JP5551498B2 - アニオン重合開始剤の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、このようなポリブタジエンやスチレンーブタジエン共重合体を製造する際、重合開始剤としては、n−ブチルリチウムやsec−ブチルリチウム等のモノ有機リチウム化合物が一般的に使用されている。また、モノ有機リチウム化合物とジビニルベンゼン等のポリビニル芳香族化合物の二者を反応して得られる多官能アニオン重合開始剤も知られている。
また、テトラヒドロフランを含む溶媒中、ブタジエンとジビニルベンゼンの混合物をn−ブチルリチウムと75℃で反応させて多官能アニオン重合開始剤を製造する方法も提案されており、この触媒を使用して製造された共役ジエン系ゴムを耐衝撃性ポリスチレン用ゴムとして用いた場合、耐衝撃性と外観特性に優れた耐衝撃性スチレン系樹脂となることが知られている(特許文献2参照)。
また、ブタジエンとジビニルベンゼンの混合物をn−ブチルリチウムと反応させて得られた多官能アニオン重合開始剤を用いて共役ジエン系単量体の重合を行い、その後に、グリシジルアミノ基等の変性剤によって変性することにより、官能化された重合体末端数を増やして、ジエン系ゴムとシリカとにより構成される組成物の性能、すなわちシリカ分散性を向上させ、ヒステリシスロスを低減化させる技術も提案されている(特許文献3参照)。このように多官能アニオン重合開始剤は、様々な分野での応用が期待される。
そこで本発明は、多官能アニオン重合開始剤の製造後も長期間にわたって安定であり、長期間保存されたアニオン重合可能な単量体を用いて所望の重合体を製造しても、安定した分子量の重合体を製造することが可能な極めて有用なアニオン重合開始剤の製造方法を提供する。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
有機リチウム化合物を用い、リビングアニオン重合可能な単量体及びポリビニル芳香族系単量体を共重合して得られるアニオン重合開始剤の製造方法において、重合溶媒中、1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物の存在下、反応最高温度が少なくとも75℃以上で重合することを特徴とするアニオン重合開始剤の製造方法。
[2]
更に1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物が重合溶媒中に存在することを特徴とする[1]に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物([A])と有機リチウム化合物([Li])のモル比[A]/[Li]が0.001〜3であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
[4]
1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物が重合溶媒に対して1〜1000ppm存在することを特徴とする[2]又は[3]のに記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のアニオン重合開始剤を用いて共役ジエン系単量体及び/又は芳香族ビニル単量体を重合する共役ジエン系重合体又は芳香族ビニル重合体又は芳香族ビニル一共役ジエン系共重合体の製造方法。
本発明のアニオン重合開始剤の製造は、アニオン重合可能な単量体及びポリビニル芳香族系単量体の混合物を、有機リチウム化合物と1分子中に2個のエーテル結合を有する化合物の存在下で反応させる方法で製造され、その反応生成物が、共役ジエン系単量体や芳香族ビニル系単量体等のアニオン重合開始剤として使用される。
本発明の製造方法によると、ポリビニル芳香族系単量体のビニル基の反応が促進され、アニオン重合開始剤に存在するポリビニル芳香族系単量体に由来する不安定なビニル基の量が比較的少なくなる。したがって、本発明の方法で製造されたアニオン重合開始剤は、長期間に亘って安定であり、この長期間保存された開始剤を用いて重合してもポリマーの分子量が変動することなく安定した重合体を製造することができる。
1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物としては、ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチルー2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングルコール・ジメチルエーテル、テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジメトキシベンゼン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。好ましい1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物としては、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンが挙げられる。
また、できる限り定温で反応する方法においては、その反応最高温度を少なくとも75℃以上にすることが好ましい。更に好ましくは77〜120℃の範囲である。
75℃以上の場合は、ポリビニル芳香族系単量体のビニル基の反応が促進され、アニオン重合開始剤に存在するポリビニル芳香族系単量体に由来する不安定なビニル基の量が少なくなり、アニオン重合開始剤の安定性が向上するので好ましい。活性リチウムの失活抑制の観点から120℃以下が好ましい。
貯蔵安定性に優れたアニオン重合開始剤を製造する為には、少なくとも75℃以上の温度で1分以上の時間で反応させることが好ましい。更に好ましくは10分以上である。
1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物は、反応開始前や反応途中、反応終了後のうち任意の時間に添加することができる。また1分子中に1個以上のエーテル結合を有する化合物は1〜数回に分けて逐次的に供給することも可能である。
1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物の濃度は、溶媒に対して1〜1000ppmの範囲であり、好ましくは10〜500ppmの範囲であり、更に好ましくは50〜300ppmの範囲である。アニオン重合開始剤の安定性を改良する効果を著しく発現させる観点から1ppm以上が好ましい。また1000ppmを超えて使用すると、重合溶媒の回収工程で該極性化合物と重合溶媒の分離を容易にする観点から1000ppm以下が好ましい。
また本発明の製造方法により調製されあアニオン重合開始剤は通常50℃以下、好ましくは30度以下、更に好ましくは20℃以下で保存することが好ましい。
本発明の製造方法により得られたアニオン重合開始剤の分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜3.2の範囲が好ましく、更に好ましくは1.1〜2.4の範囲である。3.2を超えるとアニオン重合開始剤の貯蔵安定性が悪くなり好ましくない。
共役ジエン系単量体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等であり、一種又は二種以上用いられる。好ましい単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体の例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等であり、一種又は二種以上用いられる。特にスチレンが好ましい。
溶液重合で用いる炭化水素溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。好ましい例としては、ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。
芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。ランダム共重合体としては、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体などが挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、もしくはテーパー状に組成に分布があるテーパーランダム共重合体などがある。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合と1,2−結合などの組成は均一であっても分布があってもよい。
(S−B)n、S−(B−S)n、B−(S−B)n、(S−B)m−X
[(S−B)n]m−X、[(B−S)n−B]m−X、[(S−B)n−S]m−X
(nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。また、Xに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも異なっていても良い。)
(1)アニオン重合開始剤の分子量および分子量分布
測定機器 Waters社製 HPLC Waters717
溶媒 クロロホルム
カラム 昭和電工社製 Shodex K−803L 2本
カラム温度 35℃
送液流量 1.0ml/min
試料注入量 0.1ml
(2)SBRのムーニー粘度
JIS K 6300によって100℃、予熱1分で4分後の粘度を測定した。
測定機器 Waters社製 HPLC Waters717
溶媒 テトラヒドロフラン
カラム 昭和電工社製 Shodex K−803L 2本
カラム温度 35℃
送液流量 0.35ml/min
試料注入量 40μl
次に、実施例及び比較例で使用したアニオン重合開始剤を下記に示す。
[実施例1]
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換後、第1表に示した条件で、シクロヘキサン3.7kg、乾燥した1,3−ブタジエン553g、1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物である2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン(BOP)8.6gとジビニルベンゼン15.1gを加え、次いでn−ブチルリチウムを74.4g加えて、40℃にて反応を開始し、反応最高温度が80℃で20分反応し、調整した。第1表の条件で調製したアニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは全くなかった。用いたジビニルベンゼンは、異性体混合物57重量%(m−ジビニルベンゼン=40重量%、p−ジビニルベンゼン=17重量%)を含有し、残部がエチルビニルベンゼン=44重量%からなる市販のジビニルベンゼン(新日鐵化学社製 ジビニルベンゼン570)を用いた。
ジビニルベンゼン及びBOPの添加量、反応最高温度を表1で示した条件で、それ以外は実施例1と同様の条件で重合させた。
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換後、表1に示した条件で、シクロヘキサン3.7kg、1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物であるテトラヒドロフラン(THF)、乾燥した1,3−ブタジエン553g、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン(BOP)8.6g、ジビニルベンゼン22.7gを加え、次いでn−ブチルリチウムを74.4g加えて、40℃にて反応を開始し、反応最高温度が83℃で15分反応し、調整した。用いたジビニルベンゼンは、異性体混合物57重量%(m−ジビニルベンゼン=40重量%、p−ジビニルベンゼン=17重量%)を含有し、残部がエチルビニルベンゼン=44重量%からなる市販のジビニルベンゼン(新日鐵化学社製 ジビニルベンゼン570)を用いた。
ジビニルベンゼン及びBOPの添加量、反応最高温度を表1で示した条件で、それ以外は実施例7と同様の条件で重合させた。
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換後、表1に示した条件で、シクロヘキサン3.7kg、乾燥した1,3−ブタジエン553g、ジビニルベンゼン30.2gを加え、次いでn−ブチルリチウムを74.4g加え、40℃にて反応を開始し、反応最高温度が77℃で30分反応し、調整し重合した。用いたジビニルベンゼンは、異性体混合物57重量%(m−ジビニルベンゼン=40重量%、p−ジビニルベンゼン=17重量%)を含有し、残部がエチルビニルベンゼン=44重量%からなる市販のジビニルベンゼン(新日鐵化学社製 ジビニルベンゼン570)を用いた。
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換後、第1表に示した条件で、シクロヘキサン3.9kg、テトラヒドロフラン、乾燥した1,3−ブタジエン553g、ジビニルベンゼン30.2gを加え、次いでn−ブチルリチウム74.4gを加え、40℃で開始し、反応最高温度が79℃で25分反応し、調整した。
用いたジビニルベンゼンは、異性体混合物57重量%(m−ジビニルベンゼン=40重量%、p−ジビニルベンゼン=17重量%)を含有し、残部がエチルビニルベンゼン=44重量%からなる市販のジビニルベンゼン(新日鐵化学社製 ジビニルベンゼン570)を用いた。
[実施例10〜18、比較例4〜6]
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換後、予め精製、乾燥した1,3ーブタジエン592gとスチレン208g、シクロヘキサン5kgを加え、次いで1,2ービニル調整剤として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを1.47g添加し、更に表1に示した、調整後2時間25℃の環境下で保管した各アニオン重合開始剤0.54g(ノルマルブチルリチウム換算量)を加えて、52℃にて重合を開始した。重合終了後、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチル−ピペラジンを1.71g添加し、10分攪拌した後、メタノールを1ml添加してリビングポリマーを完全に失活させた。こうして得られたポリマー溶液に安定剤として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをポリマー100重量部当たり0.375重量部、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールをポリマー100重量部当たり0.15重量部添加し、スチームストリッピングすることにより溶媒を除去し、脱水後、引き続き熱ロール(110℃)により10分乾燥させ、SBRを得た。調整後3日間25℃の環境下で保管した各アニオン重合開始剤を用いて、同様な条件でSBRを重合した。得られたSBRの重量平均分子量(Mw)とムーニー粘度(ML)を表2に示す。
また表2に示すとおり、比較例4〜6のSBRのムーニー粘度の上昇は15ポイント以上であるのに対し、実施例10〜18のSBRは6ポイント以下であり、アニオン重合開始剤(A〜I)が安定していることが、ムーニー粘度からも確認された。
Claims (5)
- 有機リチウム化合物を用い、リビングアニオン重合可能な単量体及びポリビニル芳香族系単量体を共重合して得られるアニオン重合開始剤の製造方法において、重合溶媒中、1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物の存在下、反応最高温度が少なくとも75℃以上で重合することを特徴とするアニオン重合開始剤の製造方法。
- 更に1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物が重合溶媒中に存在することを特徴とする請求項1に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
- 1分子中に2個以上のエーテル結合を有する化合物([A])と有機リチウム化合物([Li])のモル比[A]/[Li]が0.001〜3であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
- 1分子中に1個のエーテル結合を有する化合物が重合溶媒に対して1〜1000ppm存在することを特徴とする請求項2又は3に記載のアニオン重合開始剤の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアニオン重合開始剤を用いて共役ジエン系単量体及び/又は芳香族ビニル単量体を重合する共役ジエン系重合体又は芳香族ビニル重合体又は芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体の製造方法。
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