JP5553410B2 - 高温鋳型を用いた鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、焼成炉を用いない、高温鋳型を使用する鋳造法に関する。
薄肉鋳鋼は、精密鋳造法により航空機部品に使用されている。一方、自動車部品には鋳鉄が使用されている。近年、自動車部品は、排気ガスの低減から、燃費の向上、及びハイブリッド、電気自動車の採用により、軽量化、燃焼温度の上昇による耐熱部品、さらに、バイオ燃料によるアルミ二ウム合金のアルコール腐食等によるステンレス鋼への素材転換が要求されている。
鋼は、鋼種が豊富で、非破壊検査が確立されており、スクラップが還元し、最も廉価であるが、唯一の欠点は、効率的で生産性の高い成型法がないことである。
高温鋳型は、薄肉の鋼の鋳造に使用されている。鋼は、凝固温度直下で、靭性を失う温度(Nil point)が存在することが知られている。鋳型温度1000℃未満で行われる鋼の鋳造は、溶融状態から凝固、冷却の過程で、鋳型の拘束により鋼の薄肉鋳造品に熱間亀裂が発生する。このため、航空機等に使用されている精密鋳造法では、1000℃以上の鋳型温度が採用することが常識とされている。
鋳型を焼成炉に入れて加熱する一般的な鋳造方法としては、セラミックモールドやロストワックス法などがある。これらの方法における鋳型のキャビティ面は、無機物のスラリーで構成され、再利用ができない。また、焼成に1時間以上、乾燥・熟成に12時間以上かかる(非特許文献1)。
近年に至り、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、これに、アルコキシシラン類を含浸させて、次いで、これを乾燥させて高温焼成して、耐火物成形品を得る有機バインダーが提案されている(特許文献1:特許第3139918号公報)。
さらに、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、成形品表面にアルコキシシランを塗布、含浸し、乾燥し、鋳物を鋳造する方法が提案されている(特許文献2:特開2002−143983号公報)。
金属ナトリウムは、その激しい反応性のため、大気中では、単体では存在せず酸化アルカリ(Na2O)として、取り扱われている。特許文献3に係る錯体(アルコキシシランとアルコキシナトリウムの混合液、MX溶液)は、大気中でアルコールの蒸発時に、ナトリウムイオンを取り囲むように結晶核(Crystal Habit)を形成し、常温から、沸点まで、金属ナトリウムの反応性を維持するシリカ組成物(ナノシリカセル)を生成する(特許文献3)。これは、耐火物の成形法として用いることができる。
特許第3139918号公報 特開2002−143983号公報 特開2010−42985号公報
社団法人 日本鋳物協会、「改訂4版 鋳物便覧」、昭和61年1月20日、丸善株式会社、p.1065−1069
上記のように、高温鋳型を使用する精密鋳造法等の鋳造法は、1000℃以上の鋳型温度を必要とし、焼成炉を使用する。
しかし、鋳型は、製品部の空隙が断熱層となり、鋳型内部まで加熱するには時間を要し、大きな熱量を消費する。さらに、焼成のための鋳型のセット治具、ならびに加熱された鋳型の焼成炉からの取り出しは、高温材料を要し、変形も多い。さらに、通常、鋳型を焼成炉に入れるセラミックモールドやロストワックス法は、鋳型の乾燥・熟成に12時間以上を必要とし、鋳型の焼成に1時間以上を要するため、生産効率が悪い。
そこで、本発明の課題は、生産性の高い、鋼の薄肉鋳造品の製造方法を提供することである。
特許文献1では、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、これに、アルコキシシラン類を含浸させて、次いで、これを乾燥させて高温焼成して、耐火物成形品を得る有機バインダーが提案されている。さらに、特許文献3では、アルコキシラン類を被覆した骨材を有機バインダーによって成型品素体を成型し、高温焼成して耐火物を得る方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1および特許文献3に係わる鋳型は、高温焼成させた際、焼成時間が短いとは言えず、鋳型のクランプ及び焼成中の変形を防止する治具を必要としている。
そこで、本発明の課題は、骨材と有機バインダーで成型された成型素体のキャビティ及び中子素体のみを効率的に直接加熱焼成することにより、常温で鋳型のクランプを可能とし、短時間で高温鋳型を得られる鋳造法を提供することである。
以下の工程(A)〜(F)を含む、高温鋳型を用いた鋳造方法である。
(A)セラミック背面型のキャビティ面に、下記(X)被膜砂と有機高分子バインダーとを含む鋳型有機材料を固着させ、有機鋳型を得る工程:
(B)有機鋳型全体を加熱せず、有機鋳型のキャビティ面のみを加熱して、有機鋳型のキャビティ面を1000℃以上に加熱する加熱工程:
(C)常温雰囲気下で、加熱した有機鋳型を型締めする型締め工程:
(D)金属溶湯を注湯する注湯工程:
(E)注湯された金属溶湯を固化させるために有機鋳型を冷却させる冷却工程:
(F)型ばらしをして鋳物を得る型ばらし工程:
(X)被膜砂;(x1)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と(x2)砂との混合物から、アルコールを乾燥除去して得られる被膜砂。
本発明では、耐熱保温性のセラミック背面型を使用することにより、鋳型素体のキャビティ面及び中子を、効率的に加熱焼成することができ、短時間で保温性のある高温鋳型が得られ、鋳型材料を極力減らすことを可能にする。
さらに、常温のクランプ機構が使用できるため、金型鋳造と同等の生産性のある薄肉鋳鋼の製造することが出来る鋳造プロセスを提供することが出来る。
さらに、アルコキシラン類を被覆した骨材と有機バインダーを使用する鋳型の成型は、背面型を使用することにより、薄く効率的により成型することできるため鋳型材料の使用を減少できる。
さらに、キャビティ面のみを加熱して鋳造できることにより、従来の常温で使用されてきた型締め工程を行うことができるため、バリのない鋳物素体が得られる。
さらに、本発明では、加熱時間が短く、乾燥・熟成時間が不要であることにより、通常、鋳型を焼成炉に入れるセラミックモールドやロストワックス法と比して短時間で鋳造できるため、効率よく生産することが可能である。
背面セラミック型に成型した鋳型素体と中子素体概略図(型締め前)である。 背面セラミック型に成型した鋳型素体と中子素体概略図(型締め後)である。 本発明に係る鋳造プロセスを示した概念図である。 本発明の加熱工程の一例を示す図である。 本発明に用いられる鋳型有機材料の抗折試験の結果を示すグラフ(強度)である。
本発明は、以下の工程(A)〜(F)を含む、高温鋳型を用いた鋳造方法である。
(A)セラミック背面型のキャビティ面に、下記(X)被膜砂と有機高分子バインダーとを含む鋳型有機材料を固着させ、有機鋳型を得る工程:
(B)有機鋳型全体を加熱せず、有機鋳型のキャビティ面のみを加熱して、有機鋳型のキャビティ面を1000℃以上に加熱する加熱工程:
(C)常温下で有機鋳型を型締めする型締め工程:
(D)金属溶湯を注湯する注湯工程:
(E)注湯された金属溶湯を固化させるために有機鋳型を冷却させる冷却工程:
(F)型ばらしをして鋳物を得る型ばらし工程:
(X)被膜砂;(x1)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と(x2)砂との混合物から、アルコールを乾燥除去して得られる被膜砂。
図1は、型締め前の中子及び有機鋳型を示した例である。図2は、中子が挟まれた状態で有機鋳型を型締めした例である。
背面型11のキャビティ面全体に、(X)被膜砂と有機高分子バインダーとを含む鋳型有機材料12が固着されている。中子20は、支持棒21と鋳型有機材料22からなっている。型締め後(図2)、有機鋳型の上部より、有機鋳型10と中子20で挟まれた部分に、金属溶湯が注湯される。
図3は、本発明の鋳造方法の各工程を模式的に表した図である。
図3の(1)は、背面型を示す。
図3の(2)は、背面型のキャビティ面に鋳型有機材料が固着した有機鋳型を示し、工程(A)により得た有機鋳型に相当する。
図3の(3)は、有機鋳型のキャビティ面のみを加熱している工程を示し、加熱工程(B)に相当する。
図3の(4)は、加熱した有機鋳型のキャビティ面を内側に合せ、その間に中子を位置させた図であり、型締め工程(C)の途中の状態に相当する。
図3の(5)は、型締めした有機鋳型に金属溶湯を注湯している工程を示し、注湯工程(D)に相当する。
図3の(6)は、型ばらしして、内容物(中子付きの鋳物)を得る工程を示し、型ばらし工程(F)に相当する。この後、内容物(中子付きの鋳物)から中子を除去して鋳物を得る(図示せず)。
〔(A)有機鋳型を得る工程について〕
(A)セラミック背面型のキャビティ面に、下記(X)被膜砂と有機高分子バインダーとを含む鋳型有機材料を固着させ、有機鋳型を得る工程について説明する。
(背面型、中子)
背面型は、通常の耐火物成型法で製造することができる。背面型の製造方法としては、通常、骨材に高級耐火物を用い、結合剤としてけい酸ソーダ、リン酸塩、セメントなどを使用し成型焼結する。本発明では、セラミック背面型が用いられる。
セラミック背面型を構成する骨材としては、ここで、特に制限されるものではなく、例えば、けい砂、アルミナ、石英、ジルコン、溶融シリカ、シリカフラワー、ムライト、合成ムライト、シャモット、合成シャモット等を挙げることができ、実際の使用に際しては、製造される耐火物成形品の用途等に応じて、これらの中からその1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。セラミック背面型は、公知の方法で製造することができる。
中子は、中子表面に鋳型有機材料が存在すればよい。よって、通常の中子に鋳型有機材料を一般的な方法で塗布して固めてもよく、中子全体を鋳型有機材料で成形してもよい。中子は、公知の方法により製造することができる。
キャビティ面とは、型を型締めした際にできる空間部分を形成する面をいう。よって、鋳物の形状に対応した面ということもできる。
((X)被膜砂)
本発明の(X)被膜砂は、(x1)アルコール溶液と(x2)砂との混合物からアルコールを乾燥除去して得られる被膜砂である。
((x1)アルコール溶液)
(x1)アルコール溶液は、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液である。
本発明の被膜砂は、アルコールの沸点下において、アルコールの存在中に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を酸化することなしに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を核としてα―トリジマイト結晶核として生成し、この結晶核空隙中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を取り込んだ被膜を有する。
さらに、(A)アルコール溶液としては、代表例として、一般式RmM(OR)4-mまたはM(OR)(ただし、式中Mは周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属を示し、Mは周期律表3A族または3B族の金属を示し、Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、MがSiの場合にはm=0〜3の整数であって、MがSi以外の場合にはm=0である)で表されるアルコール可溶性の金属アルコキシドおよびその部分加水分解物から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、(A2)一般式MOR´またはM(OR)(ただし、式中Mはアルカリ金属を示し、Mはアルカリ土類金属を示し、R´は水素または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは、上記と同様である。)で表されるアルコール可溶性のアルカリ化合物とを含有するアルコール溶液が挙げられる。
〔金属アルコキシド類について〕
金属アルコキシドは、周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属Mまたは周期律表3A族または3B族の金属Mの金属アルコキシドまたはそれらの部分加水分解物である。ここで、金属アルコキシドを形成する金属Mとしては、周期律表4A族金属としてTi、Zrなどを挙げることができ、また、炭素以外の周期律表4B族金属としてSi、Ge、Sn、Pbなどを挙げることができ、そしてMとしては、周期律表3A族金属としてSc、Yなどを挙げることができ、さらに、3B族金属としてB、Al、Gaなどを挙げることができる。
また、上記金属アルコキシドを形成するRは、互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基である。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基などを、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基などを、さらに、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、メトキシイソプロピル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基などを、またアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基、トリロキシメチル基、トリロキシエチル基、トリロキシプロピル基、トリロキシブチル基などを挙げることができる。
そして、このような金属アルコキシドの部分加水分解物としては、それが加水分解率0%以上であってアルコール溶剤に溶解すれば特に制限はなく、直鎖状部分加水分解物であっても、網目状部分加水分解物であっても、また、環状部分加水分解物であっても良い。
さらに、これら金属アルコキシドおよびその部分加水分解物からなる金属アルコキシド類は、その1種のみを単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物として使用することもできる。
本発明において、上記金属アルコキシド類として最も好ましいものは、一般式RmSi(OR)4-m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である。
具体的には、テトラアルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、メトキシトリイソプロポキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、メトキシトリプトキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルトリアルコキシシランとして、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリプトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
また、ジアルキルジアルコキシシランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシランなどを挙げることができ、また、トリアルキルアルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
さらに、アリールオキシシランとして、テトラフェノキシシラン、テトラトリロキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルアリールオキシシランとして、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、メチルトリトリロキシシランなどを挙げることができる。
さらにまた、アルコキシアルキルシランとして、テトラメトキシメチルシラン、テトラメトキシエチルシラン、テトラメトキシイソプロピルシラン、テトラエトキシメチルシラン、テトラエトキシエチルシラン、テトラエトキシイソプロピルシランなどを挙げることができ、また、アリールオキシアルキルシランとして、テトラフェノキシメチルシラン、テトラフェノキシエチルシラン、テトラフェノキシプロピルシラン、テトラフェノキシイソプロピルシラン、テトラトリロキシエチルシランなどを挙げることができる。
そして、その他の好ましい金属アルコキシド類としては、テトラブトキシチタン、テトラブトキシジルカン、トリイソプロポキシアルミンなどが挙げられる。
アルコール溶液中における、金属アルコキシド類の含有量については、金属酸化物換算(例えば、金属アルコキシド類が珪酸エステル類の場合はSiO換算)で、好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは2〜30重量%、最も好ましくは10〜30重量%の範囲であるのがよい。2重量%未満では、被膜形成にした際にこの金属アルコキシド類由来の金属酸化物の含有量が不足し、本発明に係る被膜を形成することができない場合があり、一方、50重量%を超えると、溶解度の点からアルカリ化合物の溶解量が0.5重量%未満になり該被膜の目的を満たさない場合がある。金属酸化物を「金属アルコキシド類の完全加水分解縮合物である金属酸化物」と呼ぶ場合がある。また、15〜25重量%の範囲であっても良い。
〔アルカリ化合物について〕
アルカリ化合物については、金属Mとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができ、好ましくはナトリウム、カリウムを挙げることができる。金属Mとしては、Ca,Sr,Ba,Raを挙げることができる。また、このアルカリ金属アルコキシドを形成する置換基R´としては、水素またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルキル基、またはフェノキシ基、トリロキシ基、またはアルコキシアルキル基またはアリールオキシアルキル基などを挙げることができる。これらのアルカリ化合物は、その1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上の混合物として用いても良い。
このように、本発明に用いられる溶液は、代表的には、アルコール溶剤中で、アルキルシリケートまたはアリルシリケートの部分加水分解物に、アルカリ化合物(例えばナトリウムアルコラートまたはその水酸化物など)を添加して使用することを特徴とする。ナトリウムアルコラートは、強アルカリであるが、アルキルシリケートまたはアリルシリケートなどの金属アルコキシド類を加水分解させることなく、均一に溶解させることができる。
本発明の被膜の硬化機構(被膜形成機構)は以下のように推察される。
すなわち、ナトリウムアルコラートとして例えばナトリウムエチラート(CONa)、アルキルシリケートとして例えばエチルシリケートが部分加水分解されアルコールに混合した溶液のアルコールを除去する過程で、アルコールの沸点付近で、アルコールの存在の下で、Naが酸化することなしに、Naイオンを核としてSiOは結晶化する。
本発明の被膜中における、このアルカリ化合物の含有量については、金属換算(例えば、アルカリ化合物の金属がナトリウムの場合はNa換算)で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは6〜20重量%の範囲である。1重量%未満では、溶液が酸性となりシリカゲルとなり、このアルカリ金属アルコキシド由来の金属酸化物の含有量が不足し、所望の該被膜を形成しない場合があり、一方、25重量%を超えると、金属アルコキシド由来の金属が形成する結晶の空隙の容量をアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の体積が超過して、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を核とした該被膜を形成しない場合がある。また6〜10重量%の範囲であっても良い。
〔アルコールについて〕
金属アルコキシド類およびアルカリ化合物を溶解するアルコール溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルメチルセロソルブ、フェニルエチルセロソルブなどを挙げることができる。
〔アミノ有機化合物について〕
なお、本発明の該被膜のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元性を増すため、アルコール溶液に、アミノ有機化合物を添加することができる。アミノ有機化合物としては、アミノシラン、ウレイドシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。ここで、シランカップリング剤を使用する場合には、2点架橋シラン(ジメチルエトキシシランなど)と3点架橋シラン(トリメトキシシランなど)とにより架橋点をコントロールすることにより、塗布、重合時の収縮にともなう亀裂の発生を防止することが好ましい。該シランカップリング剤を水および/または有機溶剤に溶解または分散させて、溶液に添加して使用することが好ましい。
上記の目的で使用される有機溶剤としては、アルコール溶剤などが挙げられる。上記、シランカップリング剤の使用量は、溶液に対して、2点架橋シランと3点架橋シランを、上記金属アルコキシド類に対し、通常、合計で1〜10重量%程度、好ましくは3点架橋シランを1〜5重量%および2点架橋シランを1〜3重量%で制御することが好ましい。
また、該被膜を形成する溶液は、種々の目的で上記以外の添加物を添加することができ、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはシリコーンオイルを添加することにより、物体の表面張力の調整、物体の粘結性の向上が可能となる。ジアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
ジアルコキシシランおよび/またはシリコーンオイルの添加量は、本発明の溶液の上記金属アルコキシド類に対して、好ましくは合計で1〜5重量%である。
さらに、本発明の該被膜を形成する溶液には、有機物、無機質微粒子(以下、「微粒子」ともいう)を添加することができる。
添加可能な有機物としては、ポリエチレングリコール、無機物微粒子としては、ヒュームドシリカ、ZrO、TiO、Alが好ましい。これらの添加量は、本発明の溶液の上記金属アルコキシド類に対し、添加物の比重と粒度によるが、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
((x2)砂)
砂としては、通常、鋳型に使われるものであれば、使用することが可能である。代表的には、熱膨張の少ないアルミノシリケート(Al/SiO=40/60(質量比))である。熱膨張を管理することによりシリカも使用できる。例えば、セラビーズ650#(セラビーズ社製)である。
(乾燥)
本発明に係るアルコール溶液に砂を配合し、その後アルコールを除去することにより、本発明に係る錯体が被膜された砂が得られる。砂を配合した場合の乾燥条件は、大気中、真空下、不活性ガス中のいずれかの雰囲気にて常温からアルコールの沸点まで間の任意の温度で乾燥処理を行うことができるが、好ましくは40〜60℃である。さらに結晶核を得るために120〜200℃にて40〜60分間加熱することができる。配合する砂の比率は、砂を配合する前のアルコール溶液100重量部に対して、砂400〜800重量部であることが好ましい。
アルコールの乾燥除去の過程で、被膜上のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は、金属の結晶核内部に取り込まれる。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と、結晶核を形成する金属がNaとSiO2の組み合わせの場合、Na/SiO2=0.3〜1.0の配合比率が、被膜の生成時に還元剤としての反応性を維持するため、好ましい。
(鋳型有機材料)
鋳型有機材料とは、(X)被膜砂と有機高分子バインダーを含むものである。
被膜砂と有機高分子バインダーを混合して、成形して鋳型とすることができる。このように成形された鋳型は、溶湯に接すると、瞬時にトリジマイト結晶に転移し、1470℃までの安定した耐熱性を有する鋳型を得ることができる。本発明では、セラミック背面型のキャビティ面に鋳型有機材料を固着させて用いる。必要に応じて、中子表面に鋳型有機材料が存する中子を用いる。
有機高分子バインダーとしては、通常、鋳型の原料に用いられるバインダーとしての有機高分子材料であれば特に規定されないが、例えば、フェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂が挙げられる。フェノールウレタン樹脂を用いる場合には、例えば、その原料としてポリオール樹脂とポリイソシアナートを添加して、砂と混合するときにフェノールウレタン樹脂としてもよい。添加量は砂100質量部に対し3〜5質量部であることが望ましい。
(固着)
背面型に鋳型有機材料を固着させる方法については、公知の方法を用いることができる。例えば、鋳型有機材料を背面型のキャビティ面全体に吹き込み、次いで硬化剤(例えば、アミン硬化剤であるエタノールアミン)を吹き込んで固着させることができる(吹き込み成形)。また、鋳型有機材料をキャビティ面に対応する形状に前もって成形したものを、キャビティ面に張り付けて固着することができる。
〔(B)加熱工程について〕
(B)有機鋳型全体を加熱せず、有機鋳型のキャビティ面のみを加熱して、有機鋳型のキャビティ面を1000℃以上に加熱する加熱工程について説明する。必要に応じて、中子表面も加熱する。
(加熱方法、加熱時間、加熱温度)
一般的な方法であるセラミックモールドやロストワックス法では、無機物をスラリー状にして、鋳型に塗布し、12時間以上、乾燥・熟成した後、焼成炉に入れ、1000℃以上で1時間以上焼成する。鋳型は傷み、無機物は再利用できない。
本発明では、キャビティ面に特定の鋳型有機材料を固着させていることから、有機鋳型のキャビティ面を加熱するだけで鋳造が可能である。よって、上記の一般的な方法のように、鋳型全体を焼成炉に入れ、加熱する必要がない。従って、本発明では、短時間で鋳造できるため、生産効率が良い。また、鋳型全体を加熱・焼成しないため、鋳型の傷みが小さく、鋳型を再利用することができる。また、鋳型全体を加熱・焼成しないため、石膏やワックス等の鋳型材料が不要となり、鋳型材料の使用を少なくすることができる。また、特定の被膜砂を含む鋳型有機材料は、再利用が可能である。
本発明では、有機鋳型のキャビティ面を加熱するだけで鋳造が可能であることから、加熱時間を1時間未満とすることができ、30分以下が好ましく、15分以下が好ましく、5分以下が好ましく、3分以上5分以下が好ましい。
加熱装置は、加熱バーナーなどの公知の装置を使用することができる。また、キャビティ面の形状に対応するように、小型の加熱バーナーを複数備える装置を用いることができる。短時間で加熱し、キャビティ面の凹形状部分も十分に加熱するため、複数孔のバーナー口を有するエアリッチ(過剰空気)バーナーが好ましい。バーナー口の孔数は、キャビティ面の大きさや形状により適宜設定することができるが、少なくとも複数(2以上)あることが好ましい。炎を吹き付ける空気としては、バーナー温度を上げるため、酸素濃度の高い空気を使用することができる。
キャビティ面の加熱温度は、注湯する金属の種類等により適宜、設定することができる。本発明では、鋳物に熱間亀裂が発生しないように、1000℃以上の温度まで加熱する。
必要に応じて、中子表面も加熱する。加熱方法、加熱時間、加熱温度は、上記の鋳型の場合と同様である。
図4は、本発明の加熱工程の一例を示す図である。
〔(C)型締め工程(クランプ工程)について〕
(C)常温雰囲気下で、加熱した有機鋳型を型締めする型締め工程(クランプ工程)について説明する。型締めとは、必要に応じて中子を所定の位置に挟み込み、キャビティ面を内側として鋳型を固定することである。中子や鋳型の型締め機構や、型締め作業は、公知の機構・方法で行うことができる。
一般的な方法であるセラミックモールドやロストワックス法では、鋳型を焼成炉に入れ、鋳型全体を高温(例えば1000℃以上)とするため、型締め工程は、鋳型が高温の状態で行う必要がある。そのため、鋳型が変形することに起因して、金型鋳造と同等の薄肉鋳鋼の製造が難しく、バリを除去する作業が必要であった。また、作業の労力も大きかった。
本発明では、鋳型全体を加熱しないことから、常温下で型締め工程が可能である。そのため、鋳型の変形がほとんどないため、金型鋳造と同等の薄肉鋳鋼の製造が可能となり、バリのない鋳物を得ることができる。また、作業の労力も小さくできる。
常温下とは、例えば焼成炉のように鋳型全体を加熱するために加熱された雰囲気を含まない意味である。鋳造を行う作業場では、通常、その他の加熱作業(例えば、キャビティ面の加熱作業や、鋳物原料である金属を溶かす作業)を伴うことから、常温下とは概ね40℃以下の雰囲気をさす。
〔(D)注湯工程及び、(E)冷却工程について〕
(D)金属溶湯を注湯する注湯工程及び、(E)注湯された金属溶湯を固化させるために有機鋳型を冷却させる冷却工程について説明する。
注湯工程は、公知の方法で行うことができる。金属溶湯の温度は、一般的に1700℃付近であるが、注湯する金属の種類等により適宜、設定することができる。
また、キャビティ内の空気を外部に排出するために減圧しながら、金属溶湯を注湯することができる。減圧状態のキャビティ内に注湯することにより、薄肉鋳物を製造できる。減圧機としては、一般の機器を使用できる。減圧の程度としては、特に規定はないが、好ましくは400Torr(53.3KPa)以上であり、400〜500Torr(53.3〜66.7KPa)で十分である。薄肉鋳物とは、最も薄い部分が、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.6mm以下である。
冷却工程は、公知の方法で行うことができる。例えば、鋳型を常温下で放冷することにより行われる。
〔型ばらし工程(F)及び、中子除去工程(G)について〕
型ばらしをして鋳物を得る型ばらし工程(F)及び、中子を除去する中子除去工程(G)について説明する。
冷却工程により金属が固化したら、鋳型の固定を解除して(型ばらし)、内容物(鋳型)を得る。中子がある場合には、内容物(鋳型)から中子を除去して、鋳型を得る。
〔本発明の高温鋳型を用いた鋳造方法で得られる鋳物について〕
本発明の鋳造方法は、(B)有機鋳型全体を加熱せず、有機鋳型のキャビティ面のみを加熱して、有機鋳型のキャビティ面を1000℃以上に加熱することができ、(C)常温下で有機鋳型を型締めすることができる。
そのため、この鋳造方法により得られる鋳物は、熱間亀裂が発生せず、金型鋳造と同等の薄肉鋳鋼することができる。
さらに、本発明の鋳造方法は、加熱・焼成時間が短く、乾燥・熟成時間が不要で、鋳型材料を少なくできることから、効率よく、安価に鋳物を生産することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、実施例により限定されるものではない。
〔(A)有機鋳型を得る工程について〕
(MX溶液の調製)
テトラエトキシシラン(ワッカー社製、エチルシリケート40)200gを内容量2リットルの密閉可能な混合容器に分取し、これにi−プロピルアルコール100gを添加し、スターラーを用いて密閉状態で室温で10分間撹拌し、次に25℃で30分間攪拌することによりテトラエトキシシランの加水分解を行い、さらにその後、25℃で6時間密閉状態で保持し、加水分解率30%のテトラエトキシシラン加水分解溶液を調製した。
次に、このテトラエトキシシラン加水分解溶液に21重量/重量%濃度のCONaのエタノール溶液35.1gとi−プロピルアルコール344.9gとを添加し、スターラーを用いて密閉状態で25℃で30分間撹拌し、溶液を調製した。この溶液をMX溶液と称する。このMX溶液は、金属アルコキシド類の含有量はSiO2換算で20重量%、アルカリ金属のアルカリ化合物の含有量はNa換算で6重量%のアルコール(i−プロピルアルコール)溶液(MX溶液)である。
砂(セラビーズ650#、内外セラビーズ社製)100質量部に対してMX溶液25質量部の割合で混合し、大気中で、40℃で60分間乾燥させ、MX溶液の乾燥物で被膜された被膜砂(X)を得た。
(鋳型有機材料の調整及び固着)
常温(22℃)で、(X)被膜砂100質量部に対して、ポリオール樹脂(保土ヶ谷アシュランド社製)2.2質量部とポリイソシアネート(硬化剤、保土ヶ谷アシュランド社製)2.2質量部を混合し、鋳型有機材料を得た。
この鋳型有機材料を圧縮空気により、鋳型のキャビティ面に吹き込んで、吹き込み成形をした。成形後、鋳型有機材料を硬化させるため、アミノ硬化剤(エタノールアミン0.05質量%含有)を吹き込んだ。
〔(B)加熱工程について〕
(中子の製造方法)
棒状の中子支えに、所定の形状に鋳型有機材料を整え、加熱して固化させ、中子表面に鋳型有機材料を存する中子を得た。
(有機鋳型及び中子の加熱方法)
有機鋳型のキャビティ面及び中子表面にバーナーを当て、表面温度が1000℃以上になるまで加熱した。有機鋳型のキャビティ面及び中子表面の近くまでバーナーと設置したところ、加熱時間は5分以下であった。図4に、実際の加熱工程の様子を示す。下部にキャビティ面を上方に向けた鋳型を置き、上部より加熱バーナーで加熱している状態を示す。加熱バーナーは、複数孔のバーナー口を有するエアリッチ(過剰空気)バーナーである。
〔(C)型締め工程(クランプ工程)について〕
次いで、中子を所定の位置に来るように有機鋳型に挟み込み、有機鋳型のキャビティ面を内側のなるように所定の位置に合わせて固定(型締め)した。
〔(D)注湯工程について〕
1700℃以上の熔鋼を、型締めした有機鋳型の注湯部から、内部に注いだ。この際、ロータリーコンプレッサーを使用し、400〜500Torr(53.3〜66.7KPa)で減圧し、キャビティ内の空気を外部に排出しながら、注湯した。
〔(E)冷却工程について〕
その後、内部の鋼が室温になるまで放冷した。冷却時間は、60分であった。
〔(F)型ばらし工程及び、(G)中子除去工程について〕
有機鋳型の固定を外して(型ばらし)、中子が付いた鋳物を取り出した。次いで、取り出した鋳物から中子を除去して、鋳物を得た。
得られた鋳物は、熱間亀裂もなく、良好な形状を示した。有機鋳型のキャビティ面や背面型は、劣化した様子もなく、再利用可能であった。鋳物の肉厚(最も薄い部分)に1.6mmであった。
〔抗折試験について〕
鋳型有機材料の有用性を確認するため、抗折試験を行い、熱間強度を測定した。
(CB Sand Mold)
本発明に用いられる鋳型有機材料を用意した。
本発明に用いられる被膜砂95質量部、フェノール樹脂5質量部を混合し、混合物を得た。次いで、この混合物を成形し、10×10×50mmの大きさのテストピースを得た。
(通常の有機鋳型の材料の調製)
比較例として、通常の鋳型に用いられる鋳型有機材料を用意した。この鋳型有機材料に用いられる砂は、(x1)アルコール溶液を使用していない砂である。
通常の鋳型に用いられる砂97.8質量部、フェノール樹脂2.2質量部を混合し、混合物を得た。次いで、この混合物を成形し、10×10×50mmの大きさのテストピースを得た。
(試験方法、熱間強度の測定方法)
両者のテストピースを、200℃・60分または、1000℃・60分で加熱して、加熱後のテストピースの熱間強度を測定した。熱間強度は、抗折力試験機(型式;デジタルフォースゲージ(ZP/Z2)、株式会社イマダ製)を用いて行った。なお、通常の有機鋳型の材料を用いたテストピースでは、加熱前の熱間強度を測定した。
(結果、考察)
図5に示すとおり、本発明に用いられる鋳型有機材料を用いたテストピース(CB Sand Mold)は、1000℃においても、十分な強度を示した。一方、通常の鋳型に用いられる鋳型有機材料を用いたテストピース(通常の有機鋳型)は、200℃で十分な強度が得られたものの、1000℃では消失した(図示せず)。
以上より、本発明に用いられる鋳型有機材料を用いた鋳型は、1000℃以上の温度で加熱する鋳造方法に有効であることがわかった。言い換えれば、本発明に用いられる鋳型有機材料は、高温下での抗折強度を付加するのに有効であることがわかった。
一方、通常の鋳型に用いられる鋳型有機材料を用いた鋳型は、1000℃以上の温度で加熱する鋳造方法には使用できないことがわかった。
本発明の高温鋳型を用いた鋳造方法は、鋼の薄肉鋳造品を効率よく製造することに利用可能である。
10 有機鋳型
11 背面型
12,22 鋳型有機材料
20 中子
21 支持棒

Claims (9)

  1. 以下の工程(A)〜(F)を含む、高温鋳型を用いた鋳造方法:
    (A)セラミック背面型のキャビティ面に、下記(X)被膜砂と有機高分子バインダーとを含む鋳型有機材料を固着させ、有機鋳型を得る工程;
    (B)有機鋳型全体を加熱せず、有機鋳型のキャビティ面のみを加熱して、有機鋳型のキャビティ面を1000℃以上に加熱する加熱工程;
    (C)常温雰囲気下で、加熱した有機鋳型を型締めする型締め工程;
    (D)金属溶湯を注湯する注湯工程;
    (E)注湯された金属溶湯を固化させるために有機鋳型を冷却させる冷却工程;
    (F)型ばらしをして鋳物を得る型ばらし工程;

    (X)被膜砂:(x1)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルコラートおよび/またはアルカリ土類金属のアルコラートとを含むアルコール溶液と(x2)砂との混合物から、アルコールを乾燥除去して得られる被膜砂。
  2. 中子表面に、(X)被膜砂と有機高分子バインダーとを含む鋳型有機材料を存する中子を用いて、
    (B)加熱工程において、有機鋳型全体を加熱せず、有機鋳型のキャビティ面のみ及び中子を加熱して、有機鋳型のキャビティ面及び中子表面を1,000℃以上に加熱し、
    (C)型締め工程において、常温雰囲気下で、加熱した有機鋳型及び中子を、有機鋳型に中子を挟んだ状態で型締めし、
    (F)型ばらし工程の後に、さらに(G)鋳物から中子を除去する中子除去工程を含む、
    請求項1に記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  3. (B)加熱工程における加熱時間が1時間未満である、請求項1または2に記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  4. (A)工程において、鋳型有機材料を吹き込み成形により固着させる、請求項1から3のいずれかに記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  5. (D)注湯工程において、キャビティ内の空気を外部に排出するために減圧しながら、金属溶湯を注湯する請求項1から4のいずれかに記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  6. (X)被膜砂における金属アルコキシド類が、一般式R Si(OR) 4−m (ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である請求項1に記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  7. (X)被膜砂におけるアルコール溶液中のアルカリ金属のアルコラートおよび/またはアルカリ土類金属のアルコラートの含有量が、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属換算で、6〜20重量%である請求項1から6のいずれかに記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  8. (X)被膜砂におけるアルコール溶液中の金属アルコキシド類の含有量が、金属酸化物換算で、2〜30重量%である請求項1から7のいずれかに記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
  9. (X)被膜砂におけるアルコール溶液中に有機アミン化合物を含み、有機アミン化合物の含有量が、金属アルコキシド類に対して、1〜10重量%添加された請求項1から8のいずれかに記載の高温鋳型を用いた鋳造方法。
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