説明する。
図10に示すように、ここでは、右側第1主検知電極11aと、左側第1主検知電極11bとを備え、各主検知電極11a,11b,12,13を直線的に結ぶと、車両1の前後方向及び左右方向においてそれぞれ辺を形成するような四角形平面状に車室天井部2に配置した点が、先の第1及び第2の実施形態に係る乗員姿勢検知装置100,100Aとは相違している。
このようにすれば、更に高精度に座席40に着座した乗員48の頭部49の位置を判定することが可能となる。なお、ここでは主検知電極を4つとしたが、例えば5つにしたりそれ以上配置したりしても、コスト的には多少高くなる程度で位置検出精度を向上させることが可能となるため、更に有効である。また、主に図7〜図9を用いて説明した配置態様も、例えば第1主検知電極11が後方側の1つの頂点となるような二等辺三角形となるように変更することも可能である。
以上述べたように、上述した実施形態に係る乗員姿勢検知装置は、主検知電極11〜13,19などを有する静電容量センサ部10と、乗員48の周方向に配置された補助検知電極41〜44と、回路部20という非常にシンプルで安価な構成によって、座席40に着座した乗員48の着座姿勢を詳細且つ高精度に検知し判定することができる。