JP2007030039A - 耐熱性粒状セル被覆層の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳造工程における注湯時に発生する溶湯と鋳型との焼着を防止し、鋳造工程の
簡略化と、鋳造後の仕上げ工程の大幅な省略が可能にし、また鋳型に高温耐熱強度を与
え、高品質の鋳造品が製造可能な、耐熱性粒状セル被覆層形成法を提供すること。
【解決手段】周期律表4A族または4B族(炭素を除く)と3A族または3B族の金属アルコキシドおよびその加水分解物から選ばれた1種または2種類以上の金属アルコキシド類とアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液からなるバインダーを微粒化スプレーにより、物体に塗布する耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
【選択図】なし
簡略化と、鋳造後の仕上げ工程の大幅な省略が可能にし、また鋳型に高温耐熱強度を与
え、高品質の鋳造品が製造可能な、耐熱性粒状セル被覆層形成法を提供すること。
【解決手段】周期律表4A族または4B族(炭素を除く)と3A族または3B族の金属アルコキシドおよびその加水分解物から選ばれた1種または2種類以上の金属アルコキシド類とアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液からなるバインダーを微粒化スプレーにより、物体に塗布する耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、物体へ、特定のバインダーをスプレーにより塗布することにより、耐熱性粒状セル被覆層を形成する方法に関する。
これにより、鋳型へ本発明のバインダーを塗布した場合、鋳型表面に耐熱性粒状被覆層を形成することができ、鋳造時に発生する溶融金属による焼着を防止でき、鋳造後の砂ばらしを容易にし、さらに、鋳型表面に被覆されたバインダーは、200℃で鋳型の有機粘結剤と反応し、有機シラン化合物を生成し、その耐熱強度により、熱変形を防止することが可能である。さらに、バインダーの粒状セル被覆層の密度により、中子からのガス発生を抑制することができる。また、冷し金の表面に耐熱性粒状セル被覆層を形成させることにより、冷し金、表面の結露が防止でき、さらに、鋳造時に溶湯金属による侵食が防止できる。
これにより、鋳型へ本発明のバインダーを塗布した場合、鋳型表面に耐熱性粒状被覆層を形成することができ、鋳造時に発生する溶融金属による焼着を防止でき、鋳造後の砂ばらしを容易にし、さらに、鋳型表面に被覆されたバインダーは、200℃で鋳型の有機粘結剤と反応し、有機シラン化合物を生成し、その耐熱強度により、熱変形を防止することが可能である。さらに、バインダーの粒状セル被覆層の密度により、中子からのガス発生を抑制することができる。また、冷し金の表面に耐熱性粒状セル被覆層を形成させることにより、冷し金、表面の結露が防止でき、さらに、鋳造時に溶湯金属による侵食が防止できる。
自動車部品は、燃費効率の向上のために、部品の軽量化が求められている。このため、中空形状の鋳造に使用する自動車用シリンダーブロックのジャケットなどの中子は非常に薄くなっている。一方、中子に使用される鋳型は、有機バインダーで結合されている砂型である。鋳造の際、一瞬にして高温の溶融金属に曝されるため、鋳型表面は、過酷な耐熱性と耐熱衝撃性が要求される。
このため、耐火物骨材を有機分散剤に混ぜ、鋳型表面に塗布する、いわゆる塗型を使用している。しかしながら、従来の塗型は、目止めの効果はあるが、分散剤に耐熱性がなく、鋳型の耐熱性、耐衝撃性を改善するには限界がある。
このため、耐火物骨材を有機分散剤に混ぜ、鋳型表面に塗布する、いわゆる塗型を使用している。しかしながら、従来の塗型は、目止めの効果はあるが、分散剤に耐熱性がなく、鋳型の耐熱性、耐衝撃性を改善するには限界がある。
近年に至り、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、これに、アルコキシシラン類を含浸させて、次いで、これを乾燥させ高温焼成して、耐火物成形品を得て、これを中子や鋳型に用いて鋳物を鋳造する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この方法では、高温焼成の工程を必要とし、工程が複雑となるという問題がある。
しかしながら、この方法では、高温焼成の工程を必要とし、工程が複雑となるという問題がある。
さらに、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、成形品表面にアルコキシシランを塗布、含浸し、乾燥し、鋳物を鋳造する方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、塗布、含浸では、成形品素体の表面の骨材の粒間で重縮合時にネットワークが切れ、完全な被覆が出来ず、効果が不安定であるという問題がある。
特許第3139918号公報
特開2002−143983号公報
しかしながら、塗布、含浸では、成形品素体の表面の骨材の粒間で重縮合時にネットワークが切れ、完全な被覆が出来ず、効果が不安定であるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、以下の目的を達成するための耐熱性皮膜の形成方法を提供することを目的とする。
(a)耐熱性皮膜が容易に形成できる。
(b)鋳型にバインダーを塗布した際、鋳造用鋳型を形成する表面の砂粒間に耐熱性粒状セル層を形成し、溶融金属の注湯によって曝される砂粒間を粘結する耐熱性の無い有機バインダーの特性(崩壊性など)を損なうことなく鋳型表面の耐熱性を向上させることができる。
(c)浸漬や、スプレーを用いない塗布では、鋳型内部にまでアルコキシシランが浸透し、塗布後の乾燥工程を要するが、スプレーによるバインダー塗布では、鋳型表面に付着する前に、空気中の水分によって瞬時に加水分解されるため、アルコール溶媒が内部にまで浸透しないため、表面塗布後の乾燥工程を省略することができる。
(d)浸漬や、スプレーを用いない塗布による耐熱性粒状セル膜では、アルコキシシランは、鋳型表面層のみの縮合重合であるが、スプレーによるバインダーの塗布では細粒状のため表面積が大きく、また積層されるため、鋳型表面の砂粒間の充填性が改善され、耐熱性皮膜のネットワークが切れることなく、鋳型表面の耐熱性が飛躍的に向上する。
(e)低温から高温までの広い温度範囲において強度を有するため、軽合金から鋳鋼品までの鋳造に利用できる。
(f)鋳造品の凝固調節に使用される冷し金の表面にスプレーによりバインダーを塗布することにより、結露による錆、および、鋳物のキラワレ不良(図9写真)の防止、冷し金表面の注湯による侵食が防止できる。
(g)親アルコール素材、親水性素材の薄膜に塗布し、素材の収縮を伴うこと無しに耐熱性皮膜を形成することができる。
(a)耐熱性皮膜が容易に形成できる。
(b)鋳型にバインダーを塗布した際、鋳造用鋳型を形成する表面の砂粒間に耐熱性粒状セル層を形成し、溶融金属の注湯によって曝される砂粒間を粘結する耐熱性の無い有機バインダーの特性(崩壊性など)を損なうことなく鋳型表面の耐熱性を向上させることができる。
(c)浸漬や、スプレーを用いない塗布では、鋳型内部にまでアルコキシシランが浸透し、塗布後の乾燥工程を要するが、スプレーによるバインダー塗布では、鋳型表面に付着する前に、空気中の水分によって瞬時に加水分解されるため、アルコール溶媒が内部にまで浸透しないため、表面塗布後の乾燥工程を省略することができる。
(d)浸漬や、スプレーを用いない塗布による耐熱性粒状セル膜では、アルコキシシランは、鋳型表面層のみの縮合重合であるが、スプレーによるバインダーの塗布では細粒状のため表面積が大きく、また積層されるため、鋳型表面の砂粒間の充填性が改善され、耐熱性皮膜のネットワークが切れることなく、鋳型表面の耐熱性が飛躍的に向上する。
(e)低温から高温までの広い温度範囲において強度を有するため、軽合金から鋳鋼品までの鋳造に利用できる。
(f)鋳造品の凝固調節に使用される冷し金の表面にスプレーによりバインダーを塗布することにより、結露による錆、および、鋳物のキラワレ不良(図9写真)の防止、冷し金表面の注湯による侵食が防止できる。
(g)親アルコール素材、親水性素材の薄膜に塗布し、素材の収縮を伴うこと無しに耐熱性皮膜を形成することができる。
本発明は、周期律表4A族または4B族(炭素を除く)と3A族または3B族の金属アルコキシドおよびその加水分解物から選ばれた1種または2種類以上の金属アルコキシド類とアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液からなるバインダーを微粒化スプレーにより物体に塗布する耐熱性粒状セル被覆層の形成方法に関する。
ここで、上記バインダーにシランカップリング剤が添加されていることが好ましい。
また、上記バインダーに有機バインダー、または有機バインダーと無機質微粒子が添加混合されていることが好ましい。
さらに本発明は、上記物体が、珪砂、ムライト、アルミナ、石英、ジルコン、溶融シリカ、シリカフラワーおよびシャモットの群から選ばれた少なくとも1種の骨材と、有機粘結剤、または無機粘結剤によって成形された鋳造用鋳型である耐熱性粒状セル被覆層の形成方法である。
上記物体は、金属、プラスチックフィルム、または紙、木材などの有機物であっても良い。
また、上記物体上には、あらかじめ前記有機バインダーを塗布した後、耐熱性粒状セル被覆層を形成しても良い。
ここで、上記バインダーにシランカップリング剤が添加されていることが好ましい。
また、上記バインダーに有機バインダー、または有機バインダーと無機質微粒子が添加混合されていることが好ましい。
さらに本発明は、上記物体が、珪砂、ムライト、アルミナ、石英、ジルコン、溶融シリカ、シリカフラワーおよびシャモットの群から選ばれた少なくとも1種の骨材と、有機粘結剤、または無機粘結剤によって成形された鋳造用鋳型である耐熱性粒状セル被覆層の形成方法である。
上記物体は、金属、プラスチックフィルム、または紙、木材などの有機物であっても良い。
また、上記物体上には、あらかじめ前記有機バインダーを塗布した後、耐熱性粒状セル被覆層を形成しても良い。
本発明によれば、バインダーを塗布したあと、さらに乾燥、焼成するという工程が簡素化されるほか、フェノールウレタン樹脂を有機バインダーとするコールドボックス鋳型に対してもアルコール溶媒による鋳型の融解損傷も回避できる。
さらに、鋳型(あるいは中子)を、溶融金属の注湯によって、有機鋳型の特性(崩壊性など)を損なうことなく、鋳型表面の耐熱性を向上することができる。200℃〜300℃の比較的温度の高い鋳型でも有機バインダーの耐熱性が維持できるため、鋳造品の薄肉化が可能となり、さらに低温から高温までの広い範囲において強度を有するため、軽合金から鋳鋼までの鋳造に利用できる。
さらに、鋳型(あるいは中子)を、溶融金属の注湯によって、有機鋳型の特性(崩壊性など)を損なうことなく、鋳型表面の耐熱性を向上することができる。200℃〜300℃の比較的温度の高い鋳型でも有機バインダーの耐熱性が維持できるため、鋳造品の薄肉化が可能となり、さらに低温から高温までの広い範囲において強度を有するため、軽合金から鋳鋼までの鋳造に利用できる。
本発明の工程は、周期律表4A族または4B族(炭素を除く)と3A族または3B族の金属アルコキシドおよびその部分加水分解物から選ばれた1種、または2種類以上の金属アルコキシド類と、アルカリ金属または、アルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液からなるバインダーを、鋳型素体、金属素体、有機物素体、無機物素体などの物体にスプレー塗布し、耐熱性粒状セル被覆層を形成する工程である。
本発明の工程に用いるバインダーは、アルコール溶剤中にバインダー成分として、一般式RmM1(OR)4-mまたはM2(OR)3(ただし、式中M1は周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属を示し、M2は周期律表3A族または3B族の金属を示し、Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、M1がSiの場合にはm=0〜3の整数であって、M1がSi以外の場合にはm=0である)で表されるアルコール可溶性の金属アルコキシドおよびその部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の金属アルコキシド類を金属酸化物換算で1〜50重量%と、下記一般式M3OR´またはM4(OR)2(ただし、式中M3はアルカリ金属を示し、M4はアルカリ土類金属を示し、R´は水素または炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるアルコール可溶性のアルカリ化合物を金属酸化物換算で1〜16重量%とを含有するものである。
本発明において、バインダー成分を構成する金属アルコキシドは、周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属M1または周期律表3A族または3B族の金属M2の金属アルコキシドまたはそれらの部分加水分解物である。ここで、金属アルコキシドを形成する金属M1としては、周期律表4A族金属としてTi、Zrなどを挙げることができ、また、炭素以外の周期律表4B族金属としてSi、Ge、Sn、Pbなどを挙げることができ、そしてM2としては、周期律表3A族金属としてSc、Yなどを挙げることができ、さらに、3B族金属としてB、Al、Gaなどを挙げることができる。
また、上記金属アルコキシドを形成するRは、互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基である。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基などを、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基などを、さらに、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、メトキシイソプロピル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基などを、またアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基、トリロキシメチル基、トリロキシエチル基、トリロキシプロピル基、トリロキシブチル基などを挙げることができる。
そして、このような金属アルコキシドの部分加水分解物としては、それが加水分解率55%以下であってアルコール溶剤に溶解すれば特に制限はなく、直鎖状部分加水分解物であっても、網目状部分加水分解物であっても、また、環状部分加水分解物であっても良い。さらに、これら金属アルコキシドおよびその部分加水分解物からなる金属アルコキシド類は、その1種のみを単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物として使用することもできる。
本発明において、上記金属アルコキシド類として最も好ましいものは鋳型砂の成分であり、砂との結合が容易であるという点から、一般式RmSi(OR)4-m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である。
具体的には、テトラアルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、メトキシトリイソプロポキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、メトキシトリプトキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルトリアルコキシシランとして、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリプトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
また、ジアルキルジアルコキシシランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジプトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシランなどを挙げることができ、また、トリアルキルアルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
さらに、アリールオキシシランとして、テトラフェノキシシラン、テトラトリロキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルアリールオキシシランとして、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、メチルトリトリロキシシランなどを挙げることができる。
さらにまた、アルコキシアルキルシランとして、テトラメトキシメチルシラン、テトラメトキシエチルシラン、テトラメトキシイソプロピルシラン、テトラエトキシメチルシラン、テトラエトキシエチルシラン、テトラエトキシイソプロピルシランなどを挙げることができ、また、アリールオキシアルキルシランとして、テトラフェノキシメチルシラン、テトラフェノキシエチルシラン、テトラフェノキシプロピルシラン、テトラフェノキシイソプロピルシラン、テトラトリロキシエチルシランなどを挙げることができる。
そして、その他の好ましい金属アルコキシド類としては、トリメチルボリン、トリエトキシボリン、テトラブトキシチタン、テトラブトキシジルカン、トリイソプロポキシアルミンなどが挙げられる。
これらの金属アルコキシド類の含有量については、金属酸化物換算(例えば、金属アルコキシド類が珪酸エステル類の場合はSiO2換算)で1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の範囲であるのがよく、1重量%より少ないと、鋳型素体とした際にこの金属アルコキシド類由来の金属酸化物の含有量が不足し、鋳型(中子)取り扱い時のハンドリングに必要な所望の強度(例えば、10kg/cm2以上、好ましくは30kg/cm2以上)の鋳型素体を得ることができず、一方、50重量%を超えると、溶解度の点からアルカリ化合物の溶解量が0.5重量%未満になり、所望の強度が得られない。
また、他のバインダー成分であるアルカリ化合物については、金属M3としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができ、好ましくはナトリウム、カリウムを挙げることができる。また、このアルカリ金属アルコキシドを形成する置換基R´としては、水素またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルキル基、またはフェノキシ基、トリロキシ基、またはアルコキシアルキル基またはアリールオキシアルキル基などを挙げることができる。これらのアルカリ化合物は、その1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上の混合物として用いても良い。
このアルカリ化合物の含有量については、金属酸化物換算(例えば、アルカリ化合物の金属がナトリウムの場合はNa2O換算)で0.5〜16重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。0.5重量%より少ないと、鋳型素体とした際にこのアルカリ金属アルコキシド由来の金属酸化物の含有量が不足し、所望の強度(例えば、10kg/cm2以上、好ましくは30kg/cm2以上)の鋳型素体を得ることができず、一方、16重量%を超えると、溶解度の点からSiO2の溶解量が1重量%未満になり、所望の強度が得られない。
さらに、上記バインダー成分の金属アルコキシド類およびアルカリ化合物を溶解するアルコール溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロビルセロソルブ、プチルセロソルブ、フェニルメチルセロソルブ、フェニルエチルセロソルブなどを挙げることができる。
本発明は、上記バインダーを物体へスプレーにより噴射塗布することを特徴とする。
本発明の工程でスプレー塗布されるバインダーは、噴出直後に圧搾空気と加水分解反応し、粉状となる。この粉状のバインダーは、物体の水酸基と結合し、付着し、自らは直ちに重、縮合反応により耐熱性粒状セル層を形成する。この時、物体の表面温度が常温または、バインダーの沸点温度(80℃)以下であることが必要である。
従来、鋳型素体に浸漬、減圧含浸、シャワー状に吹き付ける方法、刷毛による塗布が提案されているが、いずれも、塗布後、加水分解反応が起きるため、アルコール溶剤を除去するための乾燥工程を要する。また、内部に浸透したバインダーは、表面層の耐熱性皮膜形成には効力が無く、素体表面に形成するバインダーの加水分解層の表面積は小さく、また、アルコールの蒸発と、重、縮合時の収縮により、加水分解層に亀裂が発生し、表面の耐熱性皮膜は切断される。本発明は、バインダーの塗布前、または、塗布時に加水分解を行うことにより、表面層に、加水分解した微粒のセル状のバインダーを積層させることにより、表面積が非常に大きく、かつ、緻密な耐熱性粒状セル皮膜層が形成することができるものである。
しかし、物体が、アルコールが揮発する温度の場合、物体表面の水酸基と結合する前に、SiO2となり、飛散する。また、本発明は、バインダーが、粉状で付着するため、素体内部にまで浸透することがないため、その後の乾燥工程は、省略することができる。
本発明において、乾燥工程は省略可能だが、物体に、バインダーが付着した後の乾燥工程は、耐熱性皮膜の付着をより強固にする。
本発明の工程でスプレー塗布されるバインダーは、噴出直後に圧搾空気と加水分解反応し、粉状となる。この粉状のバインダーは、物体の水酸基と結合し、付着し、自らは直ちに重、縮合反応により耐熱性粒状セル層を形成する。この時、物体の表面温度が常温または、バインダーの沸点温度(80℃)以下であることが必要である。
従来、鋳型素体に浸漬、減圧含浸、シャワー状に吹き付ける方法、刷毛による塗布が提案されているが、いずれも、塗布後、加水分解反応が起きるため、アルコール溶剤を除去するための乾燥工程を要する。また、内部に浸透したバインダーは、表面層の耐熱性皮膜形成には効力が無く、素体表面に形成するバインダーの加水分解層の表面積は小さく、また、アルコールの蒸発と、重、縮合時の収縮により、加水分解層に亀裂が発生し、表面の耐熱性皮膜は切断される。本発明は、バインダーの塗布前、または、塗布時に加水分解を行うことにより、表面層に、加水分解した微粒のセル状のバインダーを積層させることにより、表面積が非常に大きく、かつ、緻密な耐熱性粒状セル皮膜層が形成することができるものである。
しかし、物体が、アルコールが揮発する温度の場合、物体表面の水酸基と結合する前に、SiO2となり、飛散する。また、本発明は、バインダーが、粉状で付着するため、素体内部にまで浸透することがないため、その後の乾燥工程は、省略することができる。
本発明において、乾燥工程は省略可能だが、物体に、バインダーが付着した後の乾燥工程は、耐熱性皮膜の付着をより強固にする。
本発明におけるスプレーによるバインダーの物体への塗布は、外部混合式エアスプレーガンにより行うことが好ましい。
外部混合式エアスプレーガンにおいては、バインダー噴出直後に圧縮空気とバインダーを混合して、バインダーの加水分解粒を微細化するバインダーノズル先端部に、加水分解されたバインダーが付着し、ノズルの目詰まりが発生し、稼動しなくなることを防止するため、ノズル先端部にノズル噴出口の中心に向けた多数本の空気溝を噴射方向に適当な角度で設けるなど、空気溝で分散したバインダーが拡散し、ノズル先端部に付着しないように、ノズル先端部がエアーとバインダーが完全に遮断されている構造であることが好ましい。
外部混合式エアスプレーガンとしては、アネスト岩田株式会社製 低圧スプレーガンW−100が好ましく用いられる。
外部混合式エアスプレーガンにおいては、バインダー噴出直後に圧縮空気とバインダーを混合して、バインダーの加水分解粒を微細化するバインダーノズル先端部に、加水分解されたバインダーが付着し、ノズルの目詰まりが発生し、稼動しなくなることを防止するため、ノズル先端部にノズル噴出口の中心に向けた多数本の空気溝を噴射方向に適当な角度で設けるなど、空気溝で分散したバインダーが拡散し、ノズル先端部に付着しないように、ノズル先端部がエアーとバインダーが完全に遮断されている構造であることが好ましい。
外部混合式エアスプレーガンとしては、アネスト岩田株式会社製 低圧スプレーガンW−100が好ましく用いられる。
バインダーの物体上の塗布量は、耐熱性被覆層のネットワークが切れない状況の塗布層が形成される充分な量であれば良い。好ましくは、表面の“照り”を目安とし、塗装の“ダレ”が限界として塗布量を決定する。
本発明のバインダーには、種々の目的で上記以外の添加物を添加することができ、例えば、塗布層の粘結性、含浸性の向上を目的として添加するジデシルスホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールエーテルなどのアルカリまたは中性の界面活性剤などを添加することができる。上記以外の添加物の添加量は、バインダーに対して好ましくはポリエチレングリコール#6000を10%程度である。
また、本発明のバインダーには、上記の添加剤以外に、有機バインダー、無機質の微粒子(以下、単に「微粒子」ともいう)や、シランカップリング剤を添加することができる。
上記有機バインダーとしては、例えばシェルモールド鋳造で用いられるフェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂や、自硬性のウレタン系樹脂、フラン系樹脂、アルカリフェノール系樹脂などが挙げられる。
上記微粒子としては、ヒュームドシリカなどのシリカ微粒子や、雲母、ジルコンフラワー、カーボン粉末、酸化鉄、その他のセラミック微粒子が挙げられる。
これらの微粒子は、ワニス、分子量1,500〜10,000程度のポリエチレングリコールなどの有機溶媒を用いて、分散させて用いることが好ましい。この場合、微粒子の固形分濃度は、通常、8〜30重量%程度である。本発明においてバインダー中に上記の微粒子を添加することにより、鋳型表面の砂粒間、または、表面は、鋳型内部に浸透することなく、平滑性が得られる。
上記有機バインダーと微粒子は混合して本発明のバインダーに添加することもできる。添加量は、本発明のバインダーに対し、好ましくは、上記有機バインダーが、1〜3重量%、微粒子が1〜3重量%、両者を混合して使用する場合は両者の合計で1〜3重量%である。
上記有機バインダーとしては、例えばシェルモールド鋳造で用いられるフェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂や、自硬性のウレタン系樹脂、フラン系樹脂、アルカリフェノール系樹脂などが挙げられる。
上記微粒子としては、ヒュームドシリカなどのシリカ微粒子や、雲母、ジルコンフラワー、カーボン粉末、酸化鉄、その他のセラミック微粒子が挙げられる。
これらの微粒子は、ワニス、分子量1,500〜10,000程度のポリエチレングリコールなどの有機溶媒を用いて、分散させて用いることが好ましい。この場合、微粒子の固形分濃度は、通常、8〜30重量%程度である。本発明においてバインダー中に上記の微粒子を添加することにより、鋳型表面の砂粒間、または、表面は、鋳型内部に浸透することなく、平滑性が得られる。
上記有機バインダーと微粒子は混合して本発明のバインダーに添加することもできる。添加量は、本発明のバインダーに対し、好ましくは、上記有機バインダーが、1〜3重量%、微粒子が1〜3重量%、両者を混合して使用する場合は両者の合計で1〜3重量%である。
また、上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、ウレイドシラン、エポキシシランなどが挙げられる。ここで、シランカップリング剤を使用する場合には、該シランカップリング剤を水および/または有機溶剤に溶解または分散させて、本発明のバインダーに添加して使用することが好ましい。ここでバインダーに使用される有機溶剤としては、アルコール溶剤などが挙げられる。
バインダー中にシランカップリング剤を添加することにより、本発明の工程で得られる粒状塗布層は、有機バインダーおよび/または骨材とシランカップリング剤が反応して、バインダーと物体の表面と塗布層が強固に付着させることができ、物体表面の耐熱性を向上させることができる。上記、シランカップリングの使用量は、本発明のバインダーに対して、通常1〜5重量%程度である。
バインダー中にシランカップリング剤を添加することにより、本発明の工程で得られる粒状塗布層は、有機バインダーおよび/または骨材とシランカップリング剤が反応して、バインダーと物体の表面と塗布層が強固に付着させることができ、物体表面の耐熱性を向上させることができる。上記、シランカップリングの使用量は、本発明のバインダーに対して、通常1〜5重量%程度である。
バインダーを塗布する物体としては、珪砂、ムライト、アルミナ、石英、ジルコン、溶融シリカ、シリカフラワーおよびシャモットの群から選ばれた少なくとも1種の骨材と、有機粘結剤、または無機粘結剤によって成形された鋳造用鋳型が挙げられる。この物体の表面に、スプレーによるバインダー塗布により、耐熱性粒状セル被覆層が形成される。
ここで、有機粘結剤としては、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂などが、無機粘結剤としては珪酸ソーダー、ベントナイト、粘土などが挙げられる。
ここで、有機粘結剤としては、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂などが、無機粘結剤としては珪酸ソーダー、ベントナイト、粘土などが挙げられる。
また、上記物体は、金属、プラスチックフィルムであっても良い。金属としては、鋳鉄、炭素鋼などが挙げられる。バインダーを塗布する物体が金属である場合は、結露を防止すると同時に、1,000℃以上の溶融金属に接しても耐えうる。
プラスチックフィルムとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、耐熱強度を改善する。
プラスチックフィルムとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、耐熱強度を改善する。
さらに、本発明において、バインダーをスプレーにより塗布する物体としては、紙、木材、合成樹脂などの有機物であっても良い。この場合、高温、耐熱被膜を形成し、表面耐熱性を付加する。
また、本発明では、上記有機バインダーをあらかじめ物体上に塗布した後、スプレー塗布により耐熱性粒状セル被覆層を形成することもできる。この場合、この有機バインダーと反応し、200℃で有機シリカ化合物を生成し、400℃で分解する。また、この有機シリカ化合物は、1,000℃で曝熱することにより、セラミックに結晶化する。
本発明は、冷やし金を鋳型素体にセットし、溶融金属を注湯する工程にも使用することができる。
本発明の工程で得られた耐熱性粒状セル被覆層は、200℃で、有機化合物と反応し、耐熱強度のある有機シラン化合物となる。この有機シラン化合物は400℃で分解する。
さらに、本発明の工程で得られた耐熱性粒状セル被覆層は、900℃以上の温度に曝されると、瞬時にして結晶化し、トリジマイトとなり、1,460℃まで安定した耐熱性を示す。
鋳型の表面に形成されたバインダーの耐熱性粒状セル被覆層は、1,600℃以上の高熱の溶融金属にも耐えうる皮膜を形成することができる。従来、このように形成された皮膜は、特許3139918号公報に提案されているように、高温焼成し、セラミック化しないと耐熱性が得られないとされていた。さらに、特開2002−143983号公報のように浸漬、はけ塗り、スプレーにより塗布することが提案されている。しかし、このようにして、物体に付着後、加水分解する方法では、アルコールの乾燥、重、縮合時の表面の亀裂により、表面を完全に耐熱性皮膜で覆うことが得られなかった。特に、有機バインダーにより結合されている鋳型表面では、注湯時に耐熱性皮膜の間隙から、溶湯が差し込み、内部の有機粘結剤を燃焼し、溶湯が流れ込み、焼着を発生させる。本発明の微粒状の耐熱性粒状セル被覆層は表面積も大きく、注湯時の溶湯に対して、層状の連続した耐熱性皮膜を形成できる。
さらに、本発明の工程で得られた耐熱性粒状セル被覆層は、900℃以上の温度に曝されると、瞬時にして結晶化し、トリジマイトとなり、1,460℃まで安定した耐熱性を示す。
鋳型の表面に形成されたバインダーの耐熱性粒状セル被覆層は、1,600℃以上の高熱の溶融金属にも耐えうる皮膜を形成することができる。従来、このように形成された皮膜は、特許3139918号公報に提案されているように、高温焼成し、セラミック化しないと耐熱性が得られないとされていた。さらに、特開2002−143983号公報のように浸漬、はけ塗り、スプレーにより塗布することが提案されている。しかし、このようにして、物体に付着後、加水分解する方法では、アルコールの乾燥、重、縮合時の表面の亀裂により、表面を完全に耐熱性皮膜で覆うことが得られなかった。特に、有機バインダーにより結合されている鋳型表面では、注湯時に耐熱性皮膜の間隙から、溶湯が差し込み、内部の有機粘結剤を燃焼し、溶湯が流れ込み、焼着を発生させる。本発明の微粒状の耐熱性粒状セル被覆層は表面積も大きく、注湯時の溶湯に対して、層状の連続した耐熱性皮膜を形成できる。
本発明に用いられるバインダーは、アルコール溶剤中にアルキルシリケートまたはアリルシリケートの部分加水分解物の中にアルカリ化合物、例えばナトリウムアルコラートまたはその水酸化物などを添加して使用することを特徴とする。ナトリウムアルコラートは、強アルカリであるが、アルキルシリケートまたはアリルシリケートなどの金属アルコキシド類を加水分解させることなく、均一に溶解させることができる。本発明のバインダーの硬化機構は明らかではないが、以下のように推察される。
すなわち、ナトリウムアルコラートとして例えばナトリウムエチラート(C2H5ONa)、アルキルシリケートとして例えばエチルシリケートを各必要な分量をアルコールに混合すると、例えば空気中の水などの影響により、加水分解反応が生起し、NaOHとSiO2を生成し、高温によりNa2OとSiO2を生成し、Naが転移鉱化剤として働き、SiO2はトリジマイトとして結晶化する。SiO2のトリジマイト転移温度は、867℃であり、バインダーはX線回析により、確認している。トリジマイトの結晶は1,470℃まで安定相であるが、1,670℃まで準安定相である。
粒状セル被覆層は、鋳型の表面耐熱性を補強する。
粒状セル被覆層は、鋳型の表面耐熱性を補強する。
本発明によれば、バインダーは、アルコール溶液であることから、スプレーにより圧搾空気の水分と加水分解反応により、粒状化し、粉状で鋳型素体表面の水酸基と結合し、付着する。付着した粒状のバインダー層は、バインダー成分の金属アルコキシド類から金属酸化物が生成し、また、アルカリ化合物からも金属酸化物が生成し、耐熱性のある粒状セル被覆層となる。この粒状セル被覆層は、引続き行われる溶融金属の注湯によって、金属アルコキシド類由来の金属酸化物が、Naを転移促進剤として、トリジマイト結晶化してセラミック皮膜層となり、高温耐熱性皮膜が達成されると考えられる。
以下本発明を、図面を用いてさらに具体的に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施態様の工程流れ図である。まず、有機バインダーとしてフェノール系樹脂を鋳型材(骨材)である砂に混練する(ステップ100)。この有機バインダーの添加量は、砂に対して約2.0重量%以下である。これに用いる鋳物砂(骨材)は、できるだけ熱膨張の少ない材料が望ましい。特に中子に使用する骨材は、ある程度の細かい砂が望ましく、例えば、65メッシュ程度のムライトなどが好適である。
図1は、本発明の好ましい実施態様の工程流れ図である。まず、有機バインダーとしてフェノール系樹脂を鋳型材(骨材)である砂に混練する(ステップ100)。この有機バインダーの添加量は、砂に対して約2.0重量%以下である。これに用いる鋳物砂(骨材)は、できるだけ熱膨張の少ない材料が望ましい。特に中子に使用する骨材は、ある程度の細かい砂が望ましく、例えば、65メッシュ程度のムライトなどが好適である。
この混練物は、中子の予熱された金型に吹き込まれる。このとき、混練物は、流動性が良好であるから成形性がよく、熱により熱硬化性のフェノール系樹脂は金型内で硬化して金型形状に忠実な中子素体が成形される(ステップ102)。
この中子素体は、金型から取り出され、冷却後、その表面にバインダーがスプレーされる(ステップ104)。
空気キャップの外で圧搾空気と混合する外部混合式高微粒化スプレーガンを使用して圧搾空気の水分によりあらかじめ加水分解された粒状バインダーが中子表面の水酸基と結合し、付着する。
中子表面の水酸基と結合したバインダーは、直ちに、重、縮合し、耐熱性粒状セル被覆層を完成する。
次いで、中子は、常温で硬化する鋳型にセットされる。そして、この鋳型に溶融金属を注湯する。鋳型にかえて、金型を用いることもできる。また、上記方法でバインダーを付着した冷し金を使用することもできる(ステップ106〜108)。
上記したように高熱、例えば1,600℃の温度で溶融された溶融金属が中子に接触すると、中子表面のバインダーが一瞬にしてセラミック化して、高耐熱性、高強度の皮膜を形成し、中子素体を保護することができる。
注湯した溶融金属が凝固した後、製品を鋳型からとりだして、適時、冷却してから、型ばらしを行う。この型ばらしにより中子を除去するが、バインダーによる高耐熱性皮膜は、鋳型の骨材とは、焼結しておらず、容易に崩壊するからである(ステップ110)。
上記のようにして作られる中子は、アルミ合金、鋳鉄などの鋳造に使用可能である。
また、鋳型素体は、シェルモールド(フェノール系樹脂)が最適であるが、フェノールウレタン、アルカリフェノール、フラン系、有機鋳型なども使用することができる。
また、無機系鋳型にも使用できる。この場合、本発明により得られる鋳型素体は、中子、鋳型、金型、冷し金のいずれにも使用でき、この鋳型内に溶融金属を注湯すれば良い。
また、鋳型素体は、シェルモールド(フェノール系樹脂)が最適であるが、フェノールウレタン、アルカリフェノール、フラン系、有機鋳型なども使用することができる。
また、無機系鋳型にも使用できる。この場合、本発明により得られる鋳型素体は、中子、鋳型、金型、冷し金のいずれにも使用でき、この鋳型内に溶融金属を注湯すれば良い。
上記に使用される鋳型、中子は、耐火物骨材を有機分散剤に混ぜ、鋳型表面に塗布する、いわゆる塗型を使用している。しかしながら、従来の塗型は、目止めの効果はあるが、分散剤に耐熱性がなく、鋳型の耐熱性、耐衝撃性を改善するには限界がある。
本発明のバインダーは、従来の塗型の下地、または、塗型の表面に併用することもできる。
本発明のバインダーは、従来の塗型の下地、または、塗型の表面に併用することもできる。
図5は、従来法および本発明によるバインダーの結晶構造を示す。本発明は、従来法に比べ、結晶が細かく、結晶内がさらに微細な粒状セルから構成されていることがわかる。
図6は、鋳型表面に被覆したバインダーの乾燥後の効果を見たものである。1はバインダーを被覆する前の鋳型である。2の従来法により鋳型表面に浸漬されたバインダーでは、表面に収縮による亀裂が発生しているのに対し、3の本発明による鋳型表面の粒状セルバインダー被覆層では、ネットワークが形成され、微粒のセルが積層されていることがわかる。
図7は、本発明により被覆した粒状セルバインダーの高温(1,000℃以上)における状況を示したものであり、鋳型の断面は、1に示すよう粒状セルバインダーがセラミックとして積層しており、鋳型の表面は2に示すように砂粒間にセラミックのネットワークが見られる。
図8は、本発明における実施例を示したものであり、大型ディーゼルエンジンのシリンダーブロック(300kg)のジャケット中子に本発明のバインダーをスプレー塗布後、鋳造温度1,460℃で、鋳造を行った結果、焼着がなく、従来塗布していたジルコン塗料の塗布を省略することができた。
図9は、金属における結露防止(防錆)、耐熱性皮膜の形成を行ったものであり、大型ステンレス鋳鋼(30kg)のキラワレ不良対策試験である。上図が鋳造温度1,600℃で鋳造を行った従来のものであり、下図が本発明のバインダーをスプレー塗布したものである。本発明のバインダーをスプレー塗布した場合では、キラワレ不良に対し、効果があることがわかる。
本発明の耐熱性粒状セル被覆層形成方法は、スプレー塗布により、容易に物体上に耐熱性被覆層を形成することができるため、鋳型への塗布の他、スペースシャトル等の宇宙船の外壁、ITデジタル素材に於ける耐熱性などの改善の用途に好適に用いることができる。
Claims (8)
- 周期律表4A族または4B族(炭素を除く)と3A族または3B族の金属アルコキシドおよびその加水分解物から選ばれた1種または2種類以上の金属アルコキシド類とアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液からなるバインダーを、微粒化スプレーにより物体に塗布する耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 上記バインダーにシランカップリング剤が添加された請求項1記載の耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 上記バインダーに有機バインダー、または有機バインダーと無機質微粒子が添加混合された、請求項1または2記載の耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 物体が、珪砂、ムライト、アルミナ、石英、ジルコン、溶融シリカ、シリカフラワーおよびシャモットの群から選ばれた少なくとも1種からなる骨材と、有機粘結剤、または無機粘結剤によって成形された鋳造用鋳型である請求項1〜3いずれかに記載の耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 物体が金属である請求項1〜3いずれかに記載の耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 物体がプラスチックフィルムである請求項1〜3いずれかに記載の耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 物体が有機物である請求項1〜3いずれかに記載の耐熱性粒状セル被覆層の形成方法。
- 物体上にあらかじめ有機バインダーを塗布する請求項1〜7いずれかに記載の粒状セル塗膜を形成する方法。
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JP2005221572A JP2007030039A (ja) | 2005-07-29 | 2005-07-29 | 耐熱性粒状セル被覆層の形成方法 |
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JP2010042985A (ja) * | 2008-07-18 | 2010-02-25 | Nobuyoshi Sasaki | アルカリ金属の反応性を維持する組成物、その製造方法、およびその用途 |
JP5347077B1 (ja) * | 2013-03-19 | 2013-11-20 | テクノメタル株式会社 | 砂型鋳造方法 |
JP2014051295A (ja) * | 2012-09-06 | 2014-03-20 | Toppan Printing Co Ltd | 蓋材およびそれを用いた密封容器 |
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2005
- 2005-07-29 JP JP2005221572A patent/JP2007030039A/ja not_active Withdrawn
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