JP5544883B2 - 電磁波抑制用樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

電磁波抑制用樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波抑制用樹脂組成物及びその成形品に関するものである。詳しくは、優れた導電性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性及び成形加工性を併せ持つ電磁波抑制用樹脂組成物と、この電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなる電磁波抑制用樹脂成形品に関するものである。
近年、IT化社会の急速な発展に伴い、電子機器の高速処理化が進み、LSIやマイクロプロセッサーなどICの動作周波数は上昇し、通信分野では光ファイバーを用いた高速通信網が使用され、次世代マルチメディヤ移動通信おいては具体的に2GHz、ITS(Intelligent Tranport System)の分野ではETS(自動料金収受システム)における5.8GHz、車間距離を測定して運転者に伝える走行支援道路システム(AHS)の自動車搭載レーダーでは76GHzといった周波数の電磁波が使用され、今後は、更に高周波の電磁波の利用範囲が拡大することが予想される。電磁波は周波数の上昇に伴いノイズを放出しやすく、一方において、電子機器の小型化、高密度化による電子機器内部のノイズ環境の悪化による誤動作が生じ、このような高周波の電磁波の利用状況において、人体へ及ぼす悪影響も問題となってきている。
かかる電磁波の防止材としては、電磁波遮断体と電磁波抑制体がある。電磁波遮断体には一般的に金属材料が使用され、例えば、電磁波を嫌う精密機器などが設置された部屋の壁材などには、金属板を用いて、室内への電磁波の侵入を防止している。
一方、電磁波抑制体は、入射してきた電磁波を熱エネルギーに変換することにより、透過あるいは反射される電磁波の強度を大幅に減衰させるものである。従来、電子機器用途の電磁波抑制体としては、形状の自由度や、軽量化の点から、表面を導電処理し、あるいは樹脂に導電材を混合して成形したプラスチック製の筐体が用いられている。また、導電材粉末を樹脂、ゴム或いは塗料等のマトリックス中に分散させた複合材料のシートや塗膜を、電磁波を抑制したい部位に貼付又は形成することで電磁波抑制性能を付与したものも多く用いられている。この導電材としては、主にフェライトや黒鉛(例えば、特許文献1)が使用されている。
しかしながら、フェライトは比重が大きいため、これを配合した複合材料が重くなるという欠点があり、移動を伴う通信機器などに多量に使用する場合には、本体が重くなり、当該通信機器の機動性に問題が生じる。
一方、黒鉛については、比重が比較的小さいため、フェライトに見られるような前記の問題は生じないが、粉末が嵩高いために、マトリックスへの充填量を増大させることが困難であり、充填量を多くすることができない結果、黒鉛の配合による電磁波抑制性能の向上効果にも制限があるという問題がある。
特許文献2には、所定の寸法のカーボンナノコイルを樹脂に配合してなる電磁波吸収シートが提案されている。
カーボンナノコイルは、カーボンナノ繊維が螺旋構造となったものであり、その特異的な形状により、電気的、機械的特性に優れ、これを配合することにより数GHz〜数十GHzの電磁波の抑制に対応可能な樹脂組成物を得ることができる。
特許文献2で用いられているようなカーボンナノコイルを樹脂に配合することにより、樹脂組成物に良好な電磁波抑制機能を付与することができるが、カーボンナノコイルは、極細のカーボンナノ繊維が螺旋状に巻いたものであり、樹脂との溶融混練時の剪断力で破断し易い。破断してコイル長が短くなったカーボンナノコイルは、本来の電気的、機械的特性が損なわれ、目的とする電磁波抑制性能を得ることができない。
また、特許文献2では、電子部品の筐体等の用途において要求される耐薬品性についての検討もなされていない。
特開2005−11878号公報 特開2009−60060号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、優れた導電性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性及び成形加工性を併せ持ち、特に、2〜2.5GHz程度の周波数領域において優れた電磁波抑制性を有する電磁波抑制用熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイを用いると共に、カーボンナノコイルを配合することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の機械的強度、耐熱性、成形加工性に、更に耐薬品性を付与すると共に、特に2〜2.5GHz程度の周波数領域における電磁波抑制性能を高めることができることを見出した。
本発明によれば、導電性付与材としてカーボンナノコイルを用いるため、その螺旋構造に由来して優れた電磁波抑制性、更には機械的特性を得ることができる。カーボンナノコイルは、前述の如く、樹脂組成物の溶融混練時に破断し易いが、芳香族ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂を配合することにより耐薬品性が付与されると共に、組成物の粘度が下がることで溶融混練時のカーボンナノコイルの破断が防止され、カーボンナノコイル本来の良好な電磁波抑制性能が得られる。
特に、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とで形成される後述の海島構造ないしは共連続構造の連続相側にカーボンナノコイルを存在させることにより、カーボンナノコイルによる良好な導電性のネットワークがこの連続相内に形成され、高い電磁波抑制性が得られる。
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] (A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリエステル樹脂、及び(C)カーボンナノコイルを含み、樹脂成分で形成される連続相内に(C)カーボンナノコイルが存在する電磁波抑制用樹脂組成物であって、(B)ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする電磁波抑制用樹脂組成物。
[2] (A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂との合計に対する(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の含有割合が50質量%以上99質量%以下であり、(C)カーボンナノコイルが芳香族ポリカーボネート樹脂の連続相内に存在することを特徴とする[1]に記載の電磁波抑制用樹脂組成物。
[3] (C)カーボンナノコイルの含有量が1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電磁波抑制用樹脂組成物。
] [1]ないし[]の何れかに記載の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなる電磁波抑制用樹脂成形品。
] 電子機器の筐体又は電子機器の内部部品である[]に記載の電磁波抑制用樹脂成形品。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、優れた導電性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、成形加工性及び電磁波抑制性を併せ持ち、特に、2〜2.5GHz程度の周波数領域において良好な電磁波抑制性を備えるものであり、電気・電子・OA機器部品、機械部品、車輌用部品、携帯電話などの筐体や内部部品等の構成材料として好適に使用することができる。
本発明において、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂との合計に対する(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の含有割合は50質量%以上99質量%以下であり、(C)カーボンナノコイルは芳香族ポリカーボネート樹脂の連続相内に存在することが好ましい(請求項2)。
また、組成物中の(C)カーボンナノコイルの含有量は1質量%以上30質量%以下であることが好ましい(請求項3)。
本発明の電磁波抑制用樹脂成形品は、このような本発明の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなるものであり、その優れた導電性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、成形加工性及び電磁波抑制性により、電気・電子・OA機器部品、機械部品、車輌用部品、携帯電話などの筐体や内部部品等として有用であり、各種構造材の薄肉軽量化を図ることができる(請求項)。
実施例1,4と比較例1における電磁波吸収性能の測定結果を示すグラフである。
以下に本発明の電磁波抑制用樹脂組成物及び電磁波抑制用樹脂成形品の実施の形態を詳細に説明する。
[(A)芳香族ポリカーボネート樹脂]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物に用いられる(A)芳香族ポリカーボネート樹脂とは、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体と反応させることにより製造される熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体である。この反応は公知の方法で行うことができ、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法等が採用される。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性をさらに高める目的で上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物及び/又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーあるいはオリゴマーを使用することもできる。
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、ホスゲン、又はジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類が挙げられる。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、好ましくは16,000〜30,000の範囲であり、より好ましくは17,000〜28,000、特に好ましくは18,000〜26,000である。(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が16,000未満では機械的強度が不足し、30,000を超えると成形性に難を生じやすく、また、後述の樹脂組成物の粘度条件を満たすことが困難となり、好ましくない。
なお、所望の分子量の(A)芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、末端停止剤或いは分子量調節剤を用いる方法や重合反応条件の選択等公知の方法が採用される。末端停止剤あるいは分子量調節剤としては、例えば、フェノール、p−t−アルキルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、脂肪族カルボン酸クロライドなどが挙げられる。
[(B)ポリエステル樹脂]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物に用いられる(B)ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂)とは、ジカルボン酸類又はその反応性誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオ−ル類又はそのエステル誘導体からなるジオ−ル成分とを主成分とする縮合反応により得られる重合体又は共重合体である。
本発明に係る(B)ポリエステル樹脂の製造は、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分とジオ−ル成分とを反応させ、副生する水又は低級アルコ−ルを系外に排出することにより行われる。ここで、バッチ式、連続式のいずれの重合方法をとることも可能であり、固相重合により重合度を上げることも可能である。
ジカルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸のいずれでもよいが、耐熱性、寸法安定性等の点から芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエ−テルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−タ−フェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体など)や反応性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどのアルキルエステル誘導体など)等を用いることもできる。
これらのうち、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらのアルキルエステル誘導体がより好ましく、テレフタル酸及びそのアルキルエステル誘導体が特に好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、該芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等の1種以上併用することも可能である。
また、ジオ−ル類としては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、トリエチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、デカメチレングリコ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、シクロヘキサンジオ−ル、トランス−又はシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオ−ル等の脂環族ジオ−ル類;p−キシレンジオ−ル、ビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA−ビス(2−ヒドロキシエチルエ−テル)等の芳香族ジオ−ル類等を挙げることができ、これらの置換体も使用することができる。
これらのうち、耐熱性、寸法安定性等の点から、エチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルがより好ましく、エチレングリコ−ルが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、ジオ−ル成分として、分子量400〜6,000の長鎖ジオ−ル類、すなわちポリエチレングリコ−ル、ポリ−1,3−プロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の1種以上を上記ジオ−ル類と併用して共重合させてもよい。
また、本発明に係る(B)ポリエステル樹脂は、少量の分岐剤を導入することにより分岐させることもできる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル等が挙げられる。
本発明に用いる(B)ポリエステル樹脂の好適な具体例として、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレ−ト樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレ−ト樹脂、ポリエチレンナフタレ−ト樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレ−ト樹脂(PBN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレ−ト(PCC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、ポリプロピレンテレフタレ−ト樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂が流動性、耐衝撃性の点から好ましく、特にポリエチレンテレフタレ−ト樹脂及び/又はポリブチレンレンテレフタレート樹脂が好ましく、組成物の粘度低減効果及びそれによるカーボンナノコイルの破断防止効果で優れた電磁波抑制性能が得られる点で好ましく、とりわけポリエチレンテレフタレ−ト樹脂が好ましい。
他の熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ラクトンの開環重合によるポリピバロラクトン樹脂、ポリ(ε−カプロラクトン)樹脂等や、溶融状態で液晶を形成する液晶ポリマ−(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)等が挙げられる。具体的には、市販の液晶ポリエステル樹脂としてイ−ストマンコダック社のX7G、ダ−トコ社のXyday(ザイダ−)、住友化学社のエコノ−ル、セラニ−ズ社のベクトラ等が挙げられる。
本発明において特に好適に用いられるポリエチレンテレフタレ−ト樹脂は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、且つ、ジオ−ル成分としてエチレングリコ−ルを主成分とし、これらの縮合反応によって得られる飽和ポリエステル重合体又は共重合体であり、繰り返し単位としてエチレンテレフタレ−ト単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上含む熱可塑性ポリエステル樹脂である。
また、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂中には、重合時の副反応生成物であるジエチレングリコ−ルが共重合成分として含まれるが、このジエチレングリコ−ルの量は、重合反応に用いるジオ−ル成分の全量100モル%中、0.5モル%以上であることが好ましく、通常6モル%以下、中でも5モル%以下であることが好ましい。
本発明で用いる(B)ポリエステル樹脂の固有粘度は、適宜選択して決定すればよいが、通常0.4〜2dL/g、好ましくは0.5〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.6〜1.3dl/gである。固有粘度を0.4dL/g以上とすることで、本発明の樹脂組成物における機械的特性や滞留熱安定性が向上する傾向にあり好ましい。逆に固有粘度を2dL/g未満とすることで樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。
なお上記の固有粘度は、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃で測定した値である。
本発明で用いる(B)ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度は、通常3〜60μeq/gであり、中でも5〜50μeq/g、更には7〜40μeq/gであることが好ましい。末端カルボキシル基を60μeq/g以下とすることで、樹脂組成物の機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を3μeq/g以上とすることで、樹脂組成物の滞留熱安定性が向上する傾向にあり好ましい。
なお、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂あるいはポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求めることができる。
[(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂の含有割合]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物において、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂の含有割合は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂が過度に多く、(B)ポリエステル樹脂が少な過ぎると、(B)ポリエステル樹脂を配合することによる耐薬品性の向上効果や、電磁波抑制性の向上効果を十分に得ることができず、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂が過度に少なく、(B)ポリエステル樹脂が多過ぎると、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂本来の機械的強度、耐熱性、成形加工性等が損なわれる。
従って、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂との合計に対して50〜99質量%、特に60〜90質量%、更には65〜80質量%となるように用いることが好ましい。
また、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物中の(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂の合計の含有量は50〜99質量%、特に60〜95質量%であることが好ましい。これらの樹脂成分の含有量が少な過ぎると成形性や耐衝撃性が損なわれるおそれがあり、多過ぎると相対的に他の成分の含有量が少なくなり、目的とする電磁波抑制性が得られない場合がある。
また、上記範囲を外れると、後述の樹脂組成物のミクロ形態において、芳香族ポリカーボネート樹脂による連続相を形成し得なくなる。
[(C)カーボンナノコイル]
本発明で用いる(C)カーボンナノコイルは、平均コイル長1〜100μm、平均コイル径1〜1000nm、平均コイルピッチ1〜1000nm、特に平均コイル長10〜40μm、平均コイル径1〜1000nm、平均コイルピッチ1〜1000nm、とりわけ平均コイル長20〜40μm、平均コイル径400〜800nm、平均コイルピッチ400〜800nmであることが好ましく、この範囲とすることにより、優れた電磁波吸収効果を得ることができる。
カーボンナノコイルの平均繊維径(線径)は、通常1〜500nm程度、好ましくは50〜300nm程度である。
本発明のカーボンナノコイルの平均コイル長は、カーボンナノコイルを任意で100本選択し、当該カーボンナノコイル100本を走査型電子顕微鏡(SEM)で2000倍の倍率で画像を撮影し、当該画像のコイル長を目視で計測した場合の100本の平均値をいう。平均コイル径、平均コイルピッチ及び平均繊維径も上記平均コイル長と同様に任意で選択したカーボンナノコイル100本のSEM画像(2000倍)で観察した場合の平均値をいう。
このようなカーボンナノコイルは、市販品を使用してもよいが、例えば、カーボンナノコイル用触媒を担持させたアルミナ基板(以下「触媒付きアルミナ基板」という)を100〜1000℃、好ましくは500〜800℃程度に加熱し、その加熱した触媒付きアルミナ基板に、アセチレン等の炭化水素と不活性ガスとの混合気体を吹き付けて成長させる熱CVD(Chemical
Vapor Deposition)法によって製造することもできる。
上記カーボンナノコイル用触媒には、例えばインジウム・スズ・鉄系触媒が好適に用いられる。このようなインジウム・スズ・鉄系触媒としては、例えば金属塩酸塩、具体例としては、三塩化鉄(FeCl)等の塩化鉄と、三塩化インジウム(InCl)等の塩化インジウムと、二塩化スズ(SnCl)等の塩化スズとの混合溶液から共沈法で作製した沈殿物を、300〜1000℃、好ましくは500〜900℃で焼成した混合酸化物が好適に用いられる。また、インジウム・スズ・鉄系触媒としては、前述した金属塩酸塩以外に、金属硝酸塩、金属硫酸塩又は金属有機酸塩を用いてもよい。なお、このような触媒には、例えば、酸化鉄、酸化インジウム、酸化スズ等の金属酸化物等の粉末が混合されていてもよい。また、カーボンナノコイル用触媒として、前述のインジウム・スズ・鉄系の三元系触媒の他にも、酸化インジウムを含まない触媒、例えば、スズ・鉄系の二元系触媒、具体的には酸化鉄と酸化スズとの二元系触媒等を使用してもよい。
上記混合溶液の溶媒には、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。
また、アセチレン等の炭化水素と混合する不活性ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン等が用いられる。
熱CVD法によってカーボンナノコイルを製造する際、用いるカーボンナノコイル用触媒の組成、成長時間、触媒付きアルミナ基板の加熱温度、炭化水素の種類、炭化水素の濃度及び流量などを制御することによって、得られるカーボンナノコイルのコイル長、コイル径、コイルピッチ等を適宜制御することができる。
また、カーボンナノコイルに超音波等を照射することにより、コイル長等を短くして、カーボンナノコイルの性状を変化させることも可能である。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物中の(C)カーボンナノコイルの含有量は、1〜30質量%、特に5〜20質量%であることが好ましい。組成物中の(C)カーボンナノコイルの含有量が少な過ぎると十分な導電性、電磁波抑制性を得ることができず、多過ぎると成形性や得られる成形品の強度、表面性状などが損なわれるおそれがあり、好ましくない。
本発明において、(C)カーボンナノコイルは、樹脂組成物に対する均一分散性、溶融混練時のカーボンナノコイルの形態を保持する(カーボンナノコイルが引き伸ばされたり、破断されたりして形状が変わることを防止する)観点から、予め(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の一部と(C)カーボンナノコイルとを混合したカーボンナノコイルマスターバッチとして、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物を構成する(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の残部、(B)ポリエステル樹脂、及びその他必要に応じて用いられる他の成分等に対して配合されることが好ましい。
以下、このカーボンナノコイルマスターバッチの製造方法について説明する。
まず、芳香族ポリカーボネート樹脂を溶解させることができる有機溶媒にカーボンナノコイルを添加して分散液を調製し、この分散液に(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の一部を溶解させてキャスティング液を調製する。このキャスティング液をキャスティングした後、有機溶媒を蒸発除去して芳香族ポリカーボネート樹脂とカーボンナノコイルからなる樹脂組成物のシートを得、このシートを適当な大きさに切断する。
カーボンナノコイルを分散させるための有機溶媒は、芳香族ポリカーボネート樹脂を溶解させるものであれば制限されず、用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の種類等に応じて適宜決定されるが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタン、クロロホルム等が樹脂の溶解の容易さ及び蒸発時の気泡発生の抑制の観点から好ましい。
キャスティング液中の芳香族ポリカーボネート樹脂含有量及びカーボンナノコイル含有量については特に制限はないが、芳香族ポリカーボネート樹脂含有量は40〜99質量%、カーボンナノコイル含有量は1〜60質量%で、以下に記載する芳香族ポリカーボネート樹脂及びカーボンナノコイル含有量のカーボンナノコイルマスターバッチが得られるような割合で芳香族ポリカーボネート樹脂とカーボンナノコイルを添加することが好ましい。
キャスティング膜の乾燥は自然乾燥でもよいし、50℃程度で加熱乾燥してもよい。また、キャスティング膜の厚さは乾燥後の厚さで0.01〜3mm程度であることが好ましい。
また、キャスティング膜を切断して得られるカーボンナノコイルマスターバッチの粒径(最も径の大きい部分の長さ)は0.01〜5mm程度であることが好ましく、カーボンナノコイルマスターバッチ中のカーボンナノコイル含有量は1〜60質量%で、残部が芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
[(D)リン系難燃剤]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物には、組成物に難燃性を付与する目的で(D)リン系難燃剤を含んでいても良い。(D)リン系難燃剤は、分子中にリンを含む化合物であれば特に制限されないが、難燃性及び更なる組成物の粘度低減効果の点から下記の一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物が好ましい。
Figure 0005544883
(式中、R、R、R及びRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、r及びsは、各々独立に0又は1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。)
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物は、tが1〜5の縮合リン酸エステルであり、tが異なる縮合リン酸エステルの混合物については、tはそれらの混合物の平均値となる。
一般式(1)において、Xは、アリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基である。R〜Rがアリール基である場合、該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物の具体例としては、一般式(1)におけるXのジヒドロキシ化合物にレゾルシノールを使用した場合は、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−t−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が挙げられる。
これらの(D)リン系難燃剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(D)リン系難燃剤は、電磁波抑制用樹脂組成物中の含有量が20質量%以下、例えば5〜20質量%となるように配合することが好ましい。(D)リン系難燃剤の配合量が5質量%未満では、目的とする難燃性が得られなかったり、成形加工性が低下したりすることがある。また、(D)リン系難燃剤の配合量が20質量%を超えると、耐熱性や機械的強度が低下することがある。電磁波抑制用樹脂組成物中のより好ましい(D)リン系難燃剤の含有量は10〜20質量%である。
[(E)ポリフルオロエチレン]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物には、難燃性をさらに向上させるために、滴下防止剤として(E)ポリフルオロエチレンを配合しても良い。(E)ポリフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するもので、熱可塑性樹脂中に容易に分散し、且つ熱可塑性樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものが好ましい。
また、(E)ポリフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を溶融成形した成形品の外観を向上させるためには、有機系重合体で被覆された被覆ポリフルオロエチレンを用いることが好ましい。この被覆ポリフルオロエチレンとしては、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95質量%、中でも43〜80質量%、更には45〜70質量%、特には47〜60質量%であるものが好ましい。
このような被覆ポリフルオロエチレンを配合することにより、良好な難燃性を維持しつつ、成形品表面の白色異物の発生を抑制することができる。被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40質量%未満であると、難燃性が低下する場合があり、一方、95質量%を超えると、白点異物が多くなる場合がある。
また、有機系重合体により被覆されるポリフルオロエチレンとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、中でも、重合体中に容易に分散し、重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すため、フィブリル形成能を有するものが好ましい。
このような被覆ポリフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造することができ、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
ポリフルオロエチレンを被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではないが、樹脂に配合する際の分散性の観点から、熱可塑性樹脂との親和性が高いものが好ましい。
この有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの単量体の中でも、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂や(B)ポリエステル樹脂との親和性の観点から、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体が好ましく、特に(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく、これらの単量体を10質量%以上含有する単量体が好ましい。
本発明で好ましく使用される被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン(株)製のメタブレンA−3800、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等がある。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物中の(E)ポリフルオロエチレンの含有量は、0.01〜1質量%、更には0.05〜0.9質量%、特には0.1〜0.7質量%であることが好ましい。(E)ポリフルオロエチレンの含有量が0.01質量%未満の場合には、難燃性の改良効果が不十分な場合があり、1質量%を超えると成形品の外観が低下する場合がある。
また、電磁波抑制用樹脂組成物中の(D)リン系難燃剤と(E)ポリフルオロエチレンの配合比率、(D)リン系難燃剤/(E)ポリフルオロエチレンの重量比は、バランスの良い性能を有する樹脂組成物を得るという点から、通常0.1〜1000であり、更には1〜100、特には2〜60である。
[(F)離型剤]
本発明の樹脂組成物には、成形時の金型離型性を良好なものとするために離型剤を配合することができる。
離型剤としては例えば、脂肪族カルボン酸やそのアルコールエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、鎖式又は環式の、脂肪族1〜3価のカルボン酸が挙げられる。これらの中でも炭素数6〜36の、1価又は2価カルボン酸が好ましく、特に炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が好ましい。この様な脂肪族カルボン酸としては、具体的には例えばパルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルにおける脂肪族カルボン酸成分は、上述の脂肪族カルボン酸と同義である。一方、脂肪族カルボン酸エステルのアルコール成分としては、飽和又は不飽和の、鎖式又は環式の、1価又は多価アルコールが挙げられる。これらはフッ素原子、アリール基等の換基を有していてもよく、中でも炭素数30以下の、1価又は多価飽和アルコールが好ましく、特に炭素数30以下、飽和脂肪族の、1価又は多価アルコールが好ましい。
この様なアルコール成分としては、具体的には例えばオクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。尚、この脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、更には複数の脂肪族カルボン酸エステルの混合物でもよい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。ここで脂肪族炭化水素とは、脂環式炭化水素も含まれる。またこれらの炭化水素化合物は、部分酸化されていてもよい。
これら脂肪族炭化水素の中でも、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、特にパラフィンワックスやポリエチレンワックスが好ましい。数平均分子量は中でも200〜5000であることが好ましい。これらの脂肪族炭化水素は単独で、又は2種以上を任意の割合で併用しても、主成分が上記の範囲内であればよい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられ、これらは一種又は任意の割合で二種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物の離型剤の含有量は適宜選択して決定すればよいが、少なすぎると離型効果が十分に発揮されず、逆に多すぎても樹脂の耐加水分解性の低下や、成形時の金型汚染等が問題になる場合がある。よって離型剤の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリエステル樹脂、及び(C)カーボンナノコイルの合計量100質量部に対して、0.001〜2質量部であり、中でも0.01〜1質量部であることが好ましい。
[(G)リン系安定剤]
本発明の樹脂組成物は、熱安定性向上のために、リン系化合物を添加することができる。
リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
なかでも、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機フォスファイトが好ましい。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、アデカ社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、「アデカスタブAX−71」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の樹脂組成物が(G)リン系安定剤を含む場合、(G)リン系安定剤の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリエステル樹脂、及び(C)カーボンナノコイルの合計量100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[(H)酸化防止剤]
本発明の樹脂組成物には、さらに酸化防止剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の樹脂組成物が(H)酸化防止剤を含む場合、(H)酸化防止剤の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリエステル樹脂、及び(C)カーボンナノコイルの合計量100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[その他の成分]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、相溶化剤、可塑剤、分散剤、防菌剤等の樹脂用添加剤、耐衝撃性改良剤、無機フィラーなどを配合することができる。
[粘度(Q値)]
本発明の樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂に(B)ポリエステル樹脂を配合することにより、耐薬品性を付与すると共に、樹脂組成物の粘度を下げ、(C)カーボンナノコイルを溶融混練するときのカーボンナノコイルの形態を保持するものである。
この形態を保持する効果を得る上で、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物について、以下の方法で測定したJISK7210付属書Cに準拠した粘度(Q値)がQ値が1×10−2〜80×10−2cm/sec、特に3×10−2〜70×10−2cm/secであることが好ましい。
これらのQ値が上記範囲よりも小さいと、(C)カーボンナノコイルの形態を保持する効果を十分に得ることができず、上記範囲よりも大きいと耐衝撃性が低下する。
<粘度(Q値)測定方法>
得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JISK7210附属書Cに準拠した方法で、高荷式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:10−2cm/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
[樹脂組成物のミクロ形態]
樹脂成分として(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂を含む本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、ミクロ形態を電子顕微鏡で観察した際、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂及び(B)ポリエステル樹脂のいずれか一方による連続相(以下、「海相」という)と他方による不連続相(以下、「島相」という)からなるミクロ形態を有するか、或いは両樹脂がそれぞれ連続相を形成した共連続相からなるミクロ形態を有する。
即ち、樹脂Aと樹脂Bとを混合してなるポリマーアロイは、樹脂Aの割合が多く、樹脂Bの割合が少ないと、樹脂Aよりなる海相中に、樹脂Bの島相が分散した海島構造となる。この場合、樹脂Aは連続相であるが、樹脂Bは島状に分断された非連続相である。この状態から、樹脂Aの配合量を減らし、樹脂Bの配合量を増やしてゆくと、海相と島相とが逆転し、樹脂Bよりなる海相中に、樹脂Aの島相が分散した海島構造となり、この場合、樹脂Bは連続相であるが、樹脂Aは島状に分断された非連続相となる。この樹脂A/樹脂Bの海島構造となる配合割合と樹脂B/樹脂Aの海島構造となる配合割合との間の配合領域において、このポリマーアロイは、樹脂Aも樹脂Bも連続相様であり(両相共に連続相の様に観察され)、両樹脂が連続相を形成しつつ微細に分散したスポンジ様の2相分離構造となる。このような相構造は、共連続構造と称される。
本発明において、(C)カーボンナノコイルは、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂及び(B)ポリエステル樹脂で形成される海島構造又は共連続構造における連続相内に主に存在することにより、連続相内にカーボンナノコイルによる良好な導電性のネットワークが形成されることにより、優れた電磁波抑制性が得られることが好ましい。なお、ここで、「主に」とは、(C)カーボンナノコイルの50%以上、好ましくは65%以上、最も好ましくは85%以上が、連続相中に存在していることを意味する。
なお、電子顕微鏡によるミクロ形態の観察は、次のようにして行う。樹脂組成物を成形して得られた、縦50mm、横30mm、厚み1mmの成形品の中心部分から約4×4×1mmの小片を切り出し、クライオ装置(REICHERT−NSSEIPCS)を装着した超ミクロトーム(ライカ社製ULTRACUT CUT)を用いて、−100℃にてダイヤモンドナイフで肉厚中心部の流動方向と直交する面が観察面となるように厚さ100nmの超薄切片を切り出し、切り出した切片を4酸化ルテニウム(RuO)で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、型式:JEM1200EXII型)によりカーボンナノコイルの分散状態を観察する。カーボンナノコイルが暗色に、芳香族ポリカーボネート樹脂が灰色に、ポリエステル樹脂が明色に観察されるので、カーボンナノコイル100個中のうち何個が連続相に存在するかを観察し、本発明の樹脂組成物におけるカーボンナノコイルの何%が連続相中に存在するかを決定する。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、電磁波抑制性の観点から、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂が海相を構成し、(B)ポリエステル樹脂が島相を構成する海−島構造のミクロ形態を有し、(C)カーボンナノコイルが主に(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の海相に存在することが好ましい。
[製造方法]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、
(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリエステル樹脂、(C)カーボンナノコイル(好ましくはカーボンナノコイルマスターバッチ)、及び必要により配合される(D)リン系難燃剤や(E)ポリフルオロエチレン、その他の成分を一括して溶融混練する方法
(2)液状の(D)リン系難燃剤を用いる場合には、予め(D)リン系難燃剤以外の成分を溶融混練した後に、別途50〜120℃で加温しておいた液状の(D)リン系難燃剤を添加して、溶融混練する方法
などが挙げられる。
(C)カーボンナノコイルが(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の海相に主として存在する電磁波抑制用樹脂組成物を製造するには、上述のように、(C)カーボンナノコイルを(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の一部に配合したカーボンナノコイルマスターバッチを用い、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂が海相で(B)ポリエステル樹脂が島相となるように、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂を(B)ポリエステル樹脂よりも多く用い、混練の程度を調整して、(C)カーボンナノコイルが(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の海相内に存在するように電磁波抑制用樹脂組成物を製造すれば良い。
[成形方法]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、各種製品(成形品)の製造(成形)用樹脂材料として使用される。その成形方法は、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む法)、インサート成形法、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、フィルム成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられるが、特に、成形中に(C)カーボンナノコイルを成形品の表層に沿って配向させることにより、高い電磁波抑制性を得ることができる点で、射出成形法が好ましい。
[電磁波抑制用樹脂成形品]
本発明の電磁波抑制用樹脂成形品は、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなるものであり、電気・電子・OA機器部品、機械部品、車輌用部品、携帯電話などの筐体や内部部品、とりわけ電子機器の筐体や内部部品として好適である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各樹脂組成物の製造に用いた原材料は以下の通りである。
<(A)芳香族ポリカーボネート樹脂>
ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000」(粘度平均分子量:21,000)
<(B)ポリエステル樹脂>
ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂:三菱化学(株)製「ノバペックスGG500」(固有粘度0.76dl/g、末端カルボキシル基濃度:15μeq/g)
ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバデュラン5020」(固有粘度1.20dl/g、末端カルボキシル基濃度:20μeq/g)
<(C)カーボンナノコイル>
財団法人大阪科学技術センター製カーボンナノコイル(平均長さ約20μm、平均線径約150nm、平均コイル径約500nm、平均ピッチ約500nm)9質量部をジクロロメタン70質量部に分散させた液に、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂(ユーピロン(登録商標)S−3000)を21質量部溶解させ、これをステンレスバット中にキャスティングした後、50℃で5分間加熱することによりジクロロメタンを除去して厚さ0.2mmの薄膜を得た。その薄膜を3mm角に切断してカーボンナノコイルマスターバッチを得た。このカーボンナノコイルマスターバッチのカーボンナノコイル含有量は30質量%である。
<リン系安定剤>
リン系安定剤:モノ−及びジ−ステアリルアシッドホスフェート、アデカ社製「アデカスタブAX−71」
[樹脂組成物の調製]
芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、カーボンナノコイルマスターバッチ及びリン系安定剤を、表1に示す組成となるようにブレンドし(ただし、比較例1ではポリエステル樹脂とリン系安定剤を配合せず)、ポリ袋中でよく振り混ぜることにて均一に分散させた後、二軸押出機(HAAKE社製「ミニラボ」)にてシリンダ温度300℃にて溶融させ、スクリュウ回転数80rpmにて混練し、ペレタイザーにて3mmの長さに切断して樹脂組成物のペレットを得た。
[評価方法]
(1) 粘度(Q値)
樹脂組成物の製造に用いた芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値、この芳香族ポリカーボネート樹脂に対して表1に示す配合で全成分を配合した樹脂組成物のQ値をそれぞれ以下の方法で測定した。
芳香族ポリカーボネート樹脂又は得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JISK7210附属書Cに準拠した方法で、高荷式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で樹脂又は組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:10−2cc/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
(2) 電磁波吸収性
得られた樹脂組成物のペレットを射出成形機(HAAKE社製「ミニジェット」、最大射出圧力1200Bar)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃にて、金型キャビティ(縦50mm、横30mm、厚み1mm)に射出成形し、得られた射出成形品3枚に対して、近磁界用ノイズ抑制シート評価システム・イントラ・デカップリングレシオ測定システム(IEC規格No:IEC62333−2)により、2GHzの周波数における磁界波のRda値を測定し、その平均値を算出した。この値は、製品から発生する周波数やその強さにも依存するため一概に決められる値ではないが、0.6dB以上であることが好ましい。
実施例1,4、比較例1においては、0〜4GHzまでの磁界波のRda値を連続的に測定した。
なお、上記の電磁波抑制性の評価用サンプルと同様にして成形した、縦50mm、横30mm、厚み1mmの成形品の中心部分から約4×4×1mmの小片を切り出し、クライオ装置(REICHERT−NSSEIPCS)を装着した超ミクロトーム(ライカ社製ULTRACUT CUT)を用いて、−100℃にてダイヤモンドナイフで肉厚中心部の流動方向と直交する面が観察面となるように厚さ100nmの超薄切片を切り出し、次に、切り出した超薄切片を4酸化ルテニウム(RuO)で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、型式:JEM1200EXII型)を用いて、カーボンナノコイルの分散状態を観察したところ、実施例1〜3においては、芳香族ポリカーボネート樹脂の海相内にカーボンナノコイルの殆ど全部が存在していることが確認された。実施例4では、芳香族ポリカーボネート樹脂の比率が少なく、かろうじて共連続構造となっており、カーボンナノコイルの殆ど全部が芳香族ポリカーボネート樹脂相に分散して存在していた。
[結果]
上記評価結果を表1及び図1に示す。図1において、PCは芳香族ポリカーボネート樹脂を、PBTはポリブチレンテレフタレ−ト樹脂を、CNCはカーボンナノコイルをそれぞれ示す。
Figure 0005544883
表1及び図1より、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、2〜2.5GHz程度の周波数領域における電磁波抑制性に優れることが分かる。
これに対して、ポリエステル樹脂を配合していない比較例1では、この周波数領域における電磁波抑制性に劣るものとなる。
なお、実施例1と実施例2の対比から、ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂よりもポリエチレンテレフタレ−ト樹脂の方が電磁波抑制性の向上に有効であり、また、実施例1と実施例4の対比から芳香族ポリカーボネート樹脂をポリエステル樹脂よりも多く配合して芳香族ポリカーボネート樹脂の連続相にカーボンナノコイルを存在させる方が電磁波抑制性に優れることが分かる。

Claims (5)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリエステル樹脂、及び(C)カーボンナノコイルを含み、樹脂成分で形成される連続相内に(C)カーボンナノコイルが存在する電磁波抑制用樹脂組成物であって、(B)ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする電磁波抑制用樹脂組成物。
  2. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)ポリエステル樹脂との合計に対する(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の含有割合が50質量%以上99質量%以下であり、(C)カーボンナノコイルが芳香族ポリカーボネート樹脂の連続相内に存在することを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制用樹脂組成物。
  3. (C)カーボンナノコイルの含有量が1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電磁波抑制用樹脂組成物。
  4. 請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなる電磁波抑制用樹脂成形品。
  5. 電子機器の筐体又は電子機器の内部部品である請求項に記載の電磁波抑制用樹脂成形品。
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