JP5375498B2 - 電磁波抑制用樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

電磁波抑制用樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波抑制用樹脂組成物及びその成形品に関するものである。詳しくは、優れた導電性、機械的強度、耐熱性、難燃性及び成形加工性を併せ持つ電磁波抑制用樹脂組成物と、この電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなる電磁波抑制用樹脂成形品に関するものである。
近年、IT化社会の急速な発展に伴い、電子機器の高速処理化が進み、LSIやマイクロプロセッサーなどICの動作周波数は上昇し、通信分野では光ファイバーを用いた高速通信網が使用され、次世代マルチメディヤ移動通信おいては具体的に2GHz、ITS(Intelligent Tranport System)の分野ではETS(自動料金収受システム)における5.8GHz、車間距離を測定して運転者に伝える走行支援道路システム(AHS)の自動車搭載レーダーでは76GHzといった周波数の電磁波が使用され、今後は、更に高周波の電磁波の利用範囲が拡大することが予想される。電磁波は周波数の上昇に伴いノイズを放出しやすく、一方において、電子機器の小型化、高密度化による電子機器内部のノイズ環境の悪化による誤動作が生じ、このような高周波の電磁波の利用状況において、人体へ及ぼす悪影響も問題となってきている。
かかる電磁波の防止材としては、電磁波遮断体と電磁波抑制体がある。電磁波遮断体には一般的に金属材料が使用され、例えば、電磁波を嫌う精密機器などが設置された部屋の壁材などには、金属板を用いて、室内への電磁波の侵入を防止している。
一方、電磁波抑制体は、入射してきた電磁波を熱エネルギーに変換することにより、透過あるいは反射される電磁波の強度を大幅に減衰させるものである。従来、電子機器用途の電磁波抑制体としては、形状の自由度や、軽量化の点から、表面を導電処理し、あるいは樹脂に導電材を混合して成形したプラスチック製の筐体が用いられている。また、導電材粉末を樹脂、ゴム或いは塗料等のマトリックス中に分散させた複合材料のシートや塗膜を、電磁波を抑制したい部位に貼付または形成することで電磁波抑制性能を付与したものも多く用いられている。この導電材としては、主にフェライトや黒鉛(例えば、特許文献1)が使用されている。
しかしながら、フェライトは比重が大きいため、これを配合した複合材料が重くなるという欠点があり、移動を伴う通信機器などに多量に使用する場合には、本体が重くなり、当該通信機器の機動性に問題が生じる。
一方、黒鉛については、比重が比較的小さいため、フェライトに見られるような前記の問題は生じないが、粉末が嵩高いために、マトリックスへの充填量を増大させることが困難であり、充填量を多くすることができない結果、黒鉛の配合による電磁波抑制性能の向上効果にも制限があるという問題がある。
特許文献2には、所定の寸法のカーボンナノコイルを樹脂に配合してなる電磁波吸収シートが提案されている。
カーボンナノコイルは、カーボンナノ繊維が螺旋構造となったものであり、その特異的な形状により、電気的、機械的特性に優れ、これを配合することにより数GHz〜数十GHzの電磁波の抑制に対応可能な樹脂組成物を得ることができる。
特許文献2で用いられているようなカーボンナノコイルを樹脂に配合することにより、樹脂組成物に良好な電磁波抑制機能を付与することができるが、カーボンナノコイルは、極細のカーボンナノ繊維が螺旋状に巻いたものであり、樹脂との溶融混練時の剪断力で破断し易い。破断してコイル長が短くなったカーボンナノコイルは、本来の電気的、機械的特性が損なわれ、目的とする電磁波抑制性能を得ることができない。
また、特許文献2では、電子部品の筐体等の用途において要求される難燃性についての検討もなされていない。
特開2005−11878号公報 特開2009−60060号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、優れた導電性、機械的強度、耐熱性、難燃性及び成形加工性を併せ持つ電磁波抑制用熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂にカーボンナノコイルを配合すると共にリン系難燃剤を配合することにより、難燃性を付与すると共に、電磁波抑制性能を高めることができることを見出した。
本発明によれば、導電性付与材としてカーボンナノコイルを用いるため、その螺旋構造に由来して優れた電磁波抑制性、更には機械的特性を得ることができる。カーボンナノコイルは、前述の如く、樹脂組成物の溶融混練時に破断し易いが、リン系難燃剤の配合により難燃性が付与されると共に、組成物の粘度が下がることで溶融混練時のカーボンナノコイルの形態が保持され、カーボンナノコイル本来の良好な電磁波抑制性能が得られる。
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] (A)熱可塑性樹脂、(B)リン系難燃剤、及び(C)カーボンナノコイルを含む電磁波抑制用樹脂組成物であって、(A)熱可塑性樹脂が、芳香族ポリカーボネート樹脂を含み、(B)リン系難燃剤が下記一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物であり、(B)リン系難燃剤の含有量が5質量%以上20質量%以下であり、(C)カーボンナノコイルを(A)熱可塑性樹脂の一部と(C)カーボンナノコイルとを混合したカーボンナノコイルマスターバッチとして配合したことを特徴とする電磁波抑制用樹脂組成物。
Figure 0005375498
(式中、R、R、R及びRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、r及びsは、各々独立に0又は1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。)
[2] (C)カーボンナノコイルの含有量が1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする[1]に記載の電磁波抑制用樹脂組成物。
[3] [1]において、前記カーボンナノコイルマスターバッチの粒径が0.01〜5mmで、該カーボンナノコイルマスターバッチ中の(C)カーボンナノコイルの含有量が1〜60質量%で、残部が(A)熱可塑性樹脂であることを特徴とする電磁波抑制用樹脂組成物。
[4] [1]ないしのいずれかに記載の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなる電磁波抑制用樹脂成形品。
] 電子機器の筐体又は電子機器の内部部品である[]に記載の電磁波抑制用樹脂成形品。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、優れた導電性、機械的強度、耐熱性、難燃性、成形加工性及び電磁波抑制性を併せ持ち、特に良好な難燃性と電磁波抑制性とを兼備するものであり、電気・電子・OA機器部品、機械部品、車輌用部品、携帯電話などの筐体や内部部品等の構成材料として好適に使用することができる。
本発明において、(A)熱可塑性樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む(請求項)。
また、組成物中の(B)リン系難燃剤の含有量は、5質量%以上20質量%以下で、(C)カーボンナノコイルの含有量は1質量%以上20質量%以下であることが好ましい(請求項)。
また、用いる(B)リン系難燃剤は、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物であることが難燃性、組成物の粘度低減効果の面で好ましい(請求項)。
Figure 0005375498
(式中、R、R、R及びRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、r及びsは、各々独立に0又は1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。)
本発明の電磁波抑制用樹脂成形品は、このような本発明の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなるものであり、その優れた導電性、機械的強度、耐熱性、難燃性、成形加工性及び電磁波抑制性により、電気・電子・OA機器部品、機械部品、車輌用部品、携帯電話などの筐体や内部部品等として有用であり、各種構造材の薄肉軽量化を図ることができる(請求項)。
以下に本発明の電磁波抑制用樹脂組成物及び電磁波抑制用樹脂成形品の実施の形態を詳細に説明する。
[(A)熱可塑性樹脂]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物に用いられる(A)熱可塑性樹脂としては、成形品の要求性能に応じて適宜選択すれば良く、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上のアロイとしても使用することもできる。中でも、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物には、機械的強度、耐熱性、難燃化の容易さの点でポリエステル系樹脂や、ポリカーボネート樹脂、特に芳香族ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
本発明におけるポリエステル系樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応によって得られる熱可塑性ポリエステル樹脂であり、好ましくは、テレフタル酸又はそのジアルキルエステルと脂肪族グリコールとの重縮合反応によって得られるポリアルキレンテレフタレートが挙げられ、具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
反応に用いられる脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。重縮合反応においては、脂肪族グリコールは、それ以外の例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の他のジオール類や多価アルコール類と併用することができる。これらジオール類又は多価アルコール類の使用量は、脂肪族グリコール100質量部に対して40質量部以下の範囲であることが好ましい。
また、重縮合反応においては、テレフタル酸又はそのジアルキルエステルと共に、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸やそれらのジアルキルエステル等の二塩基酸、三塩基酸等や、またそれらのジアルキルエステルを併用することができる。これらの使用量は、テレフタル酸又はそのジアルキルエステル100質量部に対して40質量部以下の範囲であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂の分子量としては、フェノールとテトラクロルエタンの混合溶媒(重量比=50/50)中、30℃で測定される極限粘度で、好ましくは0.5〜1.8であり、さらに好ましくは0.7〜1.5である。
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体と反応させることにより製造される熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体である。この反応は公知の方法で行うことができ、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法等が採用される。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性をさらに高める目的で上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物及び/又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーあるいはオリゴマーを使用することもできる。
芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、ホスゲン、又はジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、好ましくは16,000〜30,000の範囲であり、より好ましくは17,000〜28,000、特に好ましくは18,000〜26,000である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が16,000未満では機械的強度が不足し、30,000を超えると成形性に難を生じやすく、また、後述の樹脂組成物の粘度条件を満たすことが困難となり、好ましくない。
なお、所望の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、末端停止剤或いは分子量調節剤を用いる方法や重合反応条件の選択等公知の方法が採用される。末端停止剤あるいは分子量調節剤としては、例えば、フェノール、p−t−アルキルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、脂肪族カルボン酸クロライドなどが挙げられる。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物中の(A)熱可塑性樹脂の含有量は70〜99質量%、特に80〜95質量%であることが好ましい。(A)熱可塑性樹脂の含有量が少な過ぎると成形性や耐衝撃性が損なわれるおそれがあり、多過ぎると相対的に他の成分の含有量が少なくなり、目的とする電磁波抑制性や難燃性が得られない場合がある。
[(B)リン系難燃剤]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物に用いられる(B)リン系難燃剤は、耐熱性の点から下記の一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物である
Figure 0005375498
(式中、R、R、R及びRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、r及びsは、各々独立に0又は1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。)
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物は、tが1〜5の縮合リン酸エステルであり、tが異なる縮合リン酸エステルの混合物については、tはそれらの混合物の平均値となる。
一般式(1)において、Xは、アリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基である。R〜Rがアリール基である場合、該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物の具体例としては、一般式(1)のXのジヒドロキシ化合物にレゾルシノールを使用した場合は、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−t−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート、クレジル・キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシンポリホスフェート等が挙げられる。
これらの(B)リン系難燃剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(B)リン系難燃剤は、電磁波抑制用樹脂組成物中の含有量が5〜20質量%となるように配合する。(B)リン系難燃剤の配合量が5質量%未満では、本発明で目的とする難燃性が得られなかったり、また、溶融混練時の(C)カーボンナノコイルの形態を保持する効果が十分に得られなかったり、成形加工性が低下したりすることがある。また、(B)リン系難燃剤の配合量が20質量%を超えると、耐熱性や機械的強度が低下することがある。電磁波抑制用樹脂組成物中のより好ましい(B)リン系難燃剤の含有量は10〜20質量%である。
[(C)カーボンナノコイル]
本発明で用いる(C)カーボンナノコイルは、平均コイル長1〜100μm、平均コイル径1〜1000nm、平均コイルピッチ1〜1000nm、特に平均コイル長10〜40μm、平均コイル径1〜1000nm、平均コイルピッチ1〜1000nm、とりわけ平均コイル長20〜40μm、平均コイル径400〜800nm、平均コイルピッチ400〜800nmであることが好ましく、この範囲とすることにより、優れた電磁波吸収効果を得ることができる。
カーボンナノコイルの平均線径(繊維径)は、通常1〜500nm程度、好ましくは50〜300nm程度である。
本発明のカーボンナノコイルの平均コイル長は、カーボンナノコイルを任意で100本選択し、当該カーボンナノコイル100本を走査型電子顕微鏡(SEM)で2000倍の倍率で画像を撮影し、当該画像のコイル長を目視で計測した場合の100本の平均値をいう。平均コイル径、平均コイルピッチ及び平均繊維径も上記平均コイル長と同様に任意で選択したカーボンナノコイル100本のSEM画像(2000倍)で観察した場合の平均値をいう。
このようなカーボンナノコイルは、市販品を使用してもよいが、例えば、カーボンナノコイル用触媒を担持させたアルミナ基板(以下「触媒付きアルミナ基板」という)を100〜1000℃、好ましくは500〜800℃程度に加熱し、その加熱した触媒付きアルミナ基板に、アセチレン等の炭化水素と不活性ガスとの混合気体を吹き付けて成長させる熱CVD(Chemical
Vapor Deposition)法によって製造することもできる。
上記カーボンナノコイル用触媒には、例えばインジウム・スズ・鉄系触媒が好適に用いられる。このようなインジウム・スズ・鉄系触媒としては、例えば金属塩酸塩、具体例としては、三塩化鉄(FeCl)等の塩化鉄と、三塩化インジウム(InCl)等の塩化インジウムと、二塩化スズ(SnCl)等の塩化スズとの混合溶液から共沈法で作製した沈殿物を、300〜1000℃、好ましくは500〜900℃で焼成した混合酸化物が好適に用いられる。また、インジウム・スズ・鉄系触媒としては、前述した金属塩酸塩以外に、金属硝酸塩、金属硫酸塩または金属有機酸塩を用いてもよい。なお、このような触媒には、例えば、酸化鉄、酸化インジウム、酸化スズ等の金属酸化物等の粉末が混合されていてもよい。また、カーボンナノコイル用触媒として、前述のインジウム・スズ・鉄系の三元系触媒の他にも、酸化インジウムを含まない触媒、例えば、スズ・鉄系の二元系触媒、具体的には酸化鉄と酸化スズとの二元系触媒等を使用してもよい。
上記混合溶液の溶媒には、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。
また、アセチレン等の炭化水素と混合する不活性ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン等が用いられる。
熱CVD法によってカーボンナノコイルを製造する際、用いるカーボンナノコイル用触媒の組成、成長時間、触媒付きアルミナ基板の加熱温度、炭化水素の種類、炭化水素の濃度および流量などを制御することによって、得られるカーボンナノコイルのコイル長、コイル径、コイルピッチ等を適宜制御することができる。
また、カーボンナノコイルに超音波等を照射することにより、コイル長等を短くして、カーボンナノコイルの性状を変化させることも可能である。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物中の(C)カーボンナノコイルの含有量は、1〜30質量%、特に5〜20質量%であることが好ましい。組成物中の(C)カーボンナノコイルの含有量が少な過ぎると十分な導電性、電磁波抑制性を得ることができず、多過ぎると成形性や得られる成形品の強度、表面性状などが損なわれるおそれがあり、好ましくない。
本発明において、(C)カーボンナノコイルは、樹脂組成物に対する均一分散性、溶融混練時のカーボンナノコイルの形態を保持する(カーボンナノコイルが引き伸ばされたり、破断されたりして形状が変わることを防止する)観点から、予め(A)熱可塑性樹脂の一部と(C)カーボンナノコイルとを混合したカーボンナノコイルマスターバッチとして、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物を構成する(A)熱可塑性樹脂の残部、(B)リン系難燃剤、及びその他必要に応じて用いられる他の成分等に対して配合される。
以下、このカーボンナノコイルマスターバッチの製造方法について説明する。
まず、熱可塑性樹脂を溶解させることができる有機溶媒にカーボンナノコイルを添加して分散液を調製し、この分散液に(A)熱可塑性樹脂の一部を溶解させてキャスティング液を調製する。このキャスティング液をキャスティングした後、有機溶媒を蒸発除去して熱可塑性樹脂とカーボンナノコイルからなる樹脂組成物のシートを得、このシートを適当な大きさに切断する。
カーボンナノコイルを分散させるための有機溶媒は、熱可塑性樹脂を溶解させるものであれば制限されず、用いる熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜決定されるが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタン、クロロホルム等が樹脂の溶解の容易さ及び蒸発時の気泡発生の抑制の観点から好ましい。
キャスティング液中の熱可塑性樹脂含有量及びカーボンナノコイル含有量については特に制限はないが、熱可塑性樹脂含有量は40〜99質量%、カーボンナノコイル含有量は1〜60質量%で、以下に記載する熱可塑性樹脂及びカーボンナノコイル含有量のカーボンナノコイルマスターバッチが得られるような割合で熱可塑性樹脂とカーボンナノコイルを添加することが好ましい。
キャスティング膜の乾燥は自然乾燥でもよいし、50℃程度で加熱乾燥してもよい。また、キャスティング膜の厚さは乾燥後の厚さで0.01〜3mm程度であることが好ましい。
また、キャスティング膜を切断して得られるカーボンナノコイルマスターバッチの粒径(最も径の大きい部分の長さ)は0.01〜5mm程度であることが好ましく、カーボンナノコイルマスターバッチ中のカーボンナノコイル含有量は1〜60質量%で、残部が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
[(D)ポリフルオロエチレン]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物には、難燃性を向上させるために、滴下防止剤として(D)ポリフルオロエチレンを配合することが好ましい。(D)ポリフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するもので、熱可塑性樹脂中に容易に分散し、且つ熱可塑性樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものが好ましい。
また、(D)ポリフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を溶融成形した成形品の外観を向上させるためには、有機系重合体で被覆された被覆ポリフルオロエチレンを用いることが好ましい。この被覆ポリフルオロエチレンとしては、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95質量%、中でも43〜80質量%、更には45〜70質量%、特には47〜60質量%であるものが好ましい。
このような被覆ポリフルオロエチレンを配合することにより、良好な難燃性を維持しつつ、成形品表面の白色異物の発生を抑制することができる。被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40質量%未満であると、難燃性が低下する場合があり、一方、95質量%を超えると、白点異物が多くなる場合がある。
また、有機系重合体により被覆されるポリフルオロエチレンとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、中でも、重合体中に容易に分散し、重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すため、フィブリル形成能を有するものが好ましい。
このような被覆ポリフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造することができ、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
ポリフルオロエチレンを被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではないが、樹脂に配合する際の分散性の観点から、熱可塑性樹脂との親和性が高いものが好ましい。
この有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの単量体の中でも、ポリエステル系樹脂や芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性の観点から、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体が好ましく、特に(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく、これらの単量体を10質量%以上含有する単量体が好ましい。
本発明で好ましく使用される被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン(株)製のメタブレンA−3800、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等がある。
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物中の(D)ポリフルオロエチレンの含有量は、0.01〜1質量%、更には0.05〜0.9質量%、特には0.1〜0.7質量%であることが好ましい。(D)ポリフルオロエチレンの含有量が0.01質量%未満の場合には、難燃性の改良効果が不十分な場合があり、1質量%を超えると成形品の外観が低下する場合がある。
また、電磁波抑制用樹脂組成物中の(B)リン系難燃剤と(D)ポリフルオロエチレンの配合比率、(B)リン系難燃剤/(D)ポリフルオロエチレンの重量比は、バランスの良い性能を有する樹脂組成物を得るという点から、通常0.1〜1000であり、更には1〜100、特には2〜60である。
[(E)離型剤]
本発明の樹脂組成物には、成形時の金型離型性を良好なものとするために離型剤を配合することができる。
離型剤としては例えば、脂肪族カルボン酸やそのアルコールエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の、鎖式又は環式の、脂肪族1〜3価のカルボン酸が挙げられる。これらの中でも炭素数6〜36の、1価又は2価カルボン酸が好ましく、特に炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が好ましい。この様な脂肪族カルボン酸としては、具体的には例えばパルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルにおける脂肪族カルボン酸成分は、上述の脂肪族カルボン酸と同義である。一方、脂肪族カルボン酸エステルのアルコール成分としては、飽和または不飽和の、鎖式又は環式の、1価または多価アルコールが挙げられる。これらはフッ素原子、アリール基等の換基を有していてもよく、中でも炭素数30以下の、1価または多価飽和アルコールが好ましく、特に炭素数30以下、飽和脂肪族の、1価または多価アルコールが好ましい。
この様なアルコール成分としては、具体的には例えばオクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。尚、この脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよく、更には複数の脂肪族カルボン酸エステルの混合物でもよい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。ここで脂肪族炭化水素とは、脂環式炭化水素も含まれる。またこれらの炭化水素化合物は、部分酸化されていてもよい。
これら脂肪族炭化水素の中でも、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、特にパラフィンワックスやポリエチレンワックスが好ましい。数平均分子量は中でも200〜5000であることが好ましい。これらの脂肪族炭化水素は単独で、又は2種以上を任意の割合で併用しても、主成分が上記の範囲内であればよい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられ、これらは一種または任意の割合で二種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物の離型剤の含有量は適宜選択して決定すればよいが、少なすぎると離型効果が十分に発揮されず、逆に多すぎても樹脂の耐加水分解性の低下や、成形時の金型汚染等が問題になる場合がある。よって離型剤の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001〜2質量部であり、中でも0.01〜1質量部であることが好ましい。
[その他の成分]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、リン系安定剤、フェノール系安定剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、相溶化剤、可塑剤、分散剤、防菌剤等の樹脂用添加剤、耐衝撃性改良剤、無機フィラーなどを配合することができる。
[粘度]
本発明の樹脂組成物は、(B)リン系難燃剤を配合することにより、難燃性を付与すると共に、樹脂組成物の粘度を下げ、(C)カーボンナノコイルを溶融混練するときのカーボンナノコイルの形態を保持するものである。
この形態を保持する効果を得る上で、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物について、以下の方法で測定したQ値が5×10−2〜60×10−2cm/sec、特に6×10−2〜30×10−2cm/secであることが好ましい。
これらのQ値が上記範囲よりも小さいと、(C)カーボンナノコイルの形態を保持する効果を十分に得ることができず、上記範囲よりも大きいと耐衝撃性が低下する。
<粘度(Q値)測定方法>
得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JISK7210附属書Cに準拠した方法で、高荷式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:10−2cm/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
[製造方法]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、
(1)(A)熱可塑性樹脂、(B)リン系難燃剤、(C)カーボンナノコイル(好ましくはカーボンナノコイルマスターバッチ)、及び必要により配合される(D)ポリフルオロエチレン、その他の成分を一括して溶融混練する方法
(2)(B)リン系難燃剤が液状である場合には、予め(B)リン系難燃剤以外の成分を溶融混練した後に、別途50〜120℃で加温しておいた液状の(B)リン系難燃剤を添加して、溶融混練する方法
などが挙げられる。
[成形方法]
本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、各種製品(成形品)の製造(成形)用樹脂材料として使用される。その成形方法は、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む法)、インサート成形法、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、フィルム成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられるが、特に、成形中に(C)カーボンナノコイルを成形品の表層に沿って配向させることにより、高い電磁波抑制性を得ることができる点で、射出成形法が好ましい。
[電磁波抑制用樹脂成形品]
本発明の電磁波抑制用樹脂成形品は、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなるものであり、電気・電子・OA機器部品、機械部品、車輌用部品、携帯電話などの筐体や内部部品、とりわけ電子機器の筐体や内部部品として好適である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各樹脂組成物の製造に用いた原材料は以下の通りである。
<(A)熱可塑性樹脂>
芳香族ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000、粘度平均分子量:21,000)
<(B)リン系難燃剤>
縮合リン酸エステル:レゾルシノール(ジキシレニルホスフェート)(大八化学社製、商品名:PX200)
<(C)カーボンナノコイル>
財団法人大阪科学技術センター製カーボンナノコイル(平均長さ約20μm、平均線径約150nm、平均コイル径約500nm、平均ピッチ約500nm)3質量部をジクロロメタン70質量部に分散させた液に、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂(ユーピロン(登録商標)S−3000)を27質量部溶解させ、これをステンレスバット中にキャスティングした後、50℃で5分間加熱することによりジクロロメタンを除去して厚さ0.2mmの薄膜を得た。その薄膜を3mm角に切断してカーボンナノコイルマスターバッチを得た。このカーボンナノコイルマスターバッチのカーボンナノコイル含有量は10質量%である。
[樹脂組成物の調製]
芳香族ポリカーボネート樹脂、リン系難燃剤及びカーボンナノコイルマスターバッチを、表1に示す組成となるようにブレンドし(ただし、比較例1ではリン系難燃剤を配合せず)、タンブラーにて均一に分散させた後、二軸押出機(HAAKE社製「ミニラボ」)にてシリンダ温度320℃にて溶融させ、スクリュウ回転数80rpmにて混練しストランド状に押出した後、3mmの長さに切断して樹脂組成物のペレットを得た。
[評価方法]
(1) 粘度(Q値)
樹脂組成物の製造に用いた芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値、この芳香族ポリカーボネート樹脂に対して表1に示す配合で全成分を配合した樹脂組成物のQ値をそれぞれ以下の方法で測定した。
芳香族ポリカーボネート樹脂又は得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JISK7210附属書Cに準拠した方法で、高荷式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で樹脂又は組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:10−2cc/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
(2) 難燃性(燃焼時間)
得られた樹脂組成物のペレットを射出成形機(HAAKE社製「ミニジェット」、最大射出圧力1200Bar)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃にて、金型キャビティ(縦50mm、横30mm、厚み1mm)に射出成形して得られた50×30×1mmの試験片を用いて、燃焼試験を行った。
測定方法は、アンダーライターズラボラトリーズインコーポレーションのUL−94「材料分類のための燃焼試験」(以下、UL−94)に示されるのと同じ炎を用い、試験片に2秒接炎後の燃焼時間を測定して求めた。
(3) 電磁波吸収性
得られた樹脂組成物のペレットを射出成形機(HAAKE社製「ミニジェット」、最大射出圧力1200Bar)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃にて、金型キャビティ(縦50mm、横30mm、厚み1mm)に射出成形し、得られた射出成形品1枚に対して、近磁界用ノイズ抑制シート評価システム・イントラ・デカップリングレシオ測定システム(IEC規格No:IEC62333−2)により、2GHzの周波数における磁界波のRda値を測定し、その平均値を算出した。この値は、製品から発生する周波数やその強さにも依存するため一概に決められる値ではないが、0.6dB以上であることが好ましい。
[結果]
上記評価結果を表1に示す。
Figure 0005375498
表1より、本発明の電磁波抑制用樹脂組成物は、難燃性、電磁波抑制性に優れることが分かる。
これに対して、リン系難燃剤を配合していない比較例1では、難燃性も電磁波抑制性も劣るものとなる。

Claims (5)

  1. (A)熱可塑性樹脂、(B)リン系難燃剤、及び(C)カーボンナノコイルを含む電磁波抑制用樹脂組成物であって、
    (A)熱可塑性樹脂が、芳香族ポリカーボネート樹脂を含み、
    (B)リン系難燃剤が下記一般式(1)で表されるリン酸エステル系化合物であり、
    (B)リン系難燃剤の含有量が5質量%以上20質量%以下であり、
    (C)カーボンナノコイルを(A)熱可塑性樹脂の一部と(C)カーボンナノコイルとを混合したカーボンナノコイルマスターバッチとして配合したことを特徴とする電磁波抑制用樹脂組成物。
    Figure 0005375498
    (式中、R、R、R及びRは、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、r及びsは、各々独立に0又は1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。)
  2. (C)カーボンナノコイルの含有量が1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制用樹脂組成物。
  3. 請求項1において、前記カーボンナノコイルマスターバッチの粒径が0.01〜5mmで、該カーボンナノコイルマスターバッチ中の(C)カーボンナノコイルの含有量が1〜60質量%で、残部が(A)熱可塑性樹脂であることを特徴とする電磁波抑制用樹脂組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電磁波抑制用樹脂組成物を射出成形してなる電磁波抑制用樹脂成形品。
  5. 電子機器の筐体又は電子機器の内部部品である請求項4に記載の電磁波抑制用樹脂成形品。
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