JP5548948B2 - 薄板金属基材上に金属ガラス溶射被膜層が形成された複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
溶射は、大面積の基材表面に金属及び金属を含むサーメットの被膜を比較的簡便に直接的に形成できること、基材表面にのみ高機能性材料を被覆するので軽量化や経済性に優れていること、ドライプロセスであり廃水処理などの問題がない、などの点で他の金属被膜形成方法に比べて有利な方法である。
例えば、プラズマ溶射は短い溶射距離では、高温のプラズマジェットの影響を受け、薄板金属基材の場合には基材の変形や破壊を免れない。高速フレーム溶射(HVOF、HVAFなど)は、プラズマ炎に比べ温度の低い燃焼炎中で高速の溶射粒子を衝突させるので、薄板金属基材の場合には、高速のジェット噴流となった熱を伴う溶射フレームの衝撃波と、溶融不十分で硬い固体質が残る粒子の強い衝撃力で基材の破壊は免れないため、適用されなかった。
このように、薄板金属基材への金属やサーメットの溶射において、基材を破壊せず、しかも緻密で基材への密着度の高い高品位の溶射被膜層を形成することができていないのが現状であった。
しかしながら、特許文献3記載の方法を用いた場合であっても、薄板金属基材が破壊されてしまう場合があった。
また、得られた複合材料の金属ガラス溶射被膜層を過冷却液体状態で加圧処理することにより、溶射被膜層の基材への密着性、緻密性が向上し、溶射被膜層を均質化できることも見出し、本発明を完成するに至った。
溶射によって、金属ガラス粉体の少なくとも一部が過冷却液体状態にまで加熱されて300m/s以上の粒子速度で前記基材表面に凝固及び積層して溶射被膜層を形成する溶射工程を備え、
前記金属ガラスの過冷却液体温度領域△Txが30℃以上でガラス遷移温度Tgが500℃以下であることを特徴とする。
なお、本発明において基材の破壊とは、溶射によって基材に貫通孔、粉砕、破断、分断、割れ、歪みなどを生じることを意味する。
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、アモルファス相の金属ガラス粉末を用いることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、基材温度が250℃以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、さらに金属ガラス溶射被膜層を過冷却液体状態で加圧処理することを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、金属ガラスが複数の元素から構成され、構成元素として少なくともFe、Co、Ni、Ti、Zr、Mg、Cu、Pdの何れか一つの元素を含むことを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の方法において、金属基材の融点が金属ガラスのガラス遷移温度以上であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記複合材料において、金属ガラス溶射被膜層がアモルファス相であることを特徴とする金属ガラス複合材料を提供する。
また、本発明は、前記複合材料において、金属ガラス溶射被膜層の気孔率が2%以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の複合材料において、金属基材の融点が金属ガラスのガラス遷移温度以上であることを特徴とする金属ガラス複合材料を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の複合材料において、金属ガラス溶射被膜層の厚みが20μm〜700μmであることを特徴とする金属ガラス複合材料を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の複合材料において、金属ガラス溶射被膜層の表面粗さRaが3μm以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載の複合材料を用いたことを特徴とする電気接点を提供する。
従って、本発明によれば、歩留まりや信頼性の高い複合材料が提供できる。また、基材が大面積になればなるほど、それを被覆する金属ガラス溶射被膜層が不均一となる確率も高くなり、変形加工時の不具合も生じやすくなるので、本発明は特に有用である。
本発明で用いる薄板金属基材とは、厚みが5〜300μmのものを意味する。好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。基材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、ニッケル、モリブデン、ならびにこれら金属の少なくとも一種を主成分とする合金から選択される金属材料が好適に用いられる。
なお、基材は、金属ガラス溶射被膜の接合性を高めるために、ブラスト処理など公知の方法による基材表面の粗面化処理を施して使用してよい。
薄板金属基材の温度は、溶射中250℃以下、さらには200℃以下を確保することが重要であり、より好ましくは160℃以下である。基材温度が高くなると溶射中に基材の破壊を生じやすくなる。
金属ガラスは、加熱すると結晶化前に明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体領域を示すことが一つの大きな特徴である。結晶化開始温度(Tx(K))とガラス遷移温度(Tg(K))の間の温度領域△Tx=Tx−Tgで示される過冷却液体温度領域では、粘性流動状態(過冷却液体状態)となって変形抵抗が著しく減少する。通常のアモルファス合金では△Txはほぼ0である。
金属ガラスの種類は特に制限されず、目的とする機能に応じて公知のものを適宜選択して用いればよい。例えば、金属ガラスが複数の元素から構成され、その主成分として少なくともFe、Co、Ni、Ti、Zr、Mg、Cu、Pdのいずれかひとつの原子を30〜80原子%の範囲で含有するものが挙げられ、好適な例としてはFe基又はNi基を主成分とする金属ガラスが挙げられる。
Fe基金属ガラスの好ましい組成としては、例えば、Fe76P5Si5.7B9.5C3.8が挙げられる。
Ni基の金属ガラスの好ましい組成としては、例えば、Ni56Cr24P16B4、Ni65Cr15P16B4等が挙げられる。
Cu基の金属ガラスの好ましい組成としては、例えば、Cu55Zr40Al5(以下、下付数字は原子%を示す)が挙げられる。
Zr基の金属ガラスの好ましい組成としては、例えば、Zr60Al15Ni7.5Co2.5Cu15が挙げられる。
+Hf)aTib又はCu100-a-b-c-d(Zr+Hf)aTibMcTd[ただし式中、Mは、Fe、Cr、Mn、Ni、Co、Nb、Mo、W、Sn、Al、Ta、希土類元素よりなる群から選択される1種又は2種以上の元素、Tは、Ag、Pd、Pt、Auよりなる群から選択される1種又は2種以上の元素であり、5<a≦55原子%、0≦b≦45原子%、30<a+b≦60原子%、0.5≦c≦5原子%、0≦d≦10原子%である]で示される組成を有するもの等が挙げられる(特開2002−256401号公報参照)。また、Ni基としては、Ni80−xCrxP16B4[ただし、3≦x≦30原子%]で示される組成を有するもの等が挙げられる(Material Transactions,Vol.48,No.12(2007)pp.3176〜3180参照)。また、Fe基としては、Fe100-a-b-cCraTMb(C1-XBXPy)c[ただし、式中、TM=V,Nb,Mo,Ta,W,Co,Ni,Cuの少なくとも一種以上、a,b,c,x,yは、それぞれ5原子%≦a≦30原子%,5原子%≦b≦20原子%,10原子%≦c≦35原子%,25原子%≦a+b≦50原子%,35原子%≦a+b+c≦60原子%,0.11≦x≦0.85,0≦y≦0.57]で示される組成を有するもの等が挙げられる(特開2001−303218号公報参照)。
何れも、金属ガラスの過冷却液体温度領域△Tx=Tx−Tgが30K以上、ガラス遷移温度Tgが500℃以下(773K以下)であるものが好適に使用される。
本発明においては、上記のような金属ガラスの粉体を用い、その少なくとも一部が過冷却液体状態にまで加熱され、300m/s以上の粒子速度で前記基材表面に凝固及び積層するように溶射する。
粒子速度が300m/s未満では緻密性や密着性が不十分となる。
また、本発明では金属ガラス粉体を溶融せずに過冷却液体状態にして溶射するので、アモルファス相の金属ガラス粉体を溶射した場合には、酸化や結晶化の影響を受けずにアモルファス相の金属ガラス溶射被膜が形成される。通常の溶射のように溶射粒子を溶融する溶射方法では酸化により溶射被膜特性が低下してしまう。また、溶射粒子が溶融状態から冷却されて固化する際には冷却速度の影響を受けるので、冷却速度が遅いと結晶化を生じてしまい、アモルファス相溶射被膜を安定的に製造することが困難である。さらに、溶融状態から冷却されて固化する場合には、過冷却液体状態から冷却された場合に比べて凝固収縮が大きい。
なお、溶射粒子速度を300m/s以上にできる溶射方法としてコールドスプレーもあるが、コールドスプレーは573〜773K程度に加熱したガスで粒子を加速し、粒子の衝突速度を500m/s以上とするもので、金属ガラス粉末粒子が過冷却液体状態となるような熱量を十分与えることは困難である。
また、溶射では通常搬送ガスとしてN2ガスが使用されるが、窒化物の形成により被膜組成や緻密性などに影響を及ぼすことがある。これは、空気(ドライエアー)、酸素、不活性ガス(Ar、He等)などを搬送ガスとして用いることにより改善される。空気や酸素では酸化の懸念があるので、最も好ましくは搬送ガスとして不活性ガスを用いる。
溶射被膜は、様々な形状の基材上に形成することができ、また、マスキング等によりパターン化して形成することもできる。表面に凹凸形状を有するものや多孔質体を基材として用いることもできる。
均一な金属ガラスのアモルファス固体相からなり、気孔がほとんどなくピンホールのない溶射被膜を形成するために、アモルファス相の金属ガラス粒子を溶射原料とし、金属ガラス粒子を溶融させず、その少なくとも一部が過冷却液体状態で溶射することが好適である。
また、スプラットは過冷却液体状態のまま冷却されるので、結晶相を生成せず、アモルファス相のみが得られる。
従って、アモルファス相の金属ガラス粒子を溶射し、金属ガラス溶射粒子が溶融されずに過冷却液体状態で基材表面において凝固及び積層して溶射被膜を形成すれば、均一な金属ガラスのアモルファス固体相からなり、気孔がほとんどなくピンホールのない溶射被膜を得るのに有利である。
これに対して、金属ガラスが溶融体から固体へ結晶化しない冷却速度で冷却された場合、結晶化による凝固収縮を生じることなく過冷却液体状態となることができ、その体積は過冷却液体領域の熱膨張係数に従って連続的且つ僅かに収縮する。そして、金属ガラスが融点以下で溶融することなく過冷却液体状態から冷却された場合には、溶融体から冷却された場合に比べてさらに収縮量が少なくなる。
よって、金属ガラスを溶融させずに過冷却液体状態で溶射すれば、基材と溶射被膜との接合面に発生する残留応力が非常に小さくなるので、基材の変形や破壊、さらには溶射被膜の剥離の抑制に効果的であり、特に、薄い基材において有効である。また、溶射被膜中の残留応力は膜厚が大きいほど大きくなるが、本発明においては基材厚みと同等以上、さらには2倍以上の厚みの溶射被膜層の形成も可能である。
基材が薄くなればなるほど破壊・変形されやすくなるため、溶射温度や速度を低下させるなど溶射条件を緩和しなければならない場合があると、溶射被膜の密着性、緻密性が低下することがある。
本発明においては、金属ガラスを基材表面に溶射して被膜を形成した後、金属ガラス溶射被膜層を過冷却液体状態で加圧することにより、溶射被膜層と基材との密着性、溶射被膜層の緻密性を高めることができる。
金属ガラス溶射被膜層を過冷却液体状態で加圧すれば、このような潜在的内部欠陥を拡散させて被膜を均質化することができ、変形加工時の溶射被膜の欠陥形成や破損の低減にも有効である。
一般に、金属ガラスのガラス遷移温度TgはDSC(示差走査熱量計)により測定されるが、金属ガラスのガラス化によるDSC曲線の吸熱方向へのシフトはカーブを描くため、通常はDSC曲線のベースラインと吸熱シフトの接線との交点の温度が便宜上ガラス転移温度Tgとして測定される。この結果、Tgは実際の吸熱反応開始温度(ガラス化開始温度)よりも高く測定される。よって、Tgよりも低い温度であってもガラス化開始温度(吸熱反応開始温度)以上であれば金属ガラスをガラス化することが可能である。具体的には、例えばガラス遷移温度Tg(K)の85%以上の温度で加圧処理を行うことが好適であり、さらにはTg(K)以上で加圧処理を行うことが好適である。
なお、本発明においてTg(K)、Tx(K)は何れも、アルゴン雰囲気下、昇温速度20.0℃/分の条件下でDSCにより測定した値である。
目的とする温度とするためには、複合材料を直接加熱してもよいし、金型やローラー、雰囲気から間接的に熱を供給してもよい。また、その両者を組み合わせることもできる。
なお、加圧する際にひずみ速度[=(変形量/物体の長さ)/変形に要した時間]が速すぎる場合、ストレスオーバーシュートが発生して均質化を妨げることがある。加圧時のひずみ速度は7.0×10−1/s以下とすることが好ましい。
また、加圧は通常大気中で行えばよいが、酸化の影響が懸念される場合には不活性ガス中で行ってもよい。
複合材料、及び上記のように加圧処理した複合材料は、公知の方法により変形加工することができるが、加圧処理(均質化処理)と同時に、あるいはその後に、複合材料を変形加工することが好ましい。変形加工は、金属ガラス溶射被膜層のみを変形(例えば、金属ガラス層表面に凹凸をつけるなど)してもよい。また、金属ガラス溶射被膜層を基材と一体に同時に変形してもよく、例えば、金型等によりプレス加工して複合材料全体を曲げることができる。また、圧延、絞りなども挙げられる。
具体的には、例えば、金属ガラスのガラス遷移温度Tg(K)の85%以上の温度〜結晶化開始温度Tx(K)の100%以下の温度の範囲内で設定することが好適であり、さらにはTg〜0.97Txの温度領域内で変形加工することが好適である。
また、変形加工時の曲げと同時に金属ガラス層表面に所望の形状(例えば凹凸や鏡面)が形成されるように金型を用いることも可能である。
以下の試験例において、基材は、裏面にステンレス(アルミニウム、銅などの伝熱性の良い金属でもよい)製の裏当て材に貼り付け、裏当て材を台座に動かないよう固定して溶射を行った。なお、基材を冷却するため溶射面には1〜2本のノズルから、裏当て材の後ろには適宜、エアーをあて、溶射を行った。基材温度は熱電対により測定した。各試験例で用いた測定方法は次の通りである。
示差走査熱量計DSC8270((株)リガク製)を用いて、昇温速度20.0℃/分、アルゴン雰囲気中で測定した。
溶射後の基材について、貫通孔、粉砕、破断、分断、割れ、歪みなどの有無を観察した。なお、歪みとは、基材表面にできた起伏が、溶射後の複合材料厚みの2.5倍を超えるようなものをいう。
(株)リガク製 X線回折装置RAD―3Dにより測定したX線回折図から次の基準で評価した。
アモルファス単一相:ハローパターンが認められ且つ結晶性ピークがない
一部結晶 :ハローパターンと結晶性ピークの両方が認められる
結晶 :ハローパターンが認められず結晶性ピークが認められる
溶射被膜断面を樹脂埋め込みして研磨後、画像解析により気孔率を測定した。
(ピンホール)
溶射被膜断面を樹脂埋め込みして研磨後、画像解析により貫通孔の有無を測定した。
RaはJIS B0601に規定する算術平均粗さであり、その測定は、(株)ミツトヨ製 表面粗さ測定器SV−514(評価長さ:4.0mm、カットオフ値:0.8mm)で行った(n=3)。
ステンレス:厚さ0.1mm又は0.3mm(JIS G4305 SUS304)、
アルミニウム:厚さ11μm(日本製箔製アルミニウムホイル)、厚さ100μm(JIS H4000 1N30)、厚さ200μm、300μm及び1000μm(JIS H4000 A1050P)、
真鍮:厚さ250μm(JIS H3100 C2801P)
アモルファス単一相からなるNi65Cr15P16B4金属ガラスのガスアトマイズ粉末(25〜53μm)をステンレス基材(50×50×0.1mm、ブラスト処理仕上げ)に高速プラズマ装置により溶射して金属ガラス複合材料を得た(試験例1−1)。金属ガラス粉末をDSC測定したところ、ガラス遷移温度Tgは390℃(663K)、結晶化開始温度Txは430℃(703K)であった。
図1からわかるように、ステンレス薄板基材に対してピンホールのない金属ガラス溶射被膜層(約60μm)が基材両面に形成され、基材の破壊や変形は全く認められなかった。また、X線回折から、得られた複合材料の金属ガラス溶射被膜層がアモルファス単一相であることを確認した。また、溶射被膜層の気孔率は約1.5%であった。
なお、溶射条件は次の通りであった。
プラズマ溶射装置:Sulzer Metco社製 TriplexPro−200
(高速モード)
電流:450A
電力:57Kw
使用プラズマガス:Ar95(NLM)、He25(NLM)
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):150mm
溶射ガン移動速度:670mm/sec
基材温度:125℃
何れの場合にも、試験例1−1の場合と同様に、ピンホールのない金属ガラス溶射被膜層が形成され、基材の破壊は全く認められなかった。また、X線回折から、得られた複合材料の金属ガラス溶射被膜層がアモルファス単一相であることを確認した。また、溶射被膜層の気孔率は何れも2%未満であった。
表4は試験例1−8において、下記条件で高速フレーム溶射あるいはプラズマ溶射を行った場合の結果を示しているが、プラズマ溶射では著しい基材の破壊が認められ、気孔率も高かった。また、高速フレーム溶射でも基材の破壊が認められた。
HVOF溶射装置:PRAXAIR/TAFA社製 JP−5000
粉末搬送ガス:N2
燃料:灯油、6GPH
酸素:2000SCFH
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):380mm
溶射ガン移動速度:670mm/sec
基材温度:160℃
プラズマ溶射装置:Sulzer Metco社製 F4
電流:600A
電圧:70V
使用プラズマガス:Ar41(NLM)、水素12(NLM)
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):120mm
溶射ガン移動速度:670mm/sec
基材温度:160℃
試験例1−1で得られた複合材料を、減圧して1.8KPaとし、温度400℃、圧力100KN、送り速度2mm/min、保持時間120secで、平滑面を有する金型(20×20×厚み15mm、材質:WC)により基材の両側からプレスした。結果を図2に示す。
図2からわかるように、過冷却液体温度領域でプレスすることによって溶射被膜と基材との密着性が強化され、また、溶射被膜における気孔率は1%以下にまで緻密化され、溶射被膜がより均質化された。
試験例2でプレスして得られた複合材料を、減圧して1.8KPaとし、温度400℃、圧力40KN、送り速度2mm/min、保持時間120secで、凹凸金型(26×26mm、材質:耐熱鋼)により基材の両側からプレスした。結果を図3に示す。
図3からわかるように、過冷却液体温度領域で変形加工することによって、基材の破壊、さらには溶射被膜の剥がれ、破断、劣化を招くことなく変形加工することができた。
溶射材料としてアモルファス単一相のNi65Cr15P16B4金属ガラスのガスアトマイズ粉末(25〜53μm)を、基材として厚み11μmのアルミ箔(50×50mm:ブラスト処理せず)を用い、試験例1−3と同様に高速プラズマ溶射して、複合材料を得た。この複合材料を試験例2と同様にプレス処理した。プレス条件は、圧力を30KN、保持時間を60secとした以外は、試験例2と同様であった。
プレス条件の圧力を100KN、保持時間を150secとした以外は、試験例4と同様にして複合材料を得た。得られた複合材料を、圧力を40KN、保持時間を120secとした以外は、試験例3と同様にして凹凸金型により変形加工処理した。結果を図5に示す。
溶射材料としてアモルファス単一相のFe64Cr10Mo5C8P13金属ガラスのガスアトマイズ粉末(25〜53μm)を、基材としてステンレス板(50×100×0.3mm、ブラスト処理仕上げ)を用い、高速プラズマ溶射装置により溶射を行って基材片面に約160μmの金属ガラス溶射被膜層を形成し、金属ガラス複合材料を得た。金属ガラス粉末をDSC測定したところ、ガラス遷移温度Tgは464℃(737K)、結晶化開始温度Txは506℃(779K)であった。溶射条件は試験例1と同様であった。得られた複合材料は基材の破壊・変形なく、気孔率2%以下のアモルファス相からなる溶射被膜が基材に強固に密着したものであった。
溶射材料としてアモルファス単一相のFe64Cr10Mo5C8P13金属ガラスのガスアトマイズ粉末(25〜53μm)を、基材として厚み11μmのアルミ箔(50×50mm:ブラスト処理せず)を用い、試験例6と同様に高速プラズマ溶射して複合材料を得た。
この場合にも、試験例1−3と同様に、金属ガラス溶射被膜層が形成され、基材の破壊は全く認められなかった。また、X線回折から、得られた複合材料の金属ガラス溶射被膜層がアモルファス単一相であることを確認した。
また、得られた複合材料について、温度を480℃とした以外は、試験例2と同様にして平滑面を有する金型により基材の両側からプレスした。結果を図6に示す。
比較のために、溶射材料としてサーメット:WC/12%Co粉末(15〜45μm、ユテク社製)を、基材として厚み11μmのアルミ箔(50×50mm:ブラスト処理せず)を用い、試験例1の高速プラズマ溶射装置(高速モード)を用い、下記条件で溶射を行って複合材料を得た。結果を図7に示す。
金属ガラスを溶射した図4と比べて、本試験例の複合材料では基材が破壊(破断、分断)され、溶射被膜の積層状態が非常に劣悪で、気孔やピンホールが著しく、複合材料全体としても著しく変形していた。また、WC/12%Coは過冷却液体温度領域を持たないため、金属ガラスを用いた本発明の複合材料のように、加熱下でのプレスによる複合材料の変形や溶射被膜品質の矯正・改善はできなかった。
電流:400A
電力:43Kw
使用プラズマガス:Ar80(NLM)、He5(NLM)
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):130mm
溶射ガン移動速度:670mm/sec
溶射材料としてCu55Zr40Al5金属ガラスのガスアトマイズ粉末(25〜53μm、ガラス遷移温度Tg:440℃(713K)、結晶化開始温度Tx:515℃(788K))を、基材としてステンレス板(50×100×0.3mm、ブラスト処理仕上げ)を用い、基材温度125℃で高速プラズマ溶射装置により溶射を行って基材片面に約160μmの金属ガラス溶射被膜層を形成し、金属ガラス複合材料を得た。溶射条件は試験例1と同様であった。得られた複合材料は、基材の破壊・変形がなく、気孔率2%以下のアモルファス相からなる溶射被膜が基材に強固に密着したものであった。
溶射材料としてNi65Cr15P16B4金属ガラスのガスアトマイズ粉末(25〜53μm)を、基材として厚み11μmのアルミ箔(50×100mm:ブラスト処理せず)を用い、試験例1−4と同様に基材両面に溶射して金属ガラス溶射被膜層(約60μm)を形成し、複合材料を得た。この複合材料を曲げ半径32.5mmのロールを使用して固定し、90°に曲げて元に戻し、次に反対側に曲げて元に戻すことを繰り返す試験においても、剥離は認められない密着性を有するものであった。
Claims (15)
- 厚みが5〜300μmの金属基材の表面に、基材が破壊されることなく、貫通孔(ピンホール)のない金属ガラス溶射被膜層が形成された金属ガラス複合材料の製造方法であって、
溶射によって、金属ガラス粉体の少なくとも一部が過冷却液体状態にまで加熱されて300m/s以上の粒子速度で前記基材表面に凝固及び積層して溶射被膜層を形成する溶射工程を備え、
前記金属ガラスの過冷却液体温度領域△Txが30℃以上でガラス遷移温度Tgが500℃以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。 - 請求項1記載の方法において、溶射が粒子速度300m/s以上のプラズマ溶射であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
- 請求項1又は2記載の方法において、アモルファス相の金属ガラス粉末を用いることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
- 請求項1〜3の何れかに記載の方法において、基材温度が250℃以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
- 請求項1〜4の何れかに記載の方法において、さらに金属ガラス溶射被膜層を過冷却液体状態で加圧処理することを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
- 請求項1〜5の何れかに記載の方法において、金属ガラスが複数の元素から構成され、構成元素として少なくともFe、Co、Ni、Ti、Zr、Mg、Cu、Pdの何れか一つの元素を含むことを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
- 請求項1〜6の何れかに記載の方法において、金属基材の融点が金属ガラスのガラス遷移温度以上であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
- 厚みが5〜300μmの金属基材の表面に、基材が破壊されることなく、貫通孔(ピンホール)のない金属ガラス溶射被膜層が形成され、金属ガラスが過冷却液体温度領域△Txが30℃以上でガラス遷移温度Tgが500℃以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8記載の複合材料において、金属ガラス溶射被膜層がアモルファス相であることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8又は9記載の複合材料において、金属ガラス溶射被膜層の気孔率が2%以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8〜10の何れかに記載の複合材料において、金属ガラスが複数の元素から構成され、構成元素として少なくともFe、Co、Ni、Ti、Zr、Mg、Cu、Pdの何れか一つの元素を含むことを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8〜11の何れかに記載の複合材料において、金属基材の融点が金属ガラスのガラス遷移温度以上であることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8〜12の何れかに記載の複合材料において、金属ガラス溶射被膜層の厚みが20μm〜700μmであることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8〜13の何れかに記載の複合材料において、金属ガラス溶射被膜層の表面粗さRaが3μm以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項8〜14の何れかに記載の複合材料を用いたことを特徴とする電気接点。
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