JP5550449B2 - 溶出制御型農薬組成物、及び農薬粒剤 - Google Patents

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Description

本発明は水田で発生する害虫を効率よく防除する農薬粒剤に関する。詳しくは、農薬活性成分、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体、水難溶性多糖類、無機物質を含む農薬活性体組成物に関し、更にこれを造粒して得られる農薬粒剤に関する。水溶解度の高い農薬活性成分の溶出を制御し溶出期間を長期化させ、散布回数を減らし省力化を可能にする農薬粒剤に関する。また、当該農薬粒剤中に界面活性剤を添加及び/又は押出造粒して得られた農薬粒剤の表面にコーティングすることで、脂肪酸誘導体の比重の軽さと撥水性による粒の水面への浮上の結果起きる、流水や風による粒剤の局在化や水田からの流亡を防いで、均一な効力を発揮する農薬粒剤に関する。
近年、農業従事者の高齢化が益々深刻になり、農作業の省力化が求められている。それに伴い農薬も省力散布製剤やその散布方法に関する技術が検討されている。さらに、環境負荷低減という面から農薬の使用量及び使用回数の減少と使用期間の早期化が望まれる。これらの要請を受け、一回の農薬散布において薬剤を持続的長期間に亘り溶出させ得る、農薬活性成分の溶出制御、溶出期間の長期化を目的とした農薬粒剤の開発が行われている。そこで、農薬活性成分の土壌中及び水中における溶出速度を制御する製剤技術の開発が必要となるが、農薬活性成分の溶出を制御する製剤としてはこれまでにも様々な農薬基材を用いた製剤が開発されている。これらの中において脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体や、各種ワックスを用いた溶出制御製剤が知られている。例えば特許文献1にはスルホニルウレア系除草剤、活性炭、パラフィンワックス、及び鉱物質担体からなる除草用粒剤が開示されている。また特許文献2にはアルコール型ワックスを含有することを特徴とする農薬粒剤が開示されている。さらに、特許文献3ではモンタンロウ誘導体混合物を含有することを特徴とする農薬粒剤が開示されている。
特開昭63−35504号公報 特開平11−292706号公報 特開2000−351705号公報
しかし、特許文献1ないし3に示した溶出制御農薬粒剤は長期持続型の溶出が保てず、十分な生物効果を得られない。あるいは農薬活性成分の溶出効率が十分でなく、農薬粒剤中に薬物が一部もしくは多くの含量が留まってしまい、一定の施用量において生物効果を得るための十分な溶出が得られないといった欠点があった。また、水溶解度の高い農薬活性成分を長期間溶出制御させるには、農薬粒剤中のワックスの割合を多くする必要がある。このような農薬粒剤を田植え後に水田の湛水下に用いる場合、その比重の小ささや撥水性のため粒が水面に浮き、水流による農薬製剤の散布分布のばらつきや薬剤の流亡のため、効力が不十分になる。また風の影響を受けて田面のある一部分に局在化してしまい、均一な効果が得られないばかりか薬害の原因となる可能性がある。さらに、特許文献1ないし3の脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体を基材として用いる農薬粒剤の製造方法は、基材である脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体と農薬活性成分を加熱溶融して混合した後に、冷却固化したものを破砕造粒することによって得られる。しかしながら、熱によって分解を受ける農薬活性成分を用いた場合、上記のような加熱溶融工程を含む製造方法では製造することができない。一方、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体と農薬活性成分を固体のまま直接混合し、加熱工程を経ずに押出造粒を行うと、得られる粒の硬度が低く、保存や輸送時に粒が割れたり欠けたりすることで、粒剤の総表面積が大きくなり望む溶出速度が得られなくなるおそれがある。
本発明の課題は、水溶性の高い農薬活性成分を含有する農薬粒剤において、十分な薬剤の溶出効率を保ちつつ薬剤の溶出を長期間維持できる農薬組成物、及びそれを用いた農薬粒剤を提供することである。加えて水稲栽培の水田圃場等、湛水圃場に散布施用した際において、前記薬剤溶出制御効果を示すとともに速やかな水中沈降性を示す、安価で製造容易な農薬粒剤を提供すると共に、製造工程において熱に不安定な農薬活性成分の分解を回避できる製造方法により、十分な硬度を有する農薬粒剤を提供することにある。
本発明者らは、農薬粒剤に使用され得る種々の基材、増量剤、賦形剤を用いて検討した結果、農薬活性成分(a)、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体(b)、水難溶性多糖類(c)、無機物質(d)を含有する農薬粒剤用組成物、及びこれを造粒してなる農薬粒剤が、水溶解度の高い農薬活性成分を水田湛水下で長期間溶出を制御できることを見出した。また、水難溶性多糖類(c)を添加することにより、加熱溶融工程を経ずに押出造粒のみで粒剤成形ができるとともに、十分な硬度を持った農薬粒剤を製造し得ることを見出した。さらに、用いる脂肪酸類によって引き起こされる農薬粒剤の浮上をより効率的に抑えて、水田における当該農薬粒剤の局在化や水田からの流亡を防ぐことのできる処方を見出した。すなわち、農薬活性成分とその他原材料を混合してなる農薬粒剤用組成物を、押出造粒機にて造粒して得られる農薬粒剤であり、さらに界面活性剤の添加によって脂肪酸誘導体由来の撥水性による粒の水面への浮上を抑えることができる農薬粒剤である。また、上記の水難溶性多糖類、無機物質、及び場合によって添加される界面活性剤は、農薬活性成分の水中への溶出を調整する効果を併せ持ち、その化合物の種類や添加量によって農薬活性成分の溶出特性を自在にコントロールすることができる。本願に係る農薬粒剤は、水溶解度の高い農薬活性成分の溶出を制御し溶出期間を長期化させることで、散布回数を減らして省力化を可能にするものである。
本発明の農薬組成物は、基材に用いる脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体、水難溶性多糖類、無機物質の種類や組合せ組成、及び含有量、並びに界面活性剤の種類や含有量を種々調整することにより、種々の農薬活性成分の溶出速度を制御することができる。これにより用いる農薬活性成分の至適濃度、対象とする病害虫、散布時期、作用期間に応じた製剤をデザインすることができ、その結果、用いる農薬活性成分の効力が十分に発揮される。また、田面水への沈降性も良好で、水田からの流亡や局在化もなく、その結果、作物に対する薬害のない優れた農薬粒剤として用いることができる。更に本願に係る農薬組成物は、加熱溶融混合工程を必要とせず、粒剤調製において混合容易な組成物であり、粒剤成形性に優れる一方で、十分な粒剤硬度が確保されるものである。
以下に本発明の農薬組成物、それを用いた農薬粒剤、及びその農薬粒剤の製造方法についてより詳しく説明する。
本発明の農薬組成物に使用される農薬活性成分(a)は、通常、農薬殺虫活性成分または農薬殺菌活性成分であればいずれでもよく、基本的には制限はない。これらの中でも水中への溶解度が高い農薬活性成分が特に適している。具体的には、20℃における水溶解度が100ppm以上であり、水溶解度として0.01〜50重量%の範囲である水中溶出性が高い農薬活性成分に好適に使用できる。農薬活性成分としては、具体的には例えば次のようなものが挙げられるがこれに限定されるものではない。
農薬殺虫活性成分としては、例えば1,3−ジカルバモイルチオ−2−(N、N−ジメチルアミノ)−プロパン塩酸塩(カルタップ塩酸塩)、5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラムシュウ酸塩)、S,S'‐2‐ジメチルアミノトリメチレン−ジ(ベンゼンチオスルホナート)(ベンスルタップ)等のネライストキシン系殺虫剤;1‐(6‐クロロ‐3‐ピリジルメチル)‐N‐ニトロイミダゾリジン‐2‐イリデンアミン(イミダクロプリド)、3‐(2‐クロロ‐1,3‐チアゾール‐5‐イルメチル)‐5‐メチル‐1,3,5‐オキサジアジナン‐4‐イリデン(ニトロ)アミン(チアメトキサム)、(E)‐1‐(2‐クロロ‐1,3‐チアゾール‐5‐イルメチル)‐3‐メチル‐2‐ニトログアニジン(クロチアニジン)、(RS)‐1‐メチル‐2‐ニトロ‐3‐(テトラヒドロ‐3‐フリルメチル)グアニジン(ジノテフラン)、3‐(6‐クロロ‐3‐ピリジルメチル)‐1,3‐チアゾリジン‐2‐イリデンシアナミド(チアクロプリド)、(E)‐N‐(6‐クロロ‐3‐ピリジルメチル)‐N‐エチル‐N'‐メチル‐2‐ニトロビニリデンジアミン(ニテンピラム)、(E)‐N‐[(6‐クロロ‐3‐ピリジル)メチル]‐N'‐シアノ‐N‐メチルアセトアニジン(アセタミプリド)等のネオニコチノイド系殺虫剤;S−メチル−N−[(メチルカルバモイル)オキシ]チオアセトイミデート(メソミル)、2−セコンダリーブチルフェニル−N−メチルカーバメート(BPMC)等のカーバメイト系殺虫剤、及び(E)−4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン(ピメトロジン)が挙げられる。
農薬殺菌活性成分としては、例えば、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)、1,2,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(ピロキロン)、(E)−2−メトキシイミノ−N−メチル−2−(2−フェノキシフェニル)アセトアミド(メトミノストロピン)、5−メチル−1,2,4―トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール(トリシクラゾール)、3'-クロロ−4,4'−ジメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキサニリド(チアジニル)、[5−アミノ−2−メチル−6−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキシロキシ)テトラヒドロピラン−3−イル]アミノ−α−イミノ酢酸(一般名:カスガマイシン)等が挙げられる。本発明に於いてはこれらの中でも、ネライストキシン系農薬活性成分の溶出制御型農薬粒剤の調製に好適である。またはネオニコチノイド系農薬活性成分の溶出制御型農薬粒剤を調製する目的にも好適である。農薬活性成分としてより好ましくはチオシクラムシュウ酸塩、並びにイミダクロプリド、またはチアメトキサムである。本発明の農薬粒剤にはこれらの農薬活性成分を単独又は2種以上を併用してもよい。
ネライストキシン系農薬活性成分、ネオニコチノイド系農薬活性成分以外にも、本発明の農薬組成物においては以下の農薬活性成分も、ネライストキシン系及びネオニコチノイド系農薬活性成分に対して化学的安定性の面で影響を与えない範囲であれば1種類以上併用することができる。具体的には、例えば次のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば殺虫活性成分としては、BPMC(2‐sec‐ブチルフェニル‐N‐メチルカーバメート)、MIPC(2‐イソプロピルフェニル‐N‐メチルカーバメート)、NAC(1‐ナフチル‐N‐メチルカーバメート)、ピラクロホス((RS)‐〔O‐1‐(4‐クロロフェニル)ピラゾール‐4‐イル〕‐O‐エチル‐S‐プロピル‐ホスホロチオエート)、ブプロフェジン(2‐tert‐ブチルイミノ‐3‐イソプロピル‐5‐フェニル‐3,4,5,6‐テトラヒドロ‐2H‐1,3,5‐チアジアジン‐4‐オン)、フルシトリネート((RS)‐α‐シアノ‐3‐フェノキシベンジル‐(S)‐2‐(4‐ジフルオロメトキシフェニル)‐3‐メチルブチラート)、メソミル(S‐メチル‐N‐〔(メチルカルバモイル)オキシ〕チオアセトイミデート)、エトフェンプロックス(2‐(4‐エトキシフェニル)‐2‐メチルプロピル‐3‐フェノキシベンジル−エーテル)、XMC(3,5‐キシリル‐N‐メチルカーバメート)などが挙げられる。
殺菌活性成分としては、IBP(O,O‐ジイソプロピル‐S‐ベンジルチオホスフェート)、トリシクラゾール(5‐メチル‐1,2,4−トリアゾロ〔3,4−b〕ベンゾチアゾール)、フサライド(4,5,6,7‐テトラクロロフタリド)、バリダマイシン、プロベナゾール(3‐アリルオキシ‐1,2‐ベンゾイソチアゾール‐1,1‐ジオキシド)、フェリムゾン((Z)‐2'‐メチルアセトフェノン=4,6‐ジメチルピリミジン‐2‐イルヒドラジン)、フルトラニル(α,α,α‐トリフルオロ‐3'‐イソプロポキシ‐O‐トルアニリド)、フラメトピル((RS)‐5‐クロロ‐N‐(1,3‐ジヒドロ‐1,1,3‐トリメチルイソベンゾフラン‐4‐イル)‐1,3‐ジメチルピラゾール‐4‐カルボキサミド、ペンシクロン(1‐(4‐クロロベンジル)‐1‐シクロペンチル‐3‐フェニル尿素、ジクロメジン(6‐(3,5‐ジクロロ‐4‐メチルフェニル)‐3(2H)‐ピリダジノン)、カスガマイシン一塩酸塩などが挙げられる。
本発明の農薬組成物中の農薬活性成分(a)の含有割合は、通常3〜25質量%、好ましくは4〜15質量%である。農薬組成物中の含有量が3質量%に満たない場合は農薬活性成分の十分な効力発現が期待できず、25質量%を超えると農薬活性成分の水中への溶出が十分に制御し得ないために長期の残効を期待できない。
本発明の農薬組成物は脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体(b)が製剤基材の一つとして適用される。当該脂肪酸及び脂肪酸誘導体は加工性に優れており、溶融等の加熱工程を経なくても、混合及び押出造粒によって均一で所望の粒径及び粒長の粒剤に調製することができる。そのため脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体と農薬活性成分、その他原材料を加熱溶融する工程を経ることなく農薬粒剤を製造することができ、熱に不安定な農薬活性成分にも適用できる。本発明に使用できる脂肪酸及び脂肪酸誘導体は、農薬活性成分しても不活性であれば特に限定されずに使用することができる。
本発明に好適な脂肪酸及び脂肪酸誘導体は、C8〜C40アルキル鎖カルボン酸及びその誘導体である。より好ましくは、C10〜C30アルキル鎖カルボン酸及びその誘導体である。これらの脂肪酸及び脂肪酸誘導体は、総じて常温固体のものであり、農薬活性成分を含浸保持する粒剤基材として適用できるものである。粒剤調製における加工性を勘案すると、当該脂肪酸及び脂肪酸誘導体の融点が45〜100℃の範囲の物性のものが特に好適に使用され得る。より好ましくは、融点が50〜90℃の範囲の脂肪酸及び脂肪酸誘導体が優れた物性の粒剤を調製し得る。
脂肪酸としては例えばステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、パルミチン酸、ラウリン酸といったものが挙げられる。脂肪酸誘導体としては例えば12−ヒドロキシステアリン酸といったものが挙げられる。さらに、牛硬化油、ヒマシ硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油、菜種硬化油といった動物性油脂若しくは植物性油脂等の脂肪酸エステルを水素添加して得られたワックス状物質なども含まれる。上記の中から選ばれる1種または2種以上の混合物で、これらは任意に組み合わせて使用することができる。これら脂肪酸及び脂肪酸誘導体の中でも、ヒマシ硬化油単独、及び牛硬化油とステアリン酸の組合せ、及びヒマシ硬化油とステアリン酸の組合せが、農薬活性成分の良好な溶出性を示すことから好ましい。更にヒマシ油、菜種油、パーム油、大豆油、綿実油、亜麻仁油等の常温液体の植物性油脂を適宜添加することで、造粒性を向上させることができる。
脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体は本発明の農薬粒剤中に10〜80質量%の割合で含有させることができる。好ましくは20〜70質量%である。10質量%未満では脂肪酸及び脂肪酸誘導体による溶出制御効果が期待できず、また農薬粒剤の形状に成形することが困難となる。また、80質量%を超えると農薬活性成分が十分に水中に溶出されず、粒剤中に残留するため十分な効果が発揮できない可能性がある。本発明に係る農薬粒剤において、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体の含量を多くすると薬剤溶出速度が遅く制御された粒剤を調製できる。逆に脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体の含量を少なくすると、早い薬剤溶出パターンを示す粒剤を調製できる。
本願に係る発明は、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体を製剤基材としながらも、加熱溶融工程を経ずに、十分な硬度を保った粒剤を製造見出すことを課題として鋭意検討を実施した結果、農薬活性成分と脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体に水難溶性多糖類(c)を添加し、よく混合したものが、押出造粒機で造粒でき農薬粒剤として望ましい物性と示すことを見出した。脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体に水難溶性多糖類を加えることで、圧縮成形性を付与して溶融混合工程を経ることなく、押出造粒による圧縮のみで十分な硬度を持った粒剤を得られた。また水難溶性多糖類は、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体を基材とする当該農薬粒剤中でネットワークを形成して粒の硬度を高めると同時に、粒内部から農薬活性成分の水中への溶出を調整する働きがある。
本発明の農薬組成物に適用される水難溶性多糖類(c)としては、押出造粒による造粒性を向上し得るもので、当該農薬粒剤中の農薬活性成分の安定性を損なうものでなければこれに限るものではないが、具体的には結晶セルロース、水不溶性ペクチン、及びキチン・キトサン等が挙げられる。水難溶性多糖類の平均粒子径は1μm〜45μmのものが本願農薬組成物において好適であり、望ましい特性の薬剤溶出制御型粒剤を得るために必須である。好ましくは平均粒径1μm〜30μmであり、より好ましくは平均粒径5μm〜20μmである。通常、水難溶性多糖類の含有量が多くなるにつれて農薬活性成分の水中溶出速度は速くなる。当該農薬粒剤には水難溶性多糖類を0.5〜20質量%用いることで十分な硬度を与えることができる。0.5質量%未満では水難溶性多糖類による圧縮形成性と硬度を与えることができない。また、20質量%を超えると農薬粒剤としての形状に成形することが難しくなる。
本発明の農薬組成物は無機物質(d)を含有する。当該農薬組成物は、比重が1に近い脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体が基材であり、その比重と基材由来の撥水性によって湛水圃場に散布すると水面に浮上する。浮上した粒は風の影響を受けて圃場の一部に局在化して効力が不均一になるだけでなく、水流の影響を受けて圃場から流亡し、期待される効力を発揮できないおそれがある。比重の軽さによる効力低下を防ぐために、当該農薬組成物は無機物質を含んでいる。本発明に係る農薬粒剤を湛水圃場に散布した際、無機物質の比重の大きさによって当該農薬粒剤の比重を大きく調整することが可能で、水中沈降性を改善し速やかに水中に沈降する機能を付与させるものである。また、無機物質は当該農薬粒剤の内部の構造を粗くすることで、粒内部に存在する農薬活性成分の水中への溶出を適宜調整する役割をも有する。
本発明に用いられる無機物質はクレー、珪石、タルク、白土、珪藻土、アッシュメント、非晶質二酸化珪素(通称:ホワイトカーボン)、硫酸バリウム、二酸化チタン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、二水石膏、半水石膏などから選ばれる1種または2種以上の組合せで用いられるが、農薬活性成分の安定性を損なうものでなければこれに限るものではない。無機物質の粒径は様々なものが使用できるが、その中でも20μm〜200μmのものが製造上及び/又は農薬活性成分の溶出を促す作用を導き出すのに好ましい。
当該無機物質は、本発明の農薬粒剤中に10〜60質量%の割合で含有させることができる。より好ましくは20〜50重量%を含有するものである。10質量%未満では比重調整の効果が期待できず、60質量%を超えると農薬活性成分の溶出制御が困難となるばかりでなく、農薬粒剤としての形状に成形することが難しくなる。
本発明の農薬組成物は界面活性剤(e)を含有することが好ましい。当該界面活性剤はノニオン性及び/又はアニオン性界面活性剤が適用される。アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤は、湛水圃場に本発明に係る農薬粒剤を散布した際、その水親和性によって本発明の農薬粒剤の撥水性を抑えて、水中沈降性を改善し速やかに水中に沈降する機能を付与させるものである。また、本発明に用いられる界面活性剤は、当該農薬粒剤の親水性を高めて、粒内部に存在する農薬活性成分の水中への溶出を適宜調整する役割をも有する。
本発明に用いられるノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどが挙げられ、アニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤が挙げられるが、農薬活性成分の安定性を損なうものでなければこれに限るものではない。これらノニオン性及びアニオン性界面活性剤の群より選ばれる1種又は2種以上の組合せによって、水中沈降性効果を発揮することができる。
当該界面活性剤がその効果を発揮する使用の形態は、農薬活性成分やその他原材料と共に混合して押出造粒して農薬粒剤に形成してもよいし、農薬活性成分やその他原材料を混合、押出造粒してできた農薬粒剤の粒表面に水中沈降性付与剤を均一にコーティングすることも可能である。また、その両方を併用することも可能である。
当該界面活性剤は本発明の農薬粒剤中に0.1〜30質量%の割合で含有させることができる。より好ましくは0.1%〜10質量%である。0.1質量%未満では当該農薬粒剤を水中に沈降させるために十分な機能を発揮するには足りず、30質量%を超えると良好な水中沈降性は得られるものの、界面活性剤によって農薬活性成分の水中溶出速度が大幅に促進されるため、溶出制御が困難になる。
本発明の水難溶性多糖類、無機物質、及び場合によって添加される界面活性剤は、当該農薬粒剤に良好な水中沈降性を付与すると共に、農薬活性成分の水中溶出速度を調整する役割をも果たしている。水難溶性多糖類、無機物質、及び界面活性剤の種類、含有量、及びこれらの組合せ組成を適宜調整することで、粒剤への良好な成形性を保ち、かつ良好な水中沈降性を保ちつつ所望の水中溶出速度を有する農薬粒剤を得ることができる。通常、本発明の農薬粒剤は農薬活性成分を3〜25質量%、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体を10〜80質量%、水難溶性多糖類を0.5〜20質量%、無機物質を10〜60質量%を含有し、この範囲内で適宜調整することで所望の水中溶出速度を得ることができる。加えて、当該農薬粒剤には界面活性剤を0.1〜10質量%の割合で含有することができ、当該農薬粒剤の水中沈降性ならびに農薬活性成分の水中溶出速度を適宜調整することができる。界面活性剤は、農薬活性成分、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体、水難溶性多糖類及び無機物質、及び場合によって界面活性剤の添加で構成される農薬組成物を造粒してなる農薬粒剤の、粒表面にコーティングすることが可能であるし、本発明の農薬組成物中に予め含有させて造粒することも可能である。場合によっては、更に粒表面にコーティングすることも可能である。
2種以上の農薬活性成分を本発明の農薬粒剤に含有させる場合には、農薬活性成分の種類によっては農薬活性成分が脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体の内部構造を粗くする作用が生じる場合があり、この場合、農薬活性成分が水中溶出を調整する効果を発揮する。そのため所望の溶出制御を発現させるには、用いる農薬活性成分の物性や固形粒子径、及びその含有量を、その溶出速度に応じて適宜調整することが好ましい。
本発明の農薬粒剤の製造方法は以下の2通りがある。
1)農薬活性成分、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体、無機物質、水難溶性多糖類をよく混合した後に造粒機に投入して造粒する方法。場合により、更に得られた粒剤表面に界面活性剤をコーティングする方法。
2)農薬活性成分、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体、無機物質、水難溶性多糖類、界面活性剤をよく混合した後に造粒機に投入して造粒する方法。場合によって、得られた粒剤表面に、更に界面活性剤をコーティングする方法。
本発明の農薬組成物を造粒する際、その粒径は2〜10mmであることが好ましい。2mm未満では造粒の際に当該農薬組成物にかかる圧力が足りず、粒剤としての形に成形することが困難となる。また、水田に散布する際に風などの影響を受けて当該農薬粒剤が狙う水田以外の畦畔等に落下するおそれがある。10mmを超える場合も造粒が難しくなるばかりか、単位面積当たりの散布粒数が少なくなり散布ムラや効力が不均一化する等の問題が起きるおそれがある。
本発明の農薬粒剤の製造に用いられる押出造粒機は縦型押出造粒機が好ましく、原材料をよく混合した後に当該造粒機に投入して造粒する。このとき、ダイスの厚さが10mm以上、粒径が2〜10mmであることが粒剤を製造する上で重要になる。ダイスの厚さが10mmに満たない場合、原材料にかかる圧力が足りず粒剤としての形に成形することが困難となる。また、粒径が2〜10mmの範囲外の場合、やはり原材料にかかる圧力が足りず粒剤として成形することが難しくなる。縦型押出造粒機は、一般に被造粒組成物に圧力をかけて水平に設置されたダイスから押出して造粒する機器の一般名称で、ディスクペレッター(不二パウダル社製)等が挙げられる。
上記の方法で得られた粒剤の界面活性剤コーティングにはコンクリートミキサーやコーティングパンなどが用いられる。ミキサーに上記の方法で得られた粒剤、界面活性剤の順に投入し、撹拌することで粒剤表面に均一に界面活性剤をコーティングすることができる。
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、農薬活性成分として供試したチオシクラムシュウ酸塩の純度は約89.9%のものを用いた。イミダクロプリド、ピメトロジン、チアメトキサムは何れも純度98%以上のものを供した。
実施例1
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸15.8重量部、ヒマシ硬化油37.3重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)30重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)5.0重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例2
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸12.9重量部、ヒマシ硬化油30.2重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)40重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)5.0重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例3
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸9.9重量部、ヒマシ硬化油23.2重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)50重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)5.0重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例4
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸19.2重量部、ヒマシ硬化油36.4重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)30重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例5
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸15.7重量部、ヒマシ硬化油29.9重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)40重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例6
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸19.7重量部、ヒマシ硬化油37.4重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)30重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)1.0重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例7
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸16.2重量部、ヒマシ硬化油30.9重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)40重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)1.0重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例8
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸19.2重量部、ヒマシ硬化油36.4重量部、セイコーライト(商品名、セイコー産業社製、珪藻土)30重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例9
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸12.3重量部、ヒマシ硬化油23.3重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)50重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、チオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例10
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸19.2重量部、ヒマシ硬化油36.4重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)30重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例11
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸15.7重量部、ヒマシ硬化油29.9重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)40重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例12
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸12.3重量部、ヒマシ硬化油23.3重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)50重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例13
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ステアリン酸15.7重量部、ヒマシ硬化油29.9重量部、DL−クレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径:約25μm)30.0重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部、リケマールS−200(商品名、理研ビタミン社製、グリセリンステアレート)10.1重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
実施例14
イミダクロプリド10.5重量部、ステアリン酸18.7重量部、ヒマシ硬化油35.5重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)30重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)5.0重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、ペグノールST−9(商品名、東邦化学工業社製、POEアルキルエーテル、HLB:13.3)0.3重量部をコーティングし、イミダクロプリド10.3%粒剤を得た。
実施例15
イミダクロプリド2.0重量部、ステアリン酸15.6重量部、ヒマシ硬化油29.6重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)50重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、レオドールTW-O120V(商品名、花王社製、POEソルビタンモノオレエート、HLB:15)0.3重量部をコーティングし、イミダクロプリド2.0%粒剤を得た。
実施例16
ピメトロジン3.0重量部、ステアリン酸15.2重量部、ヒマシ硬化油28.9重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)50重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、レオドールTW-O120V(商品名、花王社製、POEソルビタンモノオレエート、HLB:15)0.3重量部をコーティングし、ピメトロジン3.0%粒剤を得た。
実施例17
チアメトキサム2.0重量部、ステアリン酸15.6重量部、ヒマシ硬化油29.6重量部、シルト#500(商品名、丸中白土社製、白土、平均粒子径:約40μm)50重量部、ヒマシ油0.35重量部、NPファイバー(商品名、日本製紙ケミカル社製、微粉結晶セルロース、平均粒子径:10μm)2.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別したものをコンクリートミキサーに投入し、レオドールTW-O120V(商品名、花王社製、POEソルビタンモノオレエート、HLB:15)0.3重量部をコーティングし、チアメトキサム2.0%粒剤を得た。
比較例1
チオシクラムシュウ酸塩11.5重量部、ヒマシ油0.2重量部、ステアリン酸20重量部、ヒマシ硬化油37.8重量部、DL−クレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径:約25μm)30.0重量部、カープレックス#80(商品名、デグサジャパン社製、非晶質二酸化珪素)0.5重量部をよく混合したものをディスクペレッター(商品名、不二パウダル社製、縦型押出造粒機、ダイス厚さ10mm、粒径4.0mm)に投入して造粒し、2mm(8.6メッシュ)の篩で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
比較例2
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部を加熱溶融したステアリン酸88.3重量部に溶融機にて混合溶融し、金属製のバットに流し込み、冷却してシート化したものをペレタイザーで破砕し、1mm(16メッシュ)〜1.7mm(10メッシュ)の範囲で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
比較例3
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部を加熱溶融したベヘン酸88.3重量部に溶融機にて混合溶融し、金属製のバットに流し込み、冷却してシート化したものをペレタイザーで破砕し、1mm(16メッシュ)〜1.7mm(10メッシュ)の範囲で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
比較例4
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部を加熱溶融したグリセリンモノステアレート88.3重量部に溶融機にて混合溶融し、金属製のバットに流し込み、冷却してシート化したものをペレタイザーで破砕し、1mm(16メッシュ)〜1.7mm(10メッシュ)の範囲で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
比較例5
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DL−クレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径:約25μm)30重量部を加熱溶融したグリセリンモノステアレート58.3重量部に溶融機にて混合溶融し、金属製のバットに流し込み、冷却してシート化したものをペレタイザーで破砕し、1mm(16メッシュ)〜1.7mm(10メッシュ)の範囲で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
比較例6
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DL−クレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径:約25μm)30重量部、グリセリンモノステアレート10重量部を加熱溶融した牛硬化油48.3重量部に溶融機にて混合溶融し、金属製のバットに流し込み、冷却してシート化したものをペレタイザーで破砕し、1mm(16メッシュ)〜1.7mm(10メッシュ)の範囲で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
比較例7
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DL−クレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径:約25μm)30重量部、グリセリンモノステアレート20重量部を加熱溶融したヒマシ硬化油38.3重量部に溶融機にて混合溶融し、金属製のバットに流し込み、冷却してシート化したものをペレタイザーで破砕し、1mm(16メッシュ)〜1.7mm(10メッシュ)の範囲で篩別してチオシクラムシュウ酸塩10.3%粒剤を得た。
試験例1 水中沈降性試験
本発明の粒剤及び比較例1,6,7について、水面での浮遊状況を目視にて調査した。粒剤5粒を1Lの蒸留水に満たされた1Lビーカーに投じ、粒の様子の変化を経時的に確認し、以下の3段階で評価し、結果を表1にまとめた。
○:全ての粒が沈んでいる
△:過半数の粒が沈んでいる
×:過半数の粒が水面に浮上している
試験例2 硬度試験
本発明の粒剤及び比較例1,6,7をそれぞれ100gを、磁製ボール3個(合計105g)と共にボールミルポットに投入し、毎分75回転で15分間回転させた。その後、ボールミルポット内の内容物を取り出し、目開き0.5mmの篩にかけて通過した小粒を秤量し、その値を硬度とした。値が小さいほど硬度が高いと判断する。試験例1及び試験例2の結果を表1に示した。
表1 粒剤の水中沈降性と硬度試験結果
供試試料 投下直後 3時間後 6時間後 硬度
実施例1 ○ ○ ○ 3.6
実施例2 ○ ○ ○ 1.6
実施例3 ○ ○ ○ 1.6
実施例4 ○ ○ ○ 4.7
実施例5 ○ ○ ○ 4.5
実施例6 ○ ○ ○ 2.7
実施例7 ○ ○ ○ 2.8
実施例8 ○ ○ ○ 3.7
実施例9 ○ ○ ○ 2.0
実施例10 ○ △ △ 3.8
実施例11 ○ △ △ 4.0
実施例12 ○ △ △ 2.5
実施例13 △ △ △ 7.4
実施例15 ○ ○ ○ 3.6
実施例16 ○ ○ ○ 4.5
実施例17 ○ ○ ○ 2.9
比較例1 ○ △ × 29.1
比較例6 ○ ○ ○ 7.2
比較例7 ○ ○ ○ 8.5
試験例3 水中溶出試験1
チオシクラムシュウ酸塩を農薬活性成分とした実施例1〜9及び13、並びに比較例1〜7の農薬粒剤0.5gを100mL共栓付き三角フラスコに入れ、100mLの蒸留水を静かに注いだ(粒剤中の全てのチオシクラムシュウ酸塩が水中に溶出した場合500ppmとなる)。これを25℃恒温槽に所定時間静置後、1日後、3日後、7日後における水中に溶出したチオシクラムシュウ酸塩の量をHPLCにより測定した。試験例3の結果を表2にまとめた。
表2 粒剤の水中沈降性とチオシクラムシュウ酸塩の溶出量(ppm)
供試試料 1日後 3日後 7日後
実施例1 69 104 136
実施例2 70 104 131
実施例3 128 209 282
実施例4 39 55 67
実施例5 75 123 165
実施例6 36 57 75
実施例7 65 108 145
実施例8 164 249 321
実施例9 107 190 270
実施例13 99 195 293
比較例1 10 16 24
比較例2 307 367 375
比較例3 405 497 484
比較例4 472 498 474
比較例5 470 491 367
比較例6 233 389 428
比較例7 220 328 369
試験例4 水中溶出試験2
実施例15〜17の農薬粒剤を、農薬活性成分含量が50mgになるよう量り取り、100mL共栓付き三角フラスコに入れ、100mLの蒸留水を静かに注いだ(粒剤中の全ての有効成分が溶出した場合500ppmとなる)。これを25℃恒温槽に所定時間静置後、2時間、24時間、96時間後における水中に溶出した農薬活性成分量をHPLCにより測定した。試験例4の結果を表3にまとめた。
表3 粒剤の水中沈降性と有効成分の溶出量(ppm)
供試試料 2時間後 24時間後 96時間後
実施例15 15 52 96
実施例16 8.3 54 105
実施例17 39 117 233
試験例5 殺虫効力試験
30cm×40cm×15cmのコンテナバットに水稲苗5本×6株定植し、加温温室に置いた。定植16日後に本発明のチアメトキサムを農薬活性成分とする実施例17の農薬粒剤を33g散布した。また比較例8として市販のチアメトキサム2%粒剤(デジタルコラトップアクタラ粒剤(商品名)/シンジェンタ社製)を33g散布した。散布後4日、13日、63日後にウンカ類(トビイロウンカ、セジロウンカ)を放虫した。放虫処理3日後にウンカ類の生死を観察して死虫率を算出した。その結果を表4に示した。
表4 粒剤のウンカ類に対する効力試験結果(死虫率/%)
供試試料 4日 13日 63日
実施例17 63 92 24
比較例8 0 89 24
表1に示したように本発明の農薬粒剤は、水中への投入直後だけでなく投入後時間が経過しても水中に沈降した状態を保っていた。これは農薬粒剤に含まれる無機物質が当該農薬粒剤の比重を1以上に調整したことと共に、界面活性剤が粒表面の物理性を変化させ、親水性を付与すると共に、粒表面に付着する泡を粒表面から剥離させる働きにより、粒剤を持続的に水中に沈降させることができた。また硬度試験においてもボールミル破砕量が少ない結果を示し、農薬粒剤として十分な硬度を示した。一方、水難溶性多糖類成分を添加しない比較例1は持続的沈降性を維持できず、また硬度試験においてもボールミル破砕量が多く粒剤硬度としては不十分であった。熱溶融により調製した比較例6、7は、DL−クレーを含有した効果により良好な水沈降性を示したが、粒剤硬度は若干低下した。
また表2及び表3に示したように、本発明の農薬粒剤は水難溶性多糖類、無機物質、界面活性剤を添加し、これらの組成含量を調整することによって、様々な溶出特性を持つ粒剤に仕上げることが可能であり、初期溶出性を抑制すると共に持続的な薬剤溶出制御を達成し、所望の溶出速度の粒剤を得ることができた。また、チオシクラムシュウ酸塩に限らず、農薬活性成分としてイミダクロプリドやチアメトキサムのネオニコチノイド系農薬活性成分、並びにピメトロジンに対して溶出制御能を付与することができ、様々な農薬有効成分に対する応用範囲の広い製剤処方技術であると言える。一方、水難溶性多糖類を含まない比較例1は薬剤溶出速度の著しい低下が見られ、また熱溶融により調製された比較例2〜7は薬剤の初期溶出抑制が達せられず、農薬活性成分の持続的放出に伴う薬効維持効果に課題が見られた。
本発明の実施例17の殺虫効力試験は、散布後〜63日に亘り殺虫効力を発揮できることが示された。本願の初期薬剤放出制御作用と持続的薬剤放出制御作用を有する農薬粒剤は、殺虫効力の初期効力と持続的効力を両立する殺虫効果を発揮した。一方、比較例8である市販のチアメトキサム含有粒剤(デジタルコラトップアクタラ粒剤(商品名)/シンジェンタ社製)は、長期残効性を示したものの初期効力が不十分であった。したがって、本願に係る農薬粒剤は薬剤溶出制御作用を有し、農薬散布の初期から長期に亘り持続的な薬剤溶出を達成し、一度の圃場散布により殺虫効力の初効と残効の両立を図ることができることが示された。
水溶解度の高い農薬活性成分の溶出を制御し溶出期間を長期化させ、散布回数を減らし省力化を可能にする。また、当該農薬粒剤中に水中沈降性を付与する材料を添加及び/又は押出造粒して得られた農薬粒剤の表面にコーティングすることで脂肪酸誘導体の比重の軽さと撥水性による粒の水面への浮上の結果起きる、流水や風による粒剤の局在化や水田からの流亡を防いで、均一な効力を発揮する。


Claims (15)

  1. 農薬活性成分(a)、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体(b)、水難溶性多糖類(c)、及び無機物質(d)を含むことを特徴とする農薬組成物を造粒したものに、界面活性剤(e)をコーティングして得られる農薬粒剤
  2. 農薬活性成分(a)として20℃における水溶解度が100ppm以上の農薬活性成分である請求項1記載の農薬粒剤
  3. 農薬組成物中に農薬活性成分(a)を3〜25質量%含有する請求項1又は2に記載の農薬粒剤
  4. 脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体(b)がC8〜C40アルキル鎖カルボン酸及びその誘導体の中から選ばれる1種、または2種以上の混合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬粒剤
  5. 脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体(b)がヒマシ硬化油、ヒマシ油、及びステアリン酸の混合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の農薬粒剤
  6. 水難溶性多糖類(c)が結晶セルロースであってその平均粒子径が1μm〜45μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の農薬粒剤
  7. 農薬活性成分(a)がネライストキシン系農薬活性成分を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の農薬粒剤
  8. ネライストキシン系農薬活性成分が1,3−ジカルバモイルチオ−2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパン塩酸塩(以下、カルタップ塩酸塩)、又は5‐ジメチルアミノ‐1,2,3‐トリチアンシュウ酸塩(以下、チオシクラムシュウ酸塩)である請求項7に記載の農薬粒剤
  9. 無機物質(d)がクレー、タルク、白土、珪藻土、ゼオライト、硫酸バリウム、二酸化チタン、及び非晶質二酸化珪素(ホワイトカーボン)からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜8のいずれか一項に記載の農薬粒剤
  10. 農薬組成物中に、農薬活性成分(a)を3〜25質量%、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体(b)を10〜80質量%、水難溶解性多糖類(c)を0.5〜20質量%、及び無機物質(d)を10〜60質量%を含有する請求項1〜9のいずれか一項の農薬粒剤
  11. 更に界面活性剤(e)を0.1〜10質量%含有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の農薬粒剤
  12. 界面活性剤(e)がノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種、または2種以上の混合物である請求項11に記載の農薬粒剤
  13. 粒径が2mm〜10mmであることを特徴とする請求項1〜12に記載の農薬粒剤。
  14. 成分(a)(b)(c)(d)を混合した後、造粒機にて造粒した後に造粒物に界面活性剤(e)をコーティングすることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の農薬粒剤の製造方法。
  15. 造粒機が、縦型押出造粒機であり、これに使用するダイスの厚さが10mm以上であることを特徴とする請求項14に記載の農薬粒剤の製造方法。
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