次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は配管200へのガス濃度検出センサー100の取り付け状態の概略説明図、図2はガス濃度検出センサー100の構成を表す縦断面図、図3は図2のA−A断面図である。
図1に示すように、ガス濃度検出センサー100は車両のエンジンからの排気経路である配管200内に取り付けられており、エンジンから排出された被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO2等のガス成分のうち少なくともいずれか1つの濃度を検出するようになっている。
ガス濃度検出センサー100は、図2に示すように、被測定ガス中のガス成分の濃度を検出する機能を有するセンサー素子110と、このセンサー素子110を保護する保護カバー120とを備えている。
センサー素子110は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる。センサー素子110は、センサー素子110を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒーターを内部に備えている。このようなセンサー素子110の構造やガス成分の濃度を検出する原理は公知であり、例えば特開2008−164411号公報に記載されている。
保護カバー120は、センサー素子110の周囲を取り囲むように配置されている。この保護カバー120は、センサー素子110の先端を覆う内側保護カバー130と、内側保護カバー130を覆う外側保護カバー140とを有している。また、内側保護カバー130と外側保護カバー140とに囲まれた空間として第1ガス室122,第2ガス室126が形成され、内側保護カバー130に囲まれた空間としてセンサー素子室124が形成されている。
内側保護カバー130は、金属(例えばステンレス鋼)製の部材であり、円筒状の大径部132と、円筒状で大径部132よりも径の小さい第1胴部134と、円筒状で第1胴部134よりも径の小さい第2胴部136と、有底筒状で第2胴部136よりも径の小さい先端部138とを有している。また、内側保護カバー130は、大径部132と第1胴部134とを接続する段差部133と、第1胴部134と第2胴部136とを接続する段差部135と、第2胴部136と先端部138とを接続する段差部137とを有している。なお、大径部132,第1胴部134,第2胴部136,先端部138は中心軸が同一である。大径部132は、金属製の主体金具102に内周面が当接しており、これにより内側保護カバー130が主体金具102に固定されている。第1胴部134,第2胴部136は、センサー素子110の側面を覆うように位置している。第1胴部134には、第1ガス室122とセンサー素子室124とに通じる内側ガス孔134aと、内側ガス孔134aを経てセンサー素子室124に流入する被測定ガスの流れを規制する板状のガイド部134bとがそれぞれ等間隔に6箇所形成されている(図3参照)。この内側ガス孔134aとガイド部134bとは1対1に対応しており、ガイド部134bは対応する内側ガス孔134aとセンサー素子110との間に位置するように形成されている。また、複数のガイド部134bは、回転対称(6回対称)となるように形成されている。先端部138の側面には、センサー素子室124と第2ガス室126とに通じるガス通過孔138aが等間隔に6箇所形成されている。ガス通過孔138aは、ガス通過孔138aの中心軸に垂直な断面が真円となるように形成されている。
外側保護カバー140は、金属(例えばステンレス鋼)製の部材であり、円筒状の大径部142と、大径部142に接続しており大径部142よりも径の小さい円筒状の胴部144と、有底筒状で胴部144よりも径の小さい先端部146とを有している。また、外側保護カバー140は、胴部144と先端部146とを接続する段差部145を有している。なお、大径部142,胴部144,先端部146の中心軸はいずれも内側保護カバー130の中心軸と同一である。大径部142は、主体金具102及び大径部132に内周面が当接しており、これにより外側保護カバー140が主体金具102に固定されている。胴部144は、第1胴部134,第2胴部136の外周面を覆うように位置しており、外側保護カバー140の外側と第1ガス室122とに通じる第1外側ガス孔144aが等間隔に6箇所形成されている。この第1外側ガス孔144aは、円形に開けられた孔であり、胴部144の側面と段差部145の底面との境界部分である第1角部144bに位置している。また、第1外側ガス孔144aは、第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°となり、且つ、第1外側ガス孔144aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。なお、ここでは内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成しているが、実施形態は特にこれに限定されるものではなく、例えばなす角が90°以外の場合でも本発明の効果を奏する。図2の第1外側ガス孔144a周辺を拡大した部分断面図を図4に示す。図4に示すように、第1外側ガス孔144aの外部開口面(破線a)と段差部145の底面(破線b)とのなす角が45°となっている。また、第1外側ガス孔144aの内周面144cと第1外側ガス孔144aの外部開口面(破線a)とのなす角が90°となっている。先端部146は、先端部138を覆うように位置していると共に、内周面が第2胴部136の外周面と当接している。また、先端部146の側面と底面との境界部分である第2角部146bには、外側保護カバー140の外側と第2ガス室126とに通じる第2外側ガス孔146aが等間隔に6箇所形成されている。この第2外側ガス孔146aは、円形に開けられた孔であり、第1外側ガス孔144aと同様に、第2外側ガス孔146aの外部開口面と先端部146の底面とのなす角が45°となり、且つ、第2外側ガス孔146aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。また、第2外側ガス孔146aの延長上の領域以外の位置にガス通過孔138aが位置するように、第2外側ガス孔146aとガス通過孔138aとの位置関係が定められている。図2の第2外側ガス孔146a及びガス通過孔138a周辺を拡大した部分断面図を図5に示す。図5に示すように、第2外側ガス孔146aの中心軸に沿った方向(外側保護カバー140の中心軸方向とのなす角が45°の方向)から仮想的に指向性をもつ光を照射すると、内側保護カバー130の先端部138の底面にその光が当たる領域146cが現れるが、この領域146cを第2外側ガス孔146aの延長上の領域という。ガス通過孔138aはこの領域146c以外に位置している。なお、6箇所の第1外側ガス孔144aの開口部の面積はいずれも同じであり、6箇所の第2外側ガス孔146aの開口部の面積はいずれも同じである。また、第2外側ガス孔146aの1つあたりの開口部の面積は、第1外側ガス孔の1つあたりの開口部の面積よりも大きい。したがって、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aはいずれも同じ個数(6箇所)であるため、第2外側ガス孔146aの総面積(1つの孔の面積×孔の個数)が第1外側ガス孔144aの総面積より大きい。なお、第1外側ガス孔144aおよび第2外側ガス孔146aは、自身の中心軸に垂直な断面が真円となるように形成されている。また、特に限定するものではないが、本実施形態では、第1外側ガス孔144aの直径は例えば0.8〜1.2mmの範囲の値であり、第2外側ガス孔146aの直径は例えば0.8〜1.2mmの範囲の値である。
第1ガス室122は、段差部133,135,第1胴部134,第2胴部136,大径部142,胴部144、段差部145により囲まれた空間である。センサー素子室124は、内側保護カバー130に囲まれた空間である。第2ガス室126は、段差部137,先端部138,146に囲まれた空間である。なお、先端部146の内周面が第2胴部136の外周面と当接しているため、第1ガス室122と第2ガス室126とは直接には連通していない。
次に、こうして構成されたガス濃度検出センサー100が、ガス成分の濃度を検出する際の被測定ガスの流れについて説明する。まず、配管200内を流れる被測定ガスの流量が急激に増大したときなどの過渡状態における被測定ガスの流れについて説明する。この場合、配管200内を流れる被測定ガスは、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aから外側保護カバー140内に入ろうとする。このとき、第2外側ガス孔146aの開口部の総面積が第1外側ガス孔144aの開口部の総面積よりも大きいため、第1外側ガス孔144aよりも第2外側ガス孔146aから入る被測定ガスが多くなる。これにより過渡状態では、第2ガス室126からガス通過孔138aを通ってセンサー素子室124内へ、センサー素子室124内から内側ガス孔134aを通って第1ガス室122へと向かう圧力が発生する。この圧力により第1ガス室122内の水は第1外側ガス孔144aから外側保護カバー140の外部に押し出されるため、第1ガス室122からセンサー素子室124へ水が到達しにくい。また、ガス通過孔138aは第2外側ガス孔146aの延長上以外の位置に開けられているため、過渡状態において第2外側ガス孔146aから水が入ったとしても、その水はセンサー素子室124内には到達しにくい。これらにより、センサー素子110への水の付着がより抑制される。
次に、過渡状態以外の状態における被測定ガスの流れについて説明する。この場合、外側保護カバー140の先端部146が有底筒状をしているため、先端部146の底面に沿った被測定ガスの流れにより第2ガス室126内の被測定ガスが第2外側ガス孔146aから吸い出されて抜けていく。これにより過渡状態以外の状態では、被測定ガスは第1外側ガス孔144aから第1ガス室122内に入り、第1ガス室122からセンサー素子室124、第2ガス室126を経由して第2外側ガス孔146aから外部に流出する。このとき、第2外側ガス孔146aの総面積が第1外側ガス孔144aの総面積よりも大きいため、第2外側ガス孔146aから被測定ガスを吸い出す力が大きくなる。また、第1外側ガス孔144aが第1角部144bに開けられており、第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°となっている。これにより、第1外側ガス孔144aから第1ガス室122内に入る被測定ガスは、第1外側ガス孔144aによってセンサー素子110の後端方向(図2における上方向)を向く流れになる。これらにより、第1外側ガス孔144aが外側保護カバー140の側面に開けられている場合と比較して、保護カバー120内のガスが被測定ガスによって置換される時間が短縮される。すなわち、ガス濃度検出センサー100の応答性が向上する。
また、第1外側ガス孔144aは第1角部144bに開けられており、第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°となっている。また、第2外側ガス孔146aは第2角部146bに開けられており、第2外側ガス孔146aの外部開口面と先端部146の底面とのなす角が45°且つ第2外側ガス孔146aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となっている。そのため、第1外側ガス孔144aや第2外側ガス孔146aが外側保護カバー140の側面に位置する場合と比べて、外側保護カバー140内に入った水が第1外側ガス孔144aや第2外側ガス孔146aから外部に逃げやすい。このことによっても、水がセンサー素子室124内に入ってセンサー素子110に付着するのを抑制できる。
さらに、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aは、等間隔に位置する6つの孔であるため、外側保護カバー140の外周面のいずれの方向から被測定ガスが流れてきても、必ず被測定ガスの上流に面する第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが存在し、必ず被測定ガスの下流に面する第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが存在することになる。そのため、配管200内にガス濃度検出センサー100を設置する向きに関わらず、確実に被測定ガスを外側保護カバー140及び内側保護カバー130内に取り込んでセンサー素子110によるガス成分の濃度の検出を行うことができる。
以上詳述した本実施形態によれば、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが上述した位置及び角度に開けられていることにより、センサー素子110への水の付着を抑制できる。また、第1外側ガス孔144aが上述した位置及び角度に開けられているため、ガス濃度検出センサー100の応答性が向上する。さらに、第2外側ガス孔146aの開口部の総面積が第1外側ガス孔144aの開口部の総面積よりも大きいため、センサー素子110への水の付着がより抑制でき、ガス濃度検出センサー100の応答性がより向上する。さらにまた、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aは等間隔に位置する6つの孔であるため、確実に被測定ガスを外側保護カバー140及び内側保護カバー130内に取り込んでセンサー素子110によるガス成分の濃度の検出を行うことができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実現し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aはいずれも6つの孔であるものとしたが、これに限られない。例えば、第1外側ガス孔144aが互いに等間隔に位置する3つ以上の孔であり、第2外側ガス孔146aが互いに等間隔に位置する3つ以上の孔であるものとしてもよい。こうすれば、上述した実施形態と同様に、必ず被測定ガスの上流に面する第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが存在し、必ず被測定ガスの下流に面する第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが存在することになるため、確実に被測定ガスを外側保護カバー140及び内側保護カバー130内に取り込むことができる。また、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aがいずれも2つの孔であってもよい。この場合、被測定ガスの上流に面する第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが存在し、且つ被測定ガスの下流に面する第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aが存在するように、配管200内にガス濃度検出センサー100を配置するものとすれば、確実に被測定ガスを外側保護カバー140及び内側保護カバー130内に取り込む効果が得られる。なお、第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aは、等間隔に位置しないものとしてもよい。
上述した実施形態では、6箇所の第1外側ガス孔144aの開口部の面積はいずれも同じであり、6箇所の第2外側ガス孔146aの開口部の面積はいずれも同じであるものとしたが、これに限られず、開口部の面積が異なる孔があるものとしてもよい。この場合でも、第2外側ガス孔146aの開口部の総面積が第1外側ガス孔144aの開口部の総面積よりも大きくなるようにすれば、過渡状態における第1ガス室122内の水を第1外側ガス孔144aから外側保護カバー140の外部に押し出す圧力や、過渡状態以外の状態における第2外側ガス孔146aから被測定ガスを吸い出す力が十分得られる。なお、第2外側ガス孔146aの開口部の総面積が第1外側ガス孔144aの開口部の総面積以下であったとしても、第1外側ガス孔144aが第1角部144bに開けられており、第2外側ガス孔が第2角部146bに開けられていることによる、センサー素子110への水の付着を抑制する効果やガス濃度検出センサー100の応答性を向上する効果は得られる。
上述した実施形態では、第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が45°であるものとしたが、これに限られない。例えば、なす角は10°〜80°の範囲の値としてもよい。この場合でも、第1外側ガス孔144aが第1角部144bに位置していれば、水が第1外側ガス孔144aから外部に逃げやすくなり、センサー素子110への水の付着を抑制する効果が得られる。なお、「第1ガス孔144aが第1角部144bに位置している」とは、第1角部144b(換言すると、胴部144の側面と段差部145の底面との間の立ち上がり部分)の少なくとも一部の領域を第1ガス孔144aが含んでいる(重複している)ことを意味する。なす角を45°以外の値とする場合、例えば図6(a)に示すように、第1外側ガス孔144aの中心軸の角度(第1外側ガス孔144aを開ける角度)を図2の第1外側ガス孔144aと同じ45°とし、孔を開ける位置をずらすようにして、第1外側ガス孔144aを形成してもよい。また、例えば図6(b)に示すように、第1外側ガス孔144aの中心軸の角度を図2とは異なる角度として、第1外側ガス孔144aを形成してもよい。図6(a),(b)において、破線で囲まれた部分が第1角部144bであり、一点鎖線が第1外側ガス孔144aの中心軸である。また、図6(a),(b)では、第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角はそれぞれ80°,50°である。図6(a),(b)のいずれの第1外側ガス孔144aも、第1角部144bの少なくとも一部の領域を第1ガス孔144aが含んでおり、且つ、第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角が10°〜80°の範囲内であるため、センサー素子110への水の付着を抑制する効果が得られる。また、第1外側ガス孔144aと同様に、第2外側ガス孔146aの外部開口面と先端部146の底面とのなす角が本実施形態では45°であるものとしたが、10°〜80°の範囲の値としてもよい。この場合でも、第2外側ガス孔146aが第2角部146bに位置していれば、水が第2外側ガス孔146aから外部に逃げやすくなり、センサー素子110への水の付着を抑制する効果が得られる。なお、「第2ガス孔146aが第2角部146bに位置している」とは、第2角部146b(換言すると、先端部146の側面と底面との間の立ち上がり部分)の少なくとも一部の領域を第2ガス孔146aが含んでいる(重複している)ことを意味する。
上述した実施形態のガス濃度検出センサー100の代わりに、図7に示すガス濃度検出センサー300を採用してもよい。ガス濃度検出センサー300は、保護カバー320として、内側保護カバー330と外側保護カバー340とを備えている。内側保護カバー330は、先端部338及びガス通過孔338aの形状が先端部138,ガス通過孔138aと異なる点,及び段差部137を備えない点以外は図2の内側保護カバー130と同じ構造であるため、先端部338,ガス通過孔338a以外の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。先端部338は、先端部138と異なり三角錐台を逆さにした形状をしている。また、ガス通過孔338aは、先端部338の底面の中心点に位置する円形の孔である。外側保護カバー340は、図2の外側保護カバー140と同じ構造であるため、構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。こうしたガス濃度検出センサー300においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
上述した実施形態のガス濃度検出センサー100の代わりに、図8に示すガス濃度検出センサー400を採用してもよい。ガス濃度検出センサー400の保護カバー420は、センサー素子110の先端を覆う第1内側保護カバー430と、第1内側保護カバー430を覆う第2内側保護カバー440と、第2内側保護カバー440を覆う外側保護カバー450とを備えた3重構造をしている。第1内側保護カバー430は、金属製の主体金具402に外周面が当接しており円筒状の大径部432と、有底筒状の先端部434とを有している。先端部434の側面には、ガス通過孔434aが12箇所形成されており、先端部434の底面の中心には、ガス通過孔434bが1箇所形成されている。なお、ガス通過孔434aは、ジグザグ状に軸方向(図8の上下方向)に2段にずれた位置で等間隔に形成されている。第2内側保護カバー440は、金属製の主体金具402に内周面が当接しており円筒状の大径部442と、円筒状の胴部444と、有底筒状の先端部446とを有している。大径部442と胴部444とは段差部443を介して接続されており、胴部444と先端部446とも段差を介して接続されている。段差部443には、内側ガス孔443aが等間隔に6箇所形成されている。先端部446の底面の中心には、ガス通過孔446aが1箇所形成されている。外側保護カバー450は、金属製の主体金具402に内周面が当接しており円筒状の大径部452と、有底筒状の先端部454とを有している。先端部454の側面と底面との境界部分には、円形の外側ガス孔454aが6箇所形成されている。この外側ガス孔454aは、外側ガス孔454aの外部開口面と先端部454の底面とのなす角θ1が10°〜80°となるように形成されている。なお、第1内側保護カバー430の先端部434と第2内側保護カバー440の先端部446とは当接しており、その結果、第1内側保護カバー430と第2内側保護カバー440とで囲まれた空間は、上室422と下室424とに分離されている。こうしたガス濃度検出センサー400においても、以下の効果が得られる。すなわち、外側保護カバー450内に入った水が外側ガス孔454aから外部に逃げやすいため、水が第2内側保護カバー440及び第1内側保護カバー430内に入ってセンサー素子110に付着するのを抑制できる。また、外側ガス孔454aから外側保護カバー450内に入る被測定ガスは、外側ガス孔454aによってセンサー素子110の後端方向(図8の上方向)を向く流れになる。そして、内側ガス孔443aは図示するように外側ガス孔454aよりもセンサー素子110の後端方向に位置しているため、外側ガス孔454aから入った被測定ガスが内側ガス孔443aに到達しやすい。これにより、保護カバー420内のガスが被測定ガスによって置換される時間が短縮されて、ガス濃度検出センサーの応答性が向上する。
上述した実施形態のガス濃度検出センサー100の代わりに、図9に示すガス濃度検出センサー500を採用してもよい。ガス濃度検出センサー500の保護カバー520は、センサー素子110の先端を覆う内側保護カバー530と、内側保護カバー530を覆う外側保護カバー540とを備えた2重構造をしている。内側保護カバー530は、金属製の主体金具502に内周面が当接しており円筒状の大径部532と、有底筒状の先端部534とを有している。大径部532と先端部534とは、段差を介して接続されている。先端部534の側面には、内側ガス孔534aが等間隔に6箇所形成されている。外側保護カバー540は、金属製の主体金具502に内周面が当接しており円筒状の大径部542と、有底筒状の先端部544とを有している。先端部544の側面には、ガス通過孔544aが等間隔に6箇所形成されている。また、先端部544の側面と底面との境界部分には、円形の外側ガス孔544bが6箇所形成されている。この外側ガス孔544bは、外側ガス孔544bの外部開口面と先端部544の底面とのなす角θ2が10°〜80°となり、且つ、外側ガス孔544bの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。こうしたガス濃度検出センサー500においても、以下の効果が得られる。すなわち、外側保護カバー540内に入った水が外側ガス孔544bから外部に逃げやすいため、水が内側保護カバー530内に入ってセンサー素子110に付着するのを抑制できる。また、外側ガス孔544bから外側保護カバー540内に入る被測定ガスは、外側ガス孔544bによってセンサー素子110の後端方向(図9の上方向)を向く流れになる。そして、内側ガス孔534aは図示するように外側ガス孔544bよりもセンサー素子110の後端方向に位置しているため、外側ガス孔544bから入った被測定ガスが内側ガス孔534aに到達しやすい。これにより、保護カバー520内のガスが被測定ガスによって置換される時間が短縮されて、ガス濃度検出センサーの応答性が向上する。
上述した実施形態のガス濃度検出センサー100の代わりに、図10に示すガス濃度検出センサー600を採用してもよい。ガス濃度検出センサー600の保護カバー620は、センサー素子110の先端を覆う内側保護カバー630と、外側保護カバー640とを備えた2重構造をしている。内側保護カバー630は、金属製の主体金具602に内周面が当接しており円筒状の大径部632と、有底筒状の先端部634とを有している。大径部632と先端部634とは、段差を介して接続されている。先端部634には、内側保護カバー630の内外の被測定ガスの流れを許容する内側ガス孔(図示せず)と、内側ガス孔を経て内側保護カバー630内に流入する被測定ガスの流れを規制する板状のガイド部634bとがそれぞれ等間隔に6箇所形成されている。なお、内側ガス孔及びガイド部634bは、図2、図3で示した内側ガス孔134a及びガイド部134bと同様である。また、先端部634の側面と底面との境界部分には、円形のガス通過孔634cが6箇所形成されている。このガス通過孔634cは、ガス通過孔634cの外部開口面と先端部634の底面とのなす角θ3が10°〜80°となるように形成されている。外側保護カバー640は、金属製の主体金具602に内周面が当接しており円筒状の大径部642と、側面と底面とを有する先端部644とを有している。先端部644の底面には孔が開いており、この孔を内側保護カバー630の先端部634が貫通している。また、先端部644の底面の孔の内周面644bは、内側保護カバー630の先端部634の側面と溶接されている。また、先端部644の側面と底面との境界部分には、円形の外側ガス孔644aが6箇所形成されている。この外側ガス孔644aは、外側ガス孔644aの外部開口面と先端部644の底面とのなす角θ4が10°〜80°となるように形成されている。こうしたガス濃度検出センサー600においても、以下の効果が得られる。すなわち、外側保護カバー640内に入った水や内側保護カバー630内に入った水が、外側ガス孔644aやガス通過孔634cから外部に逃げやすいため、水が内側保護カバー630内に入ってセンサー素子110に付着するのを抑制できる。また、外側ガス孔644aから外側保護カバー640内に入る被測定ガスは、外側ガス孔644aによってセンサー素子110の後端方向(図10の上方向)を向く流れになる。そして、ガイド部634bと外側ガス孔644aとの位置関係から分かるように、内側ガス孔は外側ガス孔644aよりもセンサー素子110の後端方向に位置している。このため、外側ガス孔644aから入った被測定ガスが内側ガス孔に到達しやすい。これにより、保護カバー620内のガスが被測定ガスによって置換される時間が短縮されて、ガス濃度検出センサーの応答性が向上する。
上述した実施形態では、図2,5に示したように、ガス通過孔138aは内側保護カバー130の先端部138の側面に位置しているものとしたが、これに限らず、内側保護カバーの側面と底面との境界部分に位置してもよい。ガス通過孔が内側保護カバーの側面と底面との境界部分に位置する場合のガス通過孔周辺を拡大した部分断面図を図11に示す。なお、図11では、図5と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図示するように、変形例のガス通過孔238aは、図5のガス通過孔138aとは異なり、ガス通過孔238aの外部開口面と内側保護カバー130の先端部138の底面とのなす角が45°となり、且つ、ガス通過孔238aの内周面と外部開口面とのなす角が90°となるように形成されている。なお、ガス通過孔238aの外部開口面と内側保護カバー130の先端部138の底面とのなす角は45°に限らず、10〜80°の範囲の値としてもよい。このようにすることで、センサー素子室124から第2ガス室126内に入る被測定ガスは、ガス通過孔238aによって第2外側ガス孔146aの方を向く流れになる。そのため、ガス通過孔が先端部138の側面又は底面に開けられている場合やガス通過孔の外部開口面と先端部138の底面とのなす角が10°〜80°以外の場合と比べて、センサー素子室124から第2ガス室126内に入る被測定ガスが第2外側ガス孔146aに到達しやすい。これにより、被測定ガスが第2ガス室126を通って外部に到達するまでの時間が短縮されて、ガス濃度検出センサーの応答性が向上する。なお、ガス通過孔238aが領域146cと重なるように位置していても、ガス濃度検出センサーの応答性が向上する効果は得られる。
上述した実施形態では、図2,5に示したように、ガス通過孔138aは内側保護カバー130の先端部138の側面の中ほどに位置しているものとしたが、これに限らず、ガス通過孔を先端部138の側面のうち底面に近い位置に設けてもよいし、段差部137に近い位置に設けてもよい。ガス通過孔を先端部138の側面のうち底面に近い位置に設けた場合のガス通過孔周辺を拡大した部分断面図を図12に示す。なお、図12では、図5と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図示するように、変形例のガス通過孔239aは、先端部138の角部138bに極力近い位置に設けられている。また、ガス通過孔239aの最下面239bと先端部138の内側の底面138cとは同一平面上に位置している。
上述した実施形態では、図2,5に示したように、ガス通過孔138aは内側保護カバー130の先端部138の側面に位置しているものとしたが、これに限らず、底面に位置していてもよい。ガス通過孔が先端部138の底面に位置する場合のガス通過孔周辺を拡大した部分断面図を図13に示す。なお、図13では、図5と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図示するように、変形例のガス通過孔240aは、先端部138の底面の中心に位置する円形の孔である。なお、ガス通過孔を先端部138の底面の中心以外に設けてもよい。例えば、先端部138の底面のうち、先端部138の角部に極力近い位置にガス通過孔を設けてもよい。この場合、先端部138を中心軸方向(図2の上下方向)から見たときに、先端部138の中心軸を中心点としたガス通過孔の位置と第2外側ガス孔146aの延長上の領域146cの位置との位相がずれるように配置することで、ガス通過孔が領域146c以外に位置するようにしてもよい。この場合のガス通過孔の位置を示す説明図を図14に示す。図14(a)は先端部138周辺の部分断面図であり、図14(b)は、図14(a)のB−B断面図である。なお、図14では、図5と同一の構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図14(b)に示すように、変形例のガス通過孔241aは、等間隔に6箇所形成され、先端部138の底面の角部138bに極力近い位置に形成されている。そのため、図14(b)のように中心軸方向から見たときに、ガス通過孔241aが先端部138の側部の内周面と接するように位置している。そして、ガス通過孔241aは、先端部138の中心軸を中心点として見たときにガス通過孔241aの位置と領域146cの位置との位相がずれるように配置されている。これにより、ガス通過孔241aは領域146cと重ならないように位置している。このようにしてガス通過孔241aを形成した場合でも、ガス通過孔241aが領域146c以外の位置に開けられているため、本実施形態と同様に水がセンサー素子室124内に到達しにくくなる効果が得られる。
上述した実施形態では、ガス通過孔138a,第1外側ガス孔144aおよび第2外側ガス孔146aは、自身の中心軸に垂直な断面が真円となるように形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、中心軸に垂直な断面が楕円であったり多角形(例えば長方形)であったりしてもよい。
[実施例1〜2]
図2に示すガス濃度検出センサー100を複数作製した。具体的には、内側保護カバー130として、板厚が0.3mm、大径部132の軸方向長さ1.9mm、第1胴部134の軸方向長さが5.2mm、第2胴部136の軸方向長さが5.2mm、先端部138の軸方向長さが4.9mm、大径部132の内径が13.54mm、第1胴部134の内径が11.2mm、第2胴部136の内径が7.6mm、先端部138の内径が5.3mm、内側ガス孔の開口部の大きさが縦1.5mm,横0.3mmのものを用いた。更に、外側保護カバー140として、板厚が0.4mm、大径部142の軸方向長さが5.6mm、胴部144の軸方向長さが9.2mm、先端部146の軸方向長さが9.6mm、大径部142の内径が14.4mm、胴部144の内径が13.8mm、先端部146の内径が7.9mm、第1角部144b,第2角部146bの曲げ半径Rが1.0mmのものを用いた。そして、外側保護カバー140の第1外側ガス孔144aの内径φ1と、第2外側ガス孔146aの内径φ2とを表1の実施例1〜2に示すように種々変更したものを作製した。なお、表1における「ガス通過孔の角度」とは、内側保護カバーのガス通過孔の外部開口面と内側保護カバーの先端部の底面とのなす角を意味する。図2から分かるように実施例1,2ではガス通過孔の角度は90°である。また、ここで作製したガス濃度検出センサー100のセンサー素子110は、酸素濃度を検出するものとした。
[実施例3〜5]
第1外側ガス孔144a及び第2外側ガス孔146aの孔数及び内径φ1,φ2を表1の実施例3〜5に示す値とした点以外は、実施例1〜2と同様のものを作製した。
[実施例6〜7,比較例1〜2]
第1外側ガス孔144aの外部開口面と段差部145の底面とのなす角及び第2外側ガス孔146aの外部開口面と先端部146の底面とのなす角をいずれも同じ値θとし、この値θを表1のように変更した点以外は実施例1と同様のものを作成して、実施例6〜7,比較例1〜2とした。なお、図6(a)で示したように、第1外側ガス孔144aの中心軸の角度を図2の第1外側ガス孔144aと同じ45°として、孔を開ける位置をずらすことでなす角θの変更を行った。このようにしてなす角θを変更すると、第1外側ガス孔144aの外部開口面の外側保護カバー140の中心軸方向長さL及び胴部144の外周面から第1外側ガス孔144aの外部開口面のうち外側保護カバー140の中心軸に最も近い部分までの長さL2(図15参照)が変化する。実施例1(なす角θ=45°)のときの長さLは値0.71mmであった。実施例6及び比較例1のようになす角θの値を10°,5°と小さくすると、長さLは0.21mm、0.11mmと小さくなり、長さL2は1.20mm、1.30mmと大きくなった(図15(a),(b))。実施例7及び比較例2のようになす角θの値を80°、85°と大きくすると、長さLは1.20mm、1.30mmのように大きくなり、長さL2は0.22mm、0.13mmと小さくなった(図17(a),(b))。このなす角θと長さL,L2との関係は、第2外側ガス孔146aでも同じである。なお、図16,17からもわかるように、実施例6〜7,比較例1〜2では、第1外側ガス孔144aの内周面と外部開口面とのなす角は図4とは異なり90°以外の値となっている。これは第2外側ガス孔146aも同じである。
[実施例8]
内側保護カバー130の先端部138がガス通過孔138aの代わりに図11に示したガス通過孔238aを備える(具体的には、ガス通過孔238aが先端部138の側面と底面との境界部分に位置し、ガス通過孔238aの外部開口面と先端部138の底面とのなす角は45°となっている)点以外は、実施例2と同様のものを作製して、実施例8とした。なお、ガス通過孔238aは、内径が1.0mmであり、等間隔に6箇所形成した。
[比較例3〜5]
図18に示すガス濃度検出センサー700を複数作製した。ガス濃度検出センサー700は、保護カバー720として、内側保護カバー730と外側保護カバー740とを備えている。内側保護カバー730は、先端部738及びガス通過孔738aの形状が先端部138,ガス通過孔138aと異なる点,及び段差部137を備えない点以外は図2の内側保護カバー130と同じ構造であるため、先端部738,ガス通過孔738a以外の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。先端部738は、先端部138と異なり三角錐台を逆さにした形状をしており、胴部136と接続する部分の内径が7.4mm、底面の直径が2.4mmである。また、ガス通過孔738aは、先端部738の底面の中心点に位置する円形の孔であり、内径は1mmである。ガス通過孔738aの外部開口面と先端部738の底面とのなす角は0°である。外側保護カバー740は、第1外側ガス孔744a及び第2外側ガス孔746a以外は図2の外側保護カバー140と同じ構造であるため、第1外側ガス孔744a及び第2外側ガス孔746a以外の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第1外側ガス孔744aは、胴部144の側面に位置し、第2外側ガス孔746aは、先端部146の側面に位置している。そして、外側保護カバー740の第1外側ガス孔744aの内径φ1と、第2外側ガス孔746aの内径φ2とを表1の比較例1〜3に示すように種々変更したものを作製した。なお、第1外側ガス孔744a及び第2外側ガス孔746aは、実施例1〜2と同様に等間隔に6箇所開けた。
[比較例6]
図19に示すガス濃度検出センサー800を作製した。ガス濃度検出センサー800の保護カバー820は、センサー素子110の先端を覆う板厚0.3mmの内側保護カバー830と、内側保護カバー830を覆う板厚0.3mmの中間保護カバー840と、中間保護カバー840を覆う板厚0.4mmの外側保護カバー850とを備えた3重構造をしている。内側保護カバー830は、金属製の主体金具802に外周面が当接しており軸方向長さが5.5mmで内径が6.8mmの円筒状の大径部832と、軸方向長さが13.9mmで内径が6.4mmの有底筒状の先端部834とを有している。先端部834の側面には、内径が1.5mmの内側ガス孔834aが12箇所形成されており、先端部834の底面の中心には、内径が5mmのガス通過孔834bが1箇所形成されている。ガス通過孔834bの外部開口面と先端部834の底面とのなす角は0°である。なお、内側ガス孔834aは、ジグザグ状に軸方向(図19の上下方向)に2段にずれた位置で等間隔に形成されている。中間保護カバー840は、金属製の主体金具802に内周面が当接しており軸方向長さが1.8mmで内径が13.9mmの大径部842と、軸方向長さが8.4mmで内径が9.1mmの円筒状の胴部844と、軸方向長さが5.5mmで内径が6.9mmの有底筒状の先端部846とを有している。大径部842と胴部844とは段差部843を介して接続されており、胴部844と先端部846とも段差を介して接続されている。段差部843には、図20に示すように、径11.6mmの円を中心線として幅1mm、角度40°分の円弧状の第1中間ガス孔843aが等間隔に6箇所形成されている。先端部846の底面の中心には、内径が1.1mmの第2中間ガス孔846aが1箇所形成されている。外側保護カバー850は、金属製の主体金具802に内周面が当接しており軸方向長さが5.6mmで内径が14.4mmの円筒状の大径部852と、軸方向長さが18.2mmで内径が13.8mmの有底筒状の先端部854とを有している。先端部854の側面には、内径が2mmの外側ガス孔854aが6箇所形成されている。なお、内側保護カバー830の先端部834と中間保護カバー840の先端部846とは当接しており、その結果、内側保護カバー830と中間保護カバー840とで囲まれた空間は、上室822と下室824とに分離されている。
[比較例7]
図21に示すガス濃度検出センサー900を作製した。ガス濃度検出センサー900の保護カバー920は、センサー素子110の先端を覆う板厚0.3mmの内側保護カバー930と、内側保護カバー930を覆う板厚0.4mmの外側保護カバー940とを備えた2重構造をしている。内側保護カバー930は、金属製の主体金具902に内周面が当接しており軸方向長さが1.5mmで内径が13.7mmの円筒状の大径部932と、軸方向長さが12.4mmで内径が6.9mmの有底筒状の先端部934とを有している。大径部932と先端部934とは、段差を介して接続されている。先端部934の側面には、内径が1.5mmの内側ガス孔934aが等間隔に6箇所形成されている。外側保護カバー940は、金属製の主体金具902に内周面が当接しており軸方向長さが5.5mmで内径が14.4mmの円筒状の大径部942と、軸方向長さが15.3mmで内径が13.8mmの有底筒状の先端部944とを有している。先端部944の側面には、内径が2mmの第1外側ガス孔944aが等間隔に6箇所形成されている。先端部944の底面の中心には、内径が3.8mmの第2外側ガス孔944bが1箇所形成されている。
[評価試験1]
実施例1〜8,比較例1〜7の各ガス濃度検出センサーにつき、以下のセンサー出力の応答性とセンサー素子の被水性を調べた。その結果を表1及び図23に示す。センサー出力の応答性とセンサー素子の被水性の試験方法は以下の通りである。
・センサー出力の応答性
まず、図1のようにガス濃度検出センサーを配管200に取り付けた。この状態で、エンジンの排ガスの代わりに、被測定ガスとしてバーナー燃焼によりNO濃度70ppm、ラムダ1.05に制御した基準ガスを流してセンサー出力が安定するのを待った。その後、ガス導入口を通じて酸素を基準ガス中に導入し、NO濃度70ppm、ラムダ1.35の混合ガスを流してセンサー出力が安定するのを待った。すると、センサー素子110が酸素濃淡電池として機能して起電力が発生し、センサー出力が立ち上がった。ここで、基準ガス中に酸素を導入した時点から、センサー出力がその立ち上がりの最大値の10%になるまでに要する時間t10とセンサー出力がその立ち上がりの最大値の90%になるまでに要する時間t90とを求め、その差Δt(=t90−t10)を応答時間(単位:sec)とした。この応答時間が短いほどガス濃度検出センサーの応答性が高い。
・センサー素子の被水性
被水性は、図22に示す壊れだし水量測定装置950を用いて求めた。すなわち、壊れだし水量測定装置950として、直径28mmの2本のパイプ960,970を角度が150°となるように繋ぎ合わせ、繋ぎ目から300mmの位置に切替バルブ990を介して送風機980を接続し、繋ぎ目から送風機980とは反対側に向かって400mmの位置にガス濃度検出センサー100を配置したものを用意した。そして、繋ぎ目部分に任意の量の水を蓄えた状態で、送風機980を所定の駆動条件で運転し、送風機980からパイプ960へ送風した。この送風によって繋ぎ目部分の水をセンサー100に向かって飛散させて、蓄えられていた水を全てパイプ970の外へ放出した。その際、センサー素子110からの出力に異常が見られるか否かを確認した。1つのガス濃度検出センサーについて同じ水量で同じ試験を10回行い、1回も異常が見られない場合には、水量を10cm3増やして同様に試験を10回行い、10回のうち1回でも異常が見られるまで水量を10cm3ずつ増やして同様に試験を繰り返した。そして、1回でも異常が見られたときの試験当初の水量を壊れだし水量(単位:リットル)として、この壊れだし水量の逆数を被水性(単位:1/リットル)とした。この被水性が小さい値であるほどセンサー素子110への水の付着が抑制されている。なお、送風機の所定の駆動条件とは、センサー素子110のヒーターへの通電を終了した後、図22に示す切替バルブ990をバイパス990aに接続した状態で送風機980により風速約75m/sの大気の流れを作り、切替バルブ990をパイプ960に切替え、3秒間パイプ960に送風することをいう。
図23は実施例1〜8,比較例1〜7の各ガス濃度検出センサーの応答時間と被水性とをプロットしたグラフである。表1及び図23から明らかなように、実施例1〜8は、いずれも比較例3〜7と比べて応答時間が短く且つ被水性の値が小さくなっている。また、第2外側ガス孔146aの総面積が第1外側ガス孔144aの総面積よりも大きくなっている実施例2,4,5については、第2外側ガス孔146aの総面積と第1外側ガス孔144aの総面積とが等しい実施例1,3と比べてさらに応答時間が短く且つ被水性の値が小さくなっている。さらに、なす角θが10°〜80°の範囲である実施例1〜8についてはいずれも比較例3〜7と比べて応答時間が短く且つ被水性の値が小さくなっているが、なす角θが10°〜80°の範囲にない比較例1,2では、比較例3と比べて応答時間は短いものの、被水性の値は大きくなっている。
なお、比較例3と比較例4とを比べると、第2外側ガス孔346aの総面積が第1外側ガス孔344aの総面積よりも大きくなっている比較例3の方が、第2外側ガス孔346aの総面積と第1外側ガス孔344aの総面積とが等しい比較例4よりも応答時間が短く且つ被水性の値が小さくなっている。このことから、実施例1〜7のように第1外側ガス孔と第2外側ガス孔とが角部に位置していなくとも、第2外側ガス孔の総面積が第1外側ガス孔の総面積より大きいことに起因して、センサー素子への水の付着を抑制する効果とガス濃度検出の応答性を向上させる効果とが得られると考えられる。
また、実施例1と実施例8とを比べると、ガス通過孔が内側保護カバーの先端部の側面と底面との境界部分に位置し、ガス通過孔の外部開口面と先端部の底面とのなす角が45°となっている実施例8の方が、被水性の値は変わらず且つ応答時間が短くなっている。
[評価試験2]
実施例2,比較例4,比較例7のガス濃度検出センサーにつき、運転時の振動によって配管に溜まった水がセンサ素子に被水する現象を模擬した振動試験を行った。振動試験の様子を図24に示す。この振動試験は、以下のように行った。まず、加振機に取り付けられた試験チャンバーにガス濃度検出センサーを鉛直方向から45°傾けて取り付けた。また、ガス濃度検出センサーには、ヒーターの出力を制御するコントローラーと、ヒーターのパワー制御値を測定するためのセンサー出力モニターを接続した。次に、試験チャンバー内に水を入れ、加振機により10〜200Hzの間で周波数を変化させながら正弦波で試験チャンバーを振動させた。振動中は、センサー素子内のヒーターが100℃になるようにコントローラーで制御を行い、このときのヒーターのパワー制御値をセンサー出力モニターにて測定した。なお、センサー素子に付着する水が多いほどセンサー素子の温度が低下して、ヒーターの出力を大きくすべくパワー制御値が大きい値となる。
この評価試験2の結果を図25に示す。図25に示すように、実施例2は比較例4,7と比べてパワー制御値が小さくなっている。このことから、実施例2のガス濃度検出センサーは、外側保護カバーの側面と底面との境界部分に位置するように第1外側ガス孔,第2外側ガス孔が形成されていることで、側面や底面に外側ガス孔が形成されている比較例4,7と比べて振動時のセンサー素子の被水性が小さいことが確認できた。
[評価試験3]
実施例8,比較例4,比較例7のガス濃度検出センサーにつき、予め外側保護カバー内及び内側保護カバー内に水が入った状態から水が抜けるまでの様子を確認する水抜き試験を行った。この試験は、図22に示した壊れだし水量測定装置950を用いて行った。具体的には、まず、ガス濃度検出センサーを鉛直方向から45°傾けた状態でパイプ970に取り付けた。そして、パイプ960,970の繋ぎ目には水がない状態とし、代わりに予めガス濃度検出センサーの外側保護カバー内及び内側保護カバー内に任意の量の水を注入した。その状態で、送風機980を所定の駆動条件で運転し、送風機980からパイプ960へ送風した。送風中は、センサー素子内のヒーターが100℃になるように制御を行い、このときのヒーターのパワー制御値を測定した。なお、内側保護カバー内に水が注入されセンサー素子に水が付着しているとセンサー素子の温度が低下するため、ヒーターの出力を大きくすべくパワー制御値が大きい値となる。そのため、送風により内側保護カバー内の水が抜けていくに従って、パワー制御値は小さくなっていく。
この評価試験3の結果を図26に示す。図26からわかるように、実施例8,比較例4,7のいずれも送風開始時のパワー制御値には大きな差はないが、実施例8では送風開始後160秒でパワー制御値が大きく下がり、160秒以降は安定した値となった。一方、比較例4ではパワー制御値の安定までの時間は200秒であり、比較例7では600秒であった。このことから、実施例8のガス濃度検出センサーは、比較例4,7と比べて水が保護カバー内に入ってセンサー素子に付着しにくいだけでなく、例え内側保護カバー内に水が入ったとしてもその水が抜けやすい(水抜け性が大きい)ことが確認できた。実施例8のガス濃度検出センサーは、第1外側ガス孔146aが第1角部144bに位置し、第2外側ガス孔146aが第2角部146bに位置しているため、外側保護カバー140内から水が抜けやすく、ガス通過孔238aが内側保護カバー130の側面と底面との境界部分に位置しているため、内側保護カバー130内から水が抜けやすくなっていると考えられる。例えば図27に示すように実施例8のガス濃度検出センサーを45°傾けた状態では、第2ガス室126の最下面に第2外側ガス孔146aが位置し、センサー素子室124の最下面にガス通過孔238aが位置する。このため、第2外側ガス孔146aが第2角部146bに位置していない比較例4,7と比べて、実施例8では第2ガス室126内の水が第2外側ガス孔146aから抜けやすく、図27に示すような水溜まりができにくい。同様に、ガス通過孔238aが内側保護カバーの側面と底面との境界部分に位置していない比較例4,7と比べて、実施例8では内側保護カバー130内の水はガス通過孔238aから抜けやすく、図27に示すような水溜まりができにくい。図示は省略したが、同様に、比較例4,7と比べて実施例8では第1ガス室122内の水が第1外側ガス孔144aから抜けやすく、水溜まりができにくい。なお、ガス濃度検出センサーを傾ける角度が45°以外であっても、0°〜90°の範囲であれば、比較例4,7と比べて実施例8のガス濃度検出センサーの方が、水が抜けやすく水溜まりができにくい効果が得られる。なお、例えば寒冷地や冬場においては、エンジンの排気経路に取り付けられたガス濃度検出センサーの保護カバー内で水が結露することがある。そして、この状態でエンジンをスタートすると、結露により生じた水がセンサー素子に付着してクラックが発生する場合がある。実施例8のガス濃度検出センサーはこのような場合でも水が抜けやすいため、比較例4,7と比べてクラックが生じにくいと考えられる。