JP5105921B2 - 編地及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、官能レベルで充分な接触冷感を実感でき、風合いや肌触りに優れたストッキング、パンティーストッキング等のストレッチ衣料に用いられる編地に関する。
近年、夏季用の肌着として、着用時にヒヤリとした感覚を惹起し、清涼感を与える接触冷感に優れた繊維を用いたものが研究されている。
このような接触冷感に優れた繊維を得る方法としては、従来は、例えば、繊維の吸水性を向上させたり、繊維の熱伝導性を向上させたりする方法等が行われていた。
吸水性を向上させた繊維としては、例えば、カルボキシル基や水酸基等の親水性基を導入した樹脂からなる繊維等が挙げられる。
熱伝導性を向上させた繊維としては、例えば、熱伝導性の高いフィラーを練り込んだ樹脂からなる繊維や表面にメッキ処理を施した繊維等が挙げられる。
しかし、このような繊維を用いた場合、確かに理論的には接触冷感が得られることが期待できるものの、実際にヒトによる官能試験を行うと、ほとんど未処理のものと変わるところがなく、接触冷感を実感できることはなかった。
ところで、特許文献1には、吸水性ポリマーを内包した多孔質無機粉末粒子を繊維に把持させてなる接触冷感作用を備えた繊維が開示されている。この繊維は確かに実感できるレベルの接触冷感を有する。しかしながら、充分な接触冷感を得るためには大量の多孔質無機粉末粒子を含有させる必要があり、その結果、風合いや肌触りに悪影響がでて肌着等に用いることはできないものであった。
また、特許文献2には、熱可塑性エラストマーを含有するqmax値が0.2J/sec/cm以上の繊維が接触冷感に優れていることが記載されている。
特開2002−235278号公報 特開2004−270075号公報
本発明は、伸縮弾性力、透明性及び通気性に優れ、官能レベルで充分な接触冷感を実感できる編地及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、上記編地からなる、ストッキング、パンティーストッキング等のストレッチ衣料を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究をおこなった結果、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とを含み、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を、鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含み、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が95:5〜40:60であるコンジュゲート繊維を、カバーファクター(CF)が30〜80%になるように編成して得られる編地が、伸縮弾性力、透明性、通気性、接触冷感等に優れることを見出した。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の編地及びその製造方法提供する。
項1. コンジュゲート繊維からなる編地であって、該コンジュゲート繊維が、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とを含み、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含み、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が95:5〜40:60であり、該編地のカバーファクター(CF)が30〜80%、かつ、qmax値が0.2J/sec/cm以上であることを特徴とする接触冷感に優れた編地。
項2. 前記エラストマー樹脂(A)がポリウレタンエラストマーである項1に記載の編地。
項3. 前記エラストマー樹脂(B)がポリエステル系エラストマー及び/又はポリアミド系エラストマーである項1又は2に記載の編地。
項4. 項1〜3のいずれかに記載の編地からなるストレッチ衣料。
項5. 項1〜3のいずれかに記載の編地からなるストッキング。
項6. コンジュゲート繊維からなる編地の製造方法であって、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とを含み、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を、鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含み、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が95:5〜40:60であるコンジュゲート繊維を、カバーファクター(CF)が30〜80%になるように編成することを特徴とする編地の製造方法。
本発明の編地は、伸縮弾性力、透明性及び通気性に優れ、官能レベルで充分な接触冷感を実感することができる。そのため、ストッキング、パンティーストッキング等のストレッチ衣料に好適である。特に、該編地は、カバーファクターが比較的低い場合でも充分な接触冷感を示すことから、ストレッチ衣料の着用時にて清涼感に優れるとともに、着用後は通気性に優れるという特徴を有している。
コンジュゲート繊維
本発明の編地に用いられるコンジュゲート繊維は、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)を含むコンジュゲート繊維であって、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含み、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が95:5〜40:60であるコンジュゲート繊維である。このコンジュゲート繊維は、芯部分だけでなく鞘部分にも特定のエラストマー樹脂(B)を採用していることを特徴とする。
また、このコンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(A)が芯部分にエラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように複合紡糸した後、得られた繊維を加熱処理して架橋を促進し、次いで延伸処理することにより製造されるため、透明性及び伸縮弾性力、強度及び伸度に優れているという特徴を有している。
このコンジュゲート繊維の芯部分を構成する伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)は、伸長してもほぼ元の長さに戻る(伸長可能な範囲で降伏点を有しない)性質、すなわちゴム弾性(ヒステリシス曲線において10%以内に戻る)を有する熱可塑性エラストマーであれば特に限定はない。エラストマー樹脂(A)としては、ポリウレタン、ポリスチレンブタジエン系ブロックコポリマー等が例示され、特に、ポリウレタンが好適である。
エラストマー樹脂(A)の引張強度(JIS K7311)は、30〜60MPa程度、さらに45〜60MPa程度の高強度のものが好ましい。また、引張伸度(JIS K7311)が400〜900%程度、さらに400〜600%が好ましい。また、表面硬度A(JIS K 6253)は、A70〜98程度、さらにA80〜90が好ましい。表面硬度Aが、A70未満であると強度の確保が難しくなり、A98を越えると伸度及び伸縮性が極端に悪くなる傾向にある。
エラストマー樹脂(A)の具体例としては、例えば、クラミロンU((株)クラレ製)3195、8175等、パンデックス(ディーアイシーバイエルポリマー(株)製)T−1185N、1190N、1195N等が挙げられる。
エラストマー樹脂(A)の製法一例として、ポリウレタンエラストマー樹脂の製法を以下に示す。ポリウレタンエラストマー樹脂は、例えば、芳香族ポリイソシアネートとポリオールから、ワンショット法、プレポリマー経由法等の公知の方法を用いて製造できる。
原料である芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、これらの芳香族ジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。このうちで、特に好ましいものはMDIである。
原料であるポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系ポリオール等が挙げられ、特にポリエーテル系又はポリエステル系ポリオールが好適である。
ポリオールの数平均分子量は、本材料から製造される繊維のソフト感の観点から好ましくは300以上、好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上であり、該繊維の弾性の観点から好ましくは4000以下、好ましくは3500以下、さらに好ましくは3000以下である。
コンジュゲート繊維の鞘部分を構成するエラストマー樹脂(B)は、伸縮弾性を有しており、永久伸びが25〜70%を持つ熱可塑性エラストマー樹脂である。永久伸びはJIS K 6301に定義される。つまり、この樹脂(B)は、100%以上に伸長した場合は伸縮弾性を有するものの原形に復さず伸長した後、安定した形状に復するという性質を有している。
これは、エラストマー樹脂(B)の原形では、エラストマー樹脂(B)を構成するハードセグメントとソフトセグメントがランダム状態にあるが、これを100%以上延伸するとハードセグメントが配向したまま復元されず、ソフトセグメントのみが伸縮弾性を有することになるためと考えられる。本発明のコンジュゲート繊維は、エラストマー樹脂(B)のこの特性を巧みに利用し、高いサポート性を発揮する。
該エラストマー樹脂(B)の永久伸び(JIS K 6301)は100%伸長時25〜70%程度、好ましくは30〜70%程度、より好ましくは40〜60%程度である。この、永久伸びは、ダンベル形試験片に引張り荷重をかけて規定伸び率100%(2倍)まで引き伸ばし、10分間その状態で保持した後、速やかに荷重を除き、10分間放置した後の伸び率を原長に対して求め、永久伸び率(%)とすることが規定されている。かかる値が、25%未満であるとコンジュゲート繊維として高いサポート性が得られない。また、70%を越えると塑性変形が主となり、弾性体の性質すなわち伸縮性が低下する。
エラストマー樹脂(B)の引張強度(ASTM D638)は、10〜40MPa程度、さらに25〜40MPa程度の高強度のものが好ましい。また、引張伸度(ASTM D638)が100〜800%程度、さらに400〜600%が好ましい。引張伸度の値が、100%未満であると伸度不足で同用途として使用不可能であり、800%を越えると一般に強度が低く、高いサポート性が得られない。また、表面硬度D(ASTM D2240)は、D30〜70程度、さらにD35〜60が好ましい。エラストマー樹脂(B)はこのD30未満になると表面硬度が柔らかくなるため延伸後の形状保持が難しくなると同時に肌触りも悪くなる傾向にある。また、D70を越えると延伸後の形状保持(セット性)は高くなるが、エラストマー部分が少なくなり伸縮弾性が悪くなる傾向にある。
上記の特性を有するエラストマー樹脂(B)の具体例としては、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン−ブタジエン系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマー樹脂は、いずれも公知の方法で製造できるか、或いは、市販のものを用いることができる。
ウレタン系エラストマーとしては、例えば、ポリオール成分からなるソフトセグメントと、有機ポリイソシアネート成分からなるハードセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエステル系のポリウレタンエラストマー、ポリカプロラクトン系のポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル系のウレタン系エラストマーなどが挙げられる。例えば、(株)クラレ社製のクラミロン、ディーアイシーバイエルポリマー(株)社製のパンデックスが例示される。
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、芳香族ポリエステル成分からなるハードセグメントと、ポリエーテル成分又はポリエステル成分からなるソフトセグメントとから構成されるポリエーテル(又はポリエステル)エステルブロック共重合体が挙げられる。ハードセグメントである芳香族ポリエステル成分としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、ソフトセグメントであるポリエーテル成分又はポリエステル成分としては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリカプロラクトン(PCL)等が挙げられる。本発明ではこれらのいずれをも用いることができるが、ポリエーテルエステルブロック共重合体を用いるのが好ましい。
具体的には、例えば、東洋紡績(株)社製のペルプレン(Pタイプ、Sタイプ等)、東レ・デュポン社製のハイトレル、帝人(株)社製のレクセ等が例示される。また、例えば、特開平11-302519号公報、特開2000-143954号公報等に記載のポリエステル系エラストマーも用いることができる。
ポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ポリアミド成分からなるハードセグメントと、ポリエーテル成分又はポリエステル成分あるいは両成分からなるソフトセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。例えば、アルケマ(株)社製のペバックス、宇部興産社製のPAEシリーズ等が例示される。
スチレン−ブタジエン系エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン成分からなるハードセグメントと、ポリオレフィン成分からなるソフトセグメントから構成されるブロック共重合体が挙げられる。具体的には、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等が例示される。
コンジュゲート繊維の芯部分と鞘部分は、偏芯円型、同心円型の他、熱収縮等により有意に捲縮性を発現できる点からサイドバイサイドも挙げられる。中でも、肌触りの点から偏芯円型が好適である。また、偏芯円型にする場合、同心円型の場合と比較して、延伸、熱処理により、より捲縮がかかることで弾性を発揮しサポート性が向上する。
繊維断面積に対するエラストマー樹脂(A)からなる芯部分の占有率は、40〜95%程度、好ましくは50〜90%程度であればよい。換言すれば、エラストマー樹脂(A)からなる芯部分とエラストマー樹脂(B)からなる鞘部分との面積比が95:5〜40:60程度、好ましくは90:10〜50:50程度である。この範囲であれば、サポート性の高いコンジュゲート繊維にすることができる。芯部分の占有率が、40%未満だとエラストマー(B)の占有率が高くなるので高いサポート性が得られず、また、95%を越えると延伸した後安定した形状、長さに復し難い。
コンジュゲート繊維の直径は、特に限定はないが、通常、20〜100μm程度、好ましくは30〜80μm程度である。特に、パンティーストッキング(PS)用の素材に用いる場合は、40〜70μm程度にするのが好適である。
上記したように、芯部分を構成する伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)は、伸長可能な範囲で降伏点、即ち、弾性域を超える伸長点を有さず、エラストマー樹脂(B)は、伸縮弾性を有しその伸長可能な範囲において降伏点を有している。そのため、本発明のコンジュゲート繊維にもこの特性が受け継がれる。つまり、本発明のコンジュゲート繊維をエラストマー樹脂(B)の降伏点以上に伸長した場合は、エラストマー樹脂(B)はその降伏点伸度の長さに戻り安定化する。一方で、エラストマー樹脂(A)は常に伸長された状態になり依然として伸縮弾性を有している。そのため、コンジュゲート繊維として、サポート性が格段に向上する。例えば、図1を参照すれば容易に理解できる。
また、このコンジュゲート繊維は、そのまま生地に編成した際厚みが薄くまた透明感が高いという特徴も有している。
コンジュゲート繊維の製法
コンジュゲート繊維は、(1)伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とをそれぞれ溶融し、複合口金を2個有した口金で、エラストマー樹脂(A)が芯部分にエラストマー樹脂(B)が鞘部分になるように複合紡糸する工程、(2)工程(1)で複合紡糸された繊維を熱処理する工程、及び(3)工程(2)で熱処理された繊維を延伸処理する工程、を含むことを特徴とする。
工程(1)では、上記所定のエラストマー樹脂(A)及びエラストマー樹脂(B)とをそれぞれ紡糸に適した温度で溶融し、エラストマー樹脂(A)が芯部分にエラストマー樹脂(B)が鞘部分となるように複合紡糸する。この様な複合紡糸が可能であれば、公知の紡糸方法、紡糸装置等を採用することができる。繊維断面における芯部分と鞘部分との面積比は、各樹脂の吐出量を変化させて適宜調整することができ、上記したように95:5〜40:60程度とするのが好ましい。
さらに、繊維に染色性を付与するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)に染色可能な樹脂(例えば、ナイロン、ポリエステル等)をアロイ化したりして改質することも可能である。染色可能な樹脂としては例としてポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系など選択できるが、好ましくはポリアミド系、ポリエステル系が例示できる。これらの配合量はエラストマー(B)の染色性に応じて決定されるが、上記樹脂の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は30重量%である。更に好ましい上限は10重量%である。1重量%未満であると、染色による発色性が低く、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下することがある。また紡糸性が悪くなる。
またこれらの作製方法としてはエラストマー樹脂(B)に上記樹脂を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散をさせることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
これにより、肌触りが良好でしかも種々の染色が可能なファッション性に優れたパンティーストッキングを製造することができる。
また、本発明のコンジュゲート繊維においては、肌触りを改良するために、鞘部分のエラストマー樹脂(B)の表面に無機微粒子等を分散したりして改質することも可能である。
無機微粒子としては特に限定されず、例として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム等の炭酸マグネシウム;カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、フェライト粉末、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、焼成ケイソウ土等のケイソウ土;珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、無定形シリカ、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、アルミノ珪酸塩、活性白土、ベントナイト、セリサイト等の鉱物質顔料等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらのなかでは、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカが好ましい。
また、上記無機微粒子の形状としては特に限定されず、球状、針状、板状等の定型物又は非定型物が挙げられる。
上記無機微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.20μm、好ましい上限は3.00μmである。0.20μm未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となることがあり、3.00μmを超えると衣料にした場合、風合いや肌触りが損なわれたり、繊維の強度が低下したりすることがある。
上記無機微粒子の含有量の好ましい下限は2重量%、好ましい上限は30重量%である。更に好ましい上限は7重量%である。2重量%未満であると、湿潤時のベトツキ等の不快感を改善する効果が不充分となることがあり、30重量%を超えると、繊維の強伸度が低下することがある。また紡糸性が悪くなる。
またこれらの作製方法としてはエラストマー樹脂(B)に無機微粒子を混合して押出機に投入することで出来るが、安定した物性を得るには均一分散をさせることが望ましい。このため、2軸混練機でコンパウンド原料を作製し押出機に投入することがより望ましい。
工程(2)では、工程(3)の延伸処理に先立ち、工程(1)で複合紡糸された繊維を熱処理する。熱処理するのは、ウレタンエラストマーの架橋を行うためで、これにより、バックパワー(ストレッチバック性)が改善される。熱処理の温度は、40〜80℃程度の範囲である。80℃を越えると劣化が生じ、40℃未満であると架橋が十分でない。好ましい条件としては、50〜65℃である。
また、この熱処理は、ウレタンエラストマーの架橋過程によって異なるが、一般的には湿熱環境下で行うのが望ましい。具体的には、20〜80%RH、さらに30〜70%RHの相対湿度下、上記の温度で熱処理することが好ましい。
工程(3)では、熱処理された繊維を延伸倍率1.25〜4倍程度、好ましくは2〜4倍で延伸処理する。延伸倍率を上記の範囲としたのは、強度と伸度のバランスのためであり、倍率が低くなると強度が十分でなく、逆に倍率が高いと伸度が阻害される。かかる観点より、2.5〜3.5倍がより好ましく、特に2.9〜3.1が最も好ましい。
さらに、繊維を加熱しながら延伸すると、繊維の白化を抑制でき、捲縮性を十分に発現できるため好ましい。特に、工程(2)における熱処理温度以上の温度(例えば、40〜80℃程度)で繊維を加熱しながら延伸することが好ましい。
上記の製造方法で製造されるコンジュゲート繊維は、その引張強度は1.0〜4.0(cN/dtex)程度、好ましくは1.0〜3.5(cN/dtex)の範囲であり、引張伸度は50〜300(%)程度、好ましくは100〜250(%)の範囲で設定することができる。引張強度及び引張伸度は、エラストマー樹脂(A)及び(B)の種類、芯部分と鞘部分の割合、延伸倍率等を調節することにより、所望の範囲に調節することができる。
上記のようにして製造される本発明のコンジュゲート繊維は、強度及び伸縮弾性力及び透明性に優れているため、美観が良くサポート性に優れている。
編地の製造
本発明の編地は、上記のコンジュゲート繊維を、カバーファクター(CF)が30〜80%になるように編成することにより製造することができる。これにより、編地は、qmax値が0.2J/sec/cm以上となり、接触冷感に優れたものとなる。
コンジュゲート繊維の編成の方法は、カバーファクター(CF)が30〜80%になる方法であれば特に限定はなく、例えば、天竺編み(平編み)、ゴム編み、パール編み(ガーター編み)、タック編み、浮編み、レース編み、ペレリン編み、両面編み、添え編み、トリコット編み、ミラニーズ編み、ラッセル編み等が例示される。特に、ストッキング、パンティーストッキング等のストレッチ衣料用途の場合には、例えば、シングルシリンダ編機等を用いたシングル編(天竺編み)が好適である。
例えば、パンティーストッキングを作製する場合、得られたコンジュゲート繊維を用いて筒状の編地を編成し、常法に従って、つま先縫、パンティー縫合した後、染色(例えば、ベージュ色等)し、これを、足型にて熱セット(90〜120℃程度)して作製することができる。
ここで、カバーファクター(CF)とは、編地の面積に対する糸の占める面積の比率(%)を意味し、上記のコンジュゲート繊維の編成時において適宜調整することができる。カバーファクター(CF)は、30〜80%の範囲であればよく、編地の通気性及び肌を美しく見せる点から35〜50%が好ましい。
また、qmax値とは、一定面積及び一定質量の熱板に所定の熱を蓄え、これが編地表面に接触した直後、蓄えられた熱量が低温側の編地に移動する熱流量のピーク値(J/sec/cm)である。qmax値は、着衣したときに編地に奪われる体温をシミュレートしていると考えられ、qmax値が大きいほど着衣時に奪われる体温が大きく、接触冷感が高いと考えられる。一般に、qmax値が0.2J/sec/cm未満であると、官能試験を行っても大半の人が接触冷感を感じない。好ましくは0.21〜0.30J/sec/cm、より好ましくは0.23〜0.27J/sec/cmである。
一般に、カバーファクターが大きいほど着用時における接触冷感が大きくなるが、編目が密になるため着用後の通気性が低下し蒸れ感が増大する傾向にある。本発明の編地では、カバーファクターが比較的低い場合でも、着用時に充分な接触冷感を示すため、ストレッチ衣料の着用時にて清涼感に優れるとともに、着用後においても通気性に優れ清涼感が保持されるという特徴を有している。そのため、夏期に着用するストッキング、パンティーストッキング等のストレッチ衣料として好適に用いられる。
さらに、本発明の編地では、強度及び伸縮弾性力及び透明性に優れているため、美観が良くサポート性に優れている。
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
熱可塑性ポリウレタン[ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックスT−1190N、表面硬度A(JIS K 6253)90]及びポリエステル系エラストマー[東洋紡績(株)製のペルプレンP−150B、引張強伸度(ASTM D638)38MPa、500%、永久伸び(JIS K 6301)59%、表面硬度D(ASTM D2240)57]を、それぞれ単軸押出機により複合口金を2個有した口金で、熱可塑性ポリウレタンが芯部分にポリエステル系エラストマーが鞘部分になるように同心円型に複合紡糸し繊度が70デシテックスの未延伸糸を得た。複合繊維の断面における熱可塑性ポリウレタンとポリエステル系エラストマーの面積比率は、各成分のギヤポンプによる吐出比で変化させた。
得られた未延伸糸を、その後、別工程で熱処理(60℃、55%RHの湿熱環境下)を行った後、60℃に加熱しながら、3倍延伸処理してコンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は21デシテックスで直径は59μmであり、繊維断面積に対する芯部分の占有率は51%であった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて、シングルシリンダ編機でシングル編(天竺編)により筒状の編地を編成し、常法に従って、つま先縫、パンティー縫合した後、染色(ベージュ色;カルロ)、足型にて熱セットしてパンティーストッキングを作製した。
(比較例1)
ポリウレタン弾性糸23dTを芯糸、ナイロン糸11dT/5フィラメントをカバリング糸としてS方向から巻き付けたシングルカバードヤーン(トータル19dT)を作製した。作製したシングルカバードヤーンを用いて、シングルシリンダ編機でシングル編(天竺編)により筒状の編地を編成し、常法に従って、つま先縫、パンティー縫合した後、染色(ベージュ色;カルロ)、足型にて熱セットしてパンティーストッキングを作製した。
(比較例2)
ポリウレタン弾性糸17dTを芯糸、ナイロン糸10dT/2フィラメントをカバリング糸としてS方向から巻き付けたシングルカバードヤーン(トータル16dT)を作製した。作製したシングルカバードヤーンを用いて、シングルシリンダ編機でシングル編(天竺編)により筒状の編地を編成し、常法に従って、つま先縫、パンティー縫合した後、染色(ベージュ色;カルロ)、足型にて熱セットしてパンティーストッキングを作製した。
(試験例1)
実施例1、比較例1及び2で作製したパンティーストッキングについて、以下の方法により各部位のカバーファクター及びqmax値を測定した。更に、それぞれの生地について官能試験を行った。結果を表1及び図3に示した。
(1)カバーファクターの測定
編目の写真(倍率10倍)を撮影し、その画像を画像変換ソフト(Paintgraphic Version3.0.4 SOURCENEXT社)で、その解析を画像解析ソフト(画像から面積 ver1.0.0 配布元Studio鉄;フリーソフト)画像変換ソフト(画像から面積)を用いて2階調化して編目を白、背景を黒の画像に変換した。画像解析ソフトから白い画像部分の面積を算出し、白画像面積/総画像面積でカバーファクターを算出した。
なお、実施例1で作製されたパンティーストッキングの各部位の編目の写真(倍率10倍)を図2に示す。
(2)qmax値の測定
20.5℃の温度に設定した試料台の上に各生地を置き、生地の上に32.5℃の温度に温められた貯熱板を接触圧0.098N/cmで重ねた直後、蓄えられた熱量が低温側の試料に移動する熱量のピーク値を測定した。測定には、サーモラボII型精密迅速熱物性測定装置(カトーテック社製)を用いた。3回測定しその平均値を用いた。
(3)官能試験
10人の被験者について、各生地を触った瞬間の官能について以下の基準により評価を行った。また、「◎」の場合を3点、「〇」の場合を2点、「△」の場合を1点、「×」の場合を0点として、10人についての合計を求め、これを評価点とした。
◎:非常に冷感を感じた
○:冷感を感じた
△:幾らか冷感を感じた
×:全く冷感を感じなかった
Figure 0005105921
表1及び図3より、実施例1で作製したストッキングは、qmax値が高く官能試験においても全ての被験者が冷感を感じた。特に、実施例1のストッキングは、従来のストッキング(比較例1及び2)と比べて、カバーファクターが30〜50%と比較的小さいにもかかわらず接触冷感が高いことが分かる。
本発明のコンジュゲート繊維の伸縮挙動を示す模式図である。エラストマー樹脂(A)は、伸長してもほぼ元の長さに戻るつまり降伏点伸度以内で伸縮する(例えば、ポリウレタン)。エラストマー樹脂(B)は、降伏点伸度以上に伸長し、伸長後は該降伏点伸度に戻る(例えば、ポリエステルエラストマー)。本発明のコンジュゲート繊維は、鞘部のエラストマー樹脂(B)の降伏点伸度以上に伸長し、伸長後は該降伏点伸度に戻り、かつ、該降伏点伸度において芯部のエラストマー樹脂(A)が伸縮弾性を保持する。 、実施例1で作製されたパンティーストッキングの各部位の編目の写真(倍率10倍)を示す。 実施例1及び比較例1,2のパンティーストッキングの各部位における[カバーファクター]と「qmax」との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. コンジュゲート繊維からなる編地であって、該コンジュゲート繊維が、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とを含み、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含み、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が95:5〜40:60であり、該編地のカバーファクター(CF)が30〜50%、かつ、qmax値が0.2J/sec/cm以上であることを特徴とする接触冷感に優れた編地。
  2. 前記繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が51:49〜40:60である請求項1に記載の編地。
  3. 前記エラストマー樹脂(A)がポリウレタンエラストマーである請求項1又は2に記載の編地。
  4. 前記エラストマー樹脂(B)がポリエステル系エラストマー及び/又はポリアミド系エラストマーである請求項1〜3のいずれかに記載の編地。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の編地からなるストレッチ衣料。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の編地からなるストッキング。
  7. コンジュゲート繊維からなる編地の製造方法であって、伸縮弾性を有するエラストマー樹脂(A)と伸縮弾性を有し永久伸びが25〜70%かつ引張伸度が100〜800%を持つエラストマー樹脂(B)とを含み、芯部分に該エラストマー樹脂(A)を、鞘部分に該エラストマー樹脂(B)を含み、繊維断面における芯部分と鞘部分の面積比が95:5〜40:60であるコンジュゲート繊維を、カバーファクター(CF)が30〜50%になるように編成することを特徴とする編地の製造方法。
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