JP5544382B2 - インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法、及び、印刷物 - Google Patents
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Description
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェットインク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
これらのインクジェットインク組成物としては、特許文献1又は2に記載のものが挙げられる。
<1> (成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)重合開始剤、(成分C)着色剤、及び、(成分D)HLBが2以上7以下のシリコーン系界面活性剤を含有し、成分Aとして(成分A−1)N−ビニルラクタム類を含有し、成分Dの含有量がインク組成物全体の0.4質量%以上4.0質量%以下であり、単官能モノマーの総量がインク組成物全体の75質量%以上であり、多官能モノマーを含有しないか、又は、多官能モノマーの総量がインク組成物全体の10質量%以下であり、25℃における表面張力が20.0mN/m以上22.5mN/m以下であることを特徴とするインクジェット記録用インク組成物、
<2> (成分E)重量平均分子量4,000〜120,000の不活性なメチルメタクリレート単独重合体及び/又は共重合体を更に含有する、<1>にインクジェット記録用インク組成物、
<3> 成分DとしてHLBが5以下のシリコーン系界面活性剤を含有する、<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インク組成物、
<4> 成分Dの含有量がインク組成物全体の0.5質量%以上2.0質量%以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物。
<5> 成分Aとして(成分A−2)下記式(1)で表される化合物を更に含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<8> 成分Eの重量平均分子量が10,000〜75,000である、<2>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<9> 成分Eが、メチルメタクリレート単独重合体及び/又はメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の割合が30.0〜85.0質量%の共重合体である、<2>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<10> 成分Eが、メチルメタクリレート単独重合体及び/又はメチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート共重合体である、<9>に記載のインクジェット記録用インク組成物、
<11> 成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<12> 表面張力が20.5mN/m以上22.0mN/m以下である、<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<13> 多官能モノマーの含有量がインク組成物全体の0.5〜8質量%である、<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<14> 成分Eと成分Dのインク組成物中の質量比が1:8〜8:1である、<2>〜<13>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物、
<15> (a1)記録媒体上に、<1>〜<14>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインクジェット記録用インク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェット記録用インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<16> <15>に記載のインクジェット記録方法により得られる印刷物。
本発明のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)重合開始剤、(成分C)着色剤、及び、(成分D)HLBが2以上7以下のシリコーン系界面活性剤を含有し、成分Aとして(成分A−1)N−ビニルラクタム類を含有し、成分Dの含有量がインク組成物全体の0.4質量%以上4.0質量%以下であり、単官能モノマーの総量がインク組成物全体の75質量%以上であり、多官能モノマーを含有しないか、又は、多官能モノマーの総量がインク組成物全体の10質量%以下であり、25℃における表面張力が20.0mN/m以上22.5mN/m以下であることを特徴とする。
なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。また、前記「(成分A)N−ビニルラクタム類」等を単に「成分A」等ともいう。
また、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを表す。
更に、「質量%」及び「質量部」は、それぞれ「重量%」及び「重量部」と同義である。
なお、本発明のインク組成物は、水を含有しないことが好ましい。
本発明者は、鋭意検討することにより、HLBが特定の範囲のシリコーン系界面活性剤を単官能モノマー比率の多いインク組成物に添加することにより、表面張力低下能が高く、硬化膜のスリップ性が向上する結果、耐ブロッキング性や耐表面傷跡性が向上することを見出した。成分Dは、疎水性が高く、界面活性効果の高い界面活性剤であるが、インク組成物中の単官能モノマー比率を高くし、多官能モノマー比率を低くすることで、硬化時の架橋密度を抑えることができ、成分Dがより硬化膜表面に偏在するものと推測される。このように、表面偏在を促進することにより、得られる画像の耐ブロッキング性及び耐表面傷跡性に優れるものと考えられる。
また、表面張力を低くすることにより、吐出安定性及び粒状性が抑制された画像が得られるインク組成物が得られたものと推測される。
以下、本発明のインク組成物の各成分や物性値等について、説明する。
本発明のインク組成物は、(成分A)重合性化合物を含有し、成分Aとして(成分A−1)N−ビニルラクタム類を含有する。なお、成分Aはラジカル重合性化合物であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分A−1)N−ビニルラクタム類を含有する。N−ビニルラクタム類を含有することにより、硬化性及び基材密着性に優れる。
N−ビニルラクタム類としては、式(a)で表される化合物が好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上の水素原子がアルキル基、アリール基等の置換基により置換されていてもよく、ラクタム環と飽和又は不飽和環構造とが連結していてもよい。
式(a)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物は、(成分A−2)式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(1)のXにおける二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基と、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合及びアミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1つの結合とを組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。
Xは、二価の炭化水素基であることが好ましい。二価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の二価の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜5の二価の炭化水素基が更に好ましく、炭化水素基の中でもアルキレン基が好ましく、炭素数1すなわちメチレン基が特に好ましい。
また、Xが、炭化水素基と、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合及びアミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1つの結合とを組み合わせた二価の連結基である場合、炭化水素基としては炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。1つ以上のアルキレン基と、エステル結合(−COO−又は−OCO−)、ウレタン結合(−NRCOO−又は−OCONR−(Rは、水素原子又はアルキル基を表す。))、ウレア結合(−NRCONR’−(R、R’は、水素原子又はアルキル基を表す。))、エーテル結合(−O−)及びアミド結合(−NRCO−又は−CONR−(Rは、水素原子又はアルキル基を表す。))よりなる群から選ばれた少なくとも1つの結合とを組み合わせた二価の連結基が好ましい。これらの中でも、1つ以上のアルキレン基と1つ以上のエーテル結合とを組み合わせた二価の連結基がより好ましい。
アルキレン基とエーテル結合とを組み合わせた二価の連結基としては、*−(アルキレン基)−O−**又は*−(アルキレン基)−O−(アルキレン基)−**が好ましい(*はXと(メタ)アクリルオキシ基の−O−との結合部、**はXと4級炭素原子との結合部を示す。)。
上記のアルキレン基とエーテル結合とを組み合わせた二価の連結基としては、−(アルキレン基)−O−部分を複数個有する、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることが好ましく、この場合の連結基の総炭素数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−3)式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(2)におけるXとしては、アルキレン基、又は、1以上のアルキレン基とエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれた1以上の結合とを組み合わせた基が好ましく例示でき、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基がより好ましく例示できる。
前記アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基は、炭素数2〜10であることが好ましく、炭素数2〜4であることがより好ましく、炭素数2であることが特に好ましい。また、前記アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はポリアルキレンオキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等が例示できる。
これらの中でも、式(2)で表される化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、成分A−1〜成分A−3以外の、他の重合性モノマーを更に含有していてもよい。
他の重合性モノマーとしては、公知の重合性モノマーを用いることができ、成分A−1〜A−3以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
成分A−1〜成分A−3以外の、他の重合性モノマーとしては、特に制限はないがエチレン性不飽和化合物が好ましい。成分A−1〜成分A−3以外の単官能(メタ)アクリレート化合物を更に含有することがより好ましい。
本発明のインク組成物は、前記成分A−1〜A−3以外に、その他の単官能モノマーを含有してもよい。その他の単官能モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロデシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−フタルイミドエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、イソボロニル(メタ)アクリレートが好ましく、イソボロニルアクリレートが特に好ましい。
前記(成分A−3)式(2)で表される化合物以外の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、2−α−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、1−フェナントリル(メタ)アクリレート、2−フェナントリル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート(以下、「エチレンオキサイド」を「EO」ともいう。)、p−ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フリル(メタ)アクリレート、2−フルフリル(メタ)アクリレート、2−チエニル(メタ)アクリレート、2−テニル(メタ)アクリレート、1−ピロリル(メタ)アクリレート、2−ピリジル(メタ)アクリレート、2−キノリル(メタ)アクリレート、N−(1,1−ジメチル−2−フェニル)エチル(メタ)アクリルアミド、N−ジフェニルメチル(メタ)アクリルアミド、N−フタルイミドメチル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピル(メタ)アクリルアミド等を例示できる。
本発明のインク組成物は、(成分A)重合性化合物として、成分A−1〜成分A−3以外に更に多官能(メタ)アクリレート化合物を含有してもよい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、2官能(メタ)アクリレート化合物又は3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を好ましく使用できる。
中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジプロピレングリコールジアクリレートが特に好ましい。
2官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、炭素数5以上の炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレート化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、他の重合性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
好適に用いられる単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
好適に用いられる多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
本発明のインク組成物は、重合性化合物として重合性オリゴマーや重合性ポリマーを含有することもできるが、その含有量はインク組成物全体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
この「オリゴマー」とは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。オリゴマーの重量平均分子量は800〜10,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましい。
上記の範囲において、密着性に優れ、耐ブロッキング性及び耐表面傷跡性に優れる硬化膜(画像)を得ることができる。特に、一般に画像との密着性が低いポリプロピレン(PP)を支持体として使用した場合であっても、良好な画像密着性が得られる。
詳細な作用機構は不明であるが、以下のように推定される。単官能モノマーの含有量が多く、多官能モノマーの含有量が少ないインク組成物により作製された硬化膜は、架橋密度が低く、インク硬化後に硬化膜(画像)の界面と支持体(被記録媒体)界面間の歪エネルギーを最小に抑えることができ、種々の支持体に対して密着性に優れると推定される。
また、硬化膜の架橋密度を抑えることで、硬化時及び/又は硬化後に界面活性剤をより硬化膜表面に偏在化させることが可能となり、耐ブロッキング性及び耐表面傷跡性に優れると推定される。
単官能モノマーの総量は、インク組成物全体の80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
また、多官能モノマーの総量は、インク組成物全体の0.5〜8質量%であることが好ましく、1.0〜4.0質量%であることがより好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分B)重合開始剤を含む。支持体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。
なお、本発明における重合開始剤は、活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性エネルギー線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。
本発明のインク組成物において、重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。増感剤としては例えば、特開2008−208190号公報に記載のものが挙げられる。
前記重合開始剤は、ラジカル重合反応に用いられる重合開始剤であり、本発明のインク組成物は、重合開始剤として、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物、(成分B−2)チオキサントン化合物又は(成分B−3)α−ヒドロキシケトン化合物が好ましく挙げられる。
以下に、成分B−1〜B−3の化合物について説明する。
本発明において、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられる。(成分B−1)としては、(成分B−1−1)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、及び、(成分B−1−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物が例示される。成分B−1としては、特開2009−096985号公報の段落0080〜0098に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物及びモノアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1−1としては、化合物の構造中に式(b−1−1)で表される部分構造を有するものが好ましい。
中でも、式(b−1−2)で表されるビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE819、BASFジャパン(株)製)が好ましい。
本発明において、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−1−2)モノアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1−2としては、化合物の構造中に式(b−2−1)で表される部分構造を有するものが好ましい。
中でも、式(b−2−2)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Darocur TPO:BASFジャパン(株)製、Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
特に、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物は、少ない添加量でも高い感度が得られる。なお、ビスアシルホスフィンオキサイドはモノアシルホスフィンオキサイドと比較して、低添加量でインクの感度を向上させることが可能であるが、一方、印刷物が黄色に着色されるという観点でクリアインクには不適である、このため、画像が黄色に変化することが目立ちにくいカラーインクにおいてはビスアシルホスフィンオキサイドとモノアシルホスフィンオキサイドとを併用することが好ましい。
成分B−1の含有量は、インク組成物全体の2〜7質量%が好ましく、3〜6質量%であることがより好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分B−2)チオキサントン化合物を好ましく含有することができる。
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、式(b−2)で表される化合物であることが好ましい。
R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
本発明のインク組成物は、(成分B−3)α−ヒドロキシケトン化合物を好ましく含有することができる。
上記範囲であると、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、(成分C)着色剤を含有する。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
赤又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド3(「Pigment Red 3」ともいう。)、5、19、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、202、208、216、226、257、C.I.ピグメントバイオレット3(「Pigment Violet 3」ともいう。)、19、23、29、30、37、50、88、C.I.ピグメントオレンジ13(「Pigment Orange 13」ともいう。)、16、20、36、青又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1(「Pigment Blue 1」ともいう。)、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(「Pigment Green 7」ともいう。)、26、36、50、黄顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(「Pigment Yellow 1」ともいう。)、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、120、137、138、139、150、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、C.I.ピグメントブラック7(「Pigment Black 7」ともいう。)、28、26、白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6(「Pigment White 6」ともいう。)、18、21などが目的に応じて使用できる。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、201、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9等が挙げられる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。すなわち、溶剤を含まないことが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、(成分D)HLBが2以上7以下のシリコーン系界面活性剤を含有する。また、成分Dをインク組成物全体の0.4質量%以上4質量%以下含有する。HLBとは、親水親油バランス(Hydrophile−Lipophile Balance)の略称であり、界面活性剤が果たす効果を表す指標の1つである。HLBの値が大きい程、親水性が高くなり、HLBの値が小さい程、親油性が高くなる。
シリコーン系界面活性剤では、HLBの値が小さいほど、疎水性が高く、すなわち、シリコーン部分が比率が大きく、より強い界面活性能力を示す傾向にある。
本発明においては、インク組成物に、比較的界面活性能力の高い、HLBが7以下であるシリコーン系界面活性剤を特定の含有量で添加することにより、耐ブロッキング性及び耐表面傷跡性に優れる画像が得られることを見出したものである。
なお、シリコーン系界面活性剤のHLBの値が2未満であると、相溶性が低く、7を超えると、十分な効果を得られない。
成分DのHLBは、2〜7であり、2〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。
成分Dの含有量は0.5〜2.0質量%であることが好ましく、0.7〜1.5質量%であることがより好ましい。
グリフィン法によれば、HLB値は下記式で定義される。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
また、川上法では、
HLB値=7+11.7log(親水部の式量の総和/親油部の式量の総和)
で定義される。
一方、実験的には、オクチルフェノールエトキシレートなどへの溶剤への界面活性剤溶出量を、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)やGPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)等を用いて算出し、HLB既知の界面活性剤の溶出量との比較を行う方法や、HLBが既知の界面活性剤(HLB既)とHLB未知の界面活性剤(HLB未)を様々な混合比率で混合し、要求HLBが既知の油(HLB油)と乳化混合物を生成し、乳化液が最も安定になる界面活性剤混合比率を同定することで、以下の式から、HLB値を求めることもできる。
HLB(油)={(W既×HLB既)+(W未×HLB未)}/(W既+W未)
ここで、W既はHLB既知の界面活性剤の質量分率、W未はHLB未知の界面活性剤の質量分率である。
本発明においては、HLB値をグリフィン法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)及びHPLC等の公知の方法で求めることが好ましく、グリフィン法にて求めることが最も好ましい。
本発明のインク組成物は、上記成分Dに加え、その他の界面活性剤を含有してもよい。
成分D以外の界面活性剤としては、下記の界面活性剤が例示できる。例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤として、有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8から17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
特に本発明において使用される界面活性剤は、上記界面活性剤に限定されることはなく、添加濃度に対して効率的に表面張力を低下させる能力のある添加剤であればよい。
本発明のインク組成物は、(成分E)重量平均分子量4,000〜120,000の不活性なメチルメタクリレート単独重合体及び/又は共重合体を含有することが好ましい。成分Eについて以下に説明する。
また、不活性なメチルメタクリレート共重合体としては、特に制約はなく、例えばメチルメタクリレートとその他の重合性化合物とを公知の重合方法により共重合体としたもの、又は市販の共重合体製品として入手できるものが好ましく挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれでもよい。共重合に使用するその他の重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましく挙げられる。より好ましくは、メタクリレート化合物である。
本発明のインク組成物において画像の筋ムラが向上するのは、硬度の高い成分Cの導入による内部硬化性の向上により、打滴干渉が抑制される結果となり、筋ムラの目立たない画像が得られるものと推定される。
上記範囲であれば、上記のメチルメタクリレート共重合体は、本発明で用いられる成分A−1等の重合性化合物への溶解性及び/又は相溶性が向上することにより、本発明のインク組成物が析出等で吐出安定性が劣化するのを防止することができる。また、本発明のインク組成物は、前記共重合体のメチルメタクリレート部分の硬い構造部分により、耐ブロッキング性及び耐表面傷跡性に優れる画像硬化膜を得ることができる。
本発明で使用される不活性なメチルメタクリレート単独重合体及び/又は共重合体の市販製品としては、例えば、Aldrich社製のポリメチルメタクリレート(分子量10,000、カタログ番号81497;分子量20,000、カタログ番号81498;分子量50,000、カタログ番号81501)、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体(質量比85/15、分子量75,000;カタログ番号474029)等;Lucite Intenational社製のElvacite2013(メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体、質量比36/64、分子量37,000)、2021、2614、4025、4026、4028等;Rohm and Haas社製のParaloid DM55、B66等;Dinal America社製のBR113、115等が挙げられる。
本発明のインク組成物は、必要に応じて、前記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、塩基性化合物等を含んでいてもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、本発明のインク組成物の全質量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
本発明のインク組成物は、25℃における表面張力が、20.0〜22.5mN/mである。好ましくは20.5〜22.0mN/m、更に好ましくは20.8〜21.8mN/mである。
25℃における表面張力が、上記範囲であると、優れた吐出安定性及び硬化膜の耐ブロッキング性及び耐表面傷跡性に優れるインク組成物が得られる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線(活性エネルギー線、ともいう。)を照射し、インク組成物を硬化して画像を形成する方法である。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
また、粘度の測定装置としては、回転粘度計を使用することが好ましく、B形又はE形の回転粘度計を使用することが好ましい。
インク組成物の25℃における粘度の測定方法として具体的には、例えば、RE80型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、液温25℃にてローターを2分間回転させて安定させた後に測定する方法等が好ましい。
インク吐出側の面が親インク処理されたノズルプレートを有するインクジェットヘッドとしては、例えばFUJIFILM Dimatix社製のピエゾ駆動方式によるオンデマンド・インクジェットヘッドが挙げられる。その具体例として、S−class、Q−class Sapphireが挙げられる。
具体的には、前記ノズルプレートが、インク吐出側の面の少なくとも一部に、金、ステンレス、鉄、チタン、タンタル、プラチナ、ロジウム、ニッケル、クロム、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることが好ましく、金、ステンレス、鉄、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることがより好ましく、金、ステンレス及び酸化ケイ素よりなる群から選ばれた少なくとも1種により形成された層を備えることが更に好ましく、酸化ケイ素により形成された層を備えることが最も好ましい。
記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学工業(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
活性エネルギー線の照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、記録媒体表面に画像を形成することができる。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を示すものとする。
(成分C)着色剤
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASFジャパン(株)製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355−D(マゼンタ顔料、BASFジャパン(株)製)
・NOVOPERM YELLOW 4G01(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、BASFジャパン(株)製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・SOLSPERSE41000(Noveon社製分散剤)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISP社製)
・SR531(サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート(CTFA)95質量%と、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)5質量%との混合物、Sartomer社製)
・SR339(フェノキシエチルアクリレート、Sartomer社製)
・SR506(イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(10質量%)とフェノキシエチルアクリレート(90質量%)との混合物、Chem First社製)
・IRGACURE 819(ビスアシルホスフィン光重合開始剤、BASFジャパン(株)製)
・LUCIRIN TPO(光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)
・IRGACURE 184(光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン(株)製)
・SPEEDCURE ITX(光重合開始剤、イソプロピルチオキサントン、LAMBSON社製)
・KF−351A(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:12)
・KF−352A(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:7)
・KF−353(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:10)
・KF−354L(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:16)
・KF−945(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:4)
・KF−6020(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:4)
・X22−6191(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:2)
・KF−6015(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:5)
・X22−2516(シリコーン系界面活性剤、信越化学社製、HLB:1)
・ポリメチルメタクリレート(Mw:10,000、アルドリッチ社製、カタログNo81497)
・ポリメチルメタクリレート(Mw:20,000、アルドリッチ社製、カタログNo81498)
・ポリメチルメタクリレート(Mw:50,000、アルドリッチ社製、カタログNo81501)
・ポリメチルメタクリレート(Mw:75,000、アルドリッチ社製、カタログNo81502)
・ELVACITE2013:メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート共重合体(質量比36/64、Mw:37,000、Lucite International社製)
IRGALITE BLUE GLVOを300質量部と、SR339を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
CINQUASIA MAGENTA RT−355−Dを300質量部と、SR339を600質量部と、SOLSPERSE32000を100質量部とを撹拌混合し、マゼンタミルベースBを得た。なお、マゼンタミルベースBの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
NOVOPERM YELLOW 4G01を300質量部と、SR339を600質量部と、SOLSPERSE32000を100質量部とを撹拌混合し、イエローミルベースCを得た。なお、イエローミルベースCの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
SPECIAL BLACK 250を400質量部と、SR339を520質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、ブラックミルベースDを得た。なお、ブラックミルベースDの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで7時間分散を行った。
タイペークCR60−2を500質量部と、SR339を440質量部と、SOLSPERSE41000を60質量部とを撹拌混合し、ホワイトミルベースEを得た。なお、ホワイトミルベースEの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
IRGALITE BLUE GLVOを300質量部と、SR531を620質量部と、SOLSPERSE32000を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースA2を得た。なお、シアンミルベースA2の調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
表1〜表4に記載の素材を混合、撹拌することで、実施例1〜25及び比較例1〜10の各インク組成物をそれぞれ得た。
インク組成物の表面張力は、表面張力計SIGMA702(吊環法、KSV INSTRUMENTS LTD社製)を用い、25℃で測定を行った。
インク組成物の粘度は、RE80型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、液温25℃にてローターを2分間回転させて安定させた後に測定を行った。
HLB値は、グリフィン法にて算出した。なお、グリフィン法において、HLB値は以下の式から算出される。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
UV硬化型インクジェットプリンター Acuity Advance(富士フイルム(株)製)を用い、インクジェット画像を双方向印刷モード(高生産性モード)且つFineartモード(高解像度モード)で印刷した。Fineartモードは、同一画像部分を8パスで描画するマルチパスモードで行われる印刷である。該プリンターにはUVランプ光源がヘッドユニットの左右に装着されており、双方向印刷モードは、8回のマルチパス描画において、画像同一部分に、16回のUV露光が施される。
Avery Permanent400(ポリ塩化ビニル(PVC)、Avery社製)上に、解像度600×450dpi、サイズ30cm×30cmで、100%ベタ画像の印刷を行った。ランプは、Integration Technology社製SUB ZERO 085 H bulbランプユニットを装着した
印字中、路面照度を測定したところ、690mW/cm2であった。
得られた画像を爪で10回擦り、画像表面の観察を行い、傷の程度(耐表面傷跡性)を以下の基準で評価した。
4:印刷物から50cmの距離で観察しても全く表面に傷が見られない
3:印刷物から50cmの距離で観察するとわずかに表面の傷が見えるが、1mの距離からは傷が見えない
2:印刷物から50cmの距離で観察するとはっきりした表面の傷が見えるが、1mの距離からは傷が見えない
1:印刷物から1mの距離で観察してもはっきりとした表面の傷が見える
上記インクジェット記録方法にて、支持体を、コート紙(150gsm、王子製紙社製)に変更、計5枚の印刷物を作成し、得られた画像を重ね合わせ、上部に5kgの重りを載せて、30℃のオーブンで24時間放置したのち、画像同士の張り付き具合を評価した。
5:印刷物同士の張り付きが全くない
4:印刷物同士に張り付きがあるが、手で簡単に引きはがれ、上部支持体背面への画像の転写はない
3:印刷物同士に張り付きがあり、手で簡単に引きはがすと、上部支持体背面への僅かな画像の転写がある
2:印刷物同士に張り付きがあり、手で簡単に引きはがすと、上部支持体背面へのかなりの画像の転写がある
1:印刷物同士に張り付きがあり、手で引きはがすのが困難である
上記インクジェット記録方法にて、支持体をPriplak(膜圧0.8mm、ポリプロピレンシート、Robert Horne社製)に変更し、印刷物を作成した。硬化膜と被記録媒体との接着性はクロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価し、ASTM法による表記5B〜1Bで表す。5Bが最も接着性に優れ、3B以上で実用上問題のないレベルであると評価する。
得られたインク組成物を室温で二週間保存後、親インク処理されたノズルプレートを有するインクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/10(FUJIFILM DIMATIX製、ノズル数256個、液滴量10pL、50kHz、親インク処理:酸化ケイ素)を有するインクジェット記録装置を用いて、吐出液滴を10pLに固定し、被記録媒体への記録を行い、10分及び、60分の連続印字したときの、ドット抜け及びインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。吐出粘度は、9.0±0.2cPとなるよう、ヘッドの温度を調整し、吐出を行った。
5:ドット抜け、又は、インクの飛び散りが発生しない
4:ドット抜け、又は、インクの飛び散りが1〜3回発生
3:ドット抜け、又は、インクの飛び散りが4〜10回発生
2:ドット抜け、又は、インクの飛び散りが11〜20回発生
1:ドット抜け、又は、インクの飛び散りが21回以上発生
上記インクジェット印刷方法にて、それぞれ、100%、80%、60%、40%の画像濃度の単色印刷物を作成し、以下の基準に従い、画像の粒状性評価を行った。
4:印刷物から50cmの距離で観察し、粒状感が見られない
3:印刷物から50cmの距離で観察し、わずかな粒状感が見られるが、1mの距離で観察すると、粒状感が見られない
2:印刷物から1mの距離で観察すると、わずかな粒状感が見られる
1:印刷物から1mの距離で観察すると、はっきりした粒状感が見られる
Claims (15)
- (成分A)ラジカル重合性化合物、
(成分B)重合開始剤、
(成分C)着色剤、
(成分D)HLBが2以上7以下のシリコーン系界面活性剤、及び、
(成分E)重量平均分子量4,000〜120,000の不活性なメチルメタクリレート単独重合体及び/又は共重合体を含有し、
成分Aとして(成分A−1)N−ビニルラクタム類を含有し、
成分Dの含有量がインク組成物全体の0.4質量%以上4.0質量%以下であり、
単官能モノマーの総量がインク組成物全体の75質量%以上であり、
多官能モノマーを含有しないか、又は、多官能モノマーの総量がインク組成物全体の10質量%以下であり、
25℃における表面張力が20.0mN/m以上22.5mN/m以下であることを特徴とする
インクジェット記録用インク組成物。 - 成分DとしてHLBが5以下のシリコーン系界面活性剤を含有する、請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分Dの含有量がインク組成物全体の0.5質量%以上2.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分Eの含有量がインク組成物全体の0.3質量%以上2.0質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分Eの重量平均分子量が10,000〜75,000である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分Eが、メチルメタクリレート単独重合体及び/又はメチルメタクリレート由来の繰り返し単位の割合が30.0〜85.0質量%の共重合体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分Eが、メチルメタクリレート単独重合体及び/又はメチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート共重合体である、請求項8に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 表面張力が20.5mN/m以上22.0mN/m以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 多官能モノマーの含有量がインク組成物全体の0.5〜8質量%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 成分Eと成分Dのインク組成物中の質量比が1:8〜8:1である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- (a1)記録媒体上に、請求項1〜13のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物を吐出する工程、及び、
(b1)吐出されたインクジェット記録用インク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェット記録用インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。 - 請求項14に記載のインクジェット記録方法により得られる印刷物。
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