以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る重ね合わせ装置10を概略的に示す断面図である。重ね合わせ装置10の全体的な構成としては、まず、床15の上に除振部材16を介して設置された粗動ベース部材13上に、粗動ステージ部14と、更にその上方に下部テーブル35を含む微動ステージ部18を備えている。また、粗動ベース部材13に設けられた凹部19には、除振部材20を介して設置されたボディ21には、下部テーブル35の上方であって下部テーブル35に対向する位置に上部テーブル24が備えられている。従って、除振部材20は防振部として機能し、上部テーブル24が振動することを防いでいる。
粗動ベース部材13は、その上面にX‐駆動部33とY‐駆動部34が設置されており、これらによりXY‐ステージ部材32がxy方向に駆動される。したがって、XY‐ステージ部材32は、図示しない制御部からの指示により、xy方向の所定位置へ移動できる。X‐駆動部33、Y‐駆動部34及びXY‐ステージ部材32は、粗動ステージ部14を構成する。なお、装置の鉛直方向をz軸方向とし、z軸方向に直交する平面をxy平面とする。
Y‐駆動部34は、Y軸方向に沿った移動力を、XY‐ステージ部材32及びX‐駆動部33に与える一対のY‐リニアモータ53と、XY‐ステージ部材32及びX‐駆動部33の移動を案内するY‐ガイド部材56とを有する。すなわち、XY‐ステージ部材32及びX‐駆動部33は、y軸方向に一体的に移動する。一対のY‐リニアモータ53のマグネット54は、それぞれy軸方向に沿って伸び、かつ互いに平行になるように、粗動ベース部材13のx軸方向で互いに向かい合う一対の縁部13bに固定されている。一対のY‐リニアモータ53のそれぞれのコイル55は、連結部材50、51に設けられており、それぞれのマグネット54に非接触状態で係合する。
また、Y‐ガイド部材56は、一対マグネット54間でy軸方向に沿って伸びるように、粗動ベース部材13に固定されている。Y‐ガイド部材56には、一方の連結部材50に設けられた係合部57がエアベアリング58を介して非接触状態で係合している。各Y‐リニアモータ53の駆動時に係合部57がY‐ガイド部材56に案内されることにより、XY‐ステージ部材32及びX‐駆動部33がy軸方向に沿って移動する。
連結部材50、51は、X‐駆動部33を構成する2つのX‐ガイド部材46を、それぞれの端部で互いに連結して一体化するための部材である。連結部材50、51の底面には、それぞれエアパッド52が設けられている。これにより、連結部材50、51は、それぞれ粗動ベース部材13の上面13aに接触することなく間隔をおいて設置されている。
ボディ21は、微動ベース部材17、これに平行に配置される上板部材22、及び上板部材22を微動ベース部材17上で支持する柱部材23とから構成され、これらは高い剛性をもって、一体的にフレームとして機能する。そして、上板部材22に固定される上部テーブル24は、その下面においてウェハである第1の基板11を保持する。上部テーブル24近傍の具体的な構成については後述する。
柱部材23には、上部テーブル24の下面に対して、予め定められた所定の位置にX‐干渉計29が設置されている。具体的には、柱部材23のうちyz平面と平行となるように加工された面上であって、y軸方向に離間した2箇所と、さらにそれぞれに対してz軸方向に離間した2箇所の合計4箇所に対して4つのX‐干渉計29が設置されている。これら4つの干渉計の出力により、下部テーブル35のx軸方向の位置、y軸周りの回転方向及びz軸周りの回転方向の回転量を計測することができる。X‐干渉計29は、下部テーブル35の位置を計測する位置計測部を構成する。
微動ステージ部18は、XY‐ステージ部材32を貫通する自重キャンセラ36により支持される。自重キャンセラ36は、ボディ21の微動ベース部材17上に設置される。そして、微動ステージ部18の下部テーブル35の上面においてウェハである第2の基板12を保持する。微動ステージ部18近傍の具体的な構成については後述する。なお、重ね合わされる第1の基板11と第2の基板12は、その重ね合わされる互いの面において半導体素子が形成されており、重ね合わされた後に接合されることで、3次元的な電気回路構成を実現する。第1の基板11及び第2の基板12は、1枚のウェハであっても良いし、一方又は両方が既に積層されたウェハであっても良い。
図2は、重ね合わせ装置10を概略的に示す上面図である。なお、図2においては、ボディ21のうち、上板部材22と柱部材23、及びこれらに設置されている構造物を取り外した状態を示している。
X‐駆動部33は、x軸方向に沿った移動力を、XY‐ステージ部材32に与える一対のX‐リニアモータ43と、各X‐リニアモータ43によるXY‐ステージ部材32の移動を案内する一対のX‐ガイド部材46とを有する。
一対のX‐リニアモータ43のマグネット44は、粗動ベース部材13の凹部19に配置される微動ベース部材17をx軸方向に跨ぎ、かつ、互いに平行になるように、粗動ベース部材13の上面13aに配置されている。X‐リニアモータ43のコイル45は、XY‐ステージ部材32に取り付けられており、それぞれのマグネット44に非接触状態で係合する。また、一対のX‐ガイド部材46は、一対のマグネット44の間に、x軸方向に沿って伸び、かつ、互いに平行になるように、粗動ベース部材13の上面13a上に配置されている。
2つのX‐ガイド部材46及び2つのマグネット44をそれぞれ連結する連結部材50、51は、エアパッド52を介して粗動ベース部材13の上面13aに設置されている。従って、マグネット44及びX‐ガイド部材46は、それぞれ粗動ベース部材13及び微動ベース部材17上に浮上している関係にある。
上述のように、柱部材23には下部テーブル35のx軸方向の位置等を計測するX‐干渉計29が設置されているが、同様に、下部テーブル35のy軸方向の位置等を計測するY‐干渉計30も柱部材23の予め定められた所定の位置に設置されている。具体的には、柱部材23のうちxz平面と平行となるように加工された面上であって、x軸方向に離間した2箇所と、さらにそれぞれに対してz軸方向に離間した2箇所の合計4箇所に対して4つのY‐干渉計30が設置されている。これら4つの干渉計の出力により、下部テーブル35のy軸方向の距離、x軸周りの回転方向及びz軸周りの回転方向の回転量を計測することができる。Y‐干渉計30は、下部テーブル35の位置を計測する位置計測部を構成する。したがって、X‐干渉計29とY‐干渉計30から構成される位置計測部は、下部テーブル35のx軸方向、y軸方向、x軸周りの回転方向、y軸周りの回転方向及びz軸周りの回転方向の5自由度に関して位置を計測することができる。
対応する下部テーブル35には、X‐移動鏡74及びY‐移動鏡75が取り付けられている。X‐移動鏡74はX‐干渉計29からの光を反射させるための鏡であり、Y‐移動鏡75はY‐干渉計30からの光を反射させるための鏡である。X‐移動鏡74の鏡面はyz平面と平行な平面であり、Y‐移動鏡75の鏡面はxz平面と平行な平面である。
このように位置計測部を構成すると、上部テーブル24を基準として、下部テーブル35の位置を相対的に、かつ正確に把握することができる。第2の基板12を第1の基板11に位置合わせをしながら重ね合わせるとき、第1の基板11側を位置決め基準とした第2の基板12側の位置計測が重要となるが、位置計測部はこのような相対的な関係を満たす。特に、ボディ21は高い剛性をもった一体的なフレーム構造をなすので、このフレーム構造の面であって下部テーブル35の側面に対向する面に位置計測部を設置することが好ましい。なお、本実施形態においては、位置計測部を干渉計を用いて構成したが、これに限らず、例えばレーザー測長計、マイクロセンサなどの、同様の機能を実現する位置センサまたは距離センサを用いても良い。
図3は、上部テーブル24の近傍を概略的に示す説明図である。上述のように、上部テーブル24は、上板部材22に固定されている。上部テーブル24の下面24a上には、第1の基板11を保持する第1の基板ホルダ25が載置される。具体的には、下面24aには排気装置に連結された吸引口が複数設けられており、これにより第1の基板ホルダ25を真空吸着して載置を実現している。なお、下面24aは、後述する位置合わせ制御における基準面となる。
第1の基板11は第1の基板ホルダ25に静電力により吸着される。ESC端子27が上板部材22に備えられており、第1の基板ホルダ25が上部テーブル24に載置されると、ESC端子27と第1の基板ホルダ25の端子が接触するように構成されている。そして、第1の基板ホルダ25が上部テーブル24に載置された後は、このESC端子27を経由して、第1の基板ホルダ25に静電力を生じさせるための電力を供給する。
上部テーブル24と上板部材22との間には、第1の基板11及び第1の基板ホルダ25に作用する荷重を検出するためのロードセル26が複数設けられている。また、微動ステージ部18に保持される第2の基板12を位置合わせ時に観察するための上部顕微鏡28を備える。具体的な位置合せの動作については後述する。
図4は、粗動ステージ部について、それぞれの構造物を具体的に組み立てたときの斜視図である。同一の構造物には同一の番号を付して、その具体的な形状の一例を示す。
図示するように、XY‐ステージ部材32は板状の部材からなる。そして、その中央部には、自重キャンセラ36を貫通させるための貫通孔37が形成されている。
図5は、図2のB-Bに沿った部分的な概略断面図である。具体的には、微動ベース部材17より上部に配置されているXY‐ステージ部材32、自重キャンセラ36及び下部テーブル35周辺の構造物についての断面を概略的に表す図である。
一対のX‐ガイド部材46のうち一方のX‐ガイド部材46は、XY‐ステージ部材32に設けられたエアパッド47を介してXY‐ステージ部材32を支持している。他方のX‐ガイド部材46には、XY‐ステージ部材32に設けられた係合部48が、エアベアリング49を介して非接触状態で係合している。各X‐リニアモータ43の駆動時に、係合部48が他方のX‐ガイド部材46に案内されることにより、XY‐ステージ部材32が微動ベース部材17上をx軸方向に沿って移動する。
貫通孔37の内周部には、自重キャンセラ36をその側方から非接触で支持する複数のエアパッド38が設けられている。それぞれのエアパッド38は多少の傾斜にも対応することができるので、自重キャンセラ36が傾いたとしても、許容範囲内であればその傾きに追従して支持することができる。
自重キャンセラ36は、微動ベース部材17上に複数のエアパッド70を介して載置されている。そして、上述のように、自重キャンセラ36はXY‐ステージ部材32に複数のエアパッド38を介して支持されている。すると、XY‐ステージ部材32がX‐駆動部33及びY‐駆動部34によりxy平面上で駆動されると、これに追従して自重キャンセラ36も、微動ベース部材17上を浮上した状態でxy方向に移動することになる。つまり、エアパッド38は、XY‐ステージ部材32が駆動される推力を自重キャンセラ36に伝達する役割を担う。具体的には、エアパッド38によって形成される空気層が介在することにより、推力の伝達と非接触を同時に実現する。このように、自重キャンセラ36と下部テーブル35が、高速で移動されるXY‐ステージ部材32に非接触で追従できると、第1の基板11と第2の基板12の位置合わせを高速に行うことができ、かつ、XY‐ステージ部材32のZ方向の振動を下部テーブル35に伝えることが無い。
自重キャンセラ36は、シリンダ59、ピストン61及び球面座63を備える。シリンダ59は、横断面が矩形状をなした筒部材からなり、内部に圧力室60を有する。制御部は、圧力室60に接続される圧力調整装置を制御して、圧力室60の圧力を、下部テーブル35及びこれに取り付けられる構造物の自重と釣り合うように制御する。また、上述のエアパッド38は、このシリンダ59を非接触で支持しており、したがって、シリンダ59は、XY‐ステージ部材32の貫通孔37に対して、上方へ開放するように貫通されている。また、シリンダ59の上端にはアーム部材89が取り付けられており、このアーム部材の先端部に、自重キャンセラ36に対する下部テーブル35の位置を検出するZ‐干渉計67が設置されている。
ピストン61は、エアベアリング62を介してシリンダ59内に非接触状態で挿入されており、圧力室60の圧力に応じてz軸方向に沿って移動できる。ピストン61の上部は平板状に形成されており、その上面61a上にエアベアリング66を介して球面座63が載置されている。球面座63は、下部テーブル35の下面35bに一体的に取り付けられている球面部材64と接触する台座である。凸球面77は、球面座63の凹球面65とエアベアリング78を介して対向する、球面部材64の面である。エアベアリング66及びエアベアリング78の介在により、ピストン61は球面座63を、球面座63は球面部材64を、それぞれ非接触状態でz軸方向に支持する。また、球面部材64が球面座63の凹球面65に沿って案内されることにより、下部テーブル35は傾動できる。
下部テーブル35は、板部材からなり、XY‐ステージ部材32の上方に配置されている。上述のように、下部テーブル35の上面35aには、第2の基板12を保持する第2の基板ホルダ41が載置される。上面35a上には排気装置に連結された吸引口が複数設けられており、これにより第2の基板ホルダ41を真空吸着して載置を実現している。第2の基板12は第2の基板ホルダ41に静電力により吸着される。ESC端子73が下部テーブル35に備えられており、第2の基板ホルダ41が下部テーブル35に載置されると、ESC端子73と第2の基板ホルダ41の端子が接触するように構成されている。そして、第2の基板ホルダ41が下部テーブル35に載置された後は、このESC端子73を経由して、第2の基板ホルダ41に静電力を生じさせるための電力を供給する。
下部テーブル35には、複数のプッシュアップピン42を挿通する挿通孔71がそれぞれ形成されている。また、これらの挿通孔71の一部に対応するように、第2の基板ホルダ41にも複数の挿通孔72が形成されている。このように構成することにより、プッシュアップピン42を、挿通孔72及び挿通孔72に対応する挿通孔71の内部を通過するように伸長させて第2の基板12を持ち上げ、第2の基板ホルダ41から離脱させることができる。また、挿通孔72に対応しない挿通孔71に、プッシュアップピン42を通過するように伸長させれば、第2の基板ホルダ41を持ち上げ、下部テーブル35から離脱させることができる。これら複数のプッシュアップピン42は、その本体部がXY‐ステージ部材32上に固定されており、ピンの伸長及び収納は、制御部からの指令によって制御される。
XY‐ステージ部材32には、下部テーブル35とXY‐ステージ部材32との間のx軸及びy軸方向に沿った相対距離を測定するXY‐渦電センサ39と、z軸方向に沿った相対距離を測定するZ‐渦電センサ40が設けられている。これらは、X‐駆動部33及びY‐駆動部34によりxy平面上で共に駆動されるXY‐ステージ部材32と下部テーブル35において、互いの相対位置を検出する計測部を形成する。
XY‐ステージ部材32と下部テーブル35の間には、アクチュエータとしてのボイスコイルモータである3つのZ‐VCM86がz軸方向に駆動力が作用するように設置されている。下部テーブル35には、それぞれのZ‐VCM86のマグネット87が固定されており、それらに係合するコイル88はそれぞれXY‐ステージ部材32に固定されている。制御部がこれら3つのZ‐VCM86を個別に制御することで、下部テーブル35をz軸方向に平行移動させ、または、x軸周り及びy軸周りに回転させることができる。具体的な動作については後述する。
下部テーブル35には、第2の基板ホルダ41の載置面の周辺部に、AFセンサ79と下部顕微鏡76が設置されている。AFセンサ79は、上部テーブル24と下部テーブル35の相対的な傾きを検出するセンサである。また、下部顕微鏡76は、上部テーブル24に保持された第1の基板11を位置合わせ時に観察するための顕微鏡である。
図6は、自重キャンセラ36について、それぞれの構造物を具体的に組み立てたときの斜視図である。図5で示す自重キャンセラ36と同一の構造物には同一の番号を付して、その具体的な形状の一例を示す。図5で示す自重キャンセラ36と異なるのは、シリンダ59とエアパッド70の間に脚部材68を有する点である。脚部材68は、シリンダ59の下部から微動ベース部材17に向けて伸びている。
さらに、図7は、図6のC-Cに沿った概略断面図である。図示するビス穴にビスを通すことにより、シリンダ59と脚部材68、ピストン61の上面61aを有する天板部とピストン部、下部テーブル35と球面部材64がそれぞれ一体化される。そして、シリンダ59とピストン61の間、ピストン61と球面座63の間、球面座63と球面部材64の間には、それぞれ、エアベアリング62、66、78が設けられており、互いに非接触に保たれている。
図8は、図2のB-Bに沿った断面図であり、図5とは反対方向から見た部分的な詳細図である。XY‐ステージ部材32と下部テーブル35の間には、アクチュエータとしてのボイスコイルモータである2つのY‐VCM83がy軸方向に駆動力が作用するように設置されている。下部テーブル35には、それぞれのY‐VCM83のマグネット84が固定されており、それらに係合するコイル85はそれぞれXY‐ステージ部材32に固定されている。制御部がこれら2つのY‐VCM83を個別に制御することで、下部テーブル35をy軸方向に平行移動させ、または、z軸周りに回転させることができる。
上述のように、自重キャンセラ36は、エアベアリング66、78を介して、下部テーブル35と下部テーブル35に取り付けられた下部顕微鏡76などの構造物を支持している。また、自重キャンセラ36にはエアパッド70が脚部材68に取り付けられている。これらは一体となって、微動ベース部材17上をXY‐ステージ部材32の移動に非接触で追従する。つまり、これらの構造物は全体として、空間的に隔離された移動体であると捉えることができる。このとき、この移動体全体の重心を重心Fとする。
自重キャンセラ36の伸縮機構であるピストン61が上下することにより、下部テーブル35等の構造物も上下するので、これに伴い移動機構全体の重心Fの位置もZ方向に上下する。エアパッド38は、シリンダ59の外周側面に対向してXY‐ステージ部材32の貫通孔37に設けられているが、そのZ方向の大きさは、上下する重心Fの移動範囲よりも大きい。つまり、エアパッド38によって形成される空気層の範囲内に、常に重心Fが存在することになる。このように構成することで、Z方向に関し、XY‐ステージ部材32が駆動される推力を、常に移動体全体の重心付近で受けることができる。したがって、XY‐ステージ部材32が高速で移動する場合においても、移動体にはx軸周りまたはy軸周りのモーメントが発生することが少なく、下部ステージ35の姿勢を安定的に保つことができる。
図9は、図2のA-A線に沿った部分的な詳細断面図である。XY‐ステージ部材32と下部テーブル35の間には、アクチュエータとしてのボイスコイルモータである1つのX‐VCM80がx軸方向に駆動力が作用するように設置されている。下部テーブル35には、それぞれのX‐VCM80のマグネット81が固定されており、それらに係合するコイル82はそれぞれXY‐ステージ部材32に固定されている。制御部がこのX‐VCM80を制御することで、下部テーブル35をx軸方向に平行移動さることができる。
X‐VCM80及びY‐VCM83の駆動力を作用させて下部テーブル35をx軸方向、y軸方向またはz軸周りの回転方向に移動させるとき、下部テーブル35から球面部材64及びエアベアリング78を介して受ける力により、球面座63がピストン61の上面61a上をxy平面内で移動する。このとき、球面座63とピストン61との間には、エアベアリング66が形成されているので、下部テーブル35は、ピストン61の上面61a上をx軸方向及びy軸方向へ案内される。
また、Z‐VCM86の駆動力を作用させて下部テーブル35をx軸周りの回転方向またはy軸周りの回転方向に移動させるとき、球面部材64がエアベアリング78を介して球面座63の凹球面65に沿って案内され、これにより、下部テーブル35はx軸周りまたはy軸周りに傾動する。さらに、Z‐VCM86の駆動力を作用させて下部テーブル35をz軸方向に移動させるときは、Z‐VCM86の移動量に応じて自重キャンセラ36のピストン61がz軸方向に移動することで、下部テーブル35とこれに一体的に取り付けられている構造物の自重を支持する。したがって、Z‐VCM86の駆動力自体はそれほど大きくなくても、下部テーブル35をz軸方向へ移動させることができる。なお、自重キャンセラ36の脚部材68の下面には、微動ベース部材17との間にエアベアリング69を形成するためのエアパッド70が設けられている。なお、制御部は、下部テーブル35をx軸周りまたはy軸周りに回転して傾動させるときには、第2の基板12のうち、第1の基板11と対向する面の重心を回転軸が通るようにZ‐VCM86を駆動する。
図10は、微動ステージ部を概略的に示す上面図である。特にここでは、下部テーブル35を駆動するアクチュエータの配置とその作用について説明する。
上述のように、下部テーブル35には下部顕微鏡76などの構造物が取り付けられている。また、下部テーブル35及び下部テーブル35に取り付けられている構造物は、自重キャンセラ36にその質量が支持されているものの、エアベアリング66、78の作用により、その他の構造物からは空間的に隔離されたユニットであると捉えることができる。このとき、下部テーブル35及び下部テーブル35に取り付けられている構造物全体からなるユニットの重心を重心Gとする。なお、このユニットは、上述の移動体に包含される関係にある。
X‐VCM80は、x軸方向に駆動力が作用するように1つ設置されており、Y‐VCM83は、y軸方向に駆動力が作用するように2つ設置されており、Z‐VCM86は、z軸方向に駆動力が作用するように3つ設置されている。その具体的な設置位置としては、X‐VCM80については、そのx軸方向の駆動力が重心Gを通るように設置する。また、Y‐VCM83については、y軸方向にそれぞれが同一の駆動力を出力したときにz軸周りにモーメントを発生させないように設置する。例えば、ユニットに質量分布の偏りが無いと仮定すれば、重心Gを通るy軸に平行で対称な2つの直線方向にそれぞれの駆動力が出力されるように設置すればよい。また、Z‐VCM86については、z軸方向にそれぞれが同一の駆動力を出力したときにx軸周りまたはy軸周りにモーメントを発生させないように設置する。例えば、同様にユニットに質量分布の偏りが無いと仮定すれば、z軸に平行でxy平面上で重心Gを重心とする正三角形の頂点を通る3つの直線方向に、それぞれの駆動力が出力されるように設置すればよい。なお、制御部は、下部テーブル35をz軸周りに回転するときには、重心Gを通るようにX‐VCM80及びY‐VCM83を駆動する。
このように、本実施形態によれば、それぞれのアクチュエータが直接的に下部テーブル35にその駆動力を作用させることにより、x軸方向、y軸方向及びz軸方向の並進3自由度と、x軸周り、y軸周り及びz軸周りの回転3自由度の合計6自由度で下部テーブル35を駆動することができる。制御部は、各アクチュエータを独立に駆動することで、下部テーブル35の姿勢を6自由度で制御し、載置されている第2の第2の基板12の位置を、静止した基準面である上部テーブル24の下面24aに対してコントロールする。特に、アクチュエータの駆動力を直接的に下部テーブル35に作用させることで、駆動力の出力指示に対して目標位置に到達するまでにかかる時間である応答性を向上させることができる。これにより、上部テーブル24aに対して下部テーブル35を移動させながら、サブミクロンオーダーで基板同士の位置合わせを行う位置合わせ装置に、位置合わせに要する時間の短縮と、位置合わせ精度の向上をもたらす。なお、本実施形態においては、各々独立に駆動されるアクチュエータはひとつのアクチュエータであるとして説明したが、2つ以上のアクチュエータがあたかもひとつのアクチュエータとして機能するように構成しても良い。この場合は2つ以上のアクチュエータで出力を分担することができるので、求められる出力に対して小さな出力しか有さないアクチュエータを利用することができる。制御部はこれら2つ以上のアクチュエータをあたかもひとつのアクチュエータとして機能するように制御する。
ユニットの重心Gに対して上述のようにアクチュエータを設置することは、小さな駆動力で下部テーブル35を駆動できるだけでなく、応答性の観点からも好ましい。ただし、アクチュエータの設置はこの位置に限られるものではなく、また、アクチュエータの個数もこれに限られるものではない。制御部により下部テーブル35の姿勢を上述の自由度で制御できるように設置されていれば良い。その意味では、z軸方向に駆動力を出力するアクチュエータは、同一直線状に配置されないように留意する。また、本実施形態においては、アクチュエータとしてボイスコイルモータを用いたが、これに限らない。下部テーブル35に直接的に駆動力を作用させることができるアクチュエータであれば良い。例えば、回転モータなど駆動出力が回転力であっても、直線出力に変換する変換部を組み込んで、下部テーブル35に直接的に駆動力を作用させるアクチュエータを実現しても良い。なお、駆動力を直線方向に直接的に出力するボイスコイルモータなどのリニアアクチュエータは、下部テーブル35に対する応答性、制御性が優れているので好ましい。
なお、X‐駆動部33及びY‐駆動部34のx軸方向及びy軸方向の駆動量は、X‐VCM80及びY‐VCM83のx軸方向及びy軸方向の駆動量よりも大きい。したがって、xy平面内で大きく移動させるときには、X‐駆動部33及びY‐駆動部34により下部テーブル35と一体的にXY‐ステージ部材32を移動させることが好ましく、わずかに移動させるときには、X‐VCM80及びY‐VCM83により下部テーブル35のみを移動させることが好ましい。
図11は、重ね合わせ装置の他の構成を示す概略断面図である。具体的には、上述の重ね合わせ装置のうち、自重キャンセラ36のシリンダ59とピストン61との位置が逆転している。つまり、シリンダ59は、XY‐ステージ部材32の貫通孔37に対して、下方へ開放するように貫通されている。なお、同一の構造物には同一の番号を付している。
球面座63は、エアベアリング66を介して、シリンダ59の上面59b上に非接触状態で支持されている。ピストン61は、エアベアリング62を介してシリンダ59内に非接触状態でその下方から挿入されている。ピストン61の下端部61bには、XY‐ステージ部材32に形成された貫通孔90を貫通して伸びるアーム部材91が取り付けられている。そして、アーム部材91の先端部には、Z‐干渉計67が設置されている。また、球面座63とシリンダ59との間にエアベアリング66が形成されていることから、X‐VCM80及びY‐VCM83の駆動により下部テーブル35がx軸方向及びy軸方向に移動するとき、下部テーブル35から球面部材64及びエアベアリング78を介して受ける力により、球面座63がシリンダ59の上面59b上をxy平面内で移動する。従って、下部テーブル35は、シリンダ59の上面59b上をx軸方向及びy軸方向へ案内される。
図12は、第2の基板ホルダ41を上方から見下ろした様子を示す斜視図である。図では、第2の基板ホルダ41の上面には第2の基板12が保持されている。また、図13は、同じ第2の基板ホルダ41を下方から見上げた様子を示す斜視図である。
第2の基板ホルダ41は、ホルダ本体110、吸着子111および電圧印加端子113を有して、全体としては第2の基板12よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体110は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。吸着子111は、鉄のような磁性体により形成され、第2の基板12を保持する表面において、保持した第2の基板12よりも外側である外周領域に複数配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個の吸着子111が配されている。電圧印加端子113は、第2の基板12を保持する面の裏面に埋設される。
ホルダ本体110は、その表面において第2の基板12を保持する領域が高い平坦性を有して、保持する第2の基板12に接する。また、ホルダ本体110は、保持した第2の基板12を吸着する領域の外側に、ホルダ本体110を表裏に貫通して形成された、それぞれ複数の位置決め穴112を有する。更に、ホルダ本体110は、保持した第2の基板12を吸着する領域の内側に、ホルダ本体110を表裏に貫通して形成された、複数の挿通孔72を有する。挿通孔72にはプッシュアップピン42が挿通され、第2の基板12は第2の基板ホルダ41から取り外される。
位置決め穴112は、位置決めピン等に嵌合して、第2の基板ホルダ41の位置決めに与する。吸着子111は、第2の基板12を保持する平面と略同じ平面内に上面が位置するように、ホルダ本体110に形成された陥没領域に配される。電圧印加端子113は、第2の基板12を保持する表面に対して裏面において、ホルダ本体110に埋め込まれる。電圧印加端子113を介して電圧を印加することにより、第2の基板ホルダ41と第2の基板12との間に電位差を生じさせて、第2の基板12を第2の基板ホルダ41に吸着する。第2の基板ホルダ41が下部テーブル35に載置されているときには、電圧印加端子113はESC端子73に接触して電力の供給を受ける。
第1の基板ホルダ25も第2の基板ホルダ41とほぼ同様の構成である。第1の基板ホルダ25が上部テーブル24に載置されているときには、電圧印加端子113はESC端子27に接触して電力の供給を受ける。
図14は、重ね合わせ装置10における位置合わせ工程を説明するための制御フロー図である。各々のステップは、それぞれのセンサからの出力を受けて、またはそれぞれの駆動部に対して、制御部が制御を行う。
ステップS101では、第1の基板ホルダ25を上部テーブル24へ、第2の基板ホルダ41を下部テーブル35へ載置する。第1の基板11は、重ね合わせ装置10へ搬入される前に、プリアライナー装置において第1の基板ホルダ25に載置され、静電吸着されている。したがって、重ね合わせ装置10に搬入される段階では、第1の基板11と第1の基板ホルダ25は一体化されている。プリアライナー装置ではさらに、第1の基板11を第1の基板ホルダ25に載置する時に、第1の基板11上に設けられた複数のアライメントマークを検出し、この情報を制御部に接続されている記憶部に記憶する。同様に、第2の基板12も、プリアライナー装置において第2の基板ホルダ41と一体化される。また、同時に第2の基板12を第2の基板ホルダ41に載置する時に、第2の基板12上に設けられた複数のアライメントマークを検出し、この情報を制御部に接続されている記憶部に記憶する。
一体化された第1の基板11と第1の基板ホルダ25、及び、第2の基板12と第2の基板ホルダ41はそれぞれ重ね合わせ装置10に搬入される。重ね合わせ装置10への搬入は、ロボットアームにより行われる。ロボットアームの先端部である基板ホルダを保持するハンド部には、基板ホルダを保持したときに基板ホルダへ電力を供給する電力供給端子が設けられている。これにより、基板ホルダは静電吸着力を維持でき、上部テーブル24または下部テーブル35へ載置されるまで基板を固定しておくことができる。
ステップS102では、XY‐渦電センサ39及びZ‐渦電センサ40を用いてXY‐ステージ部材32と下部テーブル35の相対位置を検出する。検出された相対位置の情報は制御部に接続されている記憶部に記憶される。これにより、X‐駆動部33及びY‐駆動部34によりXY‐ステージ部材32を粗動させても、その移動量に伴って下部テーブル35の位置を算出することができる。なお、このときAFセンサ79を用いて下部テーブル35に対する上部テーブル24の傾きも検出する。
ステップS103では、記憶部に記憶された各々の位置情報に基づいて、基準面である上部テーブル24の下面24aに対する下部テーブル35の目標位置と、その目標位置へ至る駆動経路を決定する。目標位置については、例えば、第1の基板11の複数のアライメントマークと、第2の基板12の複数のアライメントマークが重ね合わされたときに、相互の位置ずれ量が最も小さくなるように統計的に決定されるグローバルアライメント法等を用いて演算され、決定される。駆動経路については、X‐駆動部33及びY‐駆動部34によるxy方向への移動と自重キャンセラ36によるz方向への移動の後に、X‐VCM80、Y‐VCM83及びZ‐VCM86による微調整のための駆動を組み合わせて決定される。
ステップS103で目標位置と駆動経路が決定されると、X‐駆動部33及びY‐駆動部34によるxy方向への移動とZ‐VCM86によるz方向への移動が行われ、およそ目標位置の近傍まで下部テーブル35が移動される。そしてステップS104では、下部テーブル35のx軸方向及びy軸方向の正確な位置を、X‐干渉計29及びY‐干渉計30により検出する。そして、目標位置と現在位置との差を算出しながら、ステップS105で、X‐VCM80及びY‐VCM83により微調整を行う。
さらに、ステップS106で、下部テーブル35のz軸方向の正確な位置を、Z‐干渉計67により検出する。そして、目標位置と現在位置との差を算出しながら、ステップS107で、Z‐VCM86により下部テーブル35を上部テーブル24方向へ漸進させる。このとき、制御部は、Z‐VCM86の駆動による移動量に応じて、その移動量が等しくなるように自重キャンセラ36の圧力室60の圧力を調整して、自重キャンセラ36が下部テーブル35を含むユニット分の自重を支持するように制御する。
ステップS108では、ロードセル26の出力を監視しており、下部テーブル35が上部テーブル24方向へ近づき、最初に第2の基板12が第1の基板11に接触する時点を検出する。ロードセル26による検出がされない間は、ステップS104からステップS107を繰り返す。
ステップS109では、下部テーブル35の傾きを検出する。ロードセル26は上部テーブル24と上板部材22との間に複数設けられており、第1の基板11に対する第2の基板12の接触状態を圧力分布として検出できる。下部テーブル35が傾いていると、第2の基板12は第1の基板11に対して点接触することになるので、特定の領域に荷重が集中する。ロードセル26はこれを検出して下部テーブルの傾きを検出する。
ステップS109で下部テーブル35に傾きがあると判断されるとステップS110へ進み、ロードセル26の出力を用いて、Z‐VCM86により下部テーブル35の傾きを修正する。傾きの修正を終えると再度ステップS109へ進む。
ステップS109で傾きがないと判断されると、第1の基板11と第2の基板12は面と面で接触されたとして、ステップS111へ進み、第1の基板ホルダ25の吸着子111と、第2の基板ホルダ41の吸着子111を作用させて、2つの基板ホルダを互いにクランプさせる。つまり、第1の基板ホルダ25と第2の基板ホルダ41が、正確に位置合わせされた第1の基板11と第2の基板12を挟み込んで、一体的に固定された状態をつくりあげる。
ステップS112では、第1の基板ホルダ25の離脱動作と、自重キャンセラ36による下部テーブル35のz軸方向への引き下げ動作を協調させ、一体化された第1の基板ホルダ25、第2の基板ホルダ41、第1の基板11及び第2の基板12を下部テーブル35に載置された状態にする。そして、プッシュアップピン42を動作させ、これらを下部テーブル35から持ち上げた状態にして、ロボットアームにより重ね合わせ装置10から搬出する。以上により、一連の位置合わせ工程を終了する。
以上、上記の実施形態では、下部テーブル35を6つのアクチュエータで駆動して、並進3自由度と回転3自由度の6自由度で制御した。しかし、例えばz軸周りの回転駆動のみは上部テーブル24側に持たせて、下部テーブル35を5自由度で制御する構成としても、重ね合わせに必要な応答性は十分得られる。また、上記の実施形態では、伸縮機構がピストン61で構成された例を示した。しかし、伸縮機構を例えばダイヤフラムやベローズ等で構成することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。