JP5554397B2 - エレベーターの制御装置 - Google Patents

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Description

この発明はエレベーターの負荷に応じて走行速度を可変とするエレベーターの制御装置に関するものである。
かごの積載量等、エレベーターの負荷に応じて電動機に与える速度指令値を変更して加減速度や最高速度を調整する制御装置が開発されている。この種の制御装置においては、秤装置やモータ電流などにより検出されたかご負荷に対応してあらかじめ定められた速度、またはかご積載量に基づいて演算された速度によりかごの走行を行う。
例えば、かごの積載量を検出する手段を設け、かごの積載量と移動距離に応じて速度指令値を変更して加減速度や最高速度を調整する制御装置が提示され、この装置において、秤装置の検出誤差や走行時の機械的、電気的なロスによる影響を考慮して、電動機やインバーターなどの駆動機器の負担が大きくならないように、あらかじめ、秤装置の誤差やシステムのロスを見込んだ速度指令値の演算を行うことが示されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、誤差やシステムのロスには、ばらつきがあるため、誤差やシステムのロスが少ない場合には保守的になり、本来の発揮できる速度よりも遅い速度で走行が行われ、その結果、駆動機器の能力を十分に発揮できないという問題がある。さらに、物件毎に、かご自重や昇降行程などが異なるため、それらのばらつきによる影響を見込んで速度指令値を演算する必要もあり、同様に保守的になる問題があり、この問題に対し走行時の走行状態量と予め設定された閾値を比較することで、学習により速度や加速度を調整する制御装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開2003−238037号公報 特開2009‐149425号公報
エレベーター毎に負荷に応じた速度を最適調整する技術において、従来の制御装置では、エレベーターの運用中にパラメーターを徐々に最適化していくため、最適化が完了するまでに種々の負荷状態で走行する必要があり、そのため調整が完了するのに時間がかかるという問題があった。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、エレベーターの据付調整時に少ない起動回数で、物件毎の走行抵抗や機械ロスのばらつきを補償して駆動機器の能力範囲内で制御パラメーターが自動調整されるエレベーターの制御装置を得ることを目的としている。
エレベーターの負荷に基づいて、速度パターンを変更して運転するエレベーターの制御装置において、負荷に対する速度パターンを演算するための走行モデルを有し、前記走行モデルは、エレベーターの走行時のロス、システムの効率、及びエレベーターの負荷の検出誤差を未知パラメータとして含み、前記エレベーターの負荷の検出誤差を除く前記未知パラメータをエレベーターの走行時の走行データより同定するようにした。
エレベーターの速度指令値を演算するための走行モデルを有し、据付調整時に、そのパラメーターを自動調整する手段を設けたことにより、エレベーター毎に異なる走行抵抗や機械ロスを補償する制御装置の最適調整を、短時間で行うことが可能となる。その結果、かごの運転を高効率に行うことができる。
本発明に係るエレベーターの制御装置の構成を示した構成図である。 実施の形態1に係る、エレベーターの制御装置の動作フローチャートを示した図である。 実施の形態1に係る、走行時のトルク電流の変化を示した図である。 実施の形態2に係る、エレベーターの制御装置の動作フローチャートを示した図である。 実施の形態2に係る、走行時のトルク電流の変化を示した図である。 実施の形態3に係る、エレベーターの制御装置の構成を示した構成図である。 実施の形態3に係る、エレベーターの制御装置の動作フローチャートを示した図である。 実施の形態3に係る、走行時のトルク電流の成分を示した図である。
1 パラメーター同定手段、2 パラメーター記憶部、3 速度指令演算装置、4 電動機制御装置、13 荷重検出器。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1を示す構成図である。本実施の形態におけるエレベーターおよびその制御装置は、パラメーター同定手段1、パラメーター記憶部2、速度指令演算装置3、電動機制御装置4、電力変換器5、電流検出器6、電動機7、位置・速度検出器8、シーブ9、ロープ10、かご11、釣合錘12、荷重検出器13によって構成される。
上記の構成において、ロープ10の両端にかご11と釣合錘12がシーブ9を介して連結されており、前記シーブ9は電動機7により回転され、前記かご11を昇降させる。電動機7は電力変換器5によって駆動される。電力変換器5はインバーターやマトリクスコンバーターなどがあり、電動機制御装置4によって電流制御される。このときベクトル制御が用いられることが多く、位置・速度検出器8によって検出される電動機7の速度と磁極位置、そして電流検出器6によって検出される電動機電流を用いて電流制御が行われる。電動機制御装置4は、速度検出器8によって検出された電動機の速度が速度指令演算装置3によって生成された速度パターンに追従するように速度制御を行う。荷重検出器13は、かごの乗客負荷を検出する装置であり、秤装置等により実現できる。また、電動機電流や制御装置の内部で用いる制御信号である電動機のトルク指令などで代用することもできる。荷重検出器13によって検出された乗客負荷は速度指令演算装置3に送られる。
パラメーター同定手段1、速度指令演算装置3、電動機制御装置4は制御プログラムを実装したマイクロコンピュータ等により実現できる。
パラメーター同定手段1は速度指令値演算装置3が速度指令値を演算するために必要な、エレベーターのシステムパラメーターを同定する手段である。詳細は後述する。
パラメーター記憶部2にはパラメーター同定手段1で同定されたエレベーターのシステムパラメーターが格納されている。なお、パラメーター記憶部はメモリなどの記憶装置で実現可能である。
次に本発明の特徴であるパラメーター同定手段1を用いた速度パターンの自動調整について述べる。速度指令値演算装置3では乗客負荷に基づいて、電動機や電力変換器の許容内で速度や加速度、ジャーク(加加速度)等の速度パターンを演算するためのパラメーターを最適化し、運行時間を短縮する速度パターンを演算する。本発明では、エレベーターの速度パターンを演算するための走行モデルを有し、そのモデルに基づいて速度パターンを設定する。
例えば電動機の定格電力を超えない速度を決定するエレベーターの走行モデルの一例は以下の数式で表される。
数式1:V=Ht/{L(|β−γ|+Er+H0)/(6120ηp)}:力行走行時
数式2:V=Ht/{L(|β−γ|+Er−H0)/(6120ηr)}:回生走行時
ここで、Vは一定速度時の速度(m/min)、Htは電動機の定格電力(kW)、Lは定格積載量(kg)、βはかご負荷(0〜1の値を取る、0は無積載時、1は定格積載時を表す)、γはカウンタ率(定格積載の50%で釣合い錘と釣合う場合は0.5で表す)、Erはかご負荷の検出誤差を表す。また、H0は走行時の走行抵抗を表し、例えばガイドとレールの摩擦によるロスやロープの曲げロスなどをかご負荷と同じ単位に換算したもの表す。
またηp、ηrは電動機や電力変換器の効率を表し、力行時がηp、回生時がηrである。これらのパラメーターのうち、外部検出装置等で検出して利用する値(数式1、2においてはβ)以外はシステムパラメーターとしてパラメーター記憶部に格納されており、速度指令演算装置3は速度の演算時に該当するパラメーターをパラメーター記憶部から読み出す。
エレベーターの起動時に、検出されたかご負荷βと走行方向に基づいて力行走行か回生走行かを判定し、数式1あるいは数式2に基づいて速度が決定される。ここで、定格電力Htやカウンタ率γは既知であるが、かご負荷の検出誤差Erや走行抵抗H0、効率ηp、ηrはエレベーター毎に異なる。Er、H0、ηp、ηrについては、想定される最悪値として予め定めておくことによって、速度を求めることが可能であるが、保守的な設計となる。本発明では上記パラメーターのうちH0、ηp、ηrについては走行時の走行データを用いて同定することにより、前記の保守性を改善し、最適な速度の自動調整が可能となる。また、走行モデルのパラメータの同定は少ない走行回数で可能であるため、短時間で最適な速度の自動調整が可能となる。以下にその方法について述べる。
数式1、2の右辺の分母(L(|β−γ|+Er+H0)/(6120ηp)、L(|β−γ|+Er−H0)/(6120ηr))は、電動機の発生するトルクに相当する。したがって、力行、回生時の電動機電流のトルク成分(トルク電流)との関係は既知の変換係数Kiを用いて次式で表せる。なお、Kiは定格積載量時のトルク計算値が電動機の定格トルク電流値となるような変換係数である。
これは例えば、数式3において左辺を定格トルク電流値(設計値)、右辺でβ=1、Erは想定される秤誤差、H0、ηpは適当な初期値(例えば想定される最悪値)を代入して求めた値として求めることができる。
数式3:iqp=Ki×{L(|β−γ|+Er+H0)/(6120ηp)}:力行走行時
数式4:iqr=Ki×{L(|β−γ|+Er−H0)/(6120ηr)}:回生走行時
ここで、iqp、iqrはそれぞれ力行、回生時の電動機電流のトルク成分を表す。本発明ではエレベーターの据え付け時に図2に示す手順に従って、H0、ηp、ηrを同定する。
まずステップS1でロープアンバランス量の同定を行う。ロープアンバランス量とはシーブ9に掛かるロープ10のかご側重量と釣合い錘側重量の重量差のことであり、かご位置によって変化する。例えばかごが最下階にあるときにはかご側にほぼすべてのロープ荷重がロープアンバランス量として加わり、かごが最上階にあるときには釣合い錘側にほぼすべてのロープ荷重がロープアンバランス量として加わる。かごが中間位置にあるときにはロープアンバランス量はゼロになる。本実施の形態では数式3、4を用いてシステムパラメータの同定を行うが、数式3、4はロープアンバランス量の影響を含まない(除去した)モデルとしている。したがって、本ステップでは、ロープアンバランス量を除去するために、かご位置によるロープアンバランス量を同定し、パラメーター記憶部2に格納する。ロープアンバランス量は、予め設定した適当な速度でかごを最上階から最下階まで走行させ、そのときのトルク電流の増分から求めることができる。これについて、図3を用いて以下で説明する。
図3は、かごを空の状態にして最上階から最下階まで走行させたときのかご速度(上段)とトルク電流(下段)を表す。かごが一定速度の区間Tのトルク電流の変化量を計測することで、かごの移動量に対するトルク電流の変化量、つまりかご位置に対するロープアンバランス量を求めることができる。これは数式3、4に対応させて求めるため、力行走行時、回生走行時の2通りについて行うが、同一積載量(例えばかごが空の状態)で上昇方向と下降方向に走行させて行うことができる。
つぎにステップS2では0%負荷、つまりかごが空の状態でエレベーターを走行させて、そのときのトルク電流値の時系列データを取得する。これはかごの上昇(回生)、下降(力行)の2通りで行う。
つぎにステップS3では50%負荷、つまりかごと釣合い錘とが釣り合う状態となるように、かごにテストウェイトを積んで走行させ、そのときのトルク電流を取得する。50%負荷時は上昇、下降ともに力行走行で同じ負荷状態となるため、どちらかで取得すればよい。
つぎにステップS4ではステップS2、S3で取得したトルク電流とステップS1で求めたロープアンバランス量を用いてエレベーターのシステムパラメーターを同定する。その方法を以下で説明する。
まず、ステップS2で取得した上昇時のトルク電流値の時系列データから、ロープアンバランス分を除去する。これは、一定速度で走行時の電流を抽出し、ステップS1で求めた上昇時のロープアンバランス量に相当する電流分を除去することで行う。このとき、理想的には一定速走行時のトルク電流値の時系列データは一定値となるが、実際には外乱等によりばらつくため電流の平均値を求める。この値をiqr0とおく。
次に、ステップS2で取得した下降時のトルク電流について、上昇時と同様の処理を行い、下降時のロープアンバランス量に相当する電流分を除去して平均した値をiqp0とおく。つぎにステップS3で取得したトルク電流において、iqp0を求める手順と同様の手順で50%負荷時の電流を求める。この値をiqp50とする。
つぎに、数式3、4を用いてシステムパラメーターを同定する。据付け時にはテストウェイトを用いているため、かご積載量が既知であり、秤誤差Erはゼロである。よって、数式3、および4に前記で求めた各負荷でのトルク電流と対応する負荷の値、Er=0を代入した次式が成り立つ。
数式5:iqp0=Ki×{L(|0−γ|+H0)/(6120ηp)}

数式6:iqp50=Ki×{L(|0.5−γ|+H0)/(6120ηp)}

数式7:iqr0=Ki×{L(|0−γ|−H0)/(6120ηr)}

数式5、6、7において未知のシステムパラメーターはH0、ηp、ηrの3個であり、連立方程式は3つあるため、上式から上記のシステムパラメーターH0、ηp、ηrを求めることができる。以上の手順でステップS4ではシステムパラメーターH0、ηp、ηrを同定する。
つぎにステップS5ではステップS4で同定したシステムパラメーターをパラメーター記憶部に書き込むことで、速度演算式の更新を行う。
上記の手順により、数式1、2で用いるシステムパラメーターが実機に相当する値に調整されるため、従来は最悪値を見込んで設定していたシステムパラメーターを最適化でき、エレベーター毎に最適な速度を設定することができる。そして上記のシステムパラメーターの調整は、ステップS2の2回の走行、およびステップS3の1回の走行の計3回の走行で行えるため、据付時に短時間で最適な調整を行うことができる。
なお、かごが最上階と最下階のちょうど中間位置にあるときにはロープアンバランスがゼロになることから、ステップS4において、ステップS2、ステップS3で取得したトルク電流値の、かごが中間位置での電流値を用いることで、ステップS1およびステップS4におけるロープアンバランス量の除去のプロセスを省略することができる。
また、本実施の形態では0%負荷と50%負荷で、かごを走行させてエレベーターのシステムパラメーターを同定、調整する例を示したが、かごと釣合い錘の重量差が異なる積載量の組合せであれば良く、例えば0%負荷と25%負荷で行ってもよい(同等の効果を奏することはいうまでもない)。
また、本実施の形態では電動機電流検出値のトルク成分を用いてシステムパラメーターの同定を行う例を示したが、電動機電流検出値のトルク成分の代わりに、制御信号であるトルク指令値やトルク電流指令値を用いてもよい。
実施の形態2.
本実施の形態では、乗客負荷に基づいて、電動機の許容最大トルクを超えない範囲で速度パターンのうち、加速度を自動調整する場合について説明する。加速度αを決定するエレベーターの走行モデルの一例は以下の数式で表される。
数式8:α={Tmax−L(|β−γ|+Er+H0)/(6120ηp)}/{(Ja+Jb×β)/ηp}:力行走行時
数式9:α={Tmax−L(|β−γ|+Er−H0)/(6120ηr)}/{(Ja+Jb×β)/ηr}:回生走行時
ここで、Tmax は電動機の加速時の許容最大トルクであり既知である、(Ja+Jb×β)はエレベーターのイナーシャに相当する量である。エレベーターのイナーシャは、かご負荷βによって変わるため、かご負荷に依存する部分を表すためのパラメーターJbと、かご負荷に依存しない部分を表すためのパラメーターJaを用いてβの線形関数によって表すことができる。
数式8、9は、電動機の許容最大トルクTmaxから、エレベーターのかご側重量と釣合い錘重量の差に相当するアンバランストルク分を引いた残り全トルクを、加速に割り当てるような加速度αを求めるための計算式であり、加速時の電動機のトルクがTmaxとなるような加速度を求めることができる。つまり、電動機の許容限界となる加速度の最大値を求める意味で最適なものとなっている。なお、Tmaxを実際の電動機の許容限界値よりも小さく設定すれば、電動機のトルクに余裕を持たせて加速度が設定できることは言うまでもない。
これらのパラメーターのうち、外部検出装置等で検出して利用する値(数式8、9においてはβ)以外はシステムパラメーターとしてパラメーター記憶部に格納されており、速度指令演算装置3は速度の演算時に該当するパラメーターをパラメーター記憶部から読み出す。
エレベーターの起動時に、検出されたかご負荷βと走行方向に基づいて力行走行か回生走行かを判定し、数式8あるいは数式9に基づいて加速度が決定される。ここで、実施の形態1と同様に上記パラメーターのうちH0、ηp、ηr、Ja、Jbについて走行時の走行データを用いて同定することにより、最適な加速度の自動調整が可能となる。以下にその方法について述べる。H0、ηp、ηrについては実施の形態1で述べた方法で同定可能である。以下ではJa、Jbの同定方法を主として述べる。
実施の形態1では、数式3,4によって一定速走行時のトルク電流を表しているが、それを加速走行時のトルク電流に拡張したものは次式10、11で表せる。

数式10:iqp_a=Ki×{L(|β−γ|+Er+H0)/(6120ηp)+α×(Ja+Jb×β)/ηp}:力行走行時

数式11:iqr_a=Ki×{L(|β−γ|+Er−H0)/(6120ηr)+α×(Ja+Jb×β)/ηr}:回生走行時

ここで、iqp_a、iqr_a はそれぞれ力行、回生時の電動機電流のトルク成分を表す。また、αはかごの加速度を表す。
本実施の形態では、エレベーターの据え付け時に図4に示す手順に従って、H0、ηp、ηr、Ja、Jbを同定する。なお、図4において図2と同等の符号で示した手順は実施の形態1と同じである。
ステップS1〜S3は、実施の形態1で述べた手順と同等であるため、説明を省略する。
ステップS44ではステップS2、S3で取得したトルク電流とステップS1で求めたロープアンバランス量を用いてエレベーターのシステムパラメーターを同定する。まず、H0、ηp、ηrについては実施の形態1で述べた方法と同様にして同定する。つぎにJa、Jbの同定方法について以下に述べる。
まず、ステップS2、S3で取得したトルク電流のうち、図5に示すように一定加速区間Taでのトルク電流値からロープアンバランス量を除去して平均した値を求める。
このとき、ステップS2で取得した下降時のトルク電流値について上記処理を行ったときのトルク電流値をiqp0_aとおき、ステップS3で取得したトルク電流値について同様の処理を行った後のトルク電流値をiqp50_aとおく。
つぎにステップS44で、数式10を用いてシステムパラメーターを同定する。据付け時にはテストウェイトを用いているため、かご積載量が既知であり、秤誤差Er はゼロである。また、加速度αの値も既知である(αtとおく)。
よって、数式10に前記で求めた各負荷でのトルク電流と対応する負荷の値、Er=0 、既知の加速度αtを代入した次式が成り立つ。
数式12: iqp0_a=Ki×{L(|0−γ|+H0)/(6120ηp)+αt×(Ja+Jb×0)/ηp}
数式13: iqp50_a=Ki×{L(|0.5−γ|+H0)/(6120ηp)+αt×(Ja+Jb×0.5)/ηp}
数式12、13においてH0、ηp、ηrは前記ステップで求めているため既知である。よって未知パラメーターはJa、Jbの2個であり、連立方程式は2つあるため、上式12、13からシステムパラメーターJa、Jbを求めることができる。
つぎにステップS45ではステップS44で同定したシステムパラメーターをパラメーター記憶部に書き込み更新を行う。
上記の手順により、数式8、9で用いるシステムパラメーターが実機に最適な値に調整されるため、従来は最悪値を見込んで設定していたシステムパラメーターを最適化でき、エレベーター毎に最適な加速度を設定することができる。
本実施の形態ではステップS44で数式10のみを用いたが、数式11を用いても良い。このとき、数式12はステップS2で上昇時に取得したトルク電流iqr0_aを用いた次式14となる。
数式14:iqr0_a=Ki×{L(|0−γ|−H0)/(6120ηr)+αt×(Ja+Jb×0)/ηr}
また、本実施の形態では0%負荷と50%負荷でかごを走行させてエレベーターのシステムパラメーターを同定、調整する例を示したが、かごと釣合い錘の重量差が異なる積載量の組合せであれば良く、例えば0%負荷と25%負荷で行っても良い。
また、ステップS44において、Ja、Jbを同定する際に加速時のトルク電流を用いたが、一定減速時のトルク電流を用いてもよい。
また、本実施の形態では加速度αを決定するエレベーターの走行モデルとして許容最大トルクを超えない条件とした数式8、9を用いたが、加速時に許容最大電力を超えない条件とした以下の走行モデルを用いても良い。

数式15:α={Hmax/V−L(|β−γ|+Er+H0)/(6120ηp)}/{(Ja+Jb×β)/ηp}:力行走行時
数式16:α={Hmax/V−L(|β−γ|+Er−H0)/(6120ηr)}/{(Ja+Jb×β)/ηr}:回生走行時
数式15,16においてHmaxは加速時における電動機の許容最大電力であり、Vは一定速走行時(図5のv1)、あるいは一定加速から加速丸めを開始する速度(図5のv2)である。なお、Hmaxについては既知であり、Vについては負荷率βが決定すると、数式1、2から求めることができる。
このように、加速度の最適調整についても数回(本実施例では3回、そのうち加速度の最適調整には2回走行分のデータを利用)の走行で調整することができ、短時間で調整できる。
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3を示す構成図である。図1と同じ符号で記した要素は実施の形態1、2と同様の動作をする。本実施の形態では、システムパラメーターを定期的に再調整することを特徴とする。この再調整はエレベーターのかご負荷が確定可能な負荷状態であるときに実施する。本実施の形態では、かご負荷が確定可能な状況として、かご内が無人状態である場合について再調整を行う例について説明する。
無人検出手段614はかご内が無人(無積載)であることを検出する手段である。かご内が無人であるか否かの判定には、種々の方法を用いることができる。例えば、かご内カメラ等で人物の有無を検出する方法、かご内での行き先登録がなく乗場からの呼びで動作する場合を無人と判定する方法、上記と荷重検出器の値を併用する方法などがある。また夜間等にエレベーターが停止中で呼び登録が一定時間発生しない場合に無人と判定し、無人走行状態を作り出してもよい。
パラメーター同定手段61は実施の形態1、2で述べた据え付け時のシステムパラメーターの自動調整に加えて、無人走行時の定期的なシステムパラメーターの再調整を実施する。パラメーター記憶部62はエレベーターのシステムパラメーターについて、その履歴値も記録する。つまり、再調整前の値も記憶する。さらに、システムパラメーターを同定する際に用いる走行データの履歴値も記憶する。
本実施の形態では図7のフローチャートに従って、定期的なパラメーターの再調整が行われる。以下にその手順について説明する。
まずステップS71では、パラメーターの再調整を行うために、走行毎に無人検出手段614により、無人状態であるか否かを判定する。無人走行でないと判定されたときには次回走行時まで待機する(再調整は行わない)が、無人状態であると判定された場合は、ステップS72に移行する。ステップS72では無人状態での走行時のトルク電流を取得し、パラメーター記憶部で記憶する。つぎにステップS73ではステップS72で取得したトルク電流値を用いてシステムパラメーターの同定を行う。以下にその方法について述べる。
図8は無人走行時のかごの下降時のかご速度とトルク電流パターンを示している。トルク電流のうち、aの部分はロープアンバランス分、bは走行ロス分、cはかご重量と釣合い錘重量のアンバランス分、dは加速時のイナーシャトルク分、eは減速時のイナーシャトルク分を表す。なお図8において、ロープアンバランスはかごが中間位置よりも上方にある場合は正であり、中間位置よりも下方にある場合は負となるため、途中で符号が逆転している。イナーシャトルクeについても同様で、減速時は負の値となる。b〜eの電流の大きさをそれぞれiqb、iqc、iqd、iqeとしたとき、これを数式10に対応させると以下のようになる。
数式17:iqb=Ki×H0/(6120ηp)
数式18:iqc=Ki×L(|0−γ|)/(6120ηp)
数式19:iqd=Ki×αt×(Ja+Jb×0)/ηp
数式20:iqe=Ki×αd×(Ja+Jb×0)/ηp
なお、加速度、減速度の大きさをそれぞれαt、αdとした。αt、αdは既知である。
まず、aのロープアンバランス分については、実施の1と同様な方法で除去することができる。つぎにdまたはeの大きさを求める。これは一定加速時または一定減速時のトルク電流と一定速度時のトルク電流値の差により求まる。
また、bとcについては、個別に求めることはできないが、その和については一定速度時のトルク電流から求めることができる。
ここで数式19から、据付調整時に0%負荷で取得したトルク電流のdに相当する値(iqd0とする)と、再調整時のdに相当する値(iqd)の比率が据付走行時に同定した効率(ηp0とする)と再調整時のηpの逆比率になることが分かる。
つまり、iqd/iqd0=ηp0/ηp となることから、ηpは、
数式21:ηp=ηp0×iqd0/iqd
により求めることができる。
なお、ηpの再調整は減速時のトルク電流iqdを用いてもよい。或いは両方の平均としてもよい。
また、回生方向の効率ηrは上昇運転時に上記と同様な手順で再同定することができる。
つぎにH0を同定するが、これは数式17、18、21および一定速度時のトルク電流(iqb+iqcの実測値:iqbcとする)から求めることができる。
今、ηpの同定ができたので、数式18の右辺に代入してiqcの値を求めることができる。そして一定速度時のトルク電流(iqbc)からiqcを減じた値がiqbであり、これが数式17と等しくなることからH0を求めることができる。
つまり次式22によりH0を再同定することができる。
数式22:H0=(iqbc−iqc)×6120ηp/Ki
上記は力行走行時のトルク電流値を用いてH0を再同定する例を示したが、回生走行時のトルク電流値を用いて、上記と同様な方法で求めることもできる。また、力行走行、回生走行の両方で再同定し、両者の平均をとる方法を用いても良い。
さらには、パラメーターの再同定を数回繰り返し、その平均値を用いるようにしても良い。
本発明により、エレベーターのシステムパラメーターが定期的に再調整されるのでエレベーターの経年変化の影響を考慮して自動的にシステムパラメーターを再調整することができ、エレベーター毎に最適な速度パターンで走行させることができる。また、この再調整は数回の走行で完了するため、短時間で再調整することができる。

Claims (5)

  1. エレベーターの負荷に基づいて、速度パターンを変更して運転するエレベーターにおいて、
    負荷に対する前記速度パターンを演算するための走行モデルを有し、
    前記走行モデルは、エレベーターの走行時のロス、システムの効率、及びエレベーターの負荷の検出誤差を未知パラメータとして含み、
    前記エレベーターの負荷の検出誤差を除く前記未知パラメータをエレベーターの走行時の走行データより同定すること特徴とするエレベーターの制御装置。
  2. 前記速度パターンには、速度または加速度のパターンが含まれていることを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの制御装置。
  3. 前記走行モデルの同定を、エレベーターの据付時に、かごの積載状態を2通り以上変更して走行させた走行データに基づいて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベーターの制御装置。
  4. 前記未知パラメータを同定するために用いる走行データは電動機電流のトルク成分またはトルク指令値であることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のエレベーターの制御装置。
  5. 前記走行モデルの未知パラメータをエレベーターが空の状態で走行するときの走行データを用いて定期的に再調整することを特徴とする請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のエレベーターの制御装置。
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