JP5557440B2 - コンジュゲート繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、コンジュゲート繊維、該繊維を含むストレッチ衣料及びパンティストッキングに関する。
従来のパンティストッキング用繊維として、ストレッチ繊維が採用されている。このストレッチ繊維としては、例えば、ポリウレタン繊維に1本又は複数本のナイロン繊維を巻き付けたシングルカバードヤーン(SCY)、これらを撚り方向を変えて2重に巻き付けたダブルカバードヤーン(DCY)が主に採用されている(例えば、特許文献1、2参照)。あるいは、ストレッチ繊維(ポリウレタン等)と熱可塑性繊維(ポリアミド等)が繊維の長さ方向に連続して貼り合わされた構造を有するコンジュゲート繊維を捲縮させたものも使用されている(例えば、特許文献3〜7参照)。これらの繊維に関して、目的とする衣料の伸縮特性、強度等に合わせて改良されたものが数多く報告されている。
SCYやDCYは、その高い伸縮性により優れたサポート性を有していることから幅広く使用されているが、生地厚みが大きくなりやすく、また透明感が低い。また製造方法は一般に、ポリウレタン繊維を2〜3倍程度に延伸し、1本又は複数本のナイロン繊維を1m当たり2000〜3000回転程度巻き付けるため時間すなわちコストがかかるという問題があった。
またストレッチ繊維(ポリウレタン等)と熱可塑性繊維(ポリアミド等)が繊維の長さ方向に連続して貼り合わされた構造を有するコンジュゲート繊維は、SCYやDCYと比較して生地厚みが少なく透明感が高いことを特徴としているが、捲縮によるサポート性、即ちコイル状の伸縮による弾性を利用しているため、一般にSCYやDCYと比較してサポート性が弱く、昨今の市場ニーズである高いサポート性の要求を満足させることは難しいという面があった。また製造方法は編立後熱収縮により捲縮させるため、均一に捲縮させることが難しく、品質管理および製造歩留まりが悪いという問題があった。
これらの問題を解決するコンジュゲート繊維の製造方法として、本件出願人は、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とをそれぞれ溶融し、複合口金を2個有した口金で、エラストマー樹脂(A)が芯部分にエラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように複合紡糸した繊維(例えば、引用文献8参照)、得られた複合紡糸繊維を熱処理した後、延伸処理する方法(例えば、引用文献9参照)を提案した。このような引用文献8、9に記載された方法では、透明性を維持したままで捲縮性と伸縮性に優れたコンジュゲート繊維が得られるものであるが、生地とした場合に縦方向の伸びが充分ではなく、特にパンティストッキングやストッキング等のストレッチ衣料とした場合に、着用時に破れてしまったり、繰り返し使用後において着圧が大きく低下してしまいダレてきてしまうという問題があった。
特開昭47−19146号公報 特開昭62−263339号公報 特開昭61−34220号公報 特開昭61−256719号公報 特開平3−206122号公報 特開平3−206124号公報 特開平2003−171831号公報 特開平2007−77556号公報 国際公開第2007/123214号パンフレット
本発明は、伸縮性及び強度に優れるコンジュゲート繊維であって、パンティストッキングやストッキング等のストレッチ衣料とした場合に、繰り返し洗濯後でも着圧保持性に優れるコンジュゲート繊維を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、芯部分に1/2法溶融温度が216〜220℃の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含み、鞘部分に1/2法溶融温度が224〜228℃の熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)を含むコンジュゲート繊維であって、該繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6であるコンジュゲート繊維が、伸縮性及び強度に優れ、かつストレッチ衣料とした場合に、繰り返し洗濯後でも着圧保持性が保持されることを見いだした。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記のコンジュゲート繊維、その製法、及び該繊維を含むストレッチ衣料を提供する。
項1. 芯部分に1/2法溶融温度が216〜220の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含み、鞘部分に1/2法溶融温度が224〜228の熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)を含むコンジュゲート繊維であって、該繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6であるコンジュゲート繊維。
項2. 延伸糸の引張破断強度が2.3〜4.5cN/dex以上である項1に記載のコンジュゲート繊維。
項3. 前記項1又は2に記載のコンジュゲート繊維を含むストレッチ衣料。
項4. 前記項1に記載のコンジュゲート繊維の製造方法であって、
(1)1/2法溶融温度が216〜220℃の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)と、1/2法溶融温度が224〜228℃の熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)とをそれぞれ溶融する工程、
(2)該溶融エラストマー樹脂(A)が芯部分に、該溶融エラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように、同心円状又は偏心円状の2個のノズルを有する複合口金を用いて、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6となるように複合紡糸する工程、
(3)工程(2)で複合紡糸された繊維を熱処理する工程、及び
(4)工程(3)で熱処理された繊維を延伸処理する工程、
を含むことを特徴とするコンジュゲート繊維の製造方法。
本発明のコンジュゲート繊維は伸縮性及び強度に優れており、パンティストッキングやストッキング等のストレッチ衣料とした場合に、繰り返し洗濯後でもフィット性が高い割合で保持される。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.コンジュゲート繊維
本発明のコンジュゲート繊維は、芯部分に1/2法溶融温度が216〜220℃の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)を含み、鞘部分に1/2法溶融温度が224〜228℃の熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)を含み、該繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6である。
1/2法溶融温度(T1/2)は、定荷重押出し式細管式レオメーター(フローテスター)により測定することができる。具体的な測定方法としては、フローテスター((株)島津製作所製、CFT−100D)を用いて、2cmの試料を80℃にて180秒間予熱した後、6.0℃/分の速度で昇温させながら、ピストン圧力:5.884×105Paで、ダイ(穴径1.0mm、穴ストレート部長さ2.0mm)から押し出すようにし測定した。図1に、フローテスターの測定により得られる流動曲線を、横軸に温度、縦軸にピストンストロークをとり模式的に示した。該流動曲線において、流出終了点Smaxと最低点Sminの差の1/2の値Xを求め((X=Smax−Smin)/2)、XとSminを加えた点Aの位置における温度が、すなわち1/2法溶融温度である。
この1/2法溶融温度は、従来からフローテスターでの昇温法において試料の溶融特性を評価する目安として、多くの分野において温度特性の測定に利用されているものである。
本発明のコンジュゲート繊維は、偏心円型であっても、同心円型であってもよいが、偏心円型にする場合、同心円型の場合と比較して、延伸、熱処理により、より捲縮がかかることで弾性を発揮しサポート性が向上できるため好ましい。
エラストマー樹脂(A
コンジュゲート繊の芯部分を構成する熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)は、1/2法溶融温度が216〜220℃であり、好ましくは217〜219℃である。また、伸長してもほぼ元の長さに戻る(伸長可能な範囲で降伏点を有しない)性質、すなわちゴム弾性(ヒステリシス曲線において10%以内に戻る)を有することが好ましい。
該エラストマー樹脂(A)の100%モジュラス(JIS K7311)は、7〜10MPa程度であることが好ましく、8〜10MPa程度の高強度のものがより好ましい。また、300%モジュラス(JIS K7311)は、14〜20MPa程度であることが好ましく、16〜19MPa程度の高強度のものがより好ましい。また、引裂強度(JIS K7311)は、90〜130kN/m程度であることが好ましく、105〜120kN/m程度の高強度のものがより好ましい。さらに、表面硬度A(JIS K 6253)は、A87〜98程度であることが好ましく、A89〜95がより好ましい。表面硬度AがA87未満であると強度の確保が難しくなる傾向があり、A98を超えると伸度及び伸縮性が極端に悪くなる傾向がある。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂(A)は、ウレタン構造のハードセグメントとポリエステルまたはポリエーテルのソフトセグメントで構成され、上記の性質を有するものが好適であり、具体的な商品名としては、パンデックス(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)T−1190N等が挙げられる。
エラストマー樹脂(B)
コンジュゲート繊維の鞘部分を構成する熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)は、1/2法溶融温度が224〜228℃であり、好ましくは225〜227℃である。また、永久伸びが25〜70%を持つ熱可塑性エラストマー樹脂であることが好ましい。永久伸びはJIS K 6301に定義される。つまり、この樹脂(B)は、100%以上に伸長した場合は伸縮弾性を有するものの原形に復さず伸長した後、安定した形状に復するという性質を有している。
該エラストマー樹脂(B)の永久伸び(JIS K 6301)は100%伸長時25〜70%程度であり、30〜70%程度であることが好ましく、40〜60%程度であることがより好ましい。この、永久伸びは、ダンベル形試験片に引張り荷重をかけて規定伸び率100%(2倍)まで引き伸ばし、10分間その状態で保持した後、速やかに荷重を除き、10分間放置した後の伸び率を原長に対して求め、永久伸び率(%)とすることが規定されている。永久伸びが25%未満であるとコンジュゲート繊維として高いサポート性が得られない傾向があり、70%を超えると塑性変形が主となり、弾性体の性質すなわち伸縮性が低下する傾向がある。
該エラストマー樹脂(B)の引張強度(ASTM D638)は、30〜40MPa程度であることが好ましく、35〜40MPa程度の高強度のものがより好ましい。また、引張伸度(ASTM D638)が400〜750%程度であり、450〜600%であることが好ましい。引張伸度の値が、400%未満であると伸度不足で同用途として使用不可能となる傾向があり、750%を超えると一般に強度が低く、高いサポート性が得られない傾向がある。さらに、表面硬度D(ASTM D2240)は、D45〜70程度であることが好ましく、D50〜60がより好ましい。エラストマー樹脂(B)はD45未満になると表面硬度が柔らかくなるため延伸後の形状保持が難しくなると同時に肌触りも悪くなる傾向にある。また、D70を超えると延伸後の形状保持(セット性)は高くなるが、エラストマー部分が少なくなり伸縮弾性が悪くなる傾向がある。
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂(B)は、ポリエステル構造のハードセグメントとポリエーテルまたはポリエステルのソフトセグメントで構成され、上記の性質を有するものが好適であり、具体的な商品名としては、東洋紡績(株)のペルプレン(登録商標)P−150B等を挙げることができる。
該エラストマー樹脂(B)の原形では、該エラストマー樹脂(B)を構成するハードセグメントとソフトセグメントがランダム状態にあるが、これを100%以上延伸するとハードセグメントが配向したまま復元されず、ソフトセグメントのみが伸縮弾性を有することになるためと考えられる。本発明のコンジュゲート繊維では、該エラストマー樹脂(B)のこの特性を巧みに利用し、高いサポート性を発揮する。
繊維断面における、該エラストマー樹脂(A)からなる芯部分と該エラストマー樹脂(B)からなる鞘部分の面積比が91:9〜94:6であることが必須である。好ましくは、92:8〜93:7である。面積比をこの範囲にすることで、サポート性の高いコンジュゲート繊維にすることができる。しかも、該コンジュゲート繊維をストレッチ衣料に加工した場合に、繰り返し着用後においても高いサポート性(フィット性)が保持されるという顕著な効果が発揮される。(例えば、実施例1〜4の着圧変化率を参照)。一方、面積比がこの範囲から外れると、理由は明らかではないが、繰り返し着用後のサポート性(フィット性)が大きく低下する。
本発明のコンジュゲート繊維の直径は、通常、30〜100μmであることが好ましく、40〜80μmであることがより好ましい。特に、パンティストッキング(PS)用の素材に用いる場合は、延伸糸を40〜70μmにし、編成、染色、熱セット等の熱処理によって製品上の繊維の直径を50〜80μmに調整することが好ましい。これは、パンティストッキングを編成する工程においては延伸配向して強度が高く伸びの少ない繊維を用いるほうが編機を安定稼動させることができるため好ましく、製品においては延伸配向を緩和して伸びやかに調整した繊維を用いるほうが着用時に破れにくい生地を得ることができ好ましいためである。
本発明のコンジュゲート繊維の繊度は、10〜90dtexであることが好ましく、15〜60dtexであることがより好ましい。特にパンティストッキング製品中においては25〜55dtexであることが好ましい。
上記したように、芯部分を構成する該エラストマー樹脂(A)は、1/2法溶融温度が216〜220℃であり、伸長可能な範囲で降伏点、即ち、弾性域を超える伸長点を有さず、該エラストマー樹脂(B)は、1/2法溶融温度が224〜228℃であり、伸縮弾性を有しその伸長可能な範囲において降伏点を有している。そして、該繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6の範囲内にある。
そのため、本発明のコンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(B)の降伏点以上に伸長した場合は、エラストマー樹脂(B)はその降伏点伸度の長さに戻り安定化する。一方で、エラストマー樹脂(A)は常に伸長された状態になり依然として伸縮弾性を有していため、コンジュゲート繊維として、サポート性が格段に向上する(図2を参照)。しかも、強度(延伸破断強度)に優れる。さらに、該コンジュゲート繊維をストレッチ衣料に加工した場合に、繰り返し着用後においても高いサポート性(フィット性)が保持される。
また、本発明のコンジュゲート繊維は透明で光沢がなく、そのまま生地に編成した場合でも透明感が高く光沢がないという特徴も有している。
従って、当該機能が特に求められるストッキング、パンティストッキング等の用途に好適に用いることができるが、当然これに限定されるものでなく、他の衣料用途にも用いることができる。
2.コンジュゲート繊維の製法
本発明のコンジュゲート繊維の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、
(1)1/2法溶融温度が216〜220℃の熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)と、1/2法溶融温度が224〜228℃の熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)とをそれぞれ溶融する工程、
(2)該溶融エラストマー樹脂(A)が芯部分に、該溶融エラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように、同心円状又は偏心円状の2個のノズルを有する複合口金を用いて、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6となるように複合紡糸する工程、
(3)工程(2)で複合紡糸された繊維を熱処理する工程、及び
(4)工程(3)で熱処理された繊維を延伸処理する工程、
を含む方法を挙げることができる。
工程(1)では、該エラストマー樹脂(A)及び該エラストマー樹脂(B)をそれぞれ紡糸に適した温度で溶融する。該エラストマー樹脂(A)の場合、一般に170〜230℃程度であり、該エラストマー樹脂(B)の場合、一般に200〜240℃程度である。
工程(2)では、溶融されたエラストマー樹脂(A)が芯部分に、溶融されたエラストマー樹脂(B)が鞘部分となるように複合紡糸する。この様な複合紡糸が可能であれば、公知の紡糸方法、紡糸装置等を採用することができる。通常、同心円状又は偏心円状の2個のノズルを有する複合口金を用いることができる。各樹脂の吐出量を変化させて、紡糸後の繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6(好ましくは、92:8〜93:7)となるように調製し複合紡糸する。
さらに、繊維に染色性を付与するために、鞘部分の該エラストマー樹脂(B)に染色可能な樹脂(例えば、ナイロン、ポリエステル等)をアロイ化したりして改質することも可能である。
染色可能な樹脂としては、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系等を挙げることができるが、これらの中でもポリアミド系、ポリエステル系が好ましい。これらの配合量は該エラストマー樹脂(B)の染色性に応じて決定されるが、上記樹脂の含有量の下限値は、1重量%であることが好ましい。また、上限値は30重量%が好ましく、10重量%がより好ましい。含有量が1重量%未満であると、染色による発色性が低くなる傾向があり、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下したり紡糸性が悪くなる傾向がある。
またこれらの作製方法としてはエラストマー樹脂(B)に上記樹脂を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散させることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。これにより、肌触りが良好でしかも種々の染色が可能なファッション性に優れたパンティストッキングを製造することができる。
また、コンジュゲート繊維の肌触りを改良するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)の表面に無機微粒子等を分散したりして改質することも可能である。
無機微粒子としては特に限定されず、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム等の炭酸マグネシウム;カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、フェライト粉末、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、焼成ケイソウ土等のケイソウ土;珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、無定形シリカ、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、アルミノ珪酸塩、活性白土、ベントナイト、セリサイト等の鉱物質顔料等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらの中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカが好ましい。
また、上記無機微粒子の形状としては特に限定されず、球状、針状、板状等の定型物又は非定型物が挙げられる。
上記無機微粒子の平均粒子径は0.20〜3.00μmであることが好ましい。0.20μm未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となる傾向があり、3.00μmを超えると衣料にした場合、風合いや肌触りが損なわれたり、繊維の強度が低下したりする傾向がある。
上記無機微粒子の含有量は、2〜30重量%であることが好ましく、2〜7重量%であることがより好ましい。2重量%未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となる傾向があり、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下したり、紡糸性が悪くなる傾向がある。
また、これらの作製方法としてはエラストマー樹脂(B)に無機微粒子を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散させることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
工程(3)では、工程(4)の延伸処理に先立ち、工程(2)で複合紡糸された繊維を熱処理する。熱処理するのは、ウレタンエラストマー樹脂の架橋を行うためで、これにより、バックパワー(ストレッチバック性)が改善される。熱処理の温度は、40〜80℃程度であることが好ましく、50〜65℃であることがより好ましい。40℃未満であると充分な架橋が進行しない傾向があり、80℃を超えると劣化が生じる傾向がある。
また、この熱処理は、ウレタンエラストマー樹脂の架橋過程によって異なるが、一般的には、湿熱環境下で行うことが望ましい。具体的には、20〜80%RH、さらに30〜70%RHの相対湿度下、上記の温度で熱処理することが好ましい。
工程(4)では、熱処理された繊維を延伸処理する。延伸倍率は、1.25〜4倍程度であることが好ましく、2〜4倍であることがより好ましく、2.5〜3.8倍がさらに好ましく、2.9〜3.8倍が特に好ましい。延伸倍率を上記の範囲としたのは、強度と伸度のバランスのためであり、倍率が低くなると強度が充分でなく、逆に倍率が高いと伸度が阻害される。
さらに、繊維を加熱しながら延伸すると、繊維の白化を抑制でき、捲縮性を充分に発現できるため好ましい。特に、工程(3)における熱処理温度以上の温度で繊維を加熱しながら延伸することが好ましく、具体的な延伸温度としては、40〜150℃程度であることが好ましく、50〜130℃程度であることがより好ましい。
上記の製造方法で製造されるコンジュゲート繊維は、その延伸糸の引張破断強度(JIS K7311)は通常2.3〜4.5cN/dtex程度であり、2.4〜3.5cN/dtex程度であることがより好ましい。また、延伸糸の引張破断伸度(JIS K7311)は50〜300%程度であり、80〜250%程度であることが好ましく、100〜150%程度であることがより好ましい。
本発明のコンジュゲート繊維は、その透明性及び伸縮性より、パンティストッキングとして用いることが好ましい。パンティストッキングの製造方法としては、公知の方法により製造することができ、常法に従って筒状の編地を編成し、股部、トウ部を縫製した後、染色し(例えば、ベージュ色等)、足型にて熱セット(90〜120℃程度)して製造することができる。
筒状の編地を編成する方法としては特に限定されるものではなく、例えば、シングルシリンダ編機でシングル編(天竺編)により筒状の編地を編成することができる。
染色は、コンジュゲート繊維に用いるエラストマー素材や、所望の色によって、前処理剤、染料、温度、時間を適宜調整して行うことができる。また、必要に応じて柔軟仕上げ剤等の加工薬剤による加工を行うこともできる。
ファイナルセットは最終製品の所望形状によって選ばれる所定の型にかぶせて、加熱処理して行うことができ、加熱温度や時間は生地の加熱収縮性によって適宜調整して行うことができる。
本発明の伸縮性に優れたコンジュゲート繊維を用いて得られたパンティストッキングは、着圧保持性に優れる。例えば、1回目の着用時の着圧に対する、5回着用/洗濯を繰り返した後の着圧が、80%以上であり、好適には83%以上である(試験例1を参照)。
上記のようにして製造される本発明のコンジュゲート繊維は、強度及び伸縮弾性力及び透明性に優れているため、美観が良くサポート性に優れている。また、本発明のコンジュゲート繊維をストッキングやパンティストッキング等のストレッチ衣料とした場合に生地の伸びが良く、破れにくいものである。さらに、繰り返し着用して洗濯回数が増えてもサポート性(フィット性)が高く保持される。
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190、表面硬度A91(JIS K6253))及び熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、表面硬度D57(ASTM D2240)を、それぞれ単軸押出機によりバレル温度180〜205℃、および190〜220℃で加熱溶融し各ギアポンプで計量した後、225℃に加熱した同心円状の2個のノズルを有する複合口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように同心円型に複合紡糸した。
巻き取り速度は800m/分で、シリコン系油剤を付着させて未延伸で巻き取り、その後、別工程で12時間の熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、常温のローラーで100m/分のフィードした糸をほぼ同速(104m/分)で回転する60℃の熱ローラーで接触加熱しながら、300m/分の周速(延伸倍率3倍)で回転する105℃の熱ローラーで延伸熱固定処理して繊維を得た。また、得られた繊維の繊維断面積に対する芯部分の占有率は90%であった。
得られたコンジュゲート繊維をレッグ部用の糸に用いて、釜径4インチ、針本数400本の通常のパンティストッキング用丸編機(LONATI L404RT)で天竺組織に編成しパンティストッキングの生地を得た。
次いで、該生地を吊り下げた状態で、90℃スチーム、100℃加圧スチームで順次プレセットを行った後、股部およびトウ部を縫製した。
繊維の油剤を充分に洗浄除去した後、95℃で40分間パンティストッキングの一般色であるベージュに染色、柔軟仕上げ剤処理し、通常の足型にかぶせて110℃15秒でファイナルセットを行い、パンティストッキングを得た。
実施例2〜4、比較例1〜8
芯材、鞘材、芯比率及び鞘比率を表1に記載されたようにした以外は、実施例1と同様にしてパンティストッキングを作製した。
なお表1中に示す材料は、下記の通りである。
・熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂[パンデックスT−1185:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製、表面硬度A85(JIS K6253)]
・熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂[パンデックスT−1190:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製、表面硬度A89(JIS K6253)]
・熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂[ペルプレンP−150B:東洋紡績(株)製、表面硬度D57(ASTM D2240)]
試験例1
上記実施例1〜4、比較例1〜8で作成したコンジュゲート繊維及びパンティストッキングについて、延伸糸の引張破断強度(cN/dtex)及び着圧変化率を測定した。その結果を表1及び図1、2に示す。なお、各測定値は10個のサンプルの平均値である。
<芯比率及び鞘比率>
紡糸を行うときの芯部/鞘部の吐出量の比により芯比率及び鞘比率は決定した。吐出量はギアポンプの流量設定で調整した。作製した糸の断面のSEM観察を行い、芯部面積/鞘部面積の比率により芯比率及び鞘比率を確認した。
<1/2法溶融温度(T1/2)>
フローテスター((株)島津製作所製、CFT−100D)を用いて、2cmの試料を80℃にて180秒間予熱した後、6.0℃/分の速度で昇温させながら、ピストン圧力:5.884×10Paで、ダイ(穴径1.0mm、穴ストレート部長さ2.0mm)から押し出すようにし測定した。図1に、フローテスターの測定により得られる流動曲線を、横軸に温度、縦軸にピストンストロークをとり模式的に示した。該流動曲線において、流出終了点Smaxと最低点Sminの差の1/2の値Xを求め((X=Smax−Smin)/2)、XとSminを加えた点Aの位置における温度が、すなわち1/2法溶融温度である。
<引張破断強度>
JIS K7311に準拠して、測定した。
<着圧変化率>
着圧は、人体模型にパンティストッキングを着用させ、エアバック方式の衣服圧変換機(AMI3037;(株)エイエムアイ製)を使用して足首部を測定した値(hPa単位)である。前記人体模型は、木、セラミック、プラスチック等の硬質の材料で構成されており、その硬度はロックウエル硬さで20〜120の範囲にある。
着圧変化率は、新品パンティストッキングの着圧を100%としたときの、着用/洗濯を5回繰り返したパンティストッキングの着圧のパーセント値を示す。
Figure 0005557440
表1、図2及び3から明らかなように、芯材である熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)のT1/2が218℃であり、鞘である熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)のT1/2が226℃であり、かつ、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が92:8〜93:7の場合には、着圧変化率及び引張破断強度の両方が顕著に優れていることが確認された(実施例1〜4)。
これに対し、芯材のT1/2が214℃と小さい場合や、繊維断面における芯部分の面積が90%以下の場合や、鞘部分の面積が95%以上の場合には、着圧変化率及び引張破断強度の両方又は片方が大きく低下することが確認された(比較例1〜8)。
フローテスターの測定により得られる流動曲線の模式図である。 実施例及び比較例における着圧変化率と芯材比率の関係を示すグラフである。 実施例及び比較例における着圧変化率と延伸糸の引張破断強度の関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 1/2法溶融温度が21℃であり、表面硬度A(JIS K 6253)がA87〜98である熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)からなる芯部分と、1/2法溶融温度が22℃であり、表面硬度D(ASTM D2240)がD45〜70である熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)からなる鞘部分とを含むコンジュゲート繊維であって、該繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6であるコンジュゲート繊維。
  2. 延伸糸の引張破断強度が2.3〜4.5cN/dexである請求項1に記載のコンジュゲート繊維。
  3. 前記請求項1又は2に記載のコンジュゲート繊維を含むストレッチ衣料。
  4. 前記請求項1に記載のコンジュゲート繊維の製造方法であって、
    (1)1/2法溶融温度が21℃であり、表面硬度A(JIS K 6253)がA87〜98である熱可塑性ポリウレタン系エラストマー樹脂(A)と、1/2法溶融温度が22℃であり、表面硬度D(ASTM D2240)がD45〜70である熱可塑性ポリエステル系エラストマー樹脂(B)とをそれぞれ溶融する工程、
    (2)該溶融エラストマー樹脂(A)が芯部分に、該溶融エラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように、同心円状又は偏心円状の2個のノズルを有する複合口金を用いて、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が91:9〜94:6となるように複合紡糸する工程、
    (3)工程(2)で複合紡糸された繊維を熱処理する工程、及び
    (4)工程(3)で熱処理された繊維を延伸処理する工程、
    を含むことを特徴とするコンジュゲート繊維の製造方法。
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