以下に、添付の図面を参照して、この発明にかかる乗員姿勢検知装置およびエアバッグ展開制御装置の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の全体構成の例を示す説明図、図2は同乗員姿勢検知装置の静電容量センサ部および回路部の全体構成の例を示す説明図である。図1に示すように、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100は、例えば車両1の座席40の前方対向箇所であるインストルメントパネル2に配置され、主に座席40に着座した人体(乗員)の体幹部48を検知可能な第1静電容量センサ部10と、例えば座席40の上方対向箇所である車室天井部3に配置され、主に座席40に着座した乗員の頭部49を検知可能な第2静電容量センサ部20とを備える。
また、乗員姿勢検知装置100は、これら第1および第2静電容量センサ部10,20からの出力に基づいて、座席40に着座した乗員の体幹部48や頭部49の位置に基づく着座姿勢を判定する回路部30を備えて構成されている。回路部30によって判定された乗員の着座姿勢に関する情報(以下、「姿勢情報」と呼ぶ。)は、例えば車両1に搭載されたエアバッグ(図示せず)の展開制御の機能を有する図示しないECU(電子制御ユニット)等からなるエアバッグ展開制御装置に対して出力される。
なお、第1静電容量センサ部10は、例えば座席40が運転席である場合は、インストルメントパネル2ではなくステアリングホイール(図示せず)に設けられているとよい。また、乗員姿勢検知装置100は、上記第1および第2静電容量センサ部10,20のうちのいずれか一方のみが設けられている構成であってもよい。
これら第1および第2静電容量センサ部10,20は、それぞれ例えばエアバッグの展開時に乗員が存すると危険であろう領域である検知領域DZに向けて検知面が存するように配置され、図2に示すように、矩形平板状に形成されたセンサ電極11と、このセンサ電極11の裏面側に形成されたシールド電極12と、センサ電極11と同一平面上に形成されセンサ電極11を囲うようなロの字状に形成された補助電極13とをそれぞれ備えて構成されている。
各センサ電極11および補助電極13は、それぞれ互いに絶縁された状態で配置されている。また、シールド電極12は、裏面側のセンサ感度を減少させるために、センサ電極11よりも大きいことが好ましい。
センサ電極11は、検知面側の検知領域DZにある乗員の体幹部48や頭部49を検知する。シールド電極12は、センサ電極11の裏面側にてこれらが検知されないようにシールドする。補助電極13は、センサ電極11の検知面側における等静電容量線(面)を可変せしめ、第1および第2静電容量センサ部10,20に指向性を持たせるためのものである。なお、シールド電極12は、上述した態様とともに併せて例えば補助電極13の外周側に設けられていてもよい。
回路部30は、第1および第2静電容量センサ部10,20とそれぞれ独立して(別系統で)接続され、例えばセンサ電極11に直接接続されたC−V変換回路21と、A/D変換器22と、CPU23とを備えて構成されている。ここでは、さらにシールド駆動回路12を備え、補助電極13の接続をC−V変換回路21とシールド駆動回路24とに切り替える切替スイッチSWが設けられている。
C−V変換回路21は、センサ電極11によって、またはセンサ電極11および補助電極13によって、それぞれ検知された静電容量(Capacitance)を電圧(Voltage)に変換する。A/D変換器22は、C−V変換回路21からの電圧を示すアナログ信号をディジタル信号に変換する。
CPU23は、乗員姿勢検知装置100全体の制御を司るとともに切替スイッチSWを制御したり、検知領域における検知対象物(体幹部48や頭部49)の検出(有無)を判定したり、さらにこの判定結果に基づいて乗員の着座姿勢を判定したりする。シールド駆動回路24は、例えばシールド電極12や補助電極13をセンサ電極11と同等の電位に駆動する。
なお、回路部30は、CPU23の一時記憶領域として利用されるRAMやデータ格納用のROM等の記憶手段(図示せず)を備えて構成される。また、第1および第2静電容量センサ部10,20は、例えば図示しない基板上に形成されている。この基板としては、例えばフレキシブルプリント基板、リジッド基板およびリジッドフレキシブル基板のいずれの基板も採用することができる。
さらに、回路部30は、第1および第2静電容量センサ部10,20の少なくとも一方が形成された基板の同一面側または裏面側に実装されて一体的に設けられていてもよい。この場合、回路部30は、各静電容量センサ部10,20と対応するように複数設けられてもよい。
センサ電極11、シールド電極12および補助電極13は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ガラスエポキシ樹脂、またはセラミック等の絶縁体からなる基板上にパターン形成された銅、銅合金またはアルミニウムや鉄等の金属部材(導電材)や電線などで構成することができる。
次に、このように構成された乗員姿勢検知装置100の検知動作について説明する。まず、CPU23の制御により、切替スイッチSWがシールド駆動回路24側に接続された場合の動作(動作1)について説明する。この動作1の場合、第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ電極11、シールド電極12および補助電極13と回路部30との接続状態は、図2に示すようになる。
すなわち、C−V変換回路21にはセンサ電極11のみが接続され、シールド電極12および補助電極13はシールド駆動回路24に接続されるので、センサ電極11のみによって検知対象物A,Bとの静電容量CがC−V変換回路21によって検出される。このとき、センサ電極11の裏面側は、シールド駆動回路24に接続されたシールド電極12によって覆われた状態である。このため、センサ電極11の裏面側のセンサ感度はほぼないに等しくなり、これは後述する動作2の場合も同様である。
また、両検知対象物A,Bはセンサ電極11からほぼ等しい距離に存する。しかし、シールド駆動回路24に接続された補助電極13の影響によって、上述した等静電容量線(面)Mが図3に示すような状態となり、検知対象物Bに対するセンサ感度が検知対象物Aに対するセンサ感度よりも低下する。
この場合、図4(a)に示すように、センサ電極11の中心部上付近に存する検知対象物Aに対するセンサ電極11からの電気力線P1は、補助電極13からの電気力線P2(シールド)の影響が小さいといえる。だが、図4(b)に示すように、センサ電極11に対して外側に存する検知対象物Bに対するセンサ電極11からの電気力線P1は、補助電極13からの電気力線P2(シールド)の影響を受けやすいといえる。
このため、動作1においては、両検知対象物A,Bはセンサ電極11から同一距離に存するが、C−V変換回路21によって検出される静電容量値は検知対象物Aの方が検知対象物Bに比べて大きくなる。なお、このような動作1のときに検出された第1の静電容量値C1をCPU23によって記憶手段に記憶しておく。
この動作1の場合、補助電極13をシールド駆動回路24に接続することによって、センサ電極11の中心部のセンサ感度に対して、センサ電極11の電極端(補助電極13側の端部)のセンサ感度を下げることができる。これにより、第1および第2静電容量センサ部10,20に僅かな指向性を持たせることが可能となる。
ただし、この動作1においては、センサ電極11の電極端のセンサ感度が僅かに低下する程度である。したがって、例えば図4(b)に示す検知対象物Bよりはセンサ電極11に近い位置に存する検知対象物C(図3参照)の静電容量値は、検知対象物Aの静電容量値とほぼ等しくなってしまう。この際、等静電容量線(面)Mが図3に示すような状態となってしまう。このため、検知対象物A,Cの違いを判別することができず、より強い指向性を持たせることができない状態であるといわざるを得ない。
次に、CPU23の制御により、切替スイッチSWがC−V変換回路21側に接続された場合の動作(動作2)について説明する。この動作2の場合、第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ電極11、シールド電極12および補助電極13の回路部30との接続状態は、図5に示すようになる。
すなわち、C−V変換回路21にセンサ電極11および補助電極13が接続されるので、これらセンサ電極11および補助電極13によって検知対象物A,Bとの静電容量がC−V変換回路21によって検出される。このとき、上述したようにセンサ電極11の裏面側のセンサ感度はほぼないに等しいが、センサ電極11の検知面側(表面側)における等静電容量線(面)Mは図5に示す状態となり、検知面側の180°の範囲で指向性がない状態といえる。
このため、動作2においては、センサ電極11からほぼ等しい距離に存する両検知対象物A,Bについては、ほぼ同等の静電容量値が検出される。そして、このような動作2のときに検出された第2の静電容量値C2を、第1の静電容量値C1と同様にCPU23によって記憶手段に記憶しておく。
このように、上述した動作1および動作2により、センサ電極11による検知面側の等静電容量線(面)Mを可変せしめることができる。こうして、センサ電極11の検知面側において僅かに指向性がある場合に検出された第1の静電容量値C1と、センサ電極11の検知面側において指向性がない場合に検出された第2の静電容量値C2とを取得する。
その後、本例の乗員姿勢検知装置100においては、次のような動作が行われる。まず、CPU23によって記憶手段に記憶しておいた第1の静電容量値C1と第2の静電容量値C2とを比較する。例えば、上述した動作2の場合においては両検知対象物A,Bから検出された静電容量値はともにほぼ同等の値であるため、検知対象物A,Bはセンサ電極11からほぼ等しい距離にあることが判明する。
次に、動作1の場合では検知対象物Aに対して検知対象物Bの静電容量値が小さくなるため、検知対象物Bは検知対象物Aよりもセンサ電極11に対して外側に存することが判明する。これらを踏まえて、CPU23においては、第1の静電容量値C1に対する第2の静電容量値C2の値を比較することにより、検知対象物がセンサ電極11の中心部に対してどの程度外側に存するのか(すなわち、検知対象物が少なくともセンサ電極11の検知面と対向する領域を含む所定の範囲内(以下、「検知範囲内」と略記することがあるとする。)にあるか否か)を判定することができる。
上述したように構成され動作する乗員姿勢検知装置100によれば、図1に示すように、例えば第1静電容量センサ部10によって、インストルメントパネル2(もしくはステアリングホイール、以下同じ。)の表面上に形成された検知範囲Z1内に乗員の体幹部48等があるか否かを判定することができる。また、同様に、例えば第2静電容量センサ部20によって、車室天井部3の表面上に形成された検知範囲Z2内に乗員の頭部49等があるか否かを判定することができる。
これら検知範囲Z1,Z2は、設定された指向性によりその範囲が決定する。このため、上述したように例えばエアバッグ展開時に乗員が位置していると危険であろう検知領域DZにおいて、乗員の体幹部48や頭部49があるか否か(すなわち、検知領域DZ内に乗員が存するか否か)を正確に判定可能なように検知範囲Z1,Z2を各センサ電極11上の領域に設定する。
そして、乗員姿勢検知装置100は、判定結果に基づいて、例えばECU等からなるエアバッグ展開制御装置に対して着座姿勢に関する姿勢情報を出力し、エアバッグ展開制御装置は、この姿勢情報に基づいて検知領域DZに乗員の体幹部48や頭部49がある場合はエアバッグの展開を非展開(あるいは展開力を弱めて展開)とするように制御する。また、エアバッグ展開制御装置は、検知領域DZに乗員の体幹部48や頭部49がない場合は通常通りエアバッグを展開するように制御する。このようにすれば、エアバッグ展開時の乗員のエアバッグへの衝突事故等を回避しつつ、エアバッグの有用性を最大限に引き出す展開制御を行うことが可能となる。ここで、姿勢判定処理について説明する。
図6は、上記乗員姿勢検知装置100による姿勢判定処理手順の例を示すフローチャートである。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を割愛することがあるとする。図6に示すように、まず、乗員姿勢検知装置100は、例えば車両1のイグニッションキーがアクセサリーやONとなることをトリガとして、処理が開始されるまで待つ(ステップS101のN)。
そして、処理が開始されたら(ステップS101のY)、回路部30のCPU23の制御によって、切替スイッチSWによる補助電極13の接続状態を上述した第1および第2の接続状態に切り替える。こうして、各静電容量センサ部10,20において静電容量値(第1および第2の静電容量値C1,C2)を検出し(ステップS102)、これらを比較して比較値を算出する(ステップS103)。
そして、第1の静電容量値C1または第2の静電容量値C2に基づいて、検知対象物(体幹部48や頭部49)がセンサ電極11上に近接しているか否かを判定する(ステップS104)。これとともに、算出した比較値が、例えばあらかじめ設定された所定のしきい値以上(あるいは所定のしきい値以下や所定のしきい値未満等)であるか否かを判定する(ステップS105)。
体幹部48や頭部49が近接していると判定され(ステップS104のY)、かつ比較値が所定のしきい値以上であると判定された場合(ステップS105のY)は、体幹部48や頭部49を検知と判定して(ステップS106)、姿勢判定を行う(ステップS107)。
このステップS107での姿勢判定では、第1静電容量センサ部10からの情報に基づき検知と判定された場合は、例えば体幹部48がインストルメントパネル2に近づいている姿勢であると判定することができる。また、第2静電容量センサ部20からの情報に基づき検知と判定された場合は、例えば頭部49が車両1の前方に出ている姿勢であると判定することができる。さらに、両静電容量センサ部10,20からの情報に基づき検知と判定された場合は、例えば乗員が座席40の前方に出て検知領域DZ内に居る姿勢であると判定することができる。
その他、両静電容量センサ部10,20からの情報に基づき検知と判定された場合は、例えば乗員が座席40の前方にて前屈みとなっている姿勢であると判定することもできる。このように判定された姿勢情報を用いてエアバッグ展開制御装置によりエアバッグの展開を制御すれば、上述したようにエアバッグの乗員に対する衝突事故等を効果的に防止することができるようになる。なお、ステップS107での姿勢判定で判定された姿勢情報は、上述したようにエアバッグ展開制御装置に対して出力される。
一方、体幹部48や頭部49が近接していないと判定された場合(ステップS104のN)や、比較値が所定のしきい値以上でないと判定された場合(ステップS105のN)は、体幹部48や頭部49を非検知と判定する(ステップS108)。そして、ステップS107の姿勢判定の後やステップS108にて非検知と判定した後は、例えば車両1のイグニッションキーがOFFとなることをトリガとして、処理が終了されるか否かを判断する(ステップS109)。
処理が終了されると判断された場合(ステップS109のY)は、本フローチャートによる一連の姿勢判定処理を終了する。処理が終了されないと判断された場合(ステップS109のN)は、上記ステップS102に移行して、各静電容量センサ部10,20の第1および第2の静電容量値C1,C2を検出し、以降の処理を繰り返す。
ここで、具体的には、例えばステップS104においては、第1の静電容量値C1が所定のしきい値Th1よりも大きい場合は、体幹部48や頭部49がセンサ電極11に近接したと判定可能に設定しておく。また、このとき、例えばステップS105においては、比較値α=(a×C1)−(b×C2)あるいは比較値β=d×C1/C2などの計算式によって算出した比較値αや比較値βが、あらかじめ設定された所定のしきい値としての任意のしきい値Th2よりも小さい場合は、検知範囲Z1,Z2外であると判定可能に設定しておく。
そして、体幹部48や頭部49が近接している場合であって(ステップS104のY)、かつ比較値がしきい値Th2以上の場合にのみ(ステップS105のY)、体幹部48や頭部49が検知と判定される(ステップS106)ように構成することができる。このように、本例の乗員姿勢検知装置100によれば、車両1のインストルメントパネル2や車室天井部3の表面上の(センサ電極11上の)検知範囲Z1,Z2内への体幹部48や頭部49の近接を正確に検知して検知領域DZを含めた乗員の着座姿勢を判定することができる。そして、この判定結果をエアバッグ展開制御装置で用いれば、乗員の着座姿勢に応じたエアバッグの展開制御を行うことが可能となる。
なお、上述した比較値α,βにおける係数a,b,cや比較値α,βの計算式およびしきい値Th1,Th2の値などは、次のようであってもよい。すなわち、これらは第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ形状、設置周辺環境、検知対象物の特性などの要因によって変化するものである。このため、これらの各要因が決まった時点でプロファイルを取りながら逐次設定すればよい。
また、上述した例では、第1の静電容量値C1を第2の静電容量値C2で除算した値を用いて比較することで、体幹部48や頭部49の近接を判定した。その他にも、例えば第1の静電容量値C1を第1の静電容量値C1と第2の静電容量値C2との和の値で除算した値を用いて比較したり、その他の計算方法を用いたりして近接を判定するようにしてもよい。
このように、本例の乗員姿勢検知装置100によれば、例えばしきい値Th2が大きい場合は第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ感度の指向性の強度が高く、小さい場合は低いとすることができる。したがって、指向性を任意に調節してインストルメントパネル2や車室天井部3の表面上などに検知範囲Z1,Z2を任意に設定することができ、所望の指向性をもたせた検知範囲Z1,Z2内にある体幹部48や頭部49を確実かつ正確に検知することができるようになる。
なお、上述した回路部30のC−V変換回路21は、例えば抵抗とコンデンサにより出力パルスのデューティー比が変化する周知のタイマーICを利用するものであるが、これに限定されるものではない。
すなわち、例えば正弦波を印加して静電容量値による電圧変化あるいは電流値から直接インピーダンスを測定する方式、測定する静電容量値を含めて発振回路を構成して発振周波数を測定する方式、RC充放電回路を構成して充放電時間を測定する方式、既知の電圧で充電した電荷を既知の容量に移動してその電圧を測定する方式、または未知の容量に既知電圧で充電し、その電荷を既知容量に移動させることを複数回行い、既知容量が所定電圧に充電されるまでの回数を測定する方式などがあり、検出した静電容量値にしきい値を設け、または静電容量の波形を解析して該当する静電容量波形になったときにトリガとするなどの処理を行ってもよい。
また、回路部30のC−V変換回路21が静電容量を電圧に変換することを前提としたが、電気的にあるいはソフトウェアとして扱いやすいデータに変換できればよく、例えば静電容量をパルス幅に変換したり、直接ディジタル値に変換したりしてもよい。
さらに、上述した乗員姿勢検知装置100では、第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ電極11とシールド電極12および補助電極13とを車両1のインストルメントパネル2や車室天井部3にそれぞれ配置した。そして、センサ電極11のみの第1の静電容量値C1と、センサ電極11および補助電極13の第2の静電容量値C2とを比較して体幹部48や頭部49の検出を判定する例を挙げて説明したが、例えば次のようなものであってもよい。
図7は、上記乗員姿勢検知装置100の静電容量センサ部および回路部の全体構成の他の例を示す説明図である。この例の乗員姿勢検知装置100は、センサ電極11の他にダミーのセンサ電極(ダミー電極)19を配置した構成を有し、回路部30のC−V変換回路21が差動動作するものとして構成されている。
具体的には、図7に示すように、例えば差動増幅回路のプラス側入力端にセンサ電極11を接続し、マイナス側入力端にダミー電極19を接続して静電容量Caの値から静電容量Cbの値を減算する。そして、その出力値をコンパレータなどでしきい値と比較して体幹部48や頭部49を検出するようにしたものである。
このようなC−V変換回路21の動作としては、例えばスイッチS1がオープン(OFF)で、スイッチS2が接地(GND)され、スイッチS3がクローズ(ON)となっているときに、スイッチS3をオープン(OFF)にし、スイッチS2をVrに切り替え、スイッチS1をオペアンプの反転入力に接続する。すると、静電容量CaとCfにCaVrが充電され、静電容量CbとCfにCbVrが充電される。
次に、スイッチS1をオープン(OFF)およびスイッチS2を接地(GND)した後に、スイッチS1を接地(GND)したときの出力電圧Vを測定する。このときの電圧は、V/Vr={(Cf+Ca)/Cf}−{(Cf+Cb)/Cf}となり、静電容量Caと静電容量Cbの割合に応じた電圧が出力される。
このように、C−V変換回路21を差動動作する構成(差動回路)とすることにより、回路の温度特性を相殺したり、コモンモードノイズを低減したりすることができる。そして、このとき、例えば差動増幅回路のマイナス側入力端にはダミー電極19を接続するが、このダミー電極19が体幹部48や頭部49と静電容量結合するとセンサ自体の感度が低くなる。
このため、センサ電極11に対してダミー電極19の面積を十分に小さく形成するか、ダミー電極19と体幹部48や頭部49との間に同電位である他のシールド電極47を設けて、体幹部48や頭部49との静電容量結合を小さくする必要がある。
なお、上述したシールド駆動回路24は、C−V変換回路21が静電容量Cに応じてデューティー比が変化するものである場合は、センサ電極11の出力波形は測定される静電容量によって変化する。このため、オペアンプなどによるボルテージフォロワやFETによるソースフォロワなどで1倍の増幅回路を構成し、センサ電極11の電圧を入力してその出力をシールド電極12などに接続するように構成してもよい。
また、シールド駆動回路24は、C−V変換回路21が差動動作するものである場合は、センサ電極11の出力波形は電圧がVrとGNDの矩形波で周波数はスイッチの切替周波数になる。このため、静電容量値によって変動しないので、図7に示したオペアンプの非反転入力をシールド電極12などに接続するように構成してもよい。ただし、駆動電流が必要な場合は、高出力電流のオペアンプなどを介したり、VrとGNDの矩形波を別途生成するようにすればよい。
さらに、上述した実施形態では、センサ電極11をC−V変換回路21に接続し、シールド電極12をシールド駆動回路24に接続して、補助電極13を切替スイッチSWを介してシールド電極24またはC−V変換回路21に接続するように構成した。その他にも、例えばC−V変換回路21が差動動作するものである場合は、図7に示したマイナス側入力端にセンサ電極11を接続し、シールド電極12をシールド駆動回路24に、また補助電極13をプラス側入力端にそれぞれ接続するように構成してもよい。
この場合、上述した動作2のときは補助電極13がセンサ電極11と接続され指向性がほとんどない状態となる。しかし、上述した動作1のときは補助電極13と体幹部48や頭部49との静電容量結合分の値はセンサ電極11の静電容量値から差し引かれるので、結果的に緩い指向性を持つこととなる。そして、上述した場合と同様に動作1および動作2のときの検出値を比較すれば同様の効果を得ることが可能となる。
さらにまた、上述した実施形態では、切替スイッチSWにより補助電極13について、動作1のときはシールド駆動回路24に接続し、動作2のときはC−V変換回路21に接続可能と構成し、動作1と動作2のときで等静電容量線(面)Mを可変させるように構成した。その他にも、補助電極13について、例えば動作1のときはシールド駆動回路24に接続し、動作2のときは開放、接地または所定の電位に接続可能に構成したり、また例えば、動作1のときは開放、接地または所定の電位に接続し、動作2のときはC−V変換回路21に接続可能に構成しても同様の効果を得ることが可能である。このように、補助電極13は、切替スイッチSWによって開放に接続されたり、接地や他の電位(例えば、接地と同等の電位や、パルス、充電電圧、正弦波などを含む)に接続されたりしてもよい。
なお、切替スイッチSWは、電気的な接続を切り替えられる構造であればよく、例えばFETやフォトMOSリレーなどの電子回路スイッチでも、接点切替器などの機械的なスイッチでも採用することができる。また、センサ電極11の形状は、上述したものの他に、円形、楕円形、長方形、多角形などの各種形状を採用することができ、センサ電極11の裏面側も検知範囲Z1,Z2にする場合には、シールド電極12を設置しなければよい。
そして、補助電極13は、センサ電極11の周囲全体を囲む状態で配置したが、検知範囲Z1,Z2を設定できるものであれば、一部を囲むような状態であったり、隣接する一部に配置されたりしてもよい。また、例えばセンサ電極11を囲む状態であるときは、センサ電極11と同心(中心を同一)状態に配置されるとよい。
次に、本発明の他の実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の静電容量センサ部および回路部について、図8〜図10を参照して説明する。上述した実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100においては、回路部30のC−V変換回路21からの出力は、センサ電極11および補助電極13により検知された静電容量を示す第2の静電容量値C2か、センサ電極11のみにより検知された静電容量を示す第1の静電容量値C1のいずれかとなる。
このため、センサ電極11(を含む第1および第2静電容量センサ部10,20)の設置場所の周囲の構造等により検出される静電容量値が異なる場合がある。このような場合、これら第1および第2の静電容量値C1,C2を比較した比較結果がセンサ電極11が設置される場所の周囲の構造等に依存して変化してしまうことがある。このような状況を回避するために、回路部30の内部構成を、さらに例えば次のようにしてもよい。
図8は、本発明の他の実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100の静電容量センサ部10,20および回路部30の全体構成の例を示す説明図、図9は同乗員姿勢検知装置100による姿勢判定処理手順の例を示すフローチャート、図10は同乗員姿勢検知装置100の静電容量センサ部10,20および回路部30の全体構成の他の例を示す説明図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を省略し、本発明と特に関連のない部分については明記しないことがあるとする。
図8に示すように、本例の回路部30は、上述したC−V変換回路21、シールド駆動回路24の他に、例えばCPUなどからなる判定回路25と、体幹部48や頭部49が接近していないときの静電容量値(初期容量)を記憶する初期容量記憶装置26と、切替スイッチSWの切り替え動作を制御するスイッチ制御回路27と、バッファ28とを備えて構成されている。
このように構成された回路部30を有する乗員姿勢検知装置100の検知動作の概要としては、例えば第1および第2静電容量センサ部10,20を車両1のインストルメントパネル2や車室天井部3に設置する。その後、体幹部48や頭部49が第1および第2静電容量センサ部10,20に接近していないときの動作1と動作2における静電容量値(初期容量)を、スイッチ制御回路27の制御により切替スイッチSWを切り替えてそれぞれ検出する。
そして、初期容量記憶装置26にてこれらの値を記憶しておき、判定回路25にて上述した実際の動作1,2のときの第1および第2の静電容量値C1,C2から初期容量記憶装置26に記憶されたこれらの初期容量を差し引いて比較する。こうして得られた比較結果に基づいて、体幹部48や頭部49がセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内に存するか否かを判定する。
具体的には、上記初期容量は、スイッチ制御回路27の制御により、切替スイッチSWがシールド駆動回路24側に接続された場合の上記動作1のときのものを第1の初期容量として初期容量記憶装置26に記憶される。また、切替スイッチSWがC−V変換回路21側に接続された場合の上記動作2のときのものを第2の初期容量として初期容量記憶装置26に記憶される。
そして、実際の動作1のときは、判定回路25によって、検出された第1の静電容量値C1から初期容量記憶装置26に記憶しておいた第1の初期容量を差し引いて第1の検出値(検出値1)とする。また、実際の動作2のときは、検出された第2の静電容量値C2から初期容量記憶装置26に記憶しておいた第2の初期容量を差し引いて第2の検出値(検出値2)とする。
すなわち、図9に示すように、まず、乗員姿勢検知装置100は、例えば車両1のイグニッションキーがアクセサリーやONとなることをトリガとして、処理が開始されるまで待つ(ステップS201のN)。そして、処理が開始されたら(ステップS201のY)、上述したような第1の検出値と第2の検出値とを算出し(ステップS202)、これらを比較して比較値を算出する(ステップS203)。
その後、第1または第2の検出値に基づいて、体幹部48や頭部49が近接しているか否かを判定する(ステップS204)。これとともに、第1の検出値と第2の検出値の比較値が、例えばあらかじめ設定された所定のしきい値以上(あるいは所定のしきい値以下や所定のしきい値未満等)であるか否かを判定する(ステップS205)。
つまり、ここでは検出値1,2と、その比較結果とにより検知範囲Z1,Z2内に体幹部48や頭部49があるか否かを判定する。なお、センサ電極11および補助電極13がC−V変換回路21に接続されている上記動作2のときの検出値2は、センサ感度に指向性がない状態での検出値であり、体幹部48や頭部49の第1および第2静電容量センサ部10,20への接近に依存した出力となる。
体幹部48や頭部49が近接していると判定され(ステップS204のY)、かつ比較値が所定のしきい値以上であると判定された場合(ステップS205のY)は、体幹部48や頭部49を検知と判定して(ステップS206)、上述したような姿勢判定を行う(ステップS207)。そして、判定された姿勢情報をエアバッグ展開制御装置に対して出力する。
体幹部48や頭部49が近接していると判定されるが(ステップS204のY)、比較値が所定のしきい値以上でないと判定された場合(ステップS205のN)は、体幹部48や頭部49を非検知と判定する(ステップS208)。そして、例えば指向性を持たせたときの検知範囲Z1,Z2内に体幹部48や頭部49が存在しないことを示すディセーブル信号である非検知信号A(例えば、ハイインピーダンスや所定の電位等)を、判定出力として出力する。
また、例えば第1または第2の検出値(あるいは第1または第2の静電容量値C1,C2)に基づき、体幹部48や頭部49は近接しているか否かを判定し(ステップS204)、体幹部48や頭部49は近接していないと判定された場合(ステップS204のN)は、上記ステップS208に移行してこれらを非検知と判定する。そして、例えば体幹部48や頭部49がセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内にないことを示すディセーブル信号である非検知信号B(非検知信号Aとは異なる信号)を判定出力として出力する。
体幹部48や頭部49の検知を判定して姿勢判定を行った後、または非検知を判定した後(ステップS207またはステップS208の後)は、例えば車両1のイグニッションキーがOFFとなることをトリガとして、処理が終了されるか否かを判断する(ステップS209)。
処理が終了されると判断された場合(ステップS209のY)は、本フローチャートによる一連の姿勢判定処理を終了する。処理が終了されないと判断された場合(ステップS209のN)は、上記ステップS202に移行して、第1および第2の検出値を算出し、以降の処理を繰り返す。
このように、判定回路25の出力を判定結果によって、例えばイネーブル信号、ディセーブル信号とすることで、体幹部48や頭部49がセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内にあるときはイネーブル信号がバッファ28に入力され、このバッファ28から検出値1が出力される。また、体幹部48や頭部49がセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内にないときはディセーブル信号として判定出力が接地電圧や基準電圧などの所定の電圧に固定されるか、ハイインピーダンスの出力となる。
なお、体幹部48や頭部49がセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内にあるときは、検出値1の他に、検出値2や、第1あるいは第2の静電容量値C1,C2が出力されてもよい。これら検出値1、検出値2、第1および第2の静電容量値C1,C2は、例えば体幹部48や頭部49のセンサ電極11までの距離に応じた値を示すものである。
このように、上記構成の回路部30によれば、体幹部48や頭部49が検知範囲Z1,Z2内にある(すなわち、検知領域DZ内に存する)ときはその距離に応じた検出値が出力され、検知範囲Z1,Z2内にないときは所定の電圧等の出力となる。したがって、検知範囲Z1,Z2内に体幹部48や頭部49があるか否か、またあるとすればどのくらいの距離であるかを判別することが可能となる。すなわち、第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ感度の指向性の強度をより高くしたり、指向性をより詳細に設定したりすることが可能となる。
また、第1および第2静電容量センサ部10,20が設置される場所の周囲の構造等に依存することを回避する方法の他の例として、次のように基準電圧を調整することでこれらを保持することも可能となる。すなわち、図10に示すように、この例の回路部30は、C−V変換回路21およびシールド駆動回路24の他に、基準電圧調整回路40および減算回路31を備えて構成されている。
基準電圧調整回路40は、上述したような第1および第2の初期容量の初期容量測定時に、C−V変換回路21の出力が基準電位になるように調整するものである。この基準電圧調整回路40は、ここではコンパレータ41、制御回路42、レジスタ43、D/A変換器44、および調整部45を備えて構成されている。
基準電圧調整回路40は、例えばC−V変換回路21の出力をコンパレータ41のプラス側入力端から入力し、基準電圧(Reference Voltage:RV)をマイナス側入力端から入力して両者を比較する。そして、この比較結果に基づく制御回路42の制御によりレジスタ43の設定値を変化させる。
さらに、レジスタ43の出力をD/A変換器44にてディジタル信号からアナログ信号に変換した後、調整部45にて電圧調整を行い、この調整部45からの出力によってC−V変換回路21の入力を調整する。このようにして、体幹部48や頭部49が第1および第2静電容量センサ部10,20に近接していないときの動作1において、C−V変換回路21からの出力が基準電位に最も近くなったところでレジスタ43の設定値を固定して第1の初期容量の出力を基準電圧とし、そのときの設定値(設定値1)を記憶する。
これとともに、体幹部48や頭部49が第1および第2静電容量センサ部10,20に近接していないときの動作2において、C−V変換回路21からの出力が基準電位に最も近くなったところでレジスタ43の設定値を固定して第2の初期容量出力を基準電位とし、そのときの設定値(設定値2)を記憶する。
そして、実際の動作1のときは、レジスタ43の設定値1を固定したときのC−V変換回路21の出力を、例えば減算回路31のプラス側入力端に入力するとともに、基準電圧RVをマイナス側入力端に入力して、出力を基準電圧RVで減算して検出値1とする。また、実際の動作2のときは、レジスタ43を設定値2に固定したときのC−V変換回路21の出力を、例えば減算回路31のプラス側入力端に入力するとともに、基準電圧RVをマイナス側入力端に入力して、出力を基準電圧RVで減算して検出値2とする。
そして、これら検出値1と検出値2を比較することにより、同様にセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内に体幹部48や頭部49があるか否か、またあるとすればどのくらいの距離であるかを判別する。なお、C−V変換回路21への入力の調整は、例えば入力に接続した固定コンデンサ等からなる調整部45にD/A変換器44の電圧を加えることで、入力する静電容量を増減させることにより実現することができる。
図11は、本発明のさらに他の実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の静電容量センサ部および回路部の全体構成の例を示す説明図、図12は同乗員姿勢検知装置の検知動作時における動作概念を説明するための説明図、図13〜図15は同乗員姿勢検知装置の第1検知動作時(動作3)における検知対象物と電気力線との関係を説明するための説明図である。
また、図16〜図18は、同乗員姿勢検知装置の第2検知動作時(動作4)における検知対象物と電気力線との関係を説明するための説明図である。なお、上述した実施形態にて既に説明した部分と重複する説明は割愛することがあるとする。
図11に示すように、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100Aは、上述した実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100と同様の構成であるとともに、第1および第2静電容量センサ部10,20と、回路部30とを備えて構成されている。第1および第2静電容量センサ部10,20は、センサ電極11と、シールド電極12と、上記補助電極13と同様にセンサ電極11を囲うようなロの字状に形成された補助電極13Aとを備えて構成されている。
センサ電極11は、主に検知面側の検知領域に存する体幹部48や頭部49を検知するために設けられている。シールド電極12は上述した作用を有する。補助電極13Aは、主にセンサ電極11の検知面側の等静電側における等静電容量線(面)を可変せしめるために設けられている。
回路部30は、センサ電極11または補助電極13Aに接続されるC−V変換回路21と、A/D変換器22と、CPU23と、シールド電極12に直接接続されるとともにセンサ電極11または補助電極13Aに接続されるシールド駆動回路24とを備えて構成されている。
また、回路部30は、センサ電極11からの入力をC−V変換回路21またはシールド駆動回路24に切り替える第1切替スイッチSW1と、補助電極13Aからの入力をシールド駆動回路24またはC−V変換回路21に切り替える第2切替スイッチSW2とを備えて構成されている。なお、これら第1および第2切替スイッチSW1,SW2は、それぞれA側およびB側(図11など参照)に切り替え可能に構成されている。
C−V変換回路21は、センサ電極11によって、または補助電極13Aによって、それぞれ検知された静電容量を電圧に変換する。A/D変換器22は上記と同様に動作する。CPU23は、乗員姿勢検知装置100A全体の制御を司るとともに、例えば第1および第2切替スイッチSW1,SW2のオルタネイト接続(A側あるいはB側への二者択一的な接続)の動作を制御したり、検知領域における検知対象物(体幹部48や頭部49)の検出(体幹部48や頭部49の近接や有無)を判定したりする。シールド駆動回路24は、シールド電極12と、補助電極13Aまたはセンサ電極11とを、例えばセンサ電極11と同等の電位に駆動する。
第1および第2静電容量センサ部10,20や、回路部30の構造や構成、および各電極11〜13Aの構造や構成は、上述した実施形態にて既に説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、第1切替スイッチSW1は、例えばセンサ電極11がC−V変換回路21に接続されていないときにセンサ電極11を開放、接地または所定の電位に接続可能に構成され、第2切替スイッチSW2は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されているときに補助電極13Aを開放、接地または所定の電位に接続可能に構成されていてもよい。
また、シールド駆動回路24は、補助電極13Aにセンサ電極11と同等の電位を与える、またはセンサ電極11に補助電極13Aと同等の電位を与えるように構成されている。第1切替スイッチSW1は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されていないときにセンサ電極11をシールド駆動回路24に接続可能に構成され、第2切替スイッチSW2は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されているときに補助電極13Aをシールド駆動回路24に接続可能に構成されていてもよい。
さらに、シールド駆動回路24は、補助電極13Aにセンサ電極11と同等の電位を与えるように構成されていてもよく、この場合第1切替スイッチSW1は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されていないときに補助電極13Aを開放、接地または所定の電位に接続可能に構成されていてもよい。そして、第2切替スイッチSW2は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されているときに補助電極13Aをシールド駆動回路24に接続可能に構成されていてもよい。
また、シールド駆動回路24は、センサ電極11に補助電極13Aと同等の電位を与えるように構成され、この場合第1切替スイッチSW1は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されていないときに補助電極13Aをシールド駆動回路24に接続可能に構成されていてもよい。そして、第2切替スイッチSW2は、センサ電極11がC−V変換回路21に接続されているときに補助電極13Aを開放、接地または所定の電位に接続可能に構成されていてもよい。
次に、このように構成された乗員姿勢検知装置100Aの検知動作について説明する。まず、CPU23の制御により、第1および第2切替スイッチSW1,SW2がともにA側に切り替えられ、センサ電極11がC−V変換回路21に接続される。これとともに、シールド電極12および補助電極13Aがシールド駆動回路24に接続された場合の動作(動作3)について説明する。
この動作3の場合、センサ電極11やシールド電極12および補助電極13Aの回路部30との接続状態は、図12に示すようなものとなる。すなわち、上述したように、C−V変換回路21にはセンサ電極11のみが接続され、シールド電極12および補助電極13Aはシールド駆動回路24に接続される。これにより、センサ電極11のみによって検知対象物X,Y,Wとの静電容量CがC−V変換回路21によって検出される。
なお、各静電容量センサ部10,20のセンサ電極11の裏面側は、シールド電極12によって覆われた状態である。このため、センサ電極11の裏面側のセンサ感度は、センサ電極11の検知面(表面)から回り込んだ電気力線のみを検出することになるので、検知面側と比較するとかなり小さい。ここでは、検知対象物Xを検知範囲Z1,Z2内に存する検知対象物として、また検知対象物Y,Wを検知範囲Z1,Z2外に存する検知対象物として説明する。
図13に示すように、検知対象物Xに対するセンサ電極11からの電気力線P1は、補助電極13Aからの電気力線P2(シールド)の影響が小さい。
一方、図14に示すように、検知対象物Xとほぼ等しい距離にある検知対象物Yに対するセンサ電極11からの電気力線P1は、補助電極13Aからの電気力線P2(シールド)の影響を受けて、検知対象物Xに対する場合と比較して減少する。このため、検知対象物Yは、検知対象物Xと比較して、センサ電極11との静電容量結合が弱いこととなる。
これにより、動作3のときの検知対象物X,Yの識別(すなわち、検知範囲Z1,Z2内であるか検知範囲Z1,Z2外であるかの区別)は容易に行うことが可能となる。しかし、図15に示すように、検知対象物Yよりもセンサ電極11に近い検知対象物Wでは、センサ電極11からの電気力線P1が図13における検知対象物Xに対するものと同じであるため、C−V変換回路21からの出力は同じとなる。
つまり、検知対象物Xと検知対象物Wは、図12における等電位面(線)M上にあることになり、動作3での検出値(静電容量値)は同じである。このため、検知対象物Wが検知範囲Z1,Z2内に存するか検知範囲Z1,Z2外に存するかの識別は、この動作3のみでは困難となる。なお、この実施形態においても上述した実施形態と同様に、動作3だけでは判定しないで、動作3のときのC−V変換回路21にて検出された第1の静電容量値としての静電容量値C1をCPU23によって記憶手段に記憶しておく。
次に、CPU23の制御により、第1および第2切替スイッチSW1,SW2がともにB側に切り替えられ、補助電極13AがC−V変換回路21に接続される。これとともに、シールド電極12およびセンサ電極11がシールド駆動回路24に接続された場合の動作(動作4)について説明する。
なお、動作4の場合の乗員姿勢検知装置100Aにおけるセンサ電極11やシールド電極12および補助電極13Aの回路部30との接続状態を示す図12に対応する構成は、図12における各切替スイッチSW1,SW2をB側に切り替えたものである。このため、ここでは図示および説明を省略する。
この動作4の場合、C−V変換回路21には補助電極13Aのみが接続され、シールド電極12およびセンサ電極11はシールド駆動回路24に接続される。これにより、補助電極13Aのみによって検知対象物X,Y,Wとの静電容量CがC−V変換回路21によって検出される。なお、検知対象物X,Y,Wの各静電容量センサ部10,20に対する配置位置などの諸条件は、動作3のときと同様であるとする。
そして、この動作4の場合、図16に示すように、検知対象物Xに対するセンサ電極11からの電気力線P2(シールド)は、補助電極13Aからの電気力線P1に対して影響が大きい。このため、検知対象物Xは、補助電極13Aとの静電容量結合が弱いこととなり、C−V変換回路21によって検出される静電容量値は動作3における検知対象物Xに対する場合と比較して小さくなる。
一方、図17に示すように、検知対象物Yに対するセンサ電極11からの電気力線P2(シールド)は、検知対象物Xに対する場合と比較して減少し、補助電極13Aからの電気力線P1は、検知対象物Xに対する場合と比較して増加する。このため、動作4の場合においては、検知対象物Yは、補助電極13Aとの静電容量結合が強いこととなり、C−V変換回路21によって検出される静電容量値は動作3における検知対象物Yに対する場合と比較して大きくなる。
また、図18に示すように、検知対象物Wに対する補助電極13Aからの電気力線P1は、図16における検知対象物Xに対する補助電極13Aからの電気力線P1と比較して多く、しかもセンサ電極11からの電気力線P2(シールド)の影響も小さい。このため、動作4においては、検知対象物WにおけるC−V変換回路21からの出力は検知対象物Xにおけるものよりも大きい。そして、このような動作4のときにC−V変換回路21にて検出された第2の静電容量値としての静電容量値C2をCPU23によって記憶手段に記憶しておく。
このようにして第1および第2の静電容量値C1,C2を検出したら、次に、CPU23にて記憶手段に記憶しておいたこれらの静電容量値C1,C2を比較する。例えば、上述した検知対象物Xでは、動作3での第1の静電容量値C1が動作4での第2の静電容量値C2と比較して大きくなるが、検知対象物Yでは、動作3での第1の静電容量値C1が動作4での第2の静電容量値C2と比較して小さくなる。このため、検知対象物Wでは、動作3での第1の静電容量値C1と動作4での第2の静電容量値C2が同程度となる。
このように、CPU23においては、静電容量値C1に対する静電容量値C2の値を比較することによって、検知対象物がセンサ電極11の中心部に対してどの程度外に存するのかを判定することが可能となる。このとき、静電容量値C1とC2の比較値が、例えばあらかじめ設定された所定のしきい値以上(あるいは所定のしきい値以下や所定のしきい値未満等)となれば、センサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内であると判定可能なように設定しておけば、任意に指向性を持たせることが可能となる。
なお、図12から図18に示す説明図では、検知対象物Xでは動作3での検出値が動作4での検出値より大きくなり、検知対象物Yでは動作3での検出値が動作4での検出値より小さくなる。また、検知対象物Wでは動作3での検出値と動作4での検出値が同程度となる例を挙げて説明した。しかし、センサ電極11および補助電極13Aの配置形状や配置面積などの諸条件が変わると、検知対象物X,Y,Wにおける動作3と動作4の上下関係は変わることとなる。
ただし、動作3における第1の静電容量値C1に対する動作4における第2の静電容量値C2の割合(C2/C1)は、常に検知対象物X<検知対象物Y(または検知対象物W)であるため、区別することが可能である。したがって、条件ごとに動作3と動作4の比較式を変えれば、検知対象物X,Y,Wを判別することが可能となる。なお、比較式や比較値、各種係数や所定のしきい値(Th1,Th2)などは、上述した実施形態にて説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、条件によっては数式で表現できない場合があるが、検知対象物(体幹部48や頭部49)の位置における静電容量値C1,C2の値をあらかじめ測定してプロファイルしておき、各プロファイルと実際の検出値とを比較するようにすればよい。
このように、この乗員姿勢検知装置100Aによれば、例えば所定のしきい値Th2が大きい場合には第1および第2静電容量センサ部10,20のセンサ感度の指向性の強度が高く、小さい場合は指向性の強度が低いとすることができる。これにより、センサ感度の指向性を任意に設定してセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2を任意に定めることができ、簡単な構成で確実に検知対象物(体幹部48や頭部49)を検知することができるようになる。そして、判定された姿勢情報を用いてエアバッグの展開制御等を行えば、例えばいわゆる危険であろう検知領域DZに乗員が居る際に、エアバッグを非展開とするなどして衝突事故等を防止することができる。
なお、回路部30のC−V変換回路21の各種構成や作用は、上述した実施形態にて説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。また、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100Aでは、センサ電極11とシールド電極12および補助電極13Aとを配置して、センサ電極11の静電容量値C1と補助電極13Aの静電容量値C2とを比較して検知対象物の検出を判定するものを例に挙げて説明した。その他にも、上述した実施形態にて図7を用いて説明したように、ダミー電極19を配置し、C−V変換回路21が差動動作するように構成してもよい。これについても上述したものと各種構成や作用は同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、シールド駆動回路24の変形例や、第1および第2切替スイッチSW1,SW2の変形例などについても、各種構成や作用は上述した実施形態にて説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
なお、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100Aでは、補助電極13Aがセンサ電極11の周囲全体を囲むような状態で配置されている。このため、各静電容量センサ部10,20はセンサ電極11の検知面の全方向に同様な指向性を持つ(すなわち、検知範囲Z1,Z2がセンサ電極11に対するどの方向でも同様)が、指向性を持たせたくない方向が存在する場合は、例えば次のようにすればよい。
すなわち、指向性を持たせたくない方向に補助電極13Aを配置せずに、補助電極13Aの形状を、例えばコの字状やC字型、L字型や半円形などにして、補助電極13Aのない方向の指向性を低減させることも可能である。
また、上述した回路部30のC−V変換回路21からの出力は、第1の静電容量値C1か第2の静電容量値C2かのいずれかとなるため、センサ電極11(を含む静電容量センサ部10,20)の設置場所の周囲の構造等により検出される静電容量値が異なる場合がある。
すると、これら第1および第2の静電容量値C1,C2を比較した比較結果が、センサ電極11が設置される場所の周囲の構造等に依存して変化してしまうことがある。このような状況を回避するために、回路部30の構成を、さらに例えば次のようにしてもよい。
図19は、本発明のさらに他の実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の静電容量センサ部および回路部の全体構成の例を示す説明図、図20は同乗員姿勢検知装置の静電容量センサ部および回路部の全体構成の他の例を示す説明図である。なお、上述した実施形態において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を割愛する。
図19に示すように、回路部30は、C−V変換回路21、シールド駆動回路24、判定回路25、上述した初期容量を記憶する初期容量記憶装置26、各切替スイッチSW1,SW2の切り替え動作を制御するスイッチ制御回路27、およびバッファ28を備えて構成されている。
このような回路部30を有する乗員姿勢検知装置の検知動作の概要としては、例えば第1および第2静電容量センサ部10,20を所定の設置場所に設置した後、体幹部48や頭部49が第1および第2静電容量センサ部10,20に接近していないときの静電容量値(初期容量)をスイッチ制御回路27の制御により各切替スイッチSW1,SW2を切り替えてそれぞれ検出し、初期容量記憶装置26にてこれらの値を記憶しておく。
そして、判定回路25にて上述した実際の動作3,4のときの第1および第2の静電容量値C1,C2から初期容量記憶装置26に記憶された各初期容量を差し引いて比較し、比較結果に基づいて体幹部48や頭部49がセンサ電極11上の検知範囲Z1,Z2内に存するか否かを判定する。
具体的には、上記初期容量は、スイッチ制御回路27の制御により、各切替スイッチSW1,SW2がA側に接続された場合の上記動作3のときのものを第1の初期容量とし、各切替スイッチSW1,SW2がB側に接続された場合の上記動作4のときのものを第2の初期容量として初期容量記憶装置26に記憶される。
そして、実際の動作3のときは、判定回路25によって、検出された第1の静電容量値C1から初期容量記憶装置26に記憶しておいた第1の初期容量を差し引いて第1の検出値(検出値1)とし、動作4のときは、検出された第2の静電容量値C2から初期容量記憶装置26に記憶しておいた第2の初期容量を差し引いて第2の検出値(検出値2)とする。
その後、判定回路25にてこれら検出値1と検出値2とを比較して、その比較結果により検知範囲Z1,Z2内に体幹部48や頭部49があるか否かを判定する。例えば、上記動作3のときの検出値1は、体幹部48や頭部49の第1および第2静電容量センサ部10,20への接近に依存した出力となる。その後の動作や作用および効果等は、上述した実施形態にて説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、上述した第1および第2の初期容量は、例えば初期容量測定時の電圧をA/D変換器等でディジタル変換して、レジスタやメモリ等に保持するようにしてもよいが、次のように基準電圧を調整することでこれらを保持することも可能となる。すなわち、図20に示すように、回路部30は、C−V変換回路21、シールド駆動回路24、基準電圧調整回路40、および減算回路31を備えて構成されている。
基準電圧調整回路40は、上述したような第1および第2の初期容量の初期容量測定時に、C−V変換回路21の出力が基準電位になるように調整するためのものであり、ここでは、コンパレータ41、制御回路42、レジスタ43、D/A変換器44、および調整部45を備えて構成されている。これらの構成や作用等も、上述した実施形態にて説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
基準電圧調整回路40によって、第1および第2の初期容量の出力を基準電圧とし、このように基準電圧にされたC−V変換回路21の出力を、例えば減算回路31のプラス側入力端に入力し、基準電圧RVをマイナス側入力端に入力して、出力を基準電圧RVで減算して第1および第2の初期容量を差し引き、同様に検知範囲Z1,Z2内に体幹部48や頭部49があるか否か、またあるとすればどのくらいの距離であるかを判別することができる。
以上述べたように、上述した実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100,100Aによれば、車両の座席に着座した乗員およびその姿勢を正確に検知することができる。そして、エアバッグ展開制御装置によって、判定された乗員の姿勢情報をエアバッグの展開制御に用いれば、エアバッグ展開時の乗員に対する衝突事故等を回避し、エアバッグの有用性を最大限に引き出す展開制御を行うことができる。